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「これが私の生きる道!最終決戦前夜編(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-18 12:22/2006-03-22 02:11)
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(ハワイ、パールハーバー軍港)

オーブ攻略艦隊は敗退後、残存艦艇を引き連れて
、ここパールハーバー軍港まで引き揚げてきた。
その帰路は途中でザフト潜水艦隊の奇襲攻撃を受
けるなど、更に被害を拡大させて最悪なものにな
った。

 「そういう事で私は責任を取らされて退役する
  事になった。後はよろしく頼むよ。スプルー
  アンス大将」

ニミッツ大将は二期後輩のスプルーアンス大将に
別れの挨拶をする。

 「この時期に退役できて羨ましいですね。私は
  尻拭いが忙しくて退役し損ねましたから」

 「君は残れたんだから、御の字ではないか」

 「ですが、もう実戦の場には出られません。私
  の任務は連合穏健派や中立派の意向を受けて
  、戦力を再建しているだけですから」

スプルーアンス大将が処分を受けなかった理由の
1つに、連合軍穏健派や中立派の口添えがあった
のは事実である。
彼らは、戦争が終結する事態を予想していて、講
和条件を少しでも良くする為に、戦力の再建を急
いでいたのだ。
国同士に親友は存在しない。
プラントとの講和が規定の事実であっても、一方
的に条件を飲まされてはたまらないからで、その
為の切り札の1つが太平洋艦隊の戦力なのだ。

 「第12任務艦隊のフレッチャー中将には悪い
  事をしてしまったな。戦死させるには惜しい
  男だった」

オーブ戦の折、太平洋艦隊から援軍として派遣さ
れていた第12任務艦隊はザフト軍ディン部隊の
気化爆弾攻撃を受けて、壊滅的な被害を受けてし
まったのだ。
攻撃を受けた艦艇は可燃物が誘爆して手の付けら
れない状態になり、ほとんどの艦艇が自沈処分さ
れてしまった。
他にも艦長クラスの大佐や分艦隊を率いていた准
将・少将、その幕僚である佐官クラスの将校を多
数失い、第12任務艦隊は編成表から消滅する事
が決まっていた。
そして、一番の損害が150人のモビルスーツ隊
のパイロット達と、80名の戦闘機パイロット達
である。
彼らは出撃する事も無く、消し炭になってしまっ
たのだから。

 「再建が更に遠のく事態を作ってしまってすま
  んな」

 「いえ、先輩は悪くありませんよ。必要の無い
  戦いを挑ませた連中こそ罰を受けるべきです
  」 

 「連中も罰を受けたくないから、私は穏便に退
  役できるのさ。年金もすぐ出るし、実家でパ
  ンでも焼きながら生活するさ。多分、修行し
  ないと焼かせてもらえないだろうけど」

 「本当に羨ましいですな。代わって欲しいもの
  です」

 「君の家は由緒正しい軍人家系ではないか。他
  の生き方は辛い選択になってしまうぞ」

 「年寄り軍人って他に潰しがきかないですから
  ね。それで、ドルスメル参謀長はどうなるん
  ですか?」

 「玉突きで中将に昇進して艦隊司令に昇進だそ
  うな。彼も予備役編入か降格を覚悟していた
  ようだが、指揮官の大量喪失でそうもいって
  いられないようだ」

責任を取らせるのはニミッツ大将1人だけ。
これが、軍上層部の意向であったようだ。
指揮官は兵隊やパイロットと違って短期間には作
れないからだ。

 「それに、私が残っていると、次の作戦に支障
  をきたす恐れがあるからな」

 「次がまだあるんですか?」

 「大西洋艦隊の残り半数とユーラシア連合大西
  洋艦隊と共同で、ジブラルタル攻略と北アフ
  リカ上陸作戦を実行するらしい」

スプルーアンス大将は頭が痛くなってきた。
せっかく戦力を再建しても、それを上回る速度で
消耗させてしまう連合上層部に対して、怒りが沸
いてくる。

 「何の目的でそんな事をするんですか?」

アズラエルが宇宙で勝てば済む問題なのだ。
難攻不落のジブラルタルと、砂漠の虎が守るアフ
リカ。
前門の虎後門の狼とはこの事であろう。

 「ザフトに援軍を送って欲しくないのだろう。
  それしか考えられない。試しにシミュレート
  してみたが、勝っても損害率が7割を超えて
  しまうそうだ」

 「それは、勝ちとは言いません」

 「それに、アフリカ共同体が曲者です。人口が
  多いだけあって、人海戦術を取られるとやっ
  かいですし、プラントと共同でモビルスーツ
  を開発しているという情報もあります」

アフリカ共同体は開戦当初から親プラントを表明
していて、アフリカ南部を統合する時に、多数の
ザフト軍を援軍として受け入れていた。
全アフリカ大陸解放後も、ザフト軍はビクトリア
基地を中心に同盟国軍として駐屯を続けていて、
その戦力は強大なものであった。

 「しかも、アフリカ駐留軍司令官がアンドリュ
  ー・バルトフェルトときたものだ。大西洋艦
  隊のボンクラ将官で勝てるのかな?」

 「さあ?私は太平洋艦隊所属だから知らないで
  す」

 「私も退役するから知らんな」

大西洋艦隊の残り半数の将官は、ニミッツ大将が
役に立たないからという理由で置いてきた連中が
大半だ。
それに、自分が連れてきた優秀な連中も結構戦死
しているので、生き残った彼らを戻しても平均レ
ベルは低下したままなのだ。

 「それに、私が今から大西洋に戻っても、作戦
  開始には間に合うまい」

 「それでも、早急に戻って来いとの事ですよ」

 「どんなに急いでも二週間はかかるのだが・・
  ・」

 「作戦開始は二週間後ですかね?」

 「さあ?その情報が全然入って来ないのだよ。
  アズラエルは何を考えているのか?」

その後、大西洋艦隊の残存艦艇は3日後にパール
ハーバーを出港していったが、艦艇の応急修理は
まだ終わっておらず、洋上で航行中に行う事にな
っていた。
その理由はパールハーバーの工廠が一杯だったか
らという笑えないものであり、その事実を聞いた
ニミッツ大将の怒りは相当なものであったという

しかも、損害の酷い艦艇は置いていく羽目になっ
たので、大西洋に戻れそうな艦艇は出発時の半数
以下になっていたそうだ。
こうして、オーブ攻略艦隊は本拠地に戻っていっ
たのだった。


(パールハーバー軍港内、ドミニオン艦内)

一時的に、オーブ攻略艦隊に編入されていたドミ
ニオンは撤退時に殿を務めていた影響でボロボロ
の状態であった。
修理しようにも工廠は一杯で、空きの出るメドは
立っていなかった。
日本攻略作戦の失敗が大きく響いているのだ。

 「応急修理にも限界がありますぜ。どうします
  か?艦長」

ブリッジにマードック少尉が報告に来たが、状況
は芳しくないようだ。

 「モビルスーツの方はどうなの?」

 「そっちは三機だけなので終わってます」

パールハーバー帰港後にオルガとクロトは「ピー
スメーカー」に戻っていて、ドミニオンにはフラ
ガ少佐とレナ少佐とササキ大尉しか残っていなか
ったのだ。

 「艦の修理はどうにもならないわ。上申は全て
  無視されているし。きっと、誰かさんが嫌わ
  れているせいね」

誰かさんがプリンス准将である事は、明確なのだ
が。

 「しかし、意外だったのは、本来大西洋艦隊所
  属のササキ大尉がまだドミニオンにいる事で
  す」

バジルール大尉の指摘に全員が頷く。

 「どうしてかしらね?」

 「それは、復讐の為に宇宙へ上がる決断をした
  からでしょうね」

ブリッジにプリンス准将が入ってきた。

 「それは、どういう事です?」

ラミアス中佐が事情を尋ねる。

 「これから、ドミニオンはカルフォルニアに出
  発して、そこから宇宙へ上がります。その前
  に最低限の修理はしなければいけませんが、
  本格的な修理は月に着いてからです」

 「転属ですか。ドミニオンは?」

 「本来、ドミニオンは宇宙艦艇ですから。月の
  第八艦隊に転属になります」

 「第八艦隊ですか。古巣に戻るのですね」

 「司令官もハルバートン中将ですから、以前と
  変わりありませんよ。我々の任務はアズラエ
  ル理事に反抗的な彼の監視です」

ラミアス中佐の頭痛が再発する。
相変わらずのプリンス准将のバカっぷりに、気が
遠くなりそうだ。
彼は自分達に、政治将校の役目をしろと言ってい
るのだ。
しかも、恩師のハルバートン中将をだ。

 「最近は思想を問わないで戦力を増やしてきた
  のですが、アズラエル理事の批判をしていた
  り、コーディネーターとの共存を唱える連中
  が多くなりましてね。監視任務が忙しいので
  すよ」

 「何故、私達がそんな事をしなければいけない
  のですか?」

ラミアス中佐は怒りの表情を表に出しながら、疑
問を投げかけた。

 「今更、善人ぶってどうするんですか?あなた
  達は周りからどう評価されているか、知って
  いるのですか?」

プリンス准将が今まで一度も見せた事のない冷た
い表情をしながら、ラミアス中佐に質問をした。

 「いえ、知りません」

 「アズラエル理事の忠犬プリンス准将に引っ付
  いて出世する小判ザメ達。それがあなた達の
  周りの評判です」

プリンス准将の衝撃の発言に、全員の表情が固ま
った。

 「いえ、我々は命令に忠実であっただけで・・
  ・」 

バジルール大尉が小さな声で反論するが・・・。

 「そうですよ。我々は命令に忠実だったのです
  。ですが、多数の軍人達はそうは見てくれま
  せん。世の中ってそんなものなのですよ。だ
  から、私は勝つ方に付きたいのです」

確かに、プリンス准将の部下になってからは出世
が早かったし、それを邪魔にはならないだろうと
喜んでいた自分が心の片隅に、確かに存在してい
た。
無能なプリンス准将のお守り代くらいに感じてい
たのだ。
最近、軍の同期の仲間から避けられているという
か、連絡が取り難くなったのも事実であったが、
こんな事情が存在していたとは・・・。

 「しかし、私はアズラエル派になった覚えは・
  ・・」

 「残念ですが、世間はそうは見てくれません。
  それに、そう悲観する事もありませんよ。勝
  てれば更に出世できますし、その後の豊かな
  生活も保障されるのですから」

どうやら、自分達は抜き差しならぬところまで、
追い込まれているようだ。

 「命令に従います・・・」

今まで、バカにしていた上官に追い込まれてしま
い、ラミアス中佐の表情は晴れないままだ。

 「えーと、バジルール大尉はどうです?お父様
  やお兄様の期待を裏切って軍を辞めますか?
  」

 「私は命令に従うだけです・・・」

真面目一辺倒で軍務に忠実な彼女も、かなり気落
ちしているようだ。
それに、家族はアズラエルの知己を得られた事を
喜んでいるだろう。
もし、アズラエルが勝てば、娘を通じて自分達の
出世も果たせるし、敗北したら自分を切り捨てれ
ばいいのだ。
多分、どこぞの軍人一家に嫁にでも出されるのだ
ろう。

 「フラガ少佐、レナ少佐、ササキ大尉は頑張っ
  てくれるそうですから。では、出発準備をお
  願いしますね」

ササキ大尉はカザマに復讐出来ればそれで良いら
しい。
後の2人は、仕方が無いというのが本音だろう。
その後、プリンス准将は自室に篭ってしまい、残
された乗組員達には動揺が走っていた。 

 「俺達はどうなるんだ?」

 「下っ端だから関係無いさ」

チャンドラ曹長とパル曹長が小声で会話している
のが聞こえてきたが、他のブリッジ要員も同じ事
をしているようだ。
それを見たバジルール大尉が注意を促していた。

 「ナタル、発進準備を頼むわね。ちょっとお手
  洗いに行ってくるわ」

ラミアス中佐は洗面所に行き、メイクを直しなが
ら鏡を見る。
自分は何て甘かったのだろう。
半年以上付き合っていた上司の本性を見抜けなか
ったのだから。
彼は、軍人としては無能だと断言できるが、組織
人としては自分やナタルよりも上のようだ。
アズラエルの台頭を上手く利用して自分の地位を
引き上げ、自分に足りないものを理解して自分や
ナタルを引きずり込む事に成功したのだ。
どうやら、彼はかなりの曲者らしい。
敗北続きとはいえ、ザフト軍精鋭部隊と互角に近
い戦いが出来る自分達を、いつの間にかアズラエ
ル派であると周りに認識させて、自分の功績にし
ているのだから。

 「私達、これからどうなるのかしら」

ブルーコスモス強行派に牛耳られているとはいえ
、連合軍は連合軍。
逆らう訳にもいかず、軍を辞める覚悟も出来てい
ないのだ。

 「どうやら、カザマ君達とは道が完全に分かれ
  てしまったようね」

戦場では悪鬼のように戦うが、その他では家族や
友達を大切にして、敵方の人間である自分にも優
しくしてくれた。
きっと、彼は自分と周りの人達の未来を少しでも
幸せにする為に戦っているのだろう。
婚約者を無くし、復讐心を糧に戦えたのはほんの
少しの間で、今は惰性で戦っているだけの自分だ
が、ナタルやレナ少佐などの同年代も友人もでき
、中佐にまで出世したのだ。
今は戦い抜かねばならないのだ。

 「さあて、頑張らなないとね」

ラミアス中佐はブリッジに戻っていった。


(ドミニオン艦内、司令官室)

プリンス准将は自室に篭って、ある将官から貰っ
たディスクを私用のパソコンで眺めていた。
このディスクには強度の暗号がかかっていて、自
分の個人情報と事前に提示していたパソコンのシ
リアルナンバーとそのパソコンの現物が無いと見
る事の出来ない代物だった。

 「今月の解読書はアズラエル理事の月例議会報
  告書ですか。連中も嫌味というか、大胆とい
  うか」

暗号を全て解いても出てくる内容は何ページ目の
縦○○、横○○という羅列が続いているだけで、
これをアズラエルに尻尾を振る連中なら全員持っ
ている書類で解読すると文章が浮かび上がってく
るのだ。 
40歳を超える寸前の自分が細かい作業をするの
はそろそろ辛くなってきているが、これを他人に
任せるわけにはいかないのは明白だ。

 「何々、アズラエルの弱みを証拠と共に提出す
  れば、地位の保証と昇進も約束するか」

一ヶ月ほど前、オーブ侵攻作戦に出発する直前、
ある佐官クラスの男から接触を受けた。
自分はプラントとの早期停戦を願うグループに所
属している軍人で、是非協力を要請したいという
話だった。
こいつは多分、中立派か穏健派に所属している人
間なのだろうと思ったが、彼の事をアズラエルに
報告しようとは思わなかった。
別にそこまでする義理は無いと感じたからだ。
世間では自分はアズラエルの学生時代の友人だと
思われているが、知り合いだっただけで友人では
無い。
アズラエルは学生の頃から優秀ではあったが、傲
慢で先輩である自分を使い走りにしていた男だっ
た為、戦争が始まるまではまったくの音信不通の
状態だったのだ。
好んで会いたいような奴では無い。
ハイスクール卒業後、士官学校に入学して卒業を
果たしたが、自分は軍人としては落第寸前の男だ
った。
この歳でどうにか中佐になってクビにならないで
済んだのは、ザフト軍の出現まで世界が平和で内
戦くらいしか仕事が無かったからで、自分は将官
にもなれず退役するはずだったのだ。
数年前からプラントと理事国の間ではイザコザが
続いていたが、戦争は起こるまいと思っていた。
だが、焦った理事国の政治家は交渉を有利に進め
る為に、ある勢力を積極的に使うようになった。
その連中こそアズラエル達であり、彼の支持母体
であるブルーコスモスであった。
この団体は環境保護団体が出身母体であるが、人
は神が作りだすもので、生まれる前に手を加える
事は神への最大の冒涜と考えているカソリック教
会やバチカンの影響を受けていた為に、多数の政
治家や官僚、財界人が支持をしていたのだ。
その前には、コーディネーター犯罪などが多発し
ていたという事情も存在してはいたが。
近年、宗教の影響力は低下してきてはいるが、そ
の影響力は抜群で、ブルーコスモスに興味が全く
無かったアルスター外務次官のような政治家でも
接近を図っていたほどだったのだ。
こうして、利用するだけの存在と考えていたブル
ーコスモス強行派はアズラエル理事や一部の資本
家と結びついて軍備増強に拍車をかけ、その利権
に群がる政治家や軍人を自分の勢力に引き入れる
事に成功したのだった。
つまり、穏健派や中立派は庇を貸して母屋を取ら
れてしまったのだ。
しかも、脅しに使おうと思っていた戦力はプラン
トへの開戦に利用され、暴走したブルーコスモス
派の将兵のユニウスセブンへの核攻撃でプラント
を激怒させ、開戦以来の大敗北で表舞台にいた穏
健派と中立派の政治家は失脚する羽目になってし
まったのだった。

丁度その頃であった。
アズラエルが連絡を入れてきたのは。
彼は再会するなり自分を昔の友人であると周りに
紹介して、軍との連絡役として優遇すると言って
きたのだ。
どうも、以前からアズラエル理事に付いてきたサ
ザーランド大佐は優秀過ぎて信用できないらしい

まだ天下を統一していないのに、優秀な人材を疎
み始めているようだった。
その点、自分なら軍人としては無能なので、地位
を保つ為に、多少の無茶も厭わないだろうと考え
られたようだ。
それに、裏切ってもすぐにわかるだろうと・・・

そんな事情で自分はアズラエルの犬を演じ続けて
きた結果、その演技が功を成して将官の地位に就
いているのであった。

 「そろそろ、限界なのかな?」

今は戦時なので、自分の好かない人材でも優秀な
らば使っているが、戦争が終わったら彼らは用済
みになってしまうだろう。
実際に、最前線で消耗するような使われ方をして
いて、あきらかに彼らの勢力を削るのが目的らし
い。
自分は今のところは優遇されているが、いつ彼の
気が変わるとも限らないのだ。

 「それに、奴が勝つという100%の保障も無
  いわけだからな。保険を掛けておくに越した
  事は無いな」

アズラエルの最終目標はプラントを完全屈服させ
て、その優秀な資源供給能力と技術開発能力を全
て自分の財団の影響力に治める事にある。
地球の資源が先細りしていく今、宇宙資源開発の
独占化を図り、その資源を持って地球各国の首根
っこを抑えるつもりなのだ。
これが成功すれば、新しい地球圏の実質的な指導
者が誕生するのだろうが・・・。

 「上手くいけばそのままおべっかを使って甘い
  汁を吸うまでさ。失敗したら、奴の罪状を告
  発して生き残りを図るのみ。俺自身の細かい
  罪状はラミアスに押し付ければいいからな。
  いい女だが、別に俺の女というわけでも無い
  し。さて、あの女の昇進を申請しておくか。
  最年少大佐の誕生だ。世間はアズラエルに女
  の武器を使って近づいたと勝手に解釈してく
  れるだろうし、大佐ぐらいにはなっていない
  と罪も擦り付けにくいからな」

そこまで考えたところで、出発準備完了の報告が
入ったので、出発の命令を出して自分は居眠りを
始める。
自分はどうせ無能な指揮官なのだ。
下手に優秀ぶりを発揮するとアズラエルに睨まれ
るし、そんなものは発揮出来ない。
戦局はまだ最終局面は迎えていないのだ。
無理をする事もあるまい。
こうして、パールハーバーを出発したドミニオン
はカルフォルニアに到着して、そのまま宇宙へと
上がっていったのだった。


(カザマ隊帰国数日前、プラント本国の某一軒家
 の近所)

アメノミハシラ防衛戦、オーブ防衛戦と戦い続け
たクルーゼ司令は軍本部で報告をした後、自宅に
帰る途中に一軒のコンビニに寄った。

 「さて、ガムでも買って帰るかな」

結婚前は日常の生活用品に全く興味が無く、食事
すら適当にすまして生きてきた自分だったが、メ
ンデル崩壊後に自分を頼ってきた妻と生活をする
ようになってからは、彼女の影響を受ける事が多
くなってきた。

 「ラウは早く歳を取るんだから、ガムを噛みな
  さい。脳が活性化されるし、あごの衰えを防
  げるわよ」

医者である彼女は自分に薬を服用させて、定期的
にテロメアを修復する酵素を注射するのだが、完
全では無いので日々の努力を怠るなと色々な健康
法を試すのだ。
家には黒酢やらクロレラやら、食物なのか薬なの
かよくわからない物が多数置いてあり、帰る度に
実験させられている。

 「普通のクールミント味でいいかな?新発売の
  奴は冒険になってしまうからな」

コンビニの中では数人の客が商品を選んでいて、
1人だけいる店員は入荷した商品を一生懸命に出
していた。

 「店員が1人で品出しに夢中か。レジは大丈夫
  なのか?」

クルーゼが無駄な心配をしている。
これも、嫁さんの影響らしいが。
だが、その心配は無用だった。
彼は客がレジに向かうと、先に気が付いてレジに
走っていくのだ。
そして、レジが終わると品出しに戻り、また客が
レジに向かおうとすると、先にキャッチして走っ
て行く。
彼は店内の客の動きを全て把握しているようだ。

 「おっ、彼は空間認識能力者なのか?」

連合、オーブ、プラントが懸命に探しても数人し
か見つけられなかった空間認識能力者が近所のコ
ンビニの店員であった事に衝撃を受けてしまう。

 「一応、スカウトすべきだな」

プラントではまだ徴兵制が敷かれていないので、
あくまでも勧誘しか出来ないがそれは仕方が無い
事だ。

 「どうだね。軍に志願してみないかね」

クルーゼはガムを会計して貰いながら、事情を説
明して軍に志願するように促した。

 「すいません。私はここの経営者なので軍に志
  願すると、お店を閉めなければならないんで
  す。このお店は借金をして開店したので軍へ
  の志願は不可能です」

 「君が経営者なのか?若いな。だが、以前は爺
  さんが経営していたような・・・」

 「権利を譲って貰ったんですよ。それに、フラ
  ンチャイズ先も変えていますし」

確かに、看板には「セブ○イレブ○と書かれてい
た。

 「日本とアジア地域で最大のコンビニチェーン
  です。プラントと同盟国になった影響で出店
  が決まりましてね。オーナを募集していたの
  で応募したら受かりまして半月前にオープン
  したんです」

 「そうか、それでは無理強い出来ないな。中々
  良い店だし、カザマ君が大喜びしそうだな。
  今度教えてやるか」

 「日本出身の方なら大喜びですよ。夏が終わっ
  たら(肉まん)と(おでん)も始めますので
  よろしくおねがいします」

 「伝えておこう」

クルーゼは追加でフラッペを頼んで、それを食べ
ながら帰宅した。
多分、ミサオは通っているだろうし、秋からの(
おでん)は楽しみにしているだろう。
そのお店を閉店させる原因を作ったのが自分だと
バレたら更に小遣いが削られる可能性が高い。

 「どうせ、今から訓練しても役には立つまい」

そう自分に言い聞かせて帰宅した。

 「しかし、コートニー・ヒエロニムスか変わっ
  た名前の男だったな」

 「誰が変わった名前なの?」

玄関で嫁さんが出迎えてくれる。

 「近所に新しいコンビニが出来ていたではない
  か。そこのオーナーの事だ」

 「ああ、彼ね。早く(おでん)始めないかしら
  」

長年戦場で培った勘が冴え渡ったおかげで、最悪
の事態は防げたようだ。

 「昔、日本に住んでいた時にあそこの(おでん
  )が大好きでね。まさか、プラントで食べら
  れるとは思わなかったわ」

彼の情報は絶対にザフトには報告できない。

 「ラウ、お帰りなさい。オーブは楽しかった?
  」 

戦争をしていたのだから楽しいもクソも無いのだ
が、彼女の聞き方はいつもこうなので、クルーゼ
は気にも留めていないようだ。

 「1日しか休暇が取れなくてな。お土産を選ん
  で終わりだ」

リビングでお茶を飲みながら、荷物の中からお土
産を取り出す。

 「カグヤマスドライバー饅頭・・・」

ディアッカを付き合わせただけあって、綺麗な置
物や免税の化粧品などが大半であったが、最後の
一品が奇妙な品物だったのだ。

 「日本国内ならわかるんだけど、オーブで饅頭
  ?」

 「カザマ君も首をひねっていたが、結構人気商
  品だったぞ」

 「饅頭が珍しいからでしょ」

 「私は好きだから買ったのだ」

 「私も好きだけどね。しかし、奮発したのね。
  資金は例の臨時収入から出ているの?」

 「なっ、何故それを?」

絶対に隠さなければいけない重要秘密がすでにバ
レている事に衝撃を受ける。

 「タリアから緊急連絡が入ってきてね」

しまった!2人は親友同士。
その線からこうも早くバレるとは・・・。

 「いや、これは命を賭けて稼いだもので・・・
  」

 「私も命を掛けて子供を生むのよね。お金も色
  々かかるし。だから、素直に8割出しなさい
  」

 「6割にならないかね?」

 「7割よ。それと、下げた小遣いを元に戻すわ
  」

医者の癖に交渉上手な嫁に半ば感心しながら、条
件を飲んでしまう。
以前の自分なら考えられない事なのだが、この生
活も悪くないと考えている事も確なのだ。

 「さて、夕食にするからお風呂に入ってきなさ
  いよ。それと、明日は休みなんでしょ。買物
  に出かけるから車を出してね」

かつて、世界の滅亡を考えていた男は嫁さんの尻
に敷かれて逞しく生きていたのだった。

 「そういえば、ヒビキ博士の息子に会った感想
  を話さなかったわね。気にならなかったのか
  しら?」


 


 「キラ・ヒビキか。奴は確実にカザマ君の妹の
  尻に敷かれるだろう。この私を超えるほどに
  。彼の不幸はすでに始まっているのだ」

湯船の中のクルーゼのつぶやきは誰にも聞こえな
かった。

  


(数日後、プラント本国軍本部内)

オーブを出発してプラント本国に到着した俺達は
軍本部に出頭して、人事部長のハゲ頭を眺めてい
た。

 「部長殿、お元気そうでなによりです」

 「相変わらず元気そうだな。カザマ君」

 「久しぶりの本国にウキウキしていますよ」

 「では、とっとと終わらせるか。カザマ君は最
  終決戦時には、クルーゼ司令が率いる左翼艦
  隊に所属してもらう。この艦隊は同盟国艦隊
  が多数加わるので、彼らと共同作戦を多数経
  験している君に白羽の矢が立ったのだ」

 「同盟軍ですか?」

 「日本・台湾・アフリカ共同体・太洋州連合・
  赤道連合も艦隊とモビルスーツを出すのだ。 
  オーブ軍が傭兵扱いなのはもう知っているな
  ?」

 「アスハ隊長ですか?誰が決めたのか知りませ
  んが、無茶をしますね」 

 「ザラ国防委員長の決定だ」

 「では、逆らえませんね」

 「わかってきたじゃないか」

 「編成はそのままですか?」

 「残念だが違う。他の辞令を伝える。アスラン
  ・ザラをザラ隊隊長に任命する。戦力はエタ
  ーナル級二番艦(フューチャー)を旗艦とし
  て、ローラシア級巡洋艦二艦を指揮下に置く
  ものとする。副隊長としてニコル・アマルフ
  ィーも着任する事」

 「私が隊長ですか?」

 「僕が副隊長・・・」

アスランとニコルは驚きを隠せないようだ。

 「まだ続きがある。次にイザーク・ジュールを
  ジュール隊隊長に任命する。戦力はエターナ
  ル級三番艦(ホープ)を旗艦としてローラシ
  ア級巡洋艦二隻を同じく指揮下に置くものと
  する。副隊長としてシホ・ハーネンフースも
  着任する事」

 「俺が遂に隊長に・・・。やったー!」

イザークが1人で大喜びしているので、シホに監
視を頼んで置く事にする。 

 「暴走させないようにくれぐれも頼む」

 「任せてください。カザマ隊長」

俺の手綱を上手く握っていたシホなら、安心でき
るというものだ。
カザマ隊メンバーの伝統は女性の尻に敷かれる事
なのだ。

 「うちの隊はごっそりとパイロットが抜けてし
  まいますね」

正式なパイロットが1人もいなくなってしまった

 「君の補佐はレンテン・コーウェル君に任せる
  し、パイロットの補充もするから安心したま
  え」

オーブでストライクを操り、16機の敵機を落と
した赤服を着る同期の男だ。
彼なら安心してモビルスーツ隊を任せられる。

 「最後に、君の隊のアーサー・トライン副隊長
  なんだが、ザラ隊の旗艦(フューチャー)の
  艦長に転任させるから副隊長はタリア艦長に
  兼任させてくれ」

 「特に問題はありません」

本当に問題が無いからな・・・。

 「では、これで人事関係は終了だ。何か質問は
  ?」

 「あの、モビルスーツなんですが、新型機を受
  領できるとか。というか、受領できないと乗
  る機体がありません」

アークエンジェルには、センプウが6機と予備機
のジンカスタムしか無いからだ。

 「それなんだが、軍事工廠に直接行って受領し
  てくれないかな」

 「何で、そんな面倒くさい事を?」

 「実は、最終量産をかけたセンプウは全部行き
  先が決まっていて、君達が乗る機体は工廠内
  の試作機しか残っていないのだよ。これから
  の生産機は本土防衛用で回せないし、君達な
  ら操作が複雑な試作機でも乗りこなせるだろ
  うとの上層部の判断でね。そんなわけだから
  よろしくたのむよ」  

ジンプウの悪夢が蘇ってくるが、モビルスーツが
無いのでは仕方が無い。

 「わかりましたよ。行けばいいんでしょ」

 「頑張ってくれたまえ」


それから俺達は軍事工廠に直接行く事にした。
受け付けで用件を伝えると、中から最高責任者の
アマルフィー技術委員長が出迎えてくれた。

 「カザマ隊長ですね。息子がいつもお世話にな
  っています」

 「いえ、たいした事はしていませんから」

評議会議員に丁寧に挨拶をされて少し恐縮してし
まう。
どうも、俺の庶民癖はなかなか抜けないようだ。
肝心のニコルは公私混同を避ける為に、静かにし
ていた。
どうせ、今夜には家に帰れるのだし。

 「早速ですが、新型機を受領しに来ました」

 「こちらへどうぞ」

俺達は奥のモビルスーツ格納庫に通された。

 「この中から選んでください。既に、クルーゼ
  司令とラスティー君、ディアッカ君は選び終
  わっています」

 「クルーゼ司令がモビルスーツを選んでいたん
  ですか?」

普通、艦隊の司令官はモビルスーツで出撃しない
し、モビルスーツを新調しないものだ。

 「実は特殊機が一機余っていたので、押し付け
  たというのが真相なんです」

そんな、火に油を注ぐような事を・・・。

 「特殊機ですか?」

 「プロヴィデンスの2号機を予備パーツで製作
  していまして、この機体を使えるパイロット
  が限られているのは、みなさんご存知でしょ
  う?」

 「でも、二機作る意味があるのですか?」

 「実は、核動力機の生産を再開したのです」

 「えっ、どうしてですか?」

戦場で鹵獲されたら、プラントが再び核で攻撃
されるかもしれないのに。

 「実は、ユーラシア連合と大西洋連邦でNジ
  ャマーキャンセラーの試作品が完成してい
  て、推定で二〜四機のモビルスーツで実験
  中との情報が入ってきたのです」

それが事実だとしたら大変な事だ。

 「ユーラシア連合と大西洋連邦両方ですか・
  ・・。プラントへの核攻撃の危険性が増し
  てきましたね」 

後ろで聞いているアスラン達の表情は真剣その
ものだ。

 「多分、それは無いでしょう」

だが、アマルフィー委員長は確信を持っている
らしく、きっぱりと否定した。

 「どうしてですか?」

 「それは、プラントには自分達より高性能な
  Nジャマーキャンセラーが存在する事を知
  っている上に、我々が同盟国からウランを
  輸入して核兵器を生産・配備している事を
  知っているからです」

プラント上層部は再度の核攻撃を防ぐ為に、核
軍備を進めたらしい。
もし、核攻撃をすれば報復されるのは必然なの
で、この手は非常に有効だ。

 「それに、アズラエル理事はプラントの生産
  力が欲しいのであって、核で廃墟にしてし
  まったら大損してしまいますから。多分、
  ザフト軍を壊滅させてから脅しに使う程度
  だと思います。核の他にも毒ガスや細菌兵
  器も準備されているとの報告もありますが
  、量が少ないらしいので」

確かに、ザフト軍を壊滅させてから城下の誓い
をさせれば済む問題なのだ。
それから、全コーディネーターをプラントに閉
じ込めて生産に従事させて生産物を独占すれば
、アズラエル財団の利益は莫大なものになるだ
ろう。
コーディネーターは殺さずに隔離して、生きた
産業ロボットとして使う。
どうせ、出生率が低いからその内に滅んでいく
れるだろうという考えのようだ。

 「ユダヤ人のように隔離されるのですか。俺
  達は」

 「その可能性が大です。そんなわけで、彼ら
  は最終決戦時に核動力機を20〜30機投
  入してくると思われます。新型機は少数で
  ほとんどが既存の機体に核動力を装備した
  だけのものでしょうが、パワー、稼働時間
  が大幅に改善されるので十分脅威になりま
  す」

 「それで、対抗策としての核動力機ですか」

 「ええ、装備できる機体には全て装備してみ
  ました。まず、クルーゼ司令の機体はプロ
  ヴィデンス2号機です。一号機はドラグー
  ンシステムを外して汎用機に戻して、一般
  パイロットに渡してしまいました。2号機
  の大きな変更点は核動力に戻した事と、シ
  ールドを装備させていて裏に予備のドラグ
  ーンを8機装備した事くらいですね」

クルーゼ司令が長時間ドラグーンシステムで敵
をシバキ倒す。
連合の将兵が憐れに思えてきた。
多分、今度こそフラガ少佐もお陀仏だろう。

 「マッケンジー隊長にはドレッドノートエク
  スペディションを支給しました。この機体
  もドレッドノートの予備部品で組み立てた
  2号機だったのですが、次期量産機である
  (ザク)の武装テスト用に改良された機体
  でかなりの高性能機です。主武装は両肩の
  ビームガトリングガン砲と大型ビームアッ
  クスです。その他に、展開が自由に出来る
  光波シールドと予備の小型ビームライフル
  と右腕にアンチビームコーティングをした
  ワイヤークローが2本装備されています。
  このワイヤーで敵を絡め取ってからガトリ
  ング砲かアックスで止めを刺すというのが
  、この機体のコンセプトです」 

ラスティーの機体は近接戦重視か?

 「ディアッカ君の機体はフリーダム兇箸い
  通称が与えられている機体で、本体はフリ
  ーダムと変わりありませんが、バスターの
  装備を参考にして大型ビームライフルと大
  型ビーム散弾銃を装備しています。更に、
  この2本のライフルを接続すると、超大型
  のバスターライフルに変形して、戦艦クラ
  スの艦艇にも大ダメージを与えられます」

ディアッカは遠距離戦用の機体か。

 「それで、残りの機体はこれだけですので、
  みなさんで相談して決めて下さい」

丁寧な口調のニコルの親父さんに恐縮しながら
、搭乗するモビルスーツを相談して決める。
正直なところあまり選択肢もないので、10分
ほどで決まってしまったのが残念だったが。

 「じゃあ、恨みっこ無しだからな」

 「見かけだけで決めるなんて無謀ですよね」

 「仕方あるまい。戦士は直感を大切にするも
  のなのだ」

ニコルは多少不安なようだが、俺はそれを一笑
にふした。
ぐだぐだ選んでも、そんなに変わらない気がし
たからだ。

順に俺達が選んだモビルスーツを紹介すると、
アスランは「ジャッジメント」というジャステ
ィスの後継機にあたるを機体を選んだ。
色は赤のままで、固定武装は腹部の大型のスキ
ュラと背中に装備されている陽電子・ビームリ
フレクタービットである。
この装置はドラグーンと外見が似ていて、遠隔
操作で好きな方向に四基で四角形を作ると、強
力な反射フィールドが作られる仕組みになって
いる。
更に、このビットは遠くに移動させる必要が無
いので、空間認識能力が低くても使用可能で、
アスランにでも十分に使えるとの話だった。
この装置に攻撃力は無いが、防御力は絶大なも
のであるらしく、フィールド鏡面の角度を調整
する事により、ビームなどを他所の方向に弾く
ので、多数の敵に囲まれない限りこの機体の防
御力は最強の部類に入るだろう。
その他の装備はビームライフルとビームサーベ
ルとごく普通だが、シールドの裏に8本のビー
ムナイフが装備されていた。
このナイフはブーメランのように戻って来ない
が、スピードと貫通力が増していて、敵に防御
されたり回避されたりする可能性が少なくなる
そうだ。

次に、ニコルの機体は「リジェネレイト」とい
う名前の機体でイージスの後継機に当たる機体
のようだ。
色は紫色でMAに変形するところや大型のスキ
ュラが装備されているところまでそっくりであ
った。
武装はビームサーベルが4本とビームライフル
と光波シールドで、整備や修理に手間がかかる
武装パックの切り替え装置を取り外して汎用機
に改造した結果、イージスと全く変わり映えの
無い機体になってしまったらしい。
ニコルは前に使っていたイージスにそっくりな
ので、楽だと喜んでいたが。
どうやら、先ほどの不安は消し飛んでしまった
ようだ。

イザークの選んだ機体はかなりの変り種だ。
この機体の名前は「リベレーション」でオーブ
や日本で開発されている可変型モビルスーツに
対抗して開発された機体である。
最大の特徴は航空機体型に変形できる事で、本
来重力圏での使用が前提の機体なのだが、宇宙
空間でも高性能を発揮したところから、核動力
が搭載されたものであった。
武装は背中の大型ビーム砲が2門とビームライ
フルとビームサーベルで、シールドは航空機体
型時にバランスが悪くなるので自由に展開出来
る光波シールドが両腕に装備されている。
航空機に変形すると、背中のビーム砲が下にな
り、斜めに動かせて斜銃のようになるので、ま
っすぐ飛行しながら下にいる敵が攻撃可能にな
るのである。 

 「ニコルとイザークで艦船の攻撃を専門にや
  らせるかな」

シホは普通のフリーダムを選んでいた。
この機体はフリーダム後期量産機が正式な名称
で、前期のフリーダムより整備性や部品の互換
性が高い機体だったのだが、核動力を再び搭載
したのでそのメリットが無くなってしまったら
しい。

 「私は新型機は苦手なんですよ」

以前、新型機のテストパイロットをしていたと
は思えないようなセリフを吐くシホであった。
実は、このフリーダムはもう一機あって、この
機体はクルーゼ司令の推薦により、オーブ軍の
傭兵部隊に譲渡されてキラが使う事になったよ
うだ。
ちなみに、前に使っていた通常動力のフリーダ
ムはザフトに返還されて我が軍のエースパイロ
ットが使う事になったらしい。

 「さて、最後は俺のモビルスーツか」

 「でも、ある意味凄い機体ですよね」

 「開発者の趣味が入ってますよ」

 「結構カッコいいかも」

ニコル、アスラン、シホが口々に感想を述べる
この機体は誰が見てもジンにしか見えなかった

正式名称は「ジン掘廚燃貌偉賄觝椶覗甲はパ
ナマでサンプルを採取したトランスフェイズシ
フト装甲を使用している。
はっきり言うと、見た目だけジンで中身は全然
別物だ。
武装はビームライフルとサーベル2本で普通だ
が、後は頭のアンテナ部分がビームブーメラン
だったり、背中にミサイルパックが装備されて
いて、これも新型量産機である(ザク)の武装
テストを兼ねているらしい。
そして、シールドの裏に旧ドイツ軍が使ってい
たような柄の付いた手榴弾が6個装備されてい
た。

 「これ、何です?」

 「高熱手榴弾です。一定範囲内に数万度の熱
  を放射して、モビルスーツや艦船の探知機
  器をお釈迦にするもの為のものです」

 「使い方が難しいですね」

 「頑張って訓練してくださいね」

アマルフィー委員長に励まされてしまった。


モビルスーツの搬入は最終調整や予備パーツの
準備などで3日ほどかかるらしいので、それを
お願いしてから一旦軍本部に戻る事にする。
建物内にカザマ隊、ザラ隊、ジュール隊の臨時
司令室が作られたようなので顔を出す事にした
のだ。

 「仲良く並んでいますね。しかも隣りがラス
  ティー隊司令室ですか」

 「ニコル、更に隣りはクルーゼ隊司令室とア
  スハ隊司令室だってさ」

 「適当に押し込まれたんですね。私達」

イザークとシホの話している事は多分事実なの
で、辛いものがある。
だが、クルーゼ司令の司令室がどうしてこんな
ところにあるのだろう?

 「とにかく、クルーゼ司令に挨拶行こう」

クルーゼ隊司令室のドアをノックしようとする
と、中から話し声が聞こえてきた。
耳を澄ますと、あのアデス艦長の声とオキタ艦
長の声のようだ。

 「あの、クルーゼ司令。絶対にモビルスーツ
  での出撃は無しですからね」

 「アデス艦長よ私を困らせないでくれ。私は
  既に高性能モビルスーツを受領してしまっ
  たのだ。あれを遊ばせておく余裕はザフト
  には無いし、ムウが私を呼んでいる。それ
  に、オキタ艦長が副司令職を受けてくれた
  今、私は出撃しなければいけないのだ」

まともな理由は最初の1つのみだ・・・。

 「アデス艦長、いい加減あきらめろよ。俺が
  最初で最後の艦隊指揮を執ってやるからさ
  」

クルーゼ司令はどうやったのかは知らないが、
オキタ艦長を完全な副司令職に引き込む事に成
功したようである。

 「あなたは左翼艦隊の司令官なのですよ。絶
  対に出撃は不可です」

 「どうせ、私が出る事は全員が織り込み済み
  だ」

俺もそう思う。

 「それが現実だろうな」

 「さすがは、オキタ艦長。よくわかっている
  」

 「伊達に何年もザフトの釜の飯を食って生き
  ていないさ」

 「それに、プロヴィデンスは核動力機でエタ
  ーナル級以外での運用が極めて困難です」

 「それを忘れていたな」

 「でしょう」

 「では、旗艦を移動させよう」

やった!俺は離れられる。
アデス艦長に希望が湧いてきたのだが。

 「旗艦をエターナルに戻すか。艦長も交代だ
  な。オキタ艦長、また大好きなエターナル
  だぞ」

 「気がきくなクルーゼ司令は。アデス艦長も
  最新鋭艦の運用ができて嬉しいだろ?」

自分は2人から離れられない運命らしい。

 「また、胃薬を買ってこよう・・・」

アデス艦長の苦難の日々は再び始まったのだっ
た。


 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「先にアスハ隊長のところへ行きませんか?
  」

シホの提案に全員が頷いた。


 「カガリちゃん、元気してる?」

俺がアスハ隊司令室に入室すると、室内は緊迫
した空気に包まれていた。
マユラ、アサギ、ハワード1尉、ホー1尉がに
らみ合っていたのだ。

 「どうしたの4人共」

俺の疑問にキラが答えてくれた。

 「実は、軍服で揉めているんです」

 「ザフトの軍服が嫌なの?」

 「逆なんですよ。実はザフトの担当者の方が
  気を使ってくれて、赤服を三着支給してく
  れるという話になったのですが・・・」

オーブ軍にもいるエースや成績優秀者に気を使
ったようだな。

 「誰が着るかで揉めてるの?」

 「全員、せっかく着るなら赤服がいいと・・
  ・」 

 「増やして貰えないの?」

 「他の隊とのバランスが崩れてしまうからと
  、やんわりと断られてしまいました」

 「とにかく、残り二着を誰が着るかだ。これ
  は誰にも譲れないからな」

 「何で、二着なんだよ?ホー1尉」

 「キラは決定している。これに異論を挟む奴
  はいない」

キラは圧倒的な1位だからな。
それに、キラがアカデミーに通っていたら、確
実に赤服を着て卒業しただろうし。

 「カガリちゃんが決めなよ。隊長なんだから
  」

 「無茶言うなよ。お前が決めてくれよ。いっ
  そ部外者だから、角も立たないだろう」

 「つい数日前まで関係ありまくりだったでし
  ょうが。絶対に角が立つ」

カガリは意地でも俺に押し付けるつもりだ。

 「とにかく頼むよ」

何時もの強気はどこかに行ってしまったらしい
。 

 「よし、決めた。マユラとアサギに決定」

 「どうしてなんだよ。カザマ隊長」

 「簡単な理由だ。赤服はエリートの証。すぐ
  に出世するから、白い指揮官服に変わって
  しまって着ている時期が短いんだ。ホー1
  尉やハワード1尉の歳で赤服を着ている軍
  人は出世の遅れたわけありの連中が多い。
  そんなのは嫌だろ」

実はそんな事はないのだが、これが一番納得さ
せ易いし、女性の赤服が萌えるという個人的な
事情も入っている。

 「そうだったのか。では、俺は白服を着るぞ
  !」

 「いや、君わかってないから・・・」

やはり、ホー1尉は相変わらずだった。


結局、今日はこのまま解散になった。
クルーゼ司令に挨拶に行ったのだが、特に変わ
った点も無く、アデス艦長の表情が何かを諦め
ているような顔をしているだけだった。
せっかく離れられたのに、旗艦の艦長に指名さ
れた不幸を呪っているのだろうか? 
そして、肝心の自分達の隊なのだが、まだ部下
が引継ぎの途中で、1人も赴任してきていなか
ったのだ。
特に、俺の隊は副隊長のコーウェルすらまだ赴
任してきておらず、部屋は無人であった。

 「無理に隊を増やし過ぎるから、こういう事
  になるんだ」

既に、右翼と中央の艦隊の人事と編成は終了し
ているらしいのだが、俺達の艦隊の所属部隊の
連中はその影響で、まだ前任部隊での引き継ぎ
が完了していない者が多かったのだ。
それに、編成が終了した連中もローテーション
で月航路の輸送艦隊の破壊任務に付いて、パイ
ロットの練度を上げなければいけないので、常
にプラントにいるわけではないのだ。

 「まあ、いいや。明日にはどうにかなってい
  るだろう」

とりあえず今日は解散する。
本当は、送別会の1つでも開きたいところだが
、全員が家族と過ごす予定になっているみたい
なので邪魔をするわけにはいかない。
どうせ、司令部は隣りだし部隊も隣り同士らし
いので、別れるという実感が無いのかもしれな
い。

 「さて、官舎に帰るかな」

俺は約半年振りに官舎に戻ろうとしたのだが、
これが新たな悲劇を生む事になってしまったの
だった。


まず、第一のアクシデントは俺の官舎はアカデ
ミー近くの建物の2階の一番奥にあるのだが、
ドアの前でカードキーを通しても、カギが開か
なかった。

 「あれ?何でだ?」

何回かカードキーを通すが、カギは全く開かな
い。
不思議に思ってドアのプレートを確認すると、
何故か部屋が空き部屋になっていたのだった。

 「何故に空き部屋に?ちゃんと給料から家賃
  も引かれていたよな」

補助が入っているので小額だが、家賃は確実に
引かれていたのだ。
このままでは、荷物の所在すら不明で俺はホー
ムレスになってしまう。

 「じいさん、何で俺の部屋が空き部屋なんだ
  よ」

管理人のじいさんに苦情を言うと、じいさんの
口から意外な事実が飛び出した。

 「3日ほど前に数人の男性が荷物を運び出し
  ていきましたよ。だって、あなた引越しを
  彼らに委任したんでしょ?書類も正式なも
  のだったし、あなたの委任状もちゃんと見
  たんですから」

 「そんな話聞いて無い!俺は今日の朝、プラ
  ントに戻って来たばかりなんだ!」

 「だから、間に合わないから彼らにお願いし
  たんでしょ?彼らはそう言ってましたよ」

 「だから、俺は聞いてない!」

2人の話は全くかみ合っていなかった。
俺は全く事情をしらないし、じいさんは俺が許
可した引越しであると思っているのだ。

 「俺、泥棒の被害に遭ったのか?」

結局、俺は官舎を追い出されてしまった。
部屋に入れろと頼んだのだが、明日には新しい
人が入居してくるので、部屋の中は新住民の荷
物で一杯らしい。
多分、俺が盗む可能性も考慮していると思われ
る。

 「あーあ。どうしよう」

近所の公園で缶コーヒーを飲みながら悲観に暮
れていると、隣りのベンチから女性の歌声が聞
こえてきた。

 「あれ?ラクスの歌・・・」

その女性の声はとてもラクスに似ていた。
思わず横を見ると、黒い髪のスタイルの良い女
性が歌を口ずさんでいた。
歳はラクスと同じくらいだろうか?
胸はラクスの完封負けである事が確実であった
が。

 「歌上手いね。ラクス・クラインにそっくり
  だ」

自分の悲惨な現実を忘れるべく、話掛けてみる

 「ありがとう。でも、またオーディションに
  落ちてしまったの」

 「また?いくつも落ちているの?歌上手いじ
  ゃん」

 「私、ラクス様に声が似てるから、ラクス様
  の持ち歌を歌うんだけど、いつも落選ばか
  りで・・・」

 「そりゃ、落ちるでしょ」

 「どうして?私以上にラクス様の歌を上手く
  歌える人間はいないのに」

 「でも、本物には勝てない。オーディション
  をする人達は新しい才能を探しているので
  あって、モノマネ芸人を探しているわけで
  は無いと思うんだけど。世の中で成功して
  いる歌手達はみんな努力をして自分のスタ
  イルを見つけたんだと思うよ」

 「自分のスタイルですか?」

 「そう、俺の生まれ故郷の日本にはモノマネ
  をするタレントが多数いるけど、長く成功
  している人は常に新しいネタを仕入れたり
  して努力を続けている。君はラクス・クラ
  インのモノマネだけしか出来ないようだし
  、モノマネ芸人になるつもりも無いんでし
  ょ?」

 「私は歌手になりたいんです」

 「だったら、自分だけのスタイルを見つける
  んだね」

 「具体的にはどうすればいいのですか?最近
  、どうしたらいいのかわからなくて」

この娘もかなり切羽詰まっているようだな。

 「君、作詞・作曲出来る?楽器の演奏は?」

 「出来ません・・・」

 「出来ればね。自分で作った歌をみんなに披
  露すればいいんだけど。そうすれば、世間
  で言うところのシンガーソングライターな
  る職種の人間になれるのだけど」

 「詩なら多少は書けますが・・・」

 「じゃあ、曲が作れる人を探せばいいんだよ
  。そいつに曲を弾かせて、自分が歌えばい
  い。内容は、そうだね。ラクス・クライン
  とは大きく離れた方がいい。同じようなテ
  ンポの曲を歌うと真似してると思われてし
  まうから」

音楽の話をするなんて久しぶりだな。

 「曲を作れる人ですか」

 「売れてる人は駄目だよ。自分で才能があり
  そうな人を探してコンビを組むのが一番い
  いと思う。それで、焦らずに何年かやって
  みたら?」

彼女は考え込んでいるようだ。

 「わかりました。そうですよね。ラクス様の
  真似をしても、ラクス様を超えられないん 
  ですよね。私、パートナーを探してみます
  。ありがとうどざいました」

 「元気になってくれてなにより」

 「えーと、軍人さんのお名前は?」

荷物無しの俺は白い指揮官服を着ているのだ。
俺に残されたものは財布とアークエンジェル艦
内のわずかな私物だけだ・・・。

 「ヨシヒロ・カザマです」

 「カザマさんですね。私はミーア・キャンベ
  ルです。有名になってコンサートが開ける
  ようになったら、必ず招待しますから。楽
  しみにしていてくださいね」

 「アリーナ席で頼むね」

 「はい!」

ミーアちゃんは俺にお礼を言いながら、公園の
外に走っていった。
何かいい事をした後って気持ちがいいよな。

 「でも、泊まる場所が無い・・・。ビジネス
  ホテルにでも行くか」

俺は、再び悲観に暮れてしまっていた。
そう、俺の問題は全く解決していないのだ。


(同時刻、ラウ・ル・クルーゼ宅)

 「じゃあ、また2週間以内に来なさい。もし
  、無理なら注射器を渡すから自分で定期的
  に注射するのよ」

彼女はラウの奥さんでミサオさんという女性だ

彼女は俺の出生の秘密を知っているので、こう
して定期的に治療を施してくれるのだ。
彼女が自分で開発したテロメアの補修をしてく
れる酵素のおかげで、今までに老化の影響が出
た事は無かった。

 「今度の休みはいつなの?」

 「二週間以内にはあると思います」

 「じゃあ、その時に来なさいね」

 「ありがとうございました」

 [早く帰ってあげなさい。タリアは今日戻っ
  てきたんでしょ」

俺は、クルーゼ邸を辞してから帰宅の途につい
た。
今日は半年振りに義母が戻ってくるので、家族
全員で食事をする約束になっているのだ。
弟や妹は小さいので、義母の帰りを心待ちにし
ているだろう。
自分は兄として慕われているようだが、やはり
母親にはかなわないようだ。
弟達は朝からそわそわしていて、自分との外出
を断って家で待ち続けているのだから。

 「おかげで、楽譜屋でゆっくりできたけど、
  義母さんだけでなく俺までお休みとは。気
  を使われているのかな?」

アメノミハシラから帰還してから5日。
降下作戦に参加したパイロット達は直ぐに休暇
になったが、未熟者の自分は少しでも多く訓練
すべく、プラント近辺宙域で訓練を繰り返して
いたのだ。
さすがに、連日の訓練で疲れていたところをラ
ウに見つかってしまって、今日は休むようにと
厳命されてしまったのだが、ラウが義母さんが
帰ってくる事を知っていたのかも知れない。

 「俺の作曲した曲も悪くはないと思うのだが
  。どこかに応募でもしてみようかな?」

数ヶ月前までは既存の曲を弾いていただけなの
だが、最近では時間が空くと自分で作曲して、
こっそりと演奏していたのだ。

 「しかし、これはクラッシックとは呼べない
  代物だ。歌詞でも付ければ曲になるかもし
  れないがな」

自分で書いた楽譜と店で買った楽譜を見比べな
がら歩いていると、前から女性が走ってきて自
分と正面衝突してしまった。

 「すいません。大丈夫ですか?」

ギルの教えで、いかなる時もまず男性が謝るべ
きと教えられているので先に謝る事にする。

 「ごめんなさい。急いでいたから」

黒い髪の女性が懸命に楽譜を拾っていたのだが
、Tシャツの隙間から胸の谷間が見えて、純情
なレイには目の毒だった。

 「俺が拾いますので」

 「大丈夫よ。もうすぐ終わるから」

彼女は集めた楽譜を纏めながらそれを眺めてい
た。

 「これ、君が作曲したの?」

 「面白そうだから、コンテストにでも出して
  みようかと思って。俺はクラッシックの演
  奏会にしか出た事ないから」

 「うーん、面白そうな曲ね・・・。よし、決
  めた!これに歌詞を付けてオーディション
  に出るわ!」

 「えっ、どういう事です?」

いきなりの事で、レイにはよく理解出来なかっ
た。

 「私は歌手希望なの。それで、曲を書いてく
  れる人を探していたのよ。そして、見つけ
  たのよ!」

 「誰なんです?」

 「あなたよ、あ・な・た!」

 「何で俺なんです?これはコンテストに出す
  んですよ」

いきなり作品を寄こせといわれて、素直に渡せ
るものではない。

 「お願いよ。これでデビューできて曲が売れ
  たらちゃんと印税も払うし、一緒にデビュ
  ーしてもいいから。あなた、楽器は弾ける
  でしょ?」

 「まあ、ピアノを少々」

 「お願いします。この通り」

彼女はレイの腕にしがみついてきた。
あきらかに色仕掛けで、腕に豊かな胸の感触が
伝わってきて、レイの理性を奪っていった。

 「オーディションに受かったら許可しますか
  ら」 

 「ありがとう。で、君の名前は?」

 「レイ・デュランダルです」

彼女はレイの住所と連絡先を聞いた後、自分の
名前と連絡先のメモを渡してから、猛スピード
で去っていった。

 「さあ、良い歌詞を付けてオーディションに
  出まくるぞ!レイ!メジャーデビューよ。
  印税王よ」

彼女の最後の言葉が山彦の様に耳に残る。 

 「ミーア・キャンベル、恐るべき女だ・・・
  」


その後、自宅でその話をしたらタリア義母さん
に「レイは女性にモテルのね」と言われたが、
それは違うような気がする。
ギルからも、「そうか、レイも女性の色香に迷
う歳になったのだな」と言われてしまい、否定
しきれない自分が悲しかった。

 「俺は決して胸に誑かされたわけでは無いの
  だ!」

レイ・デュランダルの心の叫びだった。


  

  

(夕方、公園内)

 「仕方がないな。ホテルでも探すか・・・」

ミーアちゃんと別れた後、何も事態が解決して
いない俺は公園を出て、泊まる場所を探そうと
していた。

 「ちくしょう!俺の荷物を奪いやがって、絶
  対に許さないぞ。ジンで踏み潰してやる!
  」

1人で怒りながら道を歩いていると、後ろから
誰かに呼び止められた。

 「何?」

俺は不機嫌な表情を隠しもしないで返事をしな
がら振り返る。

 「まあ、ご機嫌斜めですのね」

何と、俺を呼び止めたのはプラント帰還後、先
に自宅に戻っていったラクスだった。

 「色々ありましてね」

ラクスに官舎を追い出されて、荷物を盗まれた
事情を説明する。

 「すいませんでした。連絡が行き届いていま
  せんでしたのね」

 「えっ、どういう事?」

 「とりあえず、いらしてくださいな」

俺は後ろに止めてあった車に乗ると、車は郊外
に向けて走り出した。

 「何処に向かっているの?」

 「私のお家にです」

 「えっ、何故に?」

 「お父様に会っていただきたいのですが」

 「えーーーーーっ!」

いきなり人生の大ピンチですか?

 「俺、荷物探さないと・・・」

車を降りようとしたが・・・。

 「ご安心くださいな。ヨシヒロは今日から家
  で暮らしていただく予定で、事前にお引越
  しを済ませましたの。連絡が行き届かずに
  申し訳ありません」

あれ?事件はもう解決ですか?

 「いや、ここは郊外なので、通勤に時間が掛
  かるし、車も持っていないから」

仕事だから仕方が無いよな。うん。

 「それでしたら。ほら」

既に、クライン邸の門をくぐって正面玄関に着
いていた俺達の前に最近、発売されたばかりの
新車が見えてきた。
これは、イザークがカタログを見ながら物凄く
欲しがっていた車で、俺も金があればなと思っ
ていたやつだ。
更に、色は黒だった・・・。

 「これで通勤してくださいね。軍本部まで3
  0分もかかりませんから」

確かに、幹線道路を走ればそんなに時間は掛か
らない。

 「いえ、こんな高級車タダでお借りするわけ
  には・・・」

 「遠慮しないで貰ってくれたまえ。カザマ君
  」

玄関のドアが開いて、中からシーゲル元議長が
出てきた。
そういえば、初めて直接会うんだよな。

 「始めまして。ヨシヒロ・カザマと申します
  。お嬢様とお付き合いをさせていただいて
  います」

今更隠しても仕方が無いし、シーゲル元議長も
知っているらしいので、隠し事は無しで話す事
にする。

 「君と直接話すのは初めてだな。父上とはこ
  こでお会いした事があるのだが」

 「親父とですか?」

初めて聞いた・・・。

 「以前、技術指導でプラントにいらっしゃっ
  た時に、食事を一緒にしたんだよ」

 「そうですか」

 「さあ、君も上がってくれたまえ。今日から
  はここが君の家なのだから」

えっ、シーゲル元議長の中でも決定事項?

 「あの、どうして突然こんな事に?」

屋敷に入ると、ラクスが既に夕食の準備を整え
ていたので、食堂に入りシチューをよそって貰
いながら話をする。

 「娘が焦って何かしでかしたようだな。大変
  申し訳ない」 

 「いえ、官舎に帰ったら、自分の部屋が空き
  部屋になっていて、荷物が消滅していただ
  けです・・・」

おかげで、数時間ほど近所を彷徨う事になった
が・・・。

 「だが、婿殿の引越しも済んで、全て解決し
  たわけだ。良かった。良かった」

あれ?俺が婿殿?

 「あの・・・。婿殿って・・・」

 「そう遠くない未来には結婚する2人だ。今
  から呼びなれておかないとな。私の事もお 
  義父さんと呼んでくれたまえ。実は、私は
  息子が欲しくてな。うちには娘が1人しか
  いないからな」

何かなし崩し的に色々決まっているようだが、
自分にはどうしたらいいのかがわからない。開
戦より一年半の実戦経験も全く役には立ってい
なかった。

 「では、お部屋にご案内しますね」

食事を終えた俺はラクスに俺の部屋らしきとこ
ろに案内された。

その部屋は日本的に言えば、二十畳ほどあって
貧乏性の俺には広すぎる気がした。

 「あっ、俺の荷物・・・」

部屋にはすでに俺の荷物が運び込まれていて、
全てがきちんと配置されていた。
これでは、撤収も至難の技だ。

 「プラントに戻ってきてまだ1日目。色々な
  事があり過ぎて疲れた・・・」

 「まあ、大変でしたのね」

その原因の大元であるラクスが、他人事のよう
な事を言う。
時計を見ると、まだ夜の9時なのに完全に疲れ
きっている自分がいた。

 「悪いけど、疲れたからシャワーでも浴びて
  寝たいわ」

 「そうですか。では、案内しますね」

俺はシャワーを浴びてさっさと寝る事にした。
こうなったら寝た方が勝ちだ。
シャワーを浴びて、荷物にあったTシャツと短
パンを着て隣の寝室に入る。 

 「何故にダブルベッド・・・」

気にすると負けなので、ベッドに寝転びながら
ノートパソコンを開いて今日の日記をつけた後
、提出期限がまだ迫っていない書類を書き始め
る。
こうしていれば眠気がくるだろう。

 「ヨシヒロ、入ってもいいですか?」

 「ああ、大丈夫だよ」

何と、ラクスがTシャツ一枚という大胆な格好
で入ってくる。

 「ラクス、その格好はまずいでしょ」

 「かまいませんわ。だってこの部屋は2人の
  寝室ですから」

 「えっ、そうなの?」

 「はい、そうですわ」

それは色々とまずいだろ!

 「でも、シーゲル閣下もいる事だし・・・」

お義父さんとはまだ呼べそうもないので、シー
ゲル閣下と呼ぶ事にする。
シーゲル元議長と呼ぶのも変だし。

 「お義父さんと呼んであげてくださいな」

 「いや、さすがにまだ恥ずかしいというか、
  恐れ多いというか」

 「わかりましたわ。それは明日以降という事
  で。では、寝ましょうか」

シーゲル閣下が起きているのにそんな事を堂々
と出来るわけがない。

 「それはまずいから」

 「何故ですの?」

 「シーゲル閣下がいるから!」

丁度その時、ドアをノックする音が聞こえた。
これは天の助けだ。

 「はい」

 「婿殿、私はこれからパトリックと飲みにい
  くから、遠慮しないで2人で楽しんでくれ
  。早めの孫は大歓迎だから」

 「はあ・・・」

 「それと、お義父さんと呼んでくれ」

 「はい・・・。お義父さん」

こうして、シーゲル閣下もといお義父さんは出
掛けてしまって、俺達は使用人を除けば2人っ
きりになってしまったのだった。


(同時刻、某レストラン内)

ここはプラント一の高級レストランと噂される
お店であり、ここで3人の男女が食事をしてい
た。

 「そうか、アスランが決めた人なら私に文句
  は無いな。だが、シーゲルの手前戦後まで
  秘密を保たなければな」

今日、アスランと食事をする事になっていたザ
ラ委員長が約束のレストランに向かうと、彼は
1人の女性を伴っていた。
彼女は綺麗なドレスを着ていて店内のどの女性
よりもドレス姿が板に付いていたように見える

 「あなたは、カガリ姫ではありませんか」

彼女が傭兵部隊を引き連れてプラント入りをし
ていた事は知っていたが、アスランとここまで
仲が良いとは思わなかった。
更に、アスランは自分にキッパリとこう言った
のだった。

 「俺はカガリと将来結婚するつもりです。だ
  から、ラクスとは結婚できません」

突然の告白に驚いてしまったが、本人がそこま
ではっきりと言っているので、特に反対する気
も起こらなかった。

 「お前はそのつもりでも、カガリ姫の気持ち
  はどうなのだ?」

唯一の懸案事項を口にしたが、カガリ本人がそ
のつもりだと言っているので、これで反対理由
が消滅してしまう。

 「さてと、すまんが後は二人で楽しんでくれ
  。私はシーゲルと飲みにいく約束をしてい
  るのだ」

そう言い残すと、ザラ委員長は先にお店を出て
行ってしまった。

 「なあ、アスラン。私達の事はシーゲル元議
  長には秘密なのか?」

 「ラクスとヨシさんの事が父上に秘密なよう
  にか?」

 「でも確か、シーゲル元議長は私達の事を知
  っているはずだぞ。ラクスがそう言ってい
  た」

 「知らぬは父上ばかりなりか・・・」

 「それで、あの2人は何をしているんだ?」

 「ラクスが自分の屋敷に強引に引っ越させた
  らしい」

 「カザマも可哀想に。もう、逃げられないな
  」

 「ラクスは人を自分のペースに巻き込む天災
  だからな」

 「漢字間違っているそ」

 「間違ってはいないさ。意味は完全にあっち
  だ」

 「アスランも被害者だったのか?」

 「昔は多少天然なところがあるくらいで、普
  通だったのにな」

 「カザマの冥福を祈るか」

 「ああ」

こうして、2人の夜は更けていったのだった。


翌朝、俺は早く起き出しシャワーを浴びてから
、軍服に着替えてラクスとシーゲル閣下と朝食
を取った。
昨日、適当にハンガーに掛けていた軍服は綺麗
に洗濯されて、糊付けされてアイロンが掛けら
れていた。
いったい、いつの間に・・・。
金持ち侮りがたし。
どうも、俺がこの屋敷で生活し始めた事は既に
既成事実になっているようで、使用人達や執事
が俺を若旦那様と呼ぶようになっていた。

 「では、いってきます」

俺は軍本部に出勤する為に、例の新車に乗って
出発した。
朝の早い時間に幹線道路を通ると、30分も掛
からずに軍本部に着くという話は本当だったよ
うだ。

 「おはようございます。ヨシさん新車買った
  んですか?羨ましいな」

同じく、早めに出勤してきたイザークが羨まし
そうに車を見つめている。

 「シーゲル閣下から借りたのさ」

 「えっ、シーゲル元議長からですか?」

イザークに昨日からの出来事を簡単に説明する
と、そのあまりの急展開振りに声が出ないらし
い。

 「俺、どうなるんだろうね?」

 「さあ?俺からは何とも・・・」

イザークは返答に困っているようだ。

 「今日のヨシさんは煤けて見えるな」

 「そうですね」

後から出勤してきたディアッカとニコルが俺を
見ながら、素直な感想を述べていた。


それからの俺は3日間ほど、普通のサラリーマ
ンのような生活を送っていた。
司令室に副隊長のコーウェルが着任してきたの
で、事務的な仕事をこなしながらアスラン達と
も打ち合わせを繰り返し、午後は自分達の旗艦
で資材やモビルスーツの搬入作業を見守る。
そして、夕方は普通に帰宅していた。
始めは軍人として、この生活はまずいだろうと
思ったのだが、俺の身分はザラ隊、ジュール隊
、マッケンジー隊、アスハ隊を指揮下に治めて
、その他同盟国軍艦隊との共同作戦を取るのが
任務らしいので、まだ人材が半分も集合してこ
ない上に、エターナル級二・三艦の最終偽装す
ら終わっていない状態ではどうにもならかった
のだ。

 「パイロットはまだ半分着任してこない。訓
  練をしようにもモビルスーツがほとんど無
  い。アークエンジェルとエターナルは大丈
  夫だけど、(フューチャー)と(ホープ)
  の最終艤装が終わっていない。俺、最終決
  戦欠席しようかな」

 「分艦隊の司令が弱音を吐くなよ」

副隊長のコーウェルが俺を注意する。
こいつとはミゲルやハイネほどではないが、同
期で仲が良かったのでかなり気安い口を聞く関
係だ。

 「とりあえず、着任している連中だけで訓練
  を始めないとな。俺のモビルスーツはまだ
  搬入されていないけど」

 「俺が指揮を執ろうか?」

 「俺は予備機のジンカスタムで訓練する」

アークエンジェルの事はタリアさんに一任して
いるし、アーサーさんの代わりに何故か新しい
副長が着任してきたので、タリアさんは交代で
家に帰れるらしいのだ。
多分、デュランダル委員長の差し金と思われる

 「しかし、こんな状態で間に合うのかね?」

 「それについては心配は無いようだ」

 「本当かよ」

 「敵はNジャマーキャンセラーの安定化に時
  間を取られているらしい。作動させている
  と、突然止まってしまうのだそうな。これ
  が、モビルスーツに搭載されていて戦闘中
  なら致命的な欠陥だろう?だから、完成す
  るまでは敵の出撃は無い。Nジャマーキャ
  ンセラーが完成しないと、核兵器で恐喝も
  出来ないからな 」

コーウェルは何処から聞いたのだろう?

 「俺はクルーゼ司令から聞いたのだ」

 「俺の疑問に答えてくれてありがとう」

 「ついでに、モビルスーツや艦艇も最終決戦
  に向けて最後の大増産中らしい。だから、
  もう数日待てば戦力も整うさ。そうなった
  ら、アスラン達と共同で訓練すればいい」

 「それなら安心なんだが、もうプラントの軍
  備増強も限界点に達しただろう。終戦後、
  経済が破綻なんて事は無いのかね?」

 「お前、一端の政治家のような心配をするん
  だな。それについては特別予算から出てい
  るみたいだな」

 「特別予算?」

 「開戦当初にマッケンジー委員長が激怒した
  件があってな」

あの人はよく激怒するよな。

 「何だ?ゴンドワナの量産計画でも見つかっ
  たのか?」

 「ジェネシスという巨大なガンマ線ビーム砲
  の建造計画があったんだが、そんなものを
  地球に照射したら同盟国まで滅んでしまう
  からな。当時、外交委員長だったカナーバ
  議長まで激怒してしまって議会が揉めたん
  だよ。その後、軍部が信用できないからっ
  て調査したら、メサイヤ要塞なんてものの
  建造費用が計上されていて、更に混乱に拍
  車をかけたってわけだ」

 「それで、その予算が分捕られていて今使わ
  れていると」

 「そういう事」

 「お前、詳しいな」

 「俺は財務官僚志望なの」

金の流れには詳しいわけか。


午後から腕が鈍らないように俺たちは交替でモ
ビルスーツに乗って訓練を繰り返した。
俺はジンカスタムに乗ってそれを見守っていた
が、突然無線から聞きなれた声が入ってきた。

 「カザマ隊長、尋常に勝負だ!」

 「宇宙はおれのホームだ。今日こそ引導を渡
  してやる」

ホー1尉のレイダーとガイのブルーフレームが
いきなり乱入してきて、俺に勝負を挑んできた

 「ふっ、三つ巴か。機体にハンデがあるが、
  腕の差から言って丁度いいくらいだ。コー
  ウェル、後は頼むぞ!」

 「ほどほどにな」

オーブでの俺とガイのガチンコ対決を知ってい
るコーウェルは特に何も言ってこなかったので
、俺は安心して勝負を始めた。

 「ガイ、ヘリオポリス近くでの勝負は覚えて
  いるか?俺が完勝したあの日の事だ」

 「ふっ、あれは逃げおおせた俺の判定勝ちだ
  」

 「屁理屈を!ホー1尉、宇宙空間での戦闘経
  験はあるのか?」

 「無い!だが、格闘王を目指す俺に不可能は
  無い」

他のパイロット達が訓練している隣で俺たち3
人は激闘を繰り返していたが、更に誰かが乱入
してきた。

 「楽しそうな事をしているな。私も加えて欲
  しいものだな」

何と、クルーゼ司令がセンプウで乱入してきた
のだ。

 「プロヴィデンスはまだ調整が終わらないら 
  しくて使用出来ないが、センプウでも十分
  に勝機はあるだろう」

 「クルーゼ教官、手加減はしませんよ」

 「ふっ、望むどころだ」

 「クルーゼか。面白い俺の実力を見せてやる
  」

 「格闘王に倒せない敵など存在しないのだ」

結局、夕方になるま四つ巴になった激闘は続い
ていくのだった。


 
 「相変わらずのバカっぷりだな。ホー1尉は
  。ガイも私の護衛任務を忘れているっぽい
  し」

 「カガリ、放っておけ」

 「噂通りのバカ達だな・・・」

カガリ、キサカ、トダカは半分あきれながら会
話していた。


 「ラスティー、止めにいけよ」

 「オキタ副司令がやってくださいよ。勝手に
  旗艦をエターナルに戻してしまって。やっ
  と平穏な日々が来ると思っていたのに・・
  ・」

 「あーあ、ヴェサリウスに戻りたい」

 「アデス艦長は現実逃避しているな。じゃあ
  、俺はモビルスーツ隊の訓練で忙しいから
  」

 「ディアッカの奴。逃げやがったな!」

エターナルでもあきらめの空気が広がっていた


 「ヨシさん、ストレス溜まっているのかな?
  」

 「帰ったら家が無くなっていて、クライン邸
  に引きずり込まれたって話ですからね。僕
  なら勘弁して欲しいですね」

2人はイザークから真実を聞かされていたのだ

 「カガリが多少男っぽいけど、ああいう事は
  しないからな」

 「というか、普通の女性はああいう事はしま
  せん」

未だ、最終調整中の「フューチャー」艦内で2
人の会話は続いていた。


 「ヨシさん、クルーゼ司令恐るべし」

 「共通点は女性に全く頭が上がらない点です
  ね。イザークも気を付けないと」

 「シホこそ気をつけろ。ラスティーが哀れだ
  から」

 「一緒にしないでください」

同じく最終調整中の「ホープ」でも同じような
会話がされていた。


こうして、両軍は最後の決戦準備に余念がなか
った。
果たして、先端が開かれるのはいつなのか?
参加戦力は?
勝敗は?
それは誰にもわからなかった。


        あとがき

新型モビルスーツの設定は適当です。
本編と違うって突っ込まないでください。
違ってて当然ですから。
主人公のモビルスーツ「ジン掘廚錬擅擇
「ザク掘廚モデルです。
武装は違いますけど。
オリジナル武器の手榴弾はドラグナーから
の出典です。
では、次回の更新をお楽しみに。

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