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「これが私の生きる道!オーブ後始末編2(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-15 00:37/2006-03-18 12:52)
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(オロファト臨時代表府内、オーブ軍臨時出張所)

(シン・アスカサイド)

オノゴロ島で大きな戦闘が終了してから、2日が
経過した。
昨日付けでオーブ軍を除隊した俺は、残りの手続
きと、勲章を貰う為に、軍の臨時出張所に出頭し
ていた。
プラントへ上がるので、早く除隊させて欲しいと
いうお願いは直ぐに叶えてくれたのだが、細かい
手続きが残っていたので、今日の出頭になったの
だ。
そして、先に勲章を貰う事になっていた。
本当は、状況が落ち着いてから授与式が行われる
のだが、明日にはプラントへ上がってしまう俺は
出席できないので、今日貰う事になっている。

 「シン・アスカ予備役三尉、ご苦労だったな。
  公式撃墜数7機でエース入りが決定した。報
  奨金も出るから、次の進路の為に使ってくれ
  」

軍務局の三佐が勲章を胸に付けてくれる。
俺は既に除隊していたが、今日の為に軍服を着用
していた。 

 「しかし、惜しいな。プラントへ上がってしま
  うのか。オーブ軍の士官学校は15歳になら
  ないと入学出来ないからな。カガリ少将やト
  ダカ一佐が嘆願書を出していたのだが、認め
  られなかったようだ」

カガリは自分の将来の側近候補として、シンを手
元に置いておきたかったようだ。
トダカ一佐も、タケミカヅチ艦橋からシンの訓練
の様子と実戦での奮闘ぶりを見て、将来のモビル
スーツ部隊指揮官候補として、正式に士官学校に
入学させたかったらしい。

 「すいません。俺、いや私はプラントのアカデ
  ミー入学を既に決めていましたので、進路の
  変更はありません」

 「そうか。では、止めるような野暮な真似はよ
  そう。プラントでも頑張ってくれよ。でも、
  俺より先に偉くなるなよ」

軍務局の三佐がジョーク交じりに励ましの言葉を
かける。

 「アカデミーでも頑張ります」

 「頑張ってくれよ。残りの志願兵達は全員士官
  学校の短期カリキュラムを受けるそうだ」

パイロットとして戦った志願兵12名の内、生き
残ったのはシンを含めて4名のみだった。
やはり、一ヶ月半の訓練ではどうしようも無かっ
たようだ。
そして、生き残った3人は正式に士官になる為に
、追加で教育を受けるらしい。

 「あの激戦を生き残ったのだ。良い士官になっ
  てくれるさ。勿論、君もそうなのだろうがな
  」

その後、10分ほど話をしてから、シンは用事が
ある旨を伝えて退室した。
ステラとマユと待ち合わせをしていたのだ。
待ち合わせに行く道すがら、シンは気になってい
るものを見る事にした。

 「さて、給料と報奨金はいくらなんだろう?」

給料明細を覗いて見ると、その金額はよくニュー
スでやっている、新卒社員の初任給くらいの金額
が書かれていた。

 「意外と多いんだな。軍人は薄給だって聞いて
  たんだけど」

一応、士官待遇で年金も健康保険料も引かれてい
ないシンの給料はそこそこ良かったのだ。

 「一ヶ月半分で3200アースダラーか。小金
  持ちになった気分だな」

日頃は、ゲームだ漫画だ買い食いだと、お小遣い
が短期間で消滅する生活を送っていたので、この
金額はシンにとっては大金だったのだ。

 「そして、問題はこれだな」

もう一枚の特別報奨金の明細を覗いて見ると。

 「14000アースダラー!大金じゃん。オー
  ブって太っ腹?」

実は、太っ腹でもなんでもない。
オーブ軍は不足していたパイロットを集める為に
、大々的に傭兵を募集して航空機・艦船・モビル
スーツなどを一機倒すといくらという風に、撃墜
手当てを出していたのだ。
連合軍の圧倒的な数に対応するにはオーブ軍の正
規パイロットだけでは不可能だった為に、このシ
ステムが採用され、世界中から凄腕の傭兵が集結
してその威力を発揮したのであった。
そして、そのシステムは元ザフト兵や志願兵にも
採用されて、戦果をあげたものにはそれなりの金
額が支給されていた。

 「一機撃墜で2000アースダラーか。大金だ
  な」

シンは素直に喜んでいるが、この金額はかなり抑
えられたものである。
プロの傭兵と元ザフト兵。
そして、シン達では全く条件が異なっているのだ

例えば、ムラクモ・ガイはエース機2機とその他
のモビルスーツ13機と艦船4隻撃沈で、56万
アースダラーとカガリの護衛料を貰っている。
最も、モビルスーツは持ち込みで、修理費等は自
己負担だが。

元ザフト兵はオーブ軍将兵としての給料と戦死・
戦傷時の保障がきちんと認められていたので、モ
ビルスーツ一機につき1000アースダラーが支
払われているだけだ。

そして、シン達はどうせ素人だから、敵機の撃墜
はほとんど不可能だろうという軍上層部の判断で
倍額の報奨金が認められていたが、傭兵連中に比
べれば、微々たるものであった。

 「やったぞ!これで赤字生活から脱出出来るぞ
  !ザフト軍の連中と戦うと損害ばかり増して
  実入りが少ないのだが、連合の将兵は平均的
  に弱いから大助かりだ」

これは、報奨金を手にしたガイの言葉である。

 「これで、アカデミー在学中は小遣いに困らな
  いな。さて、マユとステラが待っているから
  、早く公園に行かないとな」

シンは待ち合わせ場所の公園に向かって走ってい
った。


(午前十一時、オロファトホテル喫茶室)

ラスティー達を見送った後、ホテルに戻った俺達
はお茶を飲みながら談笑していた。
途中、軍の除隊手続きを終わらせてきたレイナ達
も合流して、話が進んでいった。

 「結局、キラは除隊出来ないで三佐のままか」

以前から、OS開発を手伝っていたキラは、その
まま軍に残留するらしい。

 「カガリの専任教官だそうですよ。勿論、OS
  開発も続行ですけど」

 「俺達は給料貰って、無事除隊できてラッキー
  ですよ。カレッジに戻って、また何時もの生
  活が始まります」

トールが嬉しそうに話していた。
志願したカレッジの学生にはほとんど犠牲者が出
なかったようだ。
訓練期間が取れなかったので、後方任務と基地内
の仕事に回したのが大きな理由であろう。

 「僕達もザフト軍の給料とオーブ軍の給料。そ
  して、撃墜時の報奨金で多少懐が暖かくなっ
  てラッキーですね」

 「ニコルはセレブな家の生まれだから、給料な
  んてはした金だろうが」

 「ヨシさんは勘違いしてますね。僕達は親が金
  持ちなだけで、自分で使えるわけではないの
  ですよ」

ニコルの指摘にアスラン達が頷いた。

 「でも、アスランは良い車に乗っていただろう
  」

 「あれは父上の持ち物です。借りているだけで
  、俺の物ではありませんよ」

 「クリスマスには高額なプレゼントをくれたし
  ・・・」

 「軍人は基本的な衣食住がただですからね。数
  か月分の給料を溜めれば、誰にでも買える金
  額の物でしたよ」

イザークが続けて答えてくれる。

 「そうだったのか」

知らなかった・・・。

 「兄貴はお金持ちの家庭に幻想を持ちすぎ」

 「カナも人の事は言えないだろうが」

 「私はサイとの付き合いが長いからね。色々聞
  いてるんだよ」

 「サイの親父さんは大きな海運会社の社長だっ
  たよな」

 「ええ、でも俺も小遣い制なんでみんなと変わ
  りませんよ」

 「使用金額無制限のカードとか持ってないの?
  ブラックカードをさ」

 「ヨシさんは漫画の見過ぎです」

 「おかしなドラマの影響ですかね」

 「仕事は完璧なのに、多少抜けてますよね」

 「あら、可愛らしいではありませんか」

アスラン、ニコル、シホに厳しく突っ込まれるが
、ラクスに慰められて多少回復した。

 「どうせ、俺は報奨金の金額に大喜びしている
  一般庶民ですよ」

 「いくら貰えたんですか?」

 「12000アースダラー」

 「12機撃墜ですか。意外と少ないですね」

 「お守りをしないといけない連中が多かったし
 、フラガ少佐、ササキ大尉に絡まれて時間
  を消費したからな。これでも、後半で挽回し
  たんだぜ。」

硫黄島では32機を落としていたから、ニコルに
は少ない数字だと思われたのだろう。
あの時はジンプウに乗っていたし・・・。

 「お前達はどうなんだ?」

 「俺は、14000アースダラーです」

アスランもカラミティーとの連続対戦が響いてい
るらしい。

 「俺も14000アースダラーです」

イザークは前半は指揮を優先した為と、後半はカ
ラミティーの相手で数を稼げていない。

 「僕は26000アースダラーです」

 「えっ、26機も落としたの!」

ニコルはあまり目立っていなかったが、地道に敵
モビルスーツを落としていたようだ。

 「私は21000アースダラーです」

シホもコツコツと敵を落としていたようだ。

 「みんな金持ちなんですね」

キラが羨ましそうな目でアスラン達を見ている。

 「お前は量子通信ミサイルの戦果と合わせたら
  90機近くを落としているだろうが」

今回の戦いで一番の戦果をあげたパイロットはキ
ラである。
クルーゼ隊長でも一回に50機以上敵機を落とし
た事がないのに、彼は公式認定89機(量子通信
ミサイルでの46機撃墜を含む)撃墜が認定され
ていた。
しかも、キラは初期の俺達と違って、モビルスー
ツのみの撃墜数であり、その凄さが伺われる。
ちなみに、俺の最大の戦果は「オペレーションウ
ルボロス」時の連合阻止艦隊との死闘でMA38
機と戦艦3隻巡洋艦4隻を落としたのが最高で、
この功績でネビュラ勲章が授与されていた。

 「連合のモビルスーツ隊の損害の12%近くが
  キラ1人で稼いだものだったのか」

普通に考えてもありえない数字だ。
こいつが敵に回った時の事は考えたくない。
後日、連合軍将兵がキラにつけた渾名は「殺戮の
堕天使」だそうだ。
連合の兵士にはフリーダムが死を呼ぶ天使に見え
たのだろう。 

 「だからキラは二佐に昇進なんですよ」

カズイがキラが昇進した事を教えてくれた。
オーブ軍ではますますキラの重要性が増している
ようだ。

 「それで多額の報奨金か。羨ましいなキラは」

アスランが羨ましそうに言うが。

 「アスラン、僕は正規のオーブ軍将校だから報
  奨金は無しなんだよ」

キラの表情はどこか悲しそうだ。
純粋な傭兵や戦果をあげる為に、鼻先に人参が吊
るされた半傭兵の俺達や志願兵のシン達とは違っ
て、祖国防衛に燃えているオーブ軍将兵には報奨
金は必要無いというのが上層部の判断らしい。
というか、軍人に撃墜手当てなんて出ないのが普
通だ。

 「そ、そんな。新しい洋服が化粧品が・・・」

 「昇進が無かったんだから。せめて、報奨金く
  らい・・・」

 「俺は命を懸けたのに・・・」

 「ぐおーーー!何故だーーー!」

この話を聞いた時のマユラ、アサギ、ハワード一
尉、ホー1尉の反応がこんな感じであった。
どうやら、祖国愛と自分の懐具合は別次元の問題
であるようだが、ハワード一尉は昇進出来たのだ
し、薄給で命をかける連合将兵に比べれば、オー
ブ軍将校は大分マシな気がする。

 「キラ達はまだいい方さ。ザフトの給料なんて
  フリーター並なんだぞ。最低限の衣食住は保
  障されているが」

ザフトの前身は市民防衛組織で要するに自警団や
消防団とさほど変わりが無いものだった。
構成員も兼業者が多数で必要経費ぐらいしか出て
いないものだったのだが、ザラ委員長が急速に軍
事組織としての体裁を整えたのだ。
軍事組織に改編された為、兼業は不可能で家族等
がある者の生活を保障する為に、給料体系が見直
されて今日に至るのだが、そのしわ寄せが俺達若
い独身者に行っていたのだ。

 「てなわけで、今回のオーブ戦は俺の救いにな
  る一戦だったんだ。冷酷者扱いされるかもし
  れないが、金が無いのは首が無いのと一緒だ
  からな。同じ危険度なら給料は多いに越した
  事はない。何しろ、あのクルーゼ司令が(エ
  ンデュミオンの鷹)を諦めて雑魚落しにまい
  進したくらいなのだから」 

クレーゼ司令は最終局面にジャスティスで追撃に
加わり、モビルスーツ18機と艦船7隻を撃沈し
て25000アースダラーの副収入を得たらしい

 「それで、ディアッカをこき使っていたのか・
  ・・」

 「どういう事なんです?アスラン」

シホがアスランに聞いた事情を簡単に説明すると
、フラガ少佐との戦いで格闘戦を有利に進める為
に、ディアッカと乗機を交替したクルーゼ司令で
あったが、途中で敵機撃墜に目標を変更してみる
と、長・中距離戦仕様のフリーダムの方が有利で
ある事に気が付いてしまって、後で大分後悔して
いたらしいのだ。

 「機体の交換を先に言ったのは、クルーゼ司令
  なんだろう?それって八つ当たり・・・」

 「それは言ってはならない。俺達の平和の為に
  も。わかったな?イザーク」

 「はい」

イザークは親友を一秒で裏切った。

 「でも、それだけ稼げれば御の字のような気が
  しますけど」

ニコルの意見は最もなような気がするのだが。

 「本当は10年分のヘソクリを稼ぐつもりだっ
  たらしいが、5年分しか稼げなかったとこぼ
  していた」

クルーゼ司令はアスランに色々愚痴をこぼしてい
たらしい。

 「少なっ!あの金額が5年分の小遣いなのか?
  いい年の大人が」

 「イザークよ。クルーゼ司令は子供が出来て色
  々金がかかるらしいのだ。察してあげろよ」

 「「「えーーーー!!」」」

俺以外の全員から驚きの声が上がる。
でも、何でキラ達までそんなに驚くんだ?

 「まあ、それはおめでたいですね。出産祝いは
  何にしましょうか?」

さすがに、ラクスは落ち着いたものだ。

 「やはり、仮面が最適では・・・」

シホが錯乱していて、おかしな事を口走っている

 「どこの世界に出産祝いに仮面を送る人間がい
  るんだよ」 

 「でも、ヨシヒロさん。あのクルーゼ司令の子
  供ですよ」

 「生まれつき仮面をしているとか?」

 「アスラン・・・。君ってバカ?」

アスランがキラに冷ややかな目で見られていた。

 「あのな。人間は環境の生き物なんだよ。生ま
  れつきクルーゼ司令みたいにはならないだろ
  う。普通は」

少なくとも、嫁さんは普通に人に見えた。

 「本人が不在なのをいい事に言いたい放題です
  ね・・・」

 「ニコルは時々鋭い一言を放つな。さて、そろ
  そろお昼だがみんなはどうする?」

 「俺は両親と食事をする約束があるので」

 「俺もです」

サイとカズイは約束があるようだ。

 「「「私達はデートです」」」

ミリィーとトール、レイナとキラ、カナとニコル
も抜けるようだ。

 「お兄さん、今夜の約束忘れないでね」

家族全員で夜、久しぶりに外食をする約束をして
いたのだ。

 「わかってるよ。それで、アスランは?」

 「俺は・・・」

 「おーい!アスラン!仕事が終わったから早く
  行こうぜ!」

カガリとここで待ち合わせをしていたらしい。

 「イザークは?」

 「俺は・・・」

 「イザーク!早く行きましょう!」

午前中、親父さんと2人で会っていたフレイと待
ち合わせていたようだ。

 「シホは1人か。ラスティーとは別々だしな」

 「私はリヒャルト先生と待ち合わせです」

 「あれ?熟女好きは卒業したのか?」

 「違いますって。実は進路相談なんです」

シホは元々医者志望だったからな。

 「戦後はザフトを除隊して、医者の実習を受け 
  るんだろ」

 「その予定なんですけど。リヒャルト先生から
  ザフトに残って軍医として任務に就いたらど
  うかと誘われていまして。そこで、経験を積
  んでから除隊しても遅くは無いだろうと。正
  式に軍医になれば、実習終了とみなされるん
  ですよ」

 「それもいいかもな。でも、ミハイル・コース
  トのようにはなるなよ」

俺がザフトで一番嫌いな男の名前をあげる。

 「確か、(ドクター)という2つ名を持つエー
  スですよね」

 「ああ、元々医者だったらしい。何回か一緒に
  戦った事があるが、あれは真性のSで戦闘マ
  ニアだ。えらい冷静な癖に、強い敵が大好き
  でな。漫画のキャラで1人は出てくるだろう
  。半分壊れているような奴が。あいつはそん
  な感じの男だ」

 「でも、今は軍医では無いのですよね?」

 「違うが、シホが医者だった事を思い出してな
  。少し心配になってしまった」

 「私と逆ですね。医者をしてからパイロットに
  なった彼と、パイロットをしてから医者にな
  る私ですか。一応、気をつけますね」

 「そうですわね。シホには私に子供が出来たら
  、主治医になって貰うつもりなのですから」

俺は思わず飲んでいたコーヒーを噴出してしまう
。 

 「汚いですよ。ヨシヒロさん」

 「すまんな、シホ。ラクス!過激な発言は止め
  てくれよ」

 「時間の問題だと思いますわ」

 「ヨシヒロさん。避妊してます?」

いや、してないというかさせて貰えないのだ。

 「じゃあ、出来ちゃった婚の可能性が高いので
  すね」

 「今、そうなったら俺はザラ委員長に南米派遣
  顧問団に飛ばされるな」

 「確実ですね・・・」

シホが嬉しくもない保証をしてくれた。
南米派遣顧問団とは、国を失って独立闘争を挑ん
でいるゲリラ達にモビルスーツ操縦技術と運用技
術を教える為に、現地に派遣されているパイロッ
トと技術者の部隊の事である。
ここの任務はジャングルで寝泊りしたり、連合軍
のゲリラ狩りから逃れる為に、日々移動を繰り返
したりと心身共にザフトで一番厳しい任務と噂さ
れているものなのだ。

 「ここに飛ばされるのは勘弁して欲しいな」

 「大丈夫です。クライン派の力を信じてくださ
  いな」

そんな理由で派閥闘争を起こすなよ。

 「でも、本当にザラ委員長は気が付いていない
  のか?俺達はともかく、アスランなんて堂々
  としているぞ」

ウズミ様も既に知っていて、アスランをカガリの
婚約者と認めている節があるし、アスランは隠し
もしないで平気でデートに出掛けるから、気付か
れるのが普通だと思うのだが。
だが、アスランにも父親に事実を言う勇気はまだ
無いらしい。

 「クライン派の力を駆使しているから、大丈夫
  ですわ」

無駄に権力を使っているなと感じたが、何も言え
ない。

 「とにかく、終戦までは秘密なんですね」

 「はい、そうです」

 「でも、どうして秘密なんです?」

シホの疑問は最もなものだ。

 「まず、決める。そして、やり通す。私の信念 
  ですわ」

えっ、それだけの事なの?

 「・・・・・・」

シホは言葉が出ないようだった・・・。


あまりの事に言葉が出なかったが、俺とラクスは
シホと別れて2人で普通のデートを楽しんだ。
夕方、家族と待ち合わせて食事に出掛ける事にす
る。

 「今日は楽しみですわね」

 「・・・・・・」

メンバーは親父、母さん、レイナ、カナ、ステラ
、俺、ラクスだ。
レイナやカナですらキラやニコルを連れて来てい
ないのに、ラクスが何食わぬ顔で出席している事
にツッコミを入れる者は1人もいなかった。
親父と母さんは既にラクスを嫁扱いしているのだ
ろうか?
俺は既にあきらめている節があるし、別にラクス
がいる事に不満があるわけでないし・・・。

 「キラは両親と久しぶりに会うんだって」

 「ニコルはアスラン達と4人で遊びに行ったよ
  」

 「あいつらは同期で比較的仲がいいからな」

イザークとアスランは以前のようにいがみ合わな
くなっていたし、ラスティーがいない現在、ニコ
ルが緩衝材の役目を上手く果たしていたからだ。 

 「同期の親友ってのは、何物にも変えがたいも
  のなのさ」

俺の同期の連中は既に2割が戦死している。
一番仲の良いハイネとミゲルは大丈夫なようだが
、戦場では何が起こるかわからないのだ。
仲良くするにこした事はない。

 「それで、今日は何処で食べるの?」

 「今日はお父さんのリクエストに従う事になっ
  ているの」

親父はオノゴロ島のモルゲンレーテ社の瓦礫跡で
残務処理を指揮していたらしい。
そんなわけで、疲れている親父の希望を叶える事
になったようだ。

 「俺には異存はないんだけど。もしかして、あ
  そこ?」

 「そう、あそこ」

母さんの答えは予想通りのものだった。


 「やっぱり、焼肉屋かよ」

親父の一番好きな食べ物。
それは、焼肉である。
日本在住時は月に一度は必ず連れていって貰った
が、俺はここ何年も食べていないのだ。

 「バーベキューみたいなものですか?」

 「似たようなものかな?」

ラクスはやっぱり知らなかったようだ。

 「ステラは初めて食べるの?」

 「一回だけお父さんに連れていってもらった。
  美味しかった」

ステラだけ連れてったのかよ。
えこ贔屓しやがって。

 「でも、オーブって日本にあるものは何でもあ
  るんだな」

 「昔、日本が東アジア共和国に参加する時に、
  多数の反対派がオーブへ逃げ出して定住した
  んだよ。そして、オーブで一大勢力を築いた
  わけだ。そんなわけで、日本食には不自由し
  ないんだな。オーブという国は」

昔、日本が東アジア共和国に参加した時に多数の
中国人が入国してきて土地を不法占拠したり、犯
罪を起こしたりして、日本は騒乱状態になったら
しい。
時の政府は混乱の収拾に多数の犠牲を払ってよう
やく鎮圧したらしいが、これを嫌った多くの日本
人が外国に移民してしまって、今の状態に復活す
るまでに100年以上かかったらしい。
そして、その移民先の人気ナンバー1が当時新興
国であったオーブだったのだ。
オーブ国内で日系人は大きな影響力を持っていて
、公用語の1つに日本語が指定されているほどで
ある。
そんな理由で、街中にはうどん屋、蕎麦屋、牛丼
屋が普通に存在していた。
焼肉屋も当然あるわけである。

 「オーブでは焼肉は日本料理だと思われている
  んだよ」 

 「日本料理ではないのですか?」

 「東アジア共和国の参加国である、統一朝鮮国
  発祥の料理なんだ。最も、多少日本風にアレ
  ンジされているが」

席に座って注文をしながら、親父がラクスに説明
していた。

 「親父、叙々宛はオーブには無いのか?」

 「あるけど、財布が許さない部分が大きい」

日本との関係強化の影響で最近、オロファトに出
店したらしいが、値段は相変わらずのようだ。
俺も一度も行った事が無いし。

 「今度、カガリちゃんでもスポンサーにして行
  こうかな?」

 「お前、オーブの姫君をちゃん付けで呼ぶなよ
  」 

鉄板の上に肉を載せながら俺に説教してくる。

 「公の場では心得ているさ」

 「基地内でも平気でカガリちゃんって呼んでた
  よね。お兄さん」

カガリの副官をしていたレイナに指摘されてしま
う。

 「他のみんなはカガリ少将と呼んでいたのに。
  アスランですら、2人っきりになった時でな
  いと呼び捨てにしていなかったらしいよ」 

 「そうだったかな?カガリちゃんって危なっか
  しいというか、無鉄砲なところがあるから、
  お兄ちゃんとしては心配でさ」

 「相変わらずシスコンの気があるんだね・・・
  」

カナに指摘されてしまう。
どうも、俺はシスコンだと思われているらしい。
ステラの件といい、否定は出来ないのだが・・・

 「でも、シンよりはマシだと思うぞ」

 「シン君はそれほどシスコンには見えないんだ
  けど」

 「そうか?」

 「あれは、マユちゃんにブラコンの気があるん
  だよ。ステラも同じ様な感じ。私は同じ女だ
  からよくわかる」

カナが自信を持って断言する。

 「ステラはまだ多少幼い部分があるからね。シ
  ンをお兄さん代わりにしている部分があるの
  かもね」

レイナもそれに続けて言う。

 「俺ってもうお兄さん失業?」

 「それは無いんじゃないの?そういう感情が恋
  心に変わる可能性って結構高いし、兄貴はや
  っぱりお兄ちゃんとして慕われているから」

少し安心しながらステラの方を見ると、ステラは
美味しそうに肉を食べていた。

 「ダメだ!ステラはシンの糞ガキには絶対にや
  らん!」

いきなり親父が大声で叫んだ。

 「五月蝿いな。恥ずかしいから静かにしろよ」

 「お前は兄として口惜しくないのか!」

 「別に、ステラが好きになったら仕方がないだ
  ろう。それに、俺は戦場で共に命を賭けたシ
  ンを一人前の男として認めているからな。歳
  は関係ないさ」

 「わあ、兄貴ってクールだな」

 「ねえ、ステラはシン君の事好き?」

レイナがステラに質問すると。

 「うん。好き」

ステラは即答したが、彼女の好きはライクの方で
まだラブにはなっていないようだ。

 「ステラには、恋愛はもう少しだけ早いみたい
  ですね」

ラクスも俺の考えに気が付いたようだ。

 「ステラはともかく、シンの糞ガキの意図は誰
  にもわからない。危険だ!」

親父がしつこくてうんざりしてきた。

 「母さん」

 「お義母様」

 「お父さん、静かにしなさい。みんなの迷惑で
  す」

 「はい・・・・・・」

親父は一番の権力者に怒られると、すぐに大人し
くなる。

 「さあて、話ばかりで腹が減ったな。追加で何
  か取るか」

メニューを見ると、ステーキやハンバーグなんて
ものまでやっているようだ。

 「同じ肉関連だからな。焼肉だけだと苦手な人
  が困るだろうしな」

親父はそう言っているが、隣のラクスが美味しそ
うにユッケを食べているところを見ると、あんま
り説得力を感じない。

 「何々、1kgステーキを5枚完食で賞金30
  0アースダラーと食事代全額タダか」

 「5kgの肉を一度に食う人間なんて存在する
  のか?」

親父はありえないという顔をしているが、俺には
心当たりが1人だけいる。

 「俺には関係無いしな。普通に肉を追加するわ
  」

俺が店員を呼んで肉を追加注文していると、反対
側のテーブルで騒ぎが発生していた。

 「当店初の快挙です。ステーキ5枚完食おめで
  とうございますシン・アスカさん」

 「いやー、ありがとうございます。結構楽勝で
  したよ」

シンは手に賞金を持ちながら、店員に写真を撮ら
れていた。

 「予想はしていたんだ・・・」

 「あっ、カザマさん!ステラ!」

シンが俺とステラを発見してしまった。
何か、微妙に恥ずかしい・・・。

 「お前はよく食うな。相変わらず」

痩せの大食いの典型的な例だな。

 「今日は俺の送別会を兼ねた、家族との最後の  
  食事会なんですよ」

 「そこで、大食いキングの足跡を残していたの
  か・・・」

後ろの両親とマユちゃんも少し恥ずかしそうだ。

 「カザマさん、お久しぶりです」

マユちゃんは礼儀正しくていい子だな。

 「シンを生かして帰してくれて、ありがとうご
  ざいました」

シンの母親にお礼を言われてしまった。
志願兵の戦死率が高かった所為もあって、俺に感
謝しているらしい。

 「いえ、シンが生き残れたのはシンに実力と運
  があったからです。俺は何もしていませんよ
  。それよりも、シンがプラントへ上がる要因
  を作ってしまって申し訳ありません」

俺は頭を下げる。

 「いえ、気にしないで下さい。私はシンがコー
  ディネーターである以上、早期の独立は避け
  られないと考えていましたから。それに、こ
  のままオーブ軍でなし崩し的に軍人をやるよ
  りは、アカデミーでちゃんと教育を受けた方
  が良いと思っているのです。卒業する頃には
  戦争は終わっているでしょうし・・・」

シンのお母さんは、シンが実戦の場から離れるの
が嬉しいようだ。

 「責任を持って面倒を見ますから、安心してく
  ださい」

 「お願いします」

その後、シンの両親は俺の親父と、シンに推薦状
を出してくれたシーゲル元議長の娘のラクスに挨
拶に行ったようだ。
海外でも日本人の習性はそう変わらないらしい。

 「では、私達はこれで」

シンの家族は食事を先に終えて帰っていき、俺は
肉を食う作業に没頭する。

 「シン君は相変わらずだね」

カナはシンが大食いなのを知っているからな。

 「俺の(殺リスト)1位と5位が目の前にいな
  がら手を出せないとは・・・」

 「親父、シンはともかく父親に罪は無いだろう
  」

 「ダメだ!坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだ!」

何て理不尽な・・・。
というか正しい使用方法か?
そのことわざ。

 「明日、空港でステラに手を出さないように、
  よく言い聞かせなければ・・・」

 「母さん」

 「お義母様」

 「余計な事をしたら許しませんからね!」

 「はい・・・」

親父は再び大人しくなった。
こうして、ステラとシンのオーブでの最後の1日
は過ぎて行ったのだった。


翌日、プラント行きのシャトルの発着場で家族全
員で見送る事になった。

 「俺は1週間もしない内に会えるからな。特に
  無いんだよね」

俺は、数日後には再びプラントに戻るから、直ぐ
に会えるというか、二週間ほどお世話になるホー
ク課長の家へ挨拶に行かなくてはいけないのだ。

 「ステラ、シンのバカが何かしでかしたら俺に
  言うんだぞ!」

シンの両親の前でも遠慮する事無く、大声で悪口
を言うバカ親父を母さんがぶん殴る。

 「ほほほ、シン君御免なさいね。ちょっと妄想
が聞こえるみたいなのよこの人」

 「はあ、そうなんですか」

 「ステラ、休みにはちゃんと帰って来るのよ」

 「うん」

 「ステラ、シンと仲良くね」

 「他所の女に取られるなよ」

 「うん」

ステラが元気良く返事をしているが、意味を理解
しているのだろうか?

 「おい!レイナ、カナ。親父が暴走するから、
  そのセリフは無しだ」

 「大丈夫だよ兄貴。ほら」

親父は母さんの隣りで立ったまま気絶していた。

 「おい!起きろ。親父!ステラに挨拶は?」

俺がビンタをすると、親父が目を覚ました。

 「ステラ、辛くなったらすぐに帰って来るんだ
  よ。プラントで苛める奴がいたら父さんに言
  いなさい。圧力をかけて一生後悔させてやる
  から」

何気に恐ろしい事を言っているが、現在の親父の
地位と権力を考えると、そう不可能な話ではなか
った。

 「お父さん、ありがとう」

 「シン、俺からは頑張れよとしか言えないが、
  進路を間違えたと思ったら、遠慮しないでオ
  ーブへ戻ってきなさい。お前はまだ何度でも 
  やり直しがきくんだから」

 「ありがとう。父さん」

 「シン、生水には気を付けなさい。寝冷えしな
  いようにね」

 「俺は子供じゃなんだから」

母親の心配事なんて世界共通のものなんだろう。
プラントに生水なんて存在しないし、気温も適温
に保たれているから、寝冷えした奴なんて見た事
が無い。

 「お兄ちゃん、マユもアカデミーに入学するか
  ら待っていてね。それと、これをあげる」

 「えっ、マユもアカデミーに入学するつもりな
  の?それに、この携帯はやっと買って貰った
  んだろ」

 「デジカメ機能しか使っていなかったから大丈
  夫。お兄ちゃん、デジカメ持っていないでし
  ょ」

マユちゃんがアカデミーに入学する頃には、シン
はとっくに卒業しているのだが、マユちゃんは理
解しているのだろうか?
携帯は俺もまだ持っているが、プラントの部屋の
引き出しに入れたままだ。
Nジャマーの影響でどんなに調子が良くても電波
が数十キロしか届かないのだ。
開戦以来、電話の主流は有線に逆戻りしていて、
携帯のメーカーは半分以上が倒産した。
残っているメーカーも、主力商品を有線電話に切
り替えて生き残りを図っているのだ。
唯一、無線で使えるのはレーザー通信のみだが、
この装置は非常に大型になってしまうので、携帯
に組み込む事など不可能であった。

 「マユちゃん、本当にアカデミーに入学するつ
  もりなの?」

彼女の運動神経は並より少し上程度だ。
パイロットになるのは不可能であると断言できる

 「私、メイリンさんみたいに管制科希望ですか
  ら」 

 「まあ、それなら大丈夫かな。でも、お母さん
  良いんですか?」

シンのお母さんに確認をとる。

 「本人が希望してますし、数年後には考えが変
  わっているかもしれません」  

 「変わらないもん!」

 「だそうですよ」

 「マユ、ありがとうな。休みには帰るからな」

 「うん、絶対だよ。約束守ってね」

あれ?アカデミー生って帰省出来たっけかな?
確か、規則には禁止とは書かれていなかったよう
な。

 「お客様にお伝えいたします。オーブ発プラン
  ト行きのシャトルは間もなく発進いたします
  。搭乗予定のお客様はお急ぎくださいませ」

俺が約4年前に出発した時のように、アナウンス
が流れる。
そういえば、俺も家族に見送られながら、ここか
ら出発したのだ。

 「シン!ステラ!しっかりやれよ!」

家族全員が見送る中、シャトルは宇宙に上がって
いき、それを見ながら、俺は思わず大声を上げて
いたのだった。


その後、親父は日本への出張が決まっていて、母
さんもその準備の為に帰宅した。
レイナとカナはカレッジの講義が明日から再開す
るとかで、同じく準備の為に帰宅している。

 「さて、俺はどうしようかな」

 「ヨシヒロ、ウズミ様が内密にお話があるそう
  です」

 「えっ!何で知ってるの?そんな事」

 「直接、伝言を頼まれたからです」

さっきはやけに大人しいなと思っていたら、ラク
スには驚かされる事が多い。

 「わかったよ。場所は臨時代表府でいいの?」

 「はい」

俺達は車を捕まえて、オロファトホテルに向かっ
た。
そして、ホテル内の代表執務室に入る。

 「おおっ、よく来てくれたな」

 「用件は何なのですか?ウズミ様」

 「簡単に言うと、君達と一緒に戦力を上げる事
  にしたのだ」

 「アメノミハシラの補強ですか?」

 「違う。連合軍対ザフト軍の最終決戦に戦力を
  出すのだ」

 「意味がよくわかりません。第一、中立国のオ
  ーブは連合と講和条約を結んで、既に戦争は
  終結しているのですよ」

 「なに、前回の反対の事をするんだ。元オーブ 
  軍将兵達をザフト軍に傭兵として雇って貰う
  のだ」

 「そこまでする理由が理解できませんね。そう
  でなくても、オーブ軍は人手が足りない状態
  なのに」

特にパイロット達は半分以上が素人なのだ。
連中ではまだ実戦は不可能だ。

 「連合軍の二度目の侵攻はもう無いというのが
  、軍上層部の判断だ。モビルスーツを多数並
  べておけば、けん制には十分だし、派遣部隊
  の連中の半分が傭兵達で、オーブ軍自体の戦
  力はそう落ちない。それに、プラントのザラ
  国防委員長は了承してくれている」 

 「では、俺には反対できませんね。でも、どう
  してなんですか?」

 「一言で言えば復讐だ」

 「復讐ですか・・・」

 「弟を殺された恨みを晴らすという個人的なも
  のと、多数のオーブ軍将校や少数ではあるが
  、国民を殺された恨みを晴らす為のものと2
  つがある。それと、もう1つはオーブの怒り
  を表す為のものだ。連合のアズラエルには直
  接武力を用いて怒りを叩き付け、穏健派や中
  立派の連中にはアズラエルの暴走を止められ
  なかった自分達の罪を理解させる為に・・・
  。例え傭兵でも、戦力を送った我々の怒りを
  わからせるのだ」

 「世の中理屈だけでは無いという事ですか」

この派兵はウズミ様の個人的な理由で決められた
らしいが、俺には少し理解できるような気がした

 「それで、戦力はいかほどなんです?」

 「イズモ級戦艦3隻(クサナギ)(イザナミ)
  (イザナギ)を主力にモビルスーツ36機
  +予備機の部隊になる予定だ」

今のオーブでこの戦力の派遣は相当無理をしてい
るのだろうな。  

 「指揮官は誰なんです?」

 「それは、私だ!」

 「カガリちゃん?」

いきなりドアが開いてカガリが入って来た。
しかも、ザフト軍の白い指揮官服をまとって。

 「ザフト軍アスハ隊隊長のカガリ・ユラ・アス
  ハだ。よろしくな同僚」

 「副隊長のレドニル・キサカだ」

 「旗艦(クサナギ)艦長のトダカだ。また、よ
  ろしくな」

後ろから黒い艦長服を着たキサカさんとトダカさ
んも入ってきた。

 「ザラ委員長め。適当に決めちゃって。知らな
  いからな俺は・・・」


4日後、新兵の訓練でお茶を濁している内にアー
クエジェルの修理も終わり、カグヤのマスドライ
バーから「クサナギ」と共に宇宙へ上がる事にな
った。残りの2隻とはアメノミハシラ宙域で合流
する予定である。
ちなみに、自衛隊の将校達は前日に日本に帰って
いたが、最終決戦時に日本は援軍を宇宙軍から出
すらしいので、そのモビルスーツ隊の指揮官が昇
進した石原三佐らしいとの噂であった。 

 「ポジトロニックエンターフィアレンス???
  意味がよくわからない。つまり、クサナギの
  予備ブースターを装着して陽電子砲を撃つと
  宇宙に上がれるわけですね」

若い技術士官の説明が理解出来なかった俺は方法
と結果のみを簡単に質問した。

 「簡単に言うとそうです」

これ以上の質問は無知をさらけ出す結果になるの
で、避ける事にする。
最近、勉強なんてしていないから、よくわからな
いのだ。

 「しかし、みんな物好きだな。せっかく生き残
  ったのに、一番戦死する可能性が高い戦いに
  志願するなんて」

カガリは「暁」持参で、マユラはストライクルー
ジュ改、アサギはBストライク、ホー1尉はレイ
ダーで。
そして、ハワード一尉はストライクを乗機にして
いた。

 「私はカガリ様の護衛です」

 「私も」

 「格闘王への道は険しく遠いのだ」

 「私はこっちの方が面白そうだからです」

 「みんなはいた仕方あるまい。でも、キラは本
  当に止めておけって」 

キラが戦死したり、捕虜になったりしたら本当に
まずいのだから。

 「カガリの教官としては、責任を果たさないと
  いけませんし、戦場に出る事は今更って感じ
  ですね」

 「こちらとしては大助かりだけど」

オーブの紋章を付けたフリーダムは、連合では恐
怖の対象になっているらしいのだ。

 「キラに2つ名が付いていたんだよ」

先日、ミリタリー系のサイトを覗いていて見つけ
たのだ。

 「2つ名ですか?照れますね」

 「(殺戮の堕天使)だそうな。フリーダムは羽
  を広げた天使に見えるからな。それと、戦場
  で戦っているから堕天使らしいな」

 「何かカッコ良くない?」

 「いいなー」

アサギとマユラは羨ましそうだ。

 「俺はどうなんだ?!」

ホー1尉が聞いてきた。

 「(剣神)だってさ」

 「何故だーーー!(拳神)ではないのか!」

 「だって、全部ビームサーベルか鉄球で敵を倒
  していたじゃない」

マユラの鋭いツッコミに全員が頷いた。
白いロングダガーを刀で倒したしな。

 「ちくしょう!こうなれば、敵を素手で倒すの
  みだ!」

 「修理が大変だから却下だ。緊急時でもあるま
  いし、ちゃんと武器を使え!」

カガリに即座に却下される。

 「後はいないんだろ。2つ名を持っている奴は
  」

俺は今更だしな。

 「俺は伝説の傭兵と呼ばれた男だ」

突然、ムラクモ・ガイが乱入してくる。

 「ガイ!仕事か?」

 「カガリ姫の護衛任務だ」

 「今回のはいくらガイでもどうにもなるまい」

多分、一番の混戦になるだろうからな。

 「俺は受けた依頼は必ず成功させる」

でも正直、ガイの参戦はありがたい。

 「それは、大助かりだ。ところで、お前の娘さ
  んは?」

 「風花ちゃんでしたっけ?」

マユラが思い出したように言う。

 「だから!俺の娘じゃない!」

 「信じてみるよ。それで、彼女は?」

 「ギガ・フロートの防衛任務に就いている。我
  がサーペントテールは確実な日当を稼ぐ部隊
  と投機的な大金を稼ぐ部隊に別れて行動中な
  のだ」

 「んで、お前が投機的な方なの?」

 「敵を撃墜すれば手当てが出る。前回で荒稼ぎ
  して赤字を解消した俺達の次の目標は新型艦
  の頭金を稼ぐ事だ!」

伝説の傭兵部隊も懐事情は苦しいらしい。

 「そう。頑張ってね・・・」

俺にはそれしか言えなかった。


30分後、アークエンジェルの発進準備が整った
ので、俺は艦内に乗り込んだが・・・。

 「ヨシヒロ、遅かったですね」

 「何で、ラクスが・・・」

ブリッジに何故かラクスがいた。

 「この船に便乗して、プラントへ帰ろうと思い
  まして」

一応、軍艦なんだけど・・・。

 「確率は低いのですが、戦闘が予想されますの
  で・・・」 

 「信頼していますから」

俺は救いを求めてタリアさんを見るが、目を逸ら
されてしまった。

 「ちょっと、助けてくださいよ」

小声でタリアさんに話しかける。

 「私にはどうにも出来ないわよ。あきらめなさ
  い」

 「俺、一応上官ですよ」

 「だから、あなたが判断しなさいよ」

 「久しぶりに会ったのに冷たくありません?」

 「ピンチの時に助けに来ないで、クルーゼ司令
  と小遣い稼ぎをしていたみたいね」

まずい、アサギを送ったのが凶と出たか。

 「色々、大変だったんですよ」

 「とにかく、知らないわよ。自分で何とかしな
  さい」

小声で言い争っていると、アーサーさんが間に入
ってくれた。

 「ラクス様をお乗せ出来るなんて光栄です」

彼は何にもわかっていなかった。
彼自身に罪は無いのだけど。

 「もう、どうすれば機嫌を直してくれるんです
  か?」

 「私、欲しいバックがあるのよ。ギルバートは
  買ってくれないし」

 「わかりましたよ。後で自宅に送りますから」

 「ありがとう。何か催促したみたいで悪いわね
  」

それを催促と言うんだ。
余分な出費が決定する。

 「ラクス様、民間のシャトルの方が安全だと思
  いますが・・・」

早速、タリア艦長が仕事をするが。

 「許可を貰っていますので」

そう言って彼女は親書を取り出した。
差出人はザラ国防委員長閣下であった。

 「カザマ君、諦めなさい」

 「はい・・・・・・」


その後、アークエンジェルは無事にオーブを飛び
出し、「クサナギ」と二艦でアメノミハシラに到
着した。

 「久しぶりの宇宙か。無重力がなつかしいな」

 「本当ね」

合流予定の「イザナギ」と「イザナミ」を待って
いると、艦内の警報が鳴った。

 「敵か?」

 「数は7機です。一機は機種不明6機はM−1
  です」

バートの報告が入る。

 「オーブ宇宙軍か」

正面にモビルスーツが見えてきたが・・・。

 「金色かよ。趣味悪っ!」

 「オーブの軍人は下品ですね。成金趣味丸出し
  ですよ」

 「血税のたれ流しね」

3人共本音が出てしまう。

 「おい!聞こえたぞ!我がゴールドフレームを
  バカにしたな!名前を名乗れ!」

どうも、無線機に声が入ってしまったらしい。

 「カザマ隊隊長、ヨシヒロ・カザマだ」

 「(黒い死神)か。ゴキブリ色の癖に生意気な
  」 

独創的な悪口だな。

 「我が名はロンド・ギナ・サハクである」

 「あのギナ様ですか」

 「あのってどういう事だ!」

 「噂や逸話が多すぎて説明不能です」

 「生意気なガキめ!モビルスーツで勝負だ!」

 「いいですよ。時間は多少ありますから」

俺は予備機として置かれていた、黒いジンカスタ
ムで出撃した。

 「では、スタート!」

 「はーっははははは、遂に完成直前となった新
  兵器を食らえ!」

ギナがそう言うと、ゴールドフレームが消えてし
まった。

 「どうだ!どこにいるかわかるまい!怖かろう
  !」

ギナが1人で盛り上がっていたが、俺は冷静に赤
外線探知機を作動させて、反応のあった所にペイ
ントガンを撃ち込んだ。
すると、ゴールドフレームにピンク色の花が多数
咲いた。

 「何故だ?どうしてわかった」

 「以前にブリッツを強奪した時に、赤外線探知
  機を対抗策として取り付けていたんだよ。精
  度が低くても場所がわかれば攻撃可能だし、
  フェイズシフト装甲は展開不能だから。ジン
  の突撃銃でも勝てるし」

偵察以外に役に立たないから、連合でもザフトで
も量産していないのだ。
それも、隠密偵察くらいにしか使えないので、熱
反応を消す方法が連合、プラント両陣営で研究さ
れているが、開発は難航しているらしい。

 「普通に戦えばいいのに。強いって評判なんだ
  から。それに、奇策は多様すると敗因になり
  易い」

 「お主、出来るな。どうだ?我が親衛隊として
  働かないか?隊長にしてやるぞ」

 「今の職場が気に入っているから」

 「そうか、転職するならうちに来いよ。アスハ
  のバカ娘のところより待遇は良くするから」

 「誰がバカだ!」

いきなり、無線にカガリの怒鳴り声が入ってきた

 「おやおや、噂をしたら本当にいたとは」

 「お前みたいな変人に言われたくないね!」

 「なっ、私が変人?ありえない話だ」

 「自他共に認める変人だろうが!」

 「お前みたいな無鉄砲なバカに言われたくない
  な」

 「またバカって言ったな!大体、指揮官の癖に
  モビルスーツで前線に出るな!」

 「指揮官先頭は輝かしい伝統だ!ヘタレなお前
  には出来ない相談だったな」

 「私だって訓練は積んでいる」

 「カザマには不覚を取ったが、カガリには後1
  00年は負けないだろうな」

 「むかついた!待ってろよ。正々堂々勝負だ!
  」

カガリは止めるキサカさんを振り切って「暁」で
出撃したが、技量不足は否めず、模擬戦を開始し
てから直ぐにピンチに追い込まれた。

 「やはり、大した腕ではないな」

 「ちくしょう!」

 「止めを刺すか」

ゴールドフレームが訓練用のビームライフルをカ
ガリに構えた瞬間、カガリの頭の奥で何かが弾け
た。

 「よし、行けるぞ!」

カガリの動きが急によくなり。
ビームライフルの攻撃が全てかわされていく。

 「何だ?急に強くなったな」

お互いに緊迫した戦いが続き、遂に両者に武器が
無くなってしまう。

 「では、引き分けって事で」

俺は仲裁に入ったのだが・・・。

 「カザマよ。まだ拳が残っておるわ」

 「おお!望むところだ。ギナ!」

 「あの・・・。やめた方がいいと思うけど」

俺の忠告も空しく、両者はお互いのモビルスーツ
で殴り合いを開始した。

 「俺、忠告したからね」

俺の声は2人には聞こえていないようだった。


 「それで、殴りあった結果が頭部破損、マニピ
  ュレーター全壊、各部装甲版大破なわけだな
  」

アメノミハシラ司令室でカガリとギナの2人は、
ミナから説教を受けていた。
派手に殴りあった「暁」とゴールドフレームは全
10本の指が全て壊れ、最大負荷で殴り続けた為
に腕の関節も壊れてしまい、デリケートな精密機
械の塊である頭部の損害も大きいものになってい
た。
そして、最大の損害がベコベコになってしまった
装甲版である。
以上の結果を踏まえて両機は大破と判定されてい
たのだった。 

 「カガリよ。(暁)の特殊装甲版がいくらする
  のか知っているのか?ビームを跳ね返して損
  傷したのなら文句は言わないが、殴り合いで
  壊すなんて正気の沙汰では無いぞ!」

 「いや、その戦いが厳しくてさ」

 「模擬戦で殴りあうな!」

 「そうだ!このバカカガリが!」

ギナも一緒にカガリを責め立てるのだが。

 「お前に人の事が言えるのか!このバカ弟が!
  」

 「私がバカ?」

 「ゴールドフレームも同様だ。フェイズシフト
  装甲は特殊装甲ほど高くは無いが、試作品の
  ミラージュコロイド発生装置がいくらすると
  思っているんだ!それを殴りあいで壊しおっ
  て・・・」 

既に、「イザナギ」と「イザナミ」は到着してい
たのだが、ミナの説教はこの後一時間以上続いた
のだった。


 「空しい争いですわね」

 「そうだよね。ラクス」

 「ですが、カガリさんはSEEDを発動させる
  事に成功しましたわ」

 「SEED?]

 「あの、いきなり強くなった時の現象の事です
  」

 「ああ、あれね。アスランとシンが急に強くな
  った奴だ」

 「そうなのですか?」

 「アスランは敵艦隊を殲滅させた時に、シンは
  モーガン少佐と一騎討ちをした時に恐ろしい
  強さを発揮した。火事場の馬鹿力みたいなも
  のか?」

 「ええ、それで間違いありませんわ」

 「今のところ、発動者は3人だけの不思議な力
  か」

しかも、カガリが発動させた理由がギナとの喧嘩
かよ。
悲しくなってくるな・・・。

 「SEEDって何かの役に立つの?」

 「マルキオ様のお話ですと、世の中を救う英雄
  だそうです」

 「マルキオ様?」

 「平和を願って活動していらっしゃる宗教家の
  方ですわ」

 「胡散臭いな。宗教家なんて」

 「ヨシヒロは宗教はお嫌いですか?」

 「宗教は必要だ。だが、宗教家は胡散臭い人間
  が多い。それに、英雄願望なんて持っている
  と更に危険だな」

 「どうしてです?」

 「英雄に善悪は無いと俺は考えている。ヒトラ
  ー、スターリン、毛沢東、ポルポト、歴史的
  には悪人の評価の方が高いが、彼らは始めは
  民衆の英雄だったのだ」

 「毛沢東は中国を統一した英雄ですが・・・」

 「統一後は沢山の自国の民衆を殺している。つ
  まり、英雄だなんて思って支持をして権力を
  与えたら、実はとんでもない悪人だったなん
  て可能性もあるのさ」

それに、自分の好きな女性を父親に正直に話せな
いアスランや、激食バカのシン、そして、暴走お
姫様のカガリが英雄なんて話を誰も信じないだろ
う。

 「世界を平和にするのは、1人の英雄では無く
  て、多数の人の努力だ。船が進路を誤ったら
  、全乗り組み員でオールを漕いで進路を変え
  るのが正しいのさ。プラント、日本、台湾、
  オーブ、太洋州連合、赤道連合、マダガスカ
  ル、イスラム、アフリカ、南米。多くの国と
  人々が少しでも状況を良くしようと日々努力 
  している。多少は失敗する事もあるけど、い
  きなり状況が劇的に改善するなんて事はあり
  えないし、出来るなんて言う奴は嘘つきだ」

 「では、英雄や救世主は・・・」

 「胡散臭いね。もし、本当にいるなら戦争なん
  て起こっていないだろうしね」

 「わかりました。でも、一度でいいので会って
  下さいね。マルキオ様に」

 「まあ、ラクスがそこまで言うなら会うけど、
  眉唾物の男だな・・・」

多少のトラブルは発生したが、アークエンジェル
と3隻の戦艦は無事プラントへ到着した。
新しい人事配置の行方は?
新型モビルスーツとは?
マルキオとは何者なのか?
最終決戦は何日後なのか?
未だ不明な事が多く、これからの運命がどうなる
のか、それは誰にもわからなかった。


         あとがき

1アースダラー=100円くらいです。
私が勝手に決めたけど。
その他にも勝手に決めた設定多数ありです。
つっこまないでね。
それと、以前からの疑問。
シンはシスコン扱いされるけど本当にそうなのか

私が運命を見た限りでは、マユのあまりに悲惨な
死に方を見てトラウマになった影響で、どんな時
にもその映像がフラッシュバックのように思い
出されるのではないかいうのが、私の意見です。
ピンクの携帯は唯一の形見で、家族との接点なの
ですから大切にするのが当たり前ですし。
多分、シンは妹思いの優しい兄だったのでしょう

だから、マユが生きているこの世界では、妹の
遊びに付き合ってくれる優しいお兄さんの
イメージでです。
多少、バカで妹に怒られている時もありますが。
そして、ステラも多少保護欲を誘う異性の友達
という感じで書いています。
モビルスーツの操縦はプロ並ですけど。
ここまで偉そうに書いて、別に設定があったら
笑えるな。
変えましたで誤魔化す自分がいるのだろうけど。

次回は最終決戦前夜編?って感じです。  

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