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▽レス始

「これが私の生きる道!オーブ後始末編(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-12 01:54/2006-03-15 00:47)
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(南太平洋海上、ドミニオン艦内)

早朝、フラガ少佐はいつも通りに起床してから格納
庫へ向かう。
朝食を食べる前に、自分のモビルスーツの状態を確
認しておきたかったのだ。
今、艦隊は多数の直衛機を飛ばし、駆逐艦が対戦警
戒を密にしているが、戦争では何が起こるかわから
ない。
慎重過ぎるくらいが良いのだ。
戦死してからでは遅すぎる。
格納庫内では一通り修理が完了したらしく、整備員
は交替で食事に出掛け、中は閑散としていた。

 「さて、レイダー改の様子はどうかな?」

自分の愛機に向かおうとした時、フラガ少佐は格納
庫の隅で木刀を振っているササキ大尉を発見した。

 「真面目な男だね」

彼は一心不乱に木刀を振っていて、フラガ少佐にも
気が付かないらしい。
昨日の戦いで、自分以外の特務隊のメンバーが全員
戦死してしまって、抜け殻のような状態だったのだ
が、どうにか立ち直ってきたようだ。

 「おはよう、ササキ大尉」

 「おはようございます」

フラガ少佐が声を掛けると、挨拶を返してきた。

 「熱心だね」

 「これが俺達の全てでしたから・・・」

 「全て?」

フラガ少佐には意味がわからなかった。
どうして、モビルスーツパイロットの特務隊の連中
の一番大事なものが剣術なのだろう?

 「君はモビルスーツのパイロットだろう?剣術な
  んておまけの部類に入るものだろう」

 「我々の強さの秘密はそこにあるのですよ」

 「強さねえ。初めは圧倒的だったな」

初めての戦闘では30機を越えるモビルスーツを落
として、オーブ軍パイロットを恐怖のどん底に叩き
落した。
もし、これが続いていたら連合軍は勝利していたか
もしれない。

 「我々は格闘戦、それも小さい頃から嗜んでいた
  武術専門の戦闘行動のみを集中して訓練する事
  によって、圧倒的な強さを得ていました。だか
  ら、何も知らない始めての相手には圧倒的な力
  を誇れますが、突発的な要素には弱いようなの
  です」

フラガ少佐は驚きを隠せなかった。
彼らはOSの不備を戦闘時の想定動作の割り出しと
、その動作の集中的な訓練のみで切り抜けていたの
だ。

 「だから、射撃を全く行わないで格闘戦のみだっ
  たのか」

 「射撃に関しては、一般パイロットの並の上がい
  いところなので、射撃をしたら総合的な練度が
  バレてしまいますから」

彼らは射撃を避ける、接近する、相手を斬る、叩く
この基本動作の組み合わせパターンををなるべく多
く繰り返し訓練していたようだ。
言葉で言うと簡単だが、敵に事実を悟られないよう
に熟練の動きに見せなければならないのだ。
きっと、血の滲むような努力をしたのだろう。

 「だが、相手はカザマ達だった・・・」

 「奴が初めに言っていました。フラガ少佐よりも
  上かと。でも、次にはこう言われました。お前
  達はフラガ少佐より格下だと・・・。俺は決し
  てこの屈辱を忘れません。奴を倒して、大西洋
  連邦国内で虐げられている日系人やその他の敵
  性国家出身者の希望になるのです」

ササキ大尉の演説は非常に正しく、美しく聞こえる
のだが、フラガ少佐は何故か応援しようと思えない
でいた。

 「そんなに、カザマが嫌いか?」

 「日本国内で差別されていたと聞いた事がありま
  すが、それを跳ね除けないでプラントに逃げ出
  した卑怯者です。奴は日本国内でコーディネー
  ターの為に、国に忠誠を尽くせば良かったので
  す。俺の様に」

フラガ少佐はますます頭が痛くなってきた。
そんな事は個人の自由なのに、一方的に自分の価値
観で他人を図っているのだ。
こんな男に狙われるカザマに同情してしまう。

 「それで、カザマに勝てる秘策はあるのか?」 

 「あります!」

 「何だそれは?」

 「フラガ少佐の弟子になる事です。奴と互角に戦
  えるあなたに教えて貰えば、勝利の目も見えて
  きます」

ササキ大尉に勝手に師匠にされたフラガ少佐はこれ
からの事を思うと、再び、頭が痛くなってきた。


(午前10時、オノゴロ島上空)

 「おーい!あの赤いロングダガーは殆ど損傷がな
  いから使えるぞ!」

 「ハワードニ尉はお手柄でしたね」

 「ババ三佐の仇も討てて俺は感動している」

俺とマユラとハワード二尉はオノゴロ島の上空で大
切な作業の指揮を執っていた。
その作業とは、戦場の後片付けである。
使えそうな兵器を回収して戦力の早期回復を図り、
戦死者の遺体を回収して、伝染病の流行を防ぐ。
あまり気持ちのいい作業ではないが、必要な作業で
はある。
昨日の集計でオーブ軍は15856名の戦死者を出
した。
これは、前線戦闘参加者の25%にあたり、近代戦
の定義で言えば全滅に近い数字だ。
幸いにして、補給・整備・事務官などの後方要員の
死者がほとんど出なかったので、軍の損害の回復は
予想よりも早く進んでいた。

 「しかし、連合軍の死者はどれほど出たんだ?
  見ていて吐き気のする光景だな」

海岸線に多数の海兵隊兵士の死骸が横たわっていた

基地を占領できれば勝利できると、焦った指揮官が
無理に上陸作戦を敢行してオノゴロ島守備隊とタケ
ミカヅチの砲撃で滅多打ちにされたらしい。
その他にも、パイロットや艦船の乗組員に多数の死
者を出して、その数は推定で3万人に達するらしい

そして、捕虜も15000人を超えているのだ。
その損害の大きさに驚かされてしまう。

 「これだけの戦闘があったのに、今日の午後には
  停戦協定が結ばれて明日には正式な講和条約の
  締結なんでしょ。オーブが貿易の中継点として
  重要なのは認めるけど、だったら始めから戦争
  なんてするなよなって思ってしまう」

 「地球連合の主流派がまともな連中なら、今回の
  戦争は起こっていない。主義者ってのは罪深い
  ものなのさ」

 「あれ?キサカ准将!」

キサカ准将がセンプウに、カガリが「暁」に乗って
現れる。
「暁」は徹夜の修理で金色に戻っていた。

 「カガリちゃんはここにいていいの?首都は大混
  乱なんでしょ?」

昨日の唯一の失敗は、レイダーに代表官邸の奇襲攻
撃を許してしまった事だ。
この攻撃でホムラ代表以下、ほとんどの現役閣僚が
死亡してしまい、政府は大混乱に陥ってしまったの
だ。

 「私は軍人だから政治に口を出せない。幸いにし
  て軍首脳幹部はオノゴロ島にいたし、政府内も
  お父様とウナトが纏めているから大丈夫だ」

 「それで、次期代表は誰になりそうなの?」

 「ここでは、ちょっとな・・・。基地内で話そう
  か」

俺達はオノゴロ基地内にある、特殊装甲師団司令室
に集まって話をする事にした。

 「それで、どうなりそう?」

代表の人選によっては、大きく情勢が変わってしま
う可能性がある。

 「ウナト様だろう。次期代表の最有力候補なんだ
  から」

アスランの意見にみんなが頷く。

 「いや、ウナトは軍部の支持が薄いし、この非常
  時には一番向かないタイプの政治家だ。それは
  本人が一番理解している。それに、連合の穏健
  派や中立派と秘密の会合を行うのに、代表にな
  ってしまったら秘密が保てなくなるから無理だ
  と断られたそうだ」

 「では、サハク家のミナ殿か?」

いつの間にかクルーゼ司令が俺の隣りにいて、次の
候補者を述べていた。

 「クルーゼ一佐、何時の間に・・・」

キサカ准将が驚愕の表情をしている。

 「大事な話と聞いてな。急ぎ参上したのだよ」

 「あっ、そうですか・・・」

どうせ、午後には判明する事なんだ。
部外者に話すわけでもないし、仕方があるまい。
とキサカ准将は思う事にする。

 「宇宙軍の再建が忙しいからと断られた。それに
  、ウズミの位落しの策略には引っ掛かからない
  そうだ」

 「位落し?」

ラスティーが首を傾げている。
本当は彼も部外者なのだが、クルーゼ司令が強烈過
ぎて、彼を咎めるものがいないのだ。

 「昔の日本で栄華を誇った貴族が行った、ライバ
  ル潰しの方法だ。ライバルにわざと高い地位を
  与えてプレッシャーで押しつぶしてしまうのだ
  」

俺がわかりやすく説明する。

 「つまり、ミナ様は・・・」

 「まだ、代表になるには力量不足と感じているの
  だろうな。勢力拡大や地盤強化がまだ足りない
  と」

シホとイザークは直ぐに理解したようだ。

 「じゃあ、誰が代表になるの?」

 「お父様だ」

 「えっ!ウズミ様が?」

 「あくまでも、臨時代表だそうだ。プラントと連
  合の戦争が終結して、講和条約が結ばれるまで
  の間だけの」

 「うーん、大丈夫かな?」 

ウズミ様の欠点である、理想に走り過ぎる点を心配
してしまう。

 「今更、政策を変更など出来まい。表向き中立を
  維持して中身はプラント寄りの状態を維持しな
  ければ、オーブの存続すら危ういのだ」

クルーゼ司令の意見が正しいのであろうが。

 「それで、俺達はこのまま後片付けをしててもい
  いのかな?」

 「いや、明日で部隊編成が大きく変わるから、カ
  ザマ達にはこれからオロファトに移動してもら
  う」

 「部隊編成を変えるの?」

 「ああ、特殊装甲師団は解散だ。最終決戦が宇宙
  になる以上、ザフトから借りていたパイロット
  達は全員返さなければならない」

 「オーブの守りは大丈夫なの?確か、生粋のオー
  ブ軍パイロットの生き残りって・・・」

 「今動けるのは、102名のみだ」

作戦参加パイロットが421名でディン部隊とクル
ーゼ隊の援軍が126名で合計547名。 
作戦終了後の生き残りが221名でザフト軍の援軍
パイロットの生き残りが61名で最初から傭兵契約
をしていた俺達の生き残りが58名のみだ。
勿論、これは直ぐに軍務に戻れる人数だけで、98
名の重軽傷者は入っていないが。

 「ここで、俺達が抜けたら大変じゃない?」

 「訓練生128名を緊急配備する。ここの後片付
  けをさせて少しでも練度を上げないと・・・」

 「訓練生って確か、モビルスーツで歩くのが精一
  杯で・・・」

 「員数合わせだ。任務につきながら訓練を続けて
  貰う」

連合向けに、ある程度の戦力を見せなければならな
いのだろうが・・・。

 「それと、モビルスーツの生産力は落ちていない
  の?モルゲンレーテ社の工場は爆撃で吹っ飛ん
  だでしょ」

オノゴロ島への爆撃で、モルゲンレーテ社の地上設
備は瓦礫の山になってしまっている。

 「事前に、地下工場に移転を完了させているし、
  新規の工場は全て海外に作られているのだ。
  生産力は下がるどころか、向上している」

 「親父か!」

いきなりドアが開いて、親父が入ってくる。
昨日といい、いきなり驚かしてくれる人だ。

 「ケープタウン・ダカール・ビクトリア・マダガ
  スカル・シドニー・ジャカルタ・沖縄・ストッ
  クホルム。モルゲンレーテ社は現地の企業と提
  携を結んで大躍進中だ。今ではそこでセンプウ
  とカイオウのライセンス生産を行っている。M
  −1は日本との競争に敗れてしまったからな」

 「貴方がカザマ君の父上でしたか。始めまして、
  元上司のラウ・ル・クルーゼです」

 「おおっ、あなたがクルーゼ司令ですか。バカ息
  子がお世話になりっ放しで申し訳ない」

 「いえいえ、それほどの事はしていませんよ」

クルーゼ司令の世話をしているのは、俺のような気
がするのだが。

 「では、これからはオーブの主力もセンプウにな
  るって事?」

 「プラントとプラント同盟国とオーブは全ての使
  用兵器の種類を統一する方向で話が纏まってい
  るのだ。でなければ、連合の巨大な生産力に太
  刀打ち出来ないからな」

 「それで、第一弾はモビルスーツ(センプウ)な
  んだ」

 「それと、自衛隊で開発された(カイオウ)も統
  一規格兵器に認定されている」

 「カイオウ?」

 「水中用のモビルスーツというか?MAというか
  ?小型潜水艦というか?よくわからない代物だ
  」

石原一尉が細かいスペックを教えてくれる。

 「役に立つんなら何でもいいじゃん」

 「だな」

実戦経験が長い、俺と石原一尉の感想なんてそんな
ものだ。
他にも、小さい物は拳銃、ライフル、自動小銃、機
関砲、高角砲・速射砲・ミサイルなどの弾薬の口径
指定から大きなものは戦車・装甲車・戦闘ヘリ、輸
送機、小型艦船、小型潜水艦などの共同開発にも及
んでいるらしい。
まあ、これはあくまでも将来的なもので、とりあえ
ずは同盟国軍同士の補給が円滑になるように、同じ
弾薬やミサイル・燃料・予備パーツが使えるように
しましょうというものらしい。
補給がままならないと、戦況の悪化を招く恐れがあ
るからであろう。

 「同盟国軍は、連合軍の鹵獲兵器が大半だからな 
  。意外と楽な仕事だったよ」

世界で独自に兵器を開発できる国は少ない。
大西洋連邦・ユーラシア連合・東アジア共和国・日
本・台湾・オーブ・スカンジナビア王国、これくら
いが精々で、残りの小国は前の3ヶ国の武器を購入
していただけだった。
そして、独自の軍備を計画すると必ず邪魔に入るの
が例の3ヶ国で、その結果、向こうの言い値で高い
武器を買わされ続けていたのだ。

 「今は、モルゲンレーテや日本・台湾・プラント
  の企業が現地で合弁企業を設立して技術指導中
  だ。今は、組み立て作業と簡単な部品の製造の
  みだが、将来的には独自に兵器を開発して貰う
  つもりだ」

 「経済格差が無くなるのはいい話だけど、その糸
  口が兵器ってのが救われない話ですね」

 「ラスティー君、この計画の推進者は君の父上な
  のだよ。息子の君がそんな無理解では困ってし
  まうな」

 「えっ!そうなんですか?」

 「私はオーブ側の責任者に過ぎないからな。それ
  に、今は兵器工場でも将来軍縮になれば、民生
  品生産の工場に即時転用可能だ。近年では軍事
  技術と民生技術の差などあって無きがごとしだ
  からな」

 「新しい工業大国を複数作り出し、大西洋連邦な
  どと拮抗させて緩やかな国家連合を創設する。
  これが、プラントの狙いですか?」

アスランはさすがに頭が良く回るようだ。

 「そして、それを助けながらプラントは安定した
  価格で安定した量の資源を供給していく。そう
  すれば、長期に渡って同盟国の信頼を勝ち取れ
  るわけか」

イザークも政治家の息子なだけはあって、理解が早
い。

 「まあ、そんなところだ。各国の技術力と生産力
  が上がれば、更なる資源の不足を招くから、そ
  の解決策に宇宙開発を促進するわけだ。人口問
  題もあるからな。同盟国が宇宙に進出してコロ
  ニーを建設する事業を手伝うわけだ」

親父の説明が更に続く。

 「その後、宇宙コロニーの住民に自立意識が芽生
  えれば、新しいコロニー国家の建設が成される
  可能性が高い。そうなれば、宇宙の住民が団結
  して地球国家群に拮抗する勢力になるだろうし
  ね。そうなれば、コーディネーターなんて埋没
  してしまう可能性が高いか」

 「でも、それだと新しい戦争の引き金になりませ
  んか?」

シホ問題点を指摘するが。

 「さあな、その時はその時代の政治家が解決すれ
  ばいいんだ。百年以上先の話に嘴を突っ込んで
  もしょうがないからな」

さすがに俺も生きていないだろうからな。

 「さて、話が大分反れてしまったが、臨時の代表
  府に出発だ。俺も昨日アフリカから帰ってきた
  ばかりなんだが、急遽呼び出されていてな。
  さあ、行くぞ!」

親父やカガリ達と出かける事にする。
結局、ディン部隊のパイロットは乗機でカーペンタ
リアに戻り、クルーゼ司令の降下部隊は輸送用シャ
トルでアメノミハシラ上がってから、待機している
艦隊と共にプラントへ帰還する事になった。
それには、傭兵契約をしていた元ザフト兵も同行し
て、一緒にプラントへ帰還するらしい。

 「モビルスーツはどうするんですか?」

 「同じく、輸送用シャトルで上げる事になった。
  オーブで使用可能な機体は全部売買契約を結ん
  で置いていく」

クルーゼ司令は既に詳細を聞いているらしい。
センプウやGは置いていくのか。

 「私達はどうなるのですか?」

 「アークエンジェルの修理が終わるまでは動けな
  いだろう。修理後、カグヤのマスドライバーで
  宇宙に上がってから、プラントに帰還して貰う
  つもりだ」

 「今、アークエンジェルには搭載モビルスーツが
  一機も無いのですが・・・・」

 「センプウを6機貰う事になっているから大丈夫
  だ。それに、プラントへ帰れば新型機の支給が
  あるからな。万が一の保険のようなものだ」 

新型機か。
俺は個人的にあまり好きではないのだが・・・。

 「と言うわけだから、急いで出掛けるぞ」

親父が急かしてきた。

 「わかりましたよ。あれ?ディアッカは?」

 「さあ?」

 「アサギとハワード二尉も見えませんね」

ニコルとマユラも知らないようだ。

 「あいつは何処に行ったんだ!迷惑を掛けやがっ
  て!」

イザークが怒っているが、いないものは仕方が無い
。 

 「ヘリで待っているか」

 「そうですね」

俺達は輸送ヘリで待つことにした。
その時、ディアッカは・・・・・・。


(地下基地内、空き倉庫)

その時、ディアッカは最大のピンチを迎えていた。
椅子に縛られて、2人の男女に取り囲まれていたか
らだ。

 「あのさ、縛るのはやり過ぎだと思うんだけど・
  ・・」

 「出鱈目な情報を教えたくせに、反省がありませ
  ん!」

出鱈目な情報とは、昨日の(乱れ桜)の件であった

 「何処が格闘戦が苦手なんですか!初対決だった
  し、勢いで乗り切れたけど、死ぬかも知れなか
  ったんですよ」

アサギの説教が続く。

 「いや、格闘戦が苦手というか、ミサイルで敵を
  仕留めるのが得意技って聞いてたから射撃戦に
  持ち込むと不利かなって」

ディアッカは事前に、情報部から(乱れ桜)の事を
聞いていたのだが、彼女の強さはその予想を超えて
いた。

 「大体、ディアッカはフリーダムとジャスティス
  両方に乗って戦ったんでしょ。素直に感想を言
  えば良かったのよ」

 「うーん、とにかく強かったわ」

 「それを先に言えーーーーー!」

アサギの怒りのテンションが上がっていく。
ディアッカは本能的に身の危険を感じる。

 「あのさ、ハワード二尉。助けてくれない?」

 「すまんな。惚れた弱みだ。あきらめてくれ」

最後の望みが絶たれてしまった。

 「あの・・・、優しくしてね・・・」

 「出来るかーーーー!」

その後、10分ほどディアッカの悲鳴が空き倉庫内
から聞こえ続けた。


 「ディアッカ!遅いぞ!」

10分ほど経ってから、ディアッカとアサギが現れ
たので、ヘリを発進させる事にする。
ハワード二尉は第一師団所属なので、オノゴロ島残
留が決まっていて、見送りにだけ来てくれた。

 「アサギに仕事を頼んでいたので、遅刻させてし
  まいました。申し訳ありません」

 「仕事なら仕方がないさ。しかし、ディアッカは
  何をしていたんだ?」

 「いえ・・・。特に何も」

 「どうせ、基地の女性兵士でもナンパしてたんだ
  ろ」 

イザークが厳しい一言を投げかける。

 「しかし、ディアッカは傷だらけだな。昨日はそ
  んなに苦戦していたのか?」

クルーゼ司令はディアッカが傷だらけなのに気が付
いた。

 「あれ?でも、昨日は無傷だったような・・・」

ニコルは不自然さを感じたが、アサギの顔の表情を
見て追求を止めた。

 「聞かぬが仏ですね」

 「まあ、いいや。ハワード二尉。後を頼むね」

 「ババ一佐の分まで頑張ります」

 「二階級特進か・・・」

映画やドラマではよく見るシチュエーションだな。

 「じゃあな。ハワード二尉は死ぬなよ」

 「あなたの方がこれから大変なんですよ」

 「だったな」

 「では」

ヘリはオロファトに向かって飛んでいった。
時間はお昼前。
今、臨時代表府になっているオロファトホテルで停
戦協議が行われていて、もう少しで合意に至るらし
い。 

 「しかし、主義者ってのは無茶をするよな。テロ
  ぐらいなら可愛いものなんだが、政府と軍部を
  動かして戦争を仕掛けるなんて」

カガリは憤慨しているようだ。

 「結局、上手くいかないで、後始末はプロの政治
  家に一任だからね。無責任で困ってしまいまう
  よ」

大西洋連邦のハル外務長官は使い物にならないので
、アルスター外務次官が交渉をしているらしい。

 「結局、条件と言ったって以前と変わりなしでし
  ょ」

 「一応、領海侵犯問題の処理を誤り、戦闘行為を
  誘発した大西洋艦隊のミスを認めて謝罪するそ
  うだ」  

キサカ准将が交渉経過を教えてくれる。

 「そんな茶番で、何万人も死んでしまったんだな
  」

 「さすがに、ブルーコスモス強行派への風当たり
  は強くなっているようだ。ウナト様もこれから
  は動きやすくなると喜んでいた」

 「でも、アズラエル理事は気にしていませんよね
  」

 「月の艦隊が上手くやれば奴の勝ちだからな。そ
  れに、ブルーコスモス強行派の連中も奴にとっ
  ては使いでのいい駒に過ぎないからな」

そんな話をしている内に、オロファトホテルの屋上
に到着した。
ヘリを降りると、意外な人たちが出迎えてくれる。

 「ウズミ様、ウナト様、アルスター外務次官、フ
  レイ、ラクス、レイナ、カナ、ミリィー、キラ 
  達まで・・・」

先にオロファトに出発していたキラ達は、私服に着
替えて俺達を待っていてくれていたようだ。 

 「カザマ君、よくやってくれた。オーブは滅びず
  に済んだようだ。心から感謝する」

ウズミ様にお礼を言われてしまった。

 「私の力だけだはありませんよ。祖国を守る。そ
  の1つの目標に全兵士が答えたのですよ。それ
  で、停戦条約の方はどうなったのですか?」

 「それなら、もう発表してしまった。事前に決ま
  っていた事なので、今更決める事なんて無かっ 
  たのだ」

アルスター外務次官が事情を説明してくれた。

 「オーブは以前のまま、中立国で中継貿易を続け
  るわけですね」

 「位置的にスカンジナビア王国一国では、全ての
  荷がさばけないからな。オーブならギガフロー
  トの完成で更なる輸送力強化が期待できる」

戦争状態でも経済状態の維持に駆けずり回っている
、プロの政治家の意地を見たような気がした。

 「100億の人間を食わすのって大変ですね」

 「アズラエルのバカはそれを理解していながら、
  ブルーコスモス強行派を焚き付けて戦争を開始
  させたのだ。奴は自分を混沌した世の中を纏め
  上げる英雄だと思っているからな。多数の犠牲
  はその英雄立志伝の彩りくらいにしか思ってい
  ないのだ」

 「自意識過剰もいいところですね」

 「先年無くなった父親の影響が大だな。あれとラ
  イバル関係にあったアル・ダ・フラガは最悪な
  人間だったな」

 「フラガ少佐の父親ですよね」   

 「息子の方は信じられないくらいの善人だな」

 「そして、私のライバルでもあるのですよ」

今まで黙っていたクルーゼ司令が声を上げた。

 「あれ?パパと声が似ているのね」

フレイはクルーゼ司令の仮面には驚かないで、声が
似ている事のみに驚いているようだ。
というか、誰も仮面に驚いている人間がいない。
やはり、一国の指導者や大物政治家はその程度の事
で驚かないようだ。 

 「その割りには、昨日の追撃時にはフラガ少佐を
  無視していたような気がしますが」

 「それはだな。敵を落とすと手当てが貰えると聞
  いたからだ。ムウは何時でも倒せるが、今月の
  財布の状態は看過出来ないところまで来ていた
  のでな」

クルーゼ司令が小遣い稼ぎにまい進する。
その事実に全員の目が点になった。
確かに、フラガ少佐にこだわっていると、撃墜手当
ては一銭も入らないだろう。

 「ザフト軍司令職は役職給でな。残業代や諸手当
  てが一銭も入らないのだ。おかげで、つらい日
  々を送っている」

 「夢も希望も無い話ですね」

キラがぽつりと呟く。

 「私はちゃんとお小遣いをあげるから、心配しな
  いで」

レイナの発言に全員が驚き。

 「ニコルも心配しないでいいよ」

カナがそれに続く。

 「私達は共働きで、別のお財布になるから心配な
  いですね」

シホとラスティーが素早く確認していた。

 「俺も小遣い制になるのか?」

 「私の個人資産で小遣いくらいなら問題ないさ」

アスランとカガリも問題は無いようだ。

 「俺はどうなるんだろう?」

 「大丈夫よ。恥をかかない位は持たせてあげるか
  ら」

 「外務省職員だった時のママは渋くてな」

イザーク、フレイ、アルスター外務次官の方も問題
は無いようだ。

 「俺は?」

 「相手がいない男は黙っていなさいよ」

ディアッカはアサギに一蹴されていた。

 「俺達は・・・」

 「普通にやりましょうよ」

石原一尉、マユラ、トール、ミリィーは小声で確認
していた。

 「ヨシヒロは安心してくださいね。カードを持た
  せてあげますから」

 「すげえ!豪華ですね。羨ましいな。ヨシさんは
  」

 「ディアッカよ。それなら私の方がマシだ」

 「どうしてです?クルーゼ隊長」

 「カードは詳細な明細が出るのだ。何時、何処で
  、何を買ったかまでだ。浮気監視には最適な方
  法だな。もし、私なら御免被りたいところだな
  。貧しくても自由を選びたい」

えっ、俺って鎖で繋がれたようなもの?

 「いくらでも使ってくださいね」

俺はラクスの笑顔に邪なものを感じてしまう。

 「俺と同じかよ・・・・・・」

親父が呟いていた。
どうやら、親子で遺伝したらしい。
それを知った瞬間、運命を受け入れる俺が存在して
いた。


 「彼らは戦争の翌日に面白い話題で盛り上がって
  いるな。さすがは、歴戦の勇者達だ」

 「これくら図太くないと、生き残れないのですか
  ね」

ウズミとウナトは二人で蚊帳の外に置かれていた。


 「俺はまだマシな方だったんだな」

1人、キサカ准将が小さな幸せをかみ締めていた。 


屋上での無駄な会話が終了して、俺達はホテルのレ
ストランで食事を取っていた。

 「うわー!美味しいですね。お替りが欲しいな」

ウズミ様は今日の早朝に軍を退役して、アカデミー
への入学準備をしていたシンとステラまで招待して
いた。

 「お前な。恥ずかしいからお替りなんて言うなよ
  。アカデミーでは、テーブルマナーの講義とか
  もあるんだから。それに、ステラを見てみるよ
  。礼儀正しく食べているだろ」

母さんに教育を受けたステラは、静かにスープを飲
んでいる。

 「まあ、それはアカデミーに入学してからの事に
  しましょうよ」 

シンは全く気にもしていない。

 「とにかくだ!寮に入るまではホーク課長の家で
  お世話になるんだから、あの恐ろしい食事量を
  抑えてくれよな」

本当は俺、シン、ステラの名義で官舎を借りようと
思ったのだが、相変わらずの官舎不足で断られてし
まったのだ。
シンが血縁で無い事が原因らしい。
俺の官舎は教官を辞任後、ワンルームの部屋に戻っ
てしまったので、3人で生活するのはキツイ。
どこかのウィークリーマンションにでも放り込もう
かと思っていたところに、ホーク課長から連絡があ
って、入寮するまでなら面倒を見ると言われたので
お願いする事にしたのだ。

 「大丈夫ですって」

シンのお気楽さにあきれてしまう。

 「困ったものだな。なあ、親父」

隣りの席の親父を見ると、奴は何かの手帳に書き込
みをしていた。
覗き込んで見ると、「殺リスト」とタイトルが書か
れている。

 「何々、一位がシンで二位がキラで三位がニコル
  で四位がキスリング少将か。奴は俺も嫌いだけ
  どね。五位はアスカ主任?シンの父親か?」

親父は順位の書き換えに夢中で、俺が覗いている事
に気が付いていない。

 「親父!陰湿な事は止めろよ。みっともないから
  」  

 「五月蠅いな。俺の天使達を奪った悪魔共め。い
  つか引導を渡してやる」

まだ、あきらめていないのか

 「キスリング少将は?」

 「俺の邪魔ばかりしやがって!モビルスーツの事
  なんて、何もわかっていないくせに!」

仕事の恨みがようやく四位にランクインかよ。

 「シンの親父は?」

 「シンを生み出した罪万死に値する」

シンの親父さん不幸だな。
上司に睨まれちゃって。

 「忌々しい事に優秀なのだ。無能なら首に出来る
  のに!」

一応、公私のけじめはつけているのか。

 「ウズミ様。我々はこれからどう動けばいいので
  すか?」

クルーゼ司令が代表して質問する。

 「明日にはシャトルの用意が出来るからクルーゼ
  司令と降下してきた者達は空に上がってくれた 
  まえ」

 「私達はどうしましょう?」

 「カザマ君達はアークエンジェルの修理が終わる
  まで、待機だな」

 「待機ですか」

 「1週間では出来る事も少ないからな。訓練生の
  面倒でも見てくれればいい」

 「オーブ軍は大丈夫なのですか?」

 「実は、一部の傭兵達に残って貰う事になった。
  ムラクモ・ガイもカガリの護衛に残って貰う」

まあ、モビルスーツを見せておけば再び侵攻される
可能性は低いだろうしな。

 「それとだ。明日と明後日は休んでくれて構わな
  い。明日はクルーゼ司令の見送りで、明後日は
  シン君達の見送りだろう?」

シンとステラは明後日にプラントへ上がる予定だ。

 「ご配慮に感謝します」

 「ホテルに部屋を取ってある。今日は泊まってい
  きなさい」

臨時代表府に指定されているから、俺達もVIP扱
いらしい。 

 「ラスティーとディアッカは今日でまたお別れか
  送別会を開くか」

 「いいですね」

 「やりましょう」

 「場所はホテルのお店に予約を取るとして、午後
  はどうしようかな?」

午後もオフらしい。
生き残った甲斐があったというものだ。

 「心配ありませんわ」

ラクスが指摘した通り、ほとんどの連中がカップル
になって街中に散っていく。

 「おのれ、シンめ!ステラをデート連れて行きお
  って!」

親父がブチ切れていたが、あれはデートというより
は友達同士で遊びに出かけるという類のものだ。
どうせ、マユちゃんが合流するだろうし。

 「俺はどうしようかな?」

ディアッカが迷っていると。

 「お土産を買わなければいけないのだ。付き合っ
  てくれ。ディアッカ」

余計な一言を言ったディアッカが、クルーゼ司令に
強引に引きずられていった。

 「何で俺なんですか!?」

 「いいだろう。どうせ相手もいない事だし」

 「お土産って誰にです?」

 「嫁さんへだ。選ぶのを手伝いたまえ。上官命令
  だ」

 「そんな。酷い・・・」 

ディアッカが小さくなっていく・・・。

 「あの人、あんなキャラだったっけ?」

 「さあ?」

 「俺達はどうする?出掛けようか?」

オロファト周辺は爆破された代表官邸以外は平和な
もので、お店なども普通に営業しているのだ。

 「約10日ぶりの再会です。2人っきりになりま
  しょう。さあ、私のお部屋へ」

ラクスが何故個人的にこのホテルの部屋が取れたの
かは不明だが、俺はラクスの部屋引きずりこまれて
しまった。
更に、夜の送別会の終了後もラクスの部屋に引きず
り込まれてしまって、一睡も出来ないままに朝を迎
えたのだった。


翌朝、眠たい目を擦りながらホテルのレストランで
朝食を食べていると、アスランが話しかけてきた。

 「ヨシさん、大丈夫ですか?やつれてますよ」

 「戦闘中でもこれほど疲れた事はなかった」

 「大変ですね」

 「お前も大変だったんじゃないの?」

 「俺達は普通ですので・・・」

 「まあ、誰が普通でないのですか?」

突然、後ろにラクスが現れる。

 「いや・・・。それは・・・」

 「詳しくお話を聞かせてくださいね」

 「いや、それは誤解でーーーーー!」

アスランはラクスに引っ張られていった・・・。

 「バカな奴」

 「本当だな」

 「カガリちゃん、アスランを見捨ててもいいの?
  」

 「あの娘には勝てる気がしないんだ」

アスランの隣りにいたカガリは、俺の隣りに座ってから
何事もなかったかのように朝食を食べていた。


午後9時になり、カグヤのマスドライバーではモビ
ルスーツを搭載したシャトルが次々にアメノミハシ
ラに打ち上げられていた。
ザフト軍の戦力を移動させるのは微妙に違法の可能
性があるが、連合とはまだ停戦状態でモビルスーツ
もまだオーブ軍の所属という事になっているので、
問題は無いとの事だった。

 「俺達は荷物と一緒の打ち上げかいな」

クルーゼ司令のお土産を持たされているディアッカ
が文句を言っている。

 「一緒に乗っていないと、万が一の時に応戦が不
  可能になるだろうが」

アメノミハシラではM−1隊とクルーゼ艦隊の残存
モビルスーツ隊が護衛に入っているが、万が一に備
えるのは悪くない事だ。

 「ラスティー、プラント本国で会いましょう」

 「そうだな。シホ」

ラスティーとシホがいい雰囲気なので、誰も近づか
ないでいる。
邪魔するのは無粋な事だかたらだ。

 「俺ってどうしていつも1人なの?」

 「運が無いからだろう」

 「軽いからなディアッカは」

 「可哀想で言えませんよ」

アスラン、イザーク、ニコルに立て続けに止めをさ
されたディアッカは泣きながらシャトルに乗り込ん
で出発していった。

 「ちくしょう!プラントで彼女見つけるぞ!」

ディアッカの絶叫が空に響いていたような気がした

 「明日はシンとステラの見送りだな」

明日は、シンとステラの旅立ちの日だ。
うちの親父が暴走しないか。
マユちゃんは納得して送り出してくれるのか?
疑問は多々あるが、それは明日にならないとわから
ない事だった。


          あとがき

思いっきりスランプです。
もともとレベルが低いのでこれ以下はないのですが
、上手く書けないので短めにしておきます。
前回、不評だった特務隊ですが、彼らは限定した
動作を繰り返し訓練する事で自分達を達人に見せて
いる連中です。
だから、ラミネート装甲の機体に乗っていて、始め
にディンのビームマシンガンが命中しています。
そして、始めは強かったのですが、経験豊富なガイ
や奇抜なホー1尉、そして、攻撃パターンを読んだ
ハワード二尉に倒されてしまったのです。
反アズラエル派の彼らにはその最新の技術やOS
も回ってこないので、それが限界だったのです。
まあ、昔のアニメに例えると、中だるみ対策で出
てくるような連中ですね。

次回の更新はわかりません。では、また。

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