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「まぶらほ〜魔獣使いの少年〜第五話の一(まぶらほ+モンコレ)」

ラフェロウ (2006-03-23 00:22)
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「大丈夫ですか?」

「……………え……?」

私は、自分にかけられたその言葉を理解できなかった。

いや、理解はしていたが、何故その言葉を私に伝えたのかが分からなかった。

黒く、どこまでも澄んだ瞳には、確かな優しさがあった。

その瞳に私は魅了された。

あぁ、なんて綺麗な色なのだろうか……。

灼熱に燃える地で、私は一人の、私にとっての救世主に出会った…。


まぶらほ〜魔獣使いの少年〜 第五話その一「平凡な毎日。崩れるは一瞬」


「ふぁぁ〜、眠い……」

欠伸を噛み殺しながら朝の通学路を歩くのは、制服姿の少年。

パッと見、ちょっと童顔だがそれなりに整った顔つきをしている。

髪の毛は癖っ毛なのか、ちょっと針のようにはねているが、当人気にした様子も無い。

「う〜ん、余裕を持って登校するなんて久しぶりだなぁ…」

などと言っているのは、ご存知我らが主人公、マイペース鈍感野郎、式森 和樹である。

朝が弱くい彼にしては、珍しく早めの登校である今日。

それには理由があった。

「それにしても、シェリスも乱暴な起こし方するんだもんなぁ……」

と呟きながら自分の胸元を見る。

朝方、目覚ましが鳴った頃に、突然第9の門が騒がしくなった。

なんだなんだと飛び起きてみれば、ダークエルフのシェリスが、自分を起こすために暴れたのだ。

その事に文句を言うが、「仮にも主だろ? アタシの主人を名乗るなら、キチッとした生活をしてもらうよ。」と言い返された。

姉御肌で世話好きなのか、何かにつけて面倒見てくれるシェリス。

ダークエルフの姫に世話されてる人間なんて、世界中探しても和樹くらいなものだ。

檻の中に居ると会話は出来ないが、警告などは出来るので、それを使って和樹を叩き起こしたのだろう。

内から起こされたので、寝惚け不機嫌モード【ワル和樹】も降臨せずに済んだようだ。

同室(?)であるドライアドのエシャルも面白がって警告するものだから、和樹の目覚めも一発だった。

もっとも、身体の中で暴れられているようなものだから、当人にしてみればご遠慮願いたい起こし方だ。

もっとも、そんな事言っても「なら自力で起きれるように努力しな」と返されるだろう。

最近和樹の支配に入ったシェリスだが、すっかり馴染んだようだ。

「先輩、おはようございますっ」

「あ、凜ちゃんおはよう」

後ろから追いついた形の凜が元気良く、それでいて礼儀良く頭を下げる。

この辺りは本家での修行で培ったモノなのだろう。

「今日も頑張ってオニギリを作ってきました、是非食べてくださいっ」

「あ、あははは…楽しみにしてるね」

ちょっと引き攣った笑みで返す和樹。

あのマイペース帝王が焦るオニギリ。それが凜のオニギリである。

見た目がグチャグチャなのはまだマシだ。見た目が普通っぽくて、味が想像を絶すモノまである。

しかも、微妙に美味しいのが混ざっているので、まさにギャンブルなのだ。

シェリス達ダークエルフ事件で初めて食べたオニギリだが、かなり凶悪なモノだった。

何せ、危うく綺麗な世界を垣間見るところだったのだから。

「こ、今度は大丈夫です、ちゃんと先輩の好きな具も入れてきましたしっ」

ちょっと必死な凜ちゃん。

彼女にとって、唯一まとも(?)に作れるのがオニギリだけなので、これでレベルアップを図るつもりらしい。

現在夕菜達に教わり料理の勉強中だが、その夕菜が「和樹さん…私、もうダメみたいです……」と言って倒れるくらいなのだから、相当なのだろう。

その後、調子に乗ってキスを強請った所で玖里子達に止められたが。

「あはは、期待してるね」

「はいっ」

と、とっても嬉しそうに頷く凜。

その姿は完璧恋する乙女である。ピンチ、人狼のお兄さん。出番が無い。

「和樹さ〜んっ、待ってください〜っ」

と、後ろから呼ぶ声。

振り返ると、夕菜と玖里子が手を振っていた。

「はぁ、はぁ、やっと追いついた…。もうっ、酷いですよ和樹さんっ、私を置いて行っちゃうなんてっ」

「はぁ〜い和樹。でも酷いわ、せっかく朝駆けとして布団に潜り込もうと思ったのに」

「おはよう夕菜、玖里子さん。置いてったのはごめん。あと潜り込まないでください。」

と、冷静に切り返す和樹。

もはや慣れたものである。

「はい、おはようございますっ。……ところで凜さん、最近妙に和樹さんと仲良くありませんか?」

ニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべ和樹に挨拶を返すが、すぐさまジロリと凜を睨む。

それに対して凜は一瞬ビクッとするが、直ぐにキリッとした顔に戻る。

「別に、私と先輩が仲良くして何か問題がありますか?」

「大有りですっ!凜さん最初は和樹さんの命狙ってたじゃないですか、ひょっとしてまだ…」

「し、失礼な!もう先輩とは和解済みです、それだったら夕菜さんだって式森協定に違反しているんじゃないですかっ!?」

式森協定。B組女子が定めた式森和樹に対する協定であり、破った者には厳しい処罰が下される。

「そ、そそそそんなことありませんよっ!?」

「本当ですか…?知ってるんですよ、毎日のように先輩の部屋に押しかけて料理を作っている事を!」

式森協定第21条、過度の手料理をご馳走してアピールする事を禁ず。

一人辺り許される回数は週3回。だが夕菜は余裕で超えている。

「そ、それは…って、なんで凜さんが式森協定を知ってるんですっ!?」

「あ、しまった…っ」

ハッとなって口を押さえる凜。

式森協定は、和樹が好きで好きで堪らない人だけが守る決まりであり、破っている人間は最高議長の手によって裁かれる(議長は和美。彼女が言えば和樹は大抵の事を言うとおりにしてしまう)。

破って和樹に嫌われたりしたら大変なので、皆ちゃんと守っている…ように見せかけて、裏では色々やっている模様。

因みに、協定の存在は普通の女子は知らず、好きになった子だけが和美達から協定を纏めた本を渡され、登録して初めて和樹と正式に付き合う権利が生まれる。

まぁ、生まれるだけなので、彼を射止めるには努力が必要なのだが。

中には和樹を好きになって告白等をするのに、何故他人の許可が居るんだ!? と言って突っぱね様とした子も居たが、和美達の事をほぼ無条件で信じている和樹だ、和美達に何かを吹き込まれれば、無条件で信じてしまう可能性が高い。

それ故、和美達には誰も逆らえないのが現状。

まぁ、最近ではそれも段々無効になってきたようだが。

何せ基本はお人好しの和樹だ。自分に向けられる好意には気付かないが、それでも仲間として好かれている事を感じ取って、和美達のように無条件で信頼してしまう人が増え始めている。

筆頭が怜子や雪江、那穂である。

近いうち、協定に関して大規模な争いが勃発しそうだが、それに関しては和樹はまったく知らないのでまぁ問題ないだろう。

で、話が長くなったが、凜がその協定について詳しく知っているという事は…。

「凜さん…貴女もなんですね…っ」

両腕に魔力を纏わせる夕菜。普段和樹に嫉妬してものらりくらりと避わされ、さらにマイペースオーラに飲まれて嫉妬パワーも燃焼しないため、こういう時に暴走してしまうご様子。

まぁ、問答無用のキシャーモードよりマシだろう。

「そ、そうです、それが何かっ!?」

開き直った。

刀に手をかけてキッと夕菜を睨みつける凜。

「ありゃりゃ…どうなってるの?」

「アンタ、本当に鈍いわね…でもそんな所も可愛いわ♪」

その横で相変わらず鈍感ボケボケな和樹と、そんな和樹に母性愛が刺激でもされたのか抱き締めて頭撫で撫でしている玖里子。

さり気なく玖里子も登録し、協定を知っていたり。

「あぁっ!!玖里子さん何してるんですかっ!」

「そうです、先輩を胸に抱いて撫で撫でなんて、何て羨ま…もとい、破廉恥なっ!!」

怒りの矛先がこちらに向くと、素早く胸元から霊符を取り出す玖里子。

その行動に別の嫉妬パワーが増加する二人。

胸元から道具。それは胸が無い人間にとっては、屈辱に他ならない。

「和樹さんから離れてくださいっ!!」

「先輩は私が守りますっ!!」

「硬い事言わないで、少し位いいじゃ…ないっ!!」

と、激突する三人の魔法。

朝っぱらから繰り広げられる高レベル魔法の戦闘に、周囲の鳥や動物が一斉に逃げる。

「三人共〜、遅刻しちゃうよ〜?」

と、安全場所に避難しつつも一応声をかける和樹。誰も聞いちゃ居ないが。

和樹の腕に抱かれ、ゴロゴロ言っている猫が、呆れた目で見ていたり。

因みに三毛猫である。

本来なら一番危険な場所である和樹の腕の中。

危険度よりも彼の腕の温もりを優先したようだ。

中々豪胆な三毛猫さんで。

「まったく…置いてくからね〜」

一応声をかけてその場を離れる和樹。

頭の上に猫を乗せて、ゆったりと歩く和樹。

その姿があまりにもほのぼのし過ぎて、通りがかった老人やサラリーマンが微笑んで見ていたり。

最も、その後遭遇する魔法大戦にビックリして腰抜かすのだが。


和樹達の通学路から離れた、少し小高い丘の上。

見晴らしが良いそこに、双眼鏡を覗く二人の人影があった。

一人は背が高い金髪で、腰を超えるほどに長い。

クリーム色のロングコートを着ている、傍目にも美人と思える女性。

もう一人は無精ひげに下卑た感じの、やばそうな男。

なんとも不釣合いな二人組みが、そこに居た。

「へぇ〜、中々の魔力と魔法じゃねぇか」

「そうだな。だがあれでは魔法回数の無駄使いだ。魔力の操作もなってない」

女性の言葉に「違いない」と答え、下品な笑いを浮かべる男。

「だが、相手が高校生ならもっと近くでも良かったんじゃないか?あれじゃ真後ろでも気付かないぜ?」

確かに、あの状況の三人なら在りえる。

「へへへっ」と下品な笑いを浮かべるのが癪に触ったのか、女性の眉がピクンと動くが、それに男は気付かない。

「その意見には否定だ。見た目は子供でも、相手は魔術学校でTOPに入る三人だ。迂闊な動きは出来ない」

「へいへい、そうですか」

と言ってめんどくさそうに双眼鏡を覗く男。

女性も同じように双眼鏡を覗き込み、頭に猫を乗せた男を見る。

「(あの男…間違いない)」

無意識に拳を握り、顔が歪む。

が、次の瞬間にはいつも通りの無表情に戻っていた。

「うへへへへ」

突然、隣の男が下品を超えた、変態みたいな声をあげた。

「どうした、ヴィペール?」

と女性にヴィペールと呼ばれた男は、双眼鏡を覗いたまま。

「ディステル、見てみろよ、あのガキいいケツしてるじゃねーか。うへへへ」

と、のたまった。

その言葉に、ディステルと呼ばれた女性は、かなり強い軽蔑の視線を向ける。

そりゃそうだろう、こんな発言、見られている者と同じ女性として許しがたい。

「おいおい、そんなにお高くつくなよ、監視の任務じゃ、これ位しかお楽しみが無いんだからな」

と言って舌なめずり。真に変態である。

ディステル内で、あまり親しくないこの男は【女性の敵】としてランク・インした。

今度から後ろとかには気をつけようと思うディステル。

「なぁ、あついら無防備なんだし、今ここで行動起こした方が良いんじゃねーか?」

「駄目だ。まだ工作が終わっていない。じきに終わる、それまで待て」

「けっ、マスコミや警察への根回しと裏工作なんざ、さっさとやれってんだ」

「少しの辛抱だ。その時に計画を発動させる」

双眼鏡を覗くディステル。

そこには、和樹が居ない事に気付いて慌てる夕菜達の姿。

「今行動を起こし、騒ぎになれば日本での動きが制限されるぞ」

「そいつぁ困るッ!!せっかくの楽しみが台無しになっちまうぜ、げへへへっ」

双眼鏡を覗いたまま、何やら興奮している様子のヴィペール。

見ている場所が夕菜達の方ではないので、気になってそちらを見てみる。

そこには………


ウホっ、良いケツ!


「………………………」


猫を頭に乗せた少年の姿が!!


「へへへ、やっぱり童顔美少年大国日本だな。海外のやたら大人っぽいガキに比べてショタ度もクリアの一級品揃いだぜ!」

ジュルリ…と涎を拭うヴィペール。別名、真正変態。

ズザザザザザザ………ッ

と、足も動かさずに横に平行移動するディステル。

彼女の顎はあんぐりと開き、今にも外れそうだったが、何とか自分の腕で押し返した。

そして持ち前の冷静さで正気に戻り、浮かんだ冷や汗を拭う。

「いくぞ」

「えぇっ!?もう少し良いだろ、せめてトイレに入るまでっ!!」

何言ってんのこの変態? とか思いつつも引き上げるディステル。

彼女の中で、彼の扱いは【女の敵】から【色々な敵】に変わっていた。

むしろもう【人類の敵】でもOKかもしれない。


「(ゾクっ)……なんだろ、今物凄く嫌な寒気がしたな…」

「にゃ〜?」


「ちぃっ、もう少し視姦したかったぜ…」

誰かこいつを止めろ。そろそろヤバイ、作者とか。

「もう少し行動と言葉を慎め。外人はただでさえ日本では目立つ」

「わかってるって。まだ体育の着替えのチャンスがあるしな」

変態の言葉に眩暈でもしたのか、額に手を当てるディステル。

この男の言葉を聞くだけで、精神的に病んでくる。

「どうした?『血塗れのディステル』が悩み事かぁ?」

その悩みの大部分であるのはその自分であると気付かない。まぁ気付かないから悩み所なのだが。

色々と言いたい事を我慢して止めてある車の元へ移動するディステル。

そこには、今にも路上駐車のタグをつけようとしている警官の姿。

「ん?この車、あんたらのか?」

「はい、そうです」

ヴィペール相手に話していた声とは違う、女性らしい声と、ハッキリとした日本語に多少面食らう警官。

だが、気を取り直して近くにある標識を指刺す。

「困るんだよねぇ、ここは路上駐車禁止なんだよ。悪いけど、免許書見せて貰え―――ガッ!?

だが警官はそれ以上言葉を話すことができず、身体を痙攣させて倒れた。

白目を向き、口から泡を吹いている。意識なんぞ既に無い。

「おいおい、俺の≪真空≫よりも先にたぁ…何したんだアンタ?」

ヴィペールが怪訝な顔で隣のディステルを見る。

それに対してディステルは涼しい顔で答えた。

「何、少し神経を刺激しただけだ。一日ほど目を覚まさないが、その分今の記憶も飛んでいるだろう。お前が殺すよりはよほど後始末が楽だ。」

「ほ〜う、噂の『血塗れ』殿は炎が得意と聞いたが?」

「この仕事、手数は多い方が何かと楽でな。行くぞ」

警官を路地裏に転がし、車を発進させるディステル。

それを怪訝な瞳で眺めながら、窓の外をチラリと見て

「ウホッ、良い男!」

と叫んだ。

本気で眩暈がするディステル。

今度から相方は別の人間にしようと心に決めた。


「ほ〜い、そんじゃ今日は特に連絡事項無いから解散!」

と言って足早に教室を出て行く伊庭 かおり。起立も礼も無しだ。

それで良いのか教職者!と突っ込む存在は皆無。だってB組だし。

かおりが足早に帰る日は、大抵がゲームの発売日だ。

「伊庭先生随分急いでたけど、予約しなかったのか?」

『喰らい尽くせ』

「さぁ?今日何が出るかしらないけど、どうせRPGだよ。あれは時間掛かるから少しでも時間を稼ぎたいんだと思うよ」

『斬刑に処す』

「…………………うむ」

と、B組仲良しトリオである和樹・駒野・數馬。

学校の物であるハズのノートPCで何やらゲームをしている。

しかもUSBコントローラーまで完備して。

數馬の操るコート姿の大男が鹿を身体から出したかと思えば、和樹が操る学ラン姿の男が腕を高速で振るって攻撃する。

その様子を、机に座り眺めるのが駒野。

他の生徒達は、それぞれ思い思いの行動をしていた。

仲丸達は主に悪巧みだが、持ち前の迂闊さで自爆するだろう。

もし何かあったら和樹に出動要請が掛かるが、今はその様子も無い。

「そういやこのPCなんでクラスにあるんだ?」

「………伊庭先生が自分でゲームやりたいから貰ってきたそうだ。……壊さない・伊庭フォルダを弄らない・ウイルス入れない・金儲けに使わない等を守ればこうして使える」

「なるほど」

まったくもって彼女らしい理由であると納得する和樹と數馬。

今プレイしている格闘ゲームの他にも、弾幕シューティングや色々なゲームのキャラが登場する同人RPG等も入っている。

古いパソコンではないが、新しくも無いところを見ると、職員室かどこかで使って居た物なのだろう。

魔術以外でもかなり名門である葵学園、設備の方も極力新しい物を取り入れるようにしているので、こういった新しいけど古い道具がわりと出る。

「うわっ、負けた!くっそぉ、式森強いな」

「まぁ、鍛えられてますから」

と苦笑する和樹。あのゲーマー狂いが親戚なのだ、そりゃ相手もさせられる。

「……………次は俺か」

「よ〜し、なら次は俺、黒猫さんで」

「お、駒野はインドの人か。通か?」

「…………ノーコメントだ」

と、ゲームを開始する二人。

さり気なく横を見ると、開けられた窓の外には朝の三毛猫の姿。

どうやら結局学校まで着いて来たらしい。

それを猫好きな女子が眺めていたりしている。

「…………そう言えば、今日は宮間が居ないな」

「…あ、確かに」

「俺は居なくて助かるんだがな…」

駒野の言葉に頷く和樹と、ボソリと呟く數馬。

數馬は極度な女性恐怖症なので、夕菜が傍に居るだけで恐怖を感じるのだ。

まぁ、そのお陰でB組男子の下賎な嫉妬暴走に付き合わずにすみ、色々と助かっているのだが。

因みに、B組女子が平気なのは、彼曰く「あいつらは女じゃねえ」との事。

聞かれたら殺されそうな言葉だが、知っているのは和樹達だけなので問題ないだろう。

話を戻すと、何時もなら和樹の傍に寄ってくる夕菜が、今日の放課後は珍しく教室に居ない。

掃除当番ではないし、転入当初にあった上級生・同級生・下級生による告白でもないだろう。

もし告白なら、B組男子が一丸となって(和樹達除く)妨害に出るのだから。

お陰で彼女の告白する人間は居なくなったが、影でファンクラブとか出来てるらしい。無論非公式。

清純派な彼女が、如何に可愛いかが窺える。キシャーになったら全てが無になるが。

で、クラスの中を見回しても夕菜の姿が無い。

それ所か、クラスの主だった女子の姿が見当たらない。

和美や沙弓どころか、一子や涼、雪江たちの姿も見えない。

あの、あの那穂が、放課後和樹が帰るまで眠っている那穂の姿すら見えないのだ。

その事に疑問を感じつつも、ゲームに集中する和樹。

その後、結局和樹は5勝2敗で終わった。


「ばいば〜い」

「にゃ〜」

壁の上を歩き、家へと帰るのであろう三毛猫(首輪してた)を見送り、夕暮れの道を歩く和樹。

結局夕菜も和美も現れず、和樹は久しぶりに一人での帰宅となった。

F組の千早も、沙弓と一緒に何処かへ行ってしまったらしく、クラスに居なかった。

会社等の帰宅時間であるハズの道路には、この時間にしては珍しく人が居ない。

だが、そんな事は気にせずに足早に寮へと歩く和樹。

彼の頭の中では、今日の夕飯の献立を考えるので忙しかった。

「(魚があるからそれを使って…。野菜も使わないとそろそろ危ないし…。あぁ、久しぶりに鍋食べたいなぁ…今度和美達誘って鍋にしよう。今日は凛ちゃんのオニギリも安全なのが多かったし、良かったなぁ…)」

と、彼の脳裏に浮かぶのは今日の夕飯の献立とお昼のメニュー。

あの、オニギリだか爆発的芸術だか判別不能な物体だったが、凛の気合通りちゃんとオニギリだった。

もっとも、中には何故か甘いのとか硬いのとかゲル状の具が入ったのとかあったが、根性で完食した。

他称フェミニストである彼に、作ってもらった料理を残すなんて選択肢は存在しないのだろう。

漢である。

そんな風に、考え事をしていたからなのか、後ろから接近する車に気付くのが遅れたのは。

横を通る黒い車。メル〇デスだとは和樹でも理解できたが、車種までは分からない。たぶんEかCクラス。

ふと、その車の中を見ると、スモークガラスで中が見えなかった。

その車に、嫌な感じを覚えた和樹は、車から距離をとろうとした。

その時、突然ドアが開き、和樹の行く手を遮るようにして完全に開かれた。

「っ!?しまっ!」

後ろに飛び退こうにも、そこは壁。何時の間にか壁際へと追いやられていた。

そして、車の中から伸びる太い腕。

その腕が、和樹の口を押さえ、もう一つが首を絞める。

咄嗟の事で防御出来なかったが、それは相手が玄人だったこともあった。

「早くしろ!」

運転席に居る男に叫び、和樹を車の中へ連れ込もうとする男。

そして和樹の身体が車の中へと引きずり込まれそうになった時、

「ぎゃぁっ!!?」

男が突然悲鳴を上げて手を放した。

その隙に車から転がり降り、身構える和樹。

だが男達はそのままドアを閉めて逃走してしまった。

カーブを曲がり、車が見えなくなってから深く息を吐く和樹。

「和樹様、ご無事ですかっ?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとうリーチェ」

お礼を言われて赤くなって照れるのは、蜻蛉のような羽を持つ小さな人。

ピクシーと呼ばれるスピリットの少女であった。

彼女達は、その愛らしい見た目と反して、【沈黙の暗殺者】という能力を持っている。

あの男が突然悲鳴を上げたのは、リーチェが攻撃したからだろう。

ただ、小柄なピクシーの攻撃故、ダメージが少なかったようだが。

咄嗟に六番の門から彼女を呼び出した和樹。その判断力は流石だ。

「でも、なんだったのでしょうか、あの男達は…?」

「分からない。どうも俺を攫うのが目的だったみたいだけど…」

表情を引き締める和樹。

どうやら、彼の平穏な日常は、また騒動へと移り変わるようだ。


「何故勝手に行動を起こしたッ!」

金髪の女性、ディステルがスチール製のテーブルを叩きつつ叫ぶ。

その射殺さんばかりの視線の先には、肩を押さえているヒゲ面の男、ヴィペール。

「し、仕方ないだろ、絶好のチャンスだったんだぜ…?」

「手傷を負わされて、挙句失敗。どこがチャンスだったのかしら…?」

そう冷たく言い放つのは、どこか妖しげな雰囲気を持つ少女…だがその少女の口調も眼光も、見た目のそれではない。

「ちっ、そもそもフィアールカ、そっちの調査が足らねぇんじゃねぇのか。あの小僧に護衛が居たなんて聞いてねぇぞ」

責任転嫁でもするつもりなのか、フィアールカと呼ばれた少女…いや、女性を睨む。

だが彼女はその睨みをものともせずに数枚、写真つきの書類をテーブルの上に放りだした。

「追加の情報よ。ターゲットの宮間 夕菜、およびそのキーとなる式森 和樹に関する…ね」

「フィアールカ、お前出し渋ったのかっ!?」

「渡す前に行動に出たのはヴィペール、貴方。そうよね、ディステル?」

「そうだな。今回の件でターゲットにこちらの動きが知られた。行動は慎重を要するぞ」

「けっ、分かってるよ。そういうお前らこそ大丈夫なんだろうな?」

その言葉に、フィアールカは見た目に似合わない妖艶な笑みを浮かべた。

「えぇ。二人は必ず、ポイントに来るわ。おまけが多くつくけど、逆に人質になるし、こういうの日本では一石二鳥って言うのだったかしら?」

「……あまり、人員を裂く事はできんぞ?」

「それなら平気よ。優秀とは言えたかが平和ボケした学生。どうとでもなるわ。それに、見た目は良いんだから処理にも困らないでしょ」

事も無げに言ってのけるフィアールカに、ディステルは少しだけ顔を顰めるが、一瞬で普段通りの無表情になる。

「俺は、この小僧さえ捕まえればそれでいいがな。この傷の礼、身体で返してやるぜ…ゲヘヘ」

書類…フィアールカが調査した和樹と夕菜についてのレポート、その付属である写真を見て下卑な笑みを浮かべるヴィペール。

その姿に、ディステルとフィアールカの表情が引き攣る。

やはり、テロリストでもハード・ゲイ相手は嫌なようだ。

「ところで、何故この少年の写真だけピンボケが多い?」

「……み、妙に感が鋭いのよ、その子」

感情を表す事無く話していたフィアールカが、初めて動揺した。

その事に疑惑の目を向けるディステルだが、フィアールカは素知らぬ顔。

「そうか…なら良いが。まさか…写りの良い写真をコレクションなどしていないだろうしな…」

「……あ、当たり前でしょう。こんな子供に興味なんて無いわ…」

と言っているが、視線がディステルと反対方向を向いている。

そんな同僚の様子を見て、潜入させる人員、間違えたかな…と考えるディステルであった。


夜の学生寮。

和樹の住んでいる部屋では、現在人口密度が倍増していた。

その理由は……

「さて、和樹を攫おうとした連中だけど…心当たりは?」

「さ〜…。召喚獣の取引潰した闇ブローカーとかかな? ふぅ…癒される…」

「その方々でしたら、誘拐より闇討ちを狙うと思いますよ。でも、主様を攫おうとするなんて、許せませんね」

テーブルの上座に当たる場所に座る褐色肌の黒髪女性。誰が呼んだか姐御なダークエルフ、シェリス。

その反対側で、ウィンターウルフの白と、擬態姿のベヒーモスのボルグに埋まり、モフモフ堪能中の和樹。

どちらも割りと毛深い犬種なので、モフモフ感が心地よいらしい。

因みに、ベヒーモスは擬態として大型犬程度の大きさに変身が可能。

ボルグはまだ子供なので、擬態も少し大きい子犬程度だ。

因みに、ヘルハウンドは毛が短い(見た目大きなドーベルマン)ので、モフモフできなかったりする。

おっとりお怒り中なのは、森の精霊ドライアドのエシャル。妖艶な美女がプンプンと怒る姿はあんまり恐くないと思われる。

「それで、犯人ってどんなヤツだったの?」

「私が攻撃したのは、ヒゲ面のいかにもな男でしたけど…」

冬にはコタツにもなるテーブルの上で、お菓子のクッキーを食べながら会話に加わるのはフェアリーのティテスと、ピクシーのリーチェ。

フェアリーとピクシーは仲が悪いという話もあるが、彼女達は普通に仲良し。

今もクッキーを半分こして食べている。

「怨みによる犯行か、それとも金品目当てか?」

「家、確かに小金持ちだけど、それで態々俺を攫うかな…」

和樹の実家は神社だが、母方の祖父は骨董品などを集める古美術商で、割と金持ちである。

ついでに孫馬鹿で、和樹の道具を揃えてくれてるのはこの祖父。同時に厄介な物まで送ってきたりするが。

「怨みや金品でないなら…まさか主様の身体目当てっ!?」

ショックっ! といった表情で口元を押さえて叫ぶエシャル。

その発言により、和樹がむさいオッサンにアレされる図を想像したシェリスが吐き気と嫌悪に顔を歪める。

「え、エシャル…それはいくらなんでも――「あ、その線があった」――えぇっ!?」

和樹の発言にマジかっ!? と驚いた顔で声を上げるシェリス。

「忘れてたけど、俺の遺伝子ってかなり貴重なんだって。有名な魔術師の遺伝子が山ほど含まれてるとかで」

最近話題にすら上らないので忘れがちだが、一応和樹の遺伝子は物凄く貴重である。

「あぁ、なんだ、そういう事か…てっきり同性に狙われてるのかと思った…」

額に浮かんだ嫌な汗を拭う。異世界でも男×男の認識はあるのだが、シェリスには少々抵抗が強かったようだ。

「では、何者かが主様の遺伝子欲しさに狙ったと?」

「うん、前例があるし、金持ちとか意外と常識考えないしね」

この場に例の三人娘が居たら、心をグリグリ抉っていただろう言葉。

「何にせよ、気をつける事だね。もしもの時は迷わずアタシらを出しなよ、蹴散らしてやるからさ」

「そうです、私も及ばずながらお手伝いしますわ」

「あ〜、アタシもアタシもっ!」

「わ、私も和樹様の為に頑張りますっ!」

四人(?)に言われて、嬉しそうに微笑み、ありがとうと返す和樹。

白とボルグも和樹の手をカミカミと甘噛みしてその意思を伝えている。

と、何かに気付いた白が耳をぴくっとさせて扉の方を見る。

つられて和樹も扉の方を向くと、パタパタという足音。

その足音は和樹の部屋の前で止まると、コンコンとノックしてきた。

「誰だろ…ごめん皆、戻ってくれる?」

和樹がすまなそうに言うと、ティテスとリーチェが肩の門に。

シェリスとエシャルが胸元の門。白とボルグは見た目犬なのでそのまま。

一応学生寮なので、エシャルやシェリスのような美女、しかも高位精霊とダークエルフの王族が居たら騒ぎになる可能性が高い。

和美や沙弓、千早達なら問題ないが、もし他の人間なら色々と不味い。

下手な噂立てられ、それがB組男子の耳に届けばまた騒ぎになってしまうから。

シェリス達を檻へと戻し、は〜いと間延びした返事をしつつ扉を開ける。

「こんばんわ、和樹さん」

そこには、ピンクの髪の美少女が一人。

嫉妬においては敵なし、現在なんとか清純派。何故かオチキャラ扱いの夕菜であった。

「どうしたの夕菜。夕飯なら食べたよ?」

一応自炊できる和樹の言葉に、実はですね…と言って後ろ手に持っていた何かを取り出す夕菜。

「今晴海で開催されている、『大ドイツ博』のチケットを二つ貰ったんですっ。今度の日曜までなんですけど、一緒に行きましょうっ」

と、キラキラと期待100%の瞳で見上げながらチケットを差し出す夕菜。

その表情は、ボールを取ってきて褒めて褒めて言っている子犬のようで愛らしい。

嫉妬さえしなければ、可愛い美少女なのだ、彼女は。

「う〜ん、日曜かぁ…」

腕を組んで悩む和樹。

別に用事があるわけではない。むしろ仕事もないので暇なのだ。

だが、今日襲ってきた誘拐犯の事を考えるとあまり出歩くのは得策ではない。

「良いでしょう、行きましょうよっ。私、和樹さんとデートしたこと2回しか無いんですよっ!?」

と迫る夕菜。

なんだかんだで2回もデートしてるのだから良い方だ。

玖里子なんて、仕事だのなんだのでデートは一度だけ。

まぁ、書類整理を偶に和樹に手伝わせているので一応は満足しているようだが。

今度、風椿家のパーティーに誘おうと考えているらしい。

因みに、デートは今時珍しいくらいの清純なデートである。映画館とか喫茶店とか遊園地とか。

「それとも、何か予定でもあるんですか?」

今度はウルウル瞳で見上げてくる夕菜。どうやら視線攻撃を覚えたらしい。

「特に無いけど…」

「だったら――「行ってきなよ」――え…?」

突然後ろから台詞を遮られて一瞬呆然とする夕菜。

和樹が視線を上げると、そこにはえらいラフな格好の女性が一人。

「よっ、元気してるか弟よ」

「かおり姉…もとい、かおり先生、どうしたんです?」

一応、公私混同は避けているらしい和樹が言い直すと、露骨に不機嫌な顔になるかおり。

「ちょっとした用事でな…。それより、偶には異国の文化に触れて勉強してこい。異世界の文化ばっかりじゃダメだぞ〜?」

「でもなぁ…」

姉(親戚だが)の言葉にも困り顔の和樹。

そんな和樹に近づき、顔と顔が触れそうな距離まで接近するかおり。

「連中の事なら心配するな、私がどうにかするからさ♪」

と、耳打ちした。

「姉さん…」

「ちょ、伊庭先生離れてくださいっ!」

「あっ、ちょっと位良いだろ、姉弟なんだからさぁ…あんっ、こら、どこ触ってるんだ宮間っ!」

「うわ、大きい…うぅ、せめてこの半分くらい…」

「ひゃん…っ、こら止めろ、それは和樹のなんだから…くぅん…っ」

和樹から引き剥がそうとしたのだろう、後ろから羽交い絞めにした夕菜の手がかおりの胸に触れた。

その大きさと弾力に、思わずモミモミと手を動かしてしまう夕菜。

自分のそれと比べて、あまりの大きさに切望と少しの嫉妬の顔で揉む。

その刺激に、何やら聞き捨てならない事を口走るかおりだが、夕菜は胸に集中していて聞いてない。

「止めろってのっ! たく…少し感じちゃったじゃない…。こほん、まぁなんだ、そんなに心配なら私も着いて行ってやろう」

と言って、ズボンの隙間からチケットを取り出すかおり。

何故ポケットではなく隙間、しかもお尻の方? と思う和樹だったがあえて触れない。

「私も色々あって入手してな。一枚だったから和樹も誘えないし、どうするか困ってたんだよ」

「ちょ、なんで伊庭先生が着いて来るんですかっ! これは私と和樹さんのデートなのにぃっ!」

当然の如く叫ぶ夕菜。だが、かおりは涼しい顔で聞き流す。

「和樹もお年頃、間違いがあったら困るからな。主に私が」

「なんで?」

「馬鹿、お前そんなことお姉ちゃんに言わせる気か? 仕方ない、部屋でみっちり教えてや――…和美、ズボンとパンツ放せ」

「放して欲しかったら離れてくださいね、先生?」

和樹を強引に部屋に押し入れようとしたかおりの動きが止まり、顔を向けずに言い放つ。

かおりの後ろには、何時の間にやら現れた和美が、かおりのズボンと下着を引っ張っていた。上に。

「まったく、毎度毎度和樹を誑かすのは止めて貰えますか、お姉さん?」

「ちょっと位良いじゃないか、どうせ将来的には私のモノ――あひっ、ちょ、それはマズイ、ダメだって、引っ張るの反則反則っ!」

「ほほほほ、Tバックなんて穿いてるから余計に食い込むでしょう、ほらほら」

股間の辺りを押さえて慌てるかおりと、ちょっとサディスティックな笑顔の和美。

目の前で展開されるセクハラに、耐性が低い夕菜は真っ赤だ。

和樹は到って普通。割とよくある光景なのだろうか?

「分かった、分かったよっ…まったく…シミになったらどうしてくれる」

「知りませんよ。さてと、か〜ずきっ、日曜日デートしましょ。ほら、『大ドイツ博』のチケットよ、苦労したんだから〜」

と、和美がヒラヒラと取り出したのは夕菜・かおりが持つ物と全く同じチケット。

意外と多く出回っているようだ。

「あ、和美さんずるいですよ、私が先に誘ったのにぃっ!」

「あら、夕菜ちゃんも? あちゃ〜、結構出回ってるのね…って事は…」

チケットが割りと多く出回っている事実に、嫌な予感を覚える和美。

夕菜も、その表情を見て何かを感じ取ったのか、同じ表情に。

そして、ふと後ろを振り返ると……

「和樹、日曜日に出かけましょ…う?」

「和樹くん、今度の日曜日暇かな…あれ?」

「式森〜、日曜日一緒に出かけ…え?」

「式森君、あの、『大ドイツ博』に興味は…あら?」

「しっきもっりくぅ〜ん、あのね、日曜日に…って、うえぇっ!?」


ぞろぞろぞろ…


そんな擬音が聞こえそうなくらい、ほぼ同時にやってくる面々。

皆『大ドイツ博』のチケット片手に和樹の部屋までやってきた。

やってきたのはB組女子の面々。全員ではないのは、チケットが手に入らなかったからか。

ほぼ同時に、中には魔法使って転移してきた生徒もいて、皆顔を見合わせて呆然。

一人二人は予想していたかもしれないが、ここまでの大人数は予想外。

「出回り過ぎよ、これ…」

和美が呆れた様に呟いた。

「これじゃ収集つかんな。よし、面倒だから全員で行くぞ。チケット余った奴は適当な友人誘え。暴利で売るなよ?」

これは名案だとばかりに口を開いたかおり。その言葉に全員がえ〜…ってな感じの顔になる。

全員、欲望に素直なことで。流石B組。千早は違うが。

だが、これだけの面子になると最早それしかないだろうと諦めてその提案を呑む面々。

無駄に争って当日行けないなんて馬鹿はしたくないのだろう。

「…え〜っと、俺の意見はオール無視?」

当人を置いて話が進むので置いてけぼりな和樹。

そんな彼の背後で、唐突に影が盛り上がっていった。

それに気付き、振り返ろうとした瞬間。

「和樹君、お姉さんとデートに行きませんか? ほら、『大ドイツ博』のドイツ死霊博物館ですって、きっと珍しい物が見れますよ?」

影が一瞬で人になり、するりと和樹を後ろから抱きしめてきた。

ふわりと香る大人の色香と、甘い声にブルブルッと震える和樹。

もしかしたら、耳にかかった熱い吐息で震えたのかもしれないが、どちらでも同じ。

「し、紫乃先生?」

「はい、貴方の紫乃先生ですよ。ほら、兄さんの机からくすねてきたチケットです。何枚もあったから問題なしですから、日曜日に行きましょう? もし和樹君が望むなら、次の日はお休みですね…ふふ」

色々と問題な発言、と言うかかおりも貴方も一応教師ですよねと突っ込みたい面々。

教育実習終わっても保険医手伝いとして学園に居るが、役職はなんなのだろうか?

「何枚もって…もしかして紅尉先生が犯人かしら?」

和樹から紫乃を引っ剥がそうと奮闘する夕菜達を尻目に、推理する和美。

いくらなんでも、招待券がここまで一箇所に固まるのはおかしい。

故意にばら撒かれたなら別だが。

実は、前回の和樹の仕事(シェリス達の事件)のご褒美として紅尉が準備したチケットだったりする。

それをB組女子に手に入るように流して、これによって起きる騒動を楽しみたいのが本当の魂胆だろう。

どうせ妹も騒動に加わるのだし、報告はその妹経由だろう。

もしくは、彼も行くつもりなのだろうか、それはそれで恐い。

結局、チケット人数分の生徒と同時デート(?)する事になった和樹。

「誘拐犯のこともあるのに…どうしよう?」

「クゥン…」

「キュゥン…」

悩む和樹の頬を、白とボルグがペロペロ舐めて慰めてくれる。

一応かおりが何とかするらしいが、当てにならない可能性がある。むしろそっちの方が高い。

不安に思いつつも、時間は無情に過ぎて行くのであった……。


つづく…。


今日のモンスター


・ピクシー  種族:スピリット  属性:風

レベル:1  攻撃力0  防御力1  飛行

□沈黙の暗殺者[普通/対抗]
  ユニット1体が対象。
  対象ユニットに「1」ダメージを与える。

備考:蜻蛉のような羽を持つ妖精。
フェアリーは蝶の羽を持ち、ピクシーは蜻蛉。
彼女達は自由奔放な性格が一般的とされるが、何事も例外がある様子。
因みに、文献などによってはフェアリーの天敵がピクシーだとか、色々な通説が存在する。


あとがき

ラフェロウです。
結局小説見つかりませんでした(死)
なので、いっそのこと基本だけ同じで後はもう妄想神が導くままに進むことにしました(何)
本来はシリアスなお話ですが、ぶっちゃけ壊れ連発かと思いますので、ハードボイルドな展開を期待していた方ごめんちゃい(コラ)
古本屋も探してみようかなぁ…(遠い目)

あと、諸事情によりキャラ変わってる方多数。
ヴィペール?いや、何故か勝手にこんな事に…おかしいな、テレビでH・Gを見てたからかな?(違っ)

と言うか、前回女性モンスター打ち止めとか言っておいてまた登場してるし、駄目じゃん俺orz

あと、紫乃さん本編にやっと登場。『大ドイツ博』で彼女も大暴れ予定(何)
かおり先生が駄目な人になっているのはきっと気のせい。
この位なら表記は必要…ないですよね?(汗

紫乃さんが本編正式登場で、遂に舞穂ちゃんの出番が…(汗)
こりゃなんとかしないと…(悩)

またスランプなのか、これ書き上げるのにやたら時間かかりました(汗)
もしかして、オリジナルで書いてるエロ小説が原因なのだろうかと小一時間悩み(マテ)
とりあえず、頑張って続きを書くのですよ。

花粉症で目が痛いラフェロウでした。皆さんもお気をつけて。


それではレス返しをば。


β様
う〜む、難しい質問です(マテ)
とりあえず言える事は一つ。

イェースッ!!

です(コラ)


D,様
はい、貞操は何とか無事。
でも次は分かりませんけど(何)
拷問隊は、真の名を掴ませて帰りました。その気になれば呼べます。
呼んだら大変ですけどね、色々(汗)
凜ちゃんの料理は…進歩してロシアン風になってます。
食べて無事なのと、食べただけでアウトなのがあったり…(何)


ヒロヒロ様
しまっちゃうおじさんが〜〜(何)
さ、流石に死神ダンスは無理ですよ(汗)
しかし、ぼのぼのキャラ風な召喚獣とか良いかな〜と考えちゃう私はもうダメなのだろうか(何)


青空ハル様
サムズアップありがとうございます。
なるほど、確かに字が…今気付きました(汗)
ありがとうございます、これからは気をつけ…あれ、りんで変換しても出ない私のPC(汗)


ロイヤルミルクティーキングダーク39.2世様
そうです、ぼのぼのです。わかって頂けて幸い。
ぼのぼの好きなんです、あの汗とか音楽とか。
未だにビデオで全話所持。DVD-BOXとか出ないかな…(何)


REKI様
はい、クィーン、イが小さいィなのがコツです(何の)
姐御キャラなのに弄られキャラ。ツッコミもしてくれる便利なキャラです(マテ)
なるほど、エルフを善と考えた場合の対極位置として存在する種族的な考えですかね、勉強になります。
ござる言葉…あかんです、GSの某キャラとかが浮かんでしまう(汗)


昔話派様
なるほど、確かに。
ですが、召喚術士には対象の意志を支配して従属させる手段もあるので、すんなり信じてもらうのは難しいかもしれないです。
和樹が普通の魔術師で、ドライアドが説得してくれたらすんなり信じてもらえたかもしれないです。
和樹君は、まぁ美味しい目にあったのでこれで良しで(マテ)
エシャルさんの甘いお仕置きは、番外編で書くかもしれないです(何)


なまけもの様
ののみタンは良いキャラですよ(何)
そしてぼのぼのは最高なんですよ(マテ)

はっはっはっ、自分で打ち止め言っておいて、あっさり出しちゃってました(涙)
様々な方にごめんなさいorz(何)
途中まで書いてから、あ、新キャラ登場しちゃったよ…と気付きまして(マテ)
打ち止め発言で落胆した方、申し訳ありませんですorz
シェリスさんに関しては、可愛い弟的な印象ですが…恐らくその内変化することでしょう(何)


千葉憂一様
幼児化した和樹君を見た女性陣…数名、涎拭ってそうなビジョンが(何)
あと数名、おもちかえりぃぃぃ…を発動させそうですね(マテ)

和樹に安息…それは白とボルグをもふもふふかふかしている時です(マテ)
ドイツ博…中々難しいですが頑張りますです。


ダイ様
お久しぶりです、皆勤残念ですが、無事復活されたご様子で安心です。
SSが書けなくですと!? それは大変です、お早い復帰をお祈りしますです。
私もスランプと言えるほどではないのですが、同じ症状によくなりますよ。
音楽聴いてたり、風呂入ってたりすると燦々と湧き出てくるのに、いざ書き始めると何故か枯れてゆく…嫌な現象ですほんとに(汗)
ナムコととらハですか…興味津々、投稿されたらこっそり教えてください(コラ)
月並みですが、頑張ってください。

凜ちゃんと沙弓さん、和樹が絡むと更に仲が悪くなりますから(汗)
でも和樹のピンチには相乗効果抜群な事に…(何)
力尽く…つまり3ピうわなにをするやめ(ry

ふむふむ、エロエロねっとり快楽天国今夜のご注文はお姉さんズ調教をオーダーな物語ですか…
大丈夫です、貴方は正常です。漢として(何
一応エロ分少なめの作品なのでそれはないですが、あちらの方ならそりゃぁもう凄いエロエロ空間が展開されることに…(マテ)
弱点を的確についてくる人は、今の所管理人さんだけ。
しかし、遂に登場した紫乃さんがどれだけの進化を遂げているのか分からないので油断は禁物でしょうw

>「ぼのぼの」よりもCLANNADに見えたりしました。

実は正解です(ぇ)
最後の部分で何故かあのキャラの口調が再生されてしまって…特に意味は無いですよ?(何)

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