@美綴綾子嬢の口調と見づらいというか分かりづらいという指摘が多いようですので少々変更してみました
『WILD JOKER 第二巻』ちょこっと改定版
結界が危険なのは分かるし、本当ならそちらの調査を優先したい所なのだが、時間的にゆっくり調べてる時間はないので、構築中の結界に関しては授業を受けている間に横島に調べてもらう事にした。こういう時優等生の顔は大変だ。
適当に挨拶を返しつつ教室に行く途中で美綴に会った。私の優等生以外の顔を知ってる数少ない人間の一人。
「あら遠坂、おはよ。今来たの?」
「そういう貴方は朝練後かしら?」
つい彼女と話していると地が出るというか……気をつけないといけない。特にこういう周囲の目がある時は。
「うん、立場上仕方ないから」
美綴は弓道部の主将だ。確かに主将が別段事情もないのに朝練をさぼるようでは示しがつくまい。結構真面目な姉御肌って事もあるし。
「まあ、結構こっちとしても困ってるのよ。一人巧いのがやめちゃったし、うちの副主将はアレだし。とりあえず新入生が来る前に見栄えくらい良くしたいしねえ」
副主将、間桐慎二か。
間桐の家は元々遠坂と同じく聖杯戦争のシステムを構築した三つの家の一つだ。令呪を構築した家で、五百年に及ぶ歴史があるらしいのだが……ここ数十年で一気に衰えてしまった。跡取り息子のはずの慎二に至っては最早魔術回路が存在しないというていたらく。あの家でまともな魔術回路を持つのは桜くらいのものだ。とはいえ、あの子の性格からして激しい戦いになるであろう聖杯戦争に参加はしないだろう……いや、間桐の家にさせられる可能性もあるわね。一応サーヴァントがついてないか横島に確認させた方がいいか。
「…さか、遠坂!」
いけない、考え事してて自分の世界に入り込んでた。
「あ、御免、ちょっと考え事してて」
「まったく、話してる最中にいきなり反応なくなるからどうしたのかと思ったよ」
やれやれ、といった様子で肩を竦める。
「ま、立ちながらの居眠りも程ほどにね」
にやり、と笑ってこちらが違うと反論する前の絶妙のタイミングで背中を向けられてしまう……くう、次は覚えてなさいよ……。
とりあえずクラスに顔出して、授業受けて。休憩の間に横島から話を聞いた。
ざっと調べてきてもらった結果とつき合わせてみてすぐ判明したのはこれがまだ作りかけの物だという事だった。おそらく今日一日の間には仕上がるだろうから明日来ていれば完成品と出くわしていただろう。とはいえ、作り手が相当レベルが高いので(おそらくサーヴァントだろう)、私では完全な解除は難しいだろう。切り札を使えば何とかなるかもしれないが、それは無茶というものだ。だが、一時的に封じるというか結界発動が出来ないようにする事は出来るだろう。そういう邪魔をすれば何か反応があるかもしれない。とりあえずその方向で決めて、横島には各地点に設けられた基点を出来るだけ探すよう伝えておく。
……もっともそう簡単に見つかれば世話はないんだけどね。
ちなみにふと思い出したので、言峰には休憩時間に携帯でサーヴァントを召喚した言を伝えておいた。……イレギュラーを召喚したなんて言い辛いし、授業の合間の短い休憩だったので『あ、夕べ私サーヴァント召喚したから登録お願い』だけ伝えてさっさと切っちゃったけど。
う〜む、凛さん人使いならぬ英霊使いがあらいぞ。
とはいえ、こんな物騒な代物発動前に手うたねーとさすがに寝覚めが悪いし。それにっ!折角フリーでの行動が許可されたんだ、学園美少女ウォッチングと……。
『……お兄ちゃん、さっきから声に出てるよ』
……しまった。
えーと、誰に説明してるのかは分からんが、先に言ってしまえば、ひのめは普段俺の中にあるレーヴァテインに宿っているが、だからって互いの心の中までは分からない。さすがに男と女の心の中まで分かり合うってのは聞いただけなら綺麗に聞こえるかもしれんが、人格ありゃ互いに隠したいと思う事だってあるわなー……。
だから、心の内できちんと会話をする意志を持たないと互いが何を考えているかは分からない。まあ、分かりにくければ友達なり恋人なりと一緒にいて顔つき合わせてるけど、その腹の中で何を考えてるかは口に出すまで分からない、そんな状況だと思ってくれればいい。けれど、まあ……つい口に出す、ってのがあるようについ心の内で叫んでしまうってのがあるんだよなー……。
ああ……ひのめの前で言うてもーた、と思ってる所にひのめが声を掛けてきた。
『そういえば』
『お兄ちゃん女の人にあんな行動したの久しぶりだね』
「あんな事?」
『うん、昨日飛び掛って怒られたでしょ?』
ああ……そういう事か。どういう訳かひのめには、赤ん坊の頃の記憶があるらしい。それがひのめ自身の能力なのか世界意志がサービスしたのかは分からんが、姉である美神(令子)さんとかおキヌちゃんとかシロタマの事とか、あの頃の事を覚えているらしい。俺にとっちゃ当時の事を知ってて、話が出来る相手が傍にいるって事は嬉しいけどなー、と。
「ん〜何って言うかさ」
考えつつ、答える。実際、自分の行動を最近見ても、覗きも最近した記憶ねーし、そりゃ美少女美女ウォッチングくらいならした事あったような気がするが、普通に街見てればまあ、他に見るもんなけりゃ男見てるより綺麗なねーちゃん探して見た方がいいわな。
「英霊ってのになったのはいいけどさ、嫌がられてたとしても、相手は以前みたいに嫌ならぶん殴ってでも止める、って事できねーんだ」
「だから、英霊になって間もない頃は喜んで覗いたりしてたんだが……気付いたらやんなくなってた」
『…………』
ひのめもしんみりした様子で聞いているのが伝わってくる。だが…。
「それに……見るだけで触れねーってのもすげー虚しいんだぞ!だから…だから…凛さんも本当に久々の女体なんだから少しくらい触ったってえーやんかー!!」
『…………』
矢張り横島は横島だった。
そう……横島が言った通り、英霊は通常目に見えない。神や魔と直接繋がりがあるのなら別だが、サっちゃんやキーやんといった神魔の最高指導者でさえ手が出せない世界意志の直属の配下というのが英霊の立場だ。そもそも、神や魔が人間界のみならず神界や魔界をも含めた世界の内側を担当するなら、所謂オーバーロードによる異世界から干渉の排除のような世界の外側を担当するのが英霊になる。
例外は今回の横島のように、異世界や平行世界の住人自身から呼ばれた場合だ。
結果として内側と外側では別の扱いな為、接点がない。無論英霊も気分転換とかでちょくちょく人の世界には下りるが、最高指導者である彼らでもそれと理解して集中しなけりゃ英霊は見つけられない。……彼らですらそれだからヒャクメは言うに及ばず。そして横島は通常知り合いと接触しないよう注意している。
……俺自身彼らと会っちまったら、冷静に対応出来るかわかんねーし……ようやく俺が死んだって事に折り合いつけたあいつらに余計な負担かけたくねーしな。こればかりはひのめに聞かれないようそっと心の内で呟く横島だった。
とりあえず叫んだらすっきりしたのか、その後は案外真面目に探索を開始した。
「まずはサーヴァント探してみっかな?」
『サーヴァントを?』
「ああ。ここにこんだけの結界仕掛けてるって事はこの学園の先生や生徒の誰かがやってる可能性が高いって事だろ?」
そう、学園というのは案外と外の住人は目立つ。少なくとも、関係のない人間やOBがうろちょろしてれば間違いなく。もちろん、自分との繋がりがばれないよう関係のない場所にサーヴァントだけを動かして結界を仕掛けたって可能性もあるが、矢張り、これは先生や生徒の中の誰かが関わっていると考えた方がいいだろう。
「だとすりゃ、傍でふよふよ浮いてるかどうかは霊体なんだから霊視すりゃ分かると思うんだよな〜」
試してみて分かったのだが、霊視では魔力回路を見る事は出来ないようだった。どうも魔力と霊力では弱冠異なるらしい。これは前の世界で魔族が使う力が魔力だと思っていた横島には新鮮な驚きだった。それでは力の質が違うのに何故霊力が使えるのかと思ったが、これは自分の中で魔力が霊力に変換されてるらしい。
自分はコンバーターか何かか、と思ったが、本人も凛もまだ気付いていなかったが、これは実は大きな意味があった。
が、今の段階では魔術師を一目見ただけでは分からないという事しか分からない。なのでとりあえず……『魔』『力』『視』と文珠を発動させる。これで魔力の流れが見えるのだが…。
「効率悪りーなあ…」
文珠は以前より生成しやすくなったものの(全体的に底上げされた為)、それでも無限に生成出来るものではない。毎度毎度探す度にこれでは効率が悪すぎる。
とりあえず。
「文珠の効果が切れる前に探さんとーっ」
一日中動いてくれるならまだしも、如何に消耗が少ない使い方でもせいぜい1時間程度のものだろう。切れる前にざっとでも調べておかねばなるまい。と、慌てて動き出した時、ふと。
「まさかこんな所にはおらんよなー?」
苦笑しながら、ふっと男子トイレを覗いた時。中にいたとっても力のある霊体さんとばったり目があいました。
『……えーと、おにいちゃん。あれって…』
「うむ、いい女だ」
ひのめがすてーんとこけたようなイメージが伝わってくる。うむ、付き合いのええ子や…。
相手の格好は美神さんの如くボディコン(?)みたいな格好だ。ただ、手に武器を持っているのが問題か。形状は……あまり見た事がない。武器は鎖のついた杭とでもいやーいいんだろうか?あまり身体に優しい武器には見えんなあ……でも。眼を覆ってるのは何か気になる所だ。全く意味もなしに眼を覆うとは思えない。紫の髪に、でもナイスバディ。
「88・56・84と見た!」
『おにいちゃん!』
「…………」
ひのめはちゃんと突っ込んでくれたが、相手は黙ったまま武器を構えてきた。うーむ、これがツンデレって奴か?
『……絶対違うと思う』
ひのめが何だか疲れたような声で答えてくるが、とりあえず少し真面目に観察してみる。武器からはそう大きな魔力の流れとか見えないからあれが宝具って訳じゃねえだろう。クラスが何か……真名は何か……それが分かれば大分楽なんだが。
凛さんによるとあと召喚されるとしたらセイバーかアーチャーって事だったから(本当は最高のサーヴァントと言われるセイバーを狙ってたらしい)、残りの召喚されてる奴はランサーにライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー。見た目、ランサーなら槍を持ってるだろうし、美人のねーちゃんがバーサーカーってのはあまり考えたくないから(『人間の時殺されたのも女性からじゃなかったっけ?』「それはそれだ」)、キャスターは魔法使いって事だから目の前の相手みたいに見つかったら接近戦を、と動くよりはまず自分が有利なよう逃亡を考えるだろうし……だとすると。
「ライダーか…アサシン……って所か?」
口に出すと、ぴくりと反応した。どうやら間違いないらしい。最初に口出したライダーに反応した所を見ると、そっちだろう…問題はライダー、すなわち騎乗兵には見えないって事か。だとしたら、何か隠し玉があると考えるしかあるまい。
『だとすると……何か乗るものと、後は眼に要注意、かな?』
なぞと考えつつも、こちらも武器を取り出し、ひのめとお肌の触れ合い会話を行う。無論……出したのは炎の剣レーヴァテインだが、今は炎は抑えているから見た目は大型の剣にしか見えないだろう。つか、さすがに敵にほいほいと手の内明かす気にはなれんしなー。
とはいえ。
学園の男子トイレという。
誰も予想してない所で、聖杯戦争の第一戦の幕が切って落とされようとしていた。
英霊:横島忠夫
(Fate風表記)
筋力:C(30)
魔力:E(10)霊力に変換する為
耐久:A(50)
幸運:E(10)
敏捷:B(40)
宝具:A+(本来はEXだがこのランクでもまだ完全には制御出来ていない、制御可能なレベルに抑えるならA〜B相当)
・対魔力:C(30)ダメージ軽減のみ。無効化は一切出来ない分高め
・霊力:A(50)魔力を変換し様々な特殊能力を発揮。対魔力をある程度無効化する
・文珠:E〜A+(10〜):使い方によっては強力なものの、効果は使用者の発想度による。適したものでなければ大きな効果は得られない。尚現時点では三文字程度の制御ならば問題なし。四文字以上では失敗の可能性がグンと高まる。
・心眼(偽):A(50):天性の直感によるもの
+
・煩悩全開:対象が美人の時限定で発動可能。全能力値が1ランク上昇する。ただしこの状態の際対象を傷つけるような行動は取れない
とりあえず作ってみた、という状態なのでまだ調整中ですー
あと、対魔力に関しては理解した上で変更しております。ガンドとかの突っ込みくらってぴくぴくしてるけど、次の瞬間には元気になって文句言う横島とかを表現したかったもので。
幸運に関しては……これは美神の所でこきつかわれ、美人に刺されて死んだかと思えば、サーヴァントとして召喚され凛さんにこき使われる状態をかんがえみてこうしました
なお、横島があっさりと武器を出したのは、凛から『最高のサーヴァント』と聞いてるセイバーと思わせて、相手警戒してひいてくれんかなー?とか思ってる為です
……ってしまった
ライダーのスタイルの所変更する前に前の削除してしまった