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「これが私の生きる道!オーブ決戦編2(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-08 15:32/2006-03-08 21:30)
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(午後2時56分、オノゴロ島上空)

敵の第四次攻撃隊が俺達に迫りつつあった。
数は情報通り約280機で、例の新型達も混じって
いる様子だ。

 「数が多いな」

俺がつぶやいている横から、ヤマタノオロチが発射
されていく。
その他にも、速射砲や量子通信ミサイルが多数発射
されていくが、既に知られているらしく命中率はい
まいちであった。

 「ちっ、10機が精々か!」

 「僕にやらせてください!」

本日、大活躍のキラが申し出る。

 「そうだな。まかせる」

 「では!」

キラは一番近くにある、量子通信ミサイルの大型コ
ンテナに近づいてから、フリーダムに付いている付
属のコネクターをミサイルコンテナに接続する。
こうする事で、フリーダムの索敵装置にミサイルコ
ンテナからの情報が送られて、フリーダムでも操作
可能になるのである。

 「よし!いける。当たれー!」

ミサイルコンテナから48発のミサイルが発射され
て、上空へ飛んでいった。
キラは新型機部隊にミサイルを向けるような無駄な
事はしないでストライクダガーを集中して狙い、
多数の機体を破壊していった。

 「推定で30機のモビルスーツを撃破です」

隣りにいたアサギが俺に報告してくるが、俺は驚き
のあまり返事を忘れてしまうほどでった。

 「もう、一回!」

キラはもう一斉射ミサイルを発射する。
今度は20機ほどであったが、二斉射96発のミサ
イルで50機のモビルスーツの撃破。
正直、脅威的なスコアだ。

 「キラって何者なんだろう?」

今まではそれほど真剣に考えた事はないのだが、技
術者としても、モビルスーツのパイロットとしても
超一流でカレッジ在学時も苦手な事を探すのが難し
いくらいだったという才能の塊であるキラ。
同じコーディネーター達の中でも飛びきり優秀で、
昔、世間を騒がせたジョージ・グレンの再来かそれ
以上の存在に感じてしまう。

 「おっと、考えている暇は無かったな」

俺は左右にシンとアサギを配置してから、上空へ飛
び立つ。

 「シン、お前は確実に狙われるから、俺の傍を離
  れるなよ」

 「了解です」

「月下の狂犬」を倒した男だ。
目の仇にされる可能性が高い。

 「アサギ、落ち着いたか?マユラなら石原一尉と
  一緒だから大丈夫だ。お前も俺の傍を離れるな
  よ」

アサギも精神的に危なっかしいので、俺の横に付け
たのだ。

 「ヨシヒロさん、優しいですね。好きになってし
  まいそう」

 「なっ!俺はその・・・、あの・・・」

 「冗談ですよ。ラクス様に怒られてしまいます。
  私は大丈夫です」

 「冗談が言えるなら大丈夫だな」

 「はい!」

そんな話をしている内に、敵が迫ってくる。

 「前方、ストライクダガー6機。ノルマは1人2
  機だ。いくぞ!」

俺達がビームライフルとビーム砲を撃つと、ビーム
は寸分違わずコックピット部分に直撃して爆発した
。残酷なようだが、一番確実な倒し方だ。

 「よし、もう一撃」

もう一回ビームを放つが、シンのビーム砲が狙いを
外してストライクガダーの右腕を吹き飛ばすに留ま
った。

 「シン!後で腕立て伏せ100回!」

俺が追加の射撃で止めを刺しながら、シンに罰ゲー
ムを宣告する。  

 「えー!酷いですよ」

 「あんな距離を外すなよ。アカデミーで赤っ恥を
  かくぞ」

 「大丈夫ですよ。俺より射撃が下手な奴が必ずい
  ますって」

 「無駄話は終了だ。次!11時方向のストライク
  ダガー6機だ!」

 「「了解!」」


(同時刻、プラント本国ホーク邸)

9月からのアカデミー入学を前に、長めの休暇を楽
しんでいたホーク姉妹は、このところ暇を持て余し
ぎみだった。

 「へっくしょん!」

 「お姉ちゃん、おっさんみたいなクシャミはやめ
  なよ」

 「最初に体の心配をしなさいよ。風邪なのかとか
  、鼻炎なのかとか」

 「お姉ちゃん、病気と無縁じゃん」

 「五月蠅いわね。きっと、カッコイイ男の子が私
  の噂をしていたのよ」

 「おめでたい性格してるね。お姉ちゃん・・・」

 「アカデミー1の才媛とか、天才美少女パイロッ
  トとかそんな噂よきっと・・・」

 「シンにバカマリアとかアホマリアとか言われて
  いる可能性が高いと思うよ」

 「五月蠅い!でも、あいつは今戦っているんだよ
  ね」

 「戦況はどうなんだろう?」

心配になってテレビを付けて見ると、朝の戦闘開始
時の映像が映し出されていた。
事前に、多数のマスコミ関係者がオーブに入国して
いた上に、オノゴロ要塞で取材を続けているフリー
のジャーナリストも多数いるので、映像の入手が早
まっているのだ。

 「あんなに沢山のモビルスーツが戦っているなん
  て凄いわね」

400機近いモビルスーツが敵味方入り乱れて戦っ
ている映像は遠距離からのものであったが、迫力が
尋常ではない。 

 「あっ、お姉ちゃん。あの黒いモビルスーツ!」 

 「ヨシヒロさんだ!」

Bストライクがレイダー改と死闘を繰り広げている
映像が映っている。

 「相手のパイロットも凄い腕前・・・」

 「敵の有名なエースみたいだね。お姉ちゃん」

 「シンは何処かな?」

画像を隈なく探していると、画面の端に先日シンか
ら聞いていた機体が映った。

 「あっ、あれだよ。確か、(シップウ)とかいう
  モビルスーツ」 

ダークグリーンの自衛隊カラーのモビルスーツがス
トライクダガーにビーム砲を直撃させた。
瞬時にストライクダガーは爆散する。

 「お姉ちゃん、シンが敵を落としたよ」

メイリンが自分の事のように喜んでいると、ルナマ
リアが突然立ち上がった。

 「どうしたの?お姉ちゃん」

 「シンに負けていられない!」

 「はっ?」

 「シンはライバルである私を大きく引き離した!
  このままでは、シンに追いつけない!」

 「それで?」

 「とりあえず、ランニングだーーー!」

ルナマリアは部屋を飛び出して、そのままランニン
グに出掛けていってしまった。

 「お姉ちゃん・・・」

メイリンは姉の突然の行動に驚いてしまったが、長
い付き合いなので、心境は理解できた。
ライバルなどと意地を張っているが、姉はシンに恋
心を抱いている可能性が高い。
だが、本人もまだそれに気が付いていないのであろ
う。

 「お姉ちゃん、ステラがいるから大変だよ。そし
  て、私も・・・。シン、死なないでね」

メイリンは祈るような気持ちで、画面を見つけてい
た。 


(同時刻、アメノミハシラ近くの宙域)

クルーゼ隊から選抜された精鋭パイロット達は自分
のモビルスーツとフライングアーマーの合体を完了
させて、オノゴロ上空への突入コースへの最終確認
を行っていた。

 「突入コース、角度、確認終了。耐熱ジェルの
  散布試験開始!」

フライングアーマーの底部に、ジェルが広がってい
く。
このシステムは、アークエンジェルでも採用されて
いるものだ。

 「散布確認異常なし」

 「突入まで後10分」

多数の実戦を潜り抜けてきた精鋭達は素早く作業を
終了させる。

 「さて、後は突入するのみだ。(エンデュミオン
  の鷹)と再び対決できるとは・・・。くくくっ
  、私は運が良い」

クルーゼの独り言に、ディアッカとラスティーの表
情が暗くなる。 

 「俺達、そんな理由でつき合わされるの?」

 「ばか!オーブがやばいのは事実なんだ。クルー
  ゼ司令の趣味的発言を本気にするな!」

ラスティーがディアッカに注意をするが。

 「私は十分本気だよ。奴を討たねば沢山の犠牲が
  出るからな」

 「そっ、そうですか。(エンデュミオンの鷹)は
  お譲りしますので・・・」

2人の会話を聞かれてしまい、冷や汗が出てしまっ
たが、クルーゼ司令は気にも留めていない様子だ。

 「後、少しだ。後少しで、お前に引導を渡せるの
  だ。くくくくくくくっ」

クルーゼの不気味な笑い声が、降下隊の全モビルス
ーツとアメノミハシラにリアルタイムで入り、全員
のテンションが一気に下がった。

 「おい、誰か止めろよ」

 「そんな、猫に鈴をつけるような仕事は誰もしな
  いだろう」

ディアッカの指摘に全員がうなずく。

 「おい、クルーゼ!私は降りる事が出来ないのだ
  !真面目にやってもらわないと困る!」

ギナがクルーゼに文句をつけた。
彼は親衛隊と共に降下する事をミナに上申したのだ
が、却下されたのだ。
クルーゼ隊のモビルスーツ隊の80%以上が出払っ
てしまうので、ギナまで抜けたら、アメノミハシラ
防衛の主力がいなくなってしまうからだ。

 「ギナよいい加減にあきらめろ」

ミナが無線を入れてくるが、ギナの気持ちは収まら
ない。

 「私が軍部で発言権を増すチャンスなのだ!それ
  を、あんな仮面バカに奪われるなんて」

 「仮面バカとは心外だな。それなら君は突撃バカ
  ではないか」 

 「あれは、私の深謀遠慮の賜物であって、無意味
  なものではないのだ。まあ、バカなお前にはわ
  からないだろうが」

 「首長の家に生まれただけで、将軍の地位にいる
  お前に、アカデミーを優秀な成績で卒業したエ
  リート士官の苦労はわかるまい」

 「自分で自分をエリートと言うか普通!」

 「事実なので仕方が無い事だな」

2人は下らない言い争いを始めてしまった。

 「ラスティー、ディアッカ。何とかならないか
  ?」

ミナが心配そうに連絡を入れてきた。

 「時間が解決しますよ。ほら、降下時間です」

 「クルーゼ司令、降下時間ですよ!」

ラスティーが連絡を入れると。

 「もう、そんな時間か。では、私の活躍を指を咥
  えて見ているがよい。ロンド・ギナ・サハク准
  将よ」 

クルーゼ司令が嫌味を放ちながら、突入準備を開始
し始める。

 「突入まで10・9・8・7・6安全装置解除。
  5・4・3・2・1・0降下開始」

フリーダム2機、ジャスティス2機、ドレッドノー
ト1機、残りはセンプウとゲイツからなる58機の
モビルスーツ隊が、オノゴロ島上空を目指して降下
していった。   

 「成功みたいだな」

アメノミハシラでミナが安堵していると、ギナから
無線が入ってきた。

 「やはり、降下してはだめか?」

 「絶対に不許可だ!大体、あれほど諍いは無しだ
  と言っただろうが!」

 「私は争いなどしていない!」

 「では、あれは何だ?」

 「意見交換だ!」

ミナは開いた口が塞がらなくなった・・・。


一方、降下隊でも・・・・・・。

 「クルーゼ司令、ギナ様はオーブ軍准将で、首長
  家の人間です。あのような事はまずいのでは?
  外交問題に発展しかねません」

常識派のラスティーが懸念を口にすると。

 「あれは諍いなどではない」

 「では、何なんです?」

 「意見交換だよ」

偶然にも2人の意見は一致したのだが、それが本人
達に知れる事は無かった。 


(降下20分前、オノゴロ島上空)

 「よし!これで8機目!」

今回はフラガ少佐が邪魔をしてこないので、順調に
敵機を減らしていた。
フラガ少佐はホー1尉とガチンコで対決を始めてし
まい、他に手が回らないようだ。
キラは例のデュエルダガー3機に足止めされている

そして、俺の目前に新たな敵が現れる。

 「お前は(黒い死神)か?」

カラミティーの改良型と思われる機体から無線が入
ってきた。
後ろには、6機のロングダガーが見える。
今までは、他の部隊の攻撃に回っていたらしい。 

 「だとしたら?」

 「お前が生きていると、沢山のナチュラルが死ん
  でいく。だから、死んで貰う」

 「随分な理由で、俺は殺されるんだな」

 「ナチュラルに危害を加えるお前は、僕の敵だ!
  」 

何だ?こいつ。 
リヒャルト先生が話していた、例の奴隷コーディネ
ーターか?

 「お前、可哀想だな。早く殺してやる事が、せめ
  てもの情けだな」

俺は対艦刀を抜いて、身構えた。

 「シンはスピードで、後ろの連中を振り回せ。ア
  サギはコーウェル達と共同で、ロングダガー部
  隊に当たれ」

途中で合流した、Gに搭乗している傭兵達にロング
ダガーの対応を任せる。  
彼らは元ザフト軍パイロットで、俺と共に戦った事
のある連中が多く、信頼の置ける連中だ。
ストライク、イージス、デュエル2機、センプウ2
機がロングダガー部隊と交戦を開始する。

 「さあ、死んで貰うぞ!操り人形共!」

俺とカラミティー(後で聞いたのだが、ソードカラ
ミティーという機体らしい)は対艦刀で斬り合いを
始める。

 「ちっ、いい腕だ!」

大西洋連邦が我慢して飼っているだけあって、いい
腕をしている。

 「今までに、沢山の兄弟達を殺してくれた恨みも
  晴らさせて貰う」

カラミティーが更に斬りかかってくる。 

 「奴隷が生意気な口を叩くな!」

激しく切り結びながら、周りを見るとストライクが
一機のロングダガーをビームサーベルで仕留めてい
た。

 「残念だったな。俺の部下の方が腕が上だ」

俺の同期で赤を着ている男だ。
伊達にストライクを任せていないのだ。

勝負は更に続き、ロングダガーは4機が討たれ、デ
ュエル一機とセンプウ一機が討たれてしまった。

 「ちっ、僕達が不利のようだな」

 「奴隷なんだから気にせずに戦って死ねよ!」

俺はわざと挑発しながら、戦いを続ける。
彼らには罪はないのだが、何故かむかつく。

 「やった!一機しとめたぞ!」

シンがロングダガーを一機しとめた様だ。
彼は、今日一日で恐ろしく腕を上げた。
実戦で急激に成長する、珍しいタイプのパイロット
のようだ。 

 「さて、覚悟はいいかな?」

俺は対艦刀を構え直してから、再び斬りかかる。
カラミティーはこちらの攻撃を防ぎながら、引き揚
げる隙を狙っているようだが、俺はそれを許さない

 「ソウキス隊長ぅーーー!」

最後のロングダガーが再び、ストライクに討たれた
ようだ。

 「生き残りは僕だけか・・・。僕達は精鋭部隊な
  のに・・・」

 「今までは、普通のオーブ軍のモビルスーツ隊を
  倒して悦にいっていたようだな。降伏するなら
  受け入れるが」

 「ふざけるなーーー!」

完全に切れてしまったカラミティーが俺に無謀な突
撃をかけてきた。
所詮はあやつり人形、腕はよくても精神が未熟なよ
うだ。
これなら、例のレイダーの方が手強いはずだ。

 「死ね!」

カラミティーが大振りの一撃を放つが、俺はそれを
余裕でかわしてから、両腕を切り落とした。 

 「ちくしょう!死んでたまるか!」

カラミティーは逃走に入るが、俺は対艦刀をカラミ
ティーに向けて投げつけた。
対艦刀はカラミティーを貫く。

 「そっ、そんな!だが、僕を倒しても無駄だ!
  僕の兄弟達はまだ・・・・・・・」

パイロットの最後の叫びと共に、カラミティーは大
爆発を起こした。

 「可哀想な奴だな・・・」

俺にはそれしか言えなかった。


 「(エンデュミオンの鷹)!俺と互角に戦うなん
  て大したものだ」

 「俺はお前なんて知らない!」

 「俺は(拳神)バリー・ホー1尉だ!」

 「知らねえよ!」

フラガ少佐のレイダー改とホー1尉の一騎討ちは続
いていた。
ホー1尉は性格はアレだが、技量は一流なのでフラ
ガ少佐は苦戦しているようだ。 

 「ちくしょう!カザマは何処だ?」

フラガ少佐は因縁の相手を探しているが、見つから
ないようだ。

 「カザマ一佐なら、大暴れしてるだろうな。
  それと、お前の相手は俺だ!」

フラガ少佐は焦っていた。
本当は、カザマを抑えて被害を減少させないといけ
ないのに、彼を見失っていたからだ。
結果、被害は拡大の一途をたどっている。
他のメンバーもデュエルダガー部隊はレナ少佐以外
は全滅して、彼女自身も損傷多数で引き揚げてしま
ったらしい。
そして、3機のデュエルダガーを撃破したフリーダ
ムはその破壊力を存分にストライクダガー部隊に向
けていた。
次に、オルガのカラミティーは先ほどのジャスティ
スと交戦状態で他に手が回らず、6機残存していた
レイダー部隊は3機組の不思議なセンプウ小隊に2
機が、2機のジャスティスにももう2機が仕留めら
れていた。
ジャスティスは中隊長機らしいのだが、中隊の指揮
を部下に任せて、自分達の始末に回っているようだ
。 

 「俺以外は壊滅状態か。やってくれるな。カザマ
  !」

 「人様の心配よりも、自分の心配をするんだな」

ホー1尉の鋭い攻撃をかわすのが精一杯で、とても
逃げ出せる状態ではない。

 「遠距離戦に持ち込まないと。格闘戦では絶対的
  に不利になってしまう」

フラガ少佐は彼の特性を一発で見抜く事に成功して
いたが、それを生かす事が出来ない。
攻撃開始から1時間あまりで、280機中残存が半
数ほどらしいので、既に全滅状態なのだ。
今までは、自分達が精鋭部隊を抑えて被害を少なく
していたのだが、その均衡が破れて、損害が急増し
ている。

 「何とかしないと全滅だぞ・・・」

フラガ少佐が焦っていたその時・・・。

 「おい!上空のあれは何だ?」

敵味方共に、上空から昔のスペースシャトルのよう
な形の飛行物体が多数、降りてくるのを目撃した。

 「あれは・・・・・・」

フラガ少佐は味方である事を祈ったが、それは無駄
な事だったようだ。
例の飛行物体はモビルスーツらしきものを切り離し
、いや、逆でモビルスーツが飛行物体を切り離し、
それをストライクダガー部隊に叩き付けたのだ。
全機命中というわけにはいかなかったが、40機ほ
どのストライクダガーが大きな損害を受けるか、運
悪く撃墜されていく。
そして・・・・・・。 

 「久しぶりだな。ムウ・ラ・フラガ!ここで決着
  をつけようではないか」

今想像できる中で、最悪の相手が君臨したようだ。
よりにもよって、クルーゼが最新鋭機に搭乗してい
るのだ。

 「さあ、かかってきたまえ。ムウ・ラ・フラガよ
  」

 「また、後でな!」

クルーゼの突然の登場が、フラガ少佐に逃げ出す時
間を与えてしまったようで、彼はMA体型に変形し
てから速攻で逃げ出してしまった。

 「仕方がないな。では、気になっている二つの反
  応を」

クルーゼはフリーダムを、例のレイダー2機がいる
方向に飛ばした。
ここに来てから違和感を感じていたのだ。
ムウ・ラ・フラガの反応を複数感じる事に。

 「ちょっと待て!」

クルーゼは目的地に着く直前で、一機のM−1に呼
び止められた。

 「何かな?」

 「何かな?ではない!俺の獲物を取るんじゃない
  」

 「名前を聞こうか」 

 「俺は(拳神)バリー・ホー1尉だ!(エンデュ
  ミオンの鷹)に逃げられてしまったではないか
  」

 「それは、残念だったな」

 「残念じゃない!」

2人で言い争っていると、レイダー2機が強襲をか
けてきた。

 「では、一機譲ろうではないか。勿論、倒せたら
  の話だが」

 「倒せるわい!」

クルーゼは一機のレイダーと接近戦を試みてみる。

 「なるほど。私は自分が出来損ないだと思ってい
  たのだが、上には上がいるのだな。アル・ダ・
  フラガの劣化コピーに出会えるとは」

レイダーは至近距離からビーム砲を放ってきたが、
クルーゼはそれを余裕でかわす。
次に、鉄球を放つがそれも余裕でかわしていく。

 「残念だったな。次回は、もっとマシなコピーを
  するのだな」

クルーゼは背中の全武装を、一斉にレイダーに向け
て放った。
多数のビーム砲とレールガンが、レイダーに直撃し
て大爆発を起こす。

 「ムウ・ラ・フラガの70%というところか」

クルーゼが感想を述べていると、ホー1尉もレイダ
ーのコックピットにビームサーベルを突き刺してい
るところだった。 

 「意外とやるではないか」

 「意外は余計だ!」

 「私はラウ・ル・クルーゼだ」

 「なんだ。有名人か」

 「私も有名になったものだな」

ホー1尉はアスラン達やカザマ一佐から様々な逸話
を聞かされているので、大きく関わる事を避けよう
と考えていた。
日頃は唯我独尊でわが道を行く自分だが、彼にはか
ないそうにない。

 「アスランから聞いた事は事実だったのか」

ホー1尉は珍しく小さな声でつぶやいた。


(クルーゼ隊来襲10分前、「ピースメーカー」艦
 橋内)

プリンス准将は焦っていた。
まだ、1日が終わっていないのに、自分の戦力が壊
滅状態なのだ。

 「何でだ?どうしてこんなに弱いんだ?期待の新
  兵器ではなかったのか?」

プリンス准将は、隣りにいた科学者を問い詰める。

 「あれは、20数年前からアズラエル理事の父上
  が進めていた、クローン兵士計画の初期生産機
  なのです。遺伝子は当時、対立関係にあったア
  ル・ダ・フラガが選ばれました。彼は性格はと
  もかく、能力的には優れた人間だったので」

多分、それだけでは無いだろう。
個人的な恨みから、彼のコピーを思い立ったに違い
ない。
優秀な人間など他にいくらでもいるし、遺伝子デー
タを集める事も簡単なのだから。
親子揃って、蛇のような執念深さだ。 

 「だが、息子であるムウ・ラ・フラガよりも弱い
  ではないか!」

 「アル・ダ・フラガは用心深い人物で、なかなか
  完全な遺伝子情報を集めるのが難しく、他の遺
  伝子情報で補った結果、多少性能が落ちてしま
  いまして・・・」

 「そんな劣化コピーに意味があるのか?」

 「ありますよ。兵器としてはむしろ生体CPUよ
  りも成功しているものです。量産できるので、
  多数が装備可能ですし、一般兵士には十分に脅
  威で一部のエースは数で押さえ込めば良いので
  す。戦死しても、補充すればいいだけですし、
  一般兵士が死ななくて済むので、指揮官の罪悪
  感も少なくて済みます。近代戦では理想的な兵 
  器ですよ」

プリンス准将にも、多少の倫理観はある。
それから判断すると、あきらかに目の前の科学者は
常軌を逸している。
いくら、使い捨ての兵器でも人間の形をしているの
だ。
普通の指揮官なら、嫌悪感を覚えるだろう。
だが、その事に目の前の男は気がついていない
のだ。
アズラエル理事の父親の代からの古参の部下である
、この男の闇は相当に深いらしい。

 「データは取り終えました。後は、月艦隊で運用
  するだけです。二次ロット、三次ロットの約1
  00名のクローン兵士達が出撃を待っています
  。やはり、耐用年数が落ちるのを覚悟で薬物を
  使用した方がいいのかもしれませんね」

自分はアズラエル理事の飼い犬になり、多少の悪人
になったつもりであったが、彼らには到底かなわな
いようだ。
自分はアズラエル理事の大学時代の先輩で多少仲が
良かったという理由だけで、ここまで出世できたの
だが、適当なところで身を引かないと彼らの破滅に
巻き込まれるような気がしてならない。
最近、そんな事を考えるようになってきたが、アズ
ラエル理事は裏切りを許さないであろう。
最悪、殺される危険がある。

 「残存機数は?」

プリンス准将は、モビルスーツ部隊の管制官に状況
を尋ねる。

 「ソードカラミティー、ロングダガー部隊反応消
  失。レイダーは・・・。今、反応全機ロスト。
  ドミニオンのモビルスーツ隊は、撤退してきた
  レナ少佐以外で生き残っているのはフラガ少佐
  のみです」

管制官がモニターを見ながら報告してくる。
プリンス准将がモニターを覗き込むと、2機を除い
て、全機がシグナルロストの表示になっていた。 

 「酷いな。我々だけ撤退するか?」

ピースメーカーは軽空母改造艦なので、搭載モビル
スーツを失うと役立たずでしかないのだ。

 「別にかまいませんよ。データは集め終わりまし
  たから」

例の科学者の飄々とした態度に驚いてしまうが、悪
い手ではない。
腰巾着のジブリールの為に、危険を冒す必要はある
まい。
自分はあいつが大嫌いなのだから。

 「チェスター・ニミッツより入電。(ピースメー
  カー)は他の損傷艦と共にパールハーバーへ撤
  退せよ。(ドミニオン)は一時的に我が艦隊の
  指揮下に置かせてもらう。以上です」

通信兵からのタイミングの良い連絡に驚いてしまう
が、その内容は悪くなかった。

 「命令だから、仕方がないな。ドミニオンは不幸
  そのものだが。しかし、ジブリールは何を考え
  ているのだ?」

プリンス准将は損傷艦を引き連れて、潜水艦を避け
ながら一路パールハーバーを目指して出発する。
こうして、プリンス准将の地球最後の戦闘は終了し
たのだった。 


(オノゴロ島沖合い50キロ、オーブオーブ攻略艦
 隊旗艦「チェスター・ニミッツ」

お昼前の奇襲攻撃の混乱から立ち直り、再びオノゴ
ロ島沖50キロ地点まで接近した機動艦隊は本来、
出撃させる予定では無かった、第五次攻撃隊の発進
準備を進めていた。

 「第四次攻撃隊がピンチなんだ!救援に行って直
  ぐに戻ってくればいい。後は、明日に仕切り直
  すから。敵の損害も順調に蓄積されている。明
  日は勝利するから問題ない」

ニミッツ大将は指揮下の艦隊にモビルスーツ隊の発
進準備を命令していた。

 「それと、特務隊を出撃させる」

 「えっ、あいつらは最後の切り札で・・・」

参謀は反対するが。

 「バカたれ!出し惜しみしている場合か!」

 「へえ、特務隊ですか。そんなものを持っていた
  のですね」

ジブリールが興味深げに話しかけてくる。

 「ナチュラルではありますが、恐ろしい連中です
  。相手が可哀想になってきますよ」

 「それほどですか。では、楽しみにしています」

5分後、第四次攻撃隊救援の為の、第五次攻撃隊が
発進していった。

 


(10分後、オノゴロ島上空)

クルーゼ司令の救援隊が合流したオーブ軍は、第四
次攻撃隊を全滅寸前にまで追い込んでいた。

 「敵の損害は180機を越えたようだな。
  一先ず大成功で良かった。良かった」

俺が安心していると、オノゴロ島基地から連絡が入
ってくる。

 「敵、第五次攻撃隊接近中。推定230機です」

 「少ないな。陽動か?いや、救援だな」

俺は即座に判断して、クルーゼ隊長に連絡を入れる

 「君達は一旦引きたまえ。そろそろ、エネルギー
  が尽きる頃であろう」

途中から参戦したクルーゼ司令達と違い、長時間の
戦闘でバッテリーが上がる寸前なのだ。

 「お任せします。第一、第二師団の連中が交代で
  出てきますのでよろしくお願いします」

俺達は一旦基地に引き揚げて、代わりに第一、第二
師団の全稼動機とディン部隊の半分も出撃して迎撃
に当たる。

 「うん、この感触は・・・。ムウ・ラ・フラガだ
  な。ラスティー、後の指揮は任せたぞ!」 

クルーゼ司令はモビルスーツ隊の指揮をラスティー
に一任してから、フラガ少佐のレイダー改と再び勝
負を開始した。

 「ムウ、心配したぞ。このまま逃げ出すのではな
  いかと」

 「ほざけ!補給に帰っただけだ!」

2人が激しく戦っている隣で、ディアッカ搭乗のジ
ャスティスはレナ少佐のデュエルダガーとの一騎討
ちを開始する。

 「お姉さん。覚悟してもらうよ」

 「僕ちゃんは早くお家に帰りなさい」

 「黙れ!年増が!」

 「うるさい!餓鬼のくせに!」

途端に醜く言い争う。

第五次攻撃隊は80機ほどの第四次攻撃隊の残存機
を逃がしながら、けん制目的で戦いを挑んでいる。
そして・・・。

 「何だ?あの派手な5機は?」

ディンのパイロットがロングダガーの改良機を5機
見つけた。
色は黒・赤・青・白・緑で目立つことこの上ない。

 「迎撃だ!」

ディン部隊の内、15機ほどが迎撃に向かった。
相手はパーソナルカラー機で確実にエース級だ。
倒せば、名誉は我の物・・・。
ディンのパイロット全員がそう考えていた。

 「敵1機につき味方3機で対応せよ」

ディンは小隊単位でロングダガーの改良機に攻撃を
仕掛けた。

 「死ね!」

ディン小隊はビームマシンガンを撃ち、ビームが装
甲に命中する。

 「やった、命中だ!」

ディン部隊のパイロット達は大喜びするが、それは
長くは続かなかった。

 「何?効いてない・・・。ラミネート装甲か?」

ロングダガーの装甲から蒸気が上がっている。
ビームの熱を強制排気しているようだ。

 「正解だ!商品はそうだな。死んでくれたまえ!
  」

黒いロングダガーが、自分の背丈ほどの対艦刀を引
き抜いて突撃をかけてきた。

 「なっ、撃ち落せ!」

ディン部隊はビームマシンガンを撃つが、今度は左
腕に装備されていた光波シールドに弾かれる。

 「強敵だ!報告を・・・」

最後まで言い切らないうちに、ディン小隊3機は真
っ二つにされて爆発した。

 「俺は、特務隊隊長コテツ・ササキ大尉だ。よく
  覚えておけ」

隣りを見ると、副隊長のヘンリー・ミヤモト中尉が
青い機体に装備されている、二刀流の短めの対艦刀
でディン小隊を切り裂いている。

更に隣りではミック・グレイシー少尉が緑の機体に
装備されているナギナタで、ディンを切り裂いてい
た。

 「後の、2人はどうなんだ?」

ササキ大尉が周りを見渡すと、紅一点のレン・ファ
ン少尉が赤い機体に装備されているトンファーでデ
ィンを叩き潰し、チェ・スンミン少尉が白い機体で
特別にあつらえた青竜刀でディンを切り裂いていた

 「よし、ディン15機の始末は終了したな。第四
  次攻撃隊の撤退は完了したようだし、少し俺達
  の力を誇示してから帰るとするか」

 「「「「了解!」」」」

5機のロングダガー部隊は更に、M−1やディンに
攻撃を仕掛けて、次々にモビルスーツを落としてい
った。

 「おい、強敵だぞ!」

ラスティーはセンプウやゲイツの部隊を引き連れて
足止めに向かうが、ラスティー自身は青い機体との
一機討ちに巻き込まれてしまって、他の機体に手が
出せない。

 「ディアッカとクルーゼ隊長は、強敵との一騎討
  ちで助っ人は不可能か。他には頼れる奴はいな
  いからな」

降下隊の連中は凄腕揃いだが、正直なところあの5
機の相手はつらいであろう。

 「俺達が相手だ!」

突然、赤い機体と白い機体にM−1が斬りかかって
いく。

 「第一師団所属、ババ三佐だ。尋常に勝負!」

 「同じく、ハワード二尉参上!」

第一師団のエース2人が戦いを挑む。
ババ三佐は赤い機体に、ハワード二尉は白い機体と
勝負を開始した。

 「俺達はフリーだな」

黒と緑の機体はゲイツやセンプウと戦い始める。
だが、2機の強さは尋常では無く、あっと言う間に
5機のゲイツと3機のセンプウが切り裂かれてしま
った。 

 「たいした事ないな。ザフトの連中は」

 「空の化物ではなかったのか?」

第五次攻撃隊は30機ほどの損害を受けていたが、
オーブ防衛隊の損害は5機の敵だけで30機を越え
ていた。
たった5機の敵で、オーブの質的な優位が崩されよ
うとしていた。


 「まずいな。あんな隠し球があったとは」

モビルスーツの整備を待ちながらモニターを見てい
るが、戦況は絶望的だ。
相手の5機が強すぎるのだ。
こちらは精鋭部隊を集中させたツケで、彼らと互角
に戦えそうな連中が、軒並み乗機の整備中なのだ。

 「俺のBストライクはいけるか?」

 「後、20分ダメです!」

整備員からの返事は思わしくない。

 「誰の機体が一番早く終わる?」

他の機体の整備状況を尋ねるが、キラのフリーダム
が30分、ホー1尉のレイダーが25分、アスラン
達のジャスティスが同じく25分で間に合いそうに
ない。
予備機のM−1で出撃しようかと考えていた時、カ
ガリが俺に向かって叫ぶ。

 「私の(暁)を使え!許可する」

 「ありがとう。カガリちゃん!」

 「礼はいいから早く行け!」

俺は急いで「暁」に乗り込んでから、OSを調整し
て発進準備を整える。

 「全部、省略だ!(暁)出るぞ!」

俺は(暁)を例の5機がいる方向に向けて飛ばして
いると、後から近づいてくるモビルスーツがいる。

 「ブルーフレーム!どうして?」

今まで、一度も戦場に出てこなかったガイが出撃し
てきたのだ

 「どういう風の吹き回しだ?」

 「契約条件にカガリの乗機でオーブ軍の象徴であ
  る(暁)の護衛が入っているのだ。これも仕事
  の内だ」

 「では、守ってくれよ!」

 「仕事だからな」

俺達は乱戦状態の戦場に突撃する。

 「おっ!金色のモビルスーツだ」

 「確か、オーブ軍高官の専用機だぞ。倒せば昇進
  ものだ!」

 「やってしまえ!」

多数のストライクダガーがビームライフルを撃って
くるが。

 「残念だったな!この機体には効かないな」

俺は向かってくるビームを反射させて、ストライク
ダガーを始末する。

 「ビームを跳ね返すだと・・・」

更に、怯んだ敵をビームライフルで仕留めながら、
例の5機に向かって飛んでいく。

 「ほう、強そうな新手の2機か・・・」

ササキ大尉は自分が金色のモビルスーツと。
そして、ミック少尉に青いM−1に似た機体の始末
を一任する。

 「誰が乗っている?」

 「オーブ軍、カザマ一佐だ」

 「(黒い死神)か。引導を渡してやろう」

 「熨斗つけて返すわ。そんなもの!」

 「俺は、お前を絶対に許さない!」

 「どうして?」

 「お前は二重に祖国を裏切っているからだ!」

 「二重?」

 「軍国主義が復活した日本に媚を売って、以前の
  平和な祖国を裏切り、地球連合という国家も裏
  切ってプラントに尻尾を振る裏切り者が!」

 「お前、日本人か?」

 「違う!俺は日系の大西洋連邦人だ!日本が連合
  を裏切った時に、俺達がどれほど惨めだったか
  !他の4人も同じだ!ミヤモトは俺と同じ。
  ミックは南米出身者だから、左翼ゲリラ運動の
  活発化で肩身が狭い。そして、レンとチェは台
  湾出身で同じく大変な目にあっている」

 「そんなの、そちらの勝手な事情だろうが!俺の
  知った事かい!第一、自分だけ不幸だなんて思
  うなよ!このキチガイ野郎が!」

俺は黒いロングダガーと、対艦刀で斬り合いを始め
る。
隣りでは、ガイが緑のロングダガーと戦っていた。

 「俺の名前はムラクモ・ガイ。尋常に勝負!」

 「俺は特務隊のミック・クレイシー少尉だ。知っ
  てるよサーペント・テール。お前を倒せば昇進
  ものだな」

 「倒せたらな!」

ガイは特別あつらえの日本刀を抜いて構える。

 「ほう、見事な業物だな」

 「知り合いのジャンク屋に作ってもらったのだ。
  銘は(備前長船)。お前を最初に切り裂いてや
  ろう」

 「お前が死んだら、それを貰ってやるから安心し
  て死ね!」

2人は対峙したまま動けない。
達人同士の戦いなので、無駄に動いた方が負けなの
だ。

 「いくぞ!」

先に動いたのは、ミック少尉だった。
ナギナタと横に薙いで、ブルーフレームを二つに切
り裂こうとする。

 「甘いな!」

ガイは僅かに高度を上げてナギナタの刃の上に乗り
、更に飛び上がってから、ロングダガーを真ん中か
ら縦に切り裂いた。

 「ふっ、俺の勝ちだ」

緑のロングダガーは、真っ二つになってから爆発す
る。

 「「「「ミック!」」」」

他の4人は仲間の死に叫び声を上げる。
最強と思われていた敵が一機倒された事により、全
員の顔に安堵の表情が浮かぶが、次に悲劇に見舞わ
れたのは俺達の方だった。

 「しまった!」

攻撃を避け損ねたババ三佐のM−1の頭部をトンフ
ァーが砕いてしまったのだ。
どうやら、ダメージが蓄積してフェイズシフト装甲
が落ちてしまったらしい。

 「ババ三佐、退却を!」

隣りで戦っていたハワード二尉が声を張り上げたが
、時は既に遅く。
次のトンファーの一撃がコックピットに突き刺さっ
た。

 「ババ三佐!」

ババ三佐のM−1はゆっくりと落下していく。

 「お前、人の心配している場合か?」

白いロングダガーが、青竜刀でハワード二尉のM−
1の頭部と右腕を、斜め斬りで同時に切り落とす。

 「油断した!」

ハワード二尉のM−1も落下していくが、オノゴロ
島の地面に落下する前にスラスターを噴かして、衝
撃を和らげたので、彼にケガは無いようだった。

 「ダメだ。操作不能だ」

ハワード機は大破状態で動かないようで、彼は直ぐ
に脱出したようだ。 

 「さて、そろそろ時間だ。ではまた会おう」

例の4機は急に戦いを止めてから全機で退却に入り
、レナ少佐もディアッカとの、フラガ少佐もクルー
ゼ司令との戦いを止めて撤退に入った。
俺達に追撃をかける余裕は無く、この日の戦闘はこ
れで終わりを告げたのだった。 


(夕方、パイロット待機室)

最後の戦いが終わってから1時間ほどが経ち、俺達
は待機室でぐったりとしていた。
1日に3回の出撃は尋常でないほどの疲労感を伴う

シンは食事も忘れて寝入っているし、残りの連中も
船をこぎ始めている。
俺も、気を抜くと寝入ってしまいそうだ。

 「あの、ロングダガーは何者なんでしょう?」

同じく眠気と戦っているシホが、俺に聞いてくる。

 「あいつらナチュラルらしいよ。多分、天才なん
  だな」

 「乗ってる機体も高性能ですね。武器も格闘戦専
  用に特化していますし・・・」

火器をほとんど使わないで、格闘戦オンリーであれ
だけの味方を落としたのだ。
恐ろしい技量の持ち主ばかりで、その腕前はフラガ
少佐をも上回るだろう。 

 「ガイはよく一機仕留められたよな」

俺が感心すると。

 「お前が褒めるなんて珍しいな。冗談は置いとい
  て、実際のところ技量は互角に近かった。俺が
  倒されていた可能性も十分あったのだ」

 「そんな連中が後4人か」

 「当てるパイロットを選んでおかないと、大変な
  事になるぞ。今日は大損害だったからな」

あいつらに、40機近くのモビルスーツが倒されて
しまったのだ。その被害を考えると、頭がおかしく
なりそうだ。

 「俺、ホー1尉、キラ、アスラン。こんなものだ
  な」 

 「他の連中は?」

 「クルーゼ司令には(エンデュミオンの鷹)対策 
  を一任する。ディアッカには例の(乱れ桜)の
  相手をして貰って、残りの連中は一機でも多く
  敵を減らして貰わないと」

 「俺も出撃するぞ」 

 「いいのか?ガイ」

 「ここでオーブが負けてしまったら、報酬が受け
  取れない。この依頼は高額報酬の仕事なんだ」

 「お前、追い込まれてる?」

 「傭兵は金が無いと辛い」

 「世間一般でもそうだって。金が無いのは首が無
  いのと一緒なんだ」

 「そうだな・・・」

 「カガリちゃんに掛け合ってみたら?例の4人組
  を倒したら特別報酬とかさ」

 「それは良い意見だな。早速、掛け合うか」

ガイはカガリを探しに部屋を出て行った。

 「ヨシさんは人を乗せて使うのが上手いですね」

アスランが俺達の会話を聞いていたらしい。

 「まあな。それより、あの4人組だ。お前なら勝
  てるか?」

 「黒い機体の奴以外ならなんとか」

 「やはり、一番のネックはあの男か」

彼は、あの5人の中で最強の男だ。
俺でも、互角に戦うのが精一杯なのだから。

 「動きを抑えればいいんだ。明日は正念場だから
  な。早く、飯食って寝てしまおう」

 「そうですね。ところで、アサギとマユラは?」

 「石原一尉とハワードニ尉のところ」

 「えっ、アサギってそうなんですか?」

今更気が付くなよ。

 「マユラは石原一尉に慰められている。アサギは
  ババ三佐の戦死で落ち込んでいるハワード二尉
  を慰めている」

結局、ババ三佐はコックピット内で押し潰されてい
たのだ。
それを見てしまったハワード二尉の落ち込みは相当
なもので、アサギが慰めに行っているらしい。 

 「アサギ自身は、ジュリの死を悲しんでいる場合
  ではないんですね」

 「悲しむのは後だ。引きずっていると、次に死ぬ
  のは自分だからな。それと、明日は誰も死なな
  い事を祈るしかないな」

 「ええ・・・」

その後、俺達は飯を食べて早めに寝てしまった。
どうせ、敵襲があれば叩き起こされるのだ。
とっとと、寝るに限る。
俺は、ベッドの中で考えていた。
明日はどんな敵が来るのか。
俺達は勝利できるのか。
オーブ軍のモビルスーツ稼動機数は246機で、連
合のモビルスーツは推定で500〜550機。
敵の優位は相変わらずでこちらの損害は新たな敵の
影響で増えてしまった。
明日の戦いの行方はまだ誰にもわからない。
全ては明日に決まる事だった。


         あとがき

オリジナルのパイロット達を出しました。
彼らは、太平洋戦争時の日系人と同じで、出身国が
敵国であるために惨めな思いをした結果、複雑な
感情を抱いて戦っていますが、全員がフラガ少佐を
超えるパイロット達です。
搭乗機はカザマ達にはロングダガーに見えています
が、ラミネート装甲装備でオリジナル武器を使い易
くする為に改良を加えた、ロングダガーの改造機で
す。
彼らはナチュラルなのですが、その卓越した反射神
経と技量でロングダガーを操っています。
果たしてカザマは彼らとどう戦っていくのか?
次回更新は不明です。


           追伸

グリアノス隊長って、他の方が使っているキャラだ
ったんですか?
実は、私がこのSSを書いている事を唯一知ってい
る友人(隠れガンオタ)にメールでオリキャラ候補
の外国人っぽい名前の候補を聞いた時に出てきた
名前だったんですけど・・・。
 
 「グリアノスかカッコいい名前だな。お前が
  学生の時につきあっていた留学生の名前
  だったっけ?」
 
 「あほ!男の名前だ!それで、イメージ的には
  どんなキャラにするの?」
 
 「ZZのラカン的な人」
 
 「ドーベンウルフか」
 
(メールでの会話です。多少省略あり)
 
てな感じで適当に決めてしまいまして・・・。  
以後、気をつけますのでごめんなさい。

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