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「これが私の生きる道!オーブ決戦編(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-06 14:52/2006-03-07 14:37)
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(夜中3時、オノゴロ島地下基地格納庫内)

いよいよ数時間後に敵の攻撃を控えた俺達は、モビ
ルスーツの最終点検をしながら出番を待っていた。
敵の攻撃予想時刻は朝6時である。
きっと、敵艦隊も攻撃準備に忙しいのであろう。
俺はBストライクのチェックを終えて、コックピ
ット内のシートに座布団を敷いてくつろでいた。

 「カザマ一佐、異常はありませんよ」

30代後半の、三佐の階級章をつけた男性士官が話
しかけてくる。
軍服を着慣れていないようなので、モルゲンレーテ
の社員から軍属に徴用された人であろう。

 「わざわざ、すいませんね」

 「いえ、息子が世話になっているようで」

 「息子さんですか?」

 「私はシンの父です」

 「えっ、シンのですか?」

実は、俺はシンの両親に会った事がなかったのだ。
父親がモルゲンレーテの社員である事は知っていた
のだが、俺がシンのアカデミー入学を支持した手
前、会い難かったのだ。
シンの母親は専業主婦で、かなり前からオノゴロ島
から避難していて、マユちゃんは避難先から、毎日
強引にオノゴロ島に通っていたようなのだ。

 「いえ、こちらこそ色々申し訳ないです」

俺はしどろもどろになりながら謝罪する。

 「気にしないで下さい。シンが自分で決めた事で
  すから。それよりも、ステラさんを巻き込んで
  しまったようで、申し訳ないのはこちらの方
  です。」

逆にシンの親父さんに謝られてしまった。

 「あいつ、まだ13歳ですからね。それを家族と
  引き離す原因を作ってしまったのは俺なんで
  す。それに、ステラは自分で進路を決めたの
  です。兄としては寂しいですが、応援するしか
  ありません」

 「お若いのに、しっかりしていますね。シンも
  見習ってくれると嬉しいのですが」

 「見習うと、俺みたいにひねたガキになり
  ますよ」

 「ははは、そうですか。私はそれでもかまいま
  せんよ」

 「それに、シンを不安定な新鋭機のテストパイ
  ロットにしてしまいました」

 「実際に見ましたが、パイロットを極端に選ぶ
  以外は、整備性も安定性もある機体ではあり
  ませんか。ただ、兵器としては失格なんでし
  ょうけど」

あの機体の量産は非常に難しいし、量産しても
パイロットが見つからない。
俺が一ヶ月あのシップウと付き合って、見つけた
事実である。

 「シンに気を使ってくださって、ありがとうござ
  います。本当は、エコ贔屓はいけないはずなの
  に、無理をさせてしまって」

 「贔屓なんてしてませんよ。あの、シップウは
  乗りたがるパイロットが皆無でしたので、シン
  が重宝されていただけです」

シップウのあまりの出鱈目さに、ベテランパイロッ
トほど引いてしまったのだ。
俺が前回墜落した事を聞きつけた連中の中には、
機体に近づく事すらしない者もいた。
ベテランほど縁起を担ぐものなのだ。

 「あの機体と操縦データで、うちの新型の開発が
  進みましてね。日本の技術者達には、皮肉な結
  果なのでしょうが」

 「ムラサメでしたっけ?」

 「ええ、強度の問題もフェイズシフト装甲を装備
  すれば解決しますし。本来の設計では、防御力
  が脆弱過ぎて、殺人機だと怒られていましたの
  で」

暫らく話していると、最終ブリーフィングの時間が
迫ったので、俺はコックピットを降りて、モビルス
ーツ部隊の士官が集まる予定の会議室に行く事に
する。

 「シンの事をよろしくお願いします」

シンの父親が頭を下げてきたので。

 「安心してください。責任を持って面倒を
  みます。」

俺はシンの父親と別れて、会議室に向かった。


作戦開始予定時刻が2時間を切り、モビルスーツ隊
を指揮する、中隊長クラスの士官が全員集合した。

 「では、作戦を確認する。モビルスーツ隊の全稼
  動機は、約400機。これを二つに分けて交替
  で守備に就いて貰う。どうしてか、わかるかね
  ?」

第一師団長のキスリング少将が俺に聞いてくる。
彼は俺の事が大嫌いなので、もし答えられなかった
らバカにするつもりなのだ。

 「オノゴロ島周辺は狭いので、全機の展開が不可
  能だからです。それに、連合は数派に渡って
  攻撃をかけてくるでしょうからローテンション
  を組んで対応しないと、こちらが倒れてしまい
  ます」

 「その通りだ」

若造に正解を言われて、キスリング少将の機嫌が
悪くなる。

 「多分、敵も同程度の攻撃隊しか展開出来ない
  はずですから、推定で4〜6回あるモビルス
  ーツ隊の攻撃を防げば我々の勝利です」

 「そんな事はわかっておる!」

 「念のために確認したまでです」

 「もう良い。後はホムラ代表の発表を待って
  から、敵の攻撃を防ぐのみだ。各員の奮戦
  に期待する」

こうして、オノゴロ島守備隊の準備は整ったの
だった。


(オノゴロ島沖30キロ、オーブ攻略艦隊旗艦
「チェスター・ニミッツ」)

ニミッツ大将はこの艦を旗艦にしてから、何回も
同じ質問をされていた。

 「ニミッツ大将はあのニミッツ元帥の子孫の方
  ですか?」

答えはノーである。
たまたま、苗字が同じだけだ。
家は代々パン屋で、自分だけが軍人なのだ。
そして今一番腹が立つのは、隣りにいる軍人で
もない男にそれを聞かれている事だ。

 「残念ですが、違います。苗字がたまたま同じ
  なだけです」

ニミッツ大将は昨日ヘリで突然乗り込んで来て、
オブザーバーを名乗った、このジブリールという
男が大嫌いだった。
生理的に受け入れられない。 

 「そうですか。ですが、今日あなたはこの艦の名
  前の由来になっている、チェスター・ニミッツ
  元帥を超えるのですよ」

 「それは、初耳ですな」

 「これだけの大艦隊を指揮して、勝利した男とも
  なれば、歴史に名が残る英雄です」

 「ですが、ホムラ代表の声明を聞きましたか?
  オノゴロ要塞を落とさないと、我々に勝利は
  ないのですよ」

ほんの10分前に、世界中に放送されたホムラ代表
の声明は衝撃的だった。
オノゴロ島とその周辺を除く全地域に無防備宣言を
出して、治安維持用の警察を配置しているのみであ
ると発表したのだ。
つまり、オノゴロ島を落とさないと、連合に勝ちは
無い。
全軍がそこに集合しているのだからと、宣言したの
だから。
最初にこれを聞いたジブリールは激怒して、代表官
邸で篭城しているホムラ代表を捕らえて来いと命令
を出した。
だが、自分が囚われの身になれば、オノゴロ要塞に
待機している他の首長が臨時代表に就任して、戦い
続けるだろうと演説するに至り、オノゴロ要塞陥落
が勝利の絶対条件になってしまったのだ。
市民を人質に取れば勝てるのだろうが、そこまで追
い込まれたと思いたくないし、オーブが大々的に発
表してしまったので、マスコミの目もある。
卑怯な手は使えない。
多分、それが狙いなのだろう。

 「では、早く落としてしまおう。あんな小さい
  島、半日もあれば十分だろう」

 「無茶をおっしゃいますな。小さいから、苦労し
  ているのです」 

 「何故だ?全機で攻撃をかければ済むだろう」

ニミッツ大将は、ジブリールの素人判断を笑いたく
なるが、ここはこらえて説明する。

 「偵察機の情報では、オノゴロ島は情報部の目を
  掻い潜り、おそろしいまでに要塞化が進んで
  いるようです。多数のモビルスーツで密集する
  と、狙い撃ちされてかえって不利です。250
  機ほどの連続攻撃を、何回も続けられる限り続
  けて敵を消耗させて勝利します。これが一番の
  手です」

 「地味な手だな」

 「地味ですが、確実です。しかし、オーブの軍部
  は強かですね。これを狙っていたとは」 

連合の参謀本部は、オーブ全島の軍事拠点や基地を
考慮して作戦兵力を決めていたが、オーブの捨て身
の策により、多数の兵力を一度に配置できなくなっ
てしまった。
下手をすると、大軍が不利になってしまうのだ。

 「とにかく、作戦開始だ!」

ジブリールが不機嫌そうに命令を出す。
本当は、命令できる権限はないのだが、彼はアズラ
エル理事の懐刀だ。
逆らうと色々大変なのだ。

 「一時間後に、第一次攻撃隊を発進!それから
  は、2時間おきに攻撃隊を組んで発進させろ。
  次に、水中用モビルスーツ隊にオーブ護衛艦
  隊を攻撃させろ」

ニミッツ大将が大声で指示を出していく。
そして一時間後、第一次攻撃隊は発進していった。


(午前5時40分オノゴロ島要塞)

敵モビルスーツ隊の発進準備が始まり、来襲まで後
20分となった。
俺は士気を上げる為に、カガリに「暁」に搭乗貰い
、最後の演説をお願いした。

 「私は、オーブ特殊装甲師団長カガリ・ユラ・ア
  スハ少将である。もう間もなく敵の攻撃が始ま
  るが、案ずる事は無い。我々は絶対に勝利
  する。何故なら、我々には祖国を守るという大
  義名分があるからだ。敵には正義もなければ、
  時期も悪く、地理的にも不利だ。勝てるはず
  が無いのだ。各員の奮戦を期待する」

 「連合をぶっ殺せ!」

 「「「おー!」」」

カガリの演説の後にあえて下品な言葉を叫んで声を
上げさせた。
これで、緊張が解れただろう。

 「アスラン!イザーク!ニコル!シホ!石原一尉
  !準備はいいか?」

 「はい!」

 「大丈夫です」

 「いつでもいいですよ」

 「準備完了」

 「オーケーだ!」

全中隊長から返事が来る。
今日の配置は、特殊装甲師団と第三師団が組んで
最初に迎撃して。
その後は、第一師団と第二師団が交替するローテ
ーションになっている。
全部の師団は4個中隊編成で一個中隊が24〜28
機のモビルスーツで構成されていた。

 「シホ、志願兵達に無理させるなよ」

 「わかってますって」

シホの中隊には、志願兵達11名が配属されて
いた。
俺は彼らの生存率を上げる為に、M−1改兇謀訃
させ。
ベテランのコーディネーター傭兵に改良したGを渡
していた。
Gは癖があって乗りにくいが、性能は折り紙つき
だし、改良で更に性能がアップしている筈だ。

 「カザマ一佐、敵が見えてきたぜ」

目が良いホー1尉が報告を入れてきた。
俺も空を見てみると、ゴマ粒のような敵がどんどん
大きくなってくる。

 「見えてきた。ヤマタノオロチを装備している
  機体は射撃準備。バスターも砲撃準備だ!」

オノゴロ島各地に、急遽設置されたエネルギー
供給端末にヤマタノオロチのコネクターを差し込ん
でから、照準を合わせる。
その数、およそ30基あまり。

 「引き付けろよ!」

敵はどんどん近づいてくる。

 「よし!撃て!」

ヤマタノオロチの太いビーム砲が、敵モビルスーツ
隊に向けて伸びていき、十五機ほどのストライクダ
ガーが爆発した。

 「上出来だ。次!」

エネルギー充填後、二斉射目が発射された。
今度は警戒していたので、被害は半分ほどに減る。

 「よし、敵が散った。全機、討ち取れ!」

基地上空でオーブモビルスーツ隊210機と連合の
モビルスーツ隊約250機が激突した。
こうして、オーブ本国での戦いの火蓋は切って落と
された。


(8月8日午前6時15分台湾南西海中、自衛隊
 第一潜水艦隊旗艦「おやしお」)

一昨日の深夜に呉を出撃した第一潜水艦隊は、同じ
く、上海を出港した東アジア共和国の潜水艦隊を
追っていた。
この艦隊は潜水艦18隻で編成されていて、最大の
特徴は新型水中モビルスーツ「カイオウ」が一隻に
つき2機搭載されている事だ。

 「いよいよ、(カイオウ)のデビュー戦だな」

艦隊参謀長の深町一佐が、同期で艦隊司令の海江田
海将補に嬉しそうに言った。

 「そうだな。硫黄島での決戦で活躍できなかっ
  た、俺達の初陣だ」

海江田海将補が嬉しそうに答える。

 「そろそろ敵が見つかるはずなんだが」

 「参謀長なんだから落ち着けよ」

 「落ち着いているさ」

この2人は友人同士なので、どうしても会話が軽く
なってしまう。
これを嫌っている将官は多いが、2人は優秀なので
左遷されたりする事は無かった。

 「4時の方向、距離5000、水深300に感
  あり」

ソナー担当の下士官から報告が入る。

 「艦の国籍、種類はわかるか?」

深町一佐が尋ねると。

 「東アジア共和国戦略潜水艦「曹操級」が36隻
  です。音紋ライブラリーと適合しました」

 「では、攻撃準備だ。(カイオウ)発進可能深度
  まで上昇」

水深20メートルまで上昇した潜水艦隊は、下部
ハッチを開いて、(カイオウ)を一隻につき2機
発進させる。

 「では、我々も戦闘準備だ」

潜水艦隊は敵潜水艦隊と同じ深度まで潜り、深深度
魚雷の発射準備をする。

 「(カイオウ)は何隻殺るかな?」

 「全滅させるだろう。(カイオウ)に魚雷は効か
  ないからな」

 「フェイズシフト装甲か」

 「それに、あの機動性だ。敵潜水艦に同情したく
  なる」

 「リムパック演習で、(チェスター・ニミッツ)
  に訓練用魚雷を4発叩き込んだお前がか?」

海江田の過去の悪事が暴露される。

 「深町は、スプルーアンス大将の旗艦(フランク
  リン・ルーズベルト)に同じ事をしたではない
  か。俺に張り合うのもいいが・・・」

 「まあ、過去の事は忘れようぜ」

数分後、ソナー員から敵潜水艦の圧壊音が聞こえて
くると報告が入ってきた。
そして、更に10分ほどが過ぎると、敵潜水艦の
反応が全て消滅した。

 「全滅か?」

深町参謀長は信じられない様子だ。

 「事実だ。認めろ」

 「これからは、宇宙艦艇や海上艦艇と同じく、
  潜水艦にもモビルスーツの護衛がないと、一方
  的に餌食になる可能性があるな」

 「報告は確実に上げないとな」

その後、海江田海将補は(カイオウ)を全機回収
してから、呉に進路を変更した。
第一ラウンドはプラント側の勝利だった。


(8月8日、マレーシア・シンガポール国境) 

 「ザフトのモビルスーツ隊だ!」

東アジア共和国所属のマレーシア駐留軍の国境警備
隊は、シンガポール基地を出撃したザフト軍モビル
スーツ隊の奇襲を受けた。
数時間後に自分達が攻撃を開始する予定だったので
、まさか逆に攻撃を受けるとは考えていなかったよ
うだ。
突然の奇襲で国境警備隊は大混乱に陥っていた。

 「戦意を無くした敵は、後ろのシンガポール陸軍
  の連中にまかせるんだ」

オレンジ色にコーティングしたシールドを持った、
センプウを操りながら、攻撃隊副隊長のハイネが指
示を出していた。
彼は、今回の作戦の為に、助っ人として援軍を率い
ているのだ。 

 「ハイネ!行くぞ!」

攻撃隊隊長グリアノス・エディンが、ゲイツカスタ
ムを最前列に進める。
彼は、ザフト軍パイロットの中でナンバーワンの
評価を得ている男で、ハイネの尊敬する上官だ。

 「はい。全軍突撃!北方のシンガポール攻略部隊
  駐屯地に向けて突撃!」

国境北方50キロの地点で宿営している、東アジア
共和国のシンガポール攻略部隊を先手を打って壊滅
させるのが、今回の使命だ。
シンガポール国内で迎え撃つとインフラの被害が
バカにならないので、今回の作戦が実施されたの
である。
そして、今回の作戦にはシンガポール軍が支援に当
たっている。
密約で戦後、極東同盟に参加する事を決めたシンガ
ポールの点数稼ぎの一環だ。

 「時間が無いぞ!駆け抜けろ」

ディン、センプウ、ゲイツのみで編成された攻撃
部隊が最大速度でマレー半島を北上していく。
20分ほどで、敵部隊の宿営地が見えてきた。
推定戦力は、モビルスーツ150機と戦車・装甲
車が600両で近くの空軍基地から援護を受ける
ので、制空権もそれなりにある部隊だ。

 「敵の侵攻意思だけ砕けばいい!各自、攻撃
  開始」

上空からディンが、車両の上部にビームマシンガ
ンを撃ち込んで破壊していき。
ゲイツとセンプウが、ストライクダガービームラ
イフルを撃ち込んでいく。
たまに、反撃を受けて爆発するデインやゲイツが
いたが、攻撃は順調に進んでいた。

 「補給物資を破壊しておけよ」

グリアノス隊長の命令で野積みにされていた食料
、燃料、弾薬、予備パーツに銃撃が加えられて
いく。

 「そろそろ、潮時だな。撤退だ!」

通り魔の犯行のように、短時間で目標を達成した
攻撃隊は即座に撤退する。
国境までたどり着けば、予備のバッテリーが用意
されているのだ。

 「上手くいきましたね」

ハイネがグリアノス隊長に、嬉しそうに話し
かけた。 

 「二番目に簡単な作戦だからな」

 「二番目ですか?」

 「一番簡単なのが、東アジア共和国の潜水艦隊の
  殲滅だ。これは、自衛隊の担当だ。3番目は、
  アメノミハシラの支援任務で、こいつは、クル
  ーゼの担当だ。次はカーペンタリア、太平州連
  合・赤道連合担当のインド洋艦隊迎撃で、
  最後に、一番キツイのがカザマが担当している
  オーブ本国の防衛戦だ。あいつ、戦死しなけれ
  ばいいが・・・」

 「大丈夫ですよ。あいつが死ぬはずありません」

 「そうだよな。お前達3人は、憎まれっ子世に
  はばかるだものな」

昔、アカデミー時代にグリアノス隊長が短期教官と
して来た時、搭乗していたモビルスーツのハッチに
ゴリラ搭乗中と落書きをした過去があるのだ。
結局、悪事はすぐにバレて3人で居残り特訓を受け
る羽目になったのだが。

 「俺の訓練を多く受ける為に、あんなイタズラを
  するバカはお前達だけだ」

 「カザマは本当にバカですよね」

 「カザマが主犯はハイネだと言ってたぞ」

 「それは嘘ですよ」

 「まあ、どちらでもいいが」

 「さあ、国境ですよ」

グリアノス隊の攻撃参加モビルスーツは108機
で、損害は13機だった。
これは、最近では少ない方の損失だった。


(8月8日午前7時、アメノミハシラ)

1時間前のオーブ本国の攻撃開始時刻と同時に、第
7艦隊の攻撃は開始された。
アメノミハシラ防衛隊は第7艦隊指揮下のモビルス
ーツ隊250機の内、180機あまりの攻撃を受け
て、守勢に追い込まれていた。 

 「けん制目的とはいえ、連合の物量はすさまじい
  ものがあるな」 

アメノミハシラ司令室でミナが1人つぶやく。

 「クルーゼの援軍はそろそろかな?その前にギナ
  に釘を刺しておくか」

ミナはギナが座乗している、アメノミハシラ防衛艦
隊旗艦「イズモ」に連絡を入れる。

 「ミナよ。どうしたのだ?」

ギナが艦橋で指揮を取りながら、ミナに返事を
する。

 「そろそろ、クルーゼの援軍が来る。わかってい
  ると思うが・・・」 

 「諍いは無しだな。わかっている」

 「本当に頼むぞ」

 「くどい!いくら姉上でも許さぬぞ!」

 「すまない。念を押しただけだ」

 「では、私はゴールドフレームで出撃する」

その直後、通信が切れた。
どうやら、本当に出撃するらしい。

 「防衛艦隊の指揮官なのに・・・」

ミナのつぶやきは誰にも聞こえなかった。


 「では、出撃だ。サハク家親衛隊は準備は出来た
  か?」 

ギナは部下のコーディネーター傭兵達に確認を
とった。

 「いつでも大丈夫です」

 「では、出撃!」

ゴールドフレームとM−1改僑教,出撃する。
宇宙で配備されているM−1改兇呂海裡教,靴
ない。
本国への配備が最優先なのだ。

 「味方は苦戦しているな」

宇宙用のM−1は奮戦していたが、数で劣ってい
るので苦戦中だ。

 「では、攻撃開始だ!」

ギナとその部下が操縦する7機のモビルスーツは
、連携を取りながら攻撃を開始する。
連合のモビルスーツ隊はいきなり奇襲を受けて
混乱する。

 「今のうちに、体勢を立て直せ!」

近くにいたストライクダガーを撃ち倒しながら、
ギナがM−1部隊に命令を出し、親衛隊のM−1
改兇呂修量樵阿肪僂犬覆てきを見せていた。

 「厳しい選考をした甲斐が、あったというも
  のだ」

連合のコーディネーター傭兵の中から厳選して、
ヘッドハンティングしただけあって、その腕前は
かなりのものだった。


ギナの介入で時間稼ぎに成功して、艦隊とモビルス
ーツ隊で重厚な防御陣形を敷いた防衛隊であったが
、戦況は芳しくなかった。
直ぐに壊滅の危機にあるわけでは無いが、戦力差か
ら見て長期戦は不利である。

 「クルーゼはまだ来ないのか?」

珍しく、焦り始めたギナがアメノミハシラに状況を
聞いているが、クルーゼ艦隊の反応はまだ観測され
ていないらしい。  

 「プラントめ!裏切るつもりか!」

ギナが最悪の事態を考えていたその時、戦況に変化
が現れる。
敵のモビルスーツ隊が引き上げ始めたのだ。

 「ミナよ、どういう事なのだ?」

アメノミハシラのミナに問い正すと。

 「クレーゼの艦隊が敵艦隊に食いついたらしい。
  敵は我々どころでは無くなったのだ」

 「では、我々も追撃だ。守備戦力以外は我に
  続け!」

ギナは50機ほどのM−1隊を引き連れて、追撃に
入った。

 「さあ、反撃だ!我々に手を出したことを後悔さ
  せてやる」

 「ギナよ。ほどほどにしておけ・・・」

あくまでも防衛が目的なのに、好戦的なギナが暴走
してしまった。
こうなっては止める術は無い。

 「必要の無い戦いなのだがな・・・」

世界情勢の変化によって、冷静に動く必要性が増し
てしまった自分と比べて、好き勝手に動いている弟
ギナ。
破滅的な行動は鳴りを潜め、積極的に軍備の強化
や、モビルスーツパイロットの選考、訓練に関わる
様になっていた。
だが、好戦的な性格に変化は無く。
この実戦の場を楽しんでいるようであった。

 「誰かに代わって欲しい・・・」

ミナの苦悩の日々は始まったばかりであった。


(敵艦隊攻撃20分前、体アメノミハシラ救援艦隊
 旗艦「エターナル」艦内)

アメノミハシラを救援するべく、救援艦隊は最大速
度で航行中であった。
艦隊は旗艦「エターナル」、ナスカ級戦艦3隻、
ローラシア級巡洋艦12隻で編成されていて、攻撃
力・機動力が重視された艦隊であった。

 「エターナル級だけで艦隊を編成しないと、意味
  が無いじゃないか!」

オキタ艦長は珍しく大声で怒鳴っていた。
他の艦に速度を合わせている為に、エターナルの高
速性能が生かせないでいる、この状況を怒っている
のだ。

 「仕方があるまい。エターナルだけで接近したら
  敵艦隊の餌食だ」

珍しくクルーゼ司令が諌めに入る。
その意外な光景に、ラスティーは衝撃を隠せない
様子であった。

 「そろそろ、出撃だ。一部の直衛隊を除いて全機
  発進だ。ミーティアも出すぞ」

既に、パイロットスーツに着替えていたクルーゼ司
令が、全部隊に命令を出す。

 「あの、クルーゼ司令は当然・・・」

 「プロヴィデンスで出撃する」

 「ああ、やっぱり・・・」

気合いを入れて、パイロットスーツに着替えていた
のだ。
当然の返事とも言える。

 「ラスティーはどうするかね?」

俺も誘ってるのかよ!

 「私は残りますよ。艦隊の指揮がありますから」

 「俺がやるから大丈夫だぞ」

オキタ艦長は手を差し伸べているつもりのようだが
、今回は余計なお世話というか、勘弁して欲しい。

 「では、出撃だな」

 「えっ、出撃ですか?」

結局、ラスティーは断りきれなくなって、ドレッド
ノートに搭乗して出撃する羽目になった。

 「ラステイー・マッケンジー出撃する!」

ドレッドノートで出撃すると、既にほとんどのモビ
ルスーツが出撃していて隊形を組み終わっていた。
エターナルからもフリーダム小隊とジャスティス
小隊。
そして、ミーティア2機も出撃して合体を完了させ
ている状態だ。

 「目標は、目の前の艦隊とモビルスーツ隊だ。
  無理に殲滅させる必要は無い。敵を焦らせて、
  アメノミハシラを攻撃しているモビルスーツ隊
  を撤退させればいいのだ」

クルーゼ司令は全パイロットに、簡単な命令を出し
てから、自分はプロヴィデンスで突撃して攻撃を開
始する。
敵艦隊が恐ろしい勢いで防御火器を撃っているが、
クルーゼ司令は余裕でかわしている。

 「火器の密度と量が、以前と比べ物にならない。
  報告書を上げておかないとな」 

涼しい顔で隣りで付き合わされている、ラスティー
に声をかける。

 「それどころでは無いのですが・・・」

 「艦隊左翼を攻撃している、ディアッカ達は戦果
  をあげているぞ。君も頑張らねば」

 「あれは、ミーティアの戦果です。それに、指揮
  官は冷静に戦場を判断する必要があります」

 「そうか、では任せるぞ。私はひと働きして
  くる」

クルーゼはドラグーンを作動させて、モビルスーツ
や艦艇の火器を攻撃し始めた。
予想外の位置からの攻撃に、連合の部隊は大混乱に
陥っていて、ザフト軍モビルスーツ隊は戦果を拡大
していった。

 「そろそろ、頃合だな。艦砲射撃に当たるなよ」

ミーティアが撤退して、モビルスーツ隊が戦場から
遠ざかるのと同時に、エターナル以下の艦隊から
艦砲射撃が始まった。
敵艦隊の混乱は更に拡大していくと思われたが、
アメノミハシラを攻撃していたモビルスーツ隊が
戻ってきてくれたおかげで、艦隊の建て直しに成功
した敵艦隊は整然と撤退していった。

 「深追いはするなよ」

ラステイーが全機に無線で命令を出していると、
部下の1人から報告が入った。

 「新たな未確認のモビルスーツ隊です!
  数は推定50機」

 「ちっ、何処の連中だ。確認急げ!それと、迎撃
  準備!」

ラスティーが部下達に命令を出していると、クルー
ゼ司令が連絡を入れてきた。

 「ラスティー、あれはオーブのM−1部隊だ。
  追撃をかけてきたようだな」

 「どうしてですか?防衛に専念するのが普通だと
思いますが」

その一言を発してから気が付いた。
もしかすると、指揮官はクルーゼ司令と同類の人間
かもしれないと。

 「こちらは、アメノミハシラ防衛艦隊司令官
  ロンド・ギナ・サハク准将である。そちらの
  指揮官と話がしたい」

 「アメノミハシラ救援艦隊司令官のラウ・ル・
  クルーゼだ。用件は何かな?」

 「追撃をかけてみたのだが、少し遅かったよう
  だ。ザフトの救援には感謝する。お礼を兼ね
  て、アメノミハシラに招待したいのだが」

ギナは事前にミナから頼まれていた用件を伝える。
本当は、イズモ艦橋から連絡すべきものだが。 

 「いや、我々はプラントに戻らなければ。それ
  に、修理や補給も必要ですし・・・」

ラスティーは常識的に判断して断りを入れるが、
クルーゼの意見は違う様だった。

 「遠慮なく招待を受けよう。それで、修理と
  補給は融通してもらえるのかな?」

 「オーブと連合は交戦国になったからな。
  中立国の真似事は必要あるまい」

 「さて、何を食べさせて貰えるのかな?」

 「クルーゼ司令、カザマ隊長に似てきましたね」

 「では、出発だ」

ラスティーの指摘はクルーゼに見事に無視されて
しまった。 


(一時間後、アメノミハシラ防衛司令部)

アメノミハシラに攻撃を仕掛けてきた敵艦隊の完全
撤退が確認された為に、司令部は和やかな雰囲気に
包まれていた。
ミナは防衛艦隊と救援艦隊への修理と補給の指示を
出しながら、コーヒーを飲んでいた。 

 「クルーゼ司令がお見えです」

副官から報告が入る。

 「お通ししろ」

入口のドアが開いて、仮面を付けた男と2人の少年
が入って来た。
2人の少年とは、ラスティーとディアッカである。

 「修理と補給の援助に感謝します」

 「アメノミハシラ防衛軍総司令のロンド・ミナ・
  サハク少将だ。良しなに。しかし、若い部下達
  だな」

 「若くても、能力は折り紙つきだ。それで、各地
  の戦況は?」

 「東アジア共和国は再び大恥をかいた。潜水艦隊
  は日本の新型モビルスーツに壊滅させられた。
  故に、シンガポール基地にミサイルを撃ち込む
  作戦は失敗した。ザフトの二番煎じは上手くい
  かなかったようだな。シンガポール攻略作戦も
  先手を打たれて部隊は壊滅状態だ。我々も防衛
  に成功したし、残りは本国と・・・」

 「本国と何です?」

 「インド洋艦隊だ。多分、勝てるだろうが。
  何か引っかかる」

ミナは独自の情報網で、何かのヒントを掴んでいる
ようだ。

 「だが、確証がない?」

 「報告待ちだ。それで、万が一の時の為に、君達
  にここで待機して貰っている」

 「仲良くお茶を飲む為に、誘ったわけではないの
  だな」

 「大気圏降下用のフライトユニットの準備をさせ
  ている。地上で役に立つモビルスーツは、全機
  オーブ本国へ降下して貰うつもりだ」 

 「それは、確定情報なのだな」

 「私は100%確信している」

 「では、大気圏降下の準備とパイロット達へのレ
  クチャーをしながら待つとするか」 

 「頼む」

クルーゼ達は退出して、センプウとゲイツのパイロ
ットを召集した。
自分達はオーブ本国に降りるのだ。
準備を急いで始めなければ。


(同時刻、カーペンタリア北方海域)

インドのマドラスを出撃したインド洋艦隊は怒涛の
勢いで、カーペンタリアに向けて南下していた。
インド洋艦隊には大型空母は配備されていないが、
多数の軽空母が主力になっていて、モビルスーツも
推定で200機以上が搭載されていた。

 「前回の雪辱を果たさないとな」

インド洋艦隊司令官のホーク中将は、参謀長に話し
かける。

 「アークエンジェルですか?」

 「あいつはオーブ本国だがな。今回の相手は
  3カ国艦隊だぞ」

前回、機動艦隊を1つ全滅させられたホーク中将は
降格か予備役編入を覚悟していたが、指揮官不足の
為に、昇進を果たしてからインド洋艦隊の指揮を
任されていた。

 「正確には、陽動任務なのですが」

参謀が以前と変わらずに、冷静に答えるが。 

 「お前は相変わらず可愛くないな。奴らの鼻を明
  かせれば、十分なんだよ」

ホーク中将も相変わらずの様だ。 

 「まあ、いい。後1時間もすれば戦闘開始だ」

 「精々、派手にやりましょう」

 「お前らしくないセリフだな」

 「私は任務に忠実なんです」

 「俺も忠実なんだけど・・・」

ホーク中将は参謀長に、不良軍人と思われていた
ようだ。

 「敵艦隊の反応をキャッチ!」

索敵担当の士官から報告が入る。

 「規模は?」

 「我らとほぼ同規模です」

 「残念だな。正規の戦力なら勝てたのに。では、
  作戦開始。モビルスーツ隊と戦闘機隊出撃!」

ベテラン指揮官の陽動作戦が開始された。


(二時間後、3ヶ国艦隊旗艦「プリスベン」)

 「敵モビルスーツ隊と戦闘機隊の駆逐に成功しま
  した。艦隊への攻撃も成功です。10隻を超え
  る空母を沈めました」

参謀から報告が入るが、何かが不自然だ。 

 「連合のモビルスーツはあんなに弱かったか?」

司令官が疑問を呈する。

 「それについては、ザフトのマーカス司令から
  上申があります」

 「内容は?」

参謀の報告を聞いた瞬間、司令官の顔に驚きの表情
に包まれた。  

 


(インド洋艦隊旗艦ブリッジ)

3ヵ国艦隊のモビルスーツ隊の攻撃を受けた、空母
のほとんどが炎に包まれていた。
今回はイージス巡洋艦に旗艦を移していたおかげで
、旗艦の被害はほとんど無いが、空母と駆逐艦の被
害は大きい。            

 「参謀長、被害報告を」

 「空母24隻の内、15隻が沈没、4隻が大破炎
  上中で、総員退艦命令が出ています。モビルス
  ーツ隊は残存56機で航空機の残存数は34機
  です」

 「再び大損害だな。まあ空母部隊は全部輸送船改
  造の護衛空母だし、モビルスーツはインド製の
  簡易量産タイプのストライクダガーだ。インド
  人将兵のパイロットの訓練も順調に進んでいる
  し、機体の量産も順調だ。損害はすぐに取り戻
  せるだろう」

 「そして、敵の目を潜り抜けた300機のモビル
  スーツ隊を搭載した機動艦隊は、オーブ攻略艦
  隊と合流するのですね」

 「合計1000機のモビルスーツ隊だ。地球連合
  で所有している全機体数の4割に達する数を、
  あんな狭い島に集結させてご苦労な事だ」

 「我々はこれから、どうするんですか?」

 「決まっている!」

 「決まって?」

 「撤退だ!」


(ザフト軍派遣潜水艦隊旗艦)

 「空母は輸送艦改造のボロで、モビルスーツと
  パイロットは現地調達の素人ども。ほぼ同数で
  戦って圧勝だったから、おかしいとは思ったの
  だ。」

硫黄島攻防戦にも参加した経験があるマーカス司令
は、艦隊攻撃に参加したベテランパイロットの報告
を受けて、不機嫌になる。

 「つまり、我々は見事に騙されたのですか」

副指令が聞いてくる。

 「だが、まずいな。インド洋艦隊の精鋭がオーブ
  攻略艦隊に援軍として加わるとなると、苦戦は
  必死だな」

 「本国には報告は上げましたが・・・」

 「援軍に向かいたいが、命令が無いとな。一応、
  準備はしているが」

マーカス司令の苦悩は晴れる事が無かった。


(8月8日午前11時、オーブオノゴロ島)

連合のモビルスーツ隊の攻撃は、第2次攻撃隊まで
終了していた。
今は第三次攻撃隊の攻撃開始までの、10分ほどの
空き時間だ。
何故、時間を空けているのかは理解出来ないが。
多分、連合のミスであろう。
敵のミスはありがたい。
ここまでの連合軍の損害は、モビルスーツが120
機余りで、艦船はほとんど損害が無く。
オーブの損害はモビルスーツが40機ほどで、護衛
艦隊は10%ほどの損害を出していた。
このまま事態が進めば、オーブが国を守りきれる可
能性は高いであろうと考える者は多かった。

 「まずいな」

 「何がだ?カザマ」

カガリが俺に聞いてくる。

 「連合のモビルスーツの動きが良すぎで、損害が
  少なすぎだ。このまま、消耗戦に持ち込まれる
  と敗北するぞ」 

 「こちらの損害も少ないから大丈夫だろ」

 「護衛艦隊の損害が予想より多い。連合の水中用
  モビルスーツが優秀で攻撃を防げないからだ。
  それに、俺達は二交代で戦っているからな。
  連合よりも疲れるんだよ。ある限界を超えると
  、俺達はバタバタと倒れるぞ」

 「3交替くらいに編成し直すか?」

 「そうすると、機数に差が出て余計不利になる。
  失敗したな。敵の意図に乗せられた」

 「どうしよう」

 「ザフト軍の援軍がそろそろ後ろから攻撃を開始
  するから、時間は稼げるでしょう。その時に敵
  の混乱に乗じて、損害を増やす。できれば、有
  名なエースを討ち取りたい」

 「そんな、前時代的な事で大丈夫か?」

 「ボタン戦争が出来なくなった時点で、前時代的
  なの。圧倒的な力量を持つエースの撃墜は、
  相手の士気を落とす。パイロットは人間だから
  ね」

 「誰を狙っているんだ?」

 「(エンデュミオンの鷹)か(月下の狂犬)だ」

その時、第三次攻撃隊襲来の警報が鳴り響いた。

 


(オノゴロ島沖合い50キロ、ザフト支援艦隊)

連合の攻略艦隊の後方20キロにまで接近した潜水
艦隊は、浮上してディンの部隊を発進させていた。

 「さきほど、カーペンタリア基地から連絡が入っ
  て、建前は不要だそうな。ディン部隊は攻撃終
  了後はオノゴロ島に着陸しろ。後の補給と整備
  はオーブで引き受けてくれるそうだ」

モラシム司令はパイロット達に指示を出していく。

 「俺はゾノで出撃する」

 「司令自らですか?」

 「お前は潜水艦隊で、魚雷戦を仕掛けろ。俺には
  あの女が待っているからな」

副指令に後の指揮を委任した。

 「例の(白鯨)ですか?」

 「水中用のモビルスーツ隊を、率いているらしい
  のでな。挨拶をしておかないと」

 「では、お止めしません」

 「頼むよ」

ザフト軍潜水艦隊は68機のディンと84機のグー
ンとゾノを発進させてから、魚雷戦準備を開始
した。


(オノゴロ島要塞上空)

第三次攻撃隊を迎え撃つ為に、俺達は布陣した。
特殊装甲師団と第三師団の約200機で敵の約25
0機のモビルスーツと約100機の攻撃機を迎え
撃つ。 

 「基地防衛火器、量子通信ミサイル、ヤマタノオ
  ロチ。撃ちまくれよ」

恐ろしい量の防衛火器が敵攻撃隊に向かって発射さ
れる。
敵は予め予想している事なので、ほとんどが回避さ
れるが、運の悪い10機ほどのモビルスーツが落と
される。

 「敵接近後は、担当エリア以外の射撃は禁止。
  味方を撃つなよ!」

基地の火器担当の士官に無線を入れてから、特殊装
甲師団の全機を飛び立たせて迎撃に向かい、
第三師団の連中とシホの中隊の志願兵とバスターの
パイロット達は地上で支援砲撃をさせた。
空中で両軍のモビルスーツが混戦状態に突入する。
第一次攻撃隊で、様子見程度の働きだった新型機を
操る連中は今度は本気で向かってくるようだ。

 「あいつ等は危険だ。俺達でやる。残りの連中は
  第三師団の連中と共同で1機でも多く落とせ!
  」

 「「「了解!」」」

俺はフラガ少佐のレイダー改と、微妙に形が違う
12機のレイダーにはヒルダさん達やアサギ、
ジュリ、ホー1尉、Gを預けた優秀な傭兵の連中、
そして、石原一尉の中隊に一任した。

 「みんな、やられるなよ」

俺は、本日二回目のフラガ少佐との一騎討ちを開始
する。

 「いい加減死んでくれ!フラガ少佐」

 「お前こそな!」

再び、戦闘がこう着状態に陥ってしまった。
フラガ少佐は俺と、残りの連中も実力がある者は
1対1で、無理な者は2対1か3対1で戦闘を続行
していた。

 「お前!うざいんだよ!」

一機の砲戦主体のカラミティーという機体が、俺を
狙って砲撃を仕掛けてきているが、そのビームは
フラガ少佐をもかすっていき、相変わらずの出鱈目
さを披露していた。

 「俺まで殺すつもりか!」

フラガ少佐が無線で怒鳴りつけているようだ」

 「うるせえよ!俺はあいつを殺すんだ!」

カラミティーが再び砲撃を開始する。
俺は回避するが、他に狙われていたM−1にビーム
砲が直撃する。
そして、次の砲撃が味方のストライクダガーにも
直撃した。

 「ありえない!味方を撃つか?」

 「ちっ、プリンスのアホが!あんな兵士使え
  るか!」

フラガ少佐が毒づいていた。 

 「お前等みんな死んでしまえ!」

 「ふざけるな!」

突然、アスランの声が無線に入り、彼はジャスティ
スでカラミティーを攻撃し始めた。
どうやら、さきほど倒されたM−1のパイロットは
彼の部下だったらしい。

 「そういえば、モーガン大尉は?」

ジュリの独り言が無線に入ってくる。 
しまった!一番危険な男が野放しだ。

 「モーガン少佐だ。油断したな。この未熟な
  ぼうやを撃たせて貰う」 

モーガン少佐のレイダー改が追い回していたのは、
シップウに乗っているシンだった。 

 「しまった!」

第一次攻撃隊襲撃時に、2機の敵機を落とす力量を
見せてたので油断していた。
まさか、俺のそばを離れていたとは・・・。

 「シン!待ってろ。直ぐに援護する」

 「残念だな。そんな事させるか!」

フラガ少佐が俺を邪魔に入り、攻撃を強化した。

 「新鋭機らしいな。モーガン少佐、撃ち落せ!」

 「まかせろ」

圧倒的な技量差を誇るモーガン少佐がシンを追い詰
めていく。

 「だめだ!一か八かだ!」

シンはモビルスーツ体型に変形して、2連装ビーム
砲を撃ち続けるが、モーガン少佐に余裕でかわされ
てしまう。

 「ああ、ステラと模擬戦をしていた時の
  悪い癖が・・・」

 「カザマ!他人の心配をしている暇がある
  のか?」

フラガ少佐のレイダー改が鉄球を投げてくる。

 「無いけど!邪魔だ。どけ!」

俺はフラガ少佐にビームサーベルで斬りかかるが、
決定打が出ない。

 「誰か?シンを助けに行けるか?」

全員に問い質すが・・・。

 「無理ですよ!」

 「このレイダーの動き、フラガ少佐に似ている
  から強敵です。彼ほど強くはないけど」

例の12機のレイダーが強くて、倒されないように
するのが精一杯らしい。

 「ラクス様はここにいないけど、気合い
  入れていくよ!」

 「OK!例のやつだな!」

 「ジェットストリームアタックだな」

何の話をているんだ?ヒルダさん達は。

 「せーの!」

 「行くぞ!ジェットストリームアタック!」

見ている暇が無いので、どんな必殺技かわからない
が、3機の連携攻撃で例のレイダーを一機撃破した
ようだ。 

 「まだ、残り11機か。どけよ、フラガ少佐!
  シンがやばいんだ!」

 「どけないね」

あれから、何分経った?
シンは何処だ?

 「キラはどうした?」

俺が最後の望みにすがるが。

 「ホー1尉とデュエルダガーを10機相手にして
  いて、救援は不可能です」

化物かあいつらは。
そいつ等はフラガ少佐の部下で、全員エース機の
ハズだ。

 「畜生!救援に行けない・・・。シン、死ぬ
  なよ」

俺は神に祈るしかなかった。


 「さて、そろそろ覚悟してくれよ」 

モーガン少佐がモビルスーツ体型のレイダーで
鉄球を放つ。
シップウはフェイズシフト装甲で弾くが、こんな
防御を続けていたら、いつかやられてしまうだろ
う。

 「このままではやられる!」

 「悪く思うな。俺にも帰るべき家があるのだ。
  戦場の不幸だと思って諦めてくれ」

レイダーが最後再び鉄球を放ってきた。 

 「諦められるか!父さん、母さん、マユ、ステラ
  !俺はステラとアカデミーに行くって約束した
  んだ!」

だが、鉄球攻撃はシップウに命中して、大きな金属
音と火花を散らした。

 「だめだ。後、一撃で・・・」

エネルギーがもう少しで切れる。
そうなれば・・・。 

 「止めだ!」

モーガン少佐が連装ビーム砲をシップウに向けて
撃った。

 「死んでたまるか!」

瞬間、シンの頭の奥で何かが弾ける感じがした。
感覚がクリアーになり、全ての攻撃が見えるように
なったシンは、ビーム砲を余裕でかわす。

 「なっ、何だ?如何して避けられた?」

連装ビーム砲が避けられたモーガン少佐が動揺
した隙に、シンがビームサーベルを抜いて斬り
かかっきた。 

 「ふっ、バカの1つ覚えだな」

モーガン少佐が鉄球を放つと、シンはそれを直前で
かわしてから、ワイヤーを切り落とした。

 「さっきと動きが全然違う!」

動きが未熟で雑なのは変わらないが、反応速度が
桁違いだ。
更に、シンはビームサーベルでレイダー改に斬
りかかり、連装ビームも切り落とす。

 「しまった!武器が」

追い詰められたモーガン少佐はMAに変形して、
ビーム砲を撃ちながらシップウに突撃をかけて
くる。

 「スピードに差があるから俺の勝ちだ。死ね!
  ぼうず」

だが、それはベテランらしからぬミスであった。
シンは最小限の動きでかわすと、冷静にレイダー改
の横からビームサーべルを突き刺した。
ビームサーベルは確実にレイダー改の急所を突き刺
した。

 「敵を舐めた俺のミスか・・・。ぼうず、俺の徹
  を踏むなよ」

シンがビームサーベルを抜くと、モーガン少佐のレ
イダー改が落下していき、爆発する。
午前11時32分、ルーキーが奇跡を起こした瞬間
だった。 


 「まさか・・・、モーガン少佐!」

フラガ少佐はショックを隠せなかった。
あのモーガン少佐が未熟な新人パイロットに倒され
たのだ。
こんな事があっていいのか・・・。

 「アスランと同じなのか・・・」

俺はシンがモーガン少佐を討ったという事実が信じ
られなかった。
俺が2回戦った相手だが、ナチュラルとは思えない
強さで、彼を倒せるのは、運次第だと思っていたか
らだ。

 「シン!一旦引き揚げろ!」

新人が実力以上の相手を倒した後に、気が抜けてし
まう事がよくある。
今、この混戦にシンを置いておくのは危険だ。

 「わかりました。補給に帰ります」

 「よくやった。早く帰れ!」

俺は、フラガ少佐と切り結びながらシンに命令を
出す。
今のフラガ少佐はあきらかに動揺している。
倒すなら今だ。

 「だめだ!俺も撤退だ!」

フラガ少佐は冷静に自分を判断したらしく、MA
体型に変形して撤退した。
窮鼠猫を噛むので、俺は深追いはしない。

 「後は・・・」 

戦況は我々が優位に立っていた。
モーガン少佐の戦死が全軍に伝わったらしく、敵の
動揺が大きかった。
俺の思惑通りになってきたようだ。

 「ここは、戦果を広げるチャンスだな」

俺は、例の不気味なレイダー達に斬りかかった。
たった11機のレイダーが、石原一尉の中隊と親衛
隊のほとんどを足止めしているのだ。
しかも、太田二尉他6機が倒された。
錬度の高い自衛隊士官達が、3〜4機で倒されない
ようにするのがやっとなのだ。
俺も、身近な一機に攻撃をしかけてみるが、簡単に
かわされていく。

 「確かに、動きはフラガ少佐に似ている」

例の量子通信ミサイルも使用していたようだが、
精度がいまいちで命中が少なかったし、フェイズシ
フト装甲では致命傷にならない。 

 「フラガ少佐のデータを入れたAIか?」

こいつはフラガ少佐ほどの脅威ではない。
少なくとも俺には。

 「格闘戦でケリをつける!」

今日、始めて対艦刀を抜いてレイダーに斬りか
かった。
俺に気がついたレイダーが、ビームサーベルを抜い
て反撃してくる。
このレイダーにはビームサーベルが装備されている
ようだ。
モーガン少佐がこの機体に乗っていたら、戦死しな
かったかもしれない 

 「やはり、フラガ少佐ほど強くない」

俺は力技でビームサーベルを弾き飛ばしてから、
対艦刀で縦に真っ二つに切り裂いた。
レイダーは大爆発を起こす。

 「1機目、後10機!」

俺は次の獲物を探していると。

 「きゃー!」

無線に誰かの断末魔の声が入った。

 「誰だ?」

 「ジュリです。ジュリが死んじゃった・・・」

アサギが泣きながら報告してきた。

 「泣くな!俺が援護に行く。アサギは逃げ回れ」

ジュリとペアを組んでいたアサギは一人になって
しまい、レイダーに追い回されていた。 

 「行くぞ!ジュリの仇だ!」

俺は、アサギを追い回していたレイダーにビームサ
ーベルを投げつけた。
レイダーはそれを回避するが、動きが止まった瞬間
に対艦刀で真横に切り裂く。

 「2機目!残り9機」

確実に敵は減っているが、効率が悪い。
だが、この部隊の対応を他の部隊に任せると、全滅
の危険性があるので、それは出来ない相談だ。
このままでは、単純に数の勝負になってしまい、
俺達が不利になってしまう。

 「何か戦況の変化は・・・」

その時、基地から連絡が入った。

 「ザフトのモビルスーツ隊が、敵機動艦隊に奇襲
  をかけている。今、我々を攻撃しているモビル
  スーツ隊を帰すな!」

キスリング少将の声が響き渡る。

 「無茶をおっしゃる」

ディンの部隊はこのまま機動部隊を突っ切って、
ここに来るらしい。
どうやら、中立国の建前すら気にならなくなって
きたようだ。 
ここで、攻撃隊を足止めしておけば、第三次攻撃
隊を壊滅させられる可能性が高いだろう。

 「あんな少数で大丈夫か?機動部隊の規模を
  知ってるのか?」 

俺は不安になるが、それを確かめる術は無かった。

 


(オーブ沖30キロ、オーブ攻略艦隊旗艦
 「チェスター・ニミッツ」)

今、機動艦隊では第四次攻撃隊の発進準備が行われ
ていた。
先ほど、インド洋艦隊から援軍が到着してモビルス
ーツの数が増大した。
このまま、戦っていれば勝利は確実だろう。
ジブリールが1人でほくそえんでいるが、世の中は
そんなに甘く無いと思ってしまうところが、ニミッ
ツ大将の用心深いところだ。

 「敵モビルスール隊接近!機種はディン。数は約
  70機です」

索敵担当士官から報告が入る。

 「そんな少数で何が出来る!撃ち落せ!」

ジブリールの命令が全艦に届き、対空火器が発射
される。
だが、ディンは遥か上空を飛んでいるので、ほとん
ど命中しない。

 「あいつら、何であんな上空を・・・」

ディンの部隊が艦隊の真上に達した時に、何かを
投下した。

 「あれは何だ?」

大きな爆弾らしきものが落ちてくる。

 「そんな物、命中するか」

駆逐艦隊の指揮官がバカにしたような笑いを浮か
べながら、対空火器を爆弾に集中させる。

 「4000ポンド爆弾のまぐれ当たりに期待す
  るか。ザフト軍も落ちたものだな」

Nジャマーの影響で、レーダー射撃の命中はほと
んど期待できないが、命中する可能性がある爆弾
を狙い撃ちして爆破していく。 

 「楽勝だったな。破片で空母の甲板員の殺傷で
  も狙ったのか?ほとんど、ハズレで魚の昼寝
  を邪魔する程度だったが」

全員が大笑いしている時に、上空100メートル
ほどで爆弾が大きな火球に変化した。

 「しまった!気化爆弾だ!」

数百年使われていなかった禁断の兵器が炸裂
した。
約50発の気化爆弾は数万度の熱を発して、巻き
込まれた駆逐艦、巡洋艦、空母を焼いていく。
被害を大きくする為に、攻撃はフレッチャー中将
の第12任務艦隊が集中して狙われて艦隊は大混
乱に陥った。
旗艦「ダグラス・マッカーサー」に座乗していた
フレッチャー中将以下司令部は壊滅して、指揮を
執る者がいなくなってしまったからである。

 「次席司令官のハリル少将は?何!そっちも戦 
  死だと!それで、第12任務艦隊の被害は?
  それで、モビルスーツの稼動機は何機なんだ
  ?」 

ニミッツ大将が第12艦隊に報告を求めるが、主
だった将官が全員戦死してしまい、答える者がい
なかったのだ。 

 「何と言う失態!これは、アズラエル理事に報
  告しなければ」

ジブリールが文句を言うが。 

 「勝手にどうぞ!それで、敵は?オノゴロ島に
  向かっただと!第三次攻撃隊を引き揚げさせ
  ろ。このままでは挟み撃ちで全滅だぞ」

ニミッツ大将は無視を決め込み、指揮を続ける。

 「一旦引き揚げますが、かまいませんね」

 「許可しよう」

ニミッツ大将の凄みに、ジブリールは思わず許可
を与えてしまう。

 「大変です!水中用モビルスーツの反応を確認。
  機種はグーンとゾノです。更に、後方に潜水艦
  の反応を確認。あっ、潜水艦が魚雷を発射しま
  した」

 「味方の水中モビルスーツ隊は?何処なん
  です?」

ジブリールがうろたえながら聞いてくる。

 「ディープフォビトン48機と指揮官機のフォビ
  トンブルーカスタムの発進準備が整っています
  」

第一次・第二次攻撃隊でオーブに15機しかなかっ
た水中用モビルスーツ部隊は全滅してしまった。
連合の水中用モビルスーツ30機を撃破して意地を
見せたが、数で敵わなかったのだ。
今回は損害多数で第三次攻撃隊に参加していなか
った事が幸いして、今回の迎撃任務に間に合いそう
だった。

 「全機発進しろ!」 

全機出撃した連合の水中用モビルスーツ隊は、ザフ
トのモラシム司令指揮のグーン・ゾノ隊と交戦を開
始した。

 「では、この隙に艦隊は50キロ後方に下がり、
  体勢の建て直しを図る事にする」

ニミッツ大将は一時撤退命令を出す。
結局、ザフト潜水艦隊の魚雷攻撃は混乱に陥ってい
た第12任務艦隊を壊滅させ、グーンとゾノの部隊
は連合の水中用モビルスーツ部隊をほぼ壊滅させて
オーブへの援護は成功した。
だが、連合の水中モビルスーツ隊を壊滅させる過程
でモラシム司令が「白鯨」ことジェーン・ヒュース
トン大尉に討ち取られるという最悪なアクシデント
にも見舞われた。
連合は機動艦隊は戦力の建て直しをしてから、再び
攻めてくると思われ、それがいつになるのかは誰に
もわからなかった。


 


(午前11時52分、オノゴロ島要塞上空)

敵機動艦隊が攻撃を受けていた頃、俺達は第三次攻
撃隊に最後の猛攻をかけていた。
もう少しで、ディン部隊との挟み撃ちが可能だから
だ。

 「てい!3機目だ!」

俺はもう一機レイダーを討ち、ヒルダさん達がもう
一機レイダーを討った。
これで、レイダーは残り7機た。

 「以前に戦ったレイダーがいなくてラッキーだっ
  た。あいつの方が強いからな」

 「あいつらは変だ!例えるなら、少し手強い将棋
  ソフトのコンピューターを相手にしているよう
  だ」

ホー1尉が珍しく真面目に意見を述べるが、引用例
がわかり難い。
俺とガイくらいにしかわからない。

 「それで、ガイは何処なんだよ」

ホー1尉に聞かれるが。

 「契約でな。単純にカガリちゃんの護衛だけなん
  だ。だから、カガリちゃんが戦場に出てくれば
  会えるだろう」

 「それで、キラは?」 

 「あそこだ」

キラは背中の武装を全てを、敵モビルスーツ向けて
撃っていた。
先ほどまで戦っていたエース搭乗のデュエルダガー
部隊をホー1尉が近接戦闘担当でキラが遠距離戦闘
担当で10機中7機撃破したらしい。
恐ろしい技量の2人だが、1人は格闘バカもう一方
はハッカー少年である。
世の中は不思議な事が多い。

 「カザマ一佐、ディンの部隊がそろそろ到着
  するぞ!」

基地からの連絡を聞いた後に前方を見ると、ディン
部隊が後ろから接近してくる。
ディン部隊はビームマシンガンを構えて、ストライ
クダガー部隊に攻撃を仕掛けた。

 「よし、挟み撃ちだ」

オノゴロ基地の全稼動機が飛び立って、最後の攻撃
を仕掛けた。
挟まれた敵部隊は混乱に陥り、バラバラに退却を始
めるが、俺達は容赦なく後ろからビームを撃ち込ん
だ。
数分後には敵は完全に退却したので、俺達とディン
部隊はオノゴロ基地の指定された格納庫に機体を
置く。
パイロット達は、午前中2回の出撃で疲れ果ててい
るようだ。
次の攻撃の間隔が空く事を祈る。

 「疲れた。敵の攻撃はいつ再開されるんです?」

俺は部下を労いにきた、キサカ准将とカガリに質問
した。

 「状況から説明する。敵機動艦隊は第12任務艦
  隊が壊滅して、半数の艦艇と150機のモビル
  スーツを失い、指揮官のフレッチャー中将も
  戦死したそうだ。だが、インド洋艦隊から増援
  が届いたので、モビルスーツの数はかえって増
  えている」

 「キサカ准将、敵の推定攻撃開始時刻は?」

 「多分、明朝になるだろう。敵が体勢を整え終わ
  ると夕方になってしまう。夜戦は連合軍もオー
  ブ軍も不可能だからな」

 「今日は、半休ですか」

俺はわざとおどけて言うが。

 「君達は休んでくれていてかまわない」

 「それで、オーブ軍の被害は?」

 「モビルスーツが98機、航空機115機、護衛
  艦隊の被害は18%だ。タケミカヅチは右舷に
  被弾して傾いたが、注水で事なきを得た。アー
  クエンジェルは被害軽微で健在だ」

 「うーん、艦隊戦力は痛みわけ。潜水艦戦力は
  連合は水中用モビルスーツ部隊と共に壊滅で、
  オーブは元から少数で戦力に影響なし。モビル
  スーツ戦力は連合は推定700機でうちはザフ
  トの援軍込みで約370機か。あれだけ苦労し
  ても戦力差が縮まらないとは・・・」 

せっかく、第三次攻撃隊のモビルスーツを150機
近く倒して、シンがモーガン少佐を討つという金星
を上げたのに、インド洋艦隊の援軍で帳消しになり
、戦況は連合の思惑通りに消耗戦に巻き込まれて
いる。
ザフト艦隊の奇襲作戦で時は稼げたが、二度は使え
ないし、艦隊司令であったモラシム司令の予想外の
戦死は潜水艦隊に動揺を与えていた。

 「一番破壊力がある俺達が、おかしな新型機の部
  隊に足止めされているのが辛い。そして、損害
  が一番多い師団も俺達の所だ。」

モーガン少佐は戦死したが、フラガ少佐、その部下
のデュエルダガー隊3機、カラミティー、そして、
フラガ少佐モドキが6機残っている。
そういえば、あの凄腕のレイダーは何処にいるのだ
ろうか?
対応を任せた自衛隊士官の中隊の損害は10機で、
石原一尉の親友である太田二尉も戦死した。
親衛隊もジュリが戦死しているし、志願兵も半分
が戦死している。
やはり、訓練期間が足りなかったようだ。

 「それで、マユラとアサギは?」

カガリが2人の居場所を聞いてきたが。

 「同期で親友だったジュリが死んだんだよ。
  2人っきりにしてあげなよ」

俺で例えるなら、ミゲルとハイネが戦死したような
ものだ。
悲しくて当然だろう。

 「そうか・・・。シンはどうした?」

 「他のパイロット達と話しているよ。俺達も
  行こう」


俺とカガリがパイロット待機室に行くと、シンは
アスラン達に揉みくちゃにされていた。 

 「シン、良くやったな。初陣でトップエースを
  倒すなんて、普通は出来ない事だぞ」

アスランが手放しで褒めている。

 「お前はあのカラミティーを倒せなかった
  しな」

イザークがアスランに冷ややかなツッコミを
入れた。 

 「お前は雑魚ばかり倒していたじゃないか」

 「一機でも多く倒す。これが命令だ。それに、
  キラとホー1尉は敵のエースを何機も倒して
  いたじゃないか」

イザークは師団モビルスーツ隊の指揮官代理を務
めた影響で、大局的な考えが出来るようになった
ようだ。

 「でも、惜しいですね。シンがザフト所属なら
  ネビュラ勲章が貰えたかも」

シホもシンを褒めるが、さすがにそれが言い
過ぎだ。

 「シン、過信はするなよ。過信すると、モーガ
  ン少佐の様な最後を迎えるぞ」

俺が念のために釘を刺しておく。

 「それは大丈夫です・・・」

シンに元気がない。
周りは大騒ぎなのに、シン本人は落ち込んで
いる。

 「どうした?シン」

 「敵のパイロットが言ってました。俺には家族
  がいるから帰らせて貰う。悪いが死んでくれ
  と。俺は人殺しで、彼の家族を悲しませた悪
  人なんです」

シンは罪悪感に苛まれているようだ。
モーガン少佐もシンと会話をするなんて、罪な事
をする。 
強敵を倒した後だったので、休ませたのが悪かっ
たらしい。
余計な事を考える時間を与えてしまったようだ。 

 「シン、気にするな。お前は戦場で敵を倒した
  だけだ。それに、モーガン少佐が何人のザフ
  ト軍兵士を殺したか知ってるか?そんな事は
  お互い様なんだ。彼が家族の元に帰れないの
  は、戦死したのは彼自身の罪だ。そして、お
  前が戦死したら家族は悲しむし、それはお前
  自身の罪だ」

 「そうなんですか?」  

 「この部屋にいる連中を見てみろ。俺を含めた
  全員が多数の兵士を殺した人殺しだ。だけど
  、この中に悪人なんていないだろう。変人ば
  かりだけど」

 「それも、そうですね」

シンがやっと立ち直ってくれた。

 「ちょっと待てよ。シン!」

イザークがシンに詰め寄った。

 「俺のどこが変人なんだ?」

 「俺もそうだ」

アスランもそれに続き。

 「僕は普通ですよ。心外です」

ニコルも珍しく怒っている。

 「私はこの部隊の良心です。変人だなんてあり
  えない事です」  

シホにも許せない事らしい。

 「そうだ!俺は普通だ!」

 「「「あんたは変人だ!」」」

 「えっ、俺って変人?」

ホー1尉は全員に変人のレッテルを張られて落ち
込んでしまう。

 「そんな、始めに変人呼ばわりしたのはカザマ
  さんで・・・」

 「俺、忙しいから後でね」

俺はシンを見捨てて部屋を出た。


 「カザマも罪な事をするな」

着いてきたカガリが俺を責めるが。

 「あれなら、余計な事を考えないだろう。さて、
  夕方くらいまでにもう一回攻撃があるだろう
  から準備しないと」

 「キサカが明朝まで無いと・・・」

 「俺達からの奇襲を防ぐ為に、もう一回くらい
  あると思う」

 「そうか。では、その時は私も出撃するぞ」

 「却下!」

 「早っ!いきなり却下かよ!」

 「司令官が前線にでないでよ。それに・・・」

 「それに?」

 「カガリちゃん、下手っぴだから」

カガリは司令官の仕事が忙しくて、訓練が疎かに
なっていた。
当然、技量はさほど上がっていない。 

 「大丈夫だ。ムラクモ・ガイが護衛に入るし」

 「ガイは1人なんだから過剰な期待はしない
  事」

狭いオノゴロ島に多数の敵味方が入り乱れて乱戦
状態になるので、個人を追いかけ続ける事は難し
い。

 「だから、司令官はどっしりと構えている事」

 「だが、私が出撃すればガイも出撃するし
  ・・・」

 「あいつの参戦はありがたいが、一個人の技量
  で戦争には勝てないからさ。気にするなよ」

 「でも、いくらお前が凄腕でも運が悪ければ戦死
  するし、みんなだって・・・」

戦死者の増大でカガリは不安になっているようだ。

 「カガリちゃんは司令官なんだから、戦場以外で
  出来る仕事があるでしょ。援軍の増援を上層部
  に上申するとか、予備機や優秀な装備を集めて
  きたり。後は、形振りかまっていられないから
  、新型機でも試作機でもいいから集めておいて
  よ」

 「わかった。早速、やってみる」

カガリは駆け足で司令室に走っていった。

 「さて、飯を食いに行くか」

俺も食堂に行く事にする。


 「カザマの言う事は素直に聞くんだな」

通路の影で俺達の様子を見ていたキサカ准将は微笑
みを浮かべていた。


(オノゴロ島沖100キロ、ドミニオン艦内)

第三次までの攻撃が終了してから、機動艦隊はザフ
ト艦隊の奇襲を受けて大混乱に陥っていた。
その混乱収拾の為に、一時後退したドミニオンは
艦隊上空の直衛任務に借り出されていた。

 「でも、あのモーガン少佐が戦死するなんて
  ・・・」

ラミアス中佐は驚きを隠せない。

 「戦場では、時に理解し難い事が起こるもの
  です」

デュエルダガー部隊を率いている、レナ・メイリア
少佐がつぶやくように言う。

 「(乱れ桜)の一言は至言だね」

フラガ少佐が感心している。 

 「私の隊も残存3機です。次の攻撃で生き残
  れる保障はありません」

 「俺達の任務は、あの精鋭部隊の足止めだから
  しょうがない」

 「やっかいですね」

 「あいつらを抑えれば数で押せる。冷静な計算式
  だ」

 「ザフトは援軍を出してきましたね。連合軍は
  大丈夫なのでしょうか?」

バジルール大尉が疑問を呈する。 

 「まだ、二倍の戦力差だ。大丈夫といいたいが
  ・・・」

 「お互いに全滅覚悟で殲滅戦になるか。どちら
  かが早期に見切りをつけて、撤退か降伏する
  か・・・」

バジルール大尉が予想を述べる。 

 「その判断はニミッツ大将の判断次第かな?」

ドミニオンクルーの気は晴れなかった。


(同時刻、「ピースメーカー」上空)

 「あーあ。暇だな。何で俺が直衛任務なんだよ。
  プリンスのバカが、カラミティーに飛行パック
  なんて付けるからだ」 

クロト・ブエルは1人で留守番任務に就いていた。


(同時刻、アメノミハシラモビルスーツ格納庫)

早朝に連合の艦隊を退けた防衛隊とクルーゼ艦隊は
共同でオーブ降下作戦の準備を整えていた。

 「クルーゼ司令、フライトユニットの準備は完了
  したか?」

格納庫を訪れたミナがフライトユニット装着作業
を監督をしていたクルーゼに作業状況を確認した。

 「OSの調整と装着作業は完了した。
  フリーダム、ジャスティス、ドレッドノート、
  センプウ、ゲイツ合計で58機。私はフリーダ
  ムに搭乗して降下作戦の指揮を執る」

司令官が自らモビルスーツに乗るのか。
こいつはギナと同じ種類の人間だ。

 「艦隊はどうするのだ?」

 「オキタ艦長を臨時司令に任命して、アメノミハ
  シラ防衛を任せる事にする。連合の艦隊は20
  %ほどの損害を出しているから、再度の攻撃は
  無いであろうが念のためだ」

一度降下したら、暫らく自分の艦隊に戻れないのに
、彼はそれが気にならないらしい。

 「今、敵機動艦隊はザフト軍の奇襲で混乱した戦
  況を収拾する為に後退しているが、今日中に、
  もう一度攻撃隊を発進する可能性が高いという
  報告を受けている。なので、その攻撃隊の発進
  と同時に降下して、上空から奇襲をかけるのが
  いいだろう」

 「そうだな。では、時が来るまで休憩させて
  貰おう」 

クルーゼは兵士に食堂の場所を聞いている。
仮面の男に道を聞かれた兵士の動揺が遠くからでも
わかる。

 「ギナに匹敵する変人が存在するとは・・・」

 「ミナ様も苦労しているんですね」

隣りには、ラスティーとディアッカが立っていた。

 「お前達も大変なんだな・・・」

 「この一月半、苦労しっ放しです」

 「食堂でコーヒーでも飲むか?奢るぞ。同士よ」

 「「ありがとうございます」」

3人の間に友情が芽生えたようだった。


(午後二時オノゴロ島地下基地内)

昼食を終えた俺達は、パイロット待機室で休憩を取
っていた。
敵の攻撃がいつになるかわからないので、休める時
に休んでおかなければならない。

 「今日中にもう一回あるぞ。そして、明日は多分
  一日中だ。今日のこの中断は、俺達にたまたま
  幸運がめぐってきたに過ぎない」

俺が情勢を説明する。

 「ザフト軍との共同作戦は大丈夫ですかね」

マユラが俺に尋ねてきた。
ジュリの戦死を聞いて動揺していたのだが、ひとま
ず元気を取り戻したようだ。 

 「特殊装甲師団のパイロットの半数は元ザフト兵
  だ。大丈夫さ」

その時、カガリが待機室に走りながら入ってくる。

 「おーい!追加の援軍が来るそうだ」

 「何処からなの?」

日本は援軍を出せない。
東アジアが地球連合の要請を受けて、形だけの部隊
出撃準備を行っているらしい。
万が一にも事実であると大変なので、自衛隊は戦力
を出せないのだ。
カーペンタリアもモラシム司令の艦隊とインド洋艦
隊の対応戦力を出している為に、戦力が残っていな
い。
インド洋艦隊がまだ完全に撤退していないので、対
応戦力を回すのは難しいし、モラシム艦隊は司令官
が戦死して水中用モビルスーツ部隊が半減している
ので、無理が出来ない。

 「宇宙からだそうだ」

 「宇宙?」

 「アメノミハシラ救援艦隊から、50機ほどの援
  軍を直接降ろすそうだ。ミナから連絡が入った
  」

 「救援艦隊って・・・」

 「クルーゼ司令らしいな。本人が直接指揮を
  執って降下するらしい」

また悪い癖が出たようだ。

 「そんなわけで、味方識別を入れるから確認を
  忘れるなよ」

 「あの人はしょうがないな」

俺があきれながら周りを見ると、アスラン、イザー
ク、シホ、ニコルがため息をついていた。

 「どうしたんだ?アスラン達は?」

 「色々あるんだよ」

その時、待機室内に警報が鳴り響く。

 「敵さん、おいでなすったな。みんな行くぞ!」

 「「「おー!」」」

順番からいけば俺達の出番ではないのだが、攻撃隊
襲来時間の間隔が空いたので、精鋭部隊である俺達
の出番になったらしい。

 
そして、午後2時30分。
敵の第四次攻撃隊推定280機が襲来した。
迎え撃つ俺達は187機で、段々不利になって
きた。
ザフト軍のディン部隊の補充も焼け石に水の
ようだ。
果たして、クルーゼ司令の援軍は間に合うのか?
俺達は生き残れるのか?
それは、誰にもわからなかった。


        あとがき

遂に戦闘が始まりましたが、オーブ軍は数で不利
です。
そして、ザフト軍は形振りかまわずに援軍の
追加投入を決意します。
カザマの部隊はフラガ少佐達と死闘を繰り広げて
いる為に、敵機を思ったほど落とせないで状況は
不利になりつつあります。
次はクルーゼが乱入してからのお話です。
更新は不明です。

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