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▽レス始

「幻想砕きの剣 8-5(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-03-01 23:49)
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 空。
 イヤミなくらいに晴れ渡っている。
 鷹が一匹、空高くを飛んでいた。

 乗り込んだ馬車の中から、それを見上げている未亜。
 現在、未亜達は王宮に向かっている。
 ちょっと睡眠不足だったりするものの、ほぼ快調である。

 半日ほど遅れて、セル達も出発するはずだ。
 学園から王都まで、馬車で約30分。
 急げばもう少し早く到着できるが、救世主クラスは満場一致で「ゆっくり行ってくれ」と口を揃えた。
 遠征時の御者とは違う御者だったが、一抹の不安は拭えない。


「未亜ちゃん、次は未亜さんの番ですの」


「あ、ごめんなさい……あ、ババ引いちゃった」


 王宮につくまでの時間を、大河達はババ抜きなんぞやって過していたりする。
 暇でしょうがないナナシが言い出したのだが、これが中々好評だった。
 カエデの世界には花札はあってもトランプは無かったようだし、リコは意外とムキになっている。
 ブラックパピヨンに至っては、カードを配る時にこっそりイカサマをしようとしたのでハリセンの洗礼をもらっていた。
 意外な事に、ナナシがやたら強い。
 思考回路が単純でいつも笑っている分、情報が読み取りにくいらしい。
 …一つだけカードを突き出していると、素直にそれを取るのだが。

 これから戦いに行くのだとは思えない、のんびりとした雰囲気。
 まぁ、救世主クラスにはこれくらいが丁度いいのかもしれない。


「そう言えばカエデ、柊の里に伝わる護身の秘術とやらは解読できたのか?」


「? 何の話なの? …ほい、あと2枚で上がり、と」


「ほら、カエデさんってエッチしてると背中に何か浮かんでくるじゃないですか。
 あれ、何だかよく解らないけどカエデさんの里の秘術なんだそうです。
 そのヒミツが、カエデさんの背中に封印されているのだそうで」


 未亜の説明を受けて、何でそんな所に、と思ったリリィ。
 当のカエデは、首を捻っていた。


「それが、文字自体はとっくに解読できているのでござるが…その意味というか秘術との関連性がさっぱり理解できないのでござる。
 曰く、
『柊に伝えし秘術あり、其れは全てを守りし光の盾なり
 柊に伝えざりし秘術あり、其れは戒めを解く鍵なり
 柊に伝えし宿命あり、其れが守るは己が身であること能わず』。
 つまり護身の秘術は里に伝えられてるのでござるが、その鍵となる物の存在は教えられていない、という事でござるな。
 そしてこの術は、己の命のために使う事は出来ない…。
 これまでに、その、色々とアレな事をしている時に浮かび上がってくるので、強い感情…愛情や情欲に関連しているのではないか、と思っているのでござるが…」


「なるほどなぁ…」


 大河は鼻の頭を掻く。
 正直な話、大河としてもこれだけでは術の発動方法は見当がつかない。


「里の先人から教わったりしなかったんですか?」


「それが、この術は何代か前の族長が、主ではなく恋人か誰かのために使ったため、失伝してしまったのでござる。
 だから父上や母上のみならず、里の者は術の事は全く知らないのでござる。
 恐らくは知っていても、我が背中に記された口伝のみ。
 その意味する所は誰も知らぬ…」


 術が使えるようになれば戦いも楽になるのに、とカエデは落ち込んだ。
 未亜が声をかけようとすると、唐突にリリィが立ち上がる。
 手に持っていたトランプ二枚が、ひらひらと舞い落ちた。

 何事かとリリィを見るが、当のリリィは後方を凝視していた。
 そして今度は御者に声をかける。


「ちょっと御者さん、馬車を止めてください!」


「? ああ、はい。
 気分でも悪くなりましたか?」


「いえ、そういう訳では…ちょっと失礼します!」


 リリィは馬車から飛び降り、走っていく。
 顔を見合わせた大河達は、すぐに後を追った。
 しっかり手持ちの札を伏せていく。

 幸いリリィはそう遠くまでは走って行かず、道から少し離れた森の入り口で立ち止まった。
 キョロキョロ周囲を見回している。


「どうしたんですリリィ?」


「ベリオ……さっき、ここに馬が居なかった?」


「馬ですか?
 それなら、ここに足跡が残ってますが」


 ベリオの指が地面を指す。
 そこには、僅かに馬の蹄の跡が残っていた。


「どうしたんです、リリィさん」


「リコ…ごめんね、いきなり…。
 ここにカスケードが居たような気がしたんだけど…。
 ほら、私がこの前の遠征で先走った時に乗っていった馬よ。
 多分…エレカが乗っていった馬…」


 それを聞いて、全員の空気が緊張する。
 もし本当にカスケードだったら、近くにエレカ…“破滅”の民が居る可能性が出てくる。
 距離があるのに馬の区別がつくかどうかは疑問だが、リリィに言わせると『他の馬とはオーラが違った』となる。

 ガサリ、と森の茂みが動いた。
 反射的に召喚器を呼び出し、構えを取るリリィ達。
 さらにガサガサと茂みが動き、出てきたのは……馬だった。
 力強い体躯だが、特に敵意は感じられない。
 溜息をついて、構えをといた。


「…馬、か…リリィ、コイツお前が乗って行った馬か?」


「多分…このオーラは「カスケード!」きゃっ!?」


「うおっ!?」


 いきなり割り込んでくる声。
 大河は突き飛ばされ、たたらを踏んだ。
 大河を突き飛ばした人物は、そのまま馬…カスケードに抱きついた。


「ぎょ、御者さん…?」


「ああもう、何処に行ってたんだ心配したぞ、お前ってヤツは!
 このこのっ、気紛れハチミツボーイめ!
 お前が帰ってこないから、心労のあまり贅肉が2割くらい落ちちゃったじゃないか!
 お蔭で楽してダイエットが出来たよありがとう!」


 カスケードの顔に頬擦りし、今にもキスでもせんばかりの勢いだ。
 カスケードの方はというと、ちょっと迷惑そうな顔をしている。
 …というか、今にも後脚で蹴りをくれそうだ。


「やっぱりカスケードだったんだ…。
 じゃ、エレカは近くに!?」


 御者の事は放置して、リリィは緊張を高める。
 だがベリオやカエデはというと、緊張の糸が切れてしまったのかどうでもよさそうにしている。
 もともとエレカに対して、強い思い入れがある訳でもない。

 周囲の状況なんぞ構いもせずに、御者はカスケードに放しかけている。


「なぁカスケード、お前この一週間は何をしてたんだ?
 どうして学園に戻ってこなかったんだい?
 ……なに、5日前に女の子を乗せてどこかの村に行ったら、その場で手綱を解かれて何処にでも行け、と言われた?
 それでゆっくり観光しながら、学園に帰ってきていたと…。
 その女の子はそこにいる赤い服の魔法使いの事か?
 …違う?
 もうちょっと幼い女の子?」


「会話が成立してる!?」


 アンタはドリトル先生か。
 ベリオの驚愕も他所に、御者は会話を続ける。

 そっちはキリが無さそうなので放っておいて、リリィは御者との会話から聞いた情報を整理する。


(私たちの遠征は一週間前。
 カスケードの証言(?)からすると、開放されたのは5日前…つまり、最低2日はカスケードとエレカは行動を共にしていた、という事ね。
 カスケードがゆっくり歩いたとしても、5日もあればあの時の村まで行くのは造作もないわ。
 近所でエレカが降りたとは限らないって事か…)


 ハァ、とリリィは溜息をついた。
 大河も同じ結論に達したらしく、救世主候補生達に手振りで合図を出して馬車に戻ろうとする。
 が、ふと足を止めた。


「なぁ御者さん、その女の子とやらは、どこで降ろしたのか聞けるか?」


「え? うーん、多分無理です。
 コイツは街の名前とかは覚えないし、何気に方向音痴な所がありますから…。
 イテ、悪かった、こら噛むな噛むな」


 頭蓋骨を圧迫されて悲鳴を上げる御者。
 しかしその顔は何処となく嬉しそうだ。
 一人と一匹の心温まるスキンシップはともかくとして、エレカの情報は得られそうにない。
 ちょっと落ち込んだリリィだが、大河にちょっと頭を撫でられて赤面する。
 そのまま無言で馬車に戻った。


「御者さん、そろそろ行きましょ。
 カスケードはどうします?」


「あ、はいはい。
 ここまで来れば、カスケードも自分で学園に帰れるから大丈夫です。
 王都と学園間は、何度も往復していますから…。
 カスケード、寄り道せずにゆっくり帰れよ?」


 承諾したのかしないのか、カスケードは一声鳴いて去っていく。
 きっちり学園に向かっているようだ。


「お待たせしました。
 それでは参りましょう」


「お手数おかけします」


 柄にもなく殊勝に礼を言って、大河も馬車に戻った。


「…残念でしたね、リリィ…」


「…そうね…でも、ちょっとホッとしてるわ。
 本当の事を知るのは、やっぱり怖い……いえ、我慢が出来なくなるかもしれない」


 リリィは未だにエレカが敵だとは思えていない。
 もし本当にエレカが敵だったら、と思うと彼女の心は散り散りに乱れてしまう。
 戦争に行く前に、瑣事に心を囚われなかったのは返ってよかったかもしれない。


「お馬さんが無事でよかったですの〜♪」


「…ま、それが一番の収穫かしらね」


 ナナシの暢気な口調に、リリィは苦笑する。
 カスケードを逃すと、どこかで足がついてしまうかもしれないのに、エレカはそれをしなかった。
 それが優しさだと信じたい、とリリィは思う。
 リリィは外を見て、一息ついた。


「さて、気分転換にババ抜きの続きでもやりましょっか」


「そうは言っても、リリィの札が何なのか、もう見えちゃいましたよ。
 また配りなおしますか?」


「ならば私が。
 ベリオさんに任せると、知らない間に手が動いていたなんて事になりかねません」


 本当にムキになっているらしく、リコは珍しく自分から主張する。
 トランプを集め、ぎこちない手付きでシャッフルする。
 と思ったら、失敗して何枚かばら撒かれた。


「ああダメダメ、貸してごらんなさい。
 シャッフルっていうのはこうするのよ」


 ルビナスが横からトランプを奪い取る。
 リコはムッとしたが、騒ぎはしなかった。

 ルビナスはギャンブラー顔負けの手付きで、物凄い勢いでカードをシャッフルする。
 マシンガンシャッフルは当たり前、アクロバティックな演出までする。
 カエデは初めて見る妙技に、興味津々だった。


「すごいでござるなぁ…」


「隠れた特技ですね」


「………?
 ちょっと待てルビナス、お前ガンとか出来るんじゃないのか?」


「ギクッ!」


 未亜とカエデの声を他所に、浮かんだ疑問を投げかける大河。
 その瞬間、ルビナスが手がピキっと固まってトランプが乱れる。
 キャッチに失敗して、またトランプが散らかってしまった。


「ガン…ですか?」


「ああ、イカサマの一種でな。
 牌…カードについている細かい傷や折れ目を全て記憶して、裏を見ただけでそのカードが何なのかを当てる技術だ。
 まして、ルビナスの作ったボディだろ?
 ガンがどうのこうの言う以前に、カードを並べ替えたり配ったりしている間に並び順を記憶したり、カードを好きなように並べ替えるくらいはやってのけてもおかしくない」


「………(だーらだら)」


 鏡を前にしたガマガエルのように脂汗を流しているルビナス。
 どうやら図星のようだ。

 冷たい視線がルビナスに集まる。
 というか、何も賭けてないんだからそこまで本気にならんでも。


「…イカサマは……ハリセンチョップだったよな?」


 大河の冷酷な宣言の後に、リリィがハリセンを振り上げた。


「ひーん、紙製のハリセンなのに、どーしてこんなに痛いのよ〜(涙)」


 涙目になって、頭を抑えているルビナス。
 リリィの一撃はそれなりに効果があったらしい。
 トレイターを変化させたハリセンでもなく、本当にただの紙製ハリセンなのに。
 その頭を大河が撫でているので、本人的にはプラスマイナスゼロかもしれない。

 ふと大河が外を見る。
 既に王都への道の半分は過ぎた。


「…そういえば、アルディアちゃんの家はこの辺りだったよな」


「ああ、そう言えばそうですね。
 あの時は好奇心でついていって、物凄い怖い思いをしましたが」


 あの時の執事の目を思い出したのか、ブルリと震えるベリオ。
 どうやら苦手意識を持っているようだ…無理もない。
 全員、イヤーな記憶を思い出してちょっとテンションダウン。

 大河はそれを振り払うように、明るい(?)話題を提供する。


「そ、そーいえばな、セルのやつ、本気でアルディアちゃんに惚れてるみたいだぞ。
 正直ロリは入ってると思うんだが、そこんトコどうだろう」


「ご主人様が言いますか!?」


「おう、言うだけならタダだしな。
 大体俺は開き直ってるが、セルはまだジタバタしてる。
 この一点だけで、俺は大きくセルに勝っていると言えよう」


 勝ってどーすんだ、という意見は華麗にスルー。
 聞いていた未亜達は、惚れた相手を間違えたかなー、と思っていたが、当のロリ…リコは結構感激しているようだ。
 自分への愛情を、臆面もなく認めている訳だから。
 まぁ、世間一般に向けて「俺はロリコンだ」と宣言するのもアレだけど。
 それに大河に限らず、未亜だって人の事は言えない。


「それはともかくとして、どーもあの時の執事の爺さんもセルの事が気に入ってるみたいでな。
 ひょっとしたら、アイツは婿養子に行くかもしれん」


「えらく話が飛びますね?
 セル君が他の女性に目移りする可能性とかは?」


「可能性の話だ。
 目移りの可能性は…低いだろうな。
 一度惚れたら一直線、って所があるし、アレで結構一途なだし…。
 後は自分の性癖を受け止めるなり、ロリ云々を抜きにしてアルディアちゃんを受け入れるかだ。
 …まぁ、ナンパは続くだろうけど」


「ナンパしないセルビウムなんて、想像できないわよ。
 アンタは…考えてみると、意外としないわね。
 私たちだけで満足、って事ね」


 ケラケラ笑うリリィ。
 ルビナスやナナシも無言で頷いている。
 確かにリリィの言うとおり、大河は意外とナンパに出掛けない。
 単に未亜とかが怖かったからだが、最近では救世主クラス総出で制裁をかましてくれるので、行くに行けない状態だ。
 それでなくても、大河は意外と一途である…一途と言っても、仲良くなった女の子とは絶対に離れないという事であって、浮気しないという事ではない。
 不特定多数の女性に声をかける事はあっても、深い仲になる事はまず無いのだ。
 …まぁ、ナンパはしなくても愛人(?)の人数は着々と増えていっていた訳だが。


「お、言ってる間に見えてきたぞ。
 アルディアの屋敷だ」


「アルディアさん、出てこないでしょうか?
 前の時は結局会えませんでしたし…」


 好奇心丸出しで身を乗り出すベリオ。
 未亜達も気になるようだが、先日の暴走馬車がトラウマになっているのか、身を乗り出す事まではしない。
 ベリオは目を凝らすが、流石に遠い。


「カエデさん、ここから見えますか?」


「うっすらと、なら…」


 オレンジジュースなど飲みながら、顔を覗かせたカエデ。
 眉間にシワを寄せてアルディアの家を見ようとする。
 どうやらはっきりとは見えていないらしいが、少しずつ形になりつつあるようだ。


「……ん〜、もう少し近付けば………!?」


 カエデの言葉が途切れる。
 その目が驚愕に開かれた。

 リリィが怪訝に思って同じようにアルディア邸を見ようとするが、細部は全く見えない。
 コイツの視力はどーなってるんだと思いつつ、カエデに目を向ける。


「えっ、えっ、えええええええ」


「…何を驚いてんのよ」


 呆れるリリィだが、次の瞬間にはリリィの方が最大級の驚愕の叫びを放つ事になった。


「エレカ殿!?」


「…………な、なにーーーーーーーーー!?」


「ぎょ、御者さん、御者さん!
 あそこの屋敷の前で、ちょっと止めてください!」


 混乱しながらも、ベリオは御者に頼んでアルディアの家の前で止まるように頼む。
 御者は一体何事かと思いながらも、素直に馬を止めた。

 リリィが真っ先に飛び降りて、門まで走っていく。
 以前来た時と違って、門は閉まっていた。


「す、すみません!
 何方かいらっしゃいますか!?
 すみません!」


 ドンドンガンガン、とえらく重い音を立てるリリィのノック。
 そのすぐ傍にインターホンがあるのにも気付いていない。

 その後ろで、カエデが壁を飛び越えて屋敷に入ろうとしている。


「おいカエデ、エレカちゃんは何処に?」


「そこの庭で、茶を啜っていたでござる!
 むぅ、この角度だと微妙に見えるか…」


 カエデが指差した方向には、生い茂った植物に隠された庭。
 大河は何とかその間から中を覗こうとする。
 角度を変えて視線をあちこちに配ると、確かに人が居る。
 それどころか、リリィのノックに反応したらしく、こちらに向かってきている。

 しかしその人物は…。


「アルディアちゃん…?」


 だった。
 見た所、他に人は居ない。
 となると、カエデが見たのは他ならぬアルディアという事になる。
 大河はアルディアと、微かに記憶に残るエレカの顔を比べてみた。


(…髪型は違うが、確かに似てるな…。
 待て、それじゃアルディアちゃんは“破滅”の民…!?
 いかん、これは冗談抜きでヤバイ!
 あの妖怪執事が出てきたら…!)


 もしエレカがアルディアで“破滅”の民だとすれば、それに付き従うジュウケイも同様に“破滅”の民だろう。
 そのジュウケイに対して、大河の本能は『危険だ』と全力で告げている。
 正面から戦えば、恐らく勝つ事は不可能ではない。
 しかし暗殺者の類ならば話は別だ。
 今この瞬間にでも、後ろから喉元を掻き切られてもおかしくない。


「おいリリィ、落ち「はい、どちらさまで…」……遅かったか」


 大河の忠告は間に合わず、門を開けてジュウケイが出てきてしまった。
 こうなってしまっては仕方がない。
 今から誤魔化そうとしても、ジュウケイに不審を与えるだけだろう。
 ならば踏み込める所まで踏み込んで、後は全力で目の前の危機に対応するだけだ。


「わ、私はフローリア学園救世主クラス所属の、リリィ・シアフィールドと申します。
 こちらに、エレカ・セイヴンさんは居らっしゃらないでしょうか!?」


 ジュウケイに会ってテンションダウンしたのか、少々どもりながらリリィが尋ねる。
 しかしジュウケイは全く表情を変えず、そっけなく言い返した。


「生憎ですが居られません」


「そんな筈は!
 現にカエデが見たって!」


「落ち着けリリィ。
 すいません、ちょっと知人の事で気が立っているんで…」


 リリィを後ろから羽交い絞めにして、大河はジュウケイに頭を下げる。
 ジュウケイは何も読み取れない顔で軽く頭を振って謝罪を受け入れる。


「ちょっと大河、放しなさい!」


「落ち着けって言ってるだろ。
 仮にカエデが言った通りここにエレカちゃんが居たとしても、執事たる者内部の情報を外に漏らす訳がないだろう。
 アポを取ってあるとか本人から通達があるとかいうならまだしも、ここで騒いだってどうにもならない」


「ぐっ…」


 正論に返す言葉を失う。
 カエデやベリオも大人しくしているが、真実を突き止める機会を断たれたようで不満そうだ。
 しかしこうなってしまえば長居は無用。
 ここで騒ぎ立てるよりもさっさと王都に行って、クレアかダリア辺りにエレカの事を告げた方がずっと建設的である。


「すいません、お騒がせしま「セル!」…?」


 未亜がもう一度頭を下げて馬車に戻ろうとした時、ジュウケイを押しのけて誰かが出てきた。
 言わずとも予想がつくだろうが、アルディアである。
 輝かんばかりの笑顔で出てきたアルディアだが、周囲を見回して首を傾げた。


「…大河、セルは?」


「…お騒がせしてすまないな、アルディアちゃん。
 セルだったら今日は「エレカ!」…おい台詞を遮るなよ」


 本当に騒がしい。
 まともに台詞を言い終えるのすら一苦労である。
 それはともかく、リリィはつまらなそうにしているアルディアを見てエレカと呼んだ。
 大河の腕を振り解いて、アルディアに掴みかかろうとする。


「失礼します」


「!?」


 が、次の瞬間リリィの視界は回転した。
 何が起きたのか理解する間もなく、ドン、と誰かの腕に抱きとめられる。
 顔を上げると、そこにナナシの顔があった。
 彼女の怪力なら、リリィを抱きとめるくらい造作ない。


「リリィちゃん、大丈夫ですの?
 女の子に掴みかかっちゃメーですのよ」


「え、ああ、そうね、ごめん…ありがと。
 じゃなくて!」


 リリィはナナシの腕から降りて、またアルディアを見た。
 ジュウケイがアルディアの前に立ち塞がっている。
 普段から不気味な気配を放っている目は、ますますもって不気味な威圧感を増していた。
 圧迫感に押されて、リリィは足を止める。
 これ以上前に進める気がしない。


「エレカ様というのがどなたの事かは存じませんが…お嬢様に危害を加えようというのなら、排除させていただきます」


 静かに闘気を滾らせながら、ジュウケイが重々しく断言する。
 その気に反応して、カエデとルビナス、ベリオが反射的に戦闘体勢を取った。
 一触即発の空気が満ちる。
 が、そこで未亜が両者の間に割り込んだ。


「まぁまぁ、落ち着いて…。
 ごめんなさい執事さん、リリィさんは害をなそうとしたんじゃなくて、興奮しすぎて暴走しちゃったんです。
 今後はこういう事がないように、念入りにをするので許してください」


「…いいでしょう。
 なにやら訳ありのご様子。
 これ以上突っ込むと未知の世界を垣間見るような気がしますし、此度は不問といたします」


 ジュウケイは重々しく言った。
 しかし内心では、未亜が躾と言った時の目の光に微妙にビビっている。
 緊迫感に満ちていた空気が散る。

 カエデはふぅ、と顎を手の甲で拭った。
 思った以上に汗で濡れている。
 それを見て、カエデはジュウケイが途轍もない実力者である事を確信した。


「なぁなぁ大河、セルは? セルは何処にいるんだ?
 私は明後日から出掛けなくちゃならないのに、全然姿が見えないんだ」


「ん? セルなら多分、今日の午後辺りにこの道を通って王都へ行くぞ。
 出張で、暫く帰ってこれないそうだ」


「本当か!?」


 ジュウケイの後ろから出てきて、アルディアは大河に詰め寄った。
 リリィはそんなアルディアをじっと見ているが、ジュウケイの圧力を恐れてかまた詰め寄ろうとはしない。

 アルディアはセルが午後に来ると聞いて喜び、帰ってこれないと聞いて物凄く不満そうな顔をした。
 しかしそんな顔をされても、大河としては手の打ちようがない。
 代わりにセルから意識を逸らそうと質問を投げかけた。


「ところでアルディアちゃん、ひょっとしたら双子の姉か妹って居ない?」


「ん? 居るらしいぞ。
 私は会った事はないが、妹が沢山居るそうだ。
 えーと、私を含めて12人ぐらい居たはずだ」


 プリンセスか?などという疑問は飲み込んで、リリィを目で牽制する。
 また暴れだされてはかなわない。


「それじゃ、ひょっとしてその中にエレカっていう子は?」


「さぁ?
 一人一人の名前は知らないんだ。
 なにせ爺に聞かされただけで、どこで何をしているのかも知らないから」


「…そうなんですか?」


 大河は一見すると無防備に立っているように見えるジュウケイに問いかける。
 ジュウケイはまたリリィが激昂しないか、密かに警戒しているようだった。
 しかし素直に質問には答える。
 アルディアが言ってしまった程度の事なら、漏らしても問題ないのだろうか。


「その通りです。
 お嬢様方は産まれて間もなく、分家の方々に引き取られました。
 跡目争いを無くすためだったのですが、今ではその分家も潰れてしまい、皆目何処に居られるのか…。

 先ほどから話を聞かせていただいていますが、そのエレカ殿が何か?」


「ああ、ちょっと前回の任務でね…内容は聞かないでくれ。
 その任務を妨害されて、エレカって子に容疑がかかってるんだ。
 このままじゃ、“破滅”に寝返ったテロリストって事にされかねない。
 何とか無罪の証拠を見つけられないか、と話していた時に、アルディアちゃんが見つかったんだが…」


「そのエレカ殿と、お嬢様がソックリ…という事で?」


 そう言われて、大河は改めてアルディアを見る。
 アルディアはナナシと意気投合し、無邪気な顔で笑っている。
 ナナシが首を外しているのを見て、自分の首も外せないかと四苦八苦しているようだ。
 …幼稚園児が2人並んでいる、と思ったのはジュウケイだけではないはずだ。


「ああ、俺はちょっとしか顔を見てないけど…よーく似てるな。
 誤認逮捕される危険を無視できないくらいによく似てる。
 同一人物でないのが不思議なくらいだ…俺はちょっとしか顔を見てないから、多少捏造されてるかもしれないけど」


「そうですか…その任務とやらは、一体いつの事で?」


「9日前…だな、確か」


 それを聞いて、ジュウケイは記憶を探るような顔つきになった。
 そしてすぐに断言する。


「その日はお嬢様は、旦那様の仕事の手伝いでパナマ州に居られました。
 向こうで泊まった宿の宿泊手帳には拇印が残っている筈ですし、それ以外にも付近の皆様に聞けば、お嬢様がそこで仕事の手伝いをしていた事は証明できるでしょう」


「パナマ州か……あの村とはかなり遠いな」


 どうも本格的に人違いの線が出てきた。
 アリバイ工作でどうこうなる距離ではない。
 リリィは納得行かないのか、まだアルディアを見詰めている。


「…あの大河君、ここはカエデさんにも検証してもらった方がいいんじゃないかしら。
 本当に人違いでも、はっきりとした証拠がないとリリィは納得しないわ。
 …あの、本当に申し訳ありませんが、アルディアさんの体に触れてもよろしいでしょうか?」


「ん? 私なら構わんぞ。
 大河の友達なんだろう?
 セルの友達の大河は私の友達で、なら大河の友達も私の友達だ。
 困っている時に、出来る事があるなら手伝うぞ」


 ジュウケイが何か言おうとしたのを遮って、アルディアが二つ返事で了承する。
 ベリオはジュウケイに向けて申し訳ない、と頭を下げる。
 ジュウケイは少し考えて、何も言わない事にした。
 ここで濡れ衣、または人違いだと確定しておけば、この後やってくるかもしれない憲兵の類もあしらい易くなるだろう。
 探られて痛い腹かどうかはさておいて、無罪の証拠と証人は多い方がいい。
 そもそもアルディアが了承してしまえば、従者たる彼に反論の余地は与えられない。

 ジュウケイが了承したと判断して、カエデがアルディアの前に出る。


「それではアルディア殿、少々失礼するでござる」


「うん」


 大人しくしているアルディアの腿や二の腕を、ぽんぽんと叩くカエデ。
 その表情はいつになく真剣だ。
 リリィが堪りかねて口を挟んだ。


「…カエデ、どう?」


「……どうもこうも…完全に別人でござるよ、この筋肉の付き方は」


「そんな、こんなに似てるのに!?」


 カエデは困った顔で断言した。
 リリィの剣幕に、ポリポリと頭を掻く。


「以前にエレカ殿に触れた時は、戦闘に必要な筋肉なぞ殆ど無いし、肉や骨の質も特筆する点は無かったでござる。
 しかしアルディア殿の体は、可能性の固まりと言っていいほどでござるよ。
 特に鍛えられてはいないものの、弾力に富み、伸びのいい筋肉、恐ろしく頑丈そうな骨…。
 筋肉の付き方は鍛錬次第でなんとかなるでござるが、とても一週間ちょっとでここまで変わる事は不可能でござる。
 何より、生まれ持った筋肉の性質はまず変化しないでござるからして」


「そんな…」


 ここまで言い切られると、もうリリィとしても引き下がるしかなくなる。 

 多重人格とは、何も人格が変るだけではない。
 時にはその体にも影響を及ぼし、貧弱なガリ勉君が120キロのバーベルを持ち上げる事だってあるらしい。
 しかし、リリィにはそういう知識を踏まえても筋肉の質やら何やらが変るとは思えない。
 だからそう言った例を出して反論しようにも、説得力が欠片もなくなってしまう。


「…どうやら人違いだったようです。
 ご迷惑をおかけしました」


「いえ…こちらとしても、事前にお嬢様に嫌疑がかかる可能性がある事を知れたのは幸いでした。
 今後、お嬢様の身の潔白を証明するために証言して戴く可能性がありますが…よろしいですか?」


「はい、その程度であれば…」


 リリィが頭を下げる。
 そのままトボトボと、リリィは馬車に戻って行った。
 納得していないのは明らかだったが、ここで騒いでも立場が悪くなるだけだ。
 引いてはミュリエルにも迷惑がかかってしまう。

 未亜達もジュウケイとアルディアに頭を下げ、馬車に戻った。
 同じく馬車に戻ろうとする大河…の袖を、アルディアが引っ張った。


「大河大河、セルは何処に行くんだ?
 仕事なんだろう?
 私と一緒の所だといいな!」


「ん? あ、ああ、そうだな。
 セルの行き先は…とりあえず今日は王宮に行くはずだ。
 その後の事は俺もよく知らない。
 アルディアちゃんは何処に行くんだ?」


「私か?
 私はな、「お嬢様」
 え? ……あ、あぁ、言っちゃいけないんだったな。
 ゴメン大河」


「いや、元々立ち入った事を聞きすぎてるんだし…」


 両手を合わせて大河を拝むアルディア。
 大河は突如割り込んできたジュウケイを怪しみながらも、大河は大人しく引き下がった。
 何にせよ、アルディアはともかくジュウケイには後ろめたい事があるらしい。
 ひょっとしたら単に親戚とやらの商売か何かに関わっているのかもしれないが。

 ナナシと名残惜しそうにしているアルディアを見て、大河も馬車に戻ろうとした。


「…当真様」


「へ?」


 しかし、今度はジュウケイの方から話しかけられる。
 この不気味な執事が自分を呼び止める理由があるのだろうか?

 振り返った大河の目に、妙に真剣な顔をしたジュウケイが写る。
 ジュウケイは少しばかり躊躇ったようだが、また口を開いた。


「お嬢様に友人が居られなかった事は、以前セル殿の生活用品を持ってこられた折にもお話したと思います。
 …お嬢様を孤独から開放してくれた恩人として、セル殿には非常に感謝しております。
 ですがそれはそれこれはこれ、お嬢様に近付く男性にはどうにも敵意を感じてしまいがちなのです。
 娘が連れてきた男性に向ける怒りや苛立ち、と言えば解るでしょうか」


「はぁ…それは解らないでもありませんが」


 意図が読めないジュウケイの言葉を聞いていた大河。
 そこにヒョイ、とアルディアが首を突っ込んだ。


「私が娘なら、爺は親なのか?
 でも爺はお爺さんじゃないのか?
 …うん、どっちも私の大事な家族だな!
 お祖父ちゃん、って呼ぶか?」


「お嬢様……くっ、目に少しゴミが…」


 アルディアの家族、お祖父ちゃんという言葉に感極まったのか、ジュウケイは目を覆った。
 大河は黙って懐から取り出したハンカチを渡す。


「かたじけない…。
 は、話を戻しますが…正直な話、セル殿にも同じような敵意を持っています。
 これはお嬢様の世話をしている者達の総意と言っても過言ではありません。
 しかし、我々はそんな感情を一切表に出しません。
 なぜだかお解りになりますか?」


「…職業だから……ですか?」


 執事とは風景の一部になって当然、というくらいに感情を表に出さない職業である。
 セルから聞いた話が本当ならば、ジュウケイは幼い頃からずっと執事として育てられているのだろう。
 その彼が個人的な感情から、主の客人を蔑ろにするなど考えられない。


「それもありますが、それ以上に…セル殿に期待をしているのですよ」


「期待?」


「はい。
 我々がやろうとしても出来ない事をセル殿はやってくれるのです。
 …最初にお嬢様とセル殿が会った時、あり得ない事が起きた…。
 我々は、そのあり得ない事を起した可能性に賭けているのです」


 あり得ない事。
 一体何だろうか、と大河は頭を巡らせる。
 セルとアルディアが一番最初に会った時と言えば、確か王都かどこかのジャンクショップで値下げ交渉を行なっている時だと聞いた。
 その時に何があったのだろうか。

 考える大河を他所に、ジュウケイは大河を見て頭を下げた。


「こんな事を頼める立場ではないのですが…お嬢様とセル殿を、どうぞよろしくお願いします。
 もしも我々が何らかの理由で力尽きた時、お二人を守っていただきたいのです」


「ちょ、ちょっと待ってください!
 話が全然見えませんよ!?」


「…そうですね、虫のよすぎる頼みでした。
 忘れてくださって結構ですので」


「い、いやそれは力の及ぶ限り守りますよ。
 しかし一体何があるっていうんです?」


 ジュウケイは下げていた頭を上げて、ふっと笑った。
 面相と相まって非常に不気味な表情となったが、そこにはどこか温かさを感じる。


「何でもありません。
 ただ、歳が歳なので少々弱気の虫に憑かれてしまったようです。
 失礼いたしました。
 …ところで、皆様待っておられるようですが」


「あ、いけね…ナナシ、行くぞ!
 アルディアちゃん、またなー!」


「ばいばーいですの〜」


「しーゆー!」


 まだアルディアと戯れていたナナシを連れて、大河は今度こそ馬車に戻る。
 元気のいいアルディアの声に手を振るナナシ。
 それをジュウケイが微笑ましい目で見守っていた。


(…とはいえ、エレカとアルディアちゃんが無関係って事はないだろうしな…。
 王宮に着いたら、クレアに頼んで調査してもらわないと。
 そうでなければ、リリィも納得しないだろ)


 王宮。
 宮殿の一室で、クレアとアザリンは忙しく書類を消化しまくっていた。
 今までも忙しかったが、今日ほどではない。
 何故かと言うと、作戦の準備が佳境に入り、さらにアザリンもホワイトカーパスに帰るからだ。
 2人揃っている間に、少しでも仕事を片付けておきたい。


「とはいえ、この仕事は腰とか手とか目が疲れるのぅ…」


「若くして爺様のような事を言うでない。
 せっかく考えないようにしていたのに、無駄になったではないか」


「そーじゃな。
 どうせだから、お主の背後霊も手伝わせればいいものを…。
 立っているモノは何とやら、だ」


「…させられるなら、とっくにやっておる。
 だいたい幽霊にどうやって書類を処理させるのだ?
 こっくりさんとか自動書記でサインをしていてみろ、ただでさえ気が滅入る仕事風景がもっとシュールになってしまうではないか」


 お互いに顔も見ずに、書類を読んではサインしたり相方に渡したり引き裂いたりして、次々に情報を纏めていく。
 ちなみにアザリンが言う背後霊とは、勿論イムニティの事である。
 姿を見せる訳にはいかないので結界を張って隠れているのだが、カンの鋭いアザリンはその存在を察知してしまったのだ。
 そこで苦し紛れに出た言い訳が背後霊、という事だった。
 …あながち間違ってもいないかもしれない。

 ともあれ、イムニティにこの手の仕事を頼むのは愚の骨頂だ。
 いかにロジックの精霊とはいえ、イムニティは意外と世間知らずである。
 千年も社会から離れていたので無理もないが、知識がやたら古かったり、妙な方向に偏りがちだったり、趣味に関する書類にはとんでもない方策を当てはめかねない。

 そんな訳で警護に集中させているのだが、これがまた意味がない。
 敵意を持つ者に反応する結界を張ってあるらしいのだが、それ以外には全くする事がないのだ。
 結果として、イムニティは必死で仕事をするクレアとアザリンの横で、一人だけ漫画を読みふけっている事になる。
 クレアでなくても殺意が沸くというものだ。
 アザリンも感知しているのか、微妙にイラついている。


「はぁ……帰ったらパコパコに会いたいのぅ…」


「確かジャスティ・ウエキ・タイラーは既婚者ではなかったか…?
 略奪愛に走るのか?」


「やかましい、アヴァターでは一夫一妻に拘らぬとはいえ、あっさり手篭めにされたお主の言う事か。
 ……まぁ、その辺は成り行き任せとしか言えぬな。
 チャンスがあれば奪いに行くが、正直あの二人を見ているのも中々気分がいい…。
 妬けるが、2人を引き裂く気になれぬ」


「ある意味最大の強敵を持ったな…お互いに」


 2人はサインをする手を休め、顔を見合わせて笑った。
 実はこの手の会話を何度か交わしているのだ。
 特にクレアの体験談は、アザリンにはかなり刺激的だった。
 流石にSMの事は暈かして話したが…。

 一時とはいえ互いに立場も対等に近く、その能力・年齢ともに共感を覚えやすい2人。
 2人だけでいると心理的なガードが緩み、愚痴やら猥談やらが飛び出すのも無理はないだろう。
 仕事を続けながら、というのはちょっと見られないが。


「何はともあれ、明日までの辛抱じゃ。
 …お主の救世主、アテにしておるぞ」


「無論だ。
 大河はバカでスケベでロリ入ってて、何処か特殊な施設にでも放り込んでおいた方が世の為の困ったナマモノだが、戦闘力は折り紙付だ。
 流石に単騎では出来ぬ事もあろうが、ドム殿かジャスティ・ウエキ・タイラーならば使いこなせよう」


 翌日の朝一から、アザリンはホワイトカーパスに帰る。
 大河はその護衛を兼ねて、最前線に送り込まれるのだ。
 今日は救世主クラス一同、王宮に宿泊して色々と説明を受ける事となる。


「…ふむ、そろそろ救世主候補生達が到着する頃じゃな。
 クレア、ここは私がやっておくからお主は出迎えに向かってくれ。
 阿呆どもがちょっかいを出す前にな」


「む、了解した」


 クレアは最後に1枚書類にサインをして、席を立った。
 虚空に向かってブン、と当てずっぽうで手を振る。
 ポカッと軽い音がした。
 アザリンが目を見開く。


「あたっ!?」


「ふむ、幽霊でも殴ろうと思えば殴れるようだな。
 そこの背後霊、私はもう行くからさっさと付いて来い」


 珍しい光景…幽霊の声に驚いているアザリンを置いて、クレアはさっさと出て行った。

 大河からもらった色々なネタのお蔭で王宮内の粛清が進んでいるとはいえ、まだ身の程を弁えない野望を持った輩は消えてはいない。
 そういう連中が大河達を取り込もうと、無謀なちょっかいをかける可能性は高い。
 大河はともかく、根が単純で害意に鈍い人間もいるので、言質を取られると面倒な事になる。
 さっさと大河達と合流し、防虫剤となるのがいいだろう。


「さて…大河と会うのも一週間ぶりだな。
 色々と試してみたい事もあるし、開かずの間でナニする約束…果たしてもらわねば」


 今夜自分を待ち受ける被虐の運命を想像して、クレアは人知れず興奮していた。
 ちなみにイムニティは、その後ろを「仕返しにマスターと一緒になって虐めてやる」などと考えながら歩いていた。
 …結局、イムニティも虐められる事になるのだろうけど。


 大きく馬車が揺れて、大河達は揺さぶられた。
 御者が振り返る。


「着きましたよー」


「ありがとーございましたー」


 例を言いつつ、各々荷物を持って立ち上がった。
 未亜が馬車の外に降りて、目の前に聳え立つ宮殿を見上げる。


「…おっきぃ…」


「そうですね…私も直接見るのは初めてです」


 未亜の隣で、ベリオが周囲を見回している。
 馬車から降りたリリィが、2人を見て顔をしかめた。


「ちょっと、そんなにキョロキョロするんじゃないの。
 幼稚園児やお昇りさんでもないんだから」


「一応お昇りさんではあるでござるよ?
 それに、幼稚園児なら、ほれそこに」


 カエデがナナシを指差した。
 指名されたナナシは、さも心外だと言わんばかりに頭から湯気など噴出して見せた。
 ルビナスは何を考えてこんな機能を付けたのだろうか。


「むぅ〜、レディに向かって失礼ですの!
 ナナシはもう立派な大人ですのよ。
 ね、ダーリン?
 だって毎晩皆と一緒にムゴムゴムゴンゴ……」


「はいはい、淑女はそういう事は口に出さないものよ。
 それに、初体験をしたからもう大人っていう考え方は子供の考え方なのよ」


 ナナシの口を後ろから塞ぐルビナス。
 この辺は年長者としての風格を感じさせる。
 一方、最年長のリコはというと目を閉じて何かを感じようとしている。
 リリィは、誰かの気配でも探っているのかと思ったが……よく見ると、鼻がヒクヒク動いている。

 リコがゆっくり目を開けた。


「……ヨジデーの匂いがします。
 それにケチャップと炒めたタマネギとニンニク。
 どうやらヨジデーの刻みチャーハンのようですね」


「…ヨジデー?」


 どうやら食材の名前らしい。
 そしてリコは、王宮から漂ってくる料理の匂いを感じ取っていたようだ。
 流石は救世主クラス腹ペコ部門代表。

 謎の食材は置いておいて、大河は周囲を見回した。
 出迎えらしき人物は誰も居ない。
 これでは何処へ向かえばいいのか解ったものではない。


「師匠、とりあえず到着したでござるが…これから何処へ?
 クレア殿を探すのでござるか?」


 さもなければ、ここで迎えが来るまでじっとしているかだろう。
 だがそれは大河の性に合わない。
 出迎えが遅れたのはあちらだし、この際だから王宮内を探索して回るというのもアリだろう。
 以前忍び込んだブラックパピヨンは、この王宮の構造も知っているはずである。
 何か面白い物はないだろうか?


「なぁベリオ…パピヨン、この王宮で何か面白い物ってあると思うか?」


「面白い物ですか?
 そうですね、あそこに置かれている壷なんてどうです?
 かつては二足三文程度の価値しかなかったのですが、数代前の王女が気に入ったため唐突に人気が出て、そしてあっという間に廃れていった某芸術家の壷だそうです。
 某所では、王族の特権意識を抽象的に表した事件として、今もなお嘲笑の的とされ…」


「いやそーゆーんじゃなくて。
 例えば隠し通路とか地下牢とか、さもなくば」


「開かずの間ならあったけどねぇ…。
 で、クレアと遊ぶのかい?」


 唐突に表に出てくるブラックパピヨン。
 どうやらクレアとの関係は既に察しているらしい。
 他の面々は以前の未亜の言動…調教を推奨しているような言葉を信じていいのかどうか、迷っている状態だった。


「ああ、そりゃ思い切り遊んでやらなきゃな。
 みんなと違っていつも一緒に居られる訳じゃないから、こういう機会にはそれこそ精魂込めて可愛がってやらないと」


「私たちも、明日からは当分出来なくなるんですよね…。
 久しぶりに欲求不満になってしまいそうです」


 今度はベリオだ。
 随分と欲望に素直になったものである。
 堕落を拒んでいたかつてのベリオが見たら、さぞ嘆く事だろう。
 その代わりブラックパピヨンが大喜びしそうだが。


「それじゃあ、カエデと絡むか?
 悶々とした状態じゃ、戦いの邪魔になるだろ」


「そうですけどね…未亜さんのように向こうから迫ってくるならともかく、私の方から同性を誘うというのはちょっと…」


 まだ良識が先に立つらしい。
 調教が足りないな、と思った大河の視線を受けてベリオはちょっと背筋を震わせた。


「心配しなくても、アタシの方からカエデを誘うよ。
 ふふふ…ア○ルビーズとか持っていこうか…」


 妖しく微笑むブラックパピヨン。
 どうでもいいが、交互に出てくるとややこしくて仕方がない。

 カエデは何気に後ろが好きだったりする。
 初体験で目覚めてしまったのか、あるいは故郷の風習で恋人との行為=後ろというのが確定してしまっているのか…。
 ちなみに、腸内洗浄とかは一緒に風呂に入る時に未亜がやっている。
 流石に誰も居ない時にしかできないので、毎晩ソッチを可愛がってもらう事はできない。

 そうやって和気藹々としている救世主クラスに、そそくさと近付く影があった。
 小柄で視線をあちこちに飛ばし、いかにも小物といった風情である。


「おい、そこの貴様ら。
 こんなところで何をしている」


「あん?」


 かけられた声に、大河達が振り返る。
 そこに居たのは、初老の男だった。
 豪華な服に見劣りする顔つきと表情、そして挙動。
 即座に大河のみならずリリィとルビナス、カエデは小悪党だと判断した。
 リリィは持ち前の気性から、ルビナスはその観察力から、そしてカエデは主の性質を見極める為に培われたカンから。
 満場一致で、コイツの相手をしても意味がないと告げている。

 小悪党はむやみやたらと装飾品が散りばめられている服を見せ付けるように胸を張って見せた。
 しかしそれすらどこかオドオドした雰囲気が拭えない。


「ここは庶民が入れるような場所ではないぞ。
 王宮の威光を汚しおって、さっさと出て行くがいい!
 それとも何か、警備兵に捕らえられて牢獄に放り込まれるのがいいか?」


 威圧しているつもりなのだろうか。
 白けた目で男を見る未亜。
 その目が気に入らなかったのか、男は未亜を睨みつけた。
 しかし未亜は全く動じない。
 召喚器の力を借りたとはいえ、未亜とて命がけの戦いや実戦を潜り抜けてきたのだ。
 張子の虎どころか、折り紙のネズミに睨みつけられた所で萎縮するほどヤワではない。


「くっ、何だその目はぁ!」


 大方、権威を見せびらかして脅える様を楽しもうとでも思っていたのだろう。
 思い通りに行かない事に苛立った男は、愚かにも拳を振り上げてしまった。
 よりにもよって未亜を相手に。

 次の瞬間、男の動きが止まる。
 無論本人の意思ではない。
 未亜を殴ろうとしたベクトルが急停止によって、本人に跳ね返る。


「ご苦労、ナナシ」


「お安い御用ですの」


 見れば、男の影に一本の短剣が突き刺さっている。
 ナナシの機能の一つ、影縫いである。


「き、貴様ら、さては賊…!?」


 なおも喚き散らそうとする男だが、その言葉は強制的に止められた。
 首筋に冷たい感触。
 両側から強い圧迫感。
 目の前には鋭く光る鏃。
 さらに強い殺気が向けられている。
 ついでに、何故かリコの髪の毛が男に向けられていた…久々にレーザーを撃つ気だろうか?


「ひ、ヒィ!」


 腰が抜けたが、どうやらナナシの影縫いは物理的に動きを固定するものらしい。
 全く力が入らないのに、姿勢は変らなかった。


「ったく…三下はボキャブラリーまで貧困なんだなぁ…」


「仕方ないよお兄ちゃん。
 こんなポッと出の立ち絵もない、言ってみれば背景の端っこに居るようなヒトの台詞がそんなに複雑だったりする訳ないでしょ」


「同感ね。
 そんなの記憶容量とかのムダよ」


「全くでござるな。
 脅すにしても、もう少し捻れば出番も増えたでござろうに…」


「ちなみに貴方の出番はもうありません」


「読者の皆様に、すわ『足を引っ張る無能キャラの登場か』と思われてしまったじゃないですか。
 最初から出て来ないだけの慎みが…あったらこんな恥知らずな事はしませんね」


「この際だから、もうちょっと影縫いを強力にしてみるですの。
 心の一方みたいに、呼吸が出来なくなるかもしれないですのよ」


 口々にぼやく救世主候補達。
 男は恐怖のあまり、影縫いを強化するまでもなく呼吸を忘れている。
 放っておけば、酸欠でくたばってくれるだろう。


「で、どうする?
 このままサクっと行っちまうか?」


「こんなヒト殺しても、後が面倒なだけじゃないかなぁ」


「拙者、その辺に頭から埋めたほうがいいと思案するでござる」


「それなら根性を叩きなおすために、最前線に送って戦わせた方が。
 別に死んでも問題ありませんし」


 ベリオとカエデが、そこはかとなく過激な事を仰っている。
 というか、アンタ本当に僧侶なのかベリオ。
 かつての面影が、見る影もない…。


パンパン!


「はいはいそこまでだ。
 大河、刃を引け」


「このまま引いたら、喉元がバッサリ切れるけど?」


「やってもいいが、今ここで斬ったら血で汚れたり失禁したりするかもしれん。
 そんな汚物は見たくないぞ」


 唐突に手を叩く音が響き、クレアの声がかけられた。
 振り返りもせずに、大河は刃を男の喉に密着させる。
 もう失神寸前である。

 ふん、と面白くも無さそうに鼻で笑って、大河はトレイターを引いた。
 それと同時に、リリィとベリオの魔力、カエデの殺気が治まる。
 未亜もジャスティを下ろした。


「くく、く、くれあさま…このものたちは…」


「ん? こやつらは救世主候補生達だ。
 よりもよってこやつ等に喧嘩を売るとは…。
 貴様には処罰が足りなかったようだな。
 温情を与えて、地位を取り上げるだけで済ませたのが間違いだったようだ。
 地位がなければ何もできまいと思っていたが、弱いもの苛めは出来る…つもりだったようだな」


「き、救世主…!?」


 男は自分の前に立つ者達が誰なのか、ようやく理解した。
 その戦闘能力については実感がなかったが、大河達はクレア直属の親衛隊と言ってもいい。
 その親衛隊にちょっかいを出す事は、取りも直さずクレアに敵対する事に等しい。


「貴様の一切の財を没収し、向こう10年の強制労働を申し付ける。
 逃げるならば逃げるがいい、貴様一人で、地位も後ろ盾もなく生きていけるのならば、の話だがな」


 クレアは一切の容赦がない。
 もういいだろう、と判断してナナシが影縫いを解く。
 男はガックリと膝をついた。
 しかし誰一人同情しない。
 これから先、この男のような存在は邪魔なだけだ。

 もはや見向きもせずに、クレアは後ろを振り返った。


「ルビナス、もういいぞ。
 記録ご苦労だった」


「いいわよ、ダーリンの妹は私の義妹だもの。
 …棒姉妹でもあるしね♪」


 微妙にお下劣な事を言いつつ、ルビナスが柱の影から現れた。
 先ほどから見ないと思っていたら、クレアを呼びに行っていたようだ。
 男がちょっかいを出してきた時点で、ルビナスは内蔵レーダーによってクレアの接近を感知していた。
 それならば、とこっそりクレアを引っ張ってきて、男の行動を幻影石に記録していたのである。
 わざわざ助けに入らなくても、どうこうされるような面子ではない。

 クレアは大河達に向けて仁王立ちする。


「選定姫クレシーダ・バーンフリートである!
 救世主クラス一同及びルビナス・フローリアス、はるばるご苦労。
 ついては翌日からの予定の説明のため、作戦会議室に向かう。
 寄り道をせずについて来い!」


「「「「「「「「 ハッ! 」」」」」」」


 公私のけじめをつけるのか、堂々と言い放つクレア。
 大河達は直立して敬礼する。
 クレアは満足そうに頷き、踵を反す。
 が、歩き出す前にまだ項垂れていた男に目をやった。


「お前はもう地位も財もなく、お前がよく言っていた『下賎な庶民ども』と同じ立場にある。
 『下賎な庶民』とやらは、王宮に入る事は出来ないのだろう?
 さっさと出て行く事だな。
 お前が居ると、『下賎な庶民』が居るよりもずっと王宮の権威が汚されるというものだ。
 さっさと行け、ツーコーニ・N・ハイケイ卿。
 いや、お家を取り潰したのだから、こう呼ぶべきか?
 ワキヤ・クと」


「…通行人・背景、脇役…ね。
 まさにチョイキャラになるべくしてなったんだな、コイツは」


「いいんですか? さっきのヒト」


「構わん。
 元々跡継ぎが他にいないというだけで頭首になったヤツでな。
 放っておけば財を食いつぶすわ余罪を山ほど振りまくわで、議会でも本格的に追放されたばかりだ。
 性格は、まぁ見ての通りだな。
 消えた所で、誰の腹も財布も痛みはせん」


 極端な話、議会は馴れ合いと利権争いで動いている。
 無論そうではない人物も居るし、最近ではクレアとアザリンの政策などで随分マシになってきた。
 だが先程の男は、そうなる以前…汚職やら何やらが横行していた時でさえ、その存在は見向きもされなかった。
 要するに、味方にするのはおろか捨石にさえならない存在だったのだ。


「そんなヤツが名目上とはいえ、お偉いさんになってるんだよなぁ…」


「頭の痛い事だ……。
 それはともかく、感謝するぞ大河。
 お前が渡してくれた資料は、とても有効な武器となってくれた。
 今では物資の流れなどは9割方こちらでコントロール出来る」


「…大河、アンタ一体なにしたのよ…」


 サラっと聞き逃せない事を言ってのけるクレア。
 リリィのみならず、ベリオと未亜も慄いたような顔をしている。


「まぁ、その辺はその内ゆっくり話すとしよう。
 今はとにかく明日からの作戦の説明だ。

 ……時に大河、一つ聞きたいのだが…お主、以前に…そう、アヴァターに救世主として召喚される前に、私と会った事はないか?」


「はぁ?
 そりゃ新手のナンパか?」


「お兄ちゃんをナンパしてどーするのよ、もう釣れてるのに」


 むしろクレアが釣られたのだと思うが。
 ルビナスその他から大河に向けて冷たいよーな逆に灼熱のマグマのよーなアイビームが注がれているのはともかくとして、クレアは何やら真剣な表情である。

 未亜は大河をチラっと見た。
 アヴァターに召喚される前にクレアに会った可能性は?
 普通に考えれば皆無だろう。
 アヴァターとは縁もゆかりも無い地球で生きていたのだから、接点なぞある訳が無い。
 しかし、大河はネットワークに所属して色々な世界を渡り歩いていたそうだ。
 もし接点があるとすればそこだろう。
 が、確かアヴァターにはネットワークとやらも関与していない、と言っていたような気がする。
 とすると、考えられるのは…。


「大河さんの事ですから、好みの女性に会うためなら次元の壁を越えるくらいはやりそうです」


「ああ、そりゃそーだ。
 ひょっとして大河がアヴァターに召喚されたのは、事故ではなくて美女のニオイを嗅ぎつけたからではないのか?
 とっさに未亜に飛びついてきたとか」


 リコの呟きにポンと手を打ち合わせるクレア。
 ルビナスは笑っているが、リリィは真剣な顔で考え込んでいる。
 ひょっとしたら、という思いが否定しきれないらしい。


「それで、ダーリンと会ってるんじゃないかって、どうしてなの?」


「うむ…大分前に事になるのだが、私は一人で王宮を抜け出した事がある…今でもよく抜け出しているが。
 そこで何処かの草原に迷い込んでな、とてつもなく巨大な魔物に襲われたのだ」


「巨大って、どのくらいですの?」


「さぁな。
 何せ幼い頃だったし、記憶が誇張されていたり自分に比べて大きく見えただけかもしれん。
 とにかく、魔物に襲われて冗談抜きで死ぬ、と思った時の事だ。
 唐突に一人の男が現れ、その魔物を吹き飛ばしてのけたのだ。
 しかも…その男、召喚器を使っておった」


「男…って、師匠以外にも男性の救世主候補がいるのでござるか!?」


 驚愕するカエデ達。
 しかし大河だけは冷静だ。


「その武器が召喚器だと解ったのは何でだ?」


「まず非常識な破壊力。
 それから次々に姿を変える武器など、アヴァター中を探してもまず見つからん。
 何より、その剣は男が呼んだら虚空から突如出現してきた。
 これだけ条件が揃えば、召喚器ではないかと思うだろう?
 夢見がちな年頃だったしな」


「……どこかで聞いたような性能ですね」


 ベリオの目が大河に向かっている。
 破壊力は勿論の事、召喚器を文字通り召喚できる能力。
 これは救世主クラスではナナシ・ルビナス・リリィ・リコを除けば全員持っている。
 恐らく歴代の救世主候補も同じだっただろう。
 しかし、次々に姿を変える召喚器とは…。


「師匠…心当たりはないのでござるか?」


「正直に白状しなさい。
 いくらアンタでも、助けた事を恩に着せて幼いクレアにナニした、なんて事はなかったでしょう?
 信じてあげるから」


 信じてあげる、などと言いつつもリリィと未亜は殺気を放っていたりする。
 慌ててルビナスの後ろに隠れる大河。
 気持ちは解らなくもない。


「いや待て、生憎心当たりはないぞ。
 大体それって何年前だ?
 その男の年齢、何歳ぐらいだと思う?」


「う〜ん…少なくとも5年以上前だ。
 思うに……今の大河と同じくらいの年齢ではなかったか…」


「そ、そんなの俺の訳ないだろ…。
 どうして5年も前から俺の姿が変らないと思うんだよ」


 大河の尤もな言い分に、未亜達も殺気を収める。
 だがまだ未亜はちょっぴり疑っていたりする。
 ネットワークの仕事をしている時は、歳をとらないと聞いた。
 その間に何かあったのかと疑っているのである。


「ま、それもそうか…。
 ひょっとしたら次元断層を超えた際の時間移動とかも考えたのだが、それはちょっと行きすぎだしな。
 妙な事を聞いたな、許せ」


「…ひょっとしてクレア様…ちゃん、その男の人って初恋の……?」


「うっ…うう、まぁ…そういう事になるのか…。
 その男が居たから、私は救世主の存在を信じるようになったのだし…」


 ベリオの興味津々の問いかけに、頬を赤らめて視線を逸らしながら頷く。
 キラーンと光る目が多数。
 そして大河は微妙に不機嫌になった。
 どうやらヤキモチを妬いているらしい。
 相手が自分の伴侶の一人とはいえ、この男にそんな資格があるかどうかはさておいて。


「へぇ、それは興味深いわね。
 もしその人が現れたら、大河との間で揺れる事になるのかしら?」


「しかも大河君とその人から、同時に好意を寄せられたりして。

 自分を巡って争う二人のオトコ…これは結構来るシチュエーションだねぇ」


「オンナのロマンですの!
 ダーリンはナナシ達でゆっくりたっぷり愛してあげるから、クレアちゃんはそっち行ってもいいですの。
 ライバルが減るのはいい事ですのよ」


 リリィ、ベリオ&ブラックパピヨン、さらにナナシ。
 劣勢に追い込まれたクレアに、この連中を退ける根性などあるはずがない。
 時々声を荒げながらも、追求を避けようと足を速める。

 一方、大河とルビナスは真剣な顔で考え込んでいる。


「…ダーリン、本当に心当たりはないのね?
 となると、これはちょっとややこしい事になるかも…」


「ああ、全く心当たりはない。
 …俺以外の、しかも似たような性質を持つ召喚器を使う男性救世主候補…キャラが被るじゃん!」


「そっちでござるか!?
 …さて、ちゃんと突っ込んだ事だし、リコ殿の見解はどうでござる?」


 どうにも御座なりなツッコミを入れて、カエデはリコに話を振る。
 大河がちょっといじけたが、誰も構わなかった。
 だったら落ち込んでみても面白くない。
 大河はすぐに通常モードに戻る。

 リコは少し考えて答えを返した。


「私の知る限り…召喚器というのは、基本的に一つの形態を維持しています。
 剣なら剣、弓なら弓と矢、手甲なら手甲。
 大河さんのトレイターのように、複数の姿を持つ召喚器は非常に珍しい…いえ、その形体の数を考えれば、空前と言ってもいいでしょう。
 多くて二つの姿が限界ですから…。
 その珍しい召喚器を持った、更に珍しい男性救世主候補…。
 これだけの条件が揃えば、クレアさんの見た救世主候補というのは大河さんだと思って正解でしょう」


「でも俺、心当たりは本当に…………?」


 そこまで言って、大河はふと引っ掛かりを覚えた。
 別にクレアと前に会った事を思い出した、という訳ではない。
 何かを思い出そうとしているらしい大河を見て、ルビナスはその頭をポンと叩いた。


「無理に思い出さない方がいいんじゃないの?
 記憶がどこで捻れて捏造されるか解らないわよ。
 それに、クレアちゃんが見たのはダーリンと同じ程度の年齢のヒトだったんでしょ?
 だったら…」


「師匠とクレア殿が会ったのは、それほど過去の事ではない…という事でござるな」


「あるいは未来の事か、ですね」


 ボソリと付け足したリコに、カエデが目を向ける。
 未来の事、と言っても、クレアがその救世主に会ったのは何年も前である。
 辻褄が合わないではないか。
 疑問符を浮かべているカエデに、ルビナスが軽い講義をする。


「時間の流れは、一定とは限らないのよ。
 何かの拍子にタイムスリップしちゃう事だって、皆無じゃないの。
 もしこの先、ダーリンがタイムスリップして5年前のクレアちゃんの所に飛んだとすれば、辻褄が合うでしょう?
 でも、それだと…」


 言葉を濁すルビナス。
 カエデは少し考えて、ルビナスが何を恐れているのか思い当たった。


「飛ばされた後、師匠はどうなるのでござるか…!?」


「解らないわ。
 同じように時間跳躍で戻ってこれるのか、はたまた5年以上の歳月を別人として過すのか。
 仮に後者だとしたら、今も未来のダーリンはこの世界に居ると考えるのが自然よ。
 そして“破滅“との戦いに備えている…」


「しかし、それでは不都合が生じます。
 同じ時空に同一人物が存在していると、互いに何かしらの影響が出る…。
 知らない筈の知識を知っていたり、未来の大河さんの意識が現在の大河さんの意識に影響を与え、その結果大河さんは自分の意に沿わない行動をしてしまったり…。
 一番ありそうなのは、その意識が融合してしまう事です。
 そうなると最悪の場合、互いの人格と記憶その他が溶け合って廃人になる事も…」


 それを聞いてカエデは硬直し、すぐに大河を振り返る。


「し、師匠!」


「落ち着け、俺は平気だ。
 リコ、ルビナス、仮に未来の俺が今の世界に居るとして、それでもお互いに影響を及ぼさない可能性はあるか?」


 リコは少し考えて肩を竦めた。
 こういった事は専門外らしい。

 一方、ルビナスは複雑な表情をする。


「…見解の相違…というか、気に入らない価値観に基づけばね。
 全てが仕組まれた事…ヒトの手による仕掛けじゃなくて、もっと大きな流れ…予め何かしらの理由で決まっていた事ならば、世界にとっても同じ人物が2人居る事は不自然じゃないわ。
 多分、そのまま容認されるでしょうね…。
 でも、正直これは考えたくないわ」


「何故でござるか?」


「言ったでしょう?
 全てが仕組まれた事、と…。
 私達は、その手の上で踊っているという事なのよ?
 まぁ、それは人知の及ばない領域での事だとしても、当面の問題は…これからそう遠くない内に、ダーリンは…」


「時間跳躍をする、という事でござるか!?
 それが確定していると!?」


 その後の大河がどうなるかは、今の彼女達にも想像がつかない。


「歴史の復元力とか、そういう概念があるんだけど…。
 それに従って考えると、これはもう避けられないわ。
 どこでどうタイムスリップするのかも予想がつかない。
 極端な話、昼寝をしていたら唐突に発生した時空の歪みに飲み込まれる、なんて事も考えられるの。
 どんなに低確率な事象でも、ただ一粒の可能性を実現させる…それが歴史の復元力って事よ」


 絶句するカエデ。
 その頭を、大河は軽く叩いた。


「そう悲観するなって。
 本当に俺がタイムスリップして、そのまま戻って来れるなら問題なし。
 戻ってこれなかったとしても、俺がそう簡単にはくたばらないぞ。
 むしろ戦力が増えたって事になるんじゃないか?
 だって俺が2人居るんだぞ」


 そう言われて、カエデは現在の大河と、アヴァターで別人として過した数年後の大河が並んでいる所を想像した。


「…イイ
 こ、これはとてもイイでござる!
 ああっ、師匠が2人…拙者はどちらを選べばいいのでござろうか!?
 悩む悩む、困った困った、困ったでござるよ〜!?
 一生にたった一人の主とはいえ、お2人は紛れもなく拙者の主その人でござる!
 どちらにも仕えれば浮気者となり、どちらかにしか仕えなくても不忠となる…拙者はどうすれば〜〜〜!
 師匠本人からして浮気者とはいえ、拙者は、拙者は〜!」


 そこはかとなく嬉しそうなカエデ。
 大河は無言でトレイターをハリセンに変化させ、とりえず一発張り飛ばした。


「大河が2人?
 何を言ってるのかしら?」


「お兄ちゃんが2人……だめだめ、魅力的だけどまたハーレムの人数が増えちゃう…」


「それ以前に、“破滅”なんかよりもよっぽど恐ろしい脅威になると思うんですけどね…」


「…あの者はいつもこうなのか?」


 色恋沙汰の話を中断して、カエデを痛いヒトを見る目で見ている4人がいた。
 クレアの話が一段落したのを見計らい、大河はクレアに声をかける。
 また初恋話を蒸し返されるのではないかと思っていたクレアには、有難い助けだったかもしれない。
 …が、これによって仕事が増えるのをクレアは知らなかった。


「あー、クレア、ちょっと調べてほしい事があるんだが」


「何だ?」


「ここと学園の間に、フィロソフィーっていう名前の一族の屋敷がある。
 そこにアルディアっていう子が居るはずなんだ」


 アルディアの名前を聞き、リリィはビクリと体を震わせた。
 思わず何か言いそうになったのを、横から未亜が口を塞ぐ。


「そのアルディアとやらの何を調べろというのだ?
 他のオンナを口説く手伝いなぞ、私はせんぞ」


「流石にそこまで無謀な事はしない…セルの思い人だしな。
 それはともかく、先日の遠征に関しての報告は受けてるよな?
 エレカの事は?」


「一応聞いた」


「なら話が早い。
 そのアルディアって子とエレカが、おもいっきりソックリさんなんだ。
 十中八九、何か関係がある。
 正直心苦しいが、何とか調べられないか?
 出来れば気付かれずに。
 俺達が遠征に行っている時には、パナマ州で何かの手伝いをしていたと言ってるんだが」


 ふむ、とクレアは腕を組んで虚空を見た。
 エレカ・セイヴンについては、クレアは“破滅”の民だと思っている。
 しかしその足取りは辿る事が出来ず、入ってくるのは容姿に関する情報が幾つかのみ。

 実を言うと、名前こそ違うものの、似たような人物の目撃情報はそこかしこで見られているのだ。
 主に魔物との戦いが激しい区域に現れ、何かしらの混乱や被害をもたらして消えていく。
 一度など最高クラスの諜報員が遭遇し、こっそり尾行したものの5分もしない内に見失ってしまった。
 しかも隠れる場所の無い、まっ平らな草原のど真ん中で。


「解った、情報感謝する。
 そして仕事を増やしてくれた事に皮肉を込めて礼を言おう。
 いや、実を言うと私もそのような人物を探していたのだ。
 こちらにも色々あってな」


「色々?
 まさかエレカが、他にも敵対行動を!?」


 リリィが未亜の手を振り解き、クレアに詰め寄った。
 しかし驚きもせずに、クレアは平然としている。


「エレカ・セイヴンかどうかはまだ解らん。
 だが、色々と関連性がありそうな人物があちこちで見かけられているのだ。
 そのアルディアという娘、何かの手掛かりになるかもしれん」


 リリィは暫く考えて引き下がった。
 自分の早とちりで迷惑をかけてしまったアルディア達を、また疑うようなマネをしていると思うと申し訳ない気分になる。
 しかしアルディアがエレカと無関係とは、どうしても思えない。
 ここは黙って調査の結果を待つ事にした。

 リリィが大人しくなったのを見て、クレアは少し足を速めた。


「さて、色々あったが、とにかく明日の説明をさせてもらう。
 …ここだ。
 ちゃんと真面目に聞くようにな」


 言ってもムダかな、と思いつつもクレアは扉を開けた。
 そこは床に大きな地図が埋め込まれていて、色々な資料が詰め込まれている部屋である。
 仕事が終わっていれば、アザリンが既に来ているはずだ。


「アザリン、居るか?」


「む、クレア…と、そなたらが救世主クラスか」


 部屋の中から、凛とした少女の声が聞こえる。
 大河達はクレアに続いて部屋に入った。

 周囲を見回していた大河に声がかけられる。
 特に威圧的な声でもないのに、大河のみならず未亜達も自然と背筋を伸ばした。


「そなたが当真大河か?
 以前は面白い出し物を見せてもらった。
 …直接会うのは初めてじゃな。
 改めて自己紹介しよう。

 朕がホワイトカーパス州代表、アザリン・ド・エル・クラン・ライクンである!」


 赤毛の少女…アザリンは、大きな杖を片手に名乗りを上げた。




ちわーっす、時守です。
最近プログラミングでゲーム作ってます。
あんまり大した物は作れないんですけど、仮にもプログラマーを目指す以上、ミニゲームの一つくらいは自分で作っておきたいなーと思いまして。
難航してますが、意外と上手く行ってます(どっちやねん)。

最近妙に筆が進みます。
電波神がこっちを向いてくれているのでしょーか?

それではレス返しです!


2.蓮葉 零士様
おお、流石はマッドを目指すお方!
料理に含まれている成分まで知っておられるとは…。
ちなみに時守はとある推理小説で見かけた一文をそのまま使ってみただけだったりします。

アルディアの描写はどうでしたでしょうか?
彼女がエレカの正体だと言われていますが、自分でも話がややこしくなってきたなーと思っています。
さて、どうオチをつけるか…。


3.博仏様
前回の未亜は、久々に狙ってみました。
一応メインヒロイン扱いだったし、ここ最近は色物キャラになりきっていたのでw

はぁ、話がややこしくなってきましたね…どう風呂敷を畳んだものか…。


4.アレス=アンバー様
ん〜、大河の世界はアヴァターに連なる世界郡には無い、というマイ設定なので、実際には和風の文化に近い文化の世界郡、でしょうか。
文化形態からしてこの辺に大河の世界があるはずだけど、全く見つからない…という状態ですね。
実際には全く違った場所にあるわけですが。

ロベリア捕縛……よし、やろう!
やはり亀甲ですか…他に縛り方ってあんまり知らないんですよね。
ここは一つ、ソッチ系のサイトでも探してみようかなぁ…。


5.皇 翠輝様
途中から苦し紛れになってましたけどねw
ジュウケイの元ネタ、わかりましたか…。
不気味な爺さん・世話役・暗殺者っぽいと揃えば、あの漫画のファンは何かしら感じるかと思ったんですが…。
ジェネレーションギャップかなぁ…ラオウ様は今でも有名すぎるほど有名なのに。
…格が違うか。


6.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>

オリジナルだけに、設定が矛盾しそうで厄介なのですが…行き当たりばったりで何とかしてみます。

セルのホワイトカーパス行きは単純に成績で決められた事です。
ミュリエルも特に何かを考えていたわけではありません。

イムは今回出番が殆ど無かったですが、漫画コンビのカラミは次回です。


7.3×3EVIL様
高校生になってないのに飲みですかい(汗)
飲みすぎると地獄ですよね…一回酔い潰れて迷惑をかけ、次の日は丸一日寝て吐いて動けず、二度と醜態を晒すまいと心に決めたものです。

大河の考えている事は、ホワイトカーパスの戦いが本番になる寸前辺りに披露する予定です。


8.根無し草様
あらら、読まれてましたか。
多分、原作のED後の未亜も似たような思いをしたんでしょうね。
その割には知れ渡っていたような気もしますが…。

大河とホワイトカーパスの邪神との関係は、実を言うとずっと前にちょこっと描写していたりします。
予想が出来てもだんまりの方向でお願いしますw

足のビリビリで悶えるリリィがお気に召しましたか。
アレって実際に他人にやると楽しいしなぁ…。


9.試作弐号機様
時守はスーパーロボットとリアルロボットの区別のつけ方が解りませぬ。
個人的に、アニメーションシーンで口が動くのがスーパーロボットだと思ってます。
…デビルガンダムはスーパーロボットですか?

まぁ、ミュリエルにも色々あったんでしょう。
何しろ純情だったミュリエルが、今じゃああなってるんですし…。


10.黄色の13様
結構ややこしい全体図を作っているので、自分でも謎の回答が間違っていないか不安ですw
何かあっても、なんとか広い心で勘弁してください!


11.米田鷹雄(管理人)様
いつもお仕事ご苦労様です<m(__)m>


12.カシス・ユウ・シンクレア様
個人面接は先日の選考を受かってからですけどね…ああ、自信ない…。
……よし、開き直り完了!

首都防衛線は大丈夫…と言っても、あの手のキャラを本気でアテにすると痛い目を見ますぜ?
絶対にどこかで暴走して、護衛地点以外の場所にとばっちりが…w

うーん、例え大切な人が居なくなっても、それで世界を滅ぼす理由にはならないとは思いますが…ダウニーって、大河の裏側みたいな所がありますね。
未亜ルートでキレてた大河も、何処となくダウニーの行動原理に似たような印象を受けました。
ダウニーにとっては、「全て滅べば悪も存在しない」の方が、「悪もあるが世界も滅びない」よりも幾らかマシに思えたのかもしれません。
「何もしないよりもマシ」を認めるなら、「何もしないほうがマシ」な状況もある事を認めなければいけませんから。

あんだけ沢山の女性に好かれて刺されていないってのは、リアルじゃまず在り得ないでしょうねぇ…。
まずはその辺から真似ないと、命に関わりますw


13.文駆様
邪神との関係は、そう遠くない内に明かされる予定ですのでお楽しみに…。
………予定は未定、って言葉は素晴らしいと思いませんか?

生憎と、同人少女は当分出番がありませんね。
舞台が学園から離れてしまいますし…。

リコに和服を着せてみたいと思うのは、きっと我々だけじゃないはずです!
和風人形みたいで可愛いだろうなぁ…。


14.竜神帝様
ラスボスとの…ですか。
微妙な関係ですね……一応敵なのは間違いないと思いますが。


15.神曲様
なるほど、参考になりました。

ルビナスはマッド属性ですよ。
そう、実験をしては度々大爆発を起こし、しかも自分は煤に塗れる程度で全くの無傷、しかも大抵の場合失敗の原因は些細な計算ミスや材料の入れ忘れという。
マッドは密かにドジっ娘属性を内包しているのですよ、きっと。

戻るのか…と聞かれると、そう言えばそうですね…。
ハーレムを放置して行く訳がないし、よくよく考えてみると元の世界に戻るメリットってないなぁ…。


16.悠真様
ご期待に添えられるかどうかは自信がありませんが、とにかく最後まで行ってみようと思います。
セルだけじゃなくて、傭兵科も居ますからねぇ…しかもホワイトカーパスにはOBもw

表現…と言っても、ロクに下調べもせずに書いたんですが…。
確かるろうに剣心を読み返していて、丁度賭場のシーンが…。


17.K・K様
オギャン雄!
…おぎゃんおすと入力して変換したら、即座にカタカナで帰ってくるようになりました。
偉大なり学習機能。

最近未亜のヒロインっぽいシーンが減っていましたので、やはりここは彼女だろうと。

リリィが帰ってきたら、部屋の中にナニかの匂いがするとか、或いは遠くの声が聞こえる機械が山のように…?
いえいえ、彼女も良識は持ってますよ………多分。

そうか…傭兵達もマジバトルさせなきゃいけないんですねぇ…。
流石に全員生き残るって事は難しいし…。
死人が出るシーンは勘弁してほしいんですが…書かないわけにもいきません…。
とにかく頑張ってみます。

では、オギャンバイ!


18.なな月様
同じく、就活そっちのけになりつつある時守です。
先日説明会の予約をしていたのをすっかり忘れていて、慌ててキャンセルした粗忽者。
あはは、趣味に夢中になってました。

世界から移動したら、その世界に居た記憶や経歴が一切消えてしまう、ってのもあったような…。

一応メインヒロインは未亜という予定で始めていましたから、時々はこういう事もしないと…。
白も黒もSも百合も未亜ではありますけど、文字通り純白もまだ持ってる…と思います、多分。

セルは…別の意味で苦しい立場になるかもしれません。
予定は未定ですが。


19.アルカンシェル様
世界の謎…というか、一本の線が枝分かれしてこんがらがってるようなイメージなんですよ。
時々本当にこんがらがって解けなくなりますが。

ミュリエルて結構多芸そうですから、踊りの一つくらい踊れても不思議じゃないと思うんですけどねぇ?
種のガングロ君も日舞を踊れると言ってますし。

ん〜、アルディアの事はまだノーコメントです。
今考えているのがちょっと読みやすいヤツなので、今後思いついたらそっちに変更するかもしれませんし。

最後に…大河にとって愛とは、後悔しない事です。
だから未亜が893に目覚めようが洒落にならないオシオキをされようが後悔しません。
一応は。

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