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「これが私の生きる道!オーブだらだら編(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-02-26 23:09/2006-02-27 02:13)
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俺達、ザフト軍カザマ隊の面々がオーブに滞在し
始めてから、1週間が過ぎた。
始めは、新しい環境に戸惑う事が多かったよう
だが、今はもうすっかり慣れたみたいだ。
朝、モルゲンレーテ社宅の中の一軒、カザマ邸から
物語が始まる。


(朝8時、カザマ邸一階食堂)

特殊装甲部隊の朝はそれほど早くない。
もう1週間もすれば、連日24時間ぶっ続けの即時
対応訓練が始まるが、基本的には朝9時〜夜6時が
勤務時間であった。

 「ふあ、おはよう」

俺が朝の挨拶をすると。

 「ああ、おはよう」

 「おはよう」 

 「おはようございます」

 「おはよう兄貴」

 「おはよう、お兄さん」

 「ヨシヒロさん、おはようございます」

 「ヨシヒロ、おはよう」

全員が挨拶を返してくれる。
今のカザマ邸は多少、過密状態だ。
両親、俺、妹達、ステラ、ラクス、フレイ。
結局、フレイは使用人がオロファトに避難した
うえに、広大な邸宅に1人ではつらいという話に
なったので、家に居候の状態になっている。
この件では、親父が彼女の父親であるアルスター
外務次官と電話で何かを相談していたので、
特に問題は無いだろう。
親父とアルスター外務次官にどんな繋がりが
あるのかは分からなかったが、どうも日本時代に
多少の面識があったようだ。
自分の父親ながら、顔の広いオッサンである。
台所では、ステラが何かを一生懸命作っている。
電子オーブンが動いていて、「お菓子100選」
の料理本が開いているところを見ると、毎日恒例
のあれであろう。
親父は椅子に座って新聞を読んでいるが、小刻みに
震えていた。

 「ステラ、今日は何を作っているの?」

 「うんとねぇ、今日はスコーンを焼いて
  いるの」

 「へえ、それはやっぱり・・・」

 「シンが食べたいんだって」

瞬間、紙が裂ける音がした。
親父が新聞紙を真っ二つにしたのだ。
まだ、俺読んでいないのに・・・。
ステラは毎日甲斐甲斐しくお菓子を作っている
のだ。
俺もおやつの時間に貰っているが、好みがあきらか
にシン向けになっている。
俺が一度、和菓子をリクエストしたのだが、難しい
からと断られてしまった。
確かに和菓子は難しいのだが、その時はショックを
隠せなかった。

 「ステラは同年代の異性の友達が出来て嬉しいの 
  ですよ。恋愛感情はありません」

ラクスはそう言ってシンを庇っているが、俺と親父
は爆発寸前だ。

 「もう一段、特訓のレベルを上げるか」

 「ヨシヒロさん、これ以上やると倒れてしまい
  ますよ」

フレイは今日も止め役に回る。

 「いや、ステラのおやつを余裕で食べているん
  だ。まだ甘いはずだ」

この1週間、俺は志願兵達を徹底的にしごいて
いた。
志願兵の技量を上げる事が出来て、シンの野望を
粉砕できる一石二鳥のいい手段だったのだが、
シンは厳しい訓練の後でも余裕で大量の飯を
食らい、おやつの時間にステラの手作りお菓子を
美味しそうに食べていた。
そして、志願兵達は俺のシゴキを恨むどころか、
自分達の為に真剣に向かい合ってくれていると、
俺を慕ってくれるようになっていた。

 「真相を知らないほうが彼らの為ですわね」

これはラクスの感想だ。 


朝9時、仮設司令部に出勤すると、カガリとキサカ
准将が書類の整理をしていた。

 「おはよう、キサカさん、カガリちゃん」

 「ああ、おはようカザマ」

「おはよう」

キサカさんは先日、准将に昇進していた。
ナンバー2とナンバー3が同じ階級だとやりにくい
であろうという軍部の判断らしい。カガリのお守り
代という噂もあるが。

 「カガリちゃん、ちゃんと書類見てる?
  一昨日のあれは無しだよ」

俺が釘を刺す。
一昨日、頭は悪くないのだが、細かい仕事が苦手な
カガリは書類の処理をレイナに押し付けて
モビルスーツの訓練に行ってしまい、レイナが適当
にサインした書類のせいで、軍本部に呼び出されて
しまったのだ。

 「俺はいいんだけど、キサカさんが一番大変なん
  だから、書類のチェックを怠ってはダメだよ」

 「わかっているさ。レイナは頭がいいから大丈夫
  だと思ったんだ」

 「あのね、レイナは最近までただの学生だった
  の。補助の仕事以外させちゃダメ!」

 「キサカが2人になったみたいだ」

 「ずい分な言い方だな。カガリ」

キサカさんが不機嫌になる。

 「とにかく!書類は自分で処理する事」

 「わかったよ」

俺は自分の椅子に座り、書類の整理を始めた。
時代が進んでも重要な書類は全て紙である。
パソコンに入れておくと、ハッカーに盗まれて
しまう事が多いからだ。
ちなみに、キラはそういう事が得意らしい。

 「ラクス、これは資材部に回しておいて」

 「わかりました」

 「フレイ、新しく入隊した傭兵連中の必要書類
  を人事部から貰ってきて」

 「わかりました。カザマ一佐」

いくら軍隊でも、通常業務は一般の会社と
それほど変わらない。 
1時間ほどで書類は片付き、俺はラクスをフレイ
を伴って野外演習場に向かう。
自主訓練をしている志願兵の様子を見るためだ。

 「じゃあね。後はよろしく」

 「何で、そんなに早いんだ?」

 「コツは書類を溜めない事。ただ、それだけ」

以前は書類をよく溜めて、アーサーさんに押し付け
たり、シホに怒られながらやっていたが。


野外演習場で志願兵の様子を見る。
指示した基本動作を繰り返させ、なるべく素早く、
正確にやらせる。
そして、OSに不具合が出たら即座に修正させる
のだ。
地味だが、繰り返し練習すると、不思議と技量が
上がっている。
志願兵達は12人。
全員がM−1に乗り、訓練をしていた。
技量はまだまだだが、1機だけ群を抜いて動きが
良いM−1があった。

 「あいつは誰だ?」

 「シン君ですよ」

フレイが教えてくれた。
一番若いシンが一番才能がある。
このまま技量が上がれば前線に出さねばなるまい。

 「せめて、3ヶ月あればな。プラントの短期養成
  コースに放り込むという選択肢もあったんだ」 

シンには、ステラの件で多少の憤りがあるが、まだ
13歳の少年だ。
できれば、戦場に出したくない。

 「さて、そろそろ模擬戦を開始するか」

俺はBストライクを機動させてから、志願兵と模擬
戦を開始した。

 「全機でかかってきな。俺を倒せたら機数を減ら
  して再戦だ」

12機のM−1は一斉にかかってくるが、連携も
へったくれも無いので、各個撃破される。
いくら数が多くても、一度に攻撃できる機数は
2〜3機だ。
対処は非常に簡単だ。

 「お前らな、もう少し頭使えよ」 

12機を3機小隊に編成しなおしてから再び
模擬戦を再開する。
だが、まだ技量が不足しているので俺を捕らえきれ
ない。
その後、何回か惜しい場面はあったが、一度も勝利
出来ないまま模擬戦は終了した。

 「まあ、明日頑張ればいいさ。午後からは他の
  中隊のパイロット達と集団戦だ。勝てなくても
  いいから善戦しろよ」

多分、惨敗するだろうが、彼らはまだ味噌っかす
だから仕方がない。

 「さて、飯を食うか」

正午になったので、パイロット達は食堂に集まって
昼食を食べる事にする。
食堂の椅子に座ると、ステラが注文を取りにきた。
今日のステラはピンクのウェイトレス服を着て
いた。
日替わりで着る服が変わるのだ。

 「ヨシヒロ、今日は何を食べるの?」

 「豚の生姜焼き定食お願い」

 「海鮮ドリアをお願いします」

 「私はね、カルボナーラ」 

3人が注文をしていると、シンがこちらにやって
来る。

 「シン、お疲れ様。何を食べる?」

 「そうだな。塩ラーメン大盛りとカツ丼大盛り」

シンは信じられない量を注文する。
ちなみに、日本人であるシンはほとんど日本食
メニューしか注文しない。
モルゲンレーテの社員食堂のメニューに
日本食が多いのは、役員になった親父の影響で
ある。

 「そんなに食べて大丈夫か?」

俺は心配なので、聞いてみる。

 「腹減ってしょうがないんですよ」

 「午後からの集団模擬戦でゲロ吐くなよ」

 「大丈夫ですよ」

シンは俺の席で大量の飯を貪り食っている。

 「太らなくていいわね」

フレイがぽつりとつぶやいていた。


一通り食べ終わり、お茶を飲んでいると入口から
若い社員がシンを呼んでいる。

 「シン・アスカ君。妹さんが来ているよ」

入口を見ると、10歳前後の黒いロングヘアーの
少女がこちらに歩いてくる。

 「お兄ちゃん、食後のデザートを作って
  きたの」

 「シン、可愛らしい妹さんだな」

 「始めまして。マユ・アスカです」

 「俺はシンの上官のカザマだ。よろしくね
  マユちゃん」

 「副官のラクス・クラインです」

 「同じく副官のフレイ・アルスターよ」

お互いに自己紹介をしていると、仕事がひと段落
したステラがこちらにやってきた。

 「シン、今日はおやつの時間が取れないみたい
  だから今食べて」

ステラが今朝作っていたスコーンを持って
現れる。

 「あの、あなたは?」

 「私はステラ。ステラ・カザマ」

 「俺の妹なんだ」

どうやら、マユちゃんはステラが気に入らない
らしい。 

 「ステラさん、お兄ちゃんのおやつなら私が
  持ってきていますから大丈夫ですよ」

 「お兄ちゃん、クッキーを作ってきたよ。
  食べてね」

 「シンはスコーンが食べてみたいって言ってた」

ステラはマユちゃんの敵意を感じたらしく、珍しく
不機嫌だ。

 「お兄ちゃん、はい食べて」

 「シン、どうぞ」

 「いっぱいあって嬉しいな」

状況が分かっていないシンは両方を貪り食って
いた。
断言する。
こいつはバカだ。

 「よろしかったら皆さんもどうぞ」

 「みんなも食べて」

空気が重い上に、当の本人が全くわかっていない
ので、俺達はお菓子を食って気を紛らわす事に
した。

 「シン君、本当に理解してないの?」

 「フレイ、無理ですよ。まだ13歳の男の子
  なんですよ」

 「男はバカだからね」

小声でラクスとフレイが会話をしていたが、
俺にはハッキリと聞こえる。

 「ラクス、フレイ。シンは例外だ」

俺の名誉の為に小声で反論したが、無視された。
結局、マユちゃんとステラの争いはお昼休みの終了
と共に一時終息した。
だが、根本的な解決は不可能で、これから毎日2人
のいがみ合いは続くだろう。

 「マユちゃんの存在はシンの野望を妨害してくれ
  そうだな」

俺が嬉しそうにつぶやくと。

 「大人げないですよ」

再び、ラクスに言われてしまった。


午後、4つの中隊が総当りで集団模擬戦を行った。
シホの志願兵が入っている中隊は味噌っかす扱い
だが、一応参加させている。

 「今は相手の力量が理解できれば上等だ」

俺は志願兵達にそう言ってやる。

 「おい!今日の勝負を始めるぞ!」

ムラクモ・ガイが俺を見つけたらしく、挑戦状を
叩き付けてきた。
あれから俺達は毎日戦っているのだ。

 「ふん、今日こそ俺の完全勝利だ」

 「返り討ちにしてくれるわ!」

俺はBストライクにガイはブルーフレームに搭乗
して模擬戦を開始した。

 「おい、また始まったぜ」

 「今度は決着がつくのかな?」

数人の兵士が俺達の対戦を見ながら話している。
始めは好カードで人気があった模擬戦だったの
だが、毎日相撃ちで終わってしまうので飽きられて
しまったようだ。

 「ははは、今日こそお前を倒す!」

俺はビームライフルを連射する。

 「ふっ、無謀な事を考えるものだな」

ガイもビームライフルを撃ち返してくる。

 「ちっ、またエネルギー切れだ」

俺はビームサーベルを抜いて斬りかかる。

 「俺もだ。忌まわしい事だな」

ガイもビームサーベルを抜いて斬りかかってきた。
2人は何時もと同じように切り結んでいる。

 「相変わらず、雑な攻撃だな!」

俺がガイの攻撃を貶すと。 

「俺の洗練された剣技が理解出来ないとはな!」

と言い返される。 
そして、更に斬り合っていると。

 「はははははっはははは!お前達面白いぞ!」

 「「なっ何だ?」」

 「俺は今日からここで世話になるバリー・ホー
  1尉だ。俺も仲間に入れろ!勝負だ!」

突然、1機のM−1改兇乱入してきた。
このM−1もビームサーベルを抜き、戦いは三つ巴
になる。 

 「いきなり何なんだよ!オッサン」

 「俺達の勝負を邪魔するな!」

珍しく意見が合ったので、2人で別々にM−1に
斬りかかるが、思いのほか強く、攻撃が次々かわさ
れる。 

 「おい!あのオッサン強いぞ!」

 「ていうか、集団模擬戦に参加しろよ!」

俺は上官として正当な意見を述べたのだが・・・、

 「あんな軟弱な連中の相手が出来るか!」

そう言いながら、M−1は更に攻撃を続けてくる。

 「上官に逆らうな!行くぞ、ガイ!」

 「了解だ!」

2人は息を合わせて左右から斬りかかる。
ビームサーベルがM−1の両腕を切り落としたと
コンピューターが判定する。

 「おい、待て。二人同時はずるい・・・」

 「「問答無用!」」

俺とガイは同時にコックピットを突いてホー1尉を
倒す。

 「はは、やったな」

 「そうだな」

2人は融和ムードに包まれるが・・・。

 「おい!今、俺の隙を突こうとしなかったか?
  小汚い傭兵のお前ならありえそうだ!」

ガイのビームサーベルが握り直されている。 

 「ふっ、俺はお前より腕が上なんだ。そんな卑怯
  なマネをするか。(黒い死神)などと呼ばれて 
  いる腹黒いお前ならいざ知らず」

俺もビームサーベルを握り直す。 

 「まあ、いいさ。卑怯な手を使わないと勝てない
  憐れなお前を今、ここで倒す!」

 「今日こそどちらが上か分からせてやる!」

俺達は再び戦いを再開したが、やはりお互いの
コックピットを突き刺して終了してしまった。

 「ふん、明日こそ決着をつける!」

 「管理職になって鈍っているお前に出来る
  かな?」

 「あの、俺を無視しないでくれ・・・」

バリー・ホーの懇願は無視されていた。

 「だんだんあきれてきたわ」

 「あら、可愛いではありませんか」

 「ラクス、そればっかりね」

副官2人の会話は終了した。


夕方になり、俺は仮設司令部に戻り残務を処理
する。

 「今日は忙しくて訓練が出来なかった。これから
  居残りで特訓だ」

 「俺が教えようか?」

 「キラが付き合ってくれるってさ」

 「カガリちゃんはキラもお気に入りか」

 「何、言ってるんだよ!」

 「あわてると信憑性が増すね」

 「内緒に出来るか?この件を知ってるのは
  私とお父様とキラの両親だけだ」

 「秘密は守るけど、いいのそんな重要な話」

 「お前ならいいよ」

 「で、秘密って」

 「キラは私の弟なんだ」

 「えっ、マジ?」

思わず周りを見回す。
今この部屋には俺とカガリの2人きりだ。
キサカさんは所用で出かけている。

 「衝撃の事実だね。キラが王子様とは」

 「アスハ家の継承問題が複雑になるから秘密は
  厳守しろよ」

 「墓まで持っていきますよ。でも、カガリちゃん
  ってコーディネーター?」

 「いいや、ナチュラルだ」

 「ふうん、そうなんだ」

 「やけにあっさりと認めるんだな」

 「だって、俺の家族みたいなものでしょ?」

 「まあ、事情は多少複雑なんだが、そんな
  ものだ」

 「それで、姉弟のスキンシップを図っていると」

 「姉としては、先日の件などを含め、色々心配
  なんだ」

カガリがキラの心配するか?
あいつは意外としっかりしているぞ。

 「あのさ、キラはもう大丈夫だから、速く上達し
  てね。モビルスーツの操縦」

 「わっわかっているさ!」

 「アスランに習わないの?」

 「アスランは私に甘いからな」

 「それはよく分かる」

 「それで、話は変わるんだが、今日の集団模擬戦
  はどうだったんだ?」

 「アスランとイザークの中隊が僅差で一位と二位
  ニコルの中隊も悪くない。問題は志願兵を
  加えたシホの中隊だ。これからどれだけ強く
  なってくれるか」

 「梃入れは出来ないしな」

 「どうして?」

 「実は一週間後に自衛隊から24名のパイロット
  と200名のベテラン整備兵が傭兵として援軍
  に来てくれる事になったんだ。勿論、一旦退役
  しての入隊だが。そんなわけで、中隊は増え
  るが、シホの中隊はほぼそのままだ。
  自衛隊のパイロットは条件つきだからな」   

 「そうか。でもパイロットはありがたいよな。
  整備兵はもっとありがたいけど。キサカ准将
  、運動してくれたんだ。それで、条件って?」

 「自衛隊組の指揮は石原一尉が執るというのが
  条件なんだ」

 「そんなの全然オーケー。モビルスーツは?」

 「日本から輸入したセンプウだ」

 「でも、うちの師団のモビルスーツ装備数が
  100機を超えちゃうよ。他の師団とバランス
  が取れない」

 「お前がそんな事を気にするとはな。大丈夫だ。
  オーブ軍も遂に決断してな。正規の
  モビルスーツ師団にも傭兵を入隊させている
  んだ。それに、ジャンク屋からモビルスーツの
  購入も行ったり、金に糸目をつけずに生産量を
  増やしている」

 「そいつは結構」

 「それでな、明日はお前に仕事があるんだよ」

 「どんな仕事?」

 「ジャンク屋からモビルスーツを購入するんだ
  が、性能の良い機体が欲しいからな。お前に
  見極めて貰いたいんだ。お前は色々な機体に
  乗っているからな」

 「ご命令とあれば。結構、楽しみ」

 「じゃあ、明日9時にここからヘリで出かける
  から」 

 「わかったよ」

俺はカガリと別れて自宅に帰宅した。


そして、翌日。

 「では、出かけるぞ」

俺は、カガリ・フレイ・ラクスとヘリに乗り込む。

 「待って!僕も行きます」

いざ、発進という瞬間にキラがドアを開けて
乗り込んできた。   

 「あれ?キラは留守番だろ」

 「実は、新型火器のアイデアを出すように言われ
  ているのですが、いまいち良いアイデアが出な
  くて困っているんです。そこで、ジャンクでも
  見ればいいひらめきが出るかなと」

 「お前も多芸だね」

 「あくまでも、パイロットとしての意見を出す
  だけです。僕に火器の知識は、それほどあり
  ませんよ」

 「パイロットとしてか。アスラン達は何か意見
  を出したのか?」

 「ええ、でも却下されてましたよ」

 「どんなものなんだ?」

 「アスランは巨大なレールキャノンのアイデアを
  出しました。弾丸もタングステンや劣化ウラン
  を使用する本格的なものでしたが、強度計算の
  結果、数発の射撃にしか耐えられないそうで
  却下されました」

 「イザーク達は?」

 「超巨大ビーム砲のアイデアを出していました
  が、ヤマタノオロチの二番煎じとの事で却下
  です。ニコルは携帯音波兵器を提案しました
  が、実用化が難しく同じく却下されました。
  最後にシホはプラント製のジャスティスに装備
  されていたビームブーメランの復活を求めて
  いましたが、ビームライフルを撃った方が早い
  と言われて却下です」

 「・・・・・・。ぱっとしない話だね」

 「というか、今更なんですよ。新兵器なんて。
  モビルスーツの新規開発の方がマシです。」

オーブの技術者達は手っ取り早く役に立つ兵器を
手に入れたいのだろうが・・・。

 「今日のモビルスーツは連合の機体もあるそう
  だからオーブ軍参考になりそうな機体もある
  だろうよ」 

やがて、ヘリは港の端に立っている大きな倉庫の
前に着陸した。
ヘリを降りて倉庫に入ると、数十機のモビルスーツ
が置かれていていた。

 「へえ、凄いものだね」

 「他のモビルスーツ師団と取り合いになるんだ。
  しっかり見極めを頼むぞ」

 「連合の機体もあるけど、これって違法じゃあ
  ・・・」

確かに、ジャンク屋が戦場で拾った兵器は生産国
に届ける義務がある。
だが、蛇の道はヘビで例外は多数存在する。

 「おーい、カザマ一佐!元気だったか?」

いきなり1人の軍人に声をかけられた。

 「あっ、ババ一尉じゃなくてババ三佐か」

 「おうよ。日本での戦果が密かに評価されて
  昇進したぜ」

ババ三佐は数名の部下を引き連れて登場した。

 「俺達、未熟者にとっては今回のモビルスーツ
  はお宝だからな。カザマ一佐といえど、遠慮
  はしないぜ」 

連合の高性能な機体か、最近各国で量産されて
使用しているセンプウを狙っているのだろう。
オーブ軍の予備機はフェイズシフト装甲を装備
していない初期のM−1が大半を占めている
ので、生き残る確率を上げる為に、高性能な
予備機は1機でも多く欲しいところだ。

 「ババ三佐、他の師団の連中は?」

 「誇りあるオーブ軍の士官はゴミあさりなんて
  しないそうだ」 

 「困ったものだね」

 「あいつら戦場を知らないからな」

実戦経験の無い、オーブ軍士官にはウズミ様の
薫陶を受けて、おかしなプライドというか変な
エリート意識を持っている連中が多い。

 「他国を侵略せず。他国の侵略を許さずでし
  たっけ?日頃はその力を見せず、いざ祖国の
  危機となったら奮戦する。かっこよくて最高
  ですね」

 「野蛮な戦争を続けているプラントと連合をバカ
  にしている節が多少あるようだ。つまりは世間
  知らずのお坊ちゃまなんだよ」

例外はザフトに傭兵に入っていたコーディネーター
士官と俺達に同行していたババ三佐達と一部の
例外くらいのものらしい。

 「俺もオーブに戻ってからそのギャップに驚いて
  な。色々説いて回ったら、逆に孤立してしまっ
  た。コーディネーター士官とは仲良くなれたん
  だが」

今日、ババ三佐が連れている数名の士官はコーディ
ネーターのようだ。

 「だが、それも多少は解決するだろう。明日
  から、カザマ達が他の師団に講習に回るから」

 「カガリちゃん、俺それ聞いてない」

まったくの初耳だ。

 「お父様がオーブ軍パイロットの技量に不安を
  抱いてな。キサカの進言を受けて、全体の
  底上げを行う事にしたんだ」

 「俺じゃあ、かえってひねくれちゃうよ。他の
  師団の連中」

 「大丈夫だ。他のメンバーは石原一尉とマユラ達
  だ。ナチュラルの士官に叩きのめされれば目が
  覚めるだろう」

確かに、効果がありそうだな。

 「では、問題解決の糸口が見えてきたから肝心の
  モビルスーツを見せて貰いましょうか」

俺達はモビルスーツの選択に入った。

 「ザフト軍のモビルスーツは俺達が貰って問題
  ないでしょ?」

ジン、シグー、ゲイツ、グーン、ゾノが全部で15機
ほどあるが、オーブ軍士官は欲しがるまい。

 「水中用モビルスーツが欲しいのだが」

 「グーンとゾノをかい?」

 「連合が水中用モビルスーツを配備し始めてな。
  連日、ザフトの水中モビルスーツ隊と小競り
  合いを続けている。そんな理由で最近、
  仲良くなった海軍のコーディネーター士官に
  頼まれた」

ババ三佐の話によると、連合はフォビトンブルーと
いう水中用量産モビルスーツを配備して、通商破壊
を続けているザフト軍と毎日小競り合いを続けて
いるらしい。

 「ジェーン・ヒューストン大尉という女性士官が
  試作機のディープ・フォビトンカスタムに
  乗り込んで指揮を執り、多数の戦果をあげて
  いる。彼女は(白鯨)と呼ばれているようだ」 

 「勇ましい女性ですね」

 「もう1人、ヨーロッパのスペイン戦線でレナ・
  メイリア少佐がデュエルダガーで多数の
  モビルスーツを撃破して恐れられている。
  彼女は(乱れ桜)と呼ばれている」

 「一度会ってみたいですね。美人さんかな?」

余計な事を言ったので、ラクスとフレイに尻を
抓まれた。

 「いてて、他には?」

 「南米の反連合組織に1人、エースがいる。
  彼は連合将校だったが、祖国独立の為に軍を数人
  の部下と脱走して反連合運動に身を投じ、密かに
  プラントから援助されたモビルスーツを操って
  大戦果をあげているようだ。使用機種はセンプウ
  で名前はエドワード・ハレルソン元大尉だ。
  連合では(切り裂きエド)と呼ばれている」

 「後は?」

 「オーブにいるのだが、バリー・ホー1尉と
  言う・・・」

昨日のあのバカか!  

 「あの格闘バカは例外、除外する」

 「では、うちの中隊にいるのだが、連合出身の
  士官でジャン・キャリー1尉という男が凄腕
  だな。問題は不殺主義をとっている事なん
  だが」

 「俺の隊ならクビだ」

 「うちは選り好みできないからな」

多少、話が反れたので、元のモビルスーツの選択に
戻る。 

 「後はセンプウが10機ほどか」

 「それは欲しい」

 「半分に山分けだな」

 「そうしよう」

 「M−1改気1機あるな」

俺はM−1改気鬘欝仝つけた。

 「あれ?M−1は戦場に出ていないはずだが」

 「俺達の機体では?」

 「そうだ、硫黄島近くの海底で見つけた」

1人の男が会話に割り込んできた。

 「あんたは?」

 「俺はジャンク屋をやっているロウ・ギュールと
  いう者だ。今日のジャンク品の管理責任者だ」

 「俺はカザマ一佐だ」

 「ババ三佐だ」

 「知ってるよ。(黒い死神)」

 「じゃあ、安くしてね」

 「それは関係ないな」

気さくな兄ちゃんのようだ。

 「俺がレイダーと相撃ちになったM−1か」

 「そうだよ。隣り見てみな」

となりにはステラが乗っていたレイダ−が修理
されて置かれていた。

 「意外と損傷が少なかったのかな?」

 「俺達には美味しい獲物だったぜ」

俺のM−1とステラのレイダーはエネルギー伝達
回路の故障が一番の損害だったらしい。

 「ババ三佐、欲しい?」

 「その機体は試作機に近い。整備が面倒くさい」

 「じゃあ、貰いね」

残りの機体はストライクダガーが大半で、後は
デュエルとバスターが数機ずつだったので、
半分に分けて品定めは終了した。

 「でも、俺達だけで貰ってしまっていいの
  かな?」

俺は多少、心配するが。 

 「この機体はウズミ様の好意なんだ。書類上でも
  取り扱いは備品扱いのものだ。員数外の機体の
  大切さが分からない連中を気遣う必要は無い。
  このツケは自分達が戦場で払うのだから」

 「明日から気が重いよな」

 「うちの師団に来てくれるんだろ。俺はそう
  聞いている」

 「そうなの?カガリちゃん」

 「予定ではそうなっている」

 「久しぶりに揉んでやるよ。ババ三佐」

 「それは楽しみだな」

 「せめて、ババ三佐が師団全体の指揮を執って
  いたらな」

 「俺は3つある中隊の1つを任されているに
  過ぎない」

俺達の特殊装甲師団は4個中隊編成で来週には
自衛隊のパイロット達が到着するので、5個中隊
編成と少し変則的な編成になっている。
残りのオーブ正規軍パイロットが大半を閉める
モビルスーツ師団は3つあり、24〜27機ほど
の中隊が3つで編成されていた。

 「一応、傭兵を指揮下にいれる許可を出した
  くらいだから、極端に保守的でもないん
  だろうけど・・・」

 「俺もオーブ軍の士官がそこまでバカだと
  思いたくない」 

 「仕方がないな。俺が嫌われ役になるしか
  ないのか」

明日からの事を考えると気が晴れなかった。


翌日、俺は石原一尉とマユラ達を連れて、ババ三佐
が所属している第一モビルスーツ師団を訪問する事
になった。

 「カザマ、1つ問題がある。お前の代わりに、
  この師団のモビルスーツ隊を統率する指揮官が
  いない」

カガリが急に思い出したように言う。

 「キサカ准将は?」

 「あちこち出かけていてほとんどいない
  じゃないか」 

キサカさんは、この師団の渉外交渉の全てを
引き受けてくれているのだ。

 「わかった。いい機会だ。イザークを戦時昇進
  させて三佐にして俺の仕事を代行させる。
  イザークの後任には誰がいいかな?」

 「うーん、石原一尉はお前と出掛けてしまうし、
  キラは基本的に指揮官に向いていないし、ガイ
  は私の護衛しかしない。どうしたものか?」

カガリも考え込んでしまう。

 「私がいるではないか!」

いきなりバリー・ホー1尉が入室してくる。

 「オッサン、ノックくらいしろよ」

 「こんな奴いたんだ」

カガリ、書類くらい読んでおけ。

 「多少、不安を感じなくはないが。一応、
  一尉だからな」

 「俺の華麗な指揮振りを見ていてくれ」

このバカの暴走を止めるには、責任を持たせた方が
いいかもしれない。

 「わかった。任せるからイザークと打ち合わせを
  しておけよ」

 「了解!」

ホー1尉は嬉しそうに駆け出していった。

 「フレイはイザークの副官業務を頼むよ」

 「はい、任せてください」

予想外にすんなりと決まってしまった。
もう少しごねると思ったのだが。

 「じゃあ、行ってきます」

俺は、時間節約の為、自分のBストライクに乗って
オノゴロ島を出発した。
同じく、センプウに乗っている石原一尉とマユラ達
が付いてくる。
副官のラクスは置いていこうと思ったのだが、本人
が付いてくると言って聞かなかったので、
ノーマルスーツを着せて、俺の膝の上に乗せて
いる。

 「久しぶりに2人きりのドライブですね」

ラクスはとても嬉しそうだ。

 「Gがきつくない?」

 「大丈夫です」

ラクスの為に、かなりスピードを落としているが
心配でしょうがない。

 「なあ、ラクスさんはアスランの婚約者ではない
  のか?カザマといい雰囲気なんだが・・・」

唯一、事情を知らない石原一尉がマユラに尋ねる。

 「ヨシユキさん。見たままですが、秘密厳守です
  よ」 

マユラが忠告する。

 「いつの間に、名前で呼んでるのよ。マユラ」

 「あんた達の方がいい雰囲気でしょ」

アサギとジュリが2人をからかう。

 「まあ、それは置いておいて、アスランが哀れ
  だな」

石原一尉が心からアスランを哀れんでいる。

 「アスランさんはカガリ様とラブラブ
  ですよ」

アサギが真実を話す。

 「そうなのか。色々大変なんだな」

 「あ〜あ」

 「私達だけ一人身じゃん」

アサギとジュリが悔しそうに言う。

 「おい、お前ら到着したぞ!」

ものの十数分で第一師団の基地に到着する。
モビルスーツを降りると、オーブ軍の士官が出迎
えてくれた。

 「カザマ一佐、歴戦の勇士である、あなたの指導
  が受けられる幸運を感謝します」

1人の若い士官が歓迎の言葉で出迎えてくれる。
後ろで、ババ三佐がこちらに手を振ってくれた。

 「思ったよりも歓迎されているな」

 「ババ三佐はこの師団で一番尊敬されている
  パイロットです。その彼が尊敬している  
  あなたを悪く言う人間は少数ですよ」

小さい声でつぶやいていたのを、目の前の若い士官
に聞かれてしまった。

 「君はどう思っているんだ?」

 「私は傭兵としてヨーロッパで戦っていました。
  あなたの名前を知らないザフト軍兵士など、
  1人もいませんでしたよ」

 「それは初耳だ。それで、君の名前は?」

 「第一師団、第一中隊副隊長。マック・ハワード
  二尉です。よろしくお願いします」

 「俺の隊の副隊長なんだよ」

ババ三佐が教えてくれた。

 「いい腕してそうだな」

 「俺は技量では勝てない」

 「私は指揮が苦手なので、丁度いいんですよ」

ハワード二尉が恥ずかしそうに教えてくれる。

 「自分の実力を冷静に判断できる人間は
  生き残れるよ」 

 「ありがとうございます」  

 「では、始めますか」

まずは、全員の技量を見る為に、短時間の模擬戦を
開始した。
俺達は手分けして1人ずつと対戦していく。

 「ババ三佐、強くなってるな!」

 「お前も強くなっている。毎日、ムラクモ・ガイ
  と漫才模擬戦をしているからか?」

 「何だ、そりゃ!」

 「噂になってるぞ。バカな事を口走りながら、
  真剣勝負をしてるって」

俺ってバカ?

その後も模擬戦は続き、終了したのは夕方になって
からだった。
この師団の技量はババ三佐の中隊が一番であり、
ババ三佐とハワード二尉の技量が抜きに出て
いて、他のメンバーもよく鍛えられていた。
残りの中隊のメンバーも普第点をあたえてもいい
だろう。 

 「結構、やるじゃん。油断しないで訓練すれば
  大丈夫だよ」

俺がそう評価すると。

 「この師団で気が付いた事はないか?」

ババ一尉が真剣な表情で質問してきた。

 「さあ?何かな」

 「この師団のパイロットの約3割が
  コーディネーターなんだよ」

 「ちなみに、私もそうです」

ハワード二尉がそれに続く。

 「結局、外を見てきて危機感を覚えた、
  コーディネーター士官の連中は干されてしまって
  な。せっかく呼び戻したのにくすぶっていた連中
  が多かったから俺が皆引き抜いてしまったんだ」

 「それで、ババ三佐まで干されてしまいまして。
  上層部は何の為に、アークエンジェルに派遣
  したのか」

 「オーブに戻ってきてから、わずか10日あまりで
  干されるなんて、凄いねババ三佐」

 「急いで、色々やったからな。ここの師団長なんて
  俺を殺したいんじゃないか?」

 「演習で事故に見せかけて殺そうにも奴は
  モビルスーツには乗れませんしね」

ハワード二尉が続けて言う。

 「まあ、とにかく1つはまともな師団だって
  分かっただけ収穫だった」

 「カザマ一佐、それは違うかもよ」

 「何が?ババ三佐」

 「奴らにしてみたら、俺達が異常で自分達は
  正常なんだよ」

 「昔聞いた、一つ目の国に迷い込んだガリバーの
  お話みたいだね」

 「どんな話なんです?」

ハワード二尉が聞いてくる。

 「一つ目の国に迷い込んだガリバーはその国で
  変わり者扱いされたんだけど、本当に変わり者
  なのは、一つ目の国の住民なんですよって話」

 「含蓄のある話ですね」

俺達3人がそんな話をしている時に、マユラ達と
石原一尉は一生懸命他のパイロットの指導をして
いたようだ。

 「うちの一佐殿は仕事しないよな」

石原一尉が文句を言っている。 

 「私達の訓練にもなりますから頑張りましょう」

マユラが励まし。

 「2人は仲良くていいわね」

 「さあ、独り者は仕事、仕事!」

アサギとジュリが指導を続けていた。


約束の時間が終了して、全員でオノゴロ島に帰る事
にする。

 「それで、連中はどうだった?」

 「コーディネーターが多かったから強かった
  です」

ジュリが感想を述べる。

 「でも、互角以上に戦えましたよ」

アサギが嬉しそうに報告した。

 「俺はハワード二尉とほぼ互角だった。
  もう少し,頑張らないと」

石原一尉が悔しそうに言う。

 「彼はコーディネーターなんだから、良くやった
  のでは?」

 「俺の最終目標はお前だ。ハワード二尉に
  引っかかっている場合ではない」 

石原一尉の目標はあくまでも俺のようだ。

 「でも、マユラ達は上達したよ。オーブ軍の
  ナチュラルのパイロットで、お前達に勝てる
  奴はほとんどいないだろう」

 「「「ありがとうございます」」」

 「マユラ達は慢心しなければもう大丈夫だけど、
  カガリちゃんが頭が痛いよな」

俺は最近、一番の懸念を口に出した。

 「カガリ様、才能ないですか?」

 「逆だ。あるんだが、あの性格だ。指揮官なのに
  猪突猛進タイプだし」

カガリの指導をしているキラも、匙を投げかけて
いるらしい。

 「カガリちゃんの指導教官代えようかな」

 「誰にするんだ?」

石原一尉が誰にするのか聞いてきた。

 「みんな忙しいし、暇な奴にはろくな奴が
  いないし」

 「1人心当たりがありますわ」

俺の膝の上で大人しくしていたラクスが突然、
話しかけていた。

 「誰?」

 「それはですね・・・」


その日の夜の野外演習場で・・・。

 「カガリ様!モビルスーツの最大の武器は格闘戦
  です。拳です!気合いです!気力です!
  さあ、私と一緒に奥義を極めましょう!」

 「あのさ、落ちついてくれよ。ボー1尉」

カガリはあきらかに、今までと違うタイプの教官に
戸惑っていた。
今までの猪突猛進は影を潜め、自分が諌める役に
回っている。

 「さあ、格闘王への道はまだ長いですぞ!
  今日は基本の型を1000回繰り返して
  ください」

 「えっ、1000回?多くないか?もっと他の
  射撃の練習とかは?」

 「必要ありません。モビルスーツは格闘戦が
  命。人形は顔が命です」

 「後ろの言葉の意味がよく分からないん
  だが」

 「さあ、共に格闘王を目指しましょう!」

逆らえないと感じたカガリは素直に基本の型を
練習し始めるが、こんなものはバリー以外には
役に立たない代物だった。

 「反面教師ってやつ?ラクス」

 「人の振り見て我が振り直せとも言いますわ」

こっそりと覗きながら2人で話していた。

 「これで、少しはキラの言う事を聞くように
  なるだろ。さて、帰りますか」

 「ちょっと、寄り道しませんか?」

 「何処に?店なんてやってないよ」

 「レイナに教えていただきました。2人っきりに
  なるには、宿直室がお勧めだそうです。ベッド
  もあるそうですし」

 「それって、つまり?」

 「そういう事です」

俺達の帰宅は1時間ほど遅れた・・・。


翌日、俺達は昨日と同じメンバーとモビルスーツに
乗って第二師団基地に出掛けた。
基地に到着したが、誰も迎えに来ない。

 「あれ?連絡行ってないの?」

 「そんな事はありませんわ」

ラクスがそんなミスをするとも思えないが、
一応、聞いてみた。

 「さて、どうしようかね」

数分後に数人の若い士官が迎えにくる。

 「カザマ一佐、大変申し訳ありません。実は、
  特別参謀がお見えになっていて、全員そちら
  の出迎えに行ってしまいまして・・・」

 「君達はどうしてこちらへ?」

 「我々はコーディネーターですから。それに、
  これ以上逆らっても、左遷や降格はありま
  せんよ」

若い士官は笑って答える。

 「お寒い現実だな。これで地球連合と戦うのか。 
  それで、特別参謀って誰?」

 「ユウナ・ロマ・セイラン少将閣下ですよ」

若い士官はバカ丁寧に発言した。

 「あの、バカ息子が少将かよ」

俺はつい本音を口にしてしまう。

 「セイラン家の跡取りですからね。では、
  参りましょう」

若い士官の先導で士官食堂に向かうと、中でユウナ
が紅茶を飲んでいた。

 「やあ、カザマ一佐。ご苦労さんだね」

 「セイラン少将もお忙しい中でのご視察
  ご苦労様です」

 「本当、僕も忙しくてね。でも、僕が一から育て
  あげた可愛い第二師団の為だ。疲労なんて気に
  していられない」

初耳だな。
本当にあんたが育てたのなら尊敬ものだ。

 「まあ、僕の手に掛かればそのくらいは楽勝なん
  だけどね。でも、隣りの第三師団は出来の悪い
  連中が多くて、僕でもどうにもならなかった」

お前な!三つしか無い大切な師団の1つを落ち
こぼれさせるなよ。

 「そうですか。実は、私の今日の仕事は・・・」

 「わかってるよ。能力査定と指導だろ。まあ、
  指導する事なんてないと思うけど、よろしく
  頼むよ」

キレる寸前で思い留まり、俺達は査定に入った。
結果を最初に言わせて貰うと比較的、能力優秀者
で占められていたので、平均より多少上程度の
評価を与える事が出来る成績だった。

 「別に、こいつらに才能があるだけで、ユウナ
  の実力ではないよな」

 「それより、問題なのが、彼らはすっかり天狗
  になってしまって訓練の手を抜いてしまって
  いるのです」

マユラが状況を説明してくれる。 

 「敵の侵攻まで一ヶ月のこの時期に?」

 「M−1改兇蝋眄能機ですからね。
  ストライクダガー主体の連合なんて余裕だと
  思っています」

 「どんな根拠でそんな自信を・・・」

 「日本でのセンプウの活躍が原因です。センプウ
  と同じような性能のモビルスーツに乗っている
  からって事で・・・」

日本の成功の理由を狭く捉えているようだ。
困ったエリート共だ。
模擬戦終了後、俺は直すべき点や次に進歩する
為のポイントなどを説明するのだが、彼らは
聞く耳を持っていなかった。
外国人は黙っていろと顔に書いてあるように
見える。 
埒が明かないので、ユウナに注意して貰おうと
思い、食堂に行くと、ユウナはいやがるラクス
を一生懸命に口説いていた。
さすがに、堪忍袋の尾が切れた。

 「セイラン少将、私の副官を口説かないで
  いただきたい」 

 「何だ、もう帰ってきたの?どうだい、僕の
  育てた部下達は?」

 「結論から申し上げますと、可もなく不可も
  なくというところですね」

俺は正直に感想を述べる。
彼らには危機感がない。
戦場に出ればすぐ戦死だ。

 「それは辛くないかい?」

 「あれなら、私が1週間育てた第三師団の
  連中の方が強いでしょうな」

 「君は本気で言ってるのかい?」

ユウナの表情が変わった。 

 「本気ですよ」

 「では、証明して貰おうかな」

 「いいでしょう」

 「では、一週間後に集団模擬戦で勝負を
  つけよう」

 「了解です。セイラン閣下」

 「でさ、負けたらどうするの?」

 「裸で基地を一周しますよ」

 「僕も同じ条件でやろう」

こうして、第二師団対第三師団の集団模擬戦が
一週間後に開かれる事になった。


俺達は予定を繰り上げて、第三師団を抜き打ち
査察する事にした。

 「なあ、第二師団と第三師団の差って何?」

第三師団基地へ向かう道中でマユラに質問を
する。

 「第二師団は成績優秀者を集めています。
  第三師団は残りの人たちの集まりです」

 「つまり、落ちこぼれって事?」

 「パイロット適正試験を通っているし、戦闘機の
  パイロットだった人もいます。落ちこぼれって
  事は無いと思います」

 「では、簡単だなこの勝負は」

 「本当ですか?」

 「基本が出来てるんだ。大丈夫さ。それに、
  とりあえず第二師団を超えればいいんだ」

 「それでね。ラクスにお願いがあるんだ」

 「何です?」

 「最初に迎えにきたコーディネーター士官の連中
  を第三師団に転属させるから、書類作っておい
  て」  

彼らは無断で俺達を迎えにきた。
あきらかに第二師団で浮いている連中だ。
申請は通るだろう。 

 「わかりました」

 「ラクス、不快な思いをさせて悪かったね」

俺は膝の上の彼女を優しく抱きしめる。

 「ユウナさんの裸ウォーキングが見られるの
  ですから、かえって面白いですわ」

 「絶対、大恥かかせてやる!」

 「おーい、いちゃついているところを悪いが、 
  もう少しで到着だ」

石原一尉から無線が入る。


数分後、第三師団基地に着陸するが、多少の違和感
を感じた。

 「何かさ、ボロくない?この基地」

建物や設備が古臭いし、整備兵や基地要員も少ない
ようだ。

 「あの、明日だと聞いていたのですが」

基地指令とモビルスーツ部隊の隊長がこちらに
走ってきた。

 「ああ、予定変更です。実は・・・」

俺はユウナとの賭けの内容を話す。

 「そんな、無謀な事を・・・」

 「カザマさん、今のうちに謝ったほうが」

2人は大分、動揺しているようだ。

 「俺達が教えれば簡単な事だから」

 「ですが・・・」

 「決まった事だから反論禁止!命令を伝える。
  今から、基地の全隊員は装備を持って、
  オノゴロ島の特殊装甲師団基地に集合。
  寝るところが無いから寝袋を忘れるな。
  当然、パイロットはモビルスーツ持参だ」

 「あの・・・、今からですか?」

 「当たり前だ!復唱は?」

 「オノゴロ島基地に全隊員を集合させます」

 「結構。では、急げ!」

基地指令と隊長は走っていく。
暫らくすると、基地が蜂の巣をつついたような
大騒ぎになっている。

 「基地を空にしていいんですか?」

マユラが聞いてきたが。

 「こんな辺鄙で目立たない基地、数人留守番を 
  置けば十分だ。それより、連中の受け入れ
  準備をしておくように連絡しておけ」

待遇に差があるらしく。
この基地は何の戦略的価値もないところに置かれて
いる。
ここを攻める物好きなんていないだろう。

 「さて、オノゴロ島に戻るぞ!」

俺達がモビルスーツで飛び出すと同時に、第三師団
のパイロット達も少しずつ発進し始めた。
彼らのモビルスーツを見ると、初期のM−1が
半分ほど混じっていた。

 「おい、初期のM−1は予備機扱いだろ?」

 「第二師団が横槍を入れて、交換させられたらし
  いです」

あの、紫モミアゲめ!

 「何で、第二師団は優遇されているんだ?」

 「第二師団の幹部はセイラン家の派閥に属してい
  ます。そのおかげで、軍備や補給で優遇を受けて
  いるのです。その代わりに、第二師団の指導的
  立場にユウナを置いて、将来の後継者レースでの
  得点稼ぎに利用しているんですよ」

 「えげつないな」

 「ウナト様はあんまり嬉しくないようですが、
  今のところ、大きな失点も無いので黙認して
  いるようですよ」   

ウナト様は狸だな。
息子は限りなくバカだけど。

 「うちの師団と第一師団は?」

 「その二つはウズミ様が便宜を図っているので、
  手を出す連中はいませんよ」

 「第三師団は?」

 「あそこの幹部達は政治に口を出さない軍人の
  集まりですから・・・」

それで、あの酷い待遇か。
基本的には正しい連中なんだけど、オーブでは
アホな選択なのかもしれない。

 「大体、状況は理解した。でも、マユラは良く
  知ってるね」

 「以前にババ三佐が教えてくれたんですよ」

 「あの人はウズミ様の派閥なの?」

 「基本的には無派閥らしいです。だから、あんな
  無茶をするんですよ」

確かに、多数のコーディネーターを部下にして
いるからな。

そんな会話をしている間に俺達はオノゴロ島基地
に到着した。
俺は、モビルスーツを降りるとすぐに仮設司令室
に顔を出す。

 「おい!大騒ぎになってるぞ!ユウナに喧嘩を
  売ったんだって?」

入室した瞬間、カガリに詰め寄られる。

 「いやー、ついムカっときてしまってね」

 「俺は大賛成だ。遠慮なくやれ」

キサカさんが珍しく賛同してくれる。

 「いいの?常識派もキサカさんは反対すると
  思ってたんだけど」

 「ユウナの存在はオーブの政治体制の危機だ。
  彼が代表の座についたらオーブは滅んで
  しまう。ここで、潰しておいた方がいいかも
  知れない」

 「おっかない発言ですね」

 「どうせ、首長の家の生まれだ。生活に困る事  
  なんてないんだ。適当に遊んでいてくれれば
  いい」

 「だそうだよ。どうする?カガリちゃん」

 「一応、従兄弟だし、子供の頃から面識もあるん
  だが・・・」

 「婚約者なんでしょ」

 「名目上はな」

 「さっき、アスランに聞いたら全力で潰すって」

ライバルを潰す絶好のチャンスだと思ったようだ。 

 「分かった。許可するよ」   

カガリもユウナとの結婚はごめんだと思っている
ようだ。

 「では、全員集合だ!」


(オノゴロ島、野外演習場)

 「いいか!よく聞け。今日、俺達の特殊装甲師団
  はセイランのバカ息子に喧嘩を売られた。
  そこでだ、俺は売られた喧嘩は買う事にした。
  勝負の内容は第二師団と第三師団の集団模擬戦
  だ。俺達は直接勝負はしないが、第三師団の
  連中を鍛え上げて、勝負の場に送り出すんだ。
  ここで負ければ俺は大恥をかき、第二師団基地
  を裸でランニングだ。だが、勝利できれば
  セイランのバカ息子はこの基地で裸で
  ランニングだ。俺は強制はしない。プライドの
  為に、1人でも戦う。もし、力を貸してくれ
  るなら俺に言って欲しい。以上だ」

俺は多少、事実を誇張して協力を頼む事にする。

 「1つ忘れていた。セイランのバカ息子はラクス
  を口説こうとしていた。許されざる大バカ者だ」

その一言で場の空気が変わる。
自分の師団にはアイドルがいる。
これは、この師団一番の自慢だ。
ラクスは時間が空けば、サインをしたり
ミニコンサートを開いている。
その彼女に手を出す事は最大のタブーであった。

 「セイランの息子だと!前に、フレイにちょっか
  いを出していた紫モミアゲか!」

以前に因縁があったイザークが激怒する。

 「カガリでは飽き足らず、ラクスにまで。
  絶対に潰す!」

アスランが激怒している。

 「許されざる男ですね。容赦しませんよ」

ニコルが珍しく燃えていた。

 「女の敵です。抹殺します」

シホは冷たい微笑みを浮かべる。

 「俺達のアイドルに手ぇ出しやがって!俺達
  は外国人だ。オーブの首長なんて怖くねえ」

 「セイラン家が何だ!俺は昨日まで知らな 
  かったわ!」

 「あの紫モミアゲぶっ殺す!」

傭兵達の怒りのオーラが高まっていく。

 「「「ユウナを倒せ!」」」

 「「「ユウナを殺せ!」」」

俺の予想以上に盛り上がっていく。

 「おい、安心しろよ!俺達がみっちり鍛えて
  やるからな」

巻き込まれた、第三師団のパイロット達は驚きの
あまり、言葉が出ない。
どうやら大変な事に巻き込まれたらしい、という
顔をしている。

 「第三師団のみんなは倉庫と格納庫で寝泊りだ。
  安心しろ。俺達も付き合うぞ!」

時間が足りない。
1週間は基地に寝泊りして訓練時間を1分でも
多くとる。   

 「女性陣は宿舎に帰って寝泊りしてくれ」

 「「「わかりました」」」

 「では、今日は解散だ!明日は朝7時から
  特訓開始だぞ!」

 「「「おーーー!」」」

こうして、第三師団の強化合宿が始まったの
だった。  


翌日から、俺達は訓練を開始する。
食事はモルゲンレーテの食堂の人達に注文を
出しておき、時間が来たら食べに行った。
睡眠は倉庫や格納庫で寝袋を使って寝た。
今の時期はそれほど寒くないというか暑いので、
好都合だ。

 「ほらほら、もっと速く動け!」

 「小隊を組んだら、相棒を見失うんじゃない」

 「射撃の照準が甘いぞ!」

訓練は過酷を極めたが、パイロット達は1日ごと
に上達していった。
成績下位のパイロットの集まりと聞いて心配して
いたのだが、あくまでもペーパーテストを入れた
総合成績の話だったので、才能があるパイロット
もちらほらといた。
更に、第二師団から例のコーディネーター士官の
引き抜きに成功したので、優秀な指揮官候補を
確保できた。   
これなら、歩のいい勝負になるだろう。

 「何とかなりそうだよ。カガリちゃん」

 「私は別に・・・」

 「第三師団の連中はカガリちゃんの支持者に
  なってくれるさ。これは後継者レースを有利
  にするよ」

 「お前、そこまで考えて・・・」 

 「カガリちゃん、逃れられない運命なら楽しま
  ないと。アスランだってきっと力になって
  くれるから」

この件で政治的に無色だった第三師団の連中は
カガリ派になってくれるだろう。 
無駄飯食らい、弾除けと思われていた彼らが活躍
して精鋭部隊の称号を得れば、カガリの強力な
親衛隊になってくれるだろう。

 「だから、ちゃんと声をかけてあげなよ。
  カガリ姫」

 「ああ、わかったよ」

真面目な話をしていたのだが、外部マイクから
聞こえてきた声が、全てを台無しにする。 

 「はははは、第三師団の諸君!私はオーブ軍に
  この人ありと言われた、バリー・ホー1尉だ!
  今日は私の奥義を見せてあげよう」

先日、貰ってきたレイダーをキラに調整して貰った
バリー1尉はMA形体で空を飛んでいた。

 「ねえ、あいつにレイダーを渡したの誰?」

 「さあ?でも、調整していたのはキラだ」

 「断れなかったんだろうな」

 「だろうな」

 「どうする?」

 「放っておけよ」

まあ、いいか。
戦力外の機体だし・・・。

 
約一名のバカが暴走していたが、1週間の訓練は
無事終わり、いよいよ今日は集団模擬戦の日ある。
勝負会場は平等なくじ引きの結果、第二師団基地
上空に決定した。

 「アウェイですか。まあ、どっちらでも
  同じですど」

 「僕にも異存はないけどね」

 「私の唯一の懸念は、汚い罠などが仕掛けられて
  いないかという事です」

 「圧投的に有利なのに、そんな事はしないよ」 

 「そうですね。首長の家の方ですものね」

 「庶民とは違うんだよ」

勝負開始前に既に、火花が飛び散っている。

 「約束、忘れないでくださいね」

 「君が負けたら、ここの基地で裸でランニング。
  僕が負けたら、オノゴロ島基地で裸で
  ランニングだったよね」

 「その通りですよ」

 「さあ、勝負が始めるよ」

勝負は師団稼動機、全機を使った集団模擬戦である。
第三師団全機が第二師団基地に侵攻するという
シナリオだ。 

 「勝負開始!」

合図と同時に第三師団の侵攻が始まった。
全機が一団となって第二師団に突っ込んでいく。
最初は個人技に優れている第二師団が、優位に
戦いを進めていた。

 「カザマ一尉、服を脱ぐ準備はしなくて
  いいのかい?」

 「大丈夫ですよ。予想通りです」

戦いは第二師団優勢で進んでいたが、個人で敵を
追いすぎてしまって、モビルスーツ部隊が大分
散らばってしまったようだ。    

 「よし、今だ!」

第三師団は3機一個小隊を崩さないでいたので、
戦況が一気に有利になった。 
3機で1機を追い回して落とし、1機が囮に
なって、攻撃をしかけてきた敵を残りの2機
が落とす。
そのような攻撃が繰り返されていくうちに、
第二師団は全滅しまった。

 「やったー!勝ったぞ!」

結局、第二師団は全滅して、第三師団は20機ほど
の損害を出して模擬戦は終了した。

 「そっ、そんな・・・」

 「約束は守っていたただきますよ。セイラン少将」


(オノゴロ島基地)

結局、ユウナはパンツを履くことが許された。
誰も、ユウナのフルチンなんて見たくないからだ。

 「おーい!もっと速く走ってもいいですよ。
  ユウナ様ーーー!」

 「ちくしょー!覚えてろよー!」

モルゲンレーテの全職員とオノゴロ基地と第三師団
基地の全員の前でユウナはパンツ一丁でランニング
をして赤っ恥をかいた。

 「あははははっ、最高だね」

 「お前、怖いもの知らずだな」

今まではイベント不参加だったガイが急に現れて
俺にこう言った。

 「俺はオーブの人間じゃないからな」

 「そうか、ウズミ様からの伝言だ。
  よくやった!だそうだ」

 「俺が好きでやった事だ」

 「だが、久しぶりに大笑いしたそうだ」

 「それは、結構」

このイベントに参加している全員が大笑いして
喜んでいる。
第三師団の連中とも仲良くなれたし、第二師団
の連中も気合を入れ直してくれるだろう。
全てが丸く収まった気がするが、何かを忘れて
いる気がする。

 「おい、カザマ!」

いきなり、カガリちゃんに呼ばれる。

 「何?」

 「盛り上がっているところを悪いんだが、
  明日から大丈夫なのか?」

 「明日からって、何を?」

 「1週間、24時間の即時対応訓練だよ。
  そうでなくても、この1週間疲れる事をした
  んだ。今日は早く休まないと」  

しまった、忘れてた。
横を見ると、みんな大喜びで、このまま飲みに
でも行きそうな雰囲気だ。
多分、勝利の喜びでみんな忘れているのだろう。
とても言える状況ではない。

 「カガリちゃん、来週に変更しない?」

 「無理に決まっているだろう」

 「やっぱし・・・」

一時間後、俺は総スカンを食らってしまった。

 「本当、男ってバカよね」

 「あら、可愛らしいではありませんか」

 「シン、明日からはおやつ作ってあげる」

3人のそれぞれの感想でこの話は幕を閉じた。


(プラント本国、訓練宙域)

プラント本国に帰国してから1週間。
ラスティーとディアッカは新造戦艦エターナルを
受け取り、それに新型モビルスーツを搭載して
訓練を行っていた。

 「よーし、モビルスーツ戦終了。帰還して来い」

新任隊長ラスティーの指示でモビルスーツ隊が
着艦する。

 「オキタ艦長。大分時間が短縮されたでしょ」

 「うーん。まあまあかな?」

 「まあまあなの?」

 「ミゲルはもっと早かった」

 「(黄昏の魔弾)と比べないでよ」

 「お前はもう奴と同格なんだよ」

 「そうなんだけどね」

ラスティー隊はエターナル級高速戦艦一隻と
ローラシア級巡洋艦2隻で構成された遊撃専門
の艦隊で、オーブ国アメノミハシラ救援作戦に
参加する為に訓練を繰り返していた。

 「でも、オキタ艦長が引き抜きに応じてくれて
  助かったよ」

 「俺も新造戦艦に興味があったからな」

エターナル級戦艦は高速だが、取り扱いが難しい
ので、ラスティーはオキタ艦長に三顧の礼をとって
迎え入れたのだ。

 「ただいまっと」

モビルスーツ部隊を統率する、ディアッカが
ブリッジに上がってきた。
結局、ラスティー隊はオキタ艦長が副隊長を兼任
して、ディアッカがモビルスーツ隊の隊長兼副官
という非常にややこしい編成になっていた。

 「ディアッカ、ご苦労さん。フリーダムは
  どうだった?」

 「射撃が得意な俺にはグゥレイトな
  モビルスーツだぜ」

 「昨日、乗っていた。ジャスティスは?」

 「悪くないな。でも、ビームブーメランは
  必要ない」

 「どうしてだ?」

オキタ艦長が聞いてくる。

 「都合よく戻ってくるわけないだろ。始めの一回
  くらいは奇襲になるけど、後は簡単に落とされ
  てしまうさ」

 「あれは?ドレッドノートは?」

 「バランスが良い。ただ、それだけだ」

 「俺向けかな?」 

ラスティーはバランス型のパイロットなので、
使いやすいかもしれない。

 「隊長が出撃するんじゃない」

オキタ艦長に釘を刺される。 

 「でも、クルーゼ司令官とヨシさんはよく出撃
  してたよ」

 「クルーゼは変人だ。真似するな。
  カザマは戦力不足だったからだ」

オキタ艦長は冷静に事情を説明する。

 「艦長、モビルスーツが1機接近します」

索敵担当の士官から報告が入る。

 「敵か?」

 「いいえ、認識コード確認。プロヴィデンス
  です」

 「クルーゼ司令官か?」

数分後、クルーゼがブリッジに上がってくる。

 「久しぶりだな。ディアッカ、ラスティー」

 「「お久しぶりです。クルーゼ司令」」

 「実はな、この艦が救援艦隊の旗艦に決まった
  のだ。無論、私が決めたのだが」

 「ははは、そうなんですか?」

ラスティーは引きつった笑いを浮かべる。

 「ディアッカ、私と一緒に出撃しようでは
  ないか」

 「そうですね・・・」

ディアッカは非常にやりにくくなった状況に
頭を痛め。

 「俺は知らん」

オキタ艦長はマイペースだった。
彼は胃痛やストレスとは無縁なのだ。

 「楽しくなりそうだな」 

クルーゼは1人で笑っていた。


地球連合のオーブ侵攻まで後、一ヶ月。
世界の行く末はまだ誰にも分からなかった。


       あとがき 

オーブ編を長めに書こうときめたので、ギャグ
キャラというか多少壊れた人を探すために、
MSVの資料を探していたら、見つけました。
(拳神)バリー・ホー。勝手にキャラをいじった
結果、このような人になりました。
でも、実戦に出れば強い人にします。
残りのエース達も多少、設定からずれています。
(切り裂きエド)は南米独立闘争に参加する
為に、連合を脱走しています。
ゲリラで大型トレーラーやジャングルや洞窟基地
を転々としながらモビルスーツで戦っています。
イメージはダグラムのクリンのような戦い方
です。
モビルスーツはプラントから援助されている
ので、センプウに乗っています。
(白鯨)と(乱れ桜)はほとんど変えていません。
では、次回更新をお楽しみに。

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