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「これが私の生きる道!地球編8(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-02-22 01:27/2006-02-23 21:57)
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(6月18日、プラント緊急評議会)

昨日、終了した日本・台湾侵攻阻止作戦。
通称、オペレーションカミカゼの成功を受けて
評議会の雰囲気は明るいものになっていた。

 「今作戦の成功は非常に喜ばしいものです。
  次のオーブ侵攻阻止作戦が成功する事を
  願ってやみません」

カナーバ議長の表情は晴々としていた。

 「唯一の問題点をあげるとすれば、損害率の
  上昇をどう防ぐかだな。機体の損失などは
  かまわないが、パイロットの戦死が痛い」

マッケンジー委員長が問題点をあげる。

 「日本の新型モビルスーツが1つのヒント
  になるのでは?」

アマルフィー委員長が解決策を提案する。

 「確かに、ザフトが援軍を出したとはいえ
  2.5倍の戦力に撃ち勝って半数以上の
  パイロットを生き残らせているからな。
  逆にザフトの損失率は過去最悪だ」

ザラ議長が賛同の意見を述べる。

 「アマルフィー委員長はいかなる対抗策
  を考えているのですか?」

カナーバ議長が質問をする。

 「まず、緊急策として全モビルスーツにセンプウ
  が使用している光波シールドかビーム
  コーティングしたシールドを装備させます。
  次に、緊急脱出装置の研究を開始します。
  先日、カザマ隊長が脱出時に苦労したらしい
  ので」

 「ビームコーティングシールドは既に開発されて
  いないか?」

エルスマン議員が思い出したように言う。

 「はい、ですが、重量オーバーで現場の評価
  が悪くてほとんど使われていないのです」

 「では意味が無いではありませんか」

エザリア議員はあきれた様子だ。

 「新開発のシールドは日本・オーブとの共同開発
  で軽量化に成功しています。光波シールドも
  小型バッテリーを内臓して稼働時間が少なく
  なる事もありません」

 「それで、脱出装置の方はどうなのかね?」

シーゲル元議員が質問する。

 「開発はほぼ終了していますが、新しく量産される
  機体にしか装備できません。古い機体を改造する
  くらいなら、新しく製造した方が早いですから」

 「では、早めに前線部隊のモビルスーツを交換
  させねばな」

ザラ委員長が早期の機体の交換を提唱する。

 「それは結構だが、最終決戦後に7割の戦力を
  残す計画は既に難しいのではないか?」

マッケンジー委員長が疑問を口にする。

 「無理だろうな。そこで、ハッタリをかます事に
  する。14〜16歳のアカデミー生や志願兵、
  雇い入れた傭兵達を混ぜて数を増やすのだ」

 「それは無茶ですよ」

エザリア議員は反対意見を述べる。

 「あくまでもフェイク、ハッタリだ。実戦はさせ
  ない。彼らの仕事は人数合わせと、停戦後の
  監視くらいのものだ」

ザラ委員長は断言する。 

 「ならいいのですが」

エザリア議員も納得したようだ。

 「では次に、オーブ侵攻阻止作戦の概要を
  ザラ委員長からお願いします」

カナーバ議長が次の議題を提案する。

 「では、説明する。オーブ侵攻阻止作戦、通称
  オペレーションサイドアタックは我が艦隊が
  オーブ近海を航行中に連合の艦隊を発見した
  ので、攻撃を開始したというシナリオで動く
  作戦だ。また、傭兵として受け入れていた
  コーディネーターのオーブ軍兵士と一時退役
  させた我が軍のパイロット達が援軍として
  オーブへ赴くので安心だ。そして、宇宙でも
  戦端が開かれる。オーブのアメノミハシラに
  月からの艦隊が陽動をかけてくるので、
  クルーゼ指令指揮下の艦隊が迎撃をする事
  になっている。無論、建前は偶然に敵艦隊
  と接触した事にするが」

 「一時退役ですか?兵士達が嫌がりませんか?」

エザリア議員が懸念を口にする。

 「大丈夫だ。オーブに出向した分も能力査定に
  入れるし、給料はオーブも出すので2倍に
  なる。まあ、一応退役してるのでオーブが
  全額を出している事にするが」

 「それで、傭兵部隊のまとめ役は誰なんですか?」

アマルフィー委員長が質問する。

 「日本でも活躍した、カザマ隊長に任せようと
  思う。実は傭兵部隊は特殊装甲師団に編成
  されて、師団長にはカガリ・ユラ・アスハ
  少将が就任する事が決まっているのだ。
  カザマ君にはアスハ少将の補佐をして貰う
  予定だ。その他にも多少の異動があるが、
  細かい人事は省かせてもらう」

 「わかりました。それで、決戦日時の予定と
  参加戦力の比較は終わっていますか?」

カナーバ議長が質問する。

 「決戦日時は8月の初旬と推定される。
  敵戦力はパナマ運河を通ってきた大西洋艦隊
  の半数が主力だ。他に、太平洋艦隊も援軍を
  出すようだ。更にインド洋艦隊も援軍を出す
  つもりらしいが、これは大洋州連合と赤道連合
  の戦力で迎撃する。そしてもうひとつ・・・」

 「他にあるのですか?」

エザリア議員が不安そうに尋ねる。

 「東アジア共和国がシンガポールの奪還を計画
  している。先日の大損害の影響で艦隊は出さ
  ないが、陸・空軍で共同作戦を行うようだ」

 「守りきれるのか?」

シーゲル元議長が懸念を口にする。

 「大丈夫だ安心してくれ」

 「話を戻そう。オーブ侵攻艦隊のモビルスーツ
  の装備数は400機、航空機は200機
  と推定される。オーブのモビルスーツの装備
  数は250機でザフトが168機を予定して
  いる」

 「敵が少なくないですか?」

エルスマン議員の表情は不思議そうだ。

 「日本での敗北が尾を引いているのだ。
  参加モビルスーツが約500機で生還機数
  が約100機だ。400人のパイロット
  が戦死か捕虜になった。いくら連合でも
  この損害を埋めるには時間がかかるだろう。
  そして、インド洋艦隊にも推定200機の
  モビルスーツが配備されているのだ」

 「しかし、連合も無茶をしますね。
  今度負けたらどうするのでしょう?」

エザリア議員はあきれ顔だ。

 「これで負けてもアズラエルは困らないから
  無茶をするのです」

デュランダル外交委員長が今日の評議会で
始めて発言した。

 「どうしてかね?」

エルスマン議員がすぐに尋ねる。

 「日本・台湾侵略でもオーブ侵略でも指揮官は
  アズラエル派の将校ではありません。
  彼らが勝てば手柄を横取りし、負ければ彼らに
  責任を負わせて閉職に追いやるか、最前線送り
  にします。アズラエル派は月で戦力を整えて
  いるので、例え敗北でも戦闘データの収集には
  十分なのです」

 「日本・台湾・オーブの国民や兵士はデータ収集
  の為に死んでいくのか。不幸な事だな」

マッケンジー委員長が寂しそうにつぶやく。

 「アズラエル理事は冷徹で合理的な男ですから。
  もっとも、ブルーコスモス強行派は勝てると
  信じています」

 「アズラエルと言えば、彼らが研究をしていた
  実験兵士達はどうしたのだ?確か、一名捕虜 
  にしたようだが」

アマルフィー委員長がふと思い出す。

 「ここにパーフェクトソルジャー計画の成功体
  ステラ・ルーシェの映像が届いています。
  映像を見てみましょう」

デュランダル外交委員長がプロジェクターの
スイッチを入れると、デジタルビデオカメラで
撮られたと思われる映像が映る。
アークエンジェル艦内のようだ。
暫らく艦内の映像が続き、画面の端から金髪の
少女が映り出す。
年齢は14〜5歳に見える。

 「幼いな」 

シーゲル元議長がつぶやく。
私服の白いワンピースを着た彼女は大変可愛らし
かった。

 「ねえ、ヨシヒロ。何してるの?」

 「ステラをビデオで撮ってるんだよ」

 「ふうん、可愛く撮ってね」

 「大丈夫、ステラは可愛いから」

 「そのワンピース買った本人よりも
  似合ってる・・・」

画面の端に落ち込んでいるシホがいた。

 「ステラはシホよりスタイルが
  良いからな」

 「うるさい!死ね、ディアッカ!」

ディアッカはシホに殴られている。

 「息子よ。言ってはいけない事を・・・」

エルスマン議員がつぶやき。

 「そんな事は無いぞ。シホ」

息子の婚約者をマッケンジー委員長が励ます。

続いて、食堂らしきところに画面が変わる。
彼女は食事を美味しそうに食べている。
そして、横には沢山のお菓子が見える。

 「ステラ、お菓子は食事の後でだよ」

 「わかってるよ、ヨシヒロ」

 「ほら、ステラ。ソースが口についている
  わよ」

シホがフキンで口の周りを拭く。

 「シホ、ありがとう」

 「いいえ、どういたしまして」

暫らく食事を続けていると、画面の端にイザーク
が現れる。
どうやら食事に来たようだ。

 「わーい、オカッパだ」

ステラはイザークを何故かオカッパと呼ぶ。

 「何だと!捕虜の癖に態度がでかいぞ!大体
  この髪は母上が一番似合うと・・・」

 「ふえーーーん!オカッパが怒った!」

ステラが号泣する。

 「大丈夫よ、あいつはバカなんだから。  
  良い子だから泣き止んでね」

シホが優しく慰め。

 「ステラ、今日のお菓子は美味しいよ」

カザマ隊長も気を逸らせる。

 「ぐすん、うん大丈夫」

ステラは泣き止んでからお菓子を食べ始めた。

 「イザーク、ステラを泣かせるなよ!」

 「でも、ヨシさん。あいつは捕虜で・・・」

 「どう見てもお前が悪人だろ!」

 「えっ、そうなんですか?」

イザークが周りを見回すと、他の食事中だった
兵士達の視線が鋭い。

 「何で俺が・・・」

 「イザークがその髪型を止めればいいんだ!」

途中から入ってきたラスティーがイザークに
はっきりと言う。

 「そうね。イザークはいい加減母上から
  離れないと・・・」

シホもそれに続く。

 「マザコンは女性にモテないぞ」

カザマ隊長が止めを刺す。

 「俺ってマザコンだったのか・・・」

イザークが画面の端で「の」の字を書き始めた。

 「さて、僕も食事を・・・って。イザーク、
  どうしたんですか?」

ニコルが続いて入ってくる。

 「ニコル、後でお菓子食べよ」

 「ステラ、いいですよ」 

ニコルは笑顔で答える。

そして、最後にアスランが入って来た。

 「ヨシさん、何やってるんですか?」

 「ステラの報告書に付ける映像記録。明日の
  評議会に間に合うようにレーザー通信で
  送らないといけないんだ」

 「そうなんですか?それで、イザークは
  何やってるんです?」

 「放っておいてやれ。色々あるんだ」

 「はい・・・・・・」

 「ねえ、ヨシヒロ。あの人は誰?」

 「ステラはまだアスランに会った事が無かったな」

 「うん」

 「彼は俺の部下でアスラン・ザラだ」

 「・・・、デコッパチだ」

よく知ってるな、そんな言葉・・・。

 「そんな・・・、また女の子に・・・」 

アスランはがっくりと肩を落とす。

 「ステラ、アスランは良い奴だからそんな事
  を言ってはダメだよ」

 「うん、わかった。ごめんね、アスラン」

 「いや、いいんだよステラ」

 「あの、俺へのフォローは?」

イザークのお願いは無視される。
そして、また場面が変わりパジャマ姿のステラ
が映される。

 「もう時間だから寝るんだよ」

 「うん、おやすみ。ヨシヒロ」

ベッドに入ったステラは熊のぬいぐるみを
抱きながら目を瞑る。

 「この熊のぬいぐるみは誰のだ?」

 「・・・私のです・・・」

 「意外と少女趣味・・・」

 「バチン!」

大きなビンタの音で画像は終了した。

 

  

 「・・・・・・これは何かね?」

ザラ委員長がデュランダル委員長を問い質す。

 「ええとですね・・・」

デュランダル委員長は窮地に陥った。
電子書類の報告書が完璧だったので、映像を
チェックしていなかったのだ。 
だが、本来この仕事はザラ委員長の管轄だ。
文句を言われる筋合いは無いのだが、評議会で
の力関係を考えると何も言えなかった。 

 「エルスマン議員、君の息子は私の将来の
  義娘に文句でもあるのか?」 

 「あの、申し訳ありません」    

マッケンジー委員長がエルスマン議員に食って
かかる。

 「私はイザークを甘やかしているのかしら
  ・・・」

エザリア議員は自己嫌悪に陥っている。

 「収集がつかないな」

シーゲル元議長はあきらめの表情だ。

 「今日の報告事項は後で回覧します」

カナーバ議長が密かに閉会宣言を出した。

 「これ本当に議事録に残すのかな?」

速記係の男性のつぶやきは誰にも聞こえて
いなかった。


(ハワイパールハーバー軍港)

敗走した太平洋艦隊がパールハーバーに帰港して
から丸1日、全ての艦艇が碇をおろして損傷の
チェックを行っていた。
予想よりも多数の艦を失い、港は寂しいもので
あったが、大型艦艇の損失が少なかったのが
唯一の救いだった。

 「戦死者はどのくらいだ?」

 「戦死者・行方不明者あわせて2万人を超え
  ます。捕虜になっている者も多いと思い
  ますが・・・」

 「頭が痛いな」

 「でも、スプルーアンス大将はクビでは
  ないようですよ」

 「クビだったらありがたいのだが」

 「私もクビではありません」

 「再建は面倒くさいからな。地味な仕事は
  押し付けるに限るな」

 「転属命令が出ているのは、ドミニオンと
  ピースメーカー。そして、ハルバートン少将達
  だけです。その他にはフレッチャー中将に艦隊
  の集合命令が出ています」

 「ドミニオンとピースメーカーはフレッチャー
  中将揮下の第12任務艦隊と共にここで
  大西洋艦隊を待つようだ。私達は地道に
  艦隊の再建を進めるのみだ」

 「後はアズラエル達に任せますか。我々の戦争は
  終わりましたかね?」

スプルーアンス大将とマクモリス参謀長の会話は
終了した。


(ドミニオン艦内)

この艦は硫黄島の決戦で殿を務めたのだが、艦体
自体の損傷はほとんど無かった。
逆に追撃をかけてきたイージス艦や護衛艦を
多数沈めて、太平洋艦隊一の武勲をあげていた。

 「最後に一花咲かせたかな?」

ハルバートン少将がつぶやく。

 「年寄りみたいな事を言わないでくださいよ」

コープマン准将の力が抜けていく。

 「実は、ある企業から誘いがあってな役員に
  してくれるそうだ。殺伐とした軍人よりは
  こっちがいいかなと」

 「ダメですよ。辞令が届いています。
  ハルバートン中将は月面プトレマイオス基地
  に異動、第8艦隊司令長官に任命する。
  そして、私は少将として参謀長に任命され
  ました」

 「最近、出世が早いな。今戦死すると元帥に
  なれる可能性があるな」

 「私は戦死後の階級に興味はありません」

 「仕方ない。早速、出発準備をするか」

 「明日には出発ですよ。急ぎましょう」

 「しかし、我々は腐れ縁だな」

 「そうですね」

 「それで、ラミアス少佐達はどうなるんだ?」

 「8月初旬のオーブ開放戦の先鋒だそうです」

 「ピースメーカーは?」

 「同じです。ついでに言いますと、フレッチャー
  中将の第12任務艦隊も合流予定です」

 「せっかく生き残ったのに可哀想だな」

ハルバートン少将は心から同情する。

 「ちなみに、プリンス大佐は准将に昇格。
  ドミニオンとピースメーカーで特務艦隊
  を創設。初代司令官に任命されます。
  ドミニオン艦長はラミアス中佐に、
  副長にはバジルール大尉が任命されます。
  その他の主要メンバーも全員昇進です」

 「景気がいいな。階級の大安売りだ」

 「あんまり嬉しくないんですが・・・」

ブリッジ内にラミアス少佐とバジルール中尉が
入ってくる。

 「そうなのか?バジルール大尉は?」

ハルバートン少将が質問する。 

 「私が大尉に昇進するのは明日です」

 「相変わらず細かいな君は」

 「プリンス大佐がうるさいのですよ」

 「私達はお別れだから気楽なものだ」

コープマン准将が嬉しそうに言う。

 「本当に代わって欲しいですよ・・・」

ラミアス少佐の表情は優れない。

 「それで、プリンス大佐は?」

ハルバートン少将が尋ねる。

 「どこかに出掛けています」

 「どこに行ったんですかね?」

コープマン准将が尋ねる。

 「悪巧みでもしに行ったんだろ」

ハルバートン少将の言葉は辛辣だった。


(同時刻、ハワイ某所)

ここはある企業の持ち物であるコンドミニアム
の内の一軒である。
いつもは社員が休暇に使う保養所としての役割
を果たしているが、今日は2人の男の密談に
利用されていた。

 「お久しぶりです。アズラエル様」

 「プリンス君、せっかく活躍したのに太平洋艦隊
  が敗北に終わってしまって、残念でしたね」

 「それで、本日の御用件は?」

 「新しく、君の艦隊の戦力になる連中の説明
  ですよ」

 「どうして内密なんですか?」

 「多少、違法性があるからです」

 「それで、どんな連中なんです?」

 「俗に言う。クローン兵士ですよ」

笑顔でさらりと悪事を口にする。 

 「確かに、クローニングは違法ですね」

 「ですが、画一的に優秀な能力を発揮します。
  近代戦には有効な連中ですよ」

 「それで、数はいかほどで?」

 「とりあえず、12名です。ピースメーカーで
  運用をお願いします。ドミニオンには普通の
  パイロットを補充しますので」

 「確かに、あの連中には見せられませんね」

 「青い連中ですからね。要は勝てば済む問題
  なのに、下らない倫理観を持っていますから」

 「それで、モビルスーツは何を補充して貰えるん
  ですか?」

 「ドミニオンにはエース専用の量産機である
  デュエルダガーを補給します。それと、
  フォルテストラという武装パックも送ります
  ので頑張ってください」

 「フォルテストラですか?ザフトが使っている
  アサルトシュラウドみたいなものですか?」

 「良く知ってますね」

 「うちの副長は技術士官出身なので、聞いてた
  だけです」

 「美しい方と聞きましたが」

 「ですが、美しいバラには棘があります」

 「そうなんですか?」

 「我々を嫌っていますからね」

 「残念ですね。では、話を戻しましょう。
  ピースメーカの補充モビルスーツは
  ソードカラミティーが1機で残り11機
  はレイダーの改良型です」

 「改良型ですか?」

 「フラガ少佐達の機体と同じですよ」

 「クローン兵士は空間認識能力を持って
  いるんですか?」

 「はい、それくらいでないとクローニング
  した意味がありませんから」

 「元は誰なんです?」

 「それは来てからのお楽しみという事で」

2人の秘密の会見は終了した。


(アークエンジェル艦内)

ヨコスカを出港した俺達はオーブに向けて航行
していた。
太平洋艦隊敗退後の連合の動きは低調であり、
俺達は平穏な航海を楽しんでいた。

 「今日も俺のジンカスタムはご機嫌だな」

俺は習慣になっている愛機の調整を終了
させる。

 「好きですね。カザマ隊長は」

エイブス班長が声を掛けてきた。

 「一番付き合いが長いからね」

 「私は色々なモビルスーツをいじってた
  方が楽しいですよ」

 「本当に色々あるからね」

 「格納庫から溢れそうなんですよ」

結局、自衛隊からセンプウを6機貰ったので、
格納庫は多数のモビルスーツで溢れかえっている。

 「景気よくセンプウをくれたのは、ジンプウ
  の罪滅ぼしですかね?」

 「でしょうね。あれは設計図を見せて貰い
  ましたが、欲張りすぎのデコレーション
  モビルスーツでしたよ」

 「最後は爆発しましたしね」

 「いきなりテストもしないで、長時間使う方が
  異常なんですよ」

エイブス班長にダメ出しをされてしまった。

 「ところで、M−1とGの部品は足りてるん
  ですか?」

俺は重要な用件を聞く。

 「足りませんよ。だからデュエルを一機部品用に
  バラしてしまおうかと思うんですが、どう
  です?」

 「本国ではもう部品は作っていないんですよね?」

 「センプウを量産するそうですよ。おかげでGの
  量産は中止です」

プラントのアマルフィー技術委員長はセンプウの
高性能ぶりに驚き、多少の改良を加えて量産する
事にしたのだ。肝心のフェイズシフト装甲と
ラミネート装甲はオーブと日本の指導によって
大量生産に成功しているので問題無かった。

 「エイブス班長、許可します。だから一機でも
  多く稼動状態にしてください」

 「わかりました。これで稼動機はジンカスタムが
  1機とストライクが1機、イージス1機、
  デュエル2機、バスター2機、M−1が4機、
  センプウ6機、グゥル2機でヤマタノオロチが
  8本です」

 「だからこんなに狭いのか」

 「オーブで一旦全部降ろしたいですよ。格納庫の
  掃除や整備機械のメンテがやりにくくて」

 「オーブについたら何とかしましょう」

 「お願いしますね」

俺は格納庫を後にして食堂に向かう。

 「今日の昼飯は何かな?」

 「ヨシヒロ、今日はステラが作ったの」

ステラがエプロン姿で登場する。 

 「本当かい?何を作ったんだい?」

 「カレーライス」

日本で補給を行った影響で米が大量に備蓄されて
いたので、俺は艦内の飯が楽しみになっている。

 「はい、そうぞ」

ステラが皿にカレーをよそって持ってきた。
トレーの上には美味しそうなカレーとサラダ
が盛り付けられていた。

 「では、いただきます」

早速、スプーンで一口食べる。
味はかなりのものだ。

 「美味しいよ、ステラ」

 「えへへ、ありがとう」

 「ヨシヒロさん、味はどうです?」

同じく、エプロンをしたシホが現れた。

 「ステラは料理が上手なんだね」

 「一度教えると完璧に覚えるんです。
  羨ましい才能です」

 「へえ、大したものだ。ステラ、お替り
  頂戴」

 「はい」

ステラは嬉しそうにお替りをよそいに行く。
周りを見ると他の乗組員もカレーを食べていた。

 「人気あるんだな。ステラのカレー」

 「あの子可愛いですからね。保護欲を誘うみたい
  ですよ。男も女も」

確かに、ステラはそんなタイプだな。 

 「はい、お替り」

 「ありがとう」

二杯目を食べ始めると、男のパイロット達が
食堂に入って来た。

 「あれ?何を食べてるんですか?」

ニコルが尋ねてくる。

 「カレーライスだ。ステラが作ったんだ」

 「へえ、美味しそうですね」

 「今日の日替わりはこれみたいだよ」

 「じゃあ、僕はこれを食べます」

 「俺もカレーにしよう」

ラスティーもそれに続く。

 「俺もそれにします。シチューみたいなもの
  ですよね?」

アスランも続き。

 「俺も食べてみたいな」

ディアッカも同じものを頼む。

 「イザークはカレー食べる?」

ステラがイザークに聞いてくる。
ようやく、昨日からイザークを名前で呼ぶように
なったのだ。  

 「俺もそれでいい」

全員分のカレーライスが盛り付けられてテーブルに
置かれる。
それを見ていたら・・・。

 「ステラ、お替り」

 「何杯めですか?」

 「3杯目」

 「食べすぎですよ」

ニコルが注意してくる。

 「俺は子供の頃は5杯は食べていた。
  3杯は少ない方だ」

 「お腹を壊しても知りませんよ」

 「お米のご飯が美味しくて」

 「切実な話なんですね・・・」

数年ぶりに沢山お米が食べられるので嬉しくて
しょうがないのだ。

 「その話は後にして、俺達に転属の噂があるん
  だよ」

 「本当ですか?」

 「お前達の誰かが隊長に就任して宇宙に上がる
  らしい。あくまでも噂だが」

 「誰なんでしょう?」

ニコルが考え込んでいる。

 「アスランかラスティーだろ」

ディアッカが確信を持って答える。

 「俺に決まっているだろうが」

イザークが自信満々に答えるが・・・。

 「それはありえませんよ」

あっさりとニコルに否定された。

 「そういうお前はどうなんだ!」

イザークはニコルにキレながら問いただす。

 「僕も無いと思います。多分、ヨシさんの査定  
  を参考に人事部が結論を出しているはずです
  からヨシさんが考えてる人がそうなんで
  しょう」

 「ヨシさんは誰だと思います?」

 「本命ラスティー、対抗馬アスラン、三番手
  イザーク、大穴ディアッカだ」 

 「大穴って・・・」

ディアッカが1人で落ち込んでいる。 

 「正直なところ、誰が隊長でも上手くやれると
  思うけどな」

 「そうですよね。よーし、頑張るぞ!」

ディアッカがすぐに復活した。 

 「僕はここが気に入っているので。出世に興味は
  ありませんね」

ニコルはプラントを侵略から救う為に志願して
いるので、出世に興味はないようだ。

 「ジュール隊か、悪くないな。ふふふふ・・・」

 「私は与えられた任務を全うするだけです」

 「父上に恥はかかせられない」

 「将来の為に人の上に立つのも悪くないかな?」

イザーク、シホ、アスラン、ラスティーにも
それぞれ事情があるようだ。

 「とにかく、明日オーブに到着すればわかる
  から」

俺がそう言うと、全員が食事を再開した。


翌日、アークエンジェルはオーブ近海に到着した。
停泊場所は前回と同じ、オノゴロ島の秘密ドック
で、再び護衛艦に引かれて入港する。
アークエンジェルを完全に固定させてから艦を
降りると、多数の人たちが待ち構えていた。

 「えーと、ホムラ代表にウズミ様にセイラン様、
  カガリちゃん、キサカ一佐、エリカさん、
  親父に後は知らないな」

 「私達の出迎えで何でこんなに?」

 「アーサー、落ち着きなさい」

俺達は落ち着かないアーサーさんを引っ張って
艦を降りてから、ウズミ様の元へ向かう。

 「お久しぶりです。ウズミ様」

 「カザマ君、また娘がお世話になったようだな」

 「俺は遊んでるだけなんですが」

 「そうか。まあ、積もる話もあるし、これから
  の事もあるので、私の屋敷に来てくれたまえ。
  例のパイロット達も一緒に招待させてくれ」

 「わかりました」

俺はアスラン達を呼び出してからウズミ様の
屋敷に出発した。

 「うわーっ、大きいお屋敷」

ステラを1人に出来ないので、シホが連れてきて
いる。

 「お金ってあるところにはあるんだな」

 「2人共、恥ずかしいですよ」

ニコルが小さい声で注意する。
屋敷に入り、大きな会議室に通されてから紅茶を
いただきながら、ウズミ様の話を聞いた。

 「それで、オーブはどうなるんです?」

 「このままでは戦争に巻き込まれるな」

 「せっかくの中立国なんですけどね」

 「そこの事情はウナトから聞いてくれ」

話をウナトに振る。

 「大西洋連邦の穏健派と中立派が必死にオーブ
  侵攻を抑えていたのだが、遂に逆らい切れ
  なくなってしまったのだ。原因は君達ザフト
  が開戦以来頑張りすぎてしまった事もあるが」

 「どうして我々が出てくるんですか?」

 「連合の戦死者や捕虜には穏健派と中立派の将校
  が多数いた。そして、敗戦の責任で政治家達も
  多数失脚してしまった。その代わりに
  ブルーコスモス強行派の将校と政治家が幅を
  利かせる事になってしまっている」

 「それで、お金を出している連中の状況は
  どうなんですか?」

俺の言葉にウナト様が驚いた表情をする。
まさか、自分の息子くらいの歳の軍人が核心を衝く
質問をするとは思っていなかったらしい。

 「ロゴスの連中はどちらにも贔屓はしないが、
  敵対もしない。オーブ侵攻の時期を教えて
  くれたしな。ブルーコスモスの連中が
  世界制覇を成功させれば、上手く食い込む
  だろうし、プラントが講和に持っていければ
  彼らとの関係を強化するだろう。彼らは絶対
  に損はしないのだ」

 「でも、オーブが連合に占領されれば中継貿易
  に大損害が発生しませんか?それなら、もう
  少し援助してくれてもバチは当たらないで
  しょう」

 「もし、我々が戦争に負けると、オーブの島の
  1つがスカンジナビア王国に売却される。
  そして、その島に多数の会社が設立されて
  貿易業務を行うのだ。つまり、そこが
  オーブの代わりになるのだ。そして、オーブ
  が勝った場合、この戦闘は無かった事になり 
  オーブは中立国のままだ」

 「もの凄い茶番ですね」

 「ブルーコスモス強行派の暴走で調整に難航
  したんだ。プラント、オーブ、連合穏健派、
  連合中立派、ブルーコスモス穏健派、
  ロゴス反ブルーコスモス派。皆で密かに
  相談して落しどころを決めるのに苦労
  したさ」

 「と言う事は、勝てば元通りですか?」

 「二度目の侵攻は不可能だろうな」

 「それで、私達の仕事は何ですか?」

 「それは、ウズミ様に説明して貰おう」 

ウナト様はウズミ様に話を振る。

 「我々の目標は侵攻の阻止だ。具体的な作戦は
  オノゴロ島と周辺の小島に防衛線を引いて
  ほとんどの戦力を集結させて敵を向かえ撃つ。
  途中、タイミングを見計らってザフトの艦隊
  が後ろから攻撃をかけて挟み撃ちにするのだ」

 「ザフトの戦力を領海に入れるんですか?」

 「後で形だけの抗議をする事になっている。
  どうせ、連合には文句など言えないのだ」

 「それで、戦力はいかほどです?」

 「航空機が150機にモビルスーツが250機
  ほどだ。ザフトの援軍が170機ほどなので
  何とかなるだろう」

なんて甘いんだ。 

 「日本での戦いより不利かもしれませんね」

俺の言葉で全員の表情に驚きが走る。

 「ほう、どうしてそう思う?」

 「まず、第一にオーブには航空機とモビルスーツ 
  を運用する機動艦隊がありません。日本では
  敵戦力の分断に非常に有効でした。
  第二にモビルスーツの性能です。日本の
  センプウはフェイズシフト装甲を全体に装備
  していて、コックピット周りはラミネート
  装甲装備です。一方、オーブのM−1は
  指揮官機ですら胴体部分のみの装備で
  一般兵士機に至っては装備すらしていません。
  これでは、戦いが長引くほど、苦戦すると思い
  ます。第三に潜水艦隊の不備です。日本には
  多数の小型潜水艦が配備されていました。
  この戦力は直接戦いには使用されませんで
  したが、敵が大量の駆逐艦を失った時に
  撤退を促す要因になりました。
  もし、敵がこの損害を考慮しないで消耗戦を
  仕掛けてきたらオーブの敗北は必至です。
  最後に、オノゴロ島の住民の避難は終了
  してるのですか?硫黄島は無人だから無茶
  が出来たのです。そして、要塞化はどれほど
  進んでいますか?モビルスーツの整備や
  補給が安全に出来ないと戦力が減少する
  時間が早まります」

俺はまくし立てるように質問する。

 「おい!君、ウズミ様に失礼だぞ!」

首長の1人が怒鳴りつけてきた。

 「何が失礼なんですか?あなた達は為政者
  なんですよ。国を守る責任があるんですよ。
  日本やプラントは国民が選挙で選ぶから
  国民にも多少の責任が伴いますが、あなた
  達は生まれながらの為政者です。
  国を守れない責任は全てあなた達にあるの
  ですよ」

俺は怒鳴り返してやる。

 「カザマ隊長、失礼よ」

タリアさんが止めに入るが、これだけは
後には引けない。

 「私の家族はオーブに住んでいるのです。
  もし、あなた達が責任を果たさないのなら
  家族や大切な人を無理やりにでもプラント
  に連れて帰ります」

 「おい、カザマ君・・・」

アーサーさんが青ざめた顔で俺を見ている。
他の出席者は一言も発しない。

 「さすがだな。カザマ君が一時的でもオーブに
  所属してくれるのはありがたいな」  

ウズミ様が嬉しそうに言う。

 「それは、どういう事なんです?」

 「実は、モビルスーツ隊の内の72機+数機で
  特殊装甲師団を編成するのだ。
  師団長はカガリにやって貰うが、カザマ君に
  はその補佐をお願いしたい」

 「えっ、でも俺はザフトの軍人で・・・」

 「師団の半数以上のパイロットが一時的に退役
  したザフトのパイロットだ。君も今日付けで 
  ザフトを退役して、明日からはオーブ軍一佐
  として働いてもらう」

 「それは、プラント本国の指示ですか?」

 「ああ、そうだ」

端の席から1人の中年のオヤジが顔を出す。
よく見ると、俺の人生の岐路に必ず現れる
人事部長のハゲオヤジだ。

 「部長、お久しぶりですね」

 「そうだな。お前はいきなりヒヤヒヤさせるな。
  まさか、ウズミ様に暴言を吐くとは」

 「意見を述べただけです」

 「そういう事にしておくよ。では、辞令を
  伝える。ラスティー・マッケンジー、明日の
  日付をもって本国に一時帰国。ラスティー隊
  を創設して、オーブ国アメノミハシラ救援
  作戦へ参加せよ。副官として、ディアッカ・
  エルスマンも同行する事。
  残りのメンバーは一時的に退役して、オーブ軍
  の傭兵として活動して貰う。以上だ」

 「えっ、俺が隊長!」

 「俺も副官かよ」

ラスティーとディアッカが驚いている。

 「あの、アークエンジェルはどうなるの
  ですか?」

タリアさんが人事部長に質問する。

 「傭船契約を結んだので、そのまま戦ってもらう。
  例の同型艦も出てくるらしいので、その備えだ」

人事部長はキッパリと答える。

 「いきなりクビですか」

 「正確にはクビではない。査定も続行するので
  出世したければちゃんと働けよ」

 「ありがたいお言葉ですね」

 「1つ忘れていたが、給料は予備費から出るから
  オーブ軍の給料と合わせると倍になるぞ」

 「「「やったー!」」」

全員が大喜びするが・・・。

 「俺もそっちがいい」

 「俺は別に給料は気にならない」

大企業の御曹司とヒラ議員の息子の違いが
現れていた。

 「では、オーブの話に戻るとするか」

ウズミ様が話を続行する。

 「まず、オーブの情勢だが、国民には真実を
  伝えてある。さすがに嘘はつけないからな。
  そして、戦備の方だが、オノゴロ島は以前
  から密かに要塞化工事を進めているので
  敵の侵攻までには完成するだろう。島の住民
  は既に立ち退きをお願いしているので、残って
  いるのはモルゲンレーテの従業員とその家族と
  軍人のみだ。最後に詳しい戦力については  
  キサカ一佐に説明を頼もう」

ウズミ様はキサカ一佐に話をふる。

 「では、説明させていただきます。まず、
  特殊装甲師団ですが、戦力はモビルスーツ隊
  の他に建造中の(タケミカズチ)と数隻の
  護衛艦、そして、アークエンジェルが編入
  されます。この戦力で艦隊を編成して貰い、
  オノゴロ島の守備隊と連携して敵を撃破
  します」

 「質問です。(タケミカズチ)は未完成なん
  ですよね」

ニコルが質問をする。  

 「開戦時までにはモビルスーツの運用が可能に
  なる。艦載火器は間に合わないので、日本
  から輸入したヤマタノオロチを甲板で運用
  して対応するつもりだ」

 「それで、モビルスーツの方はどうなって
  るの?」

 「使用機種はM−1改兇主力になる。
  この機体はM−1の最終量産型になる機体で
  フェイズシフト装甲を完全装備、飛行パック
  装備、ビームライフル、ビームサーベルを
  標準装備。これが150機ほど配備されて
  いる。残りは日本からセンプウを50機ほど
  入手しているのでこれも戦力の要だ」

 「残りの機体は?」

 「雑多な機体の寄せ集めだ。特殊装甲師団の
  傭兵にはモビルスーツ持参の連中も珍しく
  ないからな。他には、オーブの新鋭試作機
  や実験機、ジャンク屋から購入した機体も
  ある。それと、以前のM−1は予備機扱い
  になっている。機数は80機ほどだ」

 「予備機が有るのと無いのとでは大違い
  だからな」

 「それで、俺の仕事は何なんだ?
  カガリの補佐ってだけじゃわからない」

 「特殊装甲師団の連中の訓練と作戦の立案が
  主な仕事かな?後は、新型機を渡すから
  ちゃんと乗りこなしてくれよ」

新型機か、ジンプウの悪夢がよみがえる。

 「その機体は火を噴いて落ちないよね」

 「テストはちゃんとしている」

 「良かった。でさ、傭兵に訓練なんて必要なの?」

 「実は10名ほど志願兵が入っている。
  彼らの訓練をお願いしたい」

 「大丈夫か?志願兵なんて?」

 「厳しい選抜で選ばれた連中だ。才能はある」

 「時間が無いけど頑張りますよ」

2人の会話はここで終了する。

 「では、明日から任務の方をよろしく頼むよ」

ウズミ様との会見は終了した。

 「ねえ、ヨシヒロ。ご飯は食べて帰らないの?」

帰りの廊下でステラが聞いてくる。

 「今日はラステイーとディアッカの送別会
  をするから他所でご馳走を食べるんだよ」 

 「わーい、ご馳走だ」

ステラが大喜びしているところに親父がやってくる。
そういえば、いたよな。

 「おい!ヨシヒロ。その娘は誰だ?」

俺は大まかな事情を話す。

 「そうか、でもお前はオーブ軍所属になるん
  だろ。その娘はどうするんだ?」

しまった!一番重要な事を忘れてた。

 「部長!」

俺は人事部長を捕まえてステラの処遇を聞く事に
する。

 「私は聞いてないな。暫らくお前預かりで
  いいだろう」

 「そんな無茶な。一応、検査くらいしません?」

 「いいか、絶対に漏らすなよ。お前が送った 
  報告で議会が混乱してな。その娘は公式
  には存在しない事になったんだ。別に
  逃げ出しても脅威にはならないと思われた
  からな」

やはり、あの報告映像はまずかったかな?

 「あの子は正式な戸籍も無いんですよ。
  可哀想じゃありませんか」

 「だから、お前が何とかするんだ!
  わかったか?」

 「はい」

俺は逆らえなかった・・・。 

 「どうしよう・・・」

 「俺がウズミ様に頼んで養子にする」

親父が再び現れた。

 「いいのか?母さんの許可は?
  親父、家では実権が無いだろう」

 「今、電話してきたら大丈夫だってさ。
  レイナとカナに悪い虫がついてしまった
  今、俺に新しい天使が誕生するのだ」

自分の欲望に忠実な奴だな。

 「ヨシヒロ、どうしたの?」

ステラが俺を見つけて話かけてくろ。

 「ステラは家の子供になるんだよ。ほら、
  あれが新しいお父さんだよ。バカだけど」

 「バカは余計だ!よろしくなステラ」

 「お父さん、よろしくね」

 「ああ、可愛い・・・」

バカ親父が感動に打ち震えている。 

 「さて、紹介は終わったからラスティー達の
  送迎会を開く場所を探さないと」

 「それは無理だぞ」

 「何でだよ。親父!」

 「オノゴロ島は全島避難命令が出ているからな。
  お店が営業していない」

そいつは盲点だったな。

 「どうしようかな?」

 「家でやるか」 

 「大丈夫なのか?勝手に決めて」

 「実は、レイナ達が準備をしてるんだよ。
  さあ、早く仕事を済ませてから家に来いよ」

俺達はアークエンジェルに戻り、乗組員全員に
任務内容を説明する。
皆は不安な表情をするが、給料の話をすると全員
が喜んでいたので良しとする。

 「今回は長期になるから、宿舎を準備する
  そうだ。明日は階級と所属の発表。そして、
  制服の貸与があるので楽しみにしていてくれ」

重要事項を伝えてから俺達は車で自宅に向かった。

 「今日は女っ気が足りなくないか?」

アビーは仕事が残っているので今日は留守番だった。
男6人に女1人ではディアッカが不安になるのも
しょうがないかも知れない。 

 「俺の妹が2人いるし、カガリちゃんとマユラ達
  も参加するってよ。後はキラ達も来るらしい」

 「ヨシさんの妹ですか?可愛いですか?」

 「客観的に見て美人だな。彼氏ありだけど」

 「ちくしょう!奪い取ってやる!」

ディアッカ、何て無謀な発言を。

 「へえ、人の彼女を奪うんですか?」

ニコルが冷たい笑顔を浮かべる。
ハッキリ言って怖い・・・。

 「そんな事はしませんよ」

ディアッカはすぐに否定した。 

 「ならいいんですよ」

自宅に到着すると、レイナ、カナ、ミリィー、
ステラ、カガリ、マユラ達が母さんと食事の
準備をしていた。

 「あっ、お兄さん元気だった?」

レイナが俺を見つけて話かけてくる。

 「親父の欠陥品で死にかけた」

 「おいっ!聞き捨てならないな」

親父が登場して反論した。

 「ジンプウと言う日本製のモビルスーツに
  覚えはないか?」

 「えっ、あれを実戦で使ったのか?」

 「ああ、何時間も使ったよ。整備しようと思って
  帰る途中にブースターが加熱して墜落した」

 「あれを乗りこなす人間がいたんだな」

 「ああ、目の前にいるぞ」

 「俺は実験機だからって事でバッテリーを提供
  したんだが・・・」

 「それで、栗林陸将の様子がおかしかったのか」

 「俺も後でとっちめてやる!」

栗林陸将への新たな制裁が決定する。

 「ねえ、ヨシヒロ。それでこんな物が届いて
  いるの?」

母さんが大きな保冷容器を持ってくる。
中身を開けてみると、大きな牛肉の塊が
入っていた。

 「おっ、第一弾の神戸牛霜降り肉10kgだ。
  都合のいい日に到着したな」

 「兄貴、第一弾って事は?」

 「暫らくは定期的に届くだろう。早速焼いて
  食べようぜ」

 「わーい、お肉だー」 

ステラが嬉しそうにはしゃいだ。

 「母さん、ステラの件勝手に決めてごめんね」

 「いいわよ、この娘可愛いもの。
  頬ずりしたくなっちゃう」

 「私も可愛い妹大歓迎」

 「私も」

 「俺の新しい天使の誕生だ!」

約一名危ない人間がいる。

 「あの、ヨシヒロさん。お久しぶりです」

キラ達が挨拶してきた。

 「会えて嬉しいけど、避難命令が出てるん
  だろ?」

俺が一番の疑問を口にする。

 「実は、カレッジの自治会で侵略者から祖国を
  守る為に軍に志願する事が決まったんです」

サイが説明してくれる。

 「もしかしてレイナ達も?」

 「うん、そうだよ」

 「私もそう」

 「母さん、反対しなかったのかよ。親父は?」

思わず、慌てふためいてしまう。

 「レイナ達が自分で決めた事だから、反対は 
  しなかったわ」

 「俺もだ。実は、技術二佐待遇で軍にも
  所属しているんだ」

 「私達は全員三尉待遇なんだよ」

レイナが自慢気に語る。

 「そうか、俺も一佐待遇で戦う事になっている。
  ヨロシクな」

 「えっ、俺より階級上なの?」

親父には驚愕の事実だったようだ。 

 「ウズミ様がそう言ってただろ」

 「そうだったーーー!」

 「兄貴、凄いじゃん」

 「カガリちゃんには負けるけどね」

 「カガリは一応、お姫様だもの」

カナが何気に酷い事を言う。

 「お前達は家族で口が悪いな」

カガリが文句を言っている。

 「マユラ達はどうなってるの?
  それと、ババ一尉は?」

 「私達は二尉に昇進です。これもカザマ効果
  ですね。後、ババ一尉は三佐に昇進して
  別のモビルスーツ部隊の中隊長に任命され 
  ました」

マユラが説明してくれる。

 「カザマ効果って何?」

 「私達の戦闘データを提出したら、評価が
  凄く上がったんです。おかげで昇進できま 
  した」

ジュリが教えてくれた。

 「ここは将校しかいないんだな。凄いよな」

 「そういえば、キラも凄いんだよ。
  三佐待遇で技術将校とモビルスーツ部隊
  の教官を兼任しているの」

レイナが思い出したように言う。

 「へえ、凄いんだな。もしかしてアスランは
  キラに敬語を使わないといけないんじゃ 
  ない?」

 「えっ、そうなんですか?」

アスランがビックリして聞いてくる。

 「多分、アスラン達は一尉か三佐待遇だろう
  から一尉ならキラは上官だな」

 「へえ、アスラン、僕に敬礼してみてよ」

 「お前な・・・・・・」

キラがアスランをからかっている。

 「さあ、皆さん準備が出来ましたよ」 

母さんの呼び声で皆が家に入る。
今日は一階のスペースを全て開放して大きな
テーブルを置いている。

 「へえ、ホームパーティーか前は出席出来な
  かったからな」

 「俺もだ」

ディアッカとイザークは嬉しそうだ。

 「俺は微妙にニコルに騙された気がする」

 「そんな事ありませんよ。偶然ですよ」

前回、パーティーの予定を事前にキャッチした
ニコルが、アスランと休暇を代えたのだ。 

 「「「では、いただきます!」」」

 「ピンポーン!」

チャイムが突然鳴り、母さんが玄関に向かう。

 「お久しぶりです。お義母様」

 「あら、ラクスさん。丁度いいところに
  来たわね。さあ上がって」 

ピンクタイフーンの再来だった・・・。

 
予想外の来客にイザークとディアッカは驚いて
いたが、他のメンバーにはそれほどの衝撃を
与えず、みんなは普通に食事をしながら会話を
楽しんでいた。

 「あの、ラクス様。どうしてここに?」

イザークが恐る恐る聞いてみる。

 「はい、レイナ達からヨシヒロが到着したと
  連絡が入りまして、急いで来ました。
  それと、ラクスと呼んでくださいね」

 「えっ、アスランに会いに来たのでは?」

イザークの頭の中を疑問が広がっていく。

 「まずい・・・」

俺は不安でしょうがない。
というか、イザーク以外の人間にはとっくに
気が付かれている状態だ。
現に、ディアッカはまずい事を聞いたという
表情をしている。

 「ねえ、ヨシヒロ。あのピンクのお姉さんは
  誰なの?」

ステラが俺に聞いてくる。

 「ヨシヒロ、この娘は誰なんです?」

ラクスも俺に聞いてきた。

 「ラクス、この娘は俺の新しい妹なんだ。
  名前はステラ・ルーシェだよ」

 「違う!今日は仕方ないが、明日からはこの娘
  はステラ・カザマだ!」

親父がいらぬ説明をする。

 「お義父様、良かったですね」

 「ああ、本当に良かった」

2人はほのぼのと会話している。 

  「ステラさん、私はヨシヒロのフィアンセ
   のラクス・クラインと申します」

きわめつけの大型爆弾が爆発した。
イザークとディアッカは衝撃で口を開けたまま
呆けている。

 「あーあ、ラクスがばらしちゃった」

カナが気まずそうに語り。

 「へえ、ヨシヒロの奥さんなんだ。
  じゃあ、ステラのお姉さんだ」 

ステラは姉が増えた事を純粋に喜んでいる。

 「まあ、可愛らしい娘ですわね。
  良かったですね。ヨシヒロ」

ラクスも満更でもないようだ。
ステラが敵ではない事も大きい。

 「アスラン・・・これは?」

 「説明して欲しい・・・」

イザークとディアッカが憔悴しきっていた。

 「ええい、面倒くさい!アスラン、キラ、
  ニコル、ラスティー、トールいくぞ!」 

 「「「はい!」」」

 「「「せーの!」」」

一斉に俺はラクスに、アスランはカガリに、キラは
レイナに、ニコルはカナに、ラスティーはシホに、
トールはミリィーにキスをした。 

 「理解できたか?」

 「「はい・・・」」

 「暫らく秘密は厳守してもうぞ」

 「「了解!」」

 「では、パーティーを再開するぞ」

皆は何事もなかったように食事を再開する。

 「ディアッカ、誰が秘密の関係だったんだ?」

 「イザークよ後で教えてやるから黙ってろ。
  確実にバカだと思われるから」

約一名は理解してなかった。


翌日、俺はアークエンジェル艦内で全乗組員の
辞令を渡した。
ちなみに、ラスティーとディアッカは既に出発
している。

 「アーサーさんが二佐でタリアさんが三佐
  なのか。ブリッジ要員は全員三尉でエイブス
  班長は一尉、そして、リヒャルト先生が
  三佐なのが意外だな」

 「意外ってな。俺は専門職についてるんだ。
  当たり前だろう」

ブリッジで辞令を受け取りながら文句を言う。

 「医者の資格ならシホだって持ってるだろ」

 「シホの資格はまだ使えないんだ。実習を受けて
  いないからな。戦争で中断してるんだ」

 「詳しいなリヒャルト先生」

 「彼女の父親が俺の先生だったからな」

意外なつながりだな。

 「カザマ隊長、お前は師団司令部に出頭
  するんだろ?」

 「ああ、そうだった。アーサーさん、後はお願い
  しますね」

 「任せてくれ。カザマ君は色々忙しくなる
  だろう」

 「では、行ってきます」

俺はモルゲンレーテ社内にある特殊装甲師団仮設
司令部に出頭した。

 「ヨシヒロ・カザマ一佐、出頭しました」

部屋に入るとカガリとキサカ一佐が書類の整理を
していた。

 「カザマ、歓迎するぞ」

 「よく来てくれたな」

2人が歓迎してくれる。

 「では、詳しい情報をお願いします」

 「ああ、この特殊装甲師団は師団長カガリ・ユラ
  ・アスハ少将で参謀長は明日昇進だが准将の
  俺だ。そして、君は一佐として全モビルスーツ
  隊の指揮と訓練をお願いしたい」

キサカ一佐が説明してくれる。 

 「わかりました。他の幹部は誰なんです?」

 「君の部下である。アスラン、イザーク、ニコル
  、シホは一尉として4つに分けた中隊の指揮
  を一任する。後、その他にカガリと俺とお前、
  マユラ達3人、キラ、ムラクモガイ、イシハラ
  の9機で近衛小隊を作り、応援に入る」

 「えっ、ムラクモガイ?あの傭兵のですか?」
  そして、石原?自衛隊の石原一尉ですか?」

 「両方、イエスだ。ムラクモガイは今度の戦闘 
  が終わるまでカガリの護衛任務につく。
  石原一尉は自衛隊を辞めて君を追いかけて
  来たそうだよ」

 「ムラクモガイには因縁があるのですが、仕方が
  ありませんね。石原一尉はしょうがないな。
  自衛隊でも困ってるでしょうね」

 「向こうは実戦経験を積ませる為だと
  あきらめてたぞ」

自衛隊もいい加減だな。
石原総理の息子だからか?

 「もう1つ関係ないかもしれないけど。
  キラは実戦に出していいの?
  それと、レイナ達はどこに配属されてるの?」

 「二つじゃないか」

カガリがツッコミを入れる。

 「まあ、教えてやるよ。キラは才能があるからな。 
  OS開発もひと段落したし、カガリの護衛には
  丁度いいんだ」

 「キラが連合の手に落ちたらどうするんだ?」

 「そうさせない為にお前がいるんだ。正直、
  戦力が足りなくてな。志願兵まで募集して
  ギリギリの状態なんだ。予備のパイロット
  なんて存在しないからな」

オーブの状況は切羽詰っているらしい。
政府首脳陣と軍の現場でこれほどの認識の違い
があるとは。

 「それで、君の妹達だが、レイナ君はカガリ
  の副官兼秘書を務めている。
  カナ君は俺の副官兼秘書で、ミリアリア君
  は君の親父さんの副官兼秘書を務めている。
  そして、トール君とサイ君とカズイ君は
  俺達のモビルスーツの整備を手伝って
  くれている」

 「へえ、そうなんですか。それで、俺には
  秘書や副官はつかないのですか?
  別にいないならそれでいいけど」 

一応、聞いてみる。

 「それが、カレッジの志願者の中で熱烈に希望
  していた者がいたので任命してしまった」

何か嫌な予感がする。

 「そろそろ来る頃だと思うが」

ドアがノックされてレイナとカナが入ってくる。

 「お兄さん、オーブの軍服が似合ってるね」

レイナが褒めてくれるが。 

 「おいおい、俺は上官だぞ」

一応、けじめをつける。 

 「とてもお似合いですよ。カザマ一佐」    

入り口から声がするので顔を向けるとフレイが
オーブの軍服を着て立っていた。

 「カザマ一佐の副官兼秘書を拝命しました。
  フレイ・アルスター三尉です。
  よろしくお願いします」

 「よっ、よろしく・・・」

俺は後で訪れるであろう、恐怖の時間を想像して
冷や汗が出てくる。
キサカ一佐とカガリを見るとソッポを向いていた。

 「ちくしょう、裏切り者め」

小声でつぶやく。

 「質問なんだけど、君の父上は大西洋連邦の
  外務次官だろ。大丈夫なのかい?」

 「父は父。私は私です」  

フレイは全く気にしていない。

 「では、よろしくね」

断る理由が思いつかないので、承認する事にする。
ちゃんと仕事をしてくれればいいんだ。

 「では、モビルスーツの格納庫に行くと
  するか」

カガリが部屋を出たので追いかける。

 「ああ、これから俺どうなるんだ?」

任務先に無事着任したが、これから俺はどうなって
しまうのか?
それは誰にもわからなかった。

  
       あとがき

最近、時間が無いので短めになってしまいます。
更新は早めにするので勘弁してください。 

  


        

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