インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「幻想砕きの剣 8-3(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-02-16 00:26/2006-02-16 00:36)
BACK< >NEXT

 闘技場の中心で、ダウニーとミュリエル、そしてナナシとルビナスが睨み合う。
 ナナシはらしくもなく難しい表情で、精一杯ニラミを効かせているようだ。
 まぁ、相手が相手なので効果は全くないのだが。

 ルビナスは試験管を片手で弄んでいる。


「それでは、準備はよろしいですか?」


「いつでもオッケーよ」


「ええと、パンチパンチキックジャブストレートフック馬乗りバリカンパンチ…」


「バルカンパンチの間違いじゃなくてよ。
 本当にバリカンで殴るんだから」


「ルビナス、誰に向かって何を話しているのです?」


 虚空に向かって人差し指を立てて何かを解説するルビナス。
 どこかイカレたのかと思うミュリエルだった。
 しかし、思い返せば1000年前も彼女は似たような奇行に走る事が度々あった。
 まぁこれが正常か、とミュリエルは気にしない事にする。

 何はともあれ、戦闘準備は整っているらしい。


「それでは、始めます!」


 ダウニーの声で、ミュリエルとルビナスは構えを取った。
 と言ってもミュリエルは自然体だし、ルビナスは戦いのノウハウが体感できていないのか、重心の置き方も適当だ。
 ナナシに至っては、相変わらず何を考えているのか知れない笑顔で突っ立っている。

 ダウニーはまずナナシに標的を定めたようだ。
 彼もナナシのボディがルビナスによって造られたという事は知っている。
 放っておくと何が飛び出すか、解ったものではない。
 不確定要素は極力排除するべきである。

 一方ミュリエルはというと、ルビナスから目を離さない。
 1000年前のルビナスとは実力は掛け離れていると思うが、その強さと攻め引きのタイミングの良さは、ロベリアも認めていた所である。
 ルビナスの真の実力は、召喚器云々ではなく、そう言ったタイミングの良さと、懐から出てくる得体の知れない薬品による所が大きかったのだ。
 当然の事ながら、ルビナスが懐から何かを取り出した際には、ミュリエル達も一斉に逃げ出すのが常だった。
 あとで大抵ルビナスが拗ねていたが……。

 微妙に懐かしい思い出に浸りながらも、ミュリエルは照準を合わせる。


「ブレイズノン!」


「!? わっ、と!?」


 ルビナスが慌てて身を伏せる。
 その上を、極度に集中してレーザーのようになった炎が貫いた。
 しかしその軌道はルビナス本人を狙ったのではなく、薬品が入った試験管を狙っていた。

 ルビナスは思わずミュリエルを怒鳴りつける。


「な、何するのよ、私の可愛い試験管とお薬に!?
 だいたいこんな間近で熱に反応しちゃったら、私が死んじゃうかもしれないじゃない!」


「そんな危険な代物を、模擬戦で使ってるんじゃありません!」


 ミュリエルはレーザーを乱射する。
 ルビナスは慌てて体を捩り、レーザーから逃げ回った。


「別に危険じゃないもん!
 取り扱いを間違えなければ、腋毛が頭に移動するだけだもん!


「それは見てみたい…じゃなくて、充分危険です!
 どーいう理屈なんですかその薬は!」


「あ、聞きたい?聞きたい?」


 ミュリエルの問いかけを聞いた途端、ルビナスの顔が輝きだす。
 しまった地雷を踏んだ、とミュリエルは後悔する。

 ならばいっそ説明中に攻撃を、いえいえそれは後が恐ろしい。
 ミュリエルの判断の一瞬の遅れの間に、ルビナスは即座に行動に移っていた。


「ダウニー先生くらえー!」


「奇襲に声をかける阿呆がいますか!」


 ルビナスは叫びながら、ナナシをカチンコチンの氷漬けにしているダウニーに薬品を投擲。
 しかしダウニーの言葉通り、大声で叫びながら投げたので、あっさりと迎撃されてしまう。
 その辺に落ちている適当な石を拾い、宙を舞う試験管に投げつける。
 試験管はあっさりと割れた。
 残念な事に、本当に残念な事に、ダウニーに薬品はかからなかった。


「ルビナスさん…本当に戦いのノウハウが頭に入っているのですか?
 ナナシさんも、何やら新機能がどうとか言って、いきなりフリーズしてしまいました。
 どうやら新しい体に、何か不具合があったようですね…。
 いきなり実戦投入しなかっただけマシですが、もう少し考えてください。
 知識として持っているだけでは、活用しているとは……………ん? 学園長?」


 挑発も兼ねてルビナスに小言を言っていたダウニーは、そのルビナスの向こうでミュリエルが何やら手を振り回しているのを発見した。
 どうやらブロックサインらしい。
 この手の余技は、一通り覚えこんでいるダウニーである。
 あまり見かけないサインだな、などと思いつつも、その翻訳をする。


(ええと……いますぐ・にげろ・しけんかん・るびなす・ななしのごんべえ・へのへのもへじ…といれのばけつ?
 ??? 学園長はパニックしておられるようだが……何を言いたいんだ?)


 余程慌てているのか、ミュリエルのブロックサインは間違いだらけである。
 それで妙な文章(?)になっているのだが、ダウニーと言えどもその真意を読み取る事は出来なかった。

 しかし、間もなくダウニーは身をもって体験する事になる。


「え、えええええええ……えいどりあーーーーーーーーん!!!」


「ぬお!?」


 ルビナス、唐突に絶叫。
 思わず一歩下がるダウニーとその他。
 まだ続くルビナスの叫び。
 大分テンパっておられる。


「しゃとーぶりあーーーーーん!!!!」


「な、なんです!?
 何事なのです!?」


 流石に予想外だったらしく、ダウニーは混乱している。
 なおもルビナスが叫び続ける間に、ミュリエルは速攻で退避していた。
 ちなみに氷漬けだったナナシは、危険を感じた未亜の命令によってリコが回収した。


「あぁっ、学園長!
 何故大河君の隣に逃げるんです!?
 こ、こんな大事を私にどうしろと!?」


「こ、こっちを巻き込まないでください!
 大河君の傍なら、ルビナスからのとばっちりも少しは少なくなるかと思ったのに…。
 ダウニー先生がこちらに来ては、何の意味もないではありませんか!


「あいあむあきんぐおぶざわーるどーーーーーー!」


 この台詞は一人で言うとアレなので、急遽大河が協力しに行った。
 ポーズを決めるだけ決めて、さっさと大河も退場。


「ちょっ、大河君、平常点を上げるから手伝ってください!
 ここまで出てきたんだから、それぐらいしてもいいでしょう!?」


「じょ、冗談じゃないっス、命あってのモノダネだってーの!
 そもそもダウニー先生、ルビナスの試験管“チェミック”に石なんぞぶつけて割ったのはアンタだろーが!」


「名前まで!?
 ゼンジー先生のようだ…。
 というか、試験管一本でこれほどに!?
 そもそもそんなに大事なら、投げる事はないでしょう!
 放っておいても、どの道割れる運命でしたよ!?」


「マッドに理屈は通用しねーんだよ!
 ダウニー先生の感覚で言えば、そのカツラを燃やされたようなモンだぞ!
 謝れ、とにかく謝っちまえ!
 後はもう知らん!」


 がーん!

 ダウニーは大河の言葉に衝撃を受けた。
 自分は何て酷い事をしてしまったのだ!

 ダウニーは、何だか試験管をもっと沢山取り出して、物凄い炎を体中から巻き上げているルビナスに向き直った。
 ちなみに、その炎は比喩の類ではなく本物の炎である。
 服が燃えたりしないのは、どうやら炎か服に細工がしてあるらしい。
 これも新機能のようだ。


「ルビナスさん、申し訳ありません!
 私の罪は、幾重にもお詫びします!
 何なら私が新しい試験管にお金を出しても構いません!
 代替を用意すればいいという問題ではない事は承知していますが、これ以外に私が出来る事はないのです!」


「そんなので納得するとでも!?
 うぉーーーーんちゅーーーーーーーーー!」


「Want youとな!?
 な、ならばその言葉通り、大河君を試験管選びに同行させるというのは如何ですか?
 勿論試験管選び以外にも、喫茶店も公園も遊園地もホテルもご自由に!
 全て資金は代替しましょう!
 勿論2人っきりでどうぞ!

 構いませんね、大河君!?」


 血走った、本当に必死の目でダウニーは大河に確認を取る。
 ちょっと天邪鬼の血が騒いだ大河だったが、流石にこの場面でやると人命に関わる。

 実はルビナスのWant youは、ダウニーの命をよこせと言う意味だったのだが、ダウニーは上手くベクトルをずらしたようだ。

 大河が頷くのを確認して、ダウニーはルビナスの顔色を窺う。
 何時の間にか炎は勢いを減らし、腕を組んで思案顔である。
 …彼女が持っている試験管の中身が、ルビナス自身も感知しないうちに熱反応で得体の知れない薬品に変っていたが、誰も気付かない。

 暫く考えて、ルビナスはダウニーにギンっと視線を向ける。
 必死で自分を奮い立たせるダウニー。
 炎に包まれたマッドオーガは、握りこぶしを前に突き出した。
 彼女の親指が上に向くか下に向くかで、ダウニーの運命は決まる。

 結果は…下。


「…………!!!!」


 覚悟を決めるダウニー。
 ああ、このまま大河君とも戦わず、この妄念の中で死ぬのか、とさえ思った。
 大河と戦う事によって、何かを感じられれば、と思い、このような無謀な事を提案してしまった。
 実際、ルビナスがこうまでキレなければ、それほど無謀な事ではなかったのだ。
 しかしそうは言っても、キレてしまったモノは仕方ない。
 せめて最後まで抵抗しよう、とダウニーは身構える。

 が、その覚悟は無用だった。
 くるっ、とルビナスの手が回って、親指が上を向く。


「おっけー!
 財布がスッカラカンになっても、文句はないわね?」


「どうぞご遠慮なく!
 いざとなったら経費で落しますから!」


「お、落すと思いますか!?」


「あ、やはりダメですか…まぁ、他にも資金源に心当たりはあるので。
 …足りなくなったら、一族の資金を……


 ミュリエルの叫びも適当にあしらって、ダウニーは大きく溜息をつく。
 どうやら危機は去ったらしい。

 ルビナスは機嫌よく、戦いの続きも忘れて大河の所に走っている。
 どうやらデートコースの打ち合わせをしたいらしい。

 ちょっと恐れ戦きながらも、ダウニーは勝負の判定をする。


「あー、色々と反論はあるとは思いますが、ナナシさんは戦闘不能、ルビナスさんは試合放棄で、我々教師チームの勝利です!」


「へ? ………あぁ!?」


 ダウニーの判定を聞いて、一拍置いて叫ぶルビナス。
 どうやらようやくこの試合の本来の目的を思い出したらしい。
 しかし理由はどうあれ、試合を忘れてしまったのは彼女である。
 反論しようにも、ミュリエルがダウニーの判断に頷いているし、そんな事よりもデートの打ち合わせを、と心が叫んでいる。
 暫し迷ったが、ルビナスは結局反論しなかった。
 そのまま大河の元に走っていく。
 その大河は、ナナシを解凍させていた。


「……命拾いしました…。
 ルビナスさんの冷静さに救われましたね…。
 キレていたら、私は人間を止めるハメになっていたでしょう…」


「いくら挑発されたとは言え、ただの試合で手の内を見せる気はなかったようですね…。
 …………見捨てたお詫びに、秘蔵のワインを一本プレゼントするわ」


「ありがとうございます……で、いいのでしょうか?」


 彼岸を見て帰ってきたダウニーに、ミュリエルの申し訳無さそうな声がかけられる。
 実際の所、ダウニーはミュリエルを恨んではいない。
 自分だって、あの状況ではさっさと逃げるだろう。
 …やはり少し恨めしいが。


「それで、どうします?
 流石に少し休んだ方がいいのでは?」


「そうですね……5分ほど待って、大河君との試合を始めてください。
 死の淵を見てきたせいか、妙に体が鋭敏になっていて…調整のために、少し瞑想しようと思います」


「解りました。
 それでは目覚まし時計をどうぞ」


 どこからともなく、大きなベルが付いた目覚まし時計を取りだすミュリエル。
 しかし手渡されるダウニーはというと、座禅など組んで目を閉じている。
 ボケを流されたミュリエルは少々寂しそうだったが、タイマーを5分後に合わせてダウニーから離れた。


「ダウニー先生、災難でしたなー」


「ちょっとダーリン、災難なのは私の方よ。
 よりにもよって石なんかでチェミックを割るなんて…」


「自業自得だってそれは…」


 大河達は、ダウニーが瞑想している間に凍りついたナナシを溶かそうとしている。
 リリィとミュリエルが弱めの炎で炙り続けていた。

 ベリオがルビナスに話しかける。
 だが少々及び腰だ。
 どうやら先ほどの怒りの炎を見てビビっているらしい。


「あの、それよりもナナシちゃんは大丈夫なんですか?
 体が頑丈なのは今更疑いようもありませんが、さっきの戦闘を見ていると…」


「?」


「いえ、ぶっちゃけて言っちゃいますと……自爆してましたよ」


「自爆!?」


 驚くルビナス。
 浪漫ではあるが、流石にナナシにそんな機能は付けていない。
 いつどんなヘマで起動させてしまうか解らないのに、そんな能力を付けられるものか。
 …まぁ、自分には付けていたりするのだが。


「じ、自爆って…どんな風に?」


「えーっと、ダウニー先生を相手にして、何かを使おうとしたようなんです。
 何だかナナシちゃんの腕とかが変形して……そこまでは見えたんですけど、次の瞬間なぜか小爆発が。
 しかもその後、何だか動けないみたいでした」


「え〜?
 爆発するにしても、小さい爆発…って事は、変形機能に問題があるのかしら…。
 大爆発ならまだ心当たりがあるのに…」


 ルビナスは頭を抱えてしゃがみこむ。
 一体ナナシは何をしたのか、どこで自分はミスしたのか。
 うんうん唸り続けるルビナスは置いておいて、やっとナナシが解凍された。


「だーりーん、負けちゃったですのー、寒くて冷たいですの〜!」


「うおっ、確かに冷たっ!
 ああぅ、凍る、何か腕とか凍り付きそう!
 何だか懐かしいこの冷たさ!」


 どうやら氷で体温が下がりまくったナナシの体は、ゾンビ時代の体の冷たさに似ているらしい。
 ナナシに抱きつかれて鳥肌なんぞ立てている大河。
 これは誰も止めようとしない。
 むしろ面白がって見ている始末である。

 ナナシを引き剥がそうとして四苦八苦している大河。
 そこに、大きなベルが響く。
 5分が経ち、ミュリエルが仕掛けた目覚まし時計が作動したのである。


“朝ー、朝だよー、朝ご飯食べてまた寝るよー”


「北国!?」


 未亜のツッコミは放っておいて、ダウニーは何事もなかったかのように立ち上がる。
 見事復活を果たしたらしく、集中力や気力が回復している。
 …特技『めいそう』はHP回復のみだったと思うが…。
 首の骨をコキコキ鳴らして体を伸ばし、大河を見る。

 しかし学園長はどこからこんな目覚まし時計を入手したのだろう。


「大河君、私の準備は整いました。
 そろそろ始めたいのですが、まだ遊ぶ気ですか?」


「あ、遊んでるのは俺じゃなくてナナシ…だぁっ、抱きつくんなら体が温まってからにしろー!」


「は〜いですの」


 少々残念そうに、ナナシは大河から離れる。
 やはりそこそこ寒いらしく、体が震えていた。
 仕方なく、ミュリエルとリリィが左右から弱めの炎で温めてやる。


「ご迷惑おかけしますの〜」


「別にいいけどね。
 うわっ、本当に冷たい!
 これでも平気なんて、ホムンクルスって頑丈なのね」


「まぁ、ルビナス作ですから…」


 ナナシの体に触れ、その冷たさに驚くリリィと遠い眼をしているミュリエル。
 当のナナシは炎に温められ、少しは血の気が戻ってきたようだ。
 ゾンビ時代には感じられなかった温度差や感触。
 それが少々辛いものだったとしても、ナナシには新鮮に感じる。
 感じるもの全てが新しく、今のナナシは、ある意味人生で一番楽しい時期である。

 さて、大河はと言うと、ダウニーの様子を観察しながら闘技場の中心まで歩いていく。
 その後ろ姿に、救世主クラスの期待の視線がかかっていた。
 一対一なのだし、大河ならば何かしてくれるのではないか、と思われているのだ。
 それを知ってか知らずか、大河は少々焦っている。
 ダウニーに隙が殆ど見当たらないのだ。


「……ルビナスに脅えてたんだから、そのまま三枚目を貫いてりゃいいものを…」


「教師に向かってエライ言い草ですね…私は今でも三枚目ですよ。
 まぁ、顔の造作は悪くはないと思いますが……今の、今までの私はただのピエロです。

 ………大河君、私と初めて会った時の事を覚えていますか?」


「え?」


 ダウニーの唐突な問い掛けに、大河は一瞬何を聞かれたのか理解できずに棒立ちになった。
 次の瞬間、しまった罠かと思ったが、ダウニーは奇襲をかけてこようともせず、じっと立ったまま。
 どうも調子が狂う、と苦々しげな大河。
 しかしダウニーは意図してそうしているのではなく、自然体でそうなっているのだ。


「初めて会った時の事っつーと、まだ頭が普通だった時ですな?
 あの時には、まさかダウニー先生がアフロにフノコに波平にカッパ…もとい、R・新堂になるとは思ってもみなかった…」


「えぇ、そりゃ私も思いませんでしたよ、思って堪るものですかってーの。(フノコ…?)
 それはともかく、私はあの時、大河君に言われたのです。
 『空っぽの、生きている“フリ”をしている人間』『押し付けられた命令を自分の意思だと錯覚した傀儡』と」


「あぁ、そう言えば言いましたな。 それが?」


 随分と懐かしい…アヴァターに来て3ヶ月程度しか経っていないというのに、もう半年以上経ったかのように懐かしい。
 大河は過去の自分の毒舌を引き合いに出されても動じず、ダウニーも別に怒っている様子はない。
 あの時のように少しはご立腹してくれれば隙も生まれるのに、と大河は思った。

 ダウニーは、少し体を開き気味にする。
 静かな表情で、しかし感情の読み取れない目で大河を見据えた。


「今は、どう思います?
 自分で言うのもなんですが、私はここ最近で随分と変った…。
 いえ、変ったというのも少し違いますね。
 どうですか?
 今の私も、やはり傀儡に見えるでしょうか?
 私は今も、生きているフリをしているのでしょうか?


 普段とは違うダウニーの口調。
 まるで何かを切望するかのような、または縋りつくかのような口調。
 大河はダウニーが何を求めているのか、見当も付かない。
 だから正直に答えようと、ダウニーを正面から見る。
 過去の業績…アフロがどうとか普段の嫌味な性格を考慮の外に置き、今目の前にいるダウニーを見る。


「……傀儡は傀儡でも…壊れかけた傀儡、に見える。
 自分の存在意義に迷い、何かに操られたり意思を持たずに動く事に異を唱えはじめた傀儡。
 そうなっちまったら、傀儡…人形としてはお終いだ。
 それは人形じゃなくて、人形の形をした………そう、人間。
 人間の形をした傀儡が人形なら、今のダウニー先生はその逆に見える。
 …ダメだ、自分でも何を言ってるのかよく解らない…」


「いえ、結構ですよ。
 雰囲気などという曖昧な物を、もっと蒙昧な言葉に置き換える事が出来るほど、大河君は文学的ではないでしょう。
 ……そうですか、そう見えましたか…」 


「あぁ………その、生きているフリっていうのは撤回してもいいと思う。
 ナンと言うか……そう、冬眠から醒める寸前のミイラ、かな?」


 頭を掻きながら、大河は必死に言葉を探す。
 ダウニーはふむ、と鼻を鳴らした。


「大河君、この試合の後、少々付き合ってくれませんか?
 故郷の風習で、ちょっと手を借りたいのです。
 別に肉体労働や集中力の要る作業ではありませんから」


「はぁ…ま、この試合で酷い怪我とかしなければ」


 大河はダウニーの腹の内が読めない。
 会話の繋がりも意味不明だし、そもそもどうして一対一で戦うなどと言い出したのかも解からない。

 大河の困惑が醒めないうちに、ダウニーは一歩下がって腰を落す。
 戦闘体勢に入ったのである。
 それを見た瞬間、大河も反射的にトレイターを呼び出した。
 状況がどうあれ、戦いがそこにあるなら余計な事を考えずに即座に対応する。
 この辺りの割り切りの良さも、大河の武器といえた。


「それでは行きますよ! ハァッ!」


「おっと!」


 ダウニーの指先から、光線が放たれる。
 先ほどミュリエルが使ったのと同じ技らしく、直線にしか進まないがそのスピードは折り紙付だ。
 大河は大きく横っ飛びに飛んで避ける。


「そこっ!」


「甘い!」


 ダウニーは大河の飛んだ先を予測し、衝撃波を放っていた。
 しかし着地地点を狙われるのは大河も承知の上、避けもせずにトレイターで一撃の元に切り裂いた。

 大河とダウニーの視線がかち合い、弾かれるように2人は距離を詰める。
 ダウニーの近接戦闘技能の程は知れなかったが、自ら挑んでくる以上、決して低くはあるまい。
 だが、大河はどの道接近せねば話にならない。
 挑んでくるなら好都合、とばかりにスピードを上げた。

 何を考えているのか、ダウニーは何の小細工も弄さずに突っ込んできた。
 途中で進路を変えるかと思っていた大河だが、迷わず真っ直ぐナックルを突き出す。

 ガッ!


「ぐっ!」


「ぬあ!?」


 大河の一撃は、真正面から受け止められた。
 ダウニーは魔力を込めて強化した掌で、大河の拳を受け止めたのだ。
 無論小細工無しでぶつかり合えばダウニーの掌が砕けるので、何かしらの技術で衝撃を受け流したのだろう。

 ベクトル同士が相殺しあい、一瞬の膠着。
 その一瞬の内にダウニーは力を篭める。


「墳ッ!」


 似合わない気合を放つダウニー。
 ナックルを受け止められてバランスを崩した大河に、ダウニーの手から魔力が叩きつけられた。
 正面から攻撃を跳ね返された形になり、大河はよろめく。

 無論ダウニーがその隙を見逃すはずもない。
 その身に宿す力が、急激に膨れ上がる。


(や、ヤバイっ!)


絶技・天冥!ShieL、UDONgE、NRiMAro、WhITe、FAuSt」


 両手を組み合わせて超早口で唱えるダウニー。
 言霊を一つ唱えるごとに、得体の知れないエネルギーが集まってくる。
 だが本来はもっと時間をかけて使う術らしく、その力の収束具合はどうにも雑だった。
 発現する波動も竜巻も、グラグラ揺れていたり現れたり消えたりしている。
 しかし、その危険性は大河の直感が告げている。
 咄嗟に踏み込み、ダウニーを斧の柄で殴り飛ばす。


「ぬりゃぁ!」


「ぐぁ! っく、Ya・O〇ooI…!?」


 大河の打撃で集中力を散らされ大分その力が削られたものの、ダウニーは何とか攻撃を放った。
 しかしダウニーらしくもなく、術の制御が途中で効かなくなる。
 大河に殴り飛ばされた衝撃で片手の力が抜け、組んだ手が解けてしまったのである。
 ガラにもない技を使おうとするから、と言うべきか。
 ナイトメア様、ネタを使わせていただきました。
 低身抵頭して感謝いたします<m(__)m>


「な、なんとぉっ!?」


「しまっ…!」


 それはともかく、途中で術が途切れた結果、大河とダウニーの中間地点で大爆発が起きた。
 大河はトレイターを盾に変化させ、ダウニーは魔力を強引に搾り出して障壁にする。
 凄まじい衝撃が、盾と障壁越しに2人に叩きつけられる。

 2人はその衝撃に逆らわず、空中に吹き飛ばされる事でダメージを受け流した。
 空高く30メートルは打ち上げられ、必死に平衡感覚を取り戻す。
 ダウニーはレビテーションを使い、大河は空中で時々ジャンプをして落下の勢いを減らしていく。


「ふぅ、死ぬかと思った…」


「同感です…私とした事が、面目ない…」


 珍しくしょげているダウニーを見て、大河は一体どうしたんだコイツは、という目を向ける。
 そもそも試合でこのような物騒な術を使う事がおかしい。
 普段のダウニーなら、厳しいながらも手加減をした攻撃を繰り出してくる。
 現に先程までの試合では、常識的な呪文だけで戦っていた。
 一歩間違えれば冗談抜きで死ぬような術など、使うはずがない。
 万が一大河に大怪我をさせて戦線離脱を余儀なくしようものなら、ダウニーはこの場でブッコロされる。
 誰が殺すのかは言うまでもない。
 それでなくても、教師として、公人として洒落にならない罰を受けるのは目に見えている。
 そんな事も解らないダウニーではないだろう。


「ったく…どーしたんだよダウニー先生…」


「つい熱が入りすぎてしまったようです。
 実際、大河君が相手ではこのぐらいはしないと勝てませんからね。
 後で大目玉でしょうが」


「天冥…天国と冥府、ね…。
 つうか、ダウニー先生が某勇者王の技…似合わないにも程がありますぜ」


「? どなたの事です?
 この術は私の3代ほど前の先祖が旅の御人に教えられて以来、代々伝えられているらしいのですが。
 ちなみにその旅人はとある宗教の教祖から教わり、元々邪神コケモモとやらの加護を受けた札の力を発揮するための術だそうです。
 本来ならエネルギーで作った金槌と釘で札を打ち込み、より強く叩く事で威力が増大するとか」


「え、元ネタそっち!?」


 ダウニーが使ったのは、本来ならあまり実用的ではない技である。
 呪文を唱えるのに3秒はかかるし、接近戦用の術にも関わらず両手を組まねばならないから、攻防に制限が出る。
 しかも技術が不完全らしく、術を発動させるとロクに移動できないのだ。
 接近戦に慣れているなら何とかなるだろうが、これだけの術を使える魔法使いは大抵魔法一筋で運動音痴。
 しかしその威力は折り紙付で、ダウニーの鬼札とも言える術だった。
 それが制御を離れて至近距離で暴走すれば、ただではすまない。
 だが大河はほぼ無傷であの攻撃を耐え切った。
 そのバケモノ染みた力に苦笑しながら、ダウニーはさらに言葉を連ねる。


「ルールも制限もなしに戦えば、大河君はの戦闘力は確実にフローリア学園…いえ、アヴァター全土でトップクラスでしょう。
 私や学園長が本気でも、勝率は五分を切る…別に煽てているわけでも、褒めているわけでもありません。
 これは単純な事実です。
 しかし、大河君は奇策に頼りすぎる傾向があります…強さにムラがあるのですよ。
 奇策とは有効ではありますが、一度手の内を見られ、読まれればあっけなく崩壊する。
 大河君、君の実力にはそういった脆さもあるのです」


「自覚してるよ。
 戦いを続ければ続けるほど手の内が知られて、結局は自分の首を絞めている。
 正攻法の力…基礎をどうにかしろ、と言いたいんだろ?
 何より、相手を騙す方法を好んで使っていると、何時の間にか自分が騙される可能性を忘れてしまう」


「自覚はあるようですね」


 ダウニーは特に反応を見せずに、左手の上に魔力塊を形成する。
 飛ばしてくるのかと思った大河だが、同時にダウニーは右手に魔力を集中させた。
 大河の意識がそちらに向いた一瞬の隙を突いて、ダウニーが左手の魔力塊を放り投げる。

 一瞬対応が遅れた大河だが、ダウニーと大河の距離は少々開きすぎている。
 着弾まであと1秒半、といった所か。


「こんなモノに当たるとでも「ブレイク!」!」


 ダウニーの声に応じて、魔力塊が弾け飛ぶ!
 ちょっとした強風が吹き荒れ、大河の目に砂粒が入った。


「ちっ、これが狙いか!?」


「いいえ、こちらが狙いです!」


 下がろうとする大河の周囲に、連続してブレイズノンが着弾した。
 明らかに当てる気のない炎の嵐に戸惑う大河だが、その意図はすぐに解った。
 周囲の温度が急上昇しているのだ。


「これは…ルビナスの錬金術の秘術と同じか!
 さっきの魔力塊でばら撒いた魔力を、ブレイズノンの燃料にしやがったな!」


「その通りです。
 ずっとそこに居ると、熱中症で倒れますよ」


 涼しい顔で、ダウニーはまた炎を放つ。
 大河は何とか脱出しようとするが、ヘタに動けば的にされる。
 ダウニーの右手は、魔力が集中したまま残っているのだ。
 レーザーのように集中して放たれれば、まず間違いなく戦闘不能になる。


(クソっ、少々スマートじゃないが、丸ごと吹っ飛ばす!)


 大河はトレイターを大斧に変える。
 例によって爆発機能を付加し、地面に思い切り叩き下ろした。

 どっごぉぉぉぉぉん!


「ぬぅっ!?」


 大河の周囲の熱量ごと、大斧による衝撃波が空気を薙ぎ払った。
 吹き付けてきた熱風から顔を庇うダウニー。
 しかしその右手は、大河の位置を見失う事なくまっすぐ前に突き出されている。
 あのような大斧を振るった以上、その重量ですぐには動けないはず。


(大河君はこの先に居る!
 頭から右手にソーラーパワーを集め……行け!)


 どういう仕組みか、ダウニーの被っているカツラの頂点付近がカパっと開く。
 その穴から太陽の光がダウニーの脳天に降り注ぎ、これまたどういう仕組みか太陽の光から魔力が急激に集まった。
 頭皮に光が溜まっていき、キラリと輝くと同時に魔力の収束が完了した。


「ソーラ・レイ!」


 ダウニーの手から、現在放てる最大級の威力を篭めたレーザーが飛び出した。
 一直線に進むレーザー。
 確実に大河を捉えるはずの一撃からは、なぜか何の手応えも返ってこなかった。


(外した!? ならば薙ぎ払うまで!)


 そのまま右腕を左右に振り払う。
 レーザーが閃き、当たった地面で爆発が起こる。
 爆風が渦を巻いた。


(爆発の位置を調整して、爆風が私に向かってくるように仕向けた…。
 風が向かってこない…大気の流れが遮られている方向に、大河君が居る)


 そしてダウニーは神経を研ぎ澄ませる。
 前、右、左、後ろ…全方位から押し寄せる風を感じ取る。
 しかし、どの方向からも風は吹きつけてくる。

 ならば。


(上か!)


 顔と喉を庇っていた腕を外し、空中を見上げるダウニー。
 が、いきなり襲ってきた悪寒。


(―――――!?)


 直感を信じて、咄嗟に後ろに飛ぶ。
 その目の前を、何かが物凄い勢いで飛び上がっていった。


(下…!? そうか、地面に伏せていたのか!)


 風を頼りに大河を発見しようとしたダウニーだったが、その方法には3つの死角があった。
 一つ目は、ダウニーが考えたように上空からの奇襲。
 二つ目は、爆発地点よりも遠くに居た場合。
 これに関しては、レーザーが照射した距離を考えると無いだろう。
 そして三つ目は、地面にべったり張り付いて、爆風をやり過ごした場合である。

 大河はレーザーをやり過ごした後、ダウニーの上に向かって飛び上がった。
 しかし不安定な姿勢からのジャンプだったため、ダウニーには届かずその少し手前に着地。
 ダウニーがレーザーを薙ぎ払おうとしていたので、咄嗟に地面に伏せたのだ。
 その後爆風をやりすごして、近距離から一気に奇襲した。

 昇龍拳を放った大河だが、間一髪で避けられて、今はダウニーに無防備な腹を晒している。
 チャンスとばかりに、ダウニーは魔力を手に集中させて剣の形にする。
 これが最も早く呪文も要らない攻撃方法なのだ。
 大河の腹を狙って、ダウニーは手を突き出した。

 避けられた大河は、召喚器の力に任せて空中で軌道を強引に変える。
 ナックル形体だったトレイターを、長剣の形に変えて思い切り振り下ろす。
 狙いは、ダウニーの首筋。



ガギン!
ジュッ!


 大河とダウニーは、最後の一撃を放ったまま動きを止めた。
 ポタリ、と血が滴り落ちる。


「……引き分け…か」


「………いえ…これが実戦ならば、両方とも死んでいます。
 両者敗北、が最も適切でしょうか」


 戦闘終了と見て、ダウニーは手の中の魔力剣を霧散させる。
 大河はトレイターから手を放した。
 トン、と着地して、大河は脇腹を抑えた。
 そこから僅かに血が出ている。
 ダウニーの攻撃は、大河を貫く事も出来た。
 それを敢えて外したのだ。

 最も、それは大河も同じである。
 ダウニーは首筋に添えられていたトレイターから離れる。
 振り返ってみてみると、長剣がダウニーが立っていた場所の後ろに斜めに突き刺さっていた。
 剣の中点付近に、僅かに赤い染みが出来ている。
 ダウニーは首筋を抑えた。
 薄皮一枚を切り裂かれ、こちらも血が滲んでいた。
 もし最後の一瞬で剣撃の速度を緩めなければ、今頃は首筋半ばにトレイターが埋まっていた事だろう。

 役目を終えたと判断したのか、トレイターが消える。
 ダウニーは治癒魔法を使って首筋の傷を塞ぎ、頭に手をやった。
 そしてカツラを取って、大河に差し出す。


「…どうしろってんですか、こんな代物」


「いえお気になさらず。 ちょっとしたイヤガラセのようなものです」


 脱帽、という意味なのかも知れない。
 再びR・新堂な髪型に戻ったダウニーを敢えて直視せずに、大河はカツラを受け取った。
 呪われそうだが、叩き返すのも気が引ける。
 実際の所、冗談だったので叩き返しても何の問題もなかったのだが。

 どうするべきか判断に迷っている大河を見て笑い、ダウニーはそそくさと闘技場から去ろうとした。


「お待ちなさいダウニー先生」


「…なんでしょうか、学園長」


 しかしダウニーの前にミュリエルが立ちはだかった。
 何の用なのか、言われなくても解る。
 先ほど大河に仕掛けた術の事だろう。
 教師が生徒に仕掛けていいような術ではない。

 見れば、ミュリエルだけでなく未亜達も非難がましい目を向けてきている。
 あわよくばさっさと逃げようと思っていたが、これでは…。
 しかしダウニーは欠片も感情を外に漏らさない。


「大河君と一対一で戦わせてほしいというから、黙ってみていれば…。
 一体どういうつもりだったのです?
 この演習の目的を無視したかのような言動に加え、あのような術を使うなど…」


「演習というのは、本気でやらなければ意味がありません。
 とはいえ、確かに力が入りすぎました…処罰は謹んでお受けします」


「そう…自覚しているのですね。
 ならば罰ゲー……もとい、沙汰は追って出します」


「ば、罰ゲームといいませんでしたか!?」


 落ち着いた顔はドコへやら、ギョッとした表情のダウニー。
 それも当然といえば当然で、ミュリエルの明晰な頭脳全てを罰ゲーム…すなわち悪ふざけにつぎ込んだら、一体どのような悲惨な目に合わされるか。
 最近妙に悟った表情をするダウニーといえど、怖いものは怖い。


「言っていません。
 とにかく、処罰は後日通達します。
 …その間、髪を切ったりしないように」


「学園長まで人の頭をオモチャにする気ですか!?」


 学園長まで、という事は、他にも誰かに遊ばれたのだろうか?
 しかしダウニーは、逆に肝が据わったらしい。
 考えてみれば今までアフロやら何やら、往来を歩くのを躊躇うような髪型ばかりだったのだ。
 今更恐れるような事があろうか?
 仮にツルッパゲになれと言われたとしても、放っておけばまた伸びてくるのだ。
 …流石に頭全体を永久脱毛しろとか言われたら慌てるだろうが。

 ダウニーは一つ深呼吸して、乱れた呼吸を整える。


「了解しました。
 ところで学園長、そろそろこの演習の解説をした方がよろしいのでは?」


「そうですね…。
 では、救世主クラス及びルビナス・ナナシ両名、整列しなさい」


 ミュリエルはダウニーから矛先を逸らして、まだダウニーを睨んでいた未亜達に号令をかけた。
 大河はというと、ベリオとリコの治療を受けてじっとしている。
 元々大した怪我ではないので、どちらかと言うと二人のポイント稼ぎに付き合っている、というのが正確な所だろうか。
 リリィは覚えたばかりの回復魔法を試してみるべきか悩んでいたが、悩んでいる内に二人に先を越されてしまったようだ。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


「ああ、平気平気…脇腹の傷も、元々大して深くなかったしな」


「もう、そんな事言って…油断大敵だよ? めっ


 座っている大河の前にしゃがんで、つん、と大河の鼻先を指で突く未亜。
 イタズラっぽい、しかし目の奥の光が「心配したんだよ」と言っている。
 昔から大河はその表情に弱い。
 反論しようにもできず、うーと呻いて大河は黙り込む。

 未亜は少し笑って、ひょいと立ち上がる。
 くるりと振り返ると、スカートが揺れて奥に隠された純白がちょっと見えそうになった。
 狙ってやったのかは定かではないが、その見えそうで見えない演出は見事としか言いようがない。
 代わりに覗いた白いフトモモを堪能していると、両側からつねられた。
 さらにリリィから冷たい視線も飛んでくる。
 ちなみにカエデはというと、未亜の挙動を参考にしようとメモなぞ取っていた。

 そんな事をやっていると、何やら圧迫感を感じる大河達。
 何事かというと、ミュリエルが苛々しながら整列するのを待っているのだ。
 真面目な話をしようというのに、目の前で遊ばれているようで気に入らないらしい。

 そそくさと整列する大河達。
 それを心なしか満足そうに見て、ミュリエルは告げる。


「カエデさんとベリオさんは一分足らずで敗北し、未亜さん、リコ・リス、リリィはそこそこ健闘したものの矢張り敗北。
 ルビナスとナナシさんは…まぁ、経過はどうあれ負けは負けです。
 そして大河君も負けはしなかったものの、勝ちもしませんでした。
 召喚器の力を持ちながら、如何に相手が私とダウニー先生だったとはいえ、一勝も無し。
 この事について、何か申し開きはありますか?」


 厳しい表情のミュリエル。
 先日の乱交騒ぎ以来、ここまで厳しい声色を出した事はなかった。
 忘れかけていたミュリエルの一面に、ぐうの音も出せないリリィ達。

 ベリオ達は決まり悪げに黙っているのだが、大河だけはどこ吹く風……と、言う訳でもないようだ。
 矢張りダウニーに勝てなかったのが口惜しいのか、微妙に唇を歪めている。


「はっきり言いましょう。
 先ほどの貴方方は、戦闘以前の問題です。
 多少は誘導したとはいえ、チームワークを殆ど考えないあの様は何ですか!
 今まで何を学び、日々の中で何を培ってきたのですか!?
 先日の遠征は、貴方達に経験を積ませ、またその絆を深め、チームワークをより滑らかにするためのモノでした。
 えぇ、確かにその目的は達成されたと言ってもいいでしょう。
 しかし、そのチームーワークも、容易く乱されるようでは意味がありません。
 チームワークに何よりも必要なのは揺るぎ無い信頼と、自分と仲間の能力を過不足なく承知する事です。
 いいですか?
 心に刻み付けなさい……『独りで戦うな』と!」


「「「「「「「「はい!」」」」」」」


 一際強く言い放つミュリエルに、思わず背を伸ばして返事をする。
 そこにダウニーが戻ってきた。
 何か取ってきたのか、ポケットが膨らんでいる。


「蛇足ながら」


 ダウニーはミュリエルの横に立ち、授業と同じ口調で話し始める。


「学園長の言葉を補足させていただきます。
 『独り』とは、決して人数の事を言っているのではありません。
 自分の目の前の事だけが全てだと思うな、という事なのです」


「え…でも、それって集中力とかが散っちゃうんじゃないですか?」


 ダウニーの解説に、未亜が質問を挟む。
 ミュリエルはというと、解説をダウニーに任せて沈黙を保っている。


「確かに余計な事を考えるのはよくありません。
 しかし私と学園長が言っているのは、目の前の事に気を取られすぎると背後から何が迫っているのか感知できない、という事なのです。
 先ほどの戦闘を思い返してください。
 まずカエデさんとベリオさんのチームですが…目の前の相手に集中するあまり、お互いの位置確認すら怠っていました。
 そのような状態で、フォローが利くはずがありません。

 相手との力量差が開きすぎている以上、そちらに注意が向くのは仕方ありません。
 しかし、力量差があるからこそ2人は協力し合うべきだった。
 先刻述べた通り、ある程度以上の実力者が手を組めば、その戦力は大きく跳ね上がる。
 ベリオさんとカエデさんのチームに勝ち目があるとすれば、それは2人がそれぞれ相手を分担するのではなく、どちらか一人を一息に撃破する戦法でした」


「むぅ…」


 ダウニーの言葉を噛み締め、検分するカエデ。
 今の今まで忘れていたが、カエデの里でも集団戦のノウハウは習っていた。
 それに照らし合わせてみても、ダウニーの言っている事は決して間違いではない。


「……ダウニー先生の言うとおりでござる。
 拙者、なぜこんな事も忘れていたのか……」


 項垂れるカエデ。
 カエデだけでなく、リリィやベリオも同じように俯いていた。
 なまじ個人の力が強く、大抵の魔物も正面から戦えば負ける事はまず無いため、どうしてもスタンドプレーになりがちである。

 ミュリエルは内心で満足して頷く。
 召喚器の力に知らず知らずのうちに依存していたのだ。
 かつてのミュリエルも、同じ過ちを犯した事があるのでよく解る。
 こうして目の前に突きつければ、そうそう忘れるような事はあるまい。
 それがこの演習の狙いの一つでもあった。


「理解したようですね。
 では次、リリィさん、リコ・リス、未亜さんですが…。
 こちらは、言わなくても解るのでは?」


「……はい…」


 彼女達の敗因は、もっと解りやすい。
 最初からミュリエルの言葉に惑わされて未亜とリリィの距離が開きすぎ、リコと未亜は孤立してしまった。
 何よりも、あのリリィの暴走である。
 その成長速度は褒めてもよいと思うが、チームワークを疎かにする云々以前にミュリエル以外の敵の存在を忘れてしまっては…。
 そこまで考えた時、ふと未亜は気がついた。


「あ、そうか…これも『独りで戦うな』なんだ」


「?」


 リコが首を傾げる。
 ダウニーが頷いて解説しようとするが、唐突に大河が割り込んでくる。
 どうやら暇だったらしい。


「うむ、正にその通り。
 本当はもう少し広い意味で使うんだけどな。
 この世界に居るのは、自分自身と目の前の敵だけじゃない。
 闘いの前に、闘いの後に、俺たちの後ろで、敵の後ろで、世界の反対側で、色々な人達が生きている。
 そしてそれは、大抵の場合何かしら関係があるんだ。
 最初に自分と敵の2人しか居なかったとしても、誰かが通りかかるかもしれない。
 敵の援軍が来るかもしれないし、味方本陣から撤退命令が出るかもしれない。
 関係ない、ありえないと思っていても、予想もしなかった外的要因が絡んでくるかもしれない。
 実際には、自分と敵だけの戦いっつーのはまず無いんだよ。

 だからそう、正確に言い表すと、『独りで戦っているつもりになるな』って事だ」


 長々とした解説だったが、要約すると「視野を広く持て」の一言である。
 当人以外とは何の関係もない、という事象はありえない。
 世界は複雑にからまりあっていて、どこでどう拗れるか解らないのだから。

 その辺りを踏まえて、未亜達は模擬戦の内容を振り返る。
 暫く考えて、それぞれ頭を抱えたりして落ち込んだ。

 それを見てミュリエルは、一応の目的は達したと判断する。
 召喚器の力に溺れ始めている事を自覚させ、チームワークの大切さとそれを乱してくるモノの存在を伝え、そして戦いとはその場限りの事ではないと教え込む。
 ただの捨て駒ならば、こんな事はしなくてもよかったかもしれない。
 しかし当然の事ながら、ミュリエルには娘や飼い主や生徒達を捨て駒なんぞにするつもりはなかった。


「各自、この演習をそれぞれ分析し、今後の戦いに備えるように」


「はい!」×8


 落ち込みから復帰して、元気よく返事をする。
 そこにダウニーが口を挟んだ。


「さて、前座は終わった事ですし、そろそろ本題に入ってはいかがでしょう?」


「? 本題…?」


 リリィが首を傾げる。
 当人達もすっかり忘れていたが、模擬戦はついで程度のものだった。
 そもそも何故勝負なぞに発展したかというと。


「そーだった!
 お兄ちゃん、今日は何処に泊まるの!?
 それからお兄ちゃんはゼロの遺跡とホワイトカーパスのどっちのチーム!?」


 これが元々の理由である。
 一斉に大河に視線が集中し、うぐっ、と呻いて大河は一歩退いた。
 後ろに下がった大河だが、2歩目で早くも後ろに障害物が現れた。


「べ、ベリオ!?」


「どうして後ずさるんですか?
 私達は大河君の希望を聞いているだけですよ?」


(んーな事言ったってが! あんたらのが!)


 笑ってない。
 恐ろしく真剣で、「自分を選べ!」と言わんばかりの眼光を放っている。
 欲が出てきたのか、カエデすらも。
 ちなみにミュリエルも大河を見ていた。
 目は口ほどにモノを言う、との諺を身に染みて理解した大河だった。


「あ、あの…それはだな…」

「それは?」

「えっと…あー、あれだ…」

「偶には野宿、なんて言わないでござるよな?」

「ぐっ…」

「きっちり選んでもらうからね」

「これ以上言葉を濁すようなら…」


 追い詰められる大河。
 ミュリエルとリリィのネコ科コンビが、さらにプレッシャーをかけようと掌に火の玉を生み出した。

 実際には誰を選んでも全員が乱入してくるのがオチなのだが、ここまで来るとオンナのプライドの問題である。
 絶対に後には引けない。
 そして選ばれなかったら、非常手段にすら訴える覚悟がある。


(拝啓 あの世に居ると思われる我が父母へ…。
 お2人の息子は見境のないマイサンのお蔭で黄泉への門を開こうとしています。
 そちらに美人は多いでしょうか?
 死人だらけなので、年頃の娘さんが老化しないとは本当なのでしょうか?
 オヤジは俺の父親なので、やはり女好きだったと記憶していますが…ひょっとして、死んだ後もオフクロに浮気の制裁を受けているのでしょうか。
 それとも逆に公認で?
 もしそうだとしても、大河はこっちでハーレムを作ってから腹上死で死ぬと決めています。
 だからお二方の徳とかタマシイとかをちょっと削って、俺をもう少し生き延びさせてください)


 …酷い息子だ。
 しかし大河の亡き父母は願いを聞き届けてくれたようだ。


「……あの、学園長。
 私が言っている本題とはそちらではなく…いえ、確かに半分はこちらなのですが」


「……失礼しました」


「…お疲れのようですね?
 このような話の流れに乗ってしまうとは」


「いえ別に」


 頬を赤らめるミュリエル。
 最近この手のミスが多い。

 とにかく、ミュリエルは溜息をついて眼光を柔らかくし、そして救世主候補生達に呼びかける。


「落ち着きなさい、皆さん…。
 あなた達のチーム分けに関して発表があります」

「?」


 リコ達の目が大河からミュリエルに移る。
 大河は脱力して腰を抜かしそうになり、ダウニーに支えられた。
 素直に礼を言う大河。


(た、助かったッス…)


(構いませんよ、この後少々付き合ってもらうのですから。

 大体、手当たり次第に女性と親密になるからこうなるのです。
 特に未亜さんのようなタイプは、一度怒ると手がつけられません…妹だけに余計にね…。
 ……一応聞いておきますが、未亜さんには手を出していませんね?)

(そ、それはもう…まぁ、血は繋がってないから問題無いと言えば問題無いんですが)


(おや、そうなのですか?)


 修羅場の恐怖から開放された反動か、大河の口が妙に軽くなっている。
 意外な事実を聞かされて、ダウニーは少し驚いた。


(えぇ…未亜も知ってます。
 あ、これアフレコですよ。
 それにしても、妙に実感が入ってましたね…)


(…………………………認めたくないものだな。自分自身の、若さ故の過ちというものを)


(そんな大人、修正して…もとい、ダウニー先生も?)


 遠い目をするダウニーに、大河は少し驚いて聞き返す。
 ダウニーは私も人間ですから、と言って苦笑した。


(で、どんな女性「ええええ!?」…何ですか、未亜さん」…?)


 小声でダウニーからもう少し情報を引き出そうとする大河だが、聞こえてきた未亜の大声に振り返った。
 そちらでは、ミュリエルは不機嫌な顔で未亜を見ている。
 どうやら遠征のチームは、この試合で分けられたチームをそのまま使う、と伝えたらしい。
 この試合は大河と同行するのは誰なのかを決めるためだと思っていた未亜達には、寝耳に水だろう。

 唐突に奇声を上げた未亜を、他の女性達も怪訝な目で見詰めている。
 未亜は驚愕の表情のまま、叫びを続けた。


「ど、どうして私はお兄ちゃんと一緒じゃないんですか!?」
「どうしてって…未亜さん、それはただの我侭「ダメですー!私がお兄ちゃんを一番上手く操縦できるんだいッ!」…未亜さん!
 そんな駄々を捏ねるんじゃありません!」


 何だかお母んモードのミュリエルである。


「そうでござるそうでござる! 我々も我侭を言いたいのを我慢しているのでござるよ!」


「未亜さん! どうして今回に限って、そのような駄々を捏ねるのです!?
 いいじゃないですか、チームは別でも大河君と一緒にホワイトカーパスに行くんですから!」


「まったくでござる! 拙者とベリオ殿など、それこそ師匠を尋ねて三千里ってくらい遠いでござるよ!?」


 未亜の我侭な叫びに呼応して、カエデ達も騒ぎ始めている。
 早めに鎮圧しなければ、この場でバトルロワイヤルが始まりかねない。


「未亜さん!
 これは子供の個人的感情が割り込むような事ではありません!
 一歩間違えれば死に直結する問題なのですよ!?
 それを「残ったナナシちゃんとルビナスさんで、どうやってお兄ちゃんの浮気を止めろって言うんですか!!!!」……一考の価値はありますね」


「うぉい!?」


 思わず抗議の声を上げる大河。
 個人的感情が入り込む余地は無かったのではないのか?


「だから私がお兄ちゃんと一緒に」


「ダメです。
 アヴァターに来た頃ならともかく、今の未亜さんでは一緒になって暴走するのが目に見えています!」


 的確なミュリエルの却下宣言。
 流石に未亜も自覚があるのか、それ以上は何も言えない。

 うぅ〜、と唸りながらカエデとベリオからの恨めしげな視線を受ける。
 これ以上騒いでも無意味と判断したのか、未亜は大人しくなった。
 代わってリコが前に出てくる。


「しかし学園長、このチーム編成に意味はあるのですか?
 カエデさんとベリオさんは前衛と後衛で納得が出来ます。
 しかし私のチームは後衛のみを集めていますし、新しい体になったとはいえルビナスとナナシさんの力は、大河さんとかけ離れています。
 突出しすぎた能力は、逆にチームワークを乱すのでは?」


「確かにその通りです。
 ですが、お調子者の大河君を諫める役割を2人に期待しているのです。
 大河君は命令よりも自分の判断に重きを置く傾向がありますから、一歩間違えれば暴走してしまうでしょう。
 ですから、行動の前にもう一歩踏み込んで考えねばなりません。
 …ああ、言わなくても言いたい事は解ります。
 ルビナスはともかく、ナナシにそんな芸当は期待できないというのでしょう?」


「む〜、ミュリエルちゃんヒドイですの〜」


 ナナシが抗議の声を上げるが、誰も気に留めない。
 全員がその通りだと確信しているからだ。

 ナナシの抗議を無視して、ミュリエルは続ける。


「私がナナシさんに期待しているのは、どちらかというと錘…大河君が後先考えずに行動しないように、足枷になる事です。
 ぶっちゃけた話、戦闘力も低ければ状況判断もまともに出来ないナナシさんを抱えていれば、問答無用で単身突撃して大暴れなんて事はできないでしょう?」


「「「「「「ああ、なるほど」」」」」」


 一同、心底納得した。
 ニューボディを使いこなせれば戦闘力も高いかもしれないが、それでフリーズしてしまったのはつい先程。
 一つ一つの性能が高くても、連動していなければ意味がない。


「ルビナスちゃ〜〜ん、どうにかして動けなくなっちゃうのを直してほしいですの〜」


「解ってるわよ。
 私だって自分が創ったホムンクルスが欠陥品のままだなんて、耐えられないんだから。
 …それにしてもどうして…ボディ自体は私と同じだから問題ないわ。
 となると火気制御器官とかに問題が…」


 ルビナスに泣きつくナナシと、ブツブツと考えこむルビナス。
 足手まといと断定されているにも拘らず、やっぱり笑顔のナナシだった。

 納得はしたが、リコはまだ釈然としていないらしい。
 どうにも理由が付け足し臭いのだ。
 それに、自分達のチームが遠距離攻撃専門のみである理由も知らされてない。
 リコの表情を読み取ったのか、ミュリエルはさらに続ける。


「リリィ達のチームは、主にホワイトカーパスの精鋭部隊と組んでもらいます。
 前衛はあちらの兵士達に任せ、ただひたすら攻撃呪文に集中してください。
 まぁ、細かい役割分担はあちらの責任者と相談してもらう事になりますが」


「…わかりました」


 一応の納得はできたが、やはり釈然としない。
 それでもリコは引っ込んだ。


「質問は以上ですか?
 …それでは、本題その2に入りましょう。
 大河君、逃げないように」


「ギクッ!」


 話が終わったと見て、コソコソ逃げ出そうとしていた大河の背中が跳ね上がる。
 次の瞬間、カエデのクナイが大河の影に突き刺さった。
 威嚇かと思って逃げ出そうとしたが、体が動かない。


「か、影縛りか!?」


「お察しの通りでござる。
 師匠、ここで逃げる事はゆるされませんぞ」


「逃げ出そうとしたら、ペナルティよ。
 とりあえず私の作った薬の実験台になってもらおうかしら。
 大丈夫よ、成功すれば未亜ちゃんとかが物凄く喜ぶ薬だから」


「私ですか…?
 よく解りませんけど、取り敢えず逃げ出そうとしたからペナルティ1ですね」


 わらわらと大河の周りを囲む未亜達。
 再び訪れた修羅場の空気に、大河は失神寸前である。
 一度切れた緊張は簡単には戻らないのと同じで、地獄から抜け出して天国だと思ったらまた地獄への道を見せられる。
 これをやられると、大抵の人間は泣いて許しを請う。


(友よ!
 誰でもいいから友よ!
 誰か助けてくれい!
 ダウニー先生、もう一回ヘルプ!
 このまま話が進むと、ダウニー先生の用事とやらにも差支えが出ます!)


 恥も外聞もなく助けを求める大河。
 そして一体何がどう影響したのか、本当にダウニーが寄って来た。
 何故に修羅場の邪魔をするのか。


「あー、大河君、そろそろ私の用事に付き合ってください。
 学園長に救世主クラスの諸君、すみませんが大河君をお借りします。
 早めにやっておかないと、間に合わなくなってしまうので」


 邪魔をするなという視線を受け流し、平静そのもののダウニー。
 ただし本人も自覚しない程度には体が震えていたりする。
 流石にこのまま強引に連れて行ってもまずいと思ったのか、ダウニーはもう少し妥協案を出す。


「私はどうでもいいですが、今この場で大河君にどこに泊まるか決めろと言っても、そう簡単には決まらないでしょう。
 ならばそれぞれの部屋の特徴とか長所をアピールしてはどうでしょうか?
 これだ、という部屋があるかもしれません。
 大河君、何か希望はありますか?」


「あ、ええと……実はそろそろ和室が恋しくなってきてまして」


 カエデに一斉に視線が向く。
 シノビとしての文化生活を送っていた彼女は、やはり自室も古き和のニオイが漂う部屋なのだろうか。
 しかしカエデは難しい顔で唸っている。
 …よく考えなくても、救世主クラスの部屋は全て同じ洋室である。
 当然、カエデの部屋だけ床を畳に張り替えたりする事もない。
 ならば敷布団はと言うと、カエデはアヴァターに来て初めて使ったベッドの虜になっていたりする。
 態々布団を敷かなくてもすぐに横になれるし、何よりふかふかでスプリングが効いている。
 襖なんぞ使うスペースもないし、個人部屋で仕切りが必要ないので屏風もない。
 そんな訳で、カエデの部屋にも和室を連想させるようなモノは無かった。
 …なぜか部屋の片隅に兜なんぞ飾ってあったりするのだが。

 ダウニーは冷静に言葉を紡ぐ。


「ならば、全員がそれぞれ和室…大河君が居た国の伝統的な部屋の形体ですが…を演出して、それを見て大河君に決めてもらいましょう。
 例えば…和の文化というと、カエデさんの振る舞いや格好を見る限り、レッドカーパス州の辺境の文化が近い…。
 弓道や着物の類ですね。
 知らない文化に触れるのも悪くはありませんよ。
 制限時間は…そうですね、夕食の時間までです。
 異論はありませんね?」


 返事をする暇も惜しんで、全員が脱兎の如く駆け出した。
 それを見送る大河とダウニー。


「すげー…口先三寸で手玉にとっちまった…」


「冷静さを欠いている状態でしたからね…。
 あの条件では、未亜さんやカエデさんが有利だという事に気付かない程。
 しかし大河君、問題は先送りにされただけだという事を忘れないように」


「ははは…まぁ、とにかく助かりました…」


 ダウニーに頭を下げる。
 こんな事で下げずに、もう少し他の事で下げて欲しいと思うダウニーだった。

 しかし、一体どうやって夕食までに部屋の内装を変えるつもりだろうか?
 どう考えても時間が足りないと思うのだが。


「それで、手伝いってのは何ですか?
 とんでもなく大きな借りを作っちまったし、大抵の事はしますけど」


「いえ、そんな大それた事ではありません。
 ちょっとした……まぁ、愚痴ですよ」


 愚痴。
 大河は意外に思った。
 ダウニーが愚痴るのも意外と言えば意外だが、それ以上に大河をその相手に選ぶとはどういう心境か。
 …やはり髪に関する愚痴だろうか?


「それでは、少々移動しますので付いてきてください。
 学園の外まで出ますから」


「はぁ…」


 R・新堂な頭を晒したまま、ダウニーは歩き出す。
 その後頭部を見ないようにしながら、大河はダウニーについていった。


 フローリア学園は、崖の上に設立されている。
 学園の外に出て壁に沿って歩いていくと、当然崖っぷちに出る。
 大河はダウニーに連れられて、東側の崖に臨んでいた。

 ダウニーは何をするでもなく、崖っぷちで遠くを見詰めている。


「あのー、ダウニー先生?
 一体何を……」


「…今日は……」


 大河の声に応えるように、ダウニーは静かに話し出す。


「今日は、妹の命日なのです」


「! ……御愁傷様です…」


 遠い目で相変わらず虚空を見ているダウニーに、大河は両手を合わせる。
 ダウニーは振り返って一つ頷き、ポケットに突っ込んでいた両手を出した。
 どこかの民族衣装なのか、奇妙なガラのバンダナを手に巻きつける。
 そして人差し指と中指を伸ばした両手を、胸の前で交差させる。
 それから円を描くように手首を回し、右手を握って自分の心臓を打つように左胸に軽く叩きつけた。

 大河はそれを見て、大きく目を見開く。


「その印は…」


「? ああ、これですか?
 これは私の故郷に伝わっている印で、死者への鎮魂の祈りを表すのです。
 他にも幾つかバリエーションがあり、試練へ向かう挑戦者への励ましや、日々の平穏への感謝…。
 円の描き方と巻きつける布の色で意味が変ります。
 この印が何か?」


「いえ、確か遠征から帰る時にリコが同じ印を…。
 村人達への祈りで…」


「リコさんが?
 …彼女はホワイトカーパス出身なのかもしれませんね。
 この印は、かつてホワイトカーパスで信仰されていた神…邪神とされていますが、本来は穏やかな神です…への祈りなのです。
 かの神は死後の安寧と幸福な転生を司り……いえ、話が逸れました。

 この印は本来、一人で結ぶ印ではありません。
 亡き妹への祈りのため、大河君に相方を務めてほしいのです。
 これを巻いてください。
 まず、私が両手を組んだら…?」


 大河はダウニーからバンダナを受け取り、腕に巻きつける。
 そして両手を組む。
 ダウニーは少し驚いた。
 ダウニーとは少し違う形の組み方だが、この場合はこれでよかった。
 それはダウニーの印と対いなる組み方だったのである。
 驚くダウニーを他所に、大河はさらに手を動かした。


「ここで、手をこう動かして、それからダウニー先生が胸に手をやったら、同時に拍手を打つ…ですよね?」


「え、ええ……意外ですね、大河君がホワイトカーパス特有の信仰に詳しいとは…。
 この印はとてもマイナーなのですが」


「別に詳しい訳じゃありません。
 ただ、昔ちょっと……」


(昔?)


 大河の昔と言えば、アヴァターとは全く違った場所で生きていた筈だ。
 当然、ホワイトカーパスの宗教の事など知る由もない。
 ならば昔に何があったというのか。

 ダウニーの疑問は放っておいて、大河はまた両手を組んだ。
 それを見てダウニーも疑問を放り出し、亡き妹を思って両手を組む。
 ダウニーの手首が円を描き、大河の両手が左右に広げられる。
 そして大きく広げられた大河の両手が打ち合わされると同時に、ダウニーの手が心臓の上を叩いた。

 そのまま目を閉じて1分ほど黙祷する。
 今は遠い面影が、ダウニーの中で蘇える。
 ダウニーは、その姿が奇妙な程に鮮明に思い出せるのに気がついた。
 今までは、どこかぼやけていたのに。

 ダウニーと大河の2人が目を閉じている間、2人の周囲をどこからともなく集まってきた青い光が舞っていた。
 音もなく気配もなく、それはダウニーを慕うように、慈しむようにダウニーの周りをユラユラ揺れながら回る。
 しかしダウニーは気付かない、大河も気付かない。
 光は2人が目を開ける前に、スゥーっと薄れて掻き消えた。


「…………ありがとう大河君。
 手間をかけましたね」


「いえ、これくらい……ところで、ちょっと教えて欲しい事があるんですけど。
 この印で祈りを捧げる対象って、神だか邪神だかですよね?」


「ええ、かつて旧ホワイトカーパスを守護していた神です。
 詳しい事は、『幻想砕きの剣5−5』に授業風景として書いてあります」


「そんなに大した事は書かれてないけどな。
 邪神に関する事は精々2文くらいだし…。
 それはともかく、その神の名前とかを教えてほしいんですけど」


「おや、民俗学にでも興味が沸いたのですか?
 はっきり言いますが、似合いませんよ」


 ダイレクトに言われて、大河はダウニーを崖から突き落としてやろうかと思った。
 キタキタオヤジ張りの素晴らしい落ちっぷりを期待したいが、レビテーションがあるので無理だろう。

 茶化したダウニーは、素直に大河の質問に答える。


「旧ホワイトカーパスが滅びた頃は“破滅”の真っ最中から直後でしたし、その頃は神話や伝説を伝えるような余裕はありません。
 邪神扱いされていたのだから尚更ですね。
 ただ、僅かに残されていた資料や口伝によると…目は鬼灯よりも赤く、その牙は伸縮自在で、爪は緑色、体は縄のような形で非常に長く…。
 さらに鱗は非常に硬く魔法を弾き飛ばし、その息はあらゆる魔力や大気の流れを狂わせ、龍と見紛わんばかりの巨体でもあり、別の説では人間を何とか一飲みにできる程度の大きさだった、と伝えられています。
 この記述を聞くと真っ先に連想される姿は龍なのですが、『龍と見紛わんばかり』と言われているように、どうも龍ではないようです。
 近年では恐らくワニかヘビ…または恐竜と考えられています」


 大河はダウニーの言葉を一つ一つ吟味し、ある人物の姿を思い出して照らし合わせている。


「……名前は?」


「名前は複数あるのですが……主な呼び方は、『アルムガナ=ジャクティ』『アームガナ=ジャックト』『アルムグナ=ジャククト』など、まぁ大体その辺りです。
 長い間に訛ったりしているので、どれが実際の呼び方かは解りませんが…」


(…………可能性は…有る…。
 名前も、似ていない事はない……。
 ひょっとしたら、俺の回りでよく起きる現象は…。
 もしそうだとすると、旧ホワイトカーパスってのは…そして俺がアヴァターに呼ばれたのは…)


「詳しい事は、図書館で調べた方がいいでしょう。
 私もあまり細部までは知りませんから……。
 いくらホワイトカーパス出身といえど、全てを伝え聞いている訳ではありません」


「え、ダウニー先生はホワイトカーパス出身なんですか?
 それじゃ、故郷が心配じゃあ……」


 大河は先程までダウニーが目をやっていた先を見る。
 大河は知らなかったが、その遥か先はホワイトカーパス州だった。


「確かに心配ですが、私の係累はもう居ませんし、育ちはホルム州です。
 それに私にはやるべき事があります。
 この学園で教師を務め、そして生徒達が戦場に出る事になった時、少しでも生還率を上げられるように、その心身を鍛えなければなりません」


「それはそうですけど…」


 例えアフロその他になったとしても、ダウニーの授業は厳しく、そして為になる。
 確かに笑いが伝染して授業にならない事はあるが、そういう時には課題の方が容赦ない。
 八つ当たりも兼ねているのかどうかは知らないが。


「それに、ホワイトカーパス州には貴方達が向かうでしょう。
 ならば大分戦線は楽になるのではありませんか?」


「…言ってくれますねぇ…否定はしないけど」


 苦笑する大河。
 その大河を眺めて、ダウニーは思い出に沈むような表情になった。
 それを見て首を傾げる大河。


「どうかしたんスか?
 そう言えば、愚痴を聞いてもらいたいって言ってましたが。
 そもそもどうして闘ったんです?」


「そうですね……では、少々長くなりそうです。
 座りましょうか」


 ダウニーは近くにあった岩の上に腰掛けた。
 大河も習って、適当な木の根元に腰を下ろす。

 ダウニーはまるで壁にでも話しかけるかのような口調で話しだした。
 返事を求めてはいないのだろう。


「…大河君と未亜さんを見ていると、昔の私と妹を思い出します。
 ……まぁ、有体に言ってブラコンの妹でしてね…どこに行くにも、お兄ちゃんお兄ちゃんと呼んで後ろを付いてきたものです。
 他の女性と話していると、何時の間にか背後に居て恨めしげな視線を送ってきて…。
 身内の贔屓目というのもあるでしょうが、とても愛らしく…そう、あやうく危険な属性に目覚めるところでしたね、思い返せば。
 私は大河君ほどしっかりしてもいなければ自信家でもアッパラパーでもありませんでしたが、何とか食いつなぐ事は出来ていたんです。
 両親は居ませんでしたが、あの頃は本当に幸せだった…。

 ですが、それも……長くは続きませんでした。
 妹は、死んでしまった……」


 懺悔をするかの如きダウニーの愚痴。
 大河は黙って聞いている。
 しかし思う。
 もし未亜が死んでしまったら、自分は一体どうするのだろう。
 ネットワークに関与している以上、多少の無茶は効くだろう。
 ひょっとしたら、対価次第で死者を生き返らせる事もできるかもしれない。
 だがそんな問題ではないのだ。
 護ると決めたたった一つの大事なモノ。
 護れなかったら、それから後はどうするのか。

 大河の思いを他所に、ダウニーはやはり愚痴を続ける。
 妹の死因を語ろうとはしなかったが、その原因に対して暗く深く、どうにもならない程の感情が渦巻いているのが大河には感じ取れる。


「それからというもの、私は抜け殻…いえ、呼吸する死者ですね、あれは。
 とにかくそうやって時を過していました。
 人間とは自分で思っている以上に生き汚いもので、『このまま何もせずに寝転んでいれば死ねるかな』などと思っていても、気がつけば『腹が減った』などと考えているんですよ。
 ズルズルと生きるでもなく死ぬでもなく、全てに絶望していた私はある人に出会いました。
 それからまぁ、色々あって…必死で修行を繰り返したのですよ。
 当座の目的が出来ましたし、その為に動いている間は、少しは気が楽になれた…いえ、今だからそう思う錯覚ですね」


 そこまで話して、ダウニーは深く溜息をついた。
 その様子は、まるで長年尽くしてきた会社にあっさりリストラされてしまった課長…しかも定年を無視した爺様…を連想させる。
 とにかく、ダウニーからは無力感や無気力感が強く感じられた。


「ですが、その目的は果たされませんでした。
 …目的を果たす前に、相手が絶対に手が届かない所に行ってしまったのです。
 その時、私の心は死にました……。
 それからと言うもの、私は流されるままでした。
 状況に流され、立場に流され、そして他人の望みに流されて…そして私はここに居ます。

 大河君、君が言った事は本当です。
 生きていると錯覚した傀儡、周囲を巻き込んで“破滅”に沈んでいく……何一つ反論できません。
 まぁ、気付いたのは最近なのですけど」


 ダウニーは空を見上げた。
 青い。
 憎たらしいほどに青く、日差しが妙に強い。


「私はね、大河君。
 なんと言うか……自分を君達とは違う生き物だと思っていたんです」


「違う…生き物?」


「はい。
 感情や欲望や情に流される事なく、合理的な判断を下し、論理に則って行動する…。
 そう、その辺の人間よりも…そうですね、階層が違う…とでも表すのでしょうか。
 食物連鎖を表すピラミッドの頂点に、もう一つ段があって自分はそこに属しているのだ、と考えていたんです」


「その例えで行くと、ダウニー先生はカニバリズムって事になりますが」


「あくまで例えですよ…。
 しかし、あまり間違ってもいないかもしれませんね。
 直接食べるのではなく、自分のために糧にするという点では同じでしょう。
 強者は充足を得、弱者は強者の糧となる。
 この世界の真理の一面です。
 そして私は強者…優れた者だと思っていた。

 まぁ、今となっては私如きが何を思い上がっている、としか思えませんね。
 自分は俗物とは違う特別な存在だ、と思っている時点でどうしようもなく俗物だというのに」


「それはまぁ……って、ひょっとしてそう思い始めたのって俺のせい?」


 ダウニーは無言で頷いた。
 大河はアヴァターに来てからというもの、直接的に間接的に、ダウニーをギャグキャラに蹴り落としまくっている。
 これで『自分は特別優秀なのだ』などと思えるほど、ダウニーはイカれてはいない。


「じゃあむしろ感謝してもらわないと。
 俺のお蔭で自惚れが消えたって事でしょう?」


「確かにそういう捉え方も出来ますが…今までの所業を思い返すと、むしろフツフツと殺意が沸いてきますね」


 苦笑するダウニ−。


「確かにそうかもしれませんが、自惚れていたほうがずっと楽だったかもしれません。
 …私は今、歩いてきた…流されてきた道を振り返っています。
 その中で、どれだけのモノを捨ててきたのか……。
 私が思っていたよりも、私の世界は素晴らしかったのに。
 全て自分で捨ててしまった。
 運命の分岐点は遥か昔に過ぎ去り、私はもう後戻りできない道の中に居る」


「…後戻りできないのは、誰だって同じですよ。
 陳腐な言葉ですが、過去の成功は、成功するだけじゃなくて未来にまでその成功を持っていかなきゃならない。
 逆に過去の失敗を未来に持ち込む事もないでしょう。
 これからの行動次第で、過去の失敗も少しはマシにできるんじゃないですか?」


「その通りです。
 これからの道を少々変える事は出来るでしょう。

 …人は誰しも道を誤るし誤りに気づくコトもあります。
 そんな時どうするか。
 間違いを正すか?
 後戻りは出来ないと突き進むか?
 私はどちらも人として間違ってはいないと思います」


「状況次第ですが…確かにそうかもしれませんね。
 で、ダウニー先生はどっちです?
 何れにせよ、過去の失敗を成功に変えられるチャンスがある事を祈りますが」


「ありがとう。
 私はどうやら後者のようです。
 私は、私が出来る事を見つけてしまった。
 それが許される事ではないのは承知しています。
 ですが、亡き妹のため…いえ、これは言い訳ですね。
 私自身のために、私は私の意志でこの道を進もうと思います。
 出来る事があるのに、何もせずにいる事はできませんから…。

 …今日大河君達と戦ったのは、感傷のようなものです。
 日々力を磨き、また愉しそうにしている君達を見て、私にも同じような時期があった事を思いだした…。
 ふと思ったんですよ…。
 今の自分に、あの頃の自分はどれだけ残っているのか…。
 それを確かめたくて、戦いを挑んだのです」


 ダウニーはそう言ってまた空を見上げた。
 聞いただけでは、ダウニーは悪い事は言っていないように聞こえる。
 しかし、ダウニーがする事一つでそれも引っくり返る。
 現にダウニーも、自分で『許される事ではない』と言っている。


「…許されなくても止まれない、ですか…イヤですね、そういうのは…」


「大人は複雑なんですよ」


 そう言って、ダウニーは立ち上がる。
 そして普段通りの雰囲気に戻って歩き出した。


「お手数をおかけしましたね、大河君。
 それでは、早めに戻って体を休めておくように。
 ああ、それと…あまり未亜さん達を待たせるものではありませんよ」


「うげ…」


 これから遭遇するであろう修羅場を想像してゲッソリする大河。
 ダウニーはそれを見て、普段よりも大きくはっきりした笑い声を上げて、職場に向かって歩いていった。


追記


「ナナシちゃん…ひょっとしてディバイディングドライバーとドリルプレッシャーパンチを同時に使おうとしなかった?」


「ほへ?
 え〜と、フルオープンアタックするつもりだったから、片っ端からコマンド入力したですの。
 多分、両方発動したですのよ」


「…説明書、読んだ?」


「…真ん中から前に2ページ行った辺りの4コマ漫画付き説明の終わりを6文字ほど」


「………あ・の・ねー!
 右手でディバイディングドライバー射ちながら右手でドリルプレッシャーパンチを撃ったら、違う動作がぶつかり合ってバグるに決まってるでしょ!
 ああもう、我が半身ながら、ナナシちゃんにマトモな読解力を期待したのが間違いだったわ…。
 操作性よりも自由度を優先した私のミスね…。
 ちゃんと説明書に、『同じ部位を使った技は同時に発動させない』って書いといたわよ。
 はぁ……ナナシちゃんの体のFCSを書き換えなきゃ…」



えー、業務連絡、業務連絡ですー。
来週は就活のため東京に行かなきゃならんので、投稿が遅れる可能性が高いですー。
うう、冗談半分で応募したら何故か一次選考にウカってしまった…。
筆記は多少自信があるけど、面接がなぁ…スーツ着なきゃイカンだろうし…
いくら注意に服装は何も書いてなかったとはいえ……これで受かれば儲け物、玉砕してキマス。
ガンパレード・オーケストラにハマり、工藤に萌え(微妙にヤバイ)てペンギンと仲良くできないと悩む時守でした。
うう、また水曜日中に投稿できなかった…。


それではレス返しです!

1.くろこげ様
お久しぶりです。
アレですね、MSの性能差は戦力の決定的な差ではないという事ですね。

アフロ神は…信じるしかないでしょう。
だって本人がとり憑かれてたくらいだし(汗)


2.3×3EVIL様
アレでも一応教員免許は持ってるんでしょうねぇ…。
学園に潜入するために、コツコツ勉強するダウニー…あかん、シュールだ。
それとも軍団の力で根回ししたのかな?

未亜に怪我をさせるにしても、多少の怪我なら問題ないのでは?
大河はそれだけでもそこそこ頭に来るでしょうし、翌日からの遠征までには召喚器+回復魔法で完治できるし。
模擬とはいえ戦闘なんだから、怪我をするのは当たり前と言えば当たり前なんですよね。


3.影月 七彩様
日光浴で光合成…というか、単にソーラー電池では…。
ダウニーは一部ロボットに改造されている?
多少は魔力も回復するかもしれませんね。

え〜と、今は一見するとR・新堂じゃありませんでした。
カツラ被ってましたから…。

固有結界は、『無限の薬製〜ゲキヤクシカナイヨ〜』かもしれませんねw


4.カシス・ユウ・シンクレア様
経験は…って、それをミュリエル学園長に言うのは綱渡りかも…そろそろ年齢が気になる頃でしょうし…。
今の救世主候補生達は、そこらの雑魚か強力でも少数の敵しか相手にしてませんからね。
化けるとしたらこれからでしょう。

確かにルビナスもかなりの経験を持ってますが…記憶アボ〜ンになってますから、どうにも有効活用できません。
スーパーイナズマキック…あるいはユニゾンキックも可w

セルとアルディアについては、もう2,3転することになりそうです。
クレア?
彼女を幸せにせずに、誰を幸せにしろと?


5.沙耶様
萌えられましたか。
むぅ、リリィってこういうのが妙にやりやすい…人気がでるワケだ。


6.流星様
マヌケなんだから、戦いもボケてもらおうかと思いましたけどねw
ネタがルビナス以外に思いつかなかったのでパスしました。

波動拳コマンド…で、いきなりぢばくって事もありそうですな。
だってルビナスだし…誤作動とはいえ、現に自爆しましたし。


7.文駆様
髪の毛だけでも充分勘違いされそうですが…。

残念ながら、ナナシの勇姿は全くナシでした。
期待外してスイマセン…。

新機能ではありませんが、ルビナスに新技能が付きました。
題して『我が子への思い』。
薬や試験管を壊されると物凄い気炎を上げます。


8.とんちゃん様
時守としてもこのままギャグルートを走ってろと言いたいのですが、こうでもしないと盛り上がらないので…。
これからはギャグではなく、シリアスしつつも何処か三枚目…がダウニーのポジションになりそうです。

デレ状態の強気な女の子っていいですねぇ…。
ロリになったら…今のまま強気でしょうか?
それとも幼児退行して、完全な甘えん坊になるのでしょうか?


9.試作弐号機様
額から上を隠さなくても、一応ヅラを着けてますw

今の状態でも“破滅”の頭領やってられるかはちと疑問がありますな。
確かに貶めるやり方をすれば強いでしょうけど…そもそも真正面から向き合った時点で選択ミスなんですよね…。

ディスパイアーはその内出しますよ。
かなり先になりそうですけど…。

飼いネコになってから、リリィはデレ一直線です。
人目がある所ではツンもあるでしょうけど。

生態変化してるのは…まぁ、ルビナス作だし。


10.アレス=アンバー様
確かに…ダウニーがマトモだったのって、大河と初めて会話した時の1シーンのみでしたね…。
イメチェンせねば、今後の展開に支障が出ますわ。

リリィ…は、この後どうやって萌えさせようかなぁ…。
モラルに関しては、あの乱交はマタタビのためだと思っていたかったのでしょうw
ロリ化はその内やりましょう、是非とも。

残念ながら、ナナシとルビナスの活躍はまだでした。
ゴメンナサイ<m(__)m>


11.博仏様
何だかんだ言っても、教師として一級の実力者ですから。
リリィパワーアップの布石も出来たし、今後はどうやってそれを活かしていこうか迷っています。

ルビナス&ナナシは、実戦経験は無いに等しいですね。
覚えていないし、戦術のノウハウはあくまで知識のレベルに留まっています。


12.根無し草様
アレな扱いのまま最後まで突っ走れれば最高でしたが…。
オリキャラのラスボスを作るほどの技量が無いのです(涙)

パワーアップの場面は、スーパーサイヤ人誕生以前からのお約束ですな。
あそこに力を入れねば、漫画も小説も成り立たぬ…ってくらいに。

電気ジャー三杯といわず、是非ともリコと一緒に鉄人ランチを…。


13.蓮葉 零士様
何時になるかは解りませんが、アルディアの日記帳だか学習帳だかはやろうと思います。
一応ネタも思いつきましたし…。
でも外伝やるなら、先にやっておきたいのが一話あるので。

エルダーアークはまだ召喚できませんね。
原因はまだ不明ですが…。
あの怒りがルビナスの実力…なのかなぁ?


14.ATK51様
断罪…とも少し違ったようです。

「やってみなくちゃ解らない」は、用いていい場面とそうでない場面が明確に分かれるのだと思います。
失敗しても大して痛くない場合と、何もしなければ結局最悪になる場合…が用いていい場面の代表でしょうか。
その点では、大河の使い方もかなりギリギリですが…。

リリィがミュリエルを超えられるのは、当分先になりそうですね。
…よく考えてみると、学園長って今でもライテウスを使えたような…一回きりとはいえ、原作でも使ってたような…。


15.黄色の13様
ギャグキャラが唐突に真面目になると、意表をつけるという見本ですかね。
…その場合、大抵は近いうちにお陀仏するかレギュラーから外れますが。

終わりのクロニクルと…ですか?
それはまた……面白そうですね!
最終決戦というと、終わりのクロニクルのですか?
デュエルセイバーのでしょうか?
クロニクルはまだ読んでないっす。


16.悠真様
ダウニーの輝きが、蝋燭が消える寸前の光でなければいいのですが…。
初めてダウニーと戦った時には、結構梃子摺りました。
DSJでやったら楽勝でしたけど…。

ダリア先生も、多分洒落にならないほど強いです。
ハーレムルート・クレアルートでは、魔物の大群に空中戦を挑んだ挙句、EDではピンピンしてましたし。

ロリィ…名が見事に体を表していますねw


17.竜神帝様
個人的には、ああいう真面目キャラの味よりもギャグキャラの珍味の方がよかったのですがw


18.K・K様
OGYANOS!
カッパとネコマタ…妖怪コンビですね。

生憎と、ルビナスとナナシは完全に自爆でした。
強引かなーとは思ったのですが、ルビナス暴走の光景を思いついたらやらずにはいられなくてw
やはりダウニー先生を即シリアスキャラに戻すには抵抗があったようです。

お兄ちゃんにスク水…ナンと言うか、セルが萌え転げる様が易々と目に浮かびますね。
そして柱の影から、ジュウケイが『ナニかしやがったらその喉元掻き切るぞゴルァ』みたいな…。

目からビームが当たり前なら、口から怪光線は!?

では、OGYANBYE!


19.神曲様
是非ともまたやってくださいw
生暖かい目を通り越して激しく燃え上がりますから!

8章からでも出番があっただけマシでは?
最初は“破滅”云々を放り出して、最後まで踊ってもらおうかとも思ってましたし。


20.鈴音様
ボディがパワーアップしてても、中身がダメダメでした。
まぁ、次に彼女達が暴れるシーンでは完全武装になってますからご勘弁を…。

えー、格ゲーってフィーリングだけでも案外何とかなりますよ〜…今回はなりませんでしたが。
技だけ覚えてしまえば、細かいシステムは放り出しても…それじゃ楽しみが半減しますがw
時守は格ゲーは得意な方なのですが、細かいシステムを使いこなすほど器用じゃないのデス。
最後にルビナスも言ってますが、ナナシに的確な状況判断を期待せずに、極力オートにするべきでしたね…。


21.ナイトメア様
何だか大変そうですね…無理をしないでください。

鼻毛アフロ…グラサン付ですか

何かSSを執筆されるのですか?
投稿されたら是非教えてください!

少なくとも母娘は…ヤルつもりだったのですね…(汗)
ムドウ…メスなら許せるが、オスは産廃並みですな。

ギリシャ神話の連中っつーと、嫉妬の女神ヘラとか拉致って強姦しやがったゼウスとかの辺りですか。
規模が違うだけで、やってる事は大差ないですね…。

ウサギカエデのミミは、体全体を覆うくらいに巨大に違いない!
いやもう時守が決めました!
そして羽で空を飛ぼうとバタバタ振り回すのです!

ちゅーかダウニー、君が打ち落としたのってひょっとしてガルガンチュワ?
旗艦を自分で落してどーすんの!


22.アルカンシェル様
イデの意思っつーより、ケイサル・エフェスの意思かも…。

いえいえ、ベリオとカエデの体の相性は結構イイですよ?
2人ともムネおっきいしw

種死は見た事ないんですが、悟りきってはいないよーです。
これからもそこそこ笑わせてくれ、ダウニー!
私情に走ってもらうから。

ロリリリィは何時になるやら…とりあえずこの章を一段落させねば。


23.舞ーエンジェル様
ああ、あの時に使った技でしたか。
名前まで覚えてなかった…。
チャンスがあれば使ってみようと思います。
暗黒の嵐を掻き消すのだから、かなりの破壊力でしょうね…。

クレアの大人バージョンに使うんですか?
成長したクレアを敢えて子供にし、体は子供、頭脳(と性感)は大人…。
イイかも?


24.なな月様
で、デコブルマ…噴出しちゃったw
でも…似合いそうですな…。
カエデとかよりも、リコとイムの方が似合うと思います。

ええ、指は攣りますね。
おかげで連射パッドが神からの授かり物に思えるほどに。
それでも出来ない攻撃もありますが(涙)
…デコブルマだけじゃなくて、マゾブルマでもOK。

ソーラレイ…ご要望通り出しましたよ。
レスを見てから、30秒くらいで付加したのでおざなりになってしまいましたが…。

楽園の扉の鍵は一つ解かれた。
だが、この世はまだまだ広い。
世界には我々が未だ遭遇した事のない萌えが渦巻いている。
その全てと対面を果たした時こそ、全ての鍵は解かれるであろう。
そう、楽園とはその扉を開くための鍵達そのものなのだ。


25&26.神〔SIN〕様
オリジナル召喚器、ですか…。
そうか、盾という手があったか…。

一応オリジナル召喚器は出すつもりだったんですよ。
正直、名前をどうしようか悩んでいたんですが……この際ですから、ありがたく使わせていただきたいと思います。
機能については、展開次第で全く違った物になるかもしれませんが…。
誰に持たせるかは、もう決めてありますよ〜。

でも、トレイターのバイク化はちと難しいッス。
…アレですね、バーチャンロンのテムジンとか仮面ライダーのサーフィンみたいに突っ込むやつなら…。

ところで…前から気になっていたのですが、一番下にある記事をどうこうする機能で、レスの修正も出来るのではないですか?
使った事ないから解りませんけど…。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze