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「これが私の生きる道!地球編5(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-02-14 14:54/2006-02-18 01:44)
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(プラントザフト軍事工廠)

この施設は開戦前から多数の研究成果をあげて
プラントを救って来た。
モビルスーツジンやその派生機、後継機、
ニュートロンジャマー、高性能の宇宙用艦艇、
通常動力の大型高速潜水艦、陸上用艦艇、
ニュートロンジャマーキャンセラー・・・。
数えあげればキリが無い。
コーディネーター研究者の中でも最優秀者が多数
集まってこの施設を運営しており、その実力は
世界一との評価があった。
しかし、今日この研究所から送り出される新兵器
は少し事情が違う。
この工廠に初めて招聘したナチュラルの技術者達
によって改良されたものなのだ。

 「オペレーションスピットブレイクに何とか
  間に合って良かったな」

40代半ばの中中背の男が責任者らしき男性に
話しかけていた。

 「何処からその作戦の話を聞いたのですか?
  一応、最重要機密なのですが・・・」

この工廠の責任者、ユーリ・アマルフィー技術委員長
の背中に冷や汗が伝う。 

 「研究員があっちこっちで話していたぞ。
  プラントの防諜は大丈夫なのか?」

 「あなたが受け入れられてる証拠ですよ」

再び冷や汗が出る。
後で訓示をして無駄なおしゃべりを無くさないと。

 「それにしても、物凄く高性能なバッテリー
  ですね。さすがはカザマ博士というところ
  ですか」

 「博士はやめてくれ。そんな柄じゃない」

そう、彼はオーブモルゲンレーテ社部長取締役
だったシュウイチ・カザマなのだ。
息子がオーブを出た翌日、ウズミ氏に呼び出された
彼はデュランダル外交委員長と共にプラントに
上がり、モビルスーツの共同研究をしていたのだ。

 「俺は既存のバッテリーを提供しただけだ。
  こいつはM−1のバッテリーに比べると
  高性能なんだが高価でな。お蔵入りに
  なっていた奴なんだ」

 「でも、そのバッテリーのおかげで核動力機が
  蘇えりました」

 「核で動くモビルスーツか。被爆国である
  日本出身者としてはぞっとしない話だな」

 「プラントも被爆国になってしまいました」

 「アメリカ合衆国、大西洋連邦。国名が変わっ
  ても中身はそう変わらないか。今までの
  人種・宗教差別に加えてコーディネーター
  差別・・・。建前は民主国家なんだけどな」

 「人はそう変わらないようですね」

 「変わってはいるのさ。だが、変わらない連中
  も多いのさ」

 「我々にも身につまされる問題ですね」

 「選ばれた種であるコーディネーターと下等な
  ナチュラルか?」

 「極一部の人の考えと思いたいのですが、程度の
  差はあっても、そう考えるコーディネーターが
  多いのです」 

 「出生率が下がってて大変なのにな」

 「ええ、国家の根幹を揺るがす一大事です。
  研究は続けているようですが成果はまだ
  あがっていませんし・・・」

 「それで、ナチュラルとの融和政策をやって
  いるのか」

 「それもありますね。戦後、プラントの同盟国や
  中立国の国民から移民を募りコーディネーター  
  を生んで貰う。出産費用と子供の学費等も
  補助する。この政策を実施して人口の増大を
  めざすつもりです。カナーバ議長は」

 「いい手だな。先進国ではコーディネーターに
  違和感を感じる人が増えたが、途上国の人間に
  とっては生活が良くなればどうでもいい事
  だからな。子供が優秀なら貧しい生活を
  抜け出し易いからな」

 「利用しているようで、多少罪悪感を感じるの
  ですが」

 「コーディネーターが生き残る為だ。仕方ある
  まい。それにプラントが生き残って貰わないと
  息子の居場所が無くなってしまう」

 「息子さんの為ですか。彼には私の息子がお世話
  になっているようです。ニコルはお兄さんが
  出来たみたいで嬉しいと言っていました」

 「まあ、罪滅ぼしだな。この研究もそうだし。
  日本にいた時にあいつを孤独に追い込んで
  しまったからな」

 「日本ではコーディネーター排斥がひどいの
  ですか?」

 「コーディネーターだけの問題ではないんだ。
  日本という国は、過去にアメリカとの戦争に
  負けてから、アメリカの文化や考え方を絶対に
  正しいと思い込む人間が増えてしまってな。
  コーディネーター排斥論もよく論議もしないで
  受け入れてしまったんだ。
  以前は子供をコーディネーターにする事が
  ステータスの一種だったから180度の変化
  でな。結果コーディネーターである事を
  隠して生きるか、プラントやオーブに移住
  するか、息子の様に自分が世間に役に立つ
  人間だと宣伝しながら生きていくかしか
  無かったんだ」

 「失礼ながら、もっと早くオーブに移住して
  いれば良かったのでは?」 

 「俺は当時日本の企業に勤めていてな。仕事が
  忙しすぎて、あいつの事を考えてやれな
  かったんだ。表面上、あいつは評価されて
  いたから親の俺も鼻が高かったしな。
  友達が1人もいなくて、母親と妹達くらい
  しか本心を話せる人がいない事に気付いて
  オーブへの移住を決めた時には、あいつは
  1人でプラントへ行ってしまった」

 「そうだったんですか」

 「この前会った時には、見違えるように元気に
  なっていて安心したよ。友達も沢山できた
  ようだし」

 「ええ、個性的な面々が集合しているよう
  ですね」

 「そうか?普通の少年達だったぞ」

彼が会ったメンバーはニコル・ラスティー・シホ。
比較的常識人の集まりだ。
ラクスの事は話せないので除外する。

 「大分、話が逸れてしまいましたね。それで、
  新型バッテリーはプラントのバッテリーと
  どう違うのですか?スペック表を拝見しま
  したが、こちらが考えていたほど高出力では
  なかったですし」

 「俺の開発したバッテリーは省エネルギー機能に
  優れているのが特長だ。普通のバッテリーは
  機体本体に電流を流す時に無駄に電力を消費
  してしまうし、待機中に放電されてしまう電力
  も多い。それに引き換え俺のバッテリーは
  コネクターに付いている小型コンピューターが
  コックピット内のOSデータに連動していて、
  モビルスーツの動作や攻撃武器を判断して
  必要な量の電力を測定して無駄に電力を消費
  しないようにしているのだ。
  大西洋連邦のバッテリーは馬力や出力はうちと
  そう変わらないが、エネルギー効率が悪い
  ので稼動時間・パワー共に低いんだ」

 「物凄い技術ですね。同じ技術者として感心
  しました」

 「俺は日本人なんだよ。昔、化石燃料が主流
  だった頃、自給が出来なかった日本では
  省エネルギーが当たり前だったからな」

 「なるほど、よくわかりました。
  この技術はザフトにとっても救世主です」

 「こちらも最新鋭モビルスーツの情報が貰えた
  からな。おあいこだ」

2人の会話は長いこと続いていたが、アマルフィー
委員長は他に用事があるので、帰る事になった。

 「では、私はこれで失礼します」

 「アマルフィー委員長、ご苦労さん」

 「実は、ニコルの事で文句を言われると思って
  いました」

 「俺は娘が可愛いからこそ文句は言わないんだ」

 「ありがとうございます」

 「まあ、娘を泣かせたらバッテリーが突然爆発
  するかもしれないけど」

冗談なのか?本気なのか?判断がつかない。

 「そうだ、カザマさん今日の夜は空いて
  いますか?」

 「特に予定は無いよ」

 「シーゲル元議長が食事に誘いたいそうです。
  何でも重要なお話があるそうで・・・」 

アマルフィー委員長は何かを隠している。

 「わかりました。何でしょうね?」

 「迎えは寄こすそうなので、待っていてくれ
  との事です」 

数時間後、シーゲル元議長からの迎えが来たので
車に乗る。
会食の会場はシーゲル元議長の邸宅のようだ。
車は大きな門扉をくぐり、広大な敷地を走って
玄関に到着する。

 「さすがに大きな邸宅だな」 

感心していると、ドアが開いてシーゲル元議長が
直接出迎えてくれた。

 「カザマさん、よく来てくれた。心から
  歓迎します」

 「こちらこそ、ご招待していただいて感謝
  します」

食堂に通されて召使がお茶を入れてくれる。

 「日本茶ですか。美味しいですね」

 「ええ、茶葉を取り寄せました。娘がお宅に
  寄らせていただいた時に、ご馳走になった
  そうで」 

あれ?どうしてその事実を知っているんだ?
疑問がふつふつと沸いてくる。

 「では、お食事をお持ちします」

召使が食事の用意をする。
メニューはなんと日本の懐石料理だった。
料理人を出張させて調理させているようだ。

 「お口に合うかわかりませんが」

食べてみると大変美味しかった。
食材も料理人も一流のようだ。

 「これだけのものは日本でも中々食べられ
  ませんよ」

 「ありがとう」

最後にご飯と吸い物をいただいて食事を終える。
デザートの和菓子を食べながら話をする。

 「私は評議会議長職を辞任しました。
  戦争が終わったら、議員も辞めて悠々自適
  の生活に入ろうと思います。
  趣味のバラの品種改良でもしながら生活しま
  すよ」

 「引退には早いような気がしますが」

 「議長の仕事は正直疲れました。
  1回全てをリセットしてゆっくりしますよ」

 「娘さんに跡を継がせるのですか?」

 「いや、それはありません。プラントは少数の
  議員に権力が集中しすぎています。戦争中
  は仕方がありませんが、戦後はそれを改め
  たいのです」

 「では、娘さんは歌手の仕事を続けるんですね」

 「さあ、本人次第ですね。結婚という選択肢も
  ありますから」 

 「そ、そうですね・・・」

 「カザマさん、私は娘が息子さんと付き合って
  いる事を知っているんですよ」

衝撃の事実だった。
後で戦略を立てて対応しようと思っていたのに。

 「あの・・・、申し訳ありません。娘さん
  には婚約者がいるのに・・・」

ちきしょう!ヨシヒロ、覚えてろ!

 「いや、謝らないでください。こちらこそ娘
  がいろいろと迷惑を掛けているようです
  ので」    

 「いえ、素直で可愛らしい娘さんで、うちの
  バカ息子にはもったいないくらいです」

 「彼は好青年ではないですか。私は彼が
  気に入っているんですよ」

よかった。少なくとも査問の席ではないようだ。

 「お話とは、息子の件なのですか?」

 「ええ、今は無理ですが戦後、婚約ぐらいは
  しておいた方がいいと思いまして」

 「息子を婿入りさせるんですか?」

 「うちは1人娘ですから、出来たらそうして
  欲しいのですが強制はしません。将来、孫の
  1人に家を継いで貰えればいいのです」

 「しかし、コーディネーター同士ですから出生率
  の問題がありますよ」

 「それは調べさせました。アスラン君よりも相性
  がいいみたいですね」

 「それは良かったですね。私にはプラントの
  婚姻統制はよくわかりませんが、最大の懸念
  が解消されたみたいですね」

 「ありがとう。将来私達は親戚同士になるの
  ですから仲良くしたいものですな」 

 「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

本人が不在のまま重要な決定がなされつつあった。 


(アークエンジェル)

俺達がカオシュンを出発して4日。
アークエンジェルはミラージュコロイドを展開
させながら、ゆっくりと航行している。
航行ルートはデュランダル委員長が日本と事前協議
をしていてくれたおかげで、日本領海を進む事が
出来るので非常に楽だった。

 「ハクション!」

 「カザマ君、風邪?」

 「いえ、そんなはずは無いんですけど。
  誰かが噂でもしているのかな?」

 「美女だといいんだけどね」

アーサーさんが茶化す。

 「噂の内容によりますね。カザマさんて
  カッコイイとか」

 「前の騒ぎはごめんよ」

タリアさんに釘を刺された。
多分、オーブでのラクスとフレイの騒ぎを
示しているらしい。

 「ははは、大丈夫ですよ。じゃあ、俺は
  シミュレーションルームに行きますね」

俺はブリッジを降りた。
今はミラージュコロイドを展開中なので、
モビルスーツで訓練が出来ない。
よって、シミュレーションで練習するしかない。
俺はあまり好きではないのだが、ラクスとの
一週間のお休みで鈍ってしまっているので勘を
取り戻さないといけない。

シミュレーションルームに到着するとババ一尉
と3人娘、イザーク、アスラン、ニコルが
交替で訓練していた。

 「みんな頑張ってるか?」

 「実機で訓練したいです」

 「アサギ、無理言うなよ」

 「緊迫感が無いんですよね」

ジュリも続けて言う。

 「よし、総当りでみんなで対戦しよう。
  1人が1つ商品を出して優勝者が総取り
  するんだ」

 「私達が不利ですよ」

マユラが文句を言う。

 「なら、俺達はジンを使用する。マユラ達は
  M−1を使えばいい」

 「ババ一尉が有利になりません?」

 「ババ一尉はシグーを使えばいいだろ。
  この前のデータ更新で使えるようになった
  はずだ」

カオシュンでシミュレーターのデータ更新が
あって、ナチュラルでもザフトのモビルスーツが
使えるようになったのだ。

 「俺はそれでいいぞ」

 「私達も賛成!」

 「では、シホとラスティーとディアッカを
  呼んでこよう」

数分後、全員が集合して対戦が始まった。
使用モビルスーツを決めて実力が伯仲したので
なかなか緊迫した対戦になる。

 「よーし、そこだ!」

 「マユラ頑張って!」

 「しまった、当たってしまった!」

 「ディアッカ、お前腕立て伏せ500回」

 「そんなー」

いくらM−1対ジンでもアスラン達に勝利出来ない
だろうと思ったのだが、油断したディアッカ
とラスティーがマユラに負けてしまったのだ。

 「ラスティーも腕立て伏せ500回」

 「今までそんな鬼教官でしたっけ?
  ヨシさんは」

 「ああ、俺は鬼教官だ。昔の海兵隊の映画に
  出てくる黒人のマッチョな軍曹殿と気持ちは
  一緒だ。マユラはよくやった。後で秘蔵の
  日本酒をやる」

 「わーい、やったー」

マユラはお酒が好きなので大喜びだ。
その後、対戦は続き俺とアスランが無敗でトップ。
俺達に僅差で敗れたイザークが続き、ニコル、
ディアッカ、ラスティー、シホ、マユラ、ババ一尉
、アサギ、ジュリと続いた。

 「私、一勝もできなかった」

ジュリが悔しそうに言い。

 「マユラに勝利数で負けてしまった」

ディアッカとラスティーに勝てなかった
ババ一尉も悔しそうに言う。

 「さて、決着をつけるか。アスラン覚悟しろよ」

 「教官殿、勝たせていただきますよ」

シミュレーターに入って勝負を始める。
使用モビルスーツはジンを選択する。

 「俺はジンには何年も乗ってるんだ。
  経験が違うのさ!」

 「その割にはジンカスタムが格納庫の隅で
  埃をかぶっていますよ」

 「バカたれ、定期的にシートに座って調整を
  しているんだ。エイブス班長も整備は
  怠っていない」

 「知りませんでしたよ」

会話しながら、陣馬刀で切り結ぶ。
アスランの実力は既にトップエースクラスだ
油断はできない。
更に、前の能力が出たら俺では防ぎきれない。

 「ちっ、腕をあげたな。アスラン」

 「さすがはヨシさん。まったく隙が無い」


(アスランサイド)

アスランは焦っていた。
自分達にモビルスーツの操縦を教えてくれた
教官の真の実力がわかったからだ。
どうやら、アカデミー時代は手を抜いてくれて
いたらしい。
カオシュンでハイネ隊長と模擬戦をしてみたが、
彼でもここまで強くなかったような気がする。
最も、ハイネも手を抜いてくれていたのかも
知れないが。

 「さすがは開戦以来のトップエースですね」

 「無駄に生き残っていないだろ?」

 「ええ、正直やばいですね」

ヨシさんのジンの動きが一変する。
どうやら止めを刺すつもりらしい。
ここままやられてたまるか!
その瞬間、頭の奥で何かが弾けて全てがクリアー
になる。
前に感じたあの感覚だ。

 「いける!勝てるぞ!」

(カザマサイド)

アスランは大分腕をあげていた。
が、もう少しの間は俺が優位でいられるだろう 
そんな事を考えながら止めを刺しにいった時
に、突然アスランの動きが変わった。

 「ちきしょう!以前のあれか?」

アスランの動きが急に良くなり、今度は俺が
防戦一方になる。

 「アスラン・・・、急にどうしたんだ?」

イザークも言葉が出ない。

 「前のあれだ。たかが訓練でそれを出すか?」

ディアッカがつぶやくように言う。

 「前のって何ですか?」

ニコルがディアッカに尋ねる。

 「前に機動艦隊を壊滅させた時のアスランが
  そうだったんだ」

 「じゃあ、ヨシさんに勝ち目は無いな」

ラスティーが断言する。

 「それはわからないわ」

シホが反論した。

 「そんな事は後だ。今は勝負を最後まで見届け
  るんだ」

ババ一尉の言葉でみんなが勝負に集中した。


 「(バッテリーがやばいな)」

極限の機動を続けていたせいでバッテリーが
やばくなってきた。
一方、アスランにはあわてている様子が無い。

 「(あの状態だと消費エネルギーまで少なく
  なるのか?)」 

以前、アスランは全てがわかるようになると
言っていた。エネルギーの消費を抑えて戦えるの
かもしれない。

 「(仕方ない。一か八かだ!)」

俺は左側にわざと隙を作った。
すると、アスランは突撃をかけてくる。

 「(やった!うまくいった)」

アスランの構えた陣馬刀が俺のジンの左わき腹に
突き刺さる。

 「(よし、位置はぴったりだ。左腕も何とか
   動くな)」

左腕でアスランのジンを掴み、右手の陣馬刀を
握り直して背中に突き刺した。

 「やった!よし脱出だ!」

と思ったのだが、予想よりもダメージが大きくて
アスランのジンと一緒に爆発してしまった。

 「あーあ、やっぱり相撃ちになってしまったか。
  上手く抜け出せたら俺の勝ちだったのに」

 「まさか相撃ち覚悟で俺を倒すなんて・・・」

アスランが驚いている。

 「そうしないとお前が倒せなかったんだ。
  強くなったな。アスラン」

 「ありがとうございます」

 「これって引き分けですよね」

シホが聞いてくる。

 「だな。商品はアスランと山分けだ。
  みんな食堂に商品を持って集合!」

 「「「了解!」」」

食堂にみんなが集合して商品の授与式を行う。

 「まずは特別賞だ。マユラに(久保田の万寿)
  を商品として出す」

 「ありがとうございます」

 「艦内は禁酒だろ」

 「ババ一尉、堅苦しいのは無しだ。
  上陸時に飲めばいいんだから」

 「それならいいのだが・・・」

 「さあ、みんな商品をくれ!ものによって
  アスランと分けるから」

 「始めは俺です。この扇は千利休が・・・」

ディアッカが一番手で商品を出す。 
オーブで買わされた偽物を押し付ける気か?

 「俺が貰うわ。真偽のほどはともかく、
  扇欲しかったから」

 「次は俺です。この人魚のミイラは・・・」

 「気持ち悪い・・・」

イザークの出したものは女性陣に大不評だった。

 「アスラン、貰っとけ」

即座にアスランに押し付けた。

 「次は僕です。初めてコンサートを開いた時
  の楽譜です」

 「俺が貰う。練習していつか披露したいから」

ニコルの音楽関係の品物にはアスランは興味が
あるまい。

 「俺はこれです。プラントの最高級ホテルの
  スウィートル−ム宿泊券」

 「アスラン、貰っとけ。ラクスと行けば
  いいじゃん(カガリと行けよ)」

 「ええ」

アスランは複雑な表情をしながらそれを貰った。

 「んで、次は?」

女性陣の商品は無難な日用品が多かったので
普通に分け合った。
最後はババ一尉の番だ。

 「これは私が昔日本で買い求めた物だ」

ババ一尉は高さ30cm位の仏像を取り出した。
正直、非常に微妙な一品である。

 「アスラン、欲しいか?」

 「うち無宗教なんですけど」

 「うちもそうだ。美術品としてはなかなかの
  物だ」

 「じゃあ、ヨシさんどうぞ」

 「そうだな、貰おうかな」

そんな会話をしていると。

 「ヨシさん、俺にください!」

イザークが熱心に頼んできた。

 「そこまで欲しいのならあげるよ。3位の
  商品だ。アスランいいだろ」

 「ええ、いいですよ。ババ一尉はどうです?」

 「欲しい人が貰ってくれればいいさ」

 「ありがとうございます」

イザークにはクリティカルヒットな品物だった
ようだ。
ミラージュコロイドを展開中で艦内から出られない
俺達は、こんな事をしながらグアムに向けて航行
していた。


(オペレーションスピットブレイク主力艦隊)

ジブラルタル基地を出発した、潜水艦主体の
パナマ破壊艦隊は順調に航海を続けていた。
地球連合の軍本部ではこの艦隊をパナマ攻略の
主戦力と判断していたが、太平洋側でも多数の
潜水艦の活動が認められていて、これらの艦隊
が日本近海を北上していることから、アラスカ
侵攻作戦も否定できないでいた。

 「日本を北上している艦隊は陽動に成功
  しているようだな。
  カオシュン侵攻阻止作戦の援軍を送る事
  もできて一石二鳥だ」 

パナマ破壊作戦総司令官のラウ・ル・クルーゼ
がほくそえむ。

 「パナマを太平洋側から攻撃する奇襲艦隊
  とグアムを攻撃して太平洋艦隊の目を
  引く特殊攻撃隊は無事でしょうか?」

この作戦で副指令官に任命された
マーチン・ダゴスタが懸念を口にした。
本来彼はバルトフェルト司令官の副司令官
だったのだが、この作戦の時だけ貸して欲しい
とのクルーゼ司令官の要請に従ってここにいる。

 「大丈夫だ。奇襲艦隊のモラシム司令官も
  特殊攻撃隊のカザマ隊長も歴戦の勇士だ。
  心配はいらない」

 「そうですね。カザマ隊長には我々もお世話
  になりました」

 「私もだ。彼は有能な副隊長だった。
  本当は彼に副司令官を頼みたかったのだ。
  彼は私がモビルスーツで出撃しても
  素直に認めてフォローしてくれるからな」 

そんなわけ無いでしょ。
ダゴスタは思うのだが口には出さない。

 「君はモビルスーツには乗れないが優秀な
  男だし、あの変人のバルトフェルト司令官
  の補佐が務まっているからな。だから指名
  したのだ」

クルーゼ司令官はバルトフェルト司令官を変人
と思っているらしい。
だが、ダゴスタに言わせればどちらも似た様な
ものだ。
軍人としては最優秀だが片方は出撃魔、もう片方
はコーヒーマニア、お互いに仲が悪いのも
近親憎悪の可能性が高い。

 「あのクルーゼ司令、今作戦でもモビルスーツ
  で出撃なさるのですか?」 

 「今回の作戦で一番大切な事は破壊力の
  一点集中だ。試作機とはいえ新型の
  フリーダムとジャスティスも使わねば
  なるまい」

 「それはそうですが、総司令官が乗る必要は
  ありません」

 「あの新型は操縦が難しくてな。乗りこなせる
  パイロットが少ないのだ」

 「パイロットは沢山いるのですから大丈夫
  ですよ」

 「自惚れではないがあれを完全に乗りこなせる
  のは自分だけだ。私はフリーダムで出撃
  するから後の指揮は頼んだよダゴスタ君」

 「わかりました」

ダゴスタは反論する無意味さを知り、素直に返事
をする。
こういう事はバルトフェルト司令官で慣れている。

 「明日はいよいよ作戦開始だ。各員の健闘に
  期待する」

クルーゼとのが終了した。


(作戦開始2時間前アークエンジェル)

 「全モビルスーツ装備確認。発進準備終了」

エイブス班長の報告が入る。

 「では、作戦を確認します。グアム基地まで
  ギリギリ接近してから全モビルスーツ隊を発進。
  後にミラージュコロイドを解除、ラミネート装甲
  を回復させてから、全力で砲撃してください。
  俺達は決められた目標を攻撃後
  アークエンジェルに退却します。後は、全力
  で逃走します」

 「了解、ちゃんと帰ってきなさいよ。カザマ君」

 「だから、結婚するまで死にませんよ。
  それよりも帰りの事なんて考えないで
  全部ぶっ放してくださいよ」

 「そうね。精々派手にやらせてもらうわ」

 「アーサーさん、バスターが余ってますよ。
  乗ります?」

 「私では帰ってこれないから、アークエンジェル
  の指揮を執って待っているよ」

 「そうですね。では、行ってきます」

俺は格納庫に降りてM−1に乗り込んだ。
他の連中も各自機体に乗り込んでいる。
今日の機体割りは。

 アスラン  ストライク(ランチャーパック)
 イザーク  デュエル(アサルトシュラウド装着)
 ラスティー デュエル(アサルトシュラウド装着)
 ニコル   デュエル(アサルトシュラウド装着)
 ディアッカ バスター

であり、残りのメンバーはM−1に搭乗している。
イージスは攻撃力に欠けると判断されて今回は
お休みだ。

 「宇宙ならスキュラを撃てるんですけどね」

これはニコルの弁である。
そして全機がD型装備の改良型を装着していて、
発射後に不要な装備を切り離してから通常攻撃に
入れるようになっている。
更に、M−1が乗って行くグゥルには高性能の
爆薬が大量に詰まっていて、それを攻撃に使用
するのだ。

 
俺はM−1に乗り込み出撃の時間を待つ。
久しぶりの実戦で緊張が走り、胃が痛い。

 「開戦以来だな。こんなに緊張するのは」

 「ヨシさんもそうですか?」

アスランが無線を入れてくる。

 「俺だって普通の人間なんだよ」

 「普通ですか?」

ニコルが割り込んでくる。

 「普通なの。お前は緊張しないのか?
  デュエルに乗るのは初めてだろ」

 「コンサート前の状態と同じですね。
  新しい曲を演奏する時みたいです」

 「お前は強いよな」

 「ばか者!実戦とコンサートを一緒にするな!」

イザークの声が割り込んだ。

 「軍人の仕事と音楽家の仕事に上下の差は
  無いさ。むしろ、軍人の仕事は必要悪の
  部類に入るかな」

 「ディアッカ、珍しくいい事言うわね」

 「シホちゃん、それはないでしょ」

 「シホちゃんって呼ぶな!」

ラスティーの怒鳴り声が入る。

 「ラスティー、焼もちか?」

 「違いますよ」

本人が必死に否定しているがバレバレだ。

 「皆さん緊張しないんですか?」

ジュリが聞いてくる。

 「するけど、紛らわす方法を会得するのも
  プロの軍人なんだよ」

 「その通りだ」

ババ一尉も賛同する。

 「平常心、平常心」

アサギが何かを唱えている。

 「それ効き目あるの?」

マユラの疑問は最もだ。

 「マユラは落ち着いているな」

 「訓練の成果を出すだけですよ」

 「いい答えだ」

そこまで話したところで、アーサーさんから
艦内放送が入る

 「カザマ君、時間だよ」

 「よし、カザマ隊全機発進!」

俺達の戦いの時間が始まった。


(グアム基地レーダー室)

 「あー、今日は眠いな。昨日遅くまで飲み過
  ぎた」 

 「お前弛んでるぞ。タイラー中尉に怒鳴られ
  るぞ」

 「大丈夫だよ。ここは最前線だけど、正面の
  敵はあの臆病なジャップだぜ。あいつらは
  戦争なんて出来ないさ。太平洋艦隊が出撃
  したら降伏するさ」

 「ザフトはどうなんだ?あいつ等は臆病とは
  程遠いぜ」

 「どうやってここまで来るんだよ。だから敵
  なんていないんだよ」

そこまで話したところで、海上に艦船の反応らしき
ものが出た。
だが、ニュートロンジャマーの影響でレーダーの
精度がいまいちなので詳細までわからない。

 「うーん、反応はあるんだが数、大きさ共に
  不明だな。熱源探知もいまいちだな」

アークエンジェルにはブラックホール排気装置が
あるので熱源探知が効きにくい。

 「タイラー中尉、所属不明の反応が1つ
  ありますが、どうしましょうか?」

奥の椅子でポテトチップスを頬張っていた太目の
士官にお伺いを立てる。

 「反応か?確か、補給の為の輸送艦が到着する
  予定だったはずだ。警報なんて出すなよ。
  後で始末書ものだぞ」

 「わかりました。あれ?何個か分離しましたけど」

 「モビルスーツ部隊が来るんだよ。
  第一陣の機体数は12機だ。間違えて落としたら
  軍法会議ものだぞ」

 「わかりました」

彼らは通常任務に戻る。
ところが数分後、グアム基地は地獄の炎に包まれる
事になる。


(アークエンジェル攻撃隊)

アークエンジェルを出発した俺達は、低空を
飛びながらグアム基地を目指していた。

 「ようし、島が見えてきたぞ。攻撃準備だ。
  目標を再確認する。グアム基地の地図には
  目を通しているな?」

 「「「はい!」」」

 「よし、アスラン、ディアッカ、ニコル。
  小隊長はアスランで第一目標は基地司令部
  第二目標通信施設、レーダー施設だ。
  その後は随時に敵を殲滅しろ」

 「「「了解!」」」

 「次はラスティー、シホ、イザーク。
  小隊長はラスティーで第一目標は補給物資の
  倉庫、集積所で第二目標は輸送船、港湾施設
  を破壊だ」

 「「「了解!」」」

 「最後に俺達だ。戦闘機・爆撃機・輸送機の
  格納庫と駐機場所、滑走路を完全破壊。
  その後は兵員宿舎、給水施設、発電施設
  など目立った目標は全て破壊だ」

 「「「了解!」」」

 「いいか、なるべく早く重たい爆弾は切り離せ。
  動きが鈍いと対空火器の餌食になるぞ。
  では、突撃!」

俺達はグアム基地に突入を開始した。
が、想像していた対空火器があがらない。
基地は静かなものだ。

 「おかしいな?どうして攻撃されない?」

 「とりあえず、攻撃を優先しましょう」

 「だな」

横で爆発が起こる。
アスラン達がレーダーサイトを潰したらしい。
ラスティ−達も倉庫にD型装備の大型ミサイル
を発射している。
倉庫の中身は弾薬だったらしく大爆発を起こし
ながら、隣りの倉庫を延焼させている。 

 「よし、戦闘機を発進させるな。地上で全部
  潰せ!」

駐機場所に待機していた戦闘機や管制塔にミサイル
を叩きつけ、格納庫にも同じ攻撃をする。

 「マユラ、ジュリ。特殊ミサイルを滑走路に
  ばらまけ!」

 「「了解です!」」

2人は装備していた特殊ミサイルを滑走路に
ばら撒き始めた。
このミサイルはニュートロンジャマーの散布
装置を改良したもので、着弾すると
地下十メートルほどまで潜ってから大爆発を
起こすものだ。
この攻撃で大きく抉れた地面を整地するのは
大変な手間だろう。

 「よし、敵戦闘機上がってきてるか?」

 「何機かは離陸に成功した模様です」

 「ババ一尉、頼みます。さあ、グゥル爆弾の
  投下場所を探すぞ!」

 「任された!」

 「「「了解!」」」

その後、俺達はグゥルを兵員宿舎、発電施設、
整備工場、給水施設、戦車駐機所に叩きつけてから
残りの目標をビームライフルで撃ち続けた。 

 「弾切れだ。引き揚げるぞ!アスラン達は?」

 「全機健在の様子です。同じく弾切れの為に
  引き揚げます」

 「よし、信号弾。アークエンジェルに砲撃命令。
  俺達は射線上から待避!」

数十秒後、アークエンジェルから砲撃とミサイル
が多数飛来して基地の損害を大きくする。

 「よし、急いで引き揚げだ!」

全機、目立った損害もなく俺達は無事に引き揚げた。


(グアム基地レーダーサイト跡地)

 「はあ、命拾いした。しかしモビルスーツ
  って初めて肉眼で見たけど、強いんですね」

 「ああ、連合でも多数配備される予定だ。
  俺達は勝てるぜ」

 「そんな後の話よりも、今この惨状を何とか
  してください」

 「タイラー中尉は死んだかな?もしそうなら、
  俺がレーダーサイトの最高責任者なんだけど」

 「勝手に戦死させるな!」

瓦礫を掻き分けてタイラー中尉が出てくる。

 「タイラー中尉殿、ご無事で」

 「お世辞はいい。状況はどうなってる?」

 「全滅してないといいですね」

 「全滅していた方がいいかも」

 「どうしてです?」

 「俺がミスをして敵の攻撃を許してしまった
  んだ。軍法会議を避ける為にも、司令部が
  全滅している事を祈るよ」

 「はあ、そうですか・・・」

結局、タイラー中尉は軍法会議にかけられて降格の
上、最前線送りになった。

 
(パールハーバー指令本部)

 「グアムが敵の攻撃を受けて壊滅状態です。
  基地司令本部と連絡が取れません」

 「連絡機を飛ばせ!」

 「滑走路が使用不能の可能性があります」

 「モビルスーツ部隊が向かっていたな?」

 「ドミニオンが搭載機と共に向かっています」

 「ドミニオンに連絡!状況の報告と復旧の手伝い
  を厳命しろ!それから、救援艦隊を組んで
  すぐに送り出せ!」

スプルーアンス大将の命令が矢継ぎ早に出る。

 「しかし、敵はどうやって接近したので
  しょう?」

参謀の1人が疑問を口にする。

 「奪われたGの中に、ミラージュコロイドが
  搭載されていたブリッツがありました。
  それをアークエンジェルに搭載したよう
  ですね」

 「ハルバートン少将か」

 「先遣隊のドミニオンが間に合っていれば、
  被害を押さえられたのですが」 

 「仕方あるまい。ドミニオンの派遣はあくまでも
  ヨコスカ・カオシュン攻略作戦の為のものだ。
  グアムの奇襲を想定したものではない」

 「アークエンジェルと搭載モビルスーツのみで
  恐ろしい被害です。敵は相当の凄腕です」

 「ラウ・ル・クルーゼは大西洋だったな」

 「今のアークエンジェルはクルーゼ隊で
  副隊長を務めていたカザマという男が
  指揮を執っています。彼は手ごわい男です」

 「ザフトには若くて有能な指揮官が多いな。
  連合は老いぼればかりだが」

 「ザフトは若い組織です。年齢の層が薄いの
  です。我々には豊かな経験がありますよ」

 「そうだな。しかし、敵の作戦目標は何処
  なんだ?本当にジョシュア攻撃が本命なのか?
  それとも、パナマ攻略が目標なのか?」

 「パナマだと思います」

ハルバートン少将は確信をもって答える。

 「やはり、狙いはマスドライバーか?」

 「ええ、簡単な事実なのですが、偽情報に踊ら
  されてジョシュアと戦力を割ってしまった
  のですよ」

 「しかし、日本近海を北上している艦隊は
  どうなのだ?」

 「あれは、ヨコスカ・カオシュン侵攻への
  対応戦力でしょう。欺瞞行動を兼ねて
  ザフトが送り出しているようです」

 「そこまでわかっていても、軍中央から外されて
  いる我々にはどうにも出来ないからな」

 「ブルーコスモス強行派ですか。せめて有能なら
  許せるのですが」

 「アズラエルとジブリールはそれなりに優秀なの
  だが取り巻きがお話にならない」

 「コープマン准将がプリンス大佐に苦労して
  ましたよ」

そこまで会話が終わったところで再び凶報が入る。

 「太平洋側からザフトの潜水艦隊が多数の
  大型ミサイルを発射。半数以上の迎撃に
  失敗してパナマ基地は大混乱に陥っています。
  次いで、大西洋側から多数のモビルスーツ
  部隊が発進中です!」

 「当たりだな。ハルバートン少将」

 「まずは1敗ですね。ですが、次は必ず勝利
  します。モビルスーツはザフトだけのもので
  ないと教えてやりますよ」 

ハルバートンは不敵な笑みを浮かべた。


(パナマ防衛基地司令本部)

突然の攻撃に司令本部はパニックに陥っていた。
太平洋側からのありえない数のミサイル攻撃。
そして、大西洋側からのモビルスーツ隊の発進。
連絡が取れない部隊が多数発生していて指揮系統
の維持に支障をきたしていた。

 「とにかく、モビルスーツ隊を急行させろ!
  その間に他の戦力の建て直しを図る!」

 「マスドライバー防衛師団のブラッドレイ准将
  と連絡はとれているのか?」

 「はい、回線は無事でしたので」

 「周辺の部隊の指揮を委任する。そちらに
  でかい台風がやってくるぞ。そう伝えておけ」

 「了解」

 「ワシントンとサンディエゴにも連絡を入れて
  おけよ。援軍が間に合う可能性だってあるんだ」

 「それは難しいですな。状況報告が関の山で
  しょう」

司令室の扉が開き、ロード・ジブリールが入ってくる。

 「ジブリール部長、いかなる用件で?
  私は忙しいのですが」

 「ええ、それはわかっていますよ。
  実は私、新型モビルスーツを少々持ってきて
  おりまして、迎撃に出させていただけない
  ものかと」

 「新型モビルスーツ?」

 「パイロットも少々特殊なので実験段階なの
  ですが、戦闘力は高いですよ」

 「猫の手も欲しいときだ。お願いする」

 「わかりました。では早速」

ジブリールは早々に去っていった。

 「役に立つんですか?」

参謀の1人が疑問を口にする。

 「足止めくらいにはなるだろう」

偽らざる気持ちだった。


(ザフト軍モビルスーツ部隊)

大西洋側から出撃したモビルスーツ隊は一直線に
マスドライバーに向けて進んで行く。
機種はジン・シグー・ディン・ゲイツの他に、
水上から沿岸の敵を攻撃するためのグーンとゾノ
にまで多種に及んでいた。
そして、一番先頭を猛スピードで駆け抜けている
数機のモビルスーツが見える。
高性能バッテリーに積み替えたフリーダムと
ジャスティスである。

 「ははは、フリーダムは最高だな。加速が
  たまらない」

 「クルーゼ司令、総司令が先陣に立たないで
  ください」

 「スズキ君、君はカザマ君の列機を務めていた
  男だろう。細かい事を気にしてはいけないな」

ジャスティスに搭乗している、ジロー・スズキが苦言
を呈するがクルーゼには無駄な事だった。
彼はテストパイロット部隊の隊長をしていたの
だが、今回の作戦の為に数人の部下と共に参加
していたのだ。

 「フリーダム、ジャスティス各3機ずつで
  計6機。この新型機で敵に穴を開けるのだ」

 「敵のモビルスーツはどのくらいの数が
  いるのですか?」

 「我々と同数程度かそれ以上だ。ほら見えて
  きたぞ」

前方に多数のストライクダガーと少数のデュエルと
バスターが見える。

 「Gですか。どちらも量産してるんですね」

 「開発は向こうが先だ。不思議ではあるまい」

 「ですね」

 「では、攻撃開始だ!」

クルーゼ他2機のフリーダムが背中のビーム砲や
レールキャノンの照準をつけて一斉に撃ち始める。
2斉射もすると、30機ほどのダガーと数機の
Gが爆発した。

 「ほう、机上の空論だと思っていたが意外と
  当たるものだな」

 「敵のパイロットが未熟だからです。
  普通ならロックオンされたら移動しますから」

 「だろうな」

会話をしながらもフリーダムは射撃を続けていた。
多数の敵モビルスーツが残骸に変わる。
その後にジャスティスが突撃して残った
モビルスーツを切り裂き始めた。
そして、ほぼ同時にゲイツの部隊が到着して
残敵を始末し始める。
たまに、ダガーのビームライフルが命中して爆発
するゲイツがいたが、状況は一方的な殺戮に
なりつつあった。

 「よし、敵先鋒部隊は壊滅。更に奥地に侵攻して
  マスドライバーへの進路を開け!」

ジローの命令が全部隊に伝わる。
ゲイツの部隊が敵に穴を開け、シグーやジンが
残敵を排除する。
上空ではディンの部隊が戦闘機を排除していた。
以前に比べて倒されるモビルスーツの数は増えて
いたが、ザフトの強さはいまだ変わらず、
連合に多数の損害を出していた。


(マスドライバー防衛師団旗艦陸上戦艦パットン)

マスドライバー施設を守備している陸上戦艦の
名前は「パットン」という。
由来は旧アメリカ合衆国の将軍の名前から
来ている。
パットン将軍はアメリカに栄光をもたらしたが、
ブラッドレイ准将が祖国に栄光をもたらす事が
出来るのかは誰にもわからなかった。

 「敵侵攻部隊はどこまで来た?」

 「一部先鋒部隊は目前に迫っています」

 「モビルスーツ隊はどうなっている?」

 「健闘はしているのですが、時間稼ぎが
  精一杯です」

 「困ったものだな。とにかく出せる部隊は
  全て前に出せ!」

 「ブラッドレイ准将、本部から連絡です。
  援軍を送ったそうです」

 「援軍?」

 「実験中の新型モビルスーツの部隊だそうです。
  性能は保証すると」

 「そうか、時間稼ぎになる。早く前に出せ」

 「了解です」


(特務艦ピースランド)

 「さあ、出撃だ。宇宙の化物達を1人でも多く
  殺してくるのだ」

 「はいはい」

 「かったるいけどしょうがないな」

 「適当に頑張るからさ」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「どうした?口が利けなくなったか?」

 「顔がうざいよ」

 「返事くらいしろよ」

 「とにかく出撃だ!」

軽空母を改造した特務艦から3機の新型モビルスーツ
が発進する。
次いで、7機の新型量産機も発進した。

 「さて、どの程度の強さなのか楽しみだ」

ジブリールは1人笑みを浮かべていた。

 


(パナマ破壊部隊先鋒)

 「クルーゼ隊長、新手が来ます」

ジローからの報告が入る。

 「数は?」

 「約10機です」

 「ゲイツ部隊を差し向けろ」

 「了解!」

ほぼ同数のゲイツを差し向けたがすぐに全滅
してしまう。

 「なっ、クルーゼ隊長強敵です!」

 「そのようだな。我々で向かうぞ。残りの者
  は作戦を続行」

 「「「了解!」」」

クルーゼはフリーダム隊とジャスティス隊を率いて
現場に向かった。

 「3機の新型と7機の新型量産機か。
  ムウ・ラ・フラガはいないみたいだな」

 「(エンデュミオンの鷹)ですか?」

 「私は奴の存在を感知できるのだ。
  では、攻撃開始だ!」

フリーダム隊が背中の砲を一斉射撃する。
だが、新型機はするりとかわしてしまった。

 「やはり、当たらないか。では」

全ての砲を一機に集中して射撃する。
すると、量産機が一機が爆発した。

 「やっと一機ですか。強敵ですね」

 「そういう事だ。全員生き残れよ」

敵の一機が遠距離から砲撃を開始した。
射撃は正確でひやひやさせられる。

 「一機は遠距離戦用の機体か」

やがて、距離が近づき敵・味方入り乱れての
大混戦になってしまう。
フリーダムには不利な展開になってしまった。

 「ちっ、パイロットの腕がいい。傭兵か?」

ビームサーベルを抜いて一機の量産機を袈裟切り
にしながらクルーゼがつぶやく。
隣りではジロウが死神が使うような鎌を持った
モビルスーツと切り結んでいた。

 「なんだ?こいつら人間か?ありえない
  反応速度だ」

戦いは激しさを増してきた。
そろそろエネルギーが心もとない。
少し下がれば、予備のバッテリーを用意している
部隊があるのだが取りに行く余裕がない。
敵は半数の5機にまで減っていた。
量産機が弱かったので集中して撃破したのだ。
こちらはパイロットの技量が低めだった、
フリーダム2機が完全に破壊されてしまったが。

 「どうします?クルーゼ隊長」

 「引き揚げてバッテリーを交換するしかある
  まい。敵も消耗しているからゲイツ部隊に
  足止めだけさせればそれほど被害は出ない
  だろう」

 「お前ら何話してんだよ!」

例の鎌を持ったモビルスーツが突撃をかけてきた。

 「邪魔するな!」

クルーゼのフリーダムが近距離から砲撃をかけた。

 「効かないんだよ!」

ビームが敵モビルスーツに反らされるが、レールガン
には通用しなかった。
レールガンの膨大なエネルギーが敵の装甲を歪ませる。

 「ちきしょう!」

 「今だ!」

ジローのジャスティスが正面から突っ込む。
敵モビルスーツは鎌を振るいジャスティスの
頭部を切り飛ばしたが、ジャスティスの
ビームサーベルは敵モビルスーツのコックピット
を突き刺した。

 「シャニ!」

 「あいつ死んじまいやがった」

 「スズキ君、引き揚げだ。追跡はあるまい」

 「了解です。メインカメラをやられて
  しまいました」

クルーゼ達は引き揚げて行った。

 「俺達も一旦引き揚げだ」

 「うるさいよ!操りコーディネーターが」

 「薬中が口答えするな!」

 「何だと!」

残った2機の量産機と新型機のパイロットの仲は
最悪のようだったが、ジブリールから撤退命令が
出たので、引き揚げていった。


(マスドライバー防衛師団旗艦パットン)

 「それで、例の新型は?」

 「敵の強力な砲戦モビルスーツを2機撃破
  したそうですが、損害も大きく撤退しました」

 「あの化物を倒したのか?たいしたものだな」

 「そうですね。ですが、敵部隊の侵攻は阻止
  できませんでした」

 「後、どのくらいだ?」

 「1分です」

 「覚悟を決めよう」

パナマの陥落は阻止できまい。
ブラッドレーは覚悟を決めた。


(パナマ破壊部隊先鋒)

すでに先鋒のゲイツ部隊はマスドライバーに
取り付いていた。
後は抵抗を排除して、マスドライバーを完全に
破壊するだけだ。

 「クルーゼ隊長は?」

 「補給中だ。新型は燃費が悪いんだ」

 「高性能だったがな」

ディンの部隊が敵戦闘機をほぼ駆逐して敵の
陸上戦艦の火器を潰している。 
たまに運の悪いディンが落とされるが、単艦で
周りの高射砲陣地が壊滅しているので効率が
著しく悪い。

 「早く、落とせ!」

後続のジンがバズーカを「パットン」の機関部に
撃つ。
機関部に誘爆がおこり、全ての火器が沈黙した。

 「よし、組織的な抵抗が終了した。
  マスドライバーを完全に破壊しろ!」

マスドライバーに高性能爆薬が仕掛けられ、
管制施設はビームライフルで打ち抜かれて
勤務していた軍人達を蒸発させる。
多数の兵士が降伏してきたので、数箇所に
集められて数機のジンが監視する。
乗っていたモビルスーツや戦車等は再利用
されないように破壊された。

 「爆薬セット完了!」

 「よし、爆破だ!」

起爆スイッチを入れると大爆発がおこり、
マスドライバーはバラバラになって崩れ落ちた。

 「クルーゼ司令、目標を完全に破壊しました」

 「こちらはやっと補給が終わったのだが、
  遅かったようだな。全軍引き揚げだ。
  先ほどの新型モビルスーツの残骸の回収
  を忘れないでくれ」

 「了解」

数時間後、ザフト軍は破壊の限りを尽くし、
自軍の負傷者を救助しながら退却していった。
追撃をしようにも援軍は届かず、
多数の戦車やモビルスーツが破壊されていた
ので不可能だった。
この戦いでザフト軍は10%、連合は60%
の損害を出した。
ザフトの優勢はいまだに揺らいでいないが、
損害の増加が将来への不安を抱かせた。

 
(ザフト大西洋側攻撃隊旗艦)

 「クルーゼ隊長、お疲れ様です」

ダゴスタ副指令官が労いの言葉をかける。 

 「何とかうまくいったようだな。
  損害が思ったよりも出てしまったが」

 「連合も必死なんですよ。仕方がありません」

 「新型モビルスーツも出てきたからな。
  おかげでフリーダム2機損失、ジャスティス
  1機大破だ」

 「大損害ですよね」

 「軍事工廠の連中は驚くだろうな」

 「新兵器の開発はイタチゴッコです。
  それほど驚かないのでは?」 

 「かもしれないな。さあ、引き揚げだ。
  私は再び宇宙に戻らねばならない」

 「新型機のテストをされるとか?」

 「プロヴィデンスのテストパイロットに選ば
  れた。搭載されているドラグーンシステム
  を他に動かせるパイロットがいないそうだ」

 「そんな兵器意味あるんですか?」

 「嬉しいのは私だけだな。新型に乗れるから」

 「ですよね」

 「ダゴスタ副指令官はどうするのだ?」

 「バルトフェルト司令官の元に戻りますよ」

 「そうか、大変だな」

自分も同じ種類の人間である事に気が付いて
いないようだった。


(アラスカジョシュア緊急会議室)

 「パナマは完全に破壊されたようだな。
  復旧にどれほどかかる?」

老将軍がサザーランド大佐に質問する。

 「一から作り直しですので、一年以上かかり
  ます」

 「月からの補給路を断たれたんだぞ!
  責任問題だ!」

 「まあまあ、落ち着いてくださいよ」

 「これが落ち着いていられるか。アズラエル!」

 「大丈夫ですよ。一週間後にはカルフォルニア
  のマスドライバーが稼動します。
  規模はパナマと変わりませんし、補給路の
  短縮でかえって効率は上がりますよ」

 「それなら責任は問うまい。それで、次は
  どうするのだ?」

 「予定通り、カオシュンとヨコスカを攻略
  します。この作戦では我が軍は圧倒的に
  有利です。ザフトの援軍もパナマほど多く
  はありませんし、味方のモビルスーツも
  大増強します」

 「そうか、では健闘を期待しよう」

会議は終了した。

 「サザーランド大佐、老人共がうるさいですね」

 「年寄りはお説教が大好きなんですよ」

 「それで、ザフトの新型モビルスーツのデータ
  は取れましたか?」

 「ええ、ですが新型実験機と生体CPUを1つ
  失ってしまいました」

 「その位の損失は想定内です。代わりならまだ
  多少はありますからね。でも、思ったほど強く
  ないんですね」

 「ザフトの一般兵士相手なら楽勝なのですが、
  エースクラスには難しいのかもしれません」

 「でしょうね。でも大丈夫ですよ。
  薬の開発は順調ですし、コーディネーター
  受刑者に恩赦をちらつかせてパイロットに
  してしまえば多少は使えます。
  後は、数で押してしまえば問題ありません」

 「宇宙の化け物共が殺しあえば万々歳ですな」

 「ええ、宇宙は静かなのがいいんですよ」

2人の密談が終了した。


(アークエンジェル)

グアムを奇襲した我々は、素早く日本領海に
に進入した。
事前の話合いで敵の攻撃を避ける為に、
決まっていた事だ。
しかし、連合はそれどころでは無いらしく、
俺たちは平穏な航海を続けていた。
先ほど、暗号で現在の情勢と次の任務が入って
きたので情報を検討する事にした。 

 「タリアさん、クルーゼ司令官が作戦を成功
  させたようですね」

 「ええ、またモビルスーツで先頭に立った
  そうよ」

頭が痛くなってくる。
またなのか?

 「副司令官はダゴスタさんでしたよね。
  俺と同じ苦労をしたのか・・・」

 「同情するわね」

 「俺の出撃は戦力が足りないからですよ」

 「そうなんだけど、出撃は大好きでしょ?」

 「ええ、まあ」

 「それで日本領のヨコスカに入港せよって、
  日本はまだ東アジア共和国に所属していて
  敵国なのよ」

 「ですが、大西洋連邦はヨコスカを攻略する気
  満々ですよ。それに、明日には日本政府から
  東アジア共和国脱退と宣戦布告が発表される
  そうですよ」

 「我々は援軍に行くのね」

 「ええ・・・」

 「あなたの故郷でしょ」

 「あまりいい思い出がありませんので」

 「そう。でも任務よ」

日本に帰るのは何年振りだろう。
正直、全然嬉しくなかったし、気が重かった。


(ドミニオン艦内)

ドミニオンの本来の任務は、ヨコスカ・カオシュン
攻略作戦の準備の為に、後方基地になるグアムを
防衛する為の先鋒部隊であるはずだった。
しかし、今はグアム救援という任務に変更になり、
現地へ急行している。
情報によれば、グアム基地は司令部が全滅した
上に施設等も壊滅状態で死者・負傷者が多数出て
いるらしい。
我々に出来る事はあまり無いかも知れないが、
急行しなければいけない。  

 「グアムの連中は無能ですね。アークエンジェル
  一隻と少々のモビルスーツにコケにされて
  しまって」

プリンス大佐の周りの状況を考えない発言が飛び出す。

 「全くの想定外の奇襲なので仕方が無かったの
  では?それに、相手はアークエンジェルです」

ラミアス少佐が弁解をする。 

 「あの船はカオシュンにいたはずなのですが、
  いつの間に移動していたんですかね」

 「カオシュンではドックで偽装が行われていた
  ので、気が付きませんでした」 

 「それで、ミラージュコロイドですか。
  あれは海上では使えないのでは?」 

 「水上艦艇は使えませんが、アークエンジェル
  なら多少の工夫で使えるようになります」

 「ドミニオンにも付けましょうか?」

 「特殊任務にしか使えませんよあの装備は。
  展開中はラミネート装甲が使えませんし、
  艦内のエネルギー使用に制限が付きます」

 「残念ですね」

 「前方にグアム基地が視認できます。
  うわっ、ひどいですね。全滅ですよ」

ノイマン少尉が驚いたような声で報告した。

 「モビルスーツ隊発進用意!フラガ少佐、
  モーガン大尉、状況を報告してください」

 「「了解!」」

出発したフラガ少佐から報告があがるが、状況は
最悪だった。
稼動航空機はわずかに5機、戦車・車両も25両。
基地再建に必要な建設器機やブルトーザーは集中的
に狙われていて壊滅状態だった。
司令部も幕僚を含めて全滅で、指揮を執っているの
資材部の少佐という有様だった。
頼みの補給倉庫も火災が消せずに延焼中。
港もクレーン・艦船ドック・輸送船がほぼ壊滅して
いた。
これだけ被害が出ていると、作戦に影響が出かね
ない。 

 「これは、骨が折れそうね」

そして、あの男と再び戦う事になる。
今度も2人共生き残れるのだろうか?
不安でいっぱいだった。

(カオシュン基地)

 「お呼びですか?基地司令殿」

 「カザマ君が作戦を成功させたそうだよ」

 「あいつが失敗なんてしませんよ」

 「信頼してるんだな」

 「あいつは人を使うのが上手いんですよ。
  俺やミゲルではこうはいきません。
  赤服6人ですよ。俺ならごめんです」

 「そうだな。で、あの作戦の準備は出来て
  いるのか?」

 「本当に上海を奇襲攻撃するんですか?」

 「奇襲ではない。強襲だ」

 「ディンに浅深度魚雷を持たせて停泊中の艦隊を
  攻撃ですか。ヒントは真珠湾攻撃ですか?」

 「ああ、そうだ。この攻撃に成功すれば、
  東アジア共和国の継戦能力は大幅に減少する」

 「わかりました。準備はしておきます」

 「頼んだぞ。ハイネ隊長」

オペレーションスピットブレイクは成功したが、
戦争はまだ終結する気配を見せていなかった。


       あとがき
次回は再建なった巨大な太平洋艦隊が日本に
侵攻します。
太平洋戦争と同じく日本が屈するのか?勝利
を掴むのか?そしてカザマ隊の運命は?
更新時期は未定です。

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