閑話その2 「凛ちゃんのお料理と女王様のご褒美!?」の2
「二人とも準備は良い?」
「大丈夫です。」
「OKよ。」
荷物の入ったリュックを背負った和樹の言葉に頷く二人。
三人は寮へと帰るとそれぞれの戦闘服(凛は巫女袴)に着替え、必要な道具を持って寮の出入り口へと集合した。
「目的地までは電車とタクシーを使って移動しよう。明るい内はグリフォンもペガサスも目立つからね。」
「分かりました。」
返事をする凛と、軽く頷く沙弓。
沙弓は何度も和樹の仕事を手伝っているので手馴れたものだ。
「ところで、凛ちゃんどうしたのその手…?」
電車に乗る為に最寄り駅までの移動中に、和樹は凛の手が絆創膏だらけな事に気付いた。
「こ、これは、その…っ」
両手を隠し慌てる凛。彼らが保健室で逢った時には、彼女の手にそんな物は無かったはず。
「じゅ、準備をしていたら軽く怪我をしまして…っ」
「そうなんだ…大丈夫?」
和樹が自分を心配してくれるのが嬉しいのか、顔を赤らめる凛。
当然面白くないのが沙弓だ。
「……ドジね。」
「……なんだと?」
軽く嘲り交じりの言葉(嫉妬含有)に、額をピクピクさせて刀に手をかける凛。
その間に、和樹が割って入る。
「まぁまぁ二人とも。これから同じ仕事するんだから仲良く仲良く。ね?」
ニコってな感じで無害な笑顔(女性には有害か?)を向ける和樹に、二人して赤くなる。
「?」
顔が赤くなった事に首を傾げつつ(自分が原因だと理解してない)、先頭に立って歩き始める和樹。
目的地は最寄の駅。そこから電車を乗り継ぎ、目的地近くの駅からタクシーにて現場へと向かう予定。
交通費は紅尉が立て替えてくれるので無問題。夜になれば交通費はかからないのだし。
「それで、対象がどんな種族かは分かっていないの?」
道すがら問い掛けてくる沙弓の言葉に、顔を顰めて渡された書類を眺める和樹。
「う~ん、女性型としか書かれてないね。相手は隠密能力に秀でているみたいで、魔法局の人たちも姿は見てないんだって。」
「召喚した男の供述は無いのですか?」
「それがねぇ…全治半年、喉や関節を重点的に攻撃されたらしくて、碌に事情も聞けないんだってさ。何とか口で筆談できる程度。」
魔法局の職員による手加減なしの問い詰めにより、動かない体から強引に情報を引き出したんだなぁと思う和樹。
数度共闘したこともある魔法局召喚獣科の職員。相手が相手なので逞しい人たちが多い事多い事。
そんな彼らが共闘ではなく全権委任するのだから、相手はかなりの高位種族だろうと考えられる。
「まぁ兎に角、話が通じそうだったら俺が送り返すから、なるべく相手を傷つけないでね?」
「わかってるわ。」
「はい。」
今回の作戦でのリーダーは完全に和樹だ。
相手は召喚獣だし、この中で一番実戦経験が豊富なのも和樹。
なので沙弓も凛も大人しく彼の指示に従う。
まぁ、恋する乙女が意中の相手の言葉を蹴るなんて事、ツンツンキャラじゃなければしないだろう。
そう考えるとこの二人、一応ツンデレキャラになるのだろうか?
現在デレ期の真っ最中だが。
やがて最寄の駅へと到着する三人。
「ここから5駅目で乗り換えだね。」
「そうね、この距離なら帰りはペガサス達でも大丈夫そうだし…。」
「先輩、飲み物買ってきました。」
電車が来るまで駅のホームで案内を見ている三人。
これがまた目立つこと目立つこと。
沙弓は言わずもがな長身の美女。切れ長の瞳と長い髪、そしてモデル顔負けのスタイルと正に極上。
対する凛は小柄だが愛らしくも凛としており、まさに大和撫子な少女。しかも格好が袴姿なのでそれに拍車がかかる。
別の意味でも目立っているが。刀包んである竹刀袋とかその袴姿とか。沙弓もプロテクターが入った荷物持ってるし。
そんな二人の間に立っているのが、一見冴えない感じの少年なもんだから、周囲からの嫉妬の視線が痛いこと痛いこと。
だけど世の男どものジェラシーも、鈍感大帝には通用しない。
凛が買ってきてくれたジュースをお礼と共に受け取り、平然と飲んでいる。
モテる男と言うか、ハーレム構築能力持ちが鈍感朴念仁なのは、そうじゃないと生きていけないからかもしれない。
だって、現在和樹を睨む連中の視線、浴びただけで胃に穴が開きそうだから。
「あ、来たね。」
「この時間なら空いてるわね。」
ガラガラの電車に乗り込み、前の車両へと移動する三人。
一番前の車両は女性専用車両なので、二番目の車両に腰を落ち着ける。
丁度ボックス席が空いていたのだが、ここで嫌なトラブル発生。
「…………………。」
「…………………。」
「…? 座らないの?」
互いに睨みあって立ち尽くす凛と沙弓。
理由は簡単。ボックス席は基本二人掛け。つまり、どちらかが和樹の隣、どちらかが一人で座る事になる。
で、二人とも公言しちゃいないが和樹LOVE。当然睨みあうわけですよ。
「…………………。」
「…………………。」
一瞬即発なムードが漂う車両。近くの席に座っていた真面目そうな中年サラリーマンの人が謎の寒気にガクガクブルブル。
二人とも視線だけで会話している。どんな会話かと言うと…。
「(どうしたのかしら、さっさと座ったらどうなの?)」
「(貴様こそ座ったらどうだ?)」
「(あら、こういう時は年下優先よ。子供は窓際にでも座って外眺めてなさい。)」
「(ふん、そういう貴様こそさっさと座れ。その図体では先輩が窮屈だろうしな。)」
「(ぐッ…。ふ…、でもそんな貧相な体系のお子様に座られても、和樹は喜ばないでしょうね…。)」
「(むっ…。せ、先輩はそんな不埒な事は考えたりしないッ)」
「(はいはい、ナイムネ娘は黙って一人で座ってなさいよ。)」
正に殺伐!!
この会話が交わされたのが時間にして5秒程度なのだから恐ろしい。
だがしかし、そんな乙女の戦いを無駄にするのが主人公。
「ほら、早く座らないと通行の邪魔だよ?」
「「あ…っ」」
通路を通る人のことを考えて、そそくさと座ってしまう和樹。
しかも最悪なことに、その隣に自分の荷物とかを置いて、さらに凛達の荷物まで置いてしまう。
「「…………………。」」
呆然と目を合わせる二人。
この鈍感の行動により、彼女達二人が並んで座ることになった。
当人は純然たる親切(女性の隣に無闇に座らない等)を考えての行動なので、何も言えやしない二人。
「「はぁ………。」」
「?」
同時に溜息を吐き出す二人に、和樹は相変わらず首を傾げるだけだった。
その後、乗り換えの駅で下車し、待ち時間の間その駅名物の駅弁に舌鼓を打つ三人。
と言っても三人ともお昼は確り食べたので、二つの駅弁を三人で食べる事に。
その際に、
「ほら和樹、口を開けなさい。」
「せ、先輩、あ、あ~ん…っ」
手馴れている感じバリバリな沙弓と、モジモジしつつも顔真っ赤になってあ~んをせがむ二人。
「いや、自分で食べられるから…。」
と断っても、
「「あ~ん…。」」
何故かこんな時だけタイミングが同期する二人の前に敗北。
それを見ていた男性陣が、血涙を流していたとか何とか。
このままだと、この世界にまで例の哀れな負け犬軍団が登場するかもしれない。
沙弓嬢も凛ちゃんもライバルが少ない今がチャンスとばかりに和樹に迫る迫る。
「おい杜崎、まさか貴様いつもこんな美味しい思いを…っ?」
「さて、何のことかしら?」
ふと気付いて睨んでくる凛の言葉を、余裕で流す沙弓。
その態度に悔しさ一杯だが、次回から自分も和樹の手伝いをしようと心に誓う凛ちゃんでした。
「あ、このお団子美味しい。」
そんな決意になど全く気付かない鈍感主人公は、暢気に団子食ってましたとさ。
「お客さん、帰りは大丈夫ですかい?」
「はい、ありがとうございます。」
利用したタクシーの親切な運転手に礼を言いつつ、目的地に到着した三人。
ここに着くまで、幾度となく凛と沙弓の水面下の戦いがあったのだが、地味なので略。
もし必要になったら電話を、と言って名刺を渡してくれた運転手に頭を下げ、現場へと向かう三人。
そこは小高い丘状の土地で、そこに深い森が広がっていた。
一応国の所有地らしく、立ち入り禁止等の看板は見当たらない。
だが、森の入り口には『召喚獣注意』の看板とテープが張られていた。
そして、魔法局の職員が数名、警備に当たっていた。
「お、式森君じゃないか。」
「お久しぶりです、後藤さん。」
タバコを咥えた、ナイスミドルな男性に軽く挨拶する和樹。
後藤と呼ばれた男性とは魔法局からの依頼の時に、何度も顔を合わせている仲だ。
「お知り合いですか?」
「うん、魔法局召喚獣科の後藤さん。現場指揮者でもあるんだ。」
「おや、お嬢さんは初見だね。魔法局の後藤だ、よろしく頼むよ。」
「はい、神城凛です。よろしくお願いします。」
フランクに手を差し出す後藤に、凛も握手で答える。
「神城…? もしかして九州の神城家の人かい?」
「はい、そうですが…。」
凛の言葉にほほぉ~う…と瞳を細めて顎を擦る後藤。
隣に立っている和樹に視線を移すと、唐突に肩を組んで和樹を押さえ込んだ。
「わ、ちょっと後藤さんっ?」
「このこの、杜崎のお嬢さんだけじゃなく、神城の別嬪さんまで仲良したぁ羨ましいぞコラっ」
と言ってグリグリとウメボシをかます後藤。だがその顔には嫉妬のしの字も存在しない。
友人の仲を冷やかす悪友みたいな顔だ。
「痛たたた、ふ、二人が可愛いのは認めますけど、なんで俺を…っ」
「えぇい、相変わらずの鈍感め。杜崎さんも苦労してるだろう?」
「ええ。その通りです。」
後藤の言葉に深く、深~~~く頷く沙弓嬢。隣で凛も頷いている。
「? ? ?」
分かってないのは当人である鈍感だけだったり。
まぁそれは兎も角。
魔法局の職員(彼らは国家公務員であり、一部に警察と同じ権限を持っている。因みに後藤は元警視庁職員である)と合流した三人は、対策本部として設置されたテントに連れて行かれた。
「それで、逃走した召喚獣は?」
「あぁ。まずこの地図を見てくれ。これはこの付近一帯の山の地図なんだが、彼らはここから……。」
と、テーブルの上に取り出した地図を赤いマジックペンで線を描いていく。
「この辺りを行動範囲としているようだ。この範囲から外へは、警戒して出てこない。そこでウチの方で追い込みをかけてみたんだが…。」
と、後藤が言葉を濁して後ろを見た。そこには明らかに怪我してますと言った風体の職員が数名。
ただ、その怪我がどう見ても切り傷や刺し傷ではなく、打撲痕のように見える。
一人、パンダ顔の人居るし。
「プッ……あ、あんな風に撃退されてしまって……くくく…っ」
「後藤さんっ!笑うなんて酷いっすよっ!!」
パンダ顔の職員が涙を滝のように流して叫ぶ。
凛と和樹も笑うのを頑張って堪えている。沙弓は何時ものポーカーフェイスだが、微妙に口元がピクピクしていた。
私はクールビューティーなんだから、パンダ顔程度じゃ笑わないわ。的なオーラが感じられる。
「すまんすまん。撃退と言っても、情けないことに全員がトラップにやられてなぁ。俺も三つ目の罠でリタイアだったよ。」
「へぇ、後藤さんがやられるなんて、よっぽどなんですねぇ…。」
後藤は元警視庁の出で、その前は自衛隊に居たという経歴の持ち主だ。その実力は高く、魔法局から引き抜きされたほど。
その後藤が苦戦するトラップなのだから、仕掛けた相手は相当頭が切れるのか、そういった事に慣れているのか。
どちらにせよ、厄介な事に変わりない相手だ。
「まぁなぁ…流石に草の足掛けから頭上丸太、ラストにツタ網とこられたら俺でもどうしょうもない。」
草の足掛けは、長めの草を結んでアーチを作り、足を引っ掛けるというトラップの初歩。
もの凄く幼稚だが、コレが意外に難敵であり、戦場で転ぶ=死の危険性に繋がると言える。
足をとられて転んだ所に、頭上からツタで吊るされた丸太が落下してくるのだから本気で危ない。
後藤は元自衛隊員だけあって丸太を転がって避けたのだが、避けた先にはツタで作られた網トラップ。
間抜けにも吊るされてしまったのだった。まぁ魔法で直ぐに脱出したのだが。
そんな対人、対獣用トラップの数々に加え、やたら人の精神を刺激するようなトラップが多く(草トラップとか。引っ掛かるとかなりムカつく。)、負傷者も出たため追い込みを断念したのだった。
負傷者と言っても、精々転んだぶつかっただので出来た打撲程度。一番酷い怪我でも、軽く骨にヒビ入った程度だそうだ。
「妙ですね。これだけ人の隙を突けるトラップが作れるなら、もっと殺傷力を持たせてもいい筈なのに…。」
「手加減されている…という事でしょうか?」
凛の言葉に、そうかもね…と頷く和樹。
「本来ならもっと人を動員して対策に当たるんだが、別件で人手が足りなくてなぁ。すまんが一つ頼むよ。」
「分かりました。任せて下さい。それと、対象はいつも通り…。」
「あぁ。君の好きにしてくれて構わない。送り返すなり使役するなりしてくれ。」
後藤達から地図などの装備を借り受け、森の入り口に立つ三人。
森は決して深い森ではないのだが、現在は少し暗い空気に包まれているように感じられる。
「それじゃ、行ってきます。」
「あぁ。何かあったら無線で連絡してくれ。」
後藤達に見送られ、森へと踏み入る和樹達。
森の中ほどまでは人が通れる道が続いているので、しばらくはハイキング程度の道程だ。
「それにしても、トラップかぁ。ちょっと厄介だね。」
「そうね。それにこの森、深くはないけど少し広いわ。」
「相手の姿が確認すら出来ていないのは少し辛いですね…。」
凛が後藤から手渡された書類を見ながら呟く。
後藤達が追い込みをかけた際、職員達は皆トラップの餌食になり、対象の姿を目視した職員は0。
唯一、後藤が指示を出しているような女の声を聞いた程度だ。
「性別が女性で、森を利用する種族…エルフかな。」
「そうね、そう考えるのが妥当よね。あの連中、清楚なイメージが強いけど実は結構好戦的だし…。」
沙弓が言うとおり、実はエルフは割りと好戦的だったりする。しかも保守的でもあり、人などと交わった“抜けエルフ”を許さなかったりするのも彼らだ。
よく悪いイメージで捉えられるダークエルフだが、逆に彼らは守秘的なだけであってそれほど好戦的でもない。
森に入ってきた人間を問答無用で攻撃するのはむしろエルフの方だと言われている。
ダークエルフ達は自分達が脅かされなければ、人間が森を通過するのを見逃す事もあるのだから。
まぁ、呪術関係で名が知れているのでダークエルフ=悪的なイメージも仕方ないのだが…。
「エルフですか…やはり強いのでしょうか?」
「そうだね…魔法や弓、それに森なんかでの戦闘では彼らに勝つのは難しいかな。特にエルフの魔法は強力なのが多いし…。」
以前、一度だけエルフの一団と遭遇し、戦闘になった事がある和樹。
あの時は何とか話し合いで解決できたが、彼らは相手を完全に無力化しないと話し合いに応じようとしないのだ。
お陰でかなり苦労した記憶があった。
「とりあえず、後藤さん達が撃退された場所まで行ってみよう。彼らはあんまり広範囲で行動してないみたいだし。」
広範囲探知魔法で彼らの行動範囲をある程度は後藤達が補足してくれていたので、彼らの行動範囲は大体分かっている。
ただ、広範囲探知魔法だと詳細な場所が分からないのが困りモノ。
地図に記された範囲も、最大で約3キロと広い。
ただ、相手の痕跡さえ掴めば、後はヘルハウンドやウィンターウルフに臭いで追跡して貰える。
しばらく森の中を歩く三人。既に敵のテリトリーなので、和樹を先頭に進み、その脇を凛と沙弓が固める。
既に沙弓は腕と足にプロテクター、右手に【ドルクレイの腕輪】を装備し、凛もいつでも抜刀できるようにしている。
和樹に関しては、黄金の剣が収納された符を上着のポケットに入れている。
地図とか持ってるので剣はまだ邪魔なのだ。
移動と話し合いで既に日は傾いてきている。
高校生である彼らが夜間行動するのは色々問題あるのだが、この仕事でそんな事言っていられない。
日が沈みかけた頃、和樹達は後藤達が撃退された場所に到着した。
彼方此方に発動した罠の跡が残っている。
「二人とも気をつけてね。まだ残ってる罠が在るだろうから。」
「えぇ。」
「はい。」
二人とも和樹の言葉に頷いて周囲を捜索し始める。
何か、トラップを仕掛けた相手の手掛かりが残っていないかを調べている面々。
和樹も門からウィンターウルフを一匹呼び出し、臭いを調べて貰っている。
「どう?」
「フンフン…ッ…キュ~ン。」
和樹の問いかけに、臭いをかいでたウルフがフルフルと首を振る。
どうもトラップを仕掛けてから時間が経っているのか、臭いが無いらしい。
ただでさえ草だの花だので臭いが誤魔化されているのだ、時間が経てば相手の臭いも消えてしまう。
「そっか…もうこの辺りには居ないのかな…?」
と思案している和樹の後ろで、「キャっ」と小さく悲鳴が上がった。
それに素早く反応する和樹。
「どうしたの凛ちゃんっ!?」
「な、なんでもないです先輩っ!」
が、悲鳴をあげた凛は慌てて首を振った。その様子に首を傾げつつ、「気をつけてね?」と声をかけてあげる和樹。
因みに凛は、例の草トラップに足をとられて転びそうになっただけだったり。
「ふぅ…しかし本当に頭にくるトラップだな…。」
足元の草を眺めながら呟く凛。罠が幼稚なだけに、掛かった時の精神ダメージはかなり大きい。
それによって冷静な判断力を削ぐのが目的の一つなのだろう。
さらり、このトラップで足元に注意が向いてしまい、そこへ今度は上からのトラップだ。
分かり易いが、逆にこういったトラップほど掛かり易かったりする。
「フ……間抜けね。」
「#(ピキッ)………なんだと貴様…ッ」
凛の転びそうになった場面を見ていたのか、沙弓が鼻で笑っていた。
その言葉に青筋が立つ凛ちゃん。草トラップの怒りも相まって怒り易くなっている模様。
「油断しているからよ。これじゃ先が思いやられるわ…。」
やれやれと肩を竦める沙弓。事実だけに何も言い返せない凛だったが…。
「キャっ!?」
「どうしたのっ?」
今度は沙弓が小さく悲鳴を上げた。普段からでは想像できない可愛い悲鳴だったが、和樹は的確に反応していた。
「な、なんでもないわ…。」
足元ではなく、横を見ながら告げる沙弓。
その視線の先には、横合いから突然放たれた丸太が木にぶつかっていた。
30センチほどの丸太が、頭上から振り子のようにして沙弓を狙ったのだろう。
後一歩でも足を踏み出していたら、これが直撃していた。と言っても大きさ的にそれほどのダメージは無いだろう。
木に衝突した音はコーンと軽い音で、先端も平らで殺傷力は無いし。
「フ……間抜けめ。油断しているからだ。」
「…………#(ピキッ)」
自分が言った台詞をそのまま返されて青筋が浮かぶ沙弓嬢。
二人の対立はさらに危険な方向へと進んでいた。
「なんにもないねぇ…。」
「クゥン。」
その二人の対立を煽っている原因は、マイペースに首を傾げていた。
「すっかり暗くなっちゃったね。」
ライトの明かりを頼りに進んでいた和樹が、辺りを見回して呟いた。
既に日は落ちて、辺りは真っ暗。
月が出ているのでそれほど暗くはないが、森の中なので木々が邪魔して一際暗く思わせる。
「一度休憩しようか。この分だと今日終わるか分からないし。」
「そうね。」
地面が露出した広めの場所で焚き火の準備をする三人。
本来なら焚き火など言語道断なのだが、相手を誘い出す意味合いも兼ねて枯れ木に火をつける。
もし相手が接近してくれば、ウルフが反応できるだろうから。
ウィンターウルフの嗅覚はかなり優れている。なにせ雪に隠れた獲物を探り出すなんて彼らにとっては朝飯前なのだから。
焚き火に準備してあった鍋とヤカンを置き、簡単な夕食の準備を済ませる和樹。
小さい頃から山でキャンプをする事が多かったので、かなり手馴れている。
流石に飯盒でご飯とカレー…とは行かないので、レトルトのシチューに手を加えて作った特製シチューを三人で頂く。
ウルフには大きめのドライソーセージ。好物なんだそうな。
「それにしても、先輩は何でもできるんですね…。」
シチューを食べながら凛が呟いた言葉に、きょとんとした顔になる和樹。
「そうかな?」
「そうですよ。料理だけでなく、こういった焚き火などの準備もそうですが、先輩は器用だと思います。」
「そうかなぁ…。」
凛の言葉に首を傾げ続ける和樹。
和樹としてはそんな事当たり前過ぎて特別言われる事でもないと考えているので、褒められてもそんな特別な感情は無い。
小さい頃に召喚術の才能を見出し、ただひたすらにそれとそれに連なる事をやって来ただけの事。
キャンプの準備は、山などで召喚獣達と過ごしたいから覚えたのだし、料理は神社の仕事で何かと忙しい両親の為に覚えた程度。
慣れただけであって、別に器用な訳じゃないと思っているのが現状だ。
確かに和樹はそれほど器用ではない。が、変な所で器用なのだ。
料理にしてみれば味付けや一手間加えるのがやたら器用なので、料理が上手いと思わせられるのだ(純粋な料理の上手さなら夕菜と千早には勝てない)。
裁縫とかは不器用なので完全に千早と和美に頼りっぱなしだし(二人はそれがすんげぇ嬉しいのだが)。
まぁそれは兎も角。
器用であろうが不器用であろうが、それを誇りもしないし驕りもしないのが和樹という男だ。
そんな態度の和樹を見て、あぁなんて謙虚なのだろうかと乙女回路全開な凛ちゃん。
実際はマイペースかつ鈍感なだけなのだが。
恋する乙女にとっちゃ、多少の事は全てプラスに向かうようだ。
「…………………。」
そんな、謙虚な先輩と運動部系のノリな後輩の甘酸っぱいワンシーン(に見えるらしい)を見せられて面白くないのが沙弓嬢。
普段なら和樹と二人っきりで森の中。焚き火にあたりながら肩を寄せ合いはずだったのに…とか色々な事を思うと、どうしても面白くない。
別にそんな甘いシーンを和樹が演出する訳でもないのでほぼ沙弓嬢の妄想なのだがそれは兎も角。
戦闘に置ける和樹の相棒、または背中を任せてもらえるパートナーは自分だと自負している沙弓にとって、凛は正に邪魔な存在だった。
因みに和美は戦略とか戦術。千早は完全に家庭面と言うかメンタル面でのパートナーと言えるのでそうは感じない。
かおりと紫乃は除外だ。色々な意味で勝てないので。
和樹の戦闘時の思考や行動、癖などを把握している自信はあるし、和樹も自分を信頼している自信がある。
だがやはり面白くないし気分にムラが出るのは仕方のない事。
これも一つの嫉妬である。某ピンクの少女に比べたら全然マシなのだが。
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「くしゅんっ…、うぅ、なんでしょう、誰か噂でも…はっ、もしかして和樹さんっ!? きゃ~、だったらどうしましょう私~~~っ!!」
「余裕だな宮間、この隙に喰らえ、15連鎖!!」
「はうぅっ!? せ、先生それは酷いですよぉ~~~っ!?」
「く~~~…す~~~……。」
「なんで私まで………。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……なんか遠くで、落ち物ゲームにて未だに白熱しているようだがまぁ今回はあまり関係ないので放置する。
哀愁塗れの和美の言葉が凄く不憫だが、今回彼女の出番はまるでないのがそれに拍車をかけたり。
沙弓嬢と凛ちゃんの間のシコリがどんどん肥大しつつも夕食を済ませる三人。
始終、凛は和樹に何か言いたそうだったが、結局言葉も荷物の中の謎の包みも出てくる事は無かった。
鍋などを片付け、さてどうやって探すかと相談を始めようとした時、突然ウルフがある一方を向いて耳をピクピクと動かし始めた。
「ッ!」
それを見て素早く地面に耳をつける和樹。
その行動に凛がどうしたのかと慌てるが、素早く沙弓が凛の口を塞ぐ。
「…………………地鳴りがした。多分魔法か何かの衝撃だ。」
地面から顔を上げてウルフが何かを感じた方を睨む。
凛と沙弓もそちらを凝視し、身構える。
「っ、光った!」
沙弓が指差した方を、和樹が懐から取り出した暗視スコープ(単眼式)を取り出し、覗き込む。
「………距離があるけど、魔法、それもかなり威力の高い攻撃魔法の閃光だ。……何かと戦ってる………?」
暗視スコープを通した景色の中、小さな影が森の木々の合間を縫って動いているのを何とか目視した和樹。
生憎軍用とかの精度の良いスコープではないので正確に見ることは出来ないが、確かに何かが居て、しかも戦っている。
「魔法局の応援でしょうか?」
「いや、それなら後藤さんから連絡が来るはずだ。直ぐに準備して、何か様子が変だ。」
手早く荷物を纏め、焚き火に水をぶっ掛け鎮火する。これキャンプのマナー。
そして暗い森の中を、ウルフを先頭に走り出す三人。
三人ともそれなりに鍛えているので、森の中でもそれほど苦も無く走り抜ける。
「近い…いえ、近づいて来てる…っ?」
「どうも、何かに追われてるみたいだね。」
目的地に近づくにつれて、段々と閃光や衝撃が大きく伝わってくる。
だが、いくら和樹達の足が速くても接敵するには早過ぎる。
つまり、向こうも此方に向かって来ているという事になる。
「誰が何と戦ってるのか分からないけど、巻き込まれたら厄介だ。一旦身を隠そう。」
「先輩、あそこの岩陰にっ」
このまま遭遇して混戦になったら事なので、凛が見つけた大き目の岩の陰に身を隠す三人。
和樹が一人、岩に登って伏せる。これで向こうが此方に到達した時、相手の姿を確認する事が出来る。
やがてガサガサという枝や草の慌しく揺れる音と、獣の雄叫びが聞こえ始める。
「グルルルルルル…ッ」
「白? 和樹、白が警戒してるわ。」
「鳴き声だ。イヌ科じゃない獣の声がする…でもなんでこんな森にっ?」
何気に名前初登場だが、ウィンターウルフの白(びゃく)が、過剰に警戒している。
和樹が聞き取った獣の声は、野良犬でも猪でも、ましてや熊でもない大型の肉食獣の雄叫び。
確かに大きめの森だが、生息していたとしても鹿やら猿がいい所だ。そも、日本にネコ科の大型肉食獣は居ない。居たらそれこそてぇへんだ。
やがて、逃げているらしき連中の声が聞こえてくる。
「……するな………だッ。」
切羽詰った声、その声色から女性の声だと判断する和樹。若干ハスキーな声だが、恐らく女性で間違いないだろう。
そうなると、召喚された人型種かもしれないと判断する和樹。
音がどんどん大きくなり、やがて確かな気配を感じられるようになる。
凛が刀に手をかけ、沙弓がどこから来ても良い様に身構える。
ガサガサガサ…ッと大きな音を立てて木々が揺れる。
「(枝…?…しまった、上かッ!)」
素早く下ではなく上を見上げる和樹。
その視線の先、月が出ている空を、複数の人影が舞う。
「…っ、人間かッ!」
空に舞う人影、枝から枝へと跳躍していたのであろうその影が和樹の姿を目視し、その手に持つ鋭利な刃を振るいながら落下してくる。
「ッ、ちぃッ!」
岩の上を転がるようにして刃を避ける。
ガキィッ! という岩と刃のぶつかった音の後に、ストっと軽やかに岩山に着地する人影。
闇夜よりもなお黒く艶やかな黒髪は、まるで鴉の濡れ羽。それが頭の後ろで括られ、尻尾のように揺れる。
紫色の瞳は意思を表すかのように強い眼光を持ち、その端正な顔は焦りと怒りに彩られている。
そして目を惹くのが、浅黒い肌と長い耳。それだけで普通に人間にだって相手が誰だか判断できる。
ファンタジーにおける妖精の代名詞の一つであり、何かと敵役にされてしまう種族。
「ダークエルフッ!?」
「はぁッ!」
和樹の驚きに目もくれず、その手に持つ剣を振りかざす。
足場の悪いにも拘らず、避ける和樹を追い詰めるダークエルフ。
その剣技は誰の目から見ても見事。
「くッ!」
ダンッと岩山を蹴り、手近な木の枝へと飛び移る和樹。それを追って、ダークエルフもまた岩山を蹴る。
「先輩っ!?」
襲撃された和樹を追おうとした凛だったが、足元に飛来する何かに足止めされてしまう。
「くっ、弓かッ。」
見上げれば、木の上からこちらを狙うダークエルフ。慌てて後退して身を隠す。
「何とか相手の行動を…白っ?」
思案する沙弓の横で、白がダークエルフ達が来た方を向いて身構えていた。
そして沙弓も気付く。彼女達は、何かに追われていた事を。
それとほぼ同時に、何かが草むらから飛び出してくる。
「ガァオオォォォォッ!!!」
「な、虎っ!?」
飛び掛ってきた牙の長い、模様も無いが確かに虎…サーベルタイガーの姿に驚く沙弓。
日本に虎なんぞ生息してないのだから驚くのは無理ない。と言うか居て堪るか。
しかもそれが、動物園やテレビでだって見られない種…古代絶滅種なのだから驚きも大きい。
「疾ッ!」
だが驚愕しつつもそこは沙弓。飛び掛ってくるサーベルタイガーの左頬を狙って鋭い鉄拳を見舞う。
「ギャウゥッ!?」
プロテクターの効果で正に鉄に殴られた威力によって、空中ですっ飛び、地面に叩きつけられる虎。
だがそれだけでは致命打にならないのか、頭を振って起き上がってくる。
「杜崎、なんだこいつらはっ!?」
別の場所から飛び出してきたサーベルタイガーを相手に、声を荒げる凛。相手は凛の持つ刀を警戒してジリジリと様子を見ている。
「…テレビか本で見た事ないかしら。八千年くらい前に絶滅した、剣歯虎(けんしこ)、別名サーベルタイガーでしょうね。」
「絶滅って…では何故この場に居る!?」
「分からない? この世界で絶滅してても、別の世界で生きてるのよ…元素六属世界でね。」
「グルァァァッ!!」
現在のライオンほどの大きさのサーベルタイガーが雄叫びを上げる。沙弓達を狙うサーベルタイガーの数、およそ4匹。
「和樹はどうしたの?」
「分からん、対象と思われる連中に追われて森の奥へ…。」
背中合わせになる二人。その周りを、剣歯虎達が取り囲み、隙を窺っている。
白が威嚇するが、あまり効果ない。
「魔法局が放ったにしては狂暴ね…野生だったらそれこそ大問題だし…。」
「第三者…という事か。」
魔法局が増援として召喚獣を放ったにしては、狂暴な固体。
まさかこんな都市部に近い森で剣歯虎が野生で生きてるなんて考えたくも無い事。
ならば答えは一つ、第三者の介入。
対象の人型種…ダークエルフと判明したが、もし彼らが剣歯虎を召喚したのだとしても、追われている理由が不明だ。
「何にせよ、この場を凌いで和樹と合流するわよ。」
「ふん、珍しい事だ。遺憾だが、同意見だ。」
身構える二人と白。そんな彼女達に、獰猛な剣歯虎達が一斉に襲い掛かった。
一方の和樹は……。
「待ってくれ、話を聞いてくれッ!」
「はん、今さらなんの話かしらっ!?」
―――ギィンッ…ギギィィンッ!!―――
連続して響く金属音。
和樹の黄金の剣と、ダークエルフの銀色の剣が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
一級の魔法道具である黄金の剣と互角に凌ぎ合うのだから、よほどの業物の剣なのだろう。
その剣を、まるで踊るようにして振るい、和樹を追い詰めていく。
「アタシ達を下賎な理由で召喚して、さらにサーベルタイガーまでけし掛けるなんざ、本当に人間は嫌な生き物だねっ!!」
「ちょ、誤解だってば! そもそもサーベルタイガーなんて知らないしッ!」
口論しつつも剣戟は止まない。
森の中を疾走しつつもこれだけ見事に戦えるのだから、流石はダークエルフと言った所か。
それと互角に戦える和樹もまた、見事なもの。
だが、はっきり言ってしまえば和樹は滅茶苦茶焦っていた。
相手が何か勘違いしているのもあるが、それ以上に相手がダークエルフである事に焦っていた。
エルフならまだマシだったかもしれない。
何故なら、彼女達ダークエルフは闇に生まれ闇に住まう一族。
その瞳は、人とは比べ物にならない暗視能力を持ち、暗闇においても昼間と変わらぬ行動が可能なのだ。
さらに場所は森の中。
暗闇の森で彼女達に勝てる存在なんて、それこそ場所を無視するような連中(ドラゴンとか大型魔獣とか)なものだ。
一度闇や草陰に潜まれたら、いくら和樹でも察知できない。
モンスター種に働く力も、相手がダークエルフではまるで役立たず。
よって、和樹は物凄く焦っていた。
「恍けるんじゃないよ、アタシ達を始末しようと森にサーベルタイガーどもを放ったのはお前達だろうッ!」
「だから、俺じゃないってばッ! サーベルタイガーなんて召喚した事ないしッ!!」
和樹は基本的にウルフ・ハウンド・モンスター種を好んで召喚するので、タイガー種はあまり召喚した事が無い。
召喚した事があるのも、アサシン・カラカルだけだし。
「はん、ならその証拠を見せてみなよッ」
「んなこと言われてもッ」
どんどん追い詰められる和樹。何となく気分的に、女王様に責められている気分になるが、それも仕方ない。
何せ、相手のダークエルフ、よく見るとドレスに似た服装をしているのだ。
森の中で邪魔にならない程度の衣装だが、彼方此方にレースやらの装飾がされており、高位な身分であるように見受けられる。
性格も少し高圧的だ。しかも頭が回るのか口も達者。
彼女に対抗できそうなのは恐らく和美レベルだろう。
つまり、和樹では口で勝てないという事になる。
「ああもう、どうすれば良いんだかっ」
誤解である上に、相手が女性、しかもお姉さん(姐さん?)系なのでとっても戦い難い和樹君。
某ゲーム狂と某ネクロフェリアの教育が、困った場面で発揮されていた。
相手が女性で年上なもんだから、冷徹な戦闘モードに換われないのだ。
「くそ、何とか二人と合流しないと…ッ」
と、和樹が姿を眩ませる為に懐へ手を差し入れた瞬間、暗闇の中から何かが和樹の足元へ素早く伸びてきた。
ピシャァンッ! と、痛そうな(人によっては気持ち良さそうな)音を立てて和樹の足を払うそれ。
「痛ッ!?」
痛みと打たれた部分が足であったため、転倒してしまう。
倒れたそこへ、頭上から降り注ぐ数本の細長い物体。
まるで蛇のように和樹の体に絡まり、瞬く間に拘束されてしまう。
「ぐぅ…ッ」
もがく和樹だが、ギリギリと締め付けられて身動きが取れない。
「ご苦労だったね、お前達。」
「ははっ」
勝ち誇った笑みで和樹を見下ろすダークエルフ。
その後ろには、何とも危ない衣装の女性ダークエルフ達が三名ほど。
三人が三人とも際どい衣装なのだが、それ以上に手に持っていたりする妖しげ…と言うか色々な意味で危なそうな道具がとっても怖い。
鞭とかはまだ良い。蝋燭とか焼き鏝とか荒縄とか皮の拘束具とかそういったのがとってもイヤン。
「ふ~ん、中々可愛い顔してるじゃないか…。」
と、チャシャ猫のような笑みを浮かべるダークエルフのお姉様。
妖しい三人娘も、それに同意なのか舌なめずりをしていたり。
「あら、結構好みかも…鳴かせてみたいわぁ。」
「アタイも同意見だね。たぁ~っぷり痛めつけて……ジュルリ…おっといけねぇ。」
「だめよぉ、こういう子は可愛がってあげるのが一番可愛いんだから…♪」
なにやらすんげぇ怖い事を言っていたりする三人組。
こらそこの二番目の勝気系、涎垂らすなと言いたい。
「………………………………(ガクガクブルブル)」
違う意味で恐怖に震える和樹。
流石に拷問とかは嫌らしい。そりゃ当然だが。
「あの虎どもの追撃もないみたいだし、魔弾部隊と合流して身を隠すよ。」
リーダーらしきダークエルフの言葉に、恐らく、いやきっと、つーか絶対に拷問隊であろう三人も返事して和樹を担ぎ上げる。
「フフフフ、アタシ達を敵に回した事を後悔させてあげるよ、坊や。」
「…ムガムガ……(もう後悔してるよ…とほほ。)」
猿轡までされて本気でピンチな和樹。
だがその瞳は、まだ諦めた人間の瞳ではなかった……。
続く?
~~~今日のモンコレ~~~
舞穂「にゃ~、みんな久しぶり~、今日のモンコレの時間だよ~っ」
紫乃「長々と停滞した上に全然進歩が見られないヘタレ作者のお陰で、出番も少なかったですねぇ。」
舞穂「あはは…でも舞穂なんて名前すら出てないよ~。」
紫乃「舞穂ちゃんの出番はメイド編が終わったらですから、仕方ないです。さて、それでは久しぶりの今日のモンコレのコーナーです。」
舞穂「まず最初のモンスターはこの子っ!」
モンコレNo12 ペガサス
紫乃「魔獣と言うより、幻獣などの神聖な生き物として扱われる事の多い天馬、ペガサスですね。
メデューサの子などとして有名だったりしますが、この子は六門世界に普通に生息するモンスター種です。
天馬と呼ばれるだけあって、その飛行スピードはかなりのもの。レベルは2で、攻撃力は1と低く、防御も2です。
ですが、この子には長距離飛行という利点があります。」
舞穂「紫乃さん紫乃さん、長距離飛行ってなに?」
紫乃「長距離飛行とは、モンスターの進軍範囲の一つです。
歩行・飛行・長距離飛行があって、歩行は隣接する地形、上下左右に一歩しか進軍できません。
飛行タイプは隣接する地形、斜め上や下も含めて全てに進軍できますが、これも一歩、つまり一つの地形しか進めません。
この長距離飛行というのは、文字通り長距離、二歩分進める進軍タイプなんですよ。
自軍本陣からなら、相手本陣前の地形に直接移動できますし、自軍の本陣前の地形に居れば、相手本陣に直接乗り込める訳です。
当然、一歩だけ進む事も可能ですよ。」
舞穂「へ~、じゃぁ凄く便利なの?」
紫乃「戦況によってはそうですね。
ただ、複数のユニットを移動する際に、この進軍タイプが枷になる事もあります。
飛行の範囲で斜めに進みたいのに、連れて行きたい壁ユニットなどが歩行だったり…なんて事もありますから。
長距離飛行を持つユニットも少ないので、戦略がカギになりますね。」
舞穂「へぇ~…。ところで紫乃さん、この子も背中に乗れるんだよね?」
紫乃「そうですよ。そこがペガサスの利点の一つ。
ペガサスは【○空中疾走】という能力を持っていて、同時に行動するユニットが属性水/風の場合、進軍タイプを長距離飛行に変更できるんです。
この能力で、属性が風か水のユニットを長距離飛行で行動させる事が可能です。
とは言え、一体限りなんですけどね。」
舞穂「ペガサスちゃんすご~い、舞穂も乗りたい乗りたいっ」
紫乃「因みに作者は、初心者の頃にこの能力で相手本陣にリヴァイアサンを送りつけるなんて事してたそうです。
普通に考えるとこれはてかなり無理がありますよねぇ……。
深く突っ込んではいけないのがモンコレ世界なのですが。」
モンコレNo13 ウィンターウルフ
舞穂「真っ白な狼、ウィンターウルフの白(びゃく)ちゃん。
和樹くんが一番最初に召喚した子なんだよね。」
紫乃「その通りです。
通常、ウィンターウルフはヘルハウンド達と同じように複数で召喚されるのですが、この子を呼び出した時はまだ和樹君は子供だったので、一体、しかも子供を召喚してしまったんです。」
舞穂「その子が成長したのが白ちゃん。名付け親は和樹くんのお爺ちゃんなんだって。」
紫乃「ウィンターウルフは、複数の個体でレベル1、攻防1/1のユニットとして扱われるのですが、この子は和樹君と共に成長した為か、個体でありながら同じレベルの能力を持っています。
さらにイニシアチブ+1を持ち、吹雪耐性を持っているので吹雪などではダメージを負いません。」
舞穂「鼻が良いし、賢いから和樹くんも頼りにしてる子なんだって~。」
紫乃「因みに、第一話でこの子が出てきたのは、夕菜さんを探す為だったりします。」
モンコレNo14 サーベルタイガー
舞穂「にゃ~、なが~い前歯~。」
紫乃「こちらの世界では絶滅してしまった剣歯虎、つまりサーベルタイガーですね。
こちらの世界に居たのがあちらの世界に行ったのか、それとも逆なのかが学者達の頭を悩ませていたりするユニットです。
レベル2で攻防2/2、さらにチャージ+2を持ち、即時召喚も可能な安定したユニットです。
性格はかなり凶暴で獰猛だそうですよ。」
舞穂「あの長い歯、ご飯食べる時に邪魔じゃないのかなぁ~?」
紫乃「彼らが滅んだ理由が、実はそれ…という説もありますが、実際はどうなんでしょうね。
このユニットは和樹君も未召喚のユニットです。和樹君は犬系のユニットを好んで召喚するので、和樹君が彼らを使役するのは無いかもしれませんねぇ…。」
舞穂「にゃ~、ダークエルフの人たちは次回紹介するよ~。」
紫乃「では皆さん、また次回。」
あとがき
やっと復活いたしました。
皆様お久しぶりです、忘れられたかもしれないヘタレ物書きのラフェロウでございます。
思えばこちらで更新停滞してから早二ヶ月弱…なんぼなんでもサボり過ぎだろうという罵声が浴びせられないかと不安な小心者であります(マテ)
まぁ、全ての原因は友人が進めてきた漫画なんです。某所で投稿始めちゃったからこちらのネタが中々湧かなくて…。
しかも怪我までしちゃったもんだからさぁ大変。
手が使えないのでキーボードもろくに打てず、復活まで時間が掛かりました。
まだちょっと痛いですが、想像力があるうちに書かないとまた停滞する事になるので頑張るのです。
でもこれもブランクの影響なのか、話や文体が何か変なような…(汗)
リハビリがてらに、短編的な物を書いてみようかなぁ…(マテ)
と言うわけで、今回はまた閑話。これが終了したらドイツ博。修学旅行にメイドさんが続く予定。
修学旅行編では、停滞理由にもなった作品とクロス予定。や、予定は未定ですが(何)
さぁ、遅ればせながらのレス返しでござい。
ヒロヒロ様
感想ありがとうございます。
あぁ…確かにそう思ってしまうかのしれませんね(汗)
和樹ハーレム…構築は順調です(何)
D,様
感想ありがとうございます。
召喚獣はダークエルフさんでした。D,様ニアミスです(何)
和樹の携帯ゲーム機は、かおりが買え買えと進めたので買ったものです。
そう、さり気なく凄いのが那穂嬢。さり気なさの勝利です(マテ)
REKI様
感想ありがとうございます。
凛ちゃんのお料理は…何故か黒魔術系のイメージしか湧かないのですよ自分(マテ)
管理人さんのアレについてはですね、じつはうわなにをするやめ(ry
(復活して) おぉ、カード化企画ありがとうございます~。
さてさて、神城の人狼さんですかぁ…あ、名前が誤字(何)
やたら強い上に壊れてますなぁ…使われたらかなりイヤンですな(苦笑)
応援ありがとうございます、頑張りますですよ~。
SLY様
感想ありがとうございます。
そう、彼女のクッキングは正に死と隣り合わせ…うわなにをするそのりょうりは(ry
(復活して) いえいえ、あの物体は実はうわなにをするそのJAMはやめ(ry
(また復活して) SLY様正解、拷問隊です。正確にはとあるユニット+拷問と魔弾ですが。
お待たせしてすみませんでした、やっとこさ更新です。
sara様
感想ありがとうございます。
凛ちゃんが鍋料理を作ると、必ず異生物が…(何)
私の時も居ました、何でもかんでも洗剤であらう人とか、包丁持った事なくて危なっかしい人とか。
当時両親が共働きで料理が出来ないと自分が困る状況でしたが…流石に私も目を覆いたくなる光景でしたなぁ…(遠い目)
和樹君、また増やします。もうかなり増やします(何)
なまけもの様
感想ありがとうございます。
人狼編は…ちょっと彼の設定とか色々考えちゃって(汗)
それに原作だと彼は亡くなってしまいますし…剣魔だとピンピンしてますが(苦笑)
もしかしたら閑話として書くかもしれませんです。
目指せガクガク動物ランド。そろそろ竜種とかも入れないとですね(何)
エントリーはその三人がメインですが、+αも考えてます。
ヒントは部下と同僚(何)
下手すると神代が一番早いかも(マテ)
サイサリス様
感想ありがとうございます。
楽しまれたようで何よりです。
料理ですが、地域によって変わるんですかねぇ?
一応私が住んでるのは、そんなに田舎でもないんですけど…でも田舎だなぁ、合併問題で騒いでるし(何)
これが時代って奴でしょうか(違っ)
サイサリス様大正解! 商品は拷問隊をプレゼント!(マテや)
ディディー様
感想ありがとうございます。
直すのは無理です。無理なんです(何)
良くて少しはマシになる程度だったり…(マテ)
年上どころの相手じゃなかったり(汗)
エルフ族はかな~~~~~り長生きですから(笑)
契約は…どうなるでしょうねぇ(マテ)
ダイ様
感想ありがとうございます。
凛ちゃんは可愛いんです、偉い人にはそれが(黙れ)
人狼編は現在考え中ですが、やはり書いた方がいいのでしょうねぇ…。
あぁでもあの人の扱いどうしよう…(汗)
神城家の人たちがライバル…無論男もですよね?(ヤメレ)
ゲームの技ですかぁ…その案頂きです!(何)
でも私テイルズ持ってないので、ここは一つスタオーで(マテ)
そしてカード企画キターーーー!
ほうほう、かな~り凶悪な能力持ちですなぁ…。
でもきっと絵柄はすんごい朗らかなんだろうなぁ~と妄想(何)
修羅場発動した瞬間が凄く見たい(マテ)
無限の妾製はむしろ剣魔の和樹君に与えたい能力ですね(マテ)
更新お待たせしました~。
千葉憂一様
感想ありがとうございます。
乙女化凛ちゃん…きっとその内、屋上でお弁当などの甘いイベントも発生させてくれる事でしょう(何)
刺されちゃうかもしれませんねぇ…(汗)
和樹君が刺す…むしろ刺さなきゃ刺されるみたいな(何)
いえいえ、下ネタバッチコーイですから私(マテ)
通りすがりのドイツ系クォーター様
おぉう、うっかり誤字が(汗)
後で修正しておきますです、ご報告ありがとうございます。
今回登場したユニットは、偽・無法召還士様、ダイ様の応募されたダークエルフを採用いたしました。
お二方、並びに募集に参加してくださった皆様、ありがとうございます。
勿論、以前に応募された他のユニットも多数登場予定です。
それと、ダイ様へのレスで書いた、この話におけるかおり姐さんの能力をカードにしたものを乗せる予定でしたが、書いたメモをどこへやったのか忘れたため、少々お待ちください(汗)
はて、どんな能力だっただろうか…(何)