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「鬼畜将ランス〜第二十四話 『同盟締結』〜(鬼畜王ランス)」

B-クレス (2006-02-10 22:03/2006-02-10 23:16)
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「ここら辺は、ずいぶんと自然が多いな」

ウシ車に大量のボーガンを乗せて、カラー族の村に急いでいたランスだが、その光景に、感嘆の声を漏らしていた


「はい、カラー族は昔から自然と共に生きる種族でもありますので

 森の外にでることもできますが、多くは森と共に生きています

 逆に言えば、自然が豊富であるからこそ

 カラー達の居住区が建設できるといっても過言ではありません」

そのランスの言葉に、隣でぼんやりとしていたジルが反応し、自分の知る知識を伝えていた

「そうなのか?」

ランスは、相変わらず段々とより深く、より広がって行く森林の風景を眺めながらそうつぶやく

「はい、カラー族は『魂の色』を見ることも出来るといいます

 そして、『森』からの加護を受ける事が出来るとも伝えられています

 もともと戦闘能力では酷く脆弱な方であるカラー族ですから、守護無しでの繁栄は難しいでしょう」

ジルは、そんなランスの疑問に淡々とした口調で答え続けていた

まぁ、質問に答えるたびにランスの方に少しずつ擦り寄っているのは自分への褒美というような物なのだろうが・・・・


こんな風に、ランスの言葉にジルが反応し、そしてジルの返答にさらにランスが質問を重ね続けながら

ウシ車は、ゆっくりと整備されている、しかし、自然に限りなく近い道を進み続けていた


「止まりなさい!!ここから先はカラーの集落よ!!」

すっかりと周囲が『森』で囲まれた地形で、ランスとジルは突如現れたカラーの自警団と思わしき面々に弓を向けられた

ジルがそれに反応するように魔力を両手にためようとしたが、ランスはそれを手で指示することで止めさせ

そして、その面々のリーダーと思わしき女性に向かって、両手を頭の後ろで組む姿勢をとりながら、話しかける

「俺の名はランス、ヘルマン国のパットン王子の代理でここに来た

 敵意は無い、ただ、そちらの女王と『同盟』に関する話し合いをしたいだけだ」


そのランスの姿勢に、リーダーと思わしき女性は軽く警戒を解くが、ランスを睨みつつ、他の面々に荷車の中身を確かめさせていた


「ソミータ隊長!!荷車の中身は大量の弓らしきものだけです!!」

荷車の中身を確かめていたカラーが、隊長、『ソミータ』という名のカラーに向かって叫んだ

「いったい、どういう意味での、荷物かしら?」

ソミータは、ランスを睨みつけつつ、軽く剣に手をかけながら、ランスに話しかける

「贈り物として持ってきたものだ、金を送っても、食料物資を送っても意味は無いと思ったから、それにしただけだ」

ランスは、そんなソミータの様子に一切あせることなく、瞬時にそう切り替えした

しばらくソミータは考えるような素振りを見せ、しばらくして顔を上げると

未だ弓や、魔法による攻撃態勢をしたままの隊員達に、軽く手を振りながら、攻撃態勢の解除を命じた

隊員達も、ランスとジルを未だに軽く睨みながらだったが、ソミータの命に従って攻撃態勢を解除していった

「・・・女王様の下に案内するわ、ついてきて」

しばらくランスを睨み続けたソミータだったが、未だに腕をおろしもしないランスに根負けするように、ランスに向かってそう言った

ランスとジルは、その言葉に大人しく従い、ゆっくりとソミータの後ろをついていった


ソミータが女王の家まで案内する間、様々なカラー達にじろじろ見られていたが、ランスもジルも、特に気にする素振りは見せなかった


そして、女王の家に入って、客間らしきところに通されてから約五分後に、女王と思わしきカラーが部屋に入ってきた

「御待たせしました、私がカラー族の女王、パステルと申します」

華美でもなく、それでいて質素でもない衣装に身をまとった『パステル』と名乗る女性が、ランス達に向かって礼をした後、ランスの反対側の席にゆっくりと座った

「俺はランス、既に聞いているでしょうが、ヘルマン国王子『パットン』の代理人として、同盟締結のためにここに来ました」

ランスがパステルに向かって軽く会釈をしながら名乗っている間、ジルは暇そうに周辺を眺めていた

そんなジルの態度を特に気にする様子も無く、パステルは真剣な顔をして、ランスの方を向き直し、口を開いた

「貴方達も既にここに来るまでに感じているかもしれませんが、残念ながらカラー族は人間に好意的感情は抱いていません

 今回は同族でもあり、人間界の事情に比較的精通しているハンティ様の顔を立ててこの話し合いの場を設けましたが

 決して、同盟締結を前提として設けたわけではないという事は、先に理解しておいてください」

パステルの真剣な顔に呼応する様に、ランスも真剣な顔をして、口を開いた

「えぇ、その辺りは十分理解したうえでここにやってきたつもりです

 歴史上を振り返っても、俺達『人間』は、カラーを多く虐殺し続けてきてますからね

 だからいまさら『仲良くしよう』といってもそう簡単には受け入れ難いものだと思っています」

ランスの言葉に、パステルはやや満足そうに頷いた後、再び口を開いた

「貴方は其処まで理解したうえでなお、同盟を結びにやってきたそうですが?」

「はい、この同盟はお互いにとって有益な物になると確信しているからこそ

 無理を覚悟の上で、ここまで来たんです」

パステルの言葉に、ランスは真剣な眼差しで、パステルから一切視線をそらさずにそう言いきった


「有益?一体どのような意味で有益となるのでしょうか?」

パステルは、ややランスを試すような口調でそう言った、そしてランスは軽く目を瞑り、ゆっくり深呼吸をした後、再び口を開いた

「既に知っているかもしれませんがこれからヘルマンでは内乱が間違いなく発生します

 その内乱の際にカラー族から後方を突かれる恐れが完全に無くなれば、それだけ前方の敵に集中できる、これが俺達の有益です

 そしてそちらの有益は、まず此方が送るボーガン、現在のそちらの武装を考えれば、これだけでも自警戦力が上昇するはずです

 さらに、そちらも既に知っているとおり此方にはカラー出身者もいますし

 俺達も好んでカラーと争いたいわけではありません、可能ならば融和を図りたいとも思っています

 内乱が続く間は難しいですが、内乱が終わり次第この森付近の盗賊達を掃討し、そちらが許す範囲でこちら側の自警団も守りに回したいと思っています」

「なるほど、つまり、私達カラーへの虐殺をそちらからは一切行わず

 さらに、私達だけでは手の回らない部分の守護をしてくれると?」

「端的に言えばそうなります」

ランスの同盟条件を確かめるようにパステルが話しかけるが、ランスは即座にそれを肯定する

しばらく、その破格とも言える条件について考えていたパステルだったが、不意に口を開いた

「失礼ですが、その同盟条件を本当に行ってくれるという証明書のようなものはあるのですか?」

パステルの言葉に、ランスは深く頷きながら、一枚の紙を取り出した

それは、ヘルマンの王族だけが使う、『契約証明書』用の、特性の魔法で作られた紙であった

その紙に書かれた条件を破れば、いかに王族であっても即座に『罰』が下されるような魔法を編みこまれた契約証明書

如何に人間界から離れていると言っても、ある程度の情報はカラー達も手にしているので

その証明書の重要性は、パステルにもすぐ伝わったらしく、一瞬だけ驚愕の表情を見せたが、すぐに真剣な顔に戻った

「なるほど、確かに先ほどの条件は確りと書かれているようですね」

パステルがそう言うと、ランスはその証明書をテーブルへと置いた

「後はそちらがこの証明書にサインをしてくれるだけで、即座に効果を発するようになっています」

ランスのその言葉に、パステルは深く頷いた後、サインをしようとして、急に止まり、ランスの顔を見始めた


「俺の顔に何か?」

しばらくじっと待っていたが、隣のジルが段々と不機嫌そうな気を発してきたので、軽く汗を流しながら、ランスはそう尋ねた

「いえ、一つ、この条件に加えてもいいでしょうか?」

パステルは、ランスのそんな表情をみてクスリと微笑むとそう話しかける

「よっぽど変な条件で無い限りは大丈夫だと思いますが?」

そんなパステルを見て、さらに不機嫌になるジルを軽く視線で宥めながら、ランスはそう言い返す

「では一つだけ、貴方の『精神の中』を、少し見させてもらっていいですか?」

「『精神』の中、ですか?」

唐突なパステルの条件に、ランスは唖然としながらそう言い返した

ジルも、唐突なその条件に、半ば唖然としていたが、即座に気を取り直すと、軽くパステルを睨みだした

「はい、貴方は、その一つの体の中に『二つの魂』を持っているようですから、少し気になりまして」

パステルの言葉に、ランスは軽く息を呑んだ

『二つの魂』という表現に何か思い当たるものがあったのだろうか?

しばらく目を瞑った後、ランスは酷く真剣な顔をしながら、口を開いた

「俺にも、俺以外のそのもう一つの『魂』とやらと、会うことは出来ますか?」

ランスの真剣な表情に何かを感じたのだろう、パステルも真剣な表情をして、ランスの問いに答える

「はい、私と、当の本人である貴方くらいなら可能です」

そのパステルの言葉に、ランスは深く呼吸をした後、ゆっくりと口を開いた

「じゃあ、俺も連れて行ってください、その、もう一つの・・・『魂』がいる場所に」

ランスの言葉に、パステルは深く頷くと、ランスの隣に移動して、自分の額のクリスタルと、ランスの額をゆっくりと接触させた

「心を落ち着かせて、ゆっくりと、体中の力を抜いてください」

一瞬パステルの行動に動揺したランスだったが、その言葉に反応して、ゆっくりと、深呼吸をしながら力を抜いていった


その間、ジルは特に嫉妬するでもなく、淡々と人払いの結界を張っていた

その理由はただ一つ、精神の中に移動している間、パステルとランスは完全に無防備になるからだ

そして、この光景を見て、早とちりしたカラーがランスがパステルに何かをしたと思う可能性が少なからずある為

ランスの危険性を限りなく0にする為に、ジルは結界を張り続けていた


もっとも、全ての結界を張り終えた後、至福の表情でランスの腕枕を堪能していたりするのだが・・・


もしかしたら、ジルが人払いの結界を張った理由は、こっちを狙う為だったのかもしれない


  ランスの精神内部 


ランスは、その空間で漂っていた

前も、後ろも、上も、下も、よくわからない、漆黒の空間で、漂っていた

「これが、精神世界か」

ランスは、我知らず唾を飲み込みながら、ゆっくりと、ゆっくりと体を動かし始めた

「取りあえず、体は動くか・・・」

「はい、精神世界ですので、普段と同じようにとは行きませんが、体は動かせますよ」

ランスの独り言に、突如として隣に現れたパステルが、その疑問に答えた

「なるほど、それで、もう一つの『魂』はどこに?」

そのパステルの突然の出現に驚かずに、ランスはパステルに尋ねる

「こっちです、遅れないようについてきてください」

パステルはランスの前にゆっくりと、『泳ぐ』ようにして出ると、そのままゆっくりと進んでいく

ランスも、パステルの動きを見ると、自分もまた、『泳ぐ』ように、ゆっくりと前に進み始めた


どこまでも続く、漆黒の、『闇』のような空間を、延々とランスとパステルは泳ぎ続けた

幸いにして『精神体』であるから、泳ぐ際に動作も必要なく、まして疲労も無いので速度が落ちたりはしなかったが

だんだんと、周囲の闇の温度が『冷たく』なっているような錯覚を、ランスとパステルは味わっていた

そんな状態でも、パステルもランスも、動揺した素振りさえ見せず、ただひたすらに進み続けた


そんなときに、不意に目の前に閃光が走ると、二人は、不思議な場所に降り立っていた


「ここは・・・玉座か?」

そこは、ランスが言うように、まるで玉座のような空間であった

「しかし、あまりにも異質な玉座ですね」

パステルは、その空間をゆっくりと見回しながらそう言った

パステルがそう言った理由は幾つもある、その理由で特に大きなものは二つ

一つ目は、まず周囲の壁が、全て『骨』によって作られていたのだ

どんな生物の骨なのかはわからないが、壁全てが『骨』によって構成されているのだ

二つ目は、その壁に備え付けるように置かれた『鎧』達である

その鎧の一つ一つが形も、色も異なっているものであり、中にはリーザス軍で使っているような鎧もあるが

鎧全身が『刃』に覆われている物も、備え付けられていたのだ


「ほぉ、ようやく自分の力の限界を悟って俺様に体を差し出しにきたか?」

突如として響いた、威圧感さえも伴う声に、ランスとパステルは即座にその声の方を向いた

その方向・・・玉座には、『骨』で作られたような、鮮血で染まったように真っ赤なフルアーマーを着込んだ人物が座っていた

「御前は一体誰だ?」

ランスは、自分の意思を無視して震えだすその体を必死に鼓舞しながら、その人物に話しかける

「ふん、知らずに来ただけか、くだらん」

その人物は、ランスの声を聞くと心底つまらなさそうな声を響かせ、玉座に深く座り込んだ

「御前が、あの時に、俺の中に入ってきた奴か!?」

ランスは、その人物から放たれる威圧感と、自分自身が感じている恐怖をかき消すように、そう叫んだ

「あの時?」

しかし、その人物はまるで気にせず、つまらなさそうな声のまま、ランスに問い返す

「JAPANでの戦のときだ!!」

ランスは、そのつまらなさそうな声だけで恐怖を覚えている自分を自覚しながらも、必死に叫んだ

「あぁ、あの時のか、そうだ、あまりにもよわっちぃ御前を見かねてこのスーパーな俺様が力を貸してやったんだ、ありがたく思え」

その人物は、本の少しだけ覇気のような物を出しながら、ランスに向かってそう言った

ランスは、軽く深呼吸をすると、パステルの方を一瞥した

戦場になれた自分でもこれほどの威圧感を感じているから、パステルには限界だろうと思ったのだが


ランスの予想を裏切るように、パステルは平然とした顔で、玉座に座っている人物を見ていた

「一つ、私からも質問をいいですか?」

そんな自分を見て驚愕しているランスに微かに微笑むと、パステルは玉座に座っている人物に話しかける

「おぅ、俺様は美人には優しいからな、許してやろう」

その人物は、楽しそうな声で、パステルに向かってそう言った

パステルはその言葉に軽く微笑んだ後、ゆっくりと口を開いた

「貴方は、何の目的でランスさんの中で生きているのですか?

 封印のような物があったようですが、今の貴方ならその封印を破壊することも出来るでしょう

 そして、ランスさんの精神を奪い取ることも、この体から抜け出ることもできるはず

 しかし、貴方はランスさんの中で生きている、何故ですか?」

玉座に座っている人物は、パステルの問いを受け、軽く声を漏らしながら笑ったあと、立ち上がりながら口を開く

「確かに、スーパーで無敵なこの俺様ならこの体を奪い取ることも容易いし、この体から出ることも容易い

 だがな、このスーパーな俺様だが、そんなことをすると暇になるだけだ

 よわっちぃこいつを中から眺めているのは中々いい暇つぶしになるからな、ガハハハハハハ」

その人物は、自信満々といった口調でそう言い放ち、高笑いをし始めた

「では、ランスさんが危険になったりしたら、貴方は力を貸すんですね?

 貴方が言う『暇つぶし』がなくなってしまうから?」

パステルはその言葉を聞き、軽く笑うと、そう切り替えした

「む・・・確かにそうなるが、その前に一つ条件があるな

 おい、其処のよわっちぃやつ、御前に一つだけ質問をしてやろう

 その質問に俺様が納得できる答えを出したらこの俺様の力を貸してやろう」

その言葉を聞き、一瞬ランスは激昂しかけたのだが

『魔人』戦を考えるとあの『異常』とも言える力は魅力的なので、深呼吸をして、その質問を待った


「このスーパーな俺様には御前のようなよわっちい奴のことなんぞ理解できんしするきもない

 だが、一つだけ聞いてやろう、お前は・・・・

 一体何の為に、『戦って』いる!!


途中まではおちゃらけた様な声だったが、最後の質問だけは、凄まじい威圧感を持って尋ねる

ランスは、その威圧感に飲まれそうになるが、必死に耐え、口を開いた

「もう二度と、俺の大切な人を失わない為だ!!」

ランスは、真剣な眼差しで、玉座に座る人物を見据えながら、そう断言した

クッ、クククククククガハハハハハハ!!

玉座に座っている人物は、そのランスの問いを聞くと、急に笑い出した

しばらく、ランスも、パステルも一言も発さず、その人物の笑い声だけが響いていた


「ふぅ、笑った笑った、うむ、中々に笑わせてくれたからな、特別に力を貸してやろう」

ランスは、その言葉にまた激昂しかけたが、必死に自分を抑えていた

そしてパステルは、そんな二人を見比べながら、クスクスと笑っていた

「ただし条件が一つ、よわっちぃ御前が使える限界以上の力を引き出したりしたらそのまま俺様は御前の体を奪い取る!!」

「わかった、だが、いつか必ず御前の力全てを制御してやる!!


ランスは、その言葉に深く頷いた後、真剣な顔でそう宣言した

その言葉に、再び玉座に座っている人物が笑いながら口を開いた

「ガハハハハ!!出来るものならやってみろ、このスーパーな俺様の力を全て扱いきれるならな、ガハハハハハハ!!」

その人物は笑いながら軽く腕を振るうと、段々とランスとパステルの姿が掻き消え始めた

「その度胸に免じて俺様が外まで送ってやろう、ガハハハハ!!」

その人物の高笑いを最後に、ランスとパステルは、『現実世界』へと復帰していった・・・・


カラー族女王の家 客間


「ツッッ」

「少々、乱暴ですね」

パステルは、ゆっくりと、そう言いながら体を起こし始めた

ジルは、ランスが覚醒し始める少し前に腕枕をやめ、ランスを膝枕していたりする

「お目覚めですかマスター?」

「ん、あぁ、悪いな、ジル」

ジルの声に、ランスは一気に目を覚まし、ゆっくりと起き上がり始める

ジルはそんなランスを見ながら幸せそうに微笑んだ後、ゆっくりと自分も立ち上がる


ランスが起き上がり、軽く体を慣らしている間に、パステルはゆっくりと口を開いていた

「あの、もう一つだけ、条件を追加してもいいでしょうか?」

そんなパステルの声に反応して、ランスは首を軽く縦に振りながら微笑んだ


もしもこのとき、ランスが『パステルの頬が僅かに赤く染まっている』事に気付いていたら、恐らく頷かなかったかもしれないが


「で、では、そ、その・・・・私の子供の父親に、なってください

顔全体を真っ赤に染めながらのそのパステルの発言に、ランスだけでなくジルも完全に静止した

そんな状態で発生した沈黙を、パステルは『理由』を求められているのだと思い、ボソボソとしゃべり始めた

「私も、できればその、人間との融和は行いたいですし、それに、その、ランスさんの心の中はとても綺麗でしたし

 後、その、ランスさんの子供が欲しいって、心から思ったので

後半は、顔を真っ赤にしながら、そして俯かせながらだったので聞き取りづらい物だったが

もともとが酷く静かな状態だったので、全員の耳に響いた

「そ、それは流石にッ!?」 「ちょっと此方でお話を」

最初に再起動を果たしたランスがパステルを説得しようとしたが

それとほぼ同時に再起動したジルがパステルを連れて部屋の隅に一瞬で移動して、いきなり怪しい談合を始めたのだ

ちなみに、おまけといわんばかりにランスはパラライズマジックをかけられて地面に突っ伏していたりする

「(こういう時に限って・・・か)」

ランスは、視界の隅に移るジルとパステルの怪しい談合を見ながら、ひそかに涙していた


それからしばらくして、何かを決意したような目のパステルと、にこやかな笑みを浮かべたジルがランスの元へ駆け寄った


「取りあえずマスター、話し合いの結果同盟を結ぶことになりました、先ほどの条件を飲む形で」

「その・・・不束者ですが、よろしくお願いします」

「お、俺の意思は?」

まだ体が痺れている為に大きな声を出せないランスが、必死な顔でそういう

「こういう諺がありますよねマスター?『大を取って小を捨てる』と」

「それは諺じゃないぃぃぃぃぃぃ!!」

ランスが悲壮な表情で叫ぶが、何時ぞやの様な猫の笑みを浮かべたジルは、ランスを無視して寝室へと引っ張っていった

そしてその後に、パステルが今日は誰も自分の部屋に近づかないように命令した後に、続いていった


因みに、パステルとジルの談合について簡単に説明しておこう

二人の間でとある条約を結ぶ為の談合だったわけだが、その条約は三つ

一つ:子供が出来ても正妻決定はしない事

これはもともとカラーという種族柄特に拘りも無いのでパステルは快く受け入れた

二つ:ヤル時は自分(ジル)も混ぜること

これに関しては、紆余曲折はあったのだが、結局ジルの弁舌によってパステルが丸め込まれて終わった

三つ:『いざ』という時の同盟関係を結ぶ事

この『いざ』という時は、まぁ言ってしまえば『ランス争奪戦』が発生したときと言う事である

とりあえず、ランスの意思は完全無視した上で、この条約を結んだのだった


次の日の昼ごろ、ランスは同盟締結を報告する為にカラーの村からスードリ17へと戻っていっていた

その途中途中で、ランスは何度か頭を抱えたり、誰かに謝ったりしていたが

ジルは終始嬉しそうな笑みを浮かべ続けていた・・・・・


しかし、ランスも、ジルもまだ知らなかった、既に戦争は始まっていたということを・・・


ついに破裂したヘルマンという名の爆弾、しかし、歴史の主役はまだそのことには気付いていない

破裂し、周囲を巻き込み、吹き飛ばした果てに待つ物は何なのか、知るものはいまだおらず

ただ、人々は目の前の大火を消す為に、動き始めていた・・・・・


あとがき


勢いのある内に出来るだけ更新しようと思って今日投稿しました

この後は・・・恐らくインターミッション(ランスがカラーの村にいる間のヘルマン陣営の光景等)をはさんだ後、ヘルマン内乱になると思います

勢いが途切れない内に、できる限り頑張って更新していこうと思います

後、前回話のレス返しは申し訳ありませんが省略させていただきます

今回から、レス返しを再開させていただこうと思っています

後、人気投票の件ですが、ヘルマン内乱が終わった辺りで行う予定になっています

またいつスランプに陥るかは判りませんが、可能な限り、皆さんの期待に答えられるように頑張らせていただきます

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