インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「これが私の生きる道!地球編2(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-02-05 17:18/2006-06-25 07:47)
BACK< >NEXT

(マリュー・ラミアス視点)

私の名前はマリュー・ラミアス。
大西洋連邦軍大尉である。
私は軍人なのだが、士官学校卒業以来ずっと研究
所に篭っていた関係で軍人としての自覚が少なか
った。
始めは自分の父親のような歳の下士官が敬礼して
くる事にとまどい、所用で軍の基地に行った時に
筋肉隆々の大男が自分に敬語を使って話しかけて
くる事にも戸惑っていたほどだ。

しかし、そういう事は時間が解決してくれる。
次第にそのような環境にも慣れ、プライベートで
はMAのパイロットと婚約をした。
人生で一番幸せな時間は永遠に続くものと思われ
たが、開戦が全てを変えてしまった。

モビルスーツ、それはプラントが創設したザフト
軍の主力兵器である。
この人形の戦闘兵器を初めて見た時に、私は思わ
ず笑ってしまった。
小学生の従兄弟が毎週楽しみにしているアニメの
悪役が乗っているロボットにそっくりだったから
だ。
技術部の同僚も同意見で、見掛け倒しの張子の虎
だというのが共通した意見であった。
こんな兵器で戦わされるザフト軍のパイロットが
気の毒だと・・・。

なので、プラントと地球連合が開戦した時にはす
ぐに戦争は終わるだろうと思っていた。
戦力的に不利なプラントが負けて戦争が終わると
・・・。
しかし、いざ開戦してみるとザフト軍は連合軍の
艦隊を殲滅して圧倒的勝利を治め、宇宙での優勢
を手にしていた。
私の婚約者は「すぐに戻るから」と言って出撃し
たまま二度と帰らなかった。
残った物は形見になったペンダントだけであり、
私の人生は戦争で狂わされてしまったのだ。

その後、戦争は地球にも広がり毎日沢山の人が死
んでいく。
役立たずだと思われたモビルスーツは沢山の艦船
とMAと航空機と戦車を破壊して、私のような人
間を増やしていった。
私の士官学校時代の校長で、今の上司に当たるハ
ルバートン提督はモビルスーツの量産を計画して
いたが、保守派の抵抗にあい上手くいっていない
ようであった。

開戦から二ヶ月後、私はハルバートン提督に突然
呼び出された。

 「ラミアス大尉、遂にモビルスーツ開発計画へ
  のゴーサインが出た。予算の関係でモルゲン
  レーテ社との共同開発になるがやってくれる
  な?」

私は自分の様な女を増やさない為に、身分を偽り
ヘリオポリスへと出発した。

肝心のモビルスーツの開発は意外とスムーズに進
んだ。
鹵獲したジンのデータが豊富だったので、技術的
にはそう困難ではなかったのだ。
新しい技術も取り入れ、機体は完成に近づいてい
った。
しかし、やっかいな問題が一つだけあった。
モビルスーツを動かすOSが完成しないのだ。
ジンのデータを解析して新しいOSを作ってみた
が、コーディネーターのテストパイロットにしか
使えなかったのだ。
このモビルスーツはナチュラルに使えなければ意
味がない。

開発主任のカトウ教授は試行錯誤を繰り返してい
たが、苦戦しているようであった。
誰もがあきらめかけた時、カトウ教授はまったく
新しいOSを開発する。
それは、実戦で使えるような代物では無かったが
、私が動かしてもそこそこ使える汎用性の高いも
ので、改良の余地のある物であった。

この報告を受けたハルバートン提督はテストパイ
ロットと新造搭載艦の乗組員を送る事を連絡して
きた。
遂に、連合でもモビルスーツの運用試験が始まる
のだ。
私は期待に胸を膨らませた。


あの運命の日の前日、私は不思議な男性に会った

彼はモルゲンレーテ社員の家族を名乗り、私をナ
ンパしてきたのだ。
婚約者の死後、この手の話題を避けてきた私にと
って、彼は軽薄で無遠慮なイヤな男のはずだった
のだが、不思議と腹が立たなかった。
少し、婚約者に似ていたからかも知れない・・・

しかし、運命は残酷であった。
翌日、突如我々はザフト軍の奇襲を受け、モビル
スーツを全機奪われてしまった。
例の男性はザフト軍の軍人で、ストライクを守っ
ていた私を捕虜にしたのだ。
その後、人員不足で脱出を図った「アークエンジ
ェル」も降伏して、私の任務は終了した。

ザフト軍の捕虜にされて独房に入れられた私はそ
こでナタルと再会した。
彼女は「アークエンジェル」の臨時責任者として
艦を脱出させようとしていたが、健闘空しく捕虜
にされてしまったらしい。
尋問の時間以外は暇だった私はナタルと色々な話
をしながら過ごし、始めは真面目でとっつき難か
った彼女と仲良くなる事が出来た。


プラント本国に着いた我々は、捕虜として収容さ
れた。
プラントでの捕虜の扱いは戦争で放棄された農業
コロニーを修理してそこに収容し、生産施設を稼
動させて食料を生産させるという物だった。
プラントは食料自給率が低いので自分の食い扶持
は自分で稼いでもらうのが基本方針らしい。
余った食料は買い取って貰えるので、それを給料
として貰い家族に送金も出来るようだ。
家族を持っていたり、途上国出身の捕虜には好評
であった。
軍よりも待遇が良くて命の危険も無い。
戦争が終わったら、コロニーに移住を希望するも
のも多数出てきた。

 「巧妙な宣伝ですね」

ナタルはそう言っていたが、彼らは連合軍の正義
などよりも家族との幸せで豊かな生活の方が大切
なのだ。
私達に文句は言えなかった。
コロニーでの私は「アークエンジェル」組のマー
ドック軍曹と農業機械や各種機器のメンテナンス
を行い、ナタルは経理や物資の管理を行い、残り
の人達は農作業に汗を流した。
月末に給料を貰ったが、意外と良かったので少し
嬉しくなった。
人間の堕落はこういう所から始まるのかも知れな
い・・・。

捕虜になって二ヶ月が過ぎた頃、いきなり呼び出
された我々は捕虜交換で月に帰れる事を伝えられ
た。
今さら軍務に復帰して何が出来るのだろう?
あまり考えても仕方がない事なので、運命に身を
任せるしか無かった。

月に戻った我々は環境の変化に戸惑った。
私にモビルスーツ開発計画を任命したハルバート
ン提督は左遷されて南米へ行き、後を継いだコー
プマン准将も第八艦隊壊滅の責任を取って、同じ
く南米に飛ばされていたのだ。

いきなり宙ぶらりんになってしまった我々はいっ
たいどうなってしまうのか?
ナタル達は前線勤務に就く可能性が高いが、私は
技術仕官なので、研究所か工廠勤務かも知れない

漠然とそんな事を考えていた時に突如、基地司令
に呼び出された。


呼ばれた会議室に入室すると、見知った顔が多数
いる。
「アークエンジェル」に乗り込んでいた人がほと
んど集まっていたのだ。
ナタルやノイマン准尉、パル伍長、チャンドラ伍
長、マードック軍曹など見知った顔が多い。

 「ラミアス大尉ご苦労。今、お客さんが来て任
  務を説明するので待っていて欲しい」

暫らく待っていると短髪の男が入って来る。
髪の色は銀髪で、顔は育ちの良さそうな顔をして
いるが、口びるが紫色なのはいただけない。
どうやら、口紅をしているらしく生理的嫌悪感を
感じているようだ。

 「私は地球連合軍需委員会特別委員のロード・
  ジブリールです。今日、諸君らにお集まりい
  ただいたのは、特別な任務についてもらうた
  めです」

 「ジブリール委員、特別な任務とは?」

 「君はラミアス少佐だったかな?」 

 「私は大尉ですが」

 「君達はみんな昇進だ」

 「昇進はありがたいのですが、任務を教えて下
  さい」

 「今、(ドミニオン)級の新造戦艦が最終艤装
  中だ。君達は一番艦(ドミニオン)に乗り込
  んで我々の指示で特殊任務についてもらう」

 「(ドミニオン)ですか?確か、(アークエン
  ジェル)級の二番艦が(ドミニオン)だった
  ような・・・」

バジルール中尉が疑問を口にする。

 「いかんな、宇宙の化物どもに奪われた穢れた
  戦艦の名前を口にしては。連合から、(アー
  クエンジェル)の名前は永遠に削除されたの
  だよ」

 「申し訳ありません」

ジブリール委員の強い口調でバジルール中尉は謝
罪をする。

 「バジルール中尉、謝罪するほどの事では無い
  。(アークエンジェル)はあと少しでこの世
  から消滅するのだから」

 「消滅でありますか?」

 「(ドミニオン)に乗る、君達精鋭諸君が倒す
  のだ!」

 「我々がですか?」

 「(ドミニオン)には新型戦闘機(スカイグラ
  スパー)と新型モビルスーツが搭載され、パ
  イロットも(エンデュミオンの鷹)と(月下
  の狂犬)が指揮を執る事になっている。油断
  しなければ、負ける事などありえない。ラミ
  アス少佐、君は副長として新艦長を補佐して
  欲しい。新艦長はもう少しで来るが、私は忙
  しい身なので失礼させて頂くよ」

ジブリール委員は言いたい事だけ言って台風の様
に去っていった。 

 「ラミアス少佐、私達は(アークエンジェル)
  の時と同じ事をすれば良いのですか?」

 「まあ、それほど変わらないと思うわ。新造戦
  艦なんて、試行錯誤の連続よ」

 「それにしても、新しい艦長は遅いですね。ど
  んな人なのでしょうか?」

 「私も知らないのよね」

 「優秀な方だと良いのですが・・・」

 「あんまり期待しないほうがいいわよ」

 「そうでないと、命にかかわります」

そんな話をしていると、四十歳くらいの小男が入
ってきた。

 「(ドミニオン)艦長兼、特殊任務艦隊司令プ
  リンス大佐だ。皆の活躍に期待する」

コープマン准将がこの事実を知ったら驚くであろ
う。
彼はあの戦闘の後捕虜になっていたが、今回の捕
虜交換で帰還していたのだ。
更に、アズラエル理事の忠実な駒である彼は昇進
をして今回の特殊任務に就く事になった。

 「今回の任務に成功すれば、アズラエル理事の
  知己を得られますよ。頑張ってください」

ラミアスは多少の不安を感じずにはいられなかっ
た。

スタッフ紹介後、工廠で最終艤装中の(ドミニオ
ン)に着任して艦のチェックを始める。
大分突貫工事で完成させたらしいので、念入りに
チェックをした方が安心だ。
マードック曹長と搬入された戦力の確認をする。

 「(スカイグラスパー)十二機、(ストライク
  ダガー)四機、(ストライクスペシャル)二
  機で全部です」

 「(ストライクスペシャル)?」

 「ガンバレルと同じ原理で操作できるミサイル
  を装備した機体です。ミサイル発射後はポッ
  ドを切り離して普通に戦闘が可能です」

 「でも、ガンバレルが使えるのは?」

 「フラガ少佐とモーガン大尉くらいですね。こ
  の部隊では」

ラミアス少佐は頭が痛くなってきた。
ジブリール委員とプリンス大佐は勝利を確信して
いたが、戦力が心もとない。
戦力の要の二人が動きを封じられたら、「アーク
エンジェル」の二の舞になってしまう。
さて、どうしたものか。

 「副長、作業ははかどっているかね」

様子を見に来たプリンス大佐が、私達に話しかけ
てきた。

 「予定通りです」

 「それは、結構。早く(アークエンジェル)を
  始末したいですからね」

 「あの、この戦力では少々足りない気がするの
  ですが・・・」

 「ええ。我々だけでは無理ですから、応援を頼
  みますよ」

 「そうなんですか?」

 「我々はインドのマドラスに向かいます。そこ
  で、機動艦隊に指示を出して攻撃させます」

 「指示を出すのですか?」

 「我々はアズラエル理事の指示で動いているの
  です。命令を聞くのは向こうなんですよ」

 「(虎の威を借る狐め!)」

プリンス大佐の物言いに、マリューは不安を隠せ
ずにはいられなかった。


一週間後、月基地を出発して通商破壊部隊の目を
逃れ地球に降下した後、ザフト軍の哨戒網をくぐ
ってインドに降下した「ドミニオン」はマドラス
に到着して訓練を開始した。
少しでも練度を上げて勝率をあげなければならな
いからだ。
「スカイグラスパー」隊はそこそこの錬度だが、
「ストライクダガー」の動きはいまいちだった。
OSの不備が一番の問題なのだが、それはこちら
ではどうにもならない。
どうやら、頼りになるのはフラガ少佐とモーガン
大尉のみらしい。

 「こんなんで勝てるのかしら?」

数日後、プリンス大佐が作戦会議を招集した。
これには、インド洋艦隊から第三任務艦隊の幕僚
が参加する事になっている。
この艦隊は軽空母四隻、巡洋艦六隻、駆逐艦その
他十八隻を有し、モビルスーツは運用していない
が攻撃力の高い艦隊だ。

 「作戦を伝えます。(アークエンジェル)の進
  行ルート上の無人島にモビルスーツ隊を配置
  して足を止めます。その後、第三任務艦隊の
  艦載機で攻撃を掛けて、止めは(ドミニオン
  )の砲撃で刺します」

プリンス大佐は要点のみを伝える。

 「質問なのだが、そのルートを敵艦が通るとい
  う情報の根拠は?正確では無い情報に踊らさ
  れてザフト軍の勢力圏を横切るのは心臓に良
  くないぞ」

第三任務艦隊司令長官ホーク少将が懸念を口にす
る。

 「私は懇意にしているアズラエル理事の意向と
  情報で動いているのです。ザフト軍にやられ
  っぱなしの連合軍の情報部とは違うのですよ
  」

第三任務艦隊の幕僚に怒りの表情が浮かぶが、ホ
ーク少将は歴戦の指揮官なので、表情を表に出さ
ない。

プリンス大佐は最近、連合軍で幅を利かせ始めて
いるアズラエル派の将校である。
学生時代の友人である事も大きいが、軍人として
は無能に近い彼らはブルーコスモス強行派の意向
を軍部に伝え従わせる、旧ソ連の政治将校の様な
役割を担っている。
民主主義国家である大西洋連邦でこのような連中
が力を持ちつつある事を嘆いている軍人や政治家
は多いのだが、開戦時からの連敗は彼ら良識派の
軍人を多数戦死させたり失脚させてしまった。
その事は更にアズラエル派の勢力が増す要因にな
ってしまっている。

 「とにかく、私はアズラエル理事の意向で動い
  ているのです。あなた達は我々の言うとおり
  に動けばいいのですよ」

プリンス大佐は不機嫌な表情をしながら退室して
しまった。

 「ホーク少将、申し訳ありません」

ラミアス少佐は上官の無礼をホーク少将に謝罪し
た。

 「私は今回だけ我慢すればいいのだが、君達は
  大変だな。心から同情するよ」

 「そう言っていただければ・・・」

ラミアス少佐には他に答えようがなかった。

数時間後、「ドミニオン」は第三任務艦隊と共に
マドラスを出航した。
作戦は成功するのか?
それは、まだ誰にもわからなかった。


(ほぼ同時刻、アークエンジェル視点)

アフリカから出発した俺達は順調な航海を続けて
いた。
連合軍とザフト軍はインド洋の制海権を巡ってに
らみ合いを続けている。
マドラスを本拠地にしているインド洋艦隊は増強
を進める為に守勢に入っているので、攻撃の可能
性は低いというのがバルトフェルト隊長の状況判
断だ。
実際に、彼の言う通りに敵は現れない。
たまに偵察機が探知されるのが気になるが、情報
を集めているだけだろうし、たかだか一艦を狙っ
て攻撃なんて掛けて来ないだろう。


その予想は後に裏切られる事になる。

 

 「暇ですね。タリアさん」

 「本当ね、カザマ君」

今日も順調に航海を続けている「アークエンジェ
ル」艦内は非常に退屈だった。
戦闘が多く常に緊張の連続であったアフリカとは
違い、ここには敵がいないからだ。

 「書類仕事を片付けてきたらどう?」

 「暇なんでやってしまいました。アーサーさん
  は?」

 「私もすでに終わらせてしまってね」

艦橋内部に多忙な人は1人もいないようだ。

 「まあ、暇な事はいいことですよ。俺はお茶で
  も飲みにいくかな?」

 「いってらっしゃい」

 「どうぞ」

俺は艦橋を降りて食堂に向かう事にした。

 「おい、カザマどこに行くんだ?」

俺は艦内の廊下でカガリに呼び止められる。

 「食堂にお茶を飲みにいくんだよ」

 「私も付き合っていいか?」

 「レディーの頼みは断れませんな」

 「よく言うよ」

食堂に着くと、日本茶をディアッカに貰った急須
で淹れる。
お茶請けには私物の羊羹を切って出した。

 「はい、どうぞ」

 「ありがとうな」

お茶をすすり羊羹を食べる。

 「カガリちゃん、艦内の生活はどう?」

 「快適なんだけど、少し退屈だな」

カガリの艦内での生活は自室か食堂にいるか、ト
レーニングルームで汗を流すのが普通だった。
たまに、艦橋への入室を許可していたが、アーサ
ー副隊長があまりいい顔をしないので、その回数
は少なかったが。
彼は、軍事機密の漏洩を恐れているのだろう。
私も始めはそれを考えないわけではなかったが、
おぼろげに彼女の正体がわかりかけてきてからは
気にならなくなっていた。
俺は、彼女をオーブの政治家か財界人の娘だろう
と思っている。
もしそうなら、元々オーブ製のアークエンジェル
は重要機密にはなりえないし、重要情報もコンピ
ューターに入っているので簡単には見る事は出来
ない。
護衛のキサカさんはプロの軍人の匂いがする人だ
が、彼がスパイ行為をして見つかればカガリも巻
き込んでしまうのでそんな事はしないだろう。

 「話は変わるけど、お前は本当に日本人だよな
  。普通、外国でお茶や羊羹まで準備している
  奴はそういないぞ」

 「昔は日本なんて大嫌いだったんだよ。でも、
  外国に出ると自分が日本人である事に気が付
  くんだよね」

 「ふうん。それで、家族は今はオーブに住んで
  いるんだろ?」

 「ああ、親父が転勤の際に移住してね。俺は一
  人でプラントに行ったんだけど」

 「なあ、お前オーブに来ないか?お前ほど優秀
  ならいくらでも生活出来るだろう」

 「オーブねぇ。俺はプラントが気に入ってるか
  らね。友人も大切な人も沢山いるし」

 「オーブにも家族がいるだろう」

 「そりゃあ、家族は大事だけど。もう、今更っ
  て感じだし。俺はやっぱりコーディネーター
  なのさ」

そこまで、話したところで一仕事終えたアスラン
が食堂にやって来た。
彼や同じ女性のシホ、ラスティー、ニコルはよく
カガリと行動を共にする事が多かった。
ちにみに、ディアッカは日頃のナンパ癖がカガリ
を敬遠させ、イザークは先日のオカッパマザコン
事件が尾を引いて、彼自身が彼女を避けていた。

 「ヨシさん、カガリとお茶を飲んでいたんです
  か?」

 「ああ、お前も飲むか?それとも、2人のデー
  トに俺は邪魔か?」

 「いえ、俺とカガリは別に付き合っていません
  し・・・」

 「私もアスランと付き合っていないし・・・」

 「そうか、アスランには婚約者のラクスがいた
  んだっけな。スマン。スマン」

 「えっ、婚約者・・・」

どうやら、ラクスの事はカガリには初耳の様だ。

 「私、もう部屋に戻るから・・・」

ショックだったのか?カガリは席を立ち、食堂を
出て行ってしまった。

 「ヨシさん!ひどいですよ!」

 「何が酷いんだ?」

 「カガリにラクスの事を話すなんて!」

 「事実だろう。お前はなぜカガリちゃんに話さ
  ないんだ?ラクスが可哀想じゃないか」

 「ええと、それは・・・」

 「なあ、以前から聞きたかったんだが。お前、
  ラクスの事どう思っているの?」

 「彼女の事は好きですけど。それは恋愛感情と
  は違うような気がするんです・・・」

 「ライクであってラブでは無いと?」

 「ええ」

 「それで、カガリちゃんの事はどう思っている
  の?」

 「俺、女の子と本気で怒鳴りあって口喧嘩した
  のは初めてだったんですよ。男と間違えたの
  が原因ですけど・・・」

 「ラクスが怒鳴る所は想像出来ないものな」

 「ええ。それにカガリは話してみると思ったよ
  りも女性らしくて、可愛いところもあって・
  ・・」

 「そうか、じゃあ自分で決めな」

 「自分で決めるんですか?」

 「俺は十五歳からプラントで一人で全てを決め
  て生きてきた。その俺から言わせればいくら
  家柄が特別でも親に婚約者を決められるなん
  て異常だ。少なくとも俺はいやだ」 

 「そうですよね。わかりました。俺、頑張って
  みます」

やった!アスランの気持ちはすでにカガリに向い
ている。
彼がこのまま頑張ってくれれば俺の思惑通りに・
・・。

 「カザマ隊長!前方にアンノウンを発見。至急
  ブリッジへ!」

俺達の平穏な時は終わりつつあった・・・。

 


 
 「タリアさん、敵の様子は?」
ブリッジに上がった俺はタリアさんに状況を尋ね
るが、俺の勘ではアンノウンは敵だ!間違いない

 「探索レンジの外側ギリギリですが、モビルス
  ーツサイズの大きさの物が六機と大型の戦艦
  クラスの反応が一隻です」

索敵担当のバート・ハイムから報告が入る。

 「敵の目的は我々ですかね?」

 「でしょうね。待ち伏せされているわね」

 「他の敵の反応は?」

 「ありません」

 「逃げちゃいましょうか?」

 「無理ね。我々がオーブに向かう以上、必ず追
  いついてくるわ」

 「そうですね。全艦、第一種戦闘配置。モビル
  スーツ隊全機発進準備!」

俺は指揮官として戦闘準備を命令する。

 「色々考えても仕方ありません。敵艦の護衛を
  全機落としてしまえば敵艦は丸裸です。念の
  ためラスティーとシホは置いていきますので
  後はお願いします。今日は俺も出撃します」

後の指揮をアーサー副隊長にまかせて出撃した。

 

今日のモビルスーツの搭乗割りは以前と同じく、 
アスランが「ストライク」、ニコルが「イージス
」、ディアッカが「バスター」、ラスティーが「
デュエル」でイザークとシホは(「グーディープ
アームズ」から「デュエル」に乗り換えている。
俺は久しぶりに「ディン」に搭乗してディン隊を
指揮下に置いた。

 「アスラン、お前がG部隊の指揮を執れ。わか
  ったな」

 「了解です」

 「さて、久しぶりの実戦で勘が鈍っていなけれ
  ばいいがな」

 「隊長がそんなに柔なんですか?」

 「ジョン、俺の心はピュアなんだよ」

 「初耳ですね」

俺達は下らない会話で緊張をほぐしながら、会敵
予想地点に向かう。
グゥルに乗るGにスピードを合わせて「ディン」
は順調な飛行を続けた。
暫らくすると、無人島が幾つか見えてくる。

 「敵モビルスーツ隊見えてきました。(ストラ
  イクダガー)が四機です」

 「二機少ないな?反応は?」

 「あります。森に隠れているようです」

ニコルが報告をしてきた瞬間、森から多数のミサ
イルが飛んでくる。

 「回避しろ!」

全機余裕でかわしたと思われたが・・・。

 「何!どうして追尾してくるんだ?」

ミサイルはかわした瞬間に軌道を変えて、俺達に
再び襲い掛かってきた。

 「何か変だぞ!ミサイルは撃ち落せ!」

俺達は懸命にミサイルを撃ち落としたが、撃ち損
じたミサイルがチャンのディンに二発命中した。

 「「「チャン!」」」

装甲の薄い「ディン」に二発のミサイルの命中は
致命的だ。
パイロットの脱出を確認出来ないまま、「ディン
」は爆散した。
更に、ニコルとイザークがグゥルを破壊されて、
島に着地する羽目になった。

 「森から奴らをあぶりだせ!」

俺達が射撃を集中させると、二機のモビルスーツ
が飛び出してきた。

 「あれは、(ストライク)・・・」

ミサイルポットを両肩と両足につけた二機の「ス
トライク」が森の中から現れた。
「ストライク」は更に大量のミサイルを発射する

 「隊長、十一時方向から戦闘機らしいき反応!
  」

 「前方に敵戦艦を目視!(アークエンジェル)
  と同型艦です!」

 「(アークエンジェル)からエマージェンシー
  です。空母艦載機約六十機が接近中!機動艦
  隊らしき反応も探知したそうです!」

 「ちっ!」

どうやら、俺達は罠にはまったようであった・・
・。

 

 
 「先にミサイルを撃ち落せ!」

まずは、自分に向かってくるミサイルの撃墜が最
優先だ。
戦闘機隊が同時に攻撃をかけてくるのが大変だっ
たが、かわしながらミサイルを撃ち落す。
ミサイルは俺達には向かってくるが、敵戦闘機に
は反応しない。
やはり、何か特別な仕組みで動いているようだ。
第一射は不意打ちで被害を出したが、第二射は被
害を出さずに全部撃ち落す。

 「イザーク!ニコル!(ストライク)の相手を
  してやれ。アスラン!ディアッカ!(ストラ
  イクダガー)の部隊を全滅させてから、(ア
  ークエンジェル)の護衛に向かうんだ!ディ
  ン隊は戦闘機隊を相手にする」

かなり、泥縄的な対応だが仕方がない。
「アークエンジェル」がもっと前進してくれば、
対応がもう少し楽になるのだが・・・。


俺達は敵の新型戦闘機の相手をする。
この戦闘機はスピードが速く火力が強力だが、
照準が多少甘いので、上手くかわして後ろに回り
込んで、突撃銃で始末する。
ジョンとネタニヤフも同じ方法で攻撃をかけてい
る。
敵新型戦闘機はたちまち数は半分に減ってしまう

ふと周りを見ると、アスランは「ストライクダガ
ー」隊をすでに全滅させていて「アークエンジェ
ル」に戻ろうとしていた。
ニコルとイザークは「ストライク」を相手に優勢
に戦いを続けているが、相手は時間稼ぎに徹して
いて決定打が出せないでいた。

 「ちくしょう!戦闘機隊を早く全滅させて援護
  に入るぞ!」

数分後、「アークエンジェル」から敵機動部隊の
第二次攻撃隊が向かっていると連絡が入る。
俺の対応は後手後手にまわりつつあった。

 
やっと、戦闘機隊を壊滅させた俺達はニコル達の
援護に向かう。

 「ニコル!イザーク!大丈夫か?」

 「今のところは優勢です」

 「(アークエンジェル)が第二派の艦載機群の
  攻撃を受けているから、援護に行ってくれ。
  今、アークエンジェルは島伝いに進んでいる
  からグゥル無しでも帰れるはずだ。俺達はこ
  いつらを抑える」

 「えっ、でも・・・」

 「バカ野郎!船が沈んだら俺達の帰る所が無く
  なるぞ!早く行け!」

 「「了解!」」

ニコル達は島伝いに撤退する。

 「ジョン!ネタニヤフ!開戦以来の生き残りの
  実力を見せてやれ!」

 「了解!」

 「おまかせあれ」

俺は左の「ストライク」に2人は右の「ストライ
ク」に攻撃を仕掛けるが、この二機はかなりの凄
腕のようだ。
OSの不備による機体の動きのぎこちなさもほと
んどない。

 「強敵だな、いったい誰が乗ってるんだ!」

 「その声は(黒い死神)か!」

無線から聞き覚えのある声が流れてくる。

 「(エンデュミオンの鷹)か!大人しく捕虜を
  やっていればいいものを」

 「上の命令でね。仕方ないのさ。悪いけど死ん
  でもらうぞ!」

お互いに銃弾を撃ち尽くし、ビームサーベルで切
り結びながら隣を見るとジョン達は苦戦している
ようだ。
あちらのパイロットは二人を相手にして互角に戦
っている。

 「向こうのパイロットはあんたよりも性質が悪
  いみたいだな」

 「あれは(月下の狂犬)だよ」

 「聞かなきゃ良かった」

戦いは長引き、勝負がつかない。
エネルギーが切れてきたのでそろそろ引き揚げね
ばならないが、相手が逃がしてくれる保障はほと
んど無かった。
俺の心の中に焦りが広がりつつあった・・・。

 


(同時刻、「ドミニオン」艦内)

ドミニオンのブリッジで戦闘報告を聞いたプリン
ス大佐の表情が徐々に歪んでいく。
 
 「(エンデュミオンの鷹)も(月下の狂犬)も
  大した事はありませんね」

 「ザフトのモビルスーツと互角に戦っています
  が・・・」

 「互角ではダメなんですよ。圧倒してくれない
  と」

プリンス大佐の無茶な発言にラミアス少佐は気は
重くなった。

 「新型のOSを積んでいるのです。このくらい
  は当たり前ですよ」

 「新型ですか?(ストライクダガー)では目立
  った成果がありませんでしたね」

 「どうやらトップエースクラスのパイロットが
  使わないと成果が出ないみたいですね。残念
  な事ですが」 

 「そんな性能がよくわからないOSを実戦で使
  ったのですか?」

 「彼らの尊い犠牲は明日への勝利に繋がります
  よ。それにしても、彼らは駄目ですね。砲撃
  を加えてモビルスーツを倒しましょう」

 「フラガ少佐達が巻き込まれてしまいます」

 「フェイズシフト装甲があるから大丈夫ですよ
  」

 「そろそろエネルギーが尽きますが」

 「仕方ありませんね。向こうもエネルギー切れ
  でしょうから仕切り直しです」

 「わかりました」

私の気持ちが晴れる日はいつ来るのだろう?
ふと、ナタルを見ると彼女は安堵の表情を浮かべ
ている。
「自分が副長でなくて良かった」と顔に書いてあ
るように感じてしまった。

 

 
 
 「さてと、命令でね。俺達は引き揚げさせて貰
  うぞ」

フラガ少佐達は引き揚げに入る。
俺達もタイミングを計って同時に撤退しないと、
敵艦の砲撃を食らう可能性があるので、慎重に相
手を見つめる。 

 「さあ、引き揚げだ!」

俺達は引き上げに入るが、案の定、敵艦は砲撃を
加えてきた。

 「当たるなよ!」

俺とジョンは上手くかわすが、ネタニヤフのディ
ンが火を噴いて地面に落下する。
ディンは地面で綺麗な炎の花を咲かせた。

 「「ネタニヤフ!」」

 「(アークエンジェル)に撤退だ、ジョン!」

 「了解!」

相次ぐ仲間の死に帰還中の俺達は無言のままであ
った・・・。

 

「アークエンジェル」に戻った俺達は傷ついた艦
体を見て衝撃を受けた。
艦載機は徹甲爆弾を使用したらしく、ラミネート
装甲を突き抜けて煙が数箇所から上がっていた。
俺達は「ディン」を格納庫に入れて艦橋に上がる

 「タリアさん、状況は?」

 「イーゲルシュテルンの四割が使用不能です。
徹甲爆弾が六発命中、一発はヘルダート発射
  管に直撃。誘爆を避けるために隔壁を閉鎖し
  ました。幸い機関部は無事ですが、人員の被
  害は死者が六名で、負傷者は十六名出ていま
  す」

 「大損害ですね」

 「モビルスーツ隊が艦載機の七割近くを撃墜し
  ましたが、残存機と予備機を編成してもう一
  度攻撃を掛けてくる可能性があります。更に
  、後十分で前方の敵戦艦と砲戦距離に入りま
  す」

アーサー副隊長が状況を順番に報告する。

 「状況は最悪だな。よし!悩んでも仕方が無い
  。全機補給完了後出撃だ!ニコルとイザーク
  は(ストライク)の相手をするんだ。ラステ
  ィーとシホは(アークエンジェル)の護衛に
  入れ。残りの連中は敵機動艦隊を攻撃するぞ
  」

敵が別れているので、どうしても指示が中途半端
になってしまう。
俺には指揮官としての才能が無いのかもしれない

 
俺の指示でモビルスーツ隊は全機出撃して所定の
任務に就いた。

 「敵戦艦はギリギリ射程距離外で待機。モビル
  スーツが二機出てきます」

管制官のアビー・ウィンザーの声で報告が入った

 「ニコル!イザーク!敵はエースだ。気をつけ
  ろ!」

 「「了解」」

 「敵機動艦隊から攻撃隊発進中!」

 「どうして?まだ無理なはずだ!」

アスランは驚きの声を上げる。

 「しまった!機動艦隊には航空機運搬艦が編入
  されているんだ!」

 「俺達はこのまま行くぞ!第四派が予想される
  から、発進前に叩くぞ!」

 「「「了解」」」

俺達は更なる攻撃を防ぐ為に、敵機動艦隊に向か
ってモビルスーツを飛ばしていた。


(同時刻、「ドミニオン」艦内) 

 「航空機運搬艦ですか?」

ラミアス少佐の説明を聞いたプリンス大佐が初め
て聞いたような表情をする。
 
 「(士官のあなたが何で知らないんだ?)」

プリンス大佐の無知振りに、ラミアス少佐は頭が
痛くなってきた。

 「第三任務艦隊には二隻の航空機運搬艦が編入
  されています。これを使えば、第四派まで攻
  撃隊が編成出来ます」

バジルール中尉が細かい説明をする。

 「さすがはホーク少将ですね。歴戦の指揮官は
  一味違います」

ラミアス少佐が賞賛すると、プリンス大佐の機嫌
が急降下した。

 「それくらいは当たり前です。出来なければ首
  ですよ。さあ、艦載機の攻撃が終了したら止
  めを刺しますよ」

プリンス大佐の命令が艦橋に響いた。

 


(同時刻、機動艦隊攻撃隊視点)


俺達は機動艦隊攻撃に向かっている。
途中で第三次攻撃隊とすれ違ったがお互いに攻撃
は掛けなかった。
ここで時間を食うと、第四次攻撃隊の発進を防げ
ないからだ。
更に、機動艦隊を叩かないと第五次の攻撃隊まで
組まれてしまう可能性もあるからだ。
第三次の攻撃隊を「アークエンジェル」が防いで
くれる事を祈りつつ、俺達は目的地に飛んでいく

 「隊長、敵艦隊を目視しました」

唯一残ったディン部隊のパイロットであるジョン
からの報告が入る。

 「よし、役割を説明する。俺とジョンは先頭で
  艦隊の防衛網に穴を開ける。ディアッカはと
  にかく敵艦の艦橋に射撃を集中させて指揮系
  統を混乱させろ。アスランは敵空母に突撃し
  て対艦刀で斬りまくれ」

 「「「了解」」」

俺達は後方から空母を目指して突撃する。
護衛艦群がシャワーのような対空砲を上げ、高角
砲の破片が「ディン」の装甲を叩いて甲高い声を
あげる。
あたりどころが悪ければ撃墜されるだろう。
こればかりは運次第だ。

 「みんな、生きてるな!」

 「大丈夫ですよ」

 「俺も大丈夫です」

 「楽しいピクニックですね」

俺とジョンは護衛艦の砲塔や艦橋に突撃銃を放ち
、ビームサーベルで斬りつける。
ディアッカは高エネルギーライフルを撃ちまくり
、アスランはビームライフルを撃ちながら俺達の
後ろをついてくる。

 「ようし、後少しで空母に取り付けるぞ!」

攻撃は成功しそうだ。
しかし、ふと横を見るとジョンの「ディン」が火
を噴いていた。

 「ジョン、脱出しろ!」

 「隊長、それは無理みたいですが、空母までな
  ら辿り着けます。短い間でしたがお世話にな
  りました。俺の荷物は家族に送ってください
  ね」

 「バカ!脱出しろ!」

ジョンの「ディン」はそのまま空母の飛行甲板に
激突した。
「ディン」の爆発で、発進準備中の艦載機群が誘
爆を起こす。

 「よくやった・・・。勲章の申請をしておいて
  やる」 

俺が涙を流しながら攻撃を続けていると、不意に
機体に衝撃が走る。
運悪く俺の「ディン」の両足に砲弾が直撃して、
両足をもぎ取り後方で爆発したようだ。
もし、足元で爆発していたら、俺は爆死していた
だろう。
まだ悪運は尽きていないらしいが、機体の制御は
至難の技だ。

 「このまま突撃して、ジョンの後を追うか?」

そんな事を考えた時にアスランから無線が入る。

 「後は俺一人でやります。隊長はディアッカと
  合流してください」

後で考えると、どうしてアスランの命令を素直に
聞いたのかはわからなかったが、俺はなんとか「
ディン」を操って、敵艦隊の有効射程範囲から脱
出する事に成功した。
機体はもう持ちそうにないので、脱出して「バス
ター」のコックピットに乗り込む。
脱出後、落下していく「ディン」に敬礼をしてか
らアスランの様子を見ると、驚きの光景が広がっ
ていた。

アスランは恐ろしいスピードで「ストライク」を
操り、空母の上で対艦刀を振り回していた。
あらかた破壊すると次の船に移り、また破壊の限
りを尽くす。
その様子はまるで鬼神のようであった。

結局、彼は空母二隻を含む八隻の艦を撃沈してか
ら、ディアッカのグゥルに相乗りして撤退した。
いったい彼はどうしてしまったのだろうか?
俺にはわからない事ばかりであった。


(同時刻、「アークエンジェル」視点)

丁度その頃、ラスティーとシホは「アークエンジ
ェル」に攻撃をかける第三次攻撃隊の猛攻を懸命
に防いでいた。
ニコルとイザークの応援が欲しいところだが、彼
らは「ストライク」の相手が忙しくてこちらに手
が回らない。

 「畜生、落としても落としてもキリが無い!」

 「あっ、また命中した。しまった、今度は機関
  部に近い!」

撃ち漏らした敵機の爆撃が「アークエンジェル」
を襲う。

 「右舷前部上方から敵機編隊、コリントスにミ
  サイル装填。撃て!イーゲルシュテルンもっ
  とよく狙って!左舷上方の敵機が投弾した。
  緊急回避!」

タリア艦長は懸命に指示を出すが、被害は増える
一方だ。

 「防空のモビルスーツが足りない!エイブス班
  長、(バスター)がありましたね」

アーサー副隊長が艦内回線で格納庫に通信を入れ
る。 

 「ありますが、パイロットがいません」

 「私が出ます!」

 「アーサー、あなたモビルスーツを操縦出来る
  の?」

 「アカデミーでは規定時間は訓練しています」

確かに、艦船科専攻の学生もモビルスーツの搭乗
訓練が必修になっている。
しかし、それはあくまでもモビルスーツを理解す
る程度のものなので、実戦に出られるレベルには
達していなかった。

 「(ジン)とGは操縦系統が似ているから大丈
  夫ですよ。さあ、急がないと(アークエンジ
  ェル)が沈んでしまいますよ」

 「わかったわ、アーサー。でも、無理をしては
  駄目よ」

 「もう無理してますよ」

アーサー副隊長は格納庫に降りていった。

  
「アークエンジェル」の外ではラスティーとシホ
が奮戦を続けていたが、状況は芳しくなかった。
絶え間なく続く攻撃で爆風を多数受けて損傷が蓄
積している。
特に、フェイズシフト装甲が無い関節部分が深刻
でいつ故障するかわからなかった。
バッテリーも切れつつあり、もしそうなれば容易
に撃墜されてしまうだろう。

 「ちきしょう!本当はバッテリーを換えないと
  やばいのに」

 「そんな時間ないわよ」

 「ニコルとイザークは?」

 「とても助けには来れないわよ」

イザーク達は、「ストライク」との死闘で機体が
ボロボロだった。
致命的では無いが、ビームサーベルで斬りつけら
れた傷が多数あり、ニコルの「イージス」はシー
ルドごと左腕を斬り落とされていた。
イザークも同様で、バッテリーが切れつつある今
、援護の出来る状態ではない。
もし、後ろを向けば「ストライク」に後ろから攻
撃されてしまうからだ。

 「ちきしょう!(アークエンジェル)が危ない
  !何とかしないと」

 「無理ですよ。現状維持が精一杯です」

目の前の「ストライク」は強敵だ。
多分、技量では勝っているのだが向こうは実戦慣
れしていて、こちらが「アークエンジェル」を気
にかけると隙をついて攻撃してくる。
向こうの機体にもかなりの損傷を与えているが決
定打が出せないでいた。

そんな時だった、気が抜けたラスティー達の隙を
ついて、三機の攻撃機が直上から急降下爆撃体勢
をとった。

 「ラスティー、真上よ!」

 「無理だ、間に合わない!」

 
 「艦橋に直撃の可能性あり。直衛機の迎撃間に
  合いません」

索敵担当のバート・ハイムから悲鳴のような報告
が入る。

 「イーゲルシュテルン迎撃準備!(アークエン
  ジェル)、緊急回避!」

タリア艦長の激が飛ぶ。

 「対応可能なイーゲルシュテルンは使用不能で
  す」

 「回避、間に合いません!」

火器担当のチェン・ジェン・イーと操艦担当のマ
リク・ヤードバースの絶望的な報告が入る。

 「駄目かしら・・・。ギルバート」

タリア艦長がつぶやくと同時に艦橋の下から高エ
ネルギーライフルの射線が伸びて降下中の徹甲爆
弾に命中して爆発する。

 「やった!私はこれでも射撃の成績は良かった
  んですよ」

 「アーサー?」

タリア艦長が驚きの声をあげた。
確かにモビルスーツに搭乗する事を許可したが、
ここまでやるとは・・・。


アーサー副隊長の乗った「バスター」は左側の格
納庫から出撃して足と呼ばれる部分に乗り、そこ
から高エネルギーライフルを撃ちまくった。
それからの彼の射撃で命中は出なかったが、敵機
のけん制には十分に役立ち、爆弾が尽きた敵攻撃
隊は撤退を開始する。

 「ギリギリ守り通せましたね」

 「ええ、でもギリギリよ。損害報告を聞きたく
  ないわね。それに、目の前にはほとんど無傷
  の同型艦がいるのよ。  向こうが攻撃を仕
  掛けてきたらお終いよ」

「アークエンジェル」の危機はまだ去っていなか
った。


(同時刻、「ドミニオン」艦内)

 「情け無い連中ですね。撃沈できないとは。さ
  て、我々で止めを刺すとしますか」

プリンス准将が機動部隊の兵士達をバカにしなが
ら、「アークエンジェル」に止めを刺すように命
令する。
 
 「艦長、第三任務艦隊より報告です。我、敵モ
  ビルスーツ隊の攻撃を受けて壊滅。撤退を進 
  言する。以上です」

ロメロ・パル軍曹が通信文を読み上げる。 

 「あのジジイは我々の足まで引っ張るのか!」

 「艦長、我々は搭載戦力をほぼ喪失しました。
  (ストライク)もそろそろ引き揚げてきます
  が、損傷が激しくすぐには出撃できません。
  このままでは敵モビルスーツの攻撃を受けま
  す」

 「副長、そんな事はわかっている!」

 「では、引き上げを・・・」

 「このままでは腹の虫が治まらない。ゴットフ
  リートを発射後、撤退だ!」

 「わかりました・・・」

「ドミニオン」はゴットフリトの発射準備に入っ
た。

 


(同時刻、「アークエンジェル」視点)

敵艦が引き揚げてくれる可能性が高いと判断され
、ブリッジ要員に安堵の表情が浮かびかけた時、
予想を覆すような報告が入ってくる。 
 
 「艦長、敵艦ゴットフリート発射体勢です」

 「緊急回避!モビルスーツ隊は射線から
  離れなさい!」 

 「タリア艦長、私にそんな複雑な操作は・・・
  」

「バスター」に乗ったままのアーサー副隊長の抗
議は無視された。
「アークエンジェル」はアーサー副隊長の「バス
ター」を振り落として回避行動を取るが、右舷を
掠ったゴットフリートは右舷第一エンジンに損傷
を与えてしまう。

 「第一エンジンの温度が急上昇中です!停止さ
  せないと爆発します!」

エイブス班長から損害報告が入る。

 「わかったわ、(アークエンジェル)機関停止
  。でもその前に、ゴットフリート発射用意!
  お返しよ!」

 「ゴットフリート発射用意!」

 「発射!」

タリア艦長の命令で最後の一撃が発射される。

 「さあ、機関部の修理にはいってちょうだい」

一矢報いた「アークエンジェル」の戦闘はひとま
ず終了した。

 


(同時刻、「ドミニオン」艦内)

 「艦長!敵艦発砲!」

 「回避しろ!」

「アークエンジェル」のゴットフリートは同じく
、右舷を掠り第一エンジンに被害を与える。

 「第一エンジン出力50%低下。浮力を保つの
  が精一杯です」

 「手ごろな島に着陸。修理の後撤退だ!ちくし
  ょう!覚えてろよ!(アークエンジェル)!
  」

プリンス大佐の悪役のような捨て台詞を聞きなが
ら、ラミアス少佐はひとまず安堵する。
自分が生きながらえた事と「アークエンジェル」
の指揮を執っているあの男を殺さないで済んだ事
を・・・。
理由はよくわからなかったが、以前命を救われた
からかもしれない・・・。

 「敵の兵士の心配をするなんて・・・」

ラミアス少佐は小声でつぶやいた。


(同時刻、第三任務艦隊旗艦艦内)


 「いいか、帰ってきた艦載機は艦隊上空でパラ
  シュートで脱出させてパイロットだけを救え
  。どうせ、着艦できる空母なんて無いんだ!
  」

ホーク少将の指示が矢継ぎ早に指示を出していく

 「報告します。被害は空母二隻が沈没、一隻が
  大破ですが大破した艦は自沈処分します。残
  った一隻も飛行甲板が使い物になりません。
  巡洋艦は三隻が沈没で一隻が中破です。駆逐
  艦は十隻が沈没しました。幸いにも航空機運
  搬艦は損害無しです」

第三艦隊の参謀が冷静に被害報告をする。

 「幸いにもか・・・。本当に幸いだ。しかしな
  、世間様ではこれは全滅と言うんだ!」 

 「小官もそう思います」

 「冷静だな、お前」

 「参謀ですから」

 「わかったよ。どうせ俺は責任を取らされて左
  遷か予備役編入だろうから、後はお前に任せ
  るよ」

 「それは、正直勘弁してほしいですね。そうな
  らない事を祈ります」

 「祈ってくれよ。さて、撤退命令も出たし、カ
  ーペンタリアの部隊の追撃が来る前に撤退す
  るぞ」

 「了解です」

戦力をほとんどすり潰して、彼らはひっそりと退
却を開始するのであった。

 


(同時刻、「アークエンジェル」視点)

機動艦隊攻撃後に「アークエンジェル」に帰還し
た俺達は、そのあまりの被害に衝撃を受けてしま
った。
俺は艦橋に上がり、タリア艦長から最終被害報告
を受ける。

 「艦載火器は八割が使用不能です。艦体にも多
  数の被弾があり現在修復中です。機関部は右
  舷第一エンジンの温度が急上昇して爆発の危
  険があるために停止中で、修理には三日掛か
  るそうです。人員の最終被害は死者が十二名
  、負傷者三十二名で、内重症者は十八名です
  。それと、この被害者にはパイロットは入っ
  ていません」

頭に包帯を巻いたアーサー副隊長が報告をする。
彼は緊急回避時に「バスター」ごと艦から振り落
とされて、脳震盪を起こして気絶していたらしい

 「(アークエンジェル)が動けないとなると、
  防御はモビルスーツがメインになるな。エイ
  ブス班長、モビルスーツの稼動状況を」

 「(ディン)は全機損失です。(ストライク)
  は損傷軽微ですぐに修理可能、(イージス)
  は中破で修理に二日、(デュエル)はイザー
  クの機体が二日で他の機体は一日かかります
  。(バスター)はやはり修理に一日ですね」

 「つまり、今日機動可能な機体は(ストライク
  )と予備機のジンカスタムだけか」

今日、また敵が来れば大変な事になってしまう。
逆に今日を乗り切れればとりあえず危機を回避出
来るのだが・・・。

 「それについては心配無いと思うわ」

 「どうしてですか?タリアさん」

 「ここは、我が軍の勢力圏にかなり入り込んだ
  地点だからよ。敵は相当無理をして攻撃を掛
  けてきたものと思われるし、二度目の攻撃は
  まず無いでしょう。それに、カーペンタリア
  基地への救助要請は出しているので、偵察機
  が厳重に警戒をしてくれるみたいだし」

 「それなら安心ですかね」

 「まず、大丈夫でしょう」

 「わかりました。俺は少し休ませて貰います。
  すいませんが、後をお願いします」

 「カザマ君は大変だったんだから、ちゃんと休
  みなさい」

俺は艦橋を降りて食堂に向かう。
食堂ではアスラン達が、ぐったりとしながらお茶
を飲んでいた。

 「みんな、大丈夫か?」

 「ヨシさんこそ大丈夫ですか?」

 「イザーク、伊達に開戦時から生き残っていな
  いぞ俺は!」

 「そうでしたね」

 「みんな今日はよくやってくれた。イザークと
  ニコルは敵のエースを足止めしてくれたし、
  ラスティーとシホは(アークエンジェル)を
  守り通した。ディアッカとアスランは機動艦
  隊撃滅に功績大だ。特に、アスランは凄かっ
  たな。叙勲の申請をしておいてやるから期待
  して待っていろ。後、ジョンの申請も出して
  おかないとな・・・」

 「(ディン)の部隊はヨシさんを除いて全滅な
  んですよね。

仲間の死にニコルの表情が暗くなる。

 「ニコル、彼らの事を忘れてはいけないが、引
  きずっては駄目だ。それに、戦場では幸運の
  女神は気まぐれだ。今日、俺とジョンの位置
  が逆だったら、死んでいたのは俺なんだ。そ
  れはよく覚えておいた方がいい」

 「はい・・・」

 「しかし、話は変わるけどアスランは凄かった
  な。まるで鬼神のような動きをしていたな」

 「ええ、俺も見てましたけど驚きました」

同じく、目撃していたディアッカも賛同する。

 「でも、どうして急にあんなに凄くなったんだ
  ?」

 「いや、あの時ジョンが戦死してヨシさんも被
  弾した時に、何とかしないとって思った瞬間
  、頭の奥で何かが弾けた気がして・・・。そ
  れからです」

 「ふうん。それって、切れたって事?」

 「いえ、そうではなくて急に頭がクリアーにな
  って周りの状況が全て把握出来るんです。ど
  の艦のどの砲が自分を狙っているかとか。だ
  から、全然敵の攻撃が当たる気がしなくて」

 「物凄い能力だな。緊急時にしか作動しないみ
  たいだけど」

 「みたいですね」

 「まあ、とにかくご苦労さん。今日は早く寝て
  しまえ」

俺はみんなを解散させるが、最後に退室しようと
したアスランだけを呼び止める。

 「アスラン、さっき退避させたカガリちゃんは
  迎えに行ったか?」 

実はさきほど、「アークエンジェル」が撃沈され
る可能性があったので、アーサー副隊長に命令し
てカガリ達を艦から非難させていたのだ。

 「ストライクは損傷が少ないので迎えに行きま
  したよ」

 「カガリちゃん何か言ってた?」

 「いえ、特には・・・」

 「本当?」

 「心配させるなと怒られました」

怒られるのがアスランらしいな。

 「それと、ヨシさんの事を心配してましたよ」

 「本当に?」

 「カガリは一人っ子だからお兄さんみたいな人
  が出来て嬉しかったそうです。あっ、でもこ
  れは本人には内緒ですよ」

 「わかったよ」

 「では、俺も休みます」

アスランも自室に帰っていく。
俺もすぐに席を立ち、自室に戻って机の引き出し
から万年筆と便箋を取り出す。
今日戦死したジョン達の家族に手紙を書くためだ

今時、手書きなのでミゲル達に時代遅れと言われ
るが、ワープロ書きは心が篭っていないような気
がして手書きを続けている。
さすがに、戦死者全員の分は一人では無理なので
、艦内の戦死者の分は直属の上司に任せているが
、パイロットの分は必ず自分で書く。
書き間違えて、便箋を代える。
何度書いても慣れないものだ。
慣れたくはないのだが・・・。
全てを書き終えた後、明日の予定を考える事にす
る。
彼らの遺品の整理をしなければならないから、イ
ザークに手伝わせるか。
そんな事を考えながらベッドに潜りこむと、すぐ
に意識を失ってしまった。


翌日、俺は艦橋で修理状況を聞いていた。

 「今修理中ですが、やはり後三日かかります」

 「昨日の地点で三日じゃないんですか?」

 「人員に死傷者が多すぎて人手不足です。後三
  日です」

 「わかりました」

損傷大の上に、人員不足で状況はあまりよくない
ようだ。

 「俺達パイロットは修理の終わったモビルスー
  ツの調整後、待機任務ですね」

 「ええ、そうね。現在、唯一の守り手を修理の
  手伝いで疲労させられないわ」

 「つまり、敵襲が無ければ俺達は休暇ですね」

 「そうね、でもカザマ君は溜まった書類を片付
  けてね。先日、書類は溜まっていないなんて
  嘘ついたでしょ。シホが怒っていたわよ」

 「うへっ、了解」

 「俺達は休みなんてありませんよ」 

俺達の会話を聞いていた、エイブス班長のぼやき
が聞こえできた。


午前中、遺品の整理をイザークとした後、俺は書
類を片付ける事にする。
自分でやらなくてもいい書類はアーサー副隊長に
回して量を減らす。
これも、生活の知恵だ。

 「それにしても、この量は凄いな。大損害のせ
  いで量が半端じゃない」

 「いいえ。日頃さぼっているから、溜まってい
  るだけです」

シホが鋭いツッコミを入れる。
最近、シホがきつい。
副官にしなければ良かった。

 「今、失礼な事を考えませんでした?」

 「いいえ、滅相もない」

午後はカーペンタリアから輸送機が来て、死傷者
の収容をして緊急物資を置いていってくれた。
特に、当てにしていなかった補充要員が来てくれ
たのでエイブス班長が大喜びをしている。
さすがに、パイロットの補充はは来てくれなかっ
たが・・・。

夕方、修理の終わったモビルスーツの調整をする
ために、久しぶりに以前の愛機のジンカスタムに
乗り込む事にする。
コックピットの中は心が落ち着き、俺がパイロッ
トである事を再確認させてくれた。
やはり、俺には指揮官は似合わないようだ。

 

次の日、「アークエンジェル」の修理完了まで二
日となったが、敵襲はまったく来ない。
修理の監督はアーサー副隊長とタリア艦長に任せ
ているので、今やる必要の無い書類まで処理を終
わらせる事にした。

 「いつも、このくらいのペースでやってくれれ
  ば・・・」

書類の処理の督促をする必要の無くなった、シホ
のぼやきが聞こえてきた。

 「さて、仕事は終了だ。午後からは、パイロッ
  ト達の親睦を深めるために海水浴を行う」

 「海で泳ぐのですか?どうしてです?」 

 「俺達は休養が必要だ。そして、目の前には南
  国の海がある。ゆえに、海水浴しかない。シ
  ホは水着買ったんでしょ?」

 「どうして、知ってるんです?」

 「ラスティーが休日に一緒に買いに行ったと」

 「あの、おしゃべりが!」

 「いいじゃん、ラスティー喜ぶと思うよ。シホ
  の水着姿。俺達はこっそり楽しむから」

 「それ、セクハラ発言ですよ」

 「違う!芸術鑑賞だ!」

 「屁理屈ですね・・・」

 「それと、シホ」

 「なんですか?」

 「カガリちゃんを誘うのを忘れるな。できたら
  アビーちゃんも」

 「はいはい、わかりました・・・」

 
午後、パイロット組は集合して海水浴を楽しみ、
カガリはシホから水着を借りて参加していた。

 「少し、胸がきついなこの水着」

カガリが正直に水着の感想を述べると、シホの表
情が暗くなっていく。

 「いえ、僅かな差です。私はまだ十六歳です。
  後二年もすればカガリさんを打倒する事ぐら
  い・・・」 

 「でも、カガリにも同じくらいの時間が残って
  いるじゃん。打倒は無理なんじゃねえの」

正論を唱えたディアッカがシホに殲滅された。
口は災いの元である。

 「バカな奴。ところでカガリちゃんはスタイル
  いいね。意外だったけど・・・」

 「意外とは失礼な奴だな」

 「そう思うなら。もう少し女っぽい格好をして
  よ」

 「考えておく」

カガリはアスラン達とビーチバレーの準備を始め
た。
俺は疲れるので木陰に寝転んで、トロピカルジュ
ースを飲む事にする。 

 「うーん、もう少し華が足りないな。アビーち
  ゃんとタリア艦長は来ないのかな?」

 「タリア艦長?子持ちの年増の水着姿なんて見
  たくない」

ディアッアが核爆弾級のとんでも発言をする。
俺は1ミリも関係ないので、どうか聞かれていま
せんようにと願う事にした。

 「おーい!カザマ君!」

声の方向を見ると、アーサーさんとアビーちゃん
が水着姿でこちらに歩いてくる。

 「タリア艦長が前回の活躍の褒美をくれてね。
  アビー君はいろいろ大変だったから休みを許
  可してくれたんだ」

その後、アビーちゃんはカガリ達とビーチバレー
の仲間に加わり、俺とアーサーさんは木陰で横に
なった。

 「いやー、極楽ですねー」

 「カザマ君、二十歳前でしょう?なんか、オヤ
  ジくさいよ」

 「最近、仕事がきつくて老け込むのが速いんで
  す」

 「そんな、まさか」

 「本当ですよ」

 「ところで、タリア艦長からの伝言なんだが、
  ディアッカ君を処分しておいてくれだそうな
  」

 「わかりました。便所掃除一週間の刑を与えま
  す」

 「伝えておくよ」

本人の預かり知らないところで罰が決まってしま
ったディアッカは、楽しそうにボールを追いかけ
ていた。

 
二日後、応急修理が終わった、「アークエンジェ
ル」はカーペンタリア近海に到着した。
俺達は今後の事を聞くために基地司令に通信を入
れる。

 「カザマ隊長、色々大変だったな」

 「死にかけましたよ。ところで、カーペンタリ
  アで修理はして貰えるのでしょうね」

 「それなんだが・・・」

 「駄目なんですか?」

 「本国からの指令で直接オーブへ向かって欲し
  いそうだ」

 「本気ですか?まだ例の同型艦がうろついてい
  るかも知れないのに」

 「あれなら大丈夫だよ」

 「どうしてですか?」

 「先日、敵機動艦隊に止めをさそうと戦力を送
  り込んだら、あの艦が目の前を通過してね。
  攻撃をかけて撃退したよ」

 「沈まなかったんですか?」

 「オーブ領海に逃げ込んだので、手が出せなか
  った。今、オーブで修理中だろうから安心し
  てくれ」

 「それで、どうして我々がオーブへ?」

 「お客さんもいるし、戦力の補充はオーブでや
  って貰う。出迎えの外交官が待ってるから至
  急、オーブへ向かってくれ」

 「何か、政治の匂いがしますね」

 「私は軍人だから知らないな。後は頼んだよ」

カーペンタリアの基地司令は、用件だけを伝える
とすぐに通信を切ってしまった。
二日後、オーブ近海についた「アークエンジェル
」は護衛艦に曳航されて、オノゴロ島の秘密ドッ
クに入れられた。
隣のドックを覗くと、先日の同型艦が修復中で皆
を驚かせた。

中立国オーブ。
この国でどんな出来事に巻き込まれるのか?
俺にはまだわからなかった。


       あとがき

一度書き上げた文章を間違えて消してしまい。
呆然としてしまいました。
それをやっと書き直して更新します。
先日、運命の主題歌アルバムを中古で購入しまし
た。
歌は最高なんですよね。運命は・・・。
私はオープニングは「ignited」と
「PRIDE」がエンディングは
「Life Goes On」と
「君は僕に似ている」が好きです。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル