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「これが私の生きる道!地球編1(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-01-30 01:15/2006-05-05 22:25)
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(オーブ連合首長国オロファト郊外)

そのお店はオロファト郊外の森林の舗装されてい
ない道の片隅にあった。
約束の十五分前に到着したデュランダル外交官は
車を駐車場に止めて店に入る。
このお店は美味しい紅茶とコーヒーが飲める穴場
的なお店だと言う評判であった。
店に入って席に着くと、六十歳前後に見えるマス
ターが外に出て、ドアに準備中の札をかける。
どうやら、本日は貸切のようだ。
マスターは慣れた手つきで紅茶を出す。
葉はダージリンで角砂糖が一個つけてあった。

 「こちらの好みは調査済みか」

既に、勝負は始まっているようだ。
暫らく紅茶を楽しんでいると、ドアが開き男女三
人が入ってくる。

 「ああ、そのまま紅茶をお楽しみください」

デュランダル外交官は席を立って挨拶をしようと
するが、年配の前頭部のはげあがった男性がそれ
を制止した。

 「いえいえ、オーブの重鎮でいらっしゃるウナ
  ト殿に失礼があってはいけません。ご子息も
  いらっしゃってるようですし、是非ご挨拶を
  しなければ。それに、ミナ殿までいらっしゃ
  ったとあってはますます座っていられません
  」

そう言いながら、デュランダル外交官は立ち上が
って挨拶をした。
 
 「デュランダル外交官はお惚けがお上手だ。私
  が来る事がわかっていた癖に」

 「いえいえ、突然のご来訪に驚くばかりです」

 「まあいい、早速始めさせてもらおう」

色黒の妙齢の女性が椅子に座る。
彼女はサハク家当主で名前はロンド・ミナ・サハ
ク言う。 

 「私は今日は父上の護衛で参りました。お気に
  なさらないでください」

紫色の髪の青年が静かに椅子に腰掛けた。
だが、本当に護衛ならば座らないはずだ。
多分、このお店の外には多数の護衛がすでに配置
されているのだろう。

 「では、私も座らせてもらいますかな。最近、
  年で立っているのが辛い」

ウナト・エマ・セイランが最後に椅子に座る。
その後すぐにマスターは3人分のコーヒーと紅茶
のお代わりを持ってきてテーブルに置き、店の奥
に引っ込んでいった。

 「ここの主人は以前、軍の情報部に勤めていた
  のだ。私とも顔見知りで、今日のような会合
  を開く時に場所を提供してもらっている。口
  は堅いし、コーヒーが美味しいのだ」

ミナがこのお店の主人の事を話し始める。 

 「ここの紅茶は美味しいですね。プラントでは
  茶葉の生産をほとんどしていないので、羨ま
  しいです」 

 「デュランダル殿に気にいってもらえて良かっ
  た」

 「それで、今日の会合の用件は?」

ウナトが早速話しを切り出すした。

 「実は今はとりたてて急ぐような案件はないの
  ですが、後日に何かあるかもしれないので、
  今の内に一度話し合いをしてみようかと。つ
  まりは、お見合いみたいなものです」

 「私もウナト殿も暇ではないのだが・・・」

 「後日、何かあってからだと色々大変ですから
  今の内に色々話しておく事は悪い事では無い
  と思いますが」

 「その口振りからすると、何かある事が決定し
  ているようだな」

 「可能性は高いですね」

 「その可能性は教えてもらえるのでしょうな」

焦れてきたウナトが会話に割り込んできた。

 「実は、ザフトは数ヶ月後に(オペレーション
  スピットブレイク)。パナママスドライバー
  破壊作戦を実施するのです」

 「よろしいのですかな?私達にそんな重要機密
  をお話して・・・。私達が地球連合側に漏ら
  すかもしれないのですぞ」

ウナトはかなり動揺しているようだ。

 「逆に連合を混乱させる為に偽情報を話してい
  るかもしれないがな。そして、情報を流した
  我々は信用を無くすというわけだ」

 「ミナ殿は手厳しいですな」

 「それで、どうして重要な情報を教えてくれる
  のだ?何か見返りが欲しいのか?」

 「いいえ、そのようなものは必要ありません。
  ただ、その後のオーブの置かれる立場につい
  て確認しておきたいのです。」

 「オーブの立場?どうなるというのだ?」

 「パナマのマスドライバーを破壊されば連合は
  大規模なマスドライバー基地をすべて失いま
  す。もう一基カルフォルニアで建設していま
  すが、完成までまだ時間が掛かるみたいです
  し。そうなると、連合は何処かからマスドラ
  イバーを確保しなければなりません。ジブラ
  ルタルとビクトリアは守りが堅いので困難な
  ので、残りはオーブかカオシュンになります
  。日本の種子島にもありますが、あそこのは
  小規模ですしね」

 「我がオーブは中立国だ。連合もそこまでの無
  茶をしないと思うが。貴国はカオシュンの防
  備でも固められたらどうかな?」

 「勿論固めますよ。もし、カオシュン攻略作戦
  を連合が実行するならザフトは全力で阻止し
  ます。ああ、これも本当は秘密なのですが、
  日本国も自衛隊を出してくれるみたいですし
  」 

 「遂に日本を同盟国に・・・・・・」

ウナトには驚愕の事実だったようだ。

 「プラントは小国です。連合に負けないように
  するには色々動かなければなりません。仲良
  く同盟を組んで戦後はみんなで幸せに、傲慢
  な大国、大西洋連邦とユーラシア連合と東ア
  ジア共和国を協力して押さえ込みましょう。
  こんなコンセプトで私は飛び回っているので
  す」

 「そうなると我がオーブは・・・」

 「連合との同盟締結を求められるかもしれませ
  ん。ウズミ様は当然断るでしょうからそうな
  ると大変な事に・・・」

 「失礼な物言いだが、カオシュンが陥落すれば
  オーブは関係ないかもしれませんよ」

 「やってみなければわかりませんが、多分守り
  きれると思いますよ。パナママスドライバー
  破壊作戦後の残存戦力はカオシュンに集めま
  すし、各地からの援軍もできるだけ集結させ
  ます」

 「カオシュンが無理ならオーブの可能性があり
  、援軍を望めない我が国は占領の憂き目に会
  うというのだな」

 「可能性は高いですね」

 「それならば、パナマの作戦を中止すればいい
  ではないか」

 「すみません、これはもうすでに評議会でも決
  定済みの事なので中止はありえませんよ。ミ
  ナ殿」     

実は、パナマ破壊作戦は立案だけされていて本来
ならばお蔵入りになる予定だった。
この作戦案を復活させたのは意外にもマッケンジ
ー特別軍需委員長で、最近ジリジリと生産力を上
げてきている連合の物資打ち上げを阻止するのが
狙いであった。
ザフトは通商破壊作戦を宇宙と地球で実施してい
るが、最近輸送量が増加してきた為に、以前と同
じ量の輸送を阻止しても効率自体は落ちてきてい
るのだ。
この状況をマッケンジー委員長は脅威と感じてパ
ナマ作戦の実施への要請に繋がっていた。

 「それで、我々にどうしろと?」

 「実は、ホムラ代表に秘密裏に提案をしていま
  して、それに賛同をしてもらえないかと」

 「どのような提案なんです」

 「もし、オーブが他国の侵略を受けた時にプラ
  ントは傭兵部隊を派遣するというものです。
  念のために言っておきますが、傭兵とはモビ
  ルスーツのパイロットが主体のものです。連
  合のモビルスーツ開発をモルゲンレーテに受
  注させて、その技術を自国のモビルスーツ開
  発に利用しているウナト殿とミナ殿にはこれ
  が重要な戦力になると理解してもらえると思
  いますが」

 「全てお見通しというわけだなデュランダル殿
  」    

 「最後に、それを受け入れたとして我々に何の
  利益がある?」

 「戦後の話ですが、オーブとプラントで共同の
  宇宙開発計画を実施する時にオーブ側の窓口
  をミナ殿にお願いしようかと」

 「悪くない条件だな」

 「ウナト殿にはもう1つお願いが」

 「何かね?」

 「大西洋連邦とユーラシア連合の反ブルーコス
  モス強行派の政治家・官僚・財界人の方との
  会合の仲介をお願いしたいのです」

 「何を話し合うのかね?」

 「勿論、和平への話合いですよ。もし、和平が
  成立すれば仲介したウナト殿の功績は比類無
  きものになりますな。ホムラ殿の次の代表の
  座も夢ではありません。」 

 「デュランダル殿は人をおだてるのが上手いで
  すな」

 「おだててなどいません。実現すれば現実にな
  る事です」

 「わかりました。頑張ってやってみましょう」

 「私にも異存はない」

 「それではよろしくお願いします。次回も楽し
  いお茶の席になるといいですね」

 「まったくだ」

 「そう願いたいですな」

デュランダル外交官は席を立って店を出た。
更に、ミナも用事があると言って帰ってしまう。

 「父上、なかなか魅力的な提案でしたね」

 「そうだな、さっそく動かなければな。お前の
  婚約者を増やさねばなるまい」

 「またですか?私には何人婚約者がいるんです
  ?」

 「大分破棄したから、今はカガリだけだろ」

 「確かそうですが・・・。それで、誰が新しく
  婚約者になるんです?」

 「大西洋連邦アルスター外務次官の娘だ。それ
  と、プラントの方も候補者を探さないとな」

 「カガリは男っぽくて色気が無い。アルスター
  家の娘は見た目はともかく気が強くてわがま
  ま。もう1人の候補はおしとやかなのをお願
  いしますよ。父上」

 「わかった考慮しておく。しかし、お前はセイ
  ラン家の跡取りなんだからあきらめも肝心だ
  ぞ」

 「はいはい、それはよ〜く理解してますよ」

 「それとな、今日の話し合いは勉強になっただ
  ろう?セイラン家をお前の代で潰さないよう
  に頑張ってくれよ」

 「わかりましたよ。世の中見極めが肝心だって
  事は理解しているつもりです。それにしても
  、状況の確認だけだったはずなのに随分と話
  が進んだものですね」

 「ミナ殿はそれを覚えているのかな?まあ、ど
  ちらでもいいが」  

親子は会話を終らせてから、帰路についた。


(同時刻、オーブ首都オロファト市街の車中)

秘密裏の会合を終らせたデュランダル外交官は車
中で一息ついた。
 
 「さてと、オーブでの仕事はひとまず終わり。
  次はアフリカ共同体の首相との秘密会談か」

若い頃に別れた恋人との再会、不倫、妊娠。
学者を干されて路頭に迷いかけたところをカナー
バ議員に拾われて私は外交官をやっている。
私は義理の息子を入れて三人の父親になった。
タリアは軍人で収入はあるが、それに頼るのは男
としての矜持が許さない。
この仕事は秘密が多く、家族とも連絡がとりにく
い給料は良い。
義理の息子のレイに最新の治療を受けさせたいし
、音楽家を志している彼に楽器の一つも買ってや
りたい。
彼には才能があるからなおさらにそう思う。 
妻や子供達は元気だろうか?
戦争さえ終われば私はプラントに帰れるのだ。
私の仕事で早く戦争が終わる事を祈って・・・。

   


(同時刻、プラント軍本部内の空き部屋)

 
ここは、少人数で緊急の会議を行うための部屋だ
が、今は臨時のカザマ隊司令部が置かれている。
任命が急なら出発も急で、俺達は三日後には出発
しなければならない。
作業工程を考慮すると、司令部要員の選定は今日
中に行わなくてはならないのだ。

 「さて、これが現在プラント内にいる艦長・副
  隊長候補者のリストだ。さて、誰にしたもの
  かね。シホはどう思う?」   

 「ヨシヒロさんが選んでくださいよ」

 「本当はお前達の中の1人に副隊長を兼任させ
  ようかと思ったんだけど、まだ無理だろうと
  思ってな、それで迷っている。それに、戦力
  が足りなければ俺が出ないといけないから、
  この人事は重要だ」

 「ヨシヒロさんがモビルスーツで出撃するんで
  すか?クルーゼ隊長みたいですね」

 「一緒にするなよ。一隻しかない部隊なんだか
  ら仕方がないでしょうが」

 「それもそうですね」

 「モビルスーツ隊の隊長は書類上はラスティー
  で一個小隊長兼任。もうひとつの小隊はアス
  ランが指揮を執って、地球で合流するディン
  の部隊はそいつらの中の誰かにまかせる。隊
  長直属の副官はシホ、お前に決定っと」

 「それはいいんですけど。艦長は誰にします?
  」

 「オキタ艦長にお願いしたんだけど、断られて
  しまってな。自分は宇宙空間の戦闘が専門で
  地球は初めてだから無理なんだってさ」  

 「困りましたね」

 「それで、このデータを見ると優秀な艦長が!
  タリア・グラディス艦長!ナスカ級戦艦(パ
  ルテノン)艦長!」

 「もう1人副隊長候補はアカデミーで成績優秀
  。現場の評価も高いアーサー・トラインで決
  定!」

 「タリア艦長はそれでいいと思いますけど、ア
  ーサーさんは副長任務の経験しかありません
  よ」

 「しょうがないじゃん。実は彼くらいしか候補
  がいないんだから」

 「ミゲルさんにお願いしないんですか?」

 「あいつは来月隊長に就任予定だから無理」

最近は、戦争の長期化とザフト軍戦力の膨張で指
揮官の数が不足ぎみの為に、若くても優秀と判断
されればすぐに指揮官に任命されるようになって
いた。
クルーゼ隊長も戦闘時には周りの数個の部隊に命
令を出せる司令官クラスの権限を有すようになっ
ている。
しかも、軍本部への栄転まで噂されているのだ。
最も、これは軍本部勤務ならモビルスーツで飛び
出さないだろうとの判断から出ているものだが・
・・。

 「もう、時間がない。迷いは捨てて決定あるの
  み。シホ、二人を呼び出してくれ。挨拶が済
  んだらアークエンジェルに出発だ!」

ちなみに、他の乗組員は俺の隊長就任前に着任し
ていて艦の訓練と調整にあたっていたし、アスラ
ン達もモビルスーツと物資の搬入の指揮を執って
いた。

 「失礼します、カザマ隊長ですね。アークエン
  ジェル艦長に着任しました。タリア・グラデ
  ィスです」

 「おっ、同じく副隊長に着任した。アーサー・
  トラインです」

 「カザマ隊隊長のヨシヒロ・カザマです。よろ
  しくお願いします」

 「同じく副官のシホ・ハーネンフースです。よ
  ろしくお願いします」

 「いきなりで申し訳ありませんが、一つよろし
  いでしょうか?」

グラディス艦長は俺に聞きたい事があるようだ。

 「なんです?」

 「どうして、私を艦長に?」

 「簡単です。この隊の任務は特殊ですので、考
  査表を見て一番臨機応変に動けそうな人を選
  んだだけです」

 「私はどうしてなんですか?副隊長なんて、艦
  長の経験も無いのに」

 「私にも艦長の経験はありませんよ。副隊長を
  選んだ理由は・・・・・・」

 「理由は?」

 「なんとなく。他に候補がいなかったから」

 

 
 「えーーーーーー!」


その後、アークエンジェルに着任して人員の紹介
を済ませて最終出発準備に入った。
暫らくアーサー副隊長はすすけていたみたいだが
、直ぐに復活して仕事に励んでいるようだ。

 「あの、ヨシさん。どうしてアークエンジェル
  のままなんです?普通、改名しますよ。拿捕
  艦なんですから」

 「連合へのいやがらせだ。それと、改名の申請
  出すのを忘れてて技術部がそそままアークエ
  ンジェルと呼んでいたから、書類上の名前を
  呼んでるだけ」

 「聞かなきゃよかった」

真相を聞いたニコルはがっくりきているようだっ
た。


アークエンジェルの格納庫に降りた俺達は搭載モ
ビルスーツの確認をする。

 「えーと、Gが四機とシグーディープアームズ
  が三機でジンカスタムが一機こいつは予備機
  だな」

このシグーディープアームズはゲイツ完成までの
繋ぎで量産された機体でGのデータを参考に多少
の改良が加えられている。
地上での対モビルスーツ戦闘でビームライフルが
使えるようにという事で選ばれたのだが、シグー
の地上での運用実績が無いので戦力は未知数だ。
技術部は俺達にデータを取ってきて欲しいらしい

ジンカスタムは俺が使っていた機体だが、地上で
もそれなりに使えるので、予備機として持って行
く事にした。
残りの機体は地上でディンがパイロットと共に合
流する。

 「ではみんな出撃準備を怠らないように。地球
  で命を落とす事になるからな!」

 「「「了解!」」」

アークエンジェルの出港準備は着々と進んでいっ
た。

 

 


いよいよ、今日は出発の日だ。
出港準備を終えた俺達は配置について最終チェッ
クをする。

 「カザマ隊長、発進準備完了です」

グラディス艦長から最終報告が入る。

 「アークエンジェル機関始動。巡航速度で大気
  圏突入予定地点まで発進」

 「アークエンジェル、発進します」

さすがは最新鋭艦、スムーズに発進する。

 「大気圏突入時刻一時間前に呼んでください。
  俺は仕事があるので。グラディス艦長、後は
  よろしく」 

無事に発進したので自分の部屋に戻り、大量の書
類と格闘すること事にした。
泥縄式の出発だったので、山の様に書類がある。
それに、俺は艦長任務を経験したことが無いので
艦の運営はグラディス艦長に一任する事にしたの
だ。
別に手を抜いているわけではない、適材適所だ。

 「ちきしょう、こんなに書類があるなんて。だ
  から管理職は嫌なんだ」

 「せっかく出世したんですから頑張りましょう
  よ。(カザマ隊長)カッコ良いじゃないです
  か」

 「最近、一応出世してるよな俺。急にどうして
  なんだろうな?シホ」

 「簡単な事です。今のプラントでは他のコロニ
  ーと地球出身のコーディネーターとその家族
  のナチュラルの人口比率が上がってきてるの
  で、彼らを差別なんて出来なくなってきてい
  るんです。ヨシヒロさんは日本から移住して
  きて日夜プラントの為に戦っている英雄と評
  価で、彼に続けと軍に志願している人間も増
  えています。そんな人が出世しないとおかし
  いじゃないですか」

 「見事な説明ありがとう。そうだよな、最近移
  住者が増えてるよな。第一世代コーディネー
  ターなんか、ナチュラルの家族連れてきて移
  住してるし」

 「しかも、戦争に人を取られてますから彼らの
  働き口はいくらでもあります。定着するのが
  楽な事はいい事ですよ。あんまり社会不安も
  起きませんし」

 「戦後、軍人が復員すると就職難になりそうだ
  な。俺も今のうちに・・・・・・」

 「そんな事心配しないでください!ヨシヒロさ
  んは軍に残れますから!それよりも、書類早
  く処理してください」

シホを副官にしたら五月蝿いな。
失敗したかな?

 「今、失礼な事考えませんでした?」  

 「滅相も無い!」

あらかた書類の処理が終了した所でグラディス艦
長から呼び出しがかかり艦橋へ上がった。

 「カザマ隊長、後1時間で大気圏突入です」

アーサー副隊長の声を今日、初めて聞いた気がす
る。 
今気が付いたんだけど、別に副隊長は必要なかっ
たのかもしれない。
艦の事はグラディス艦長に聞けばいいし、モビル
スーツ関係は副官のシホの方が詳しいしアスラン
達もいる。 
戦力が足りなくて俺が出撃すれば彼が指揮を執る
事になるけど、一艦だけだからグラディス艦長が
指揮を執った方が効率が良いかもしれない。
これは困った。
彼に仕事を見つけてあげないと。

 「では、大気圏突入準備に入ってください。目
  標はアフリカ大陸ビクトリア基地近郊」

 「了解、大気圏突入準備に入ります。目標、ビ
  クトリア基地近郊」

アークエンジェルは特殊なジェルを艦底に散布し
ながら地上へと降りていった。
俺にとっては約10ヶ月振りの地球だった。  

アフリカ大陸ビクトリア基地。
ここはビクトリア湖を埋めて造られたマスドライ
バー基地であり、ザフト軍のアフリカ最大の軍事
拠点でもある。


アークエンジェルは着陸許可を基地の管制官にも
らってから、艦を着艦させた。
俺はグラディス艦長とシホとラスティーとアスラ
ンを連れて基地司令に挨拶にいった。
ちなみに、アーサー副隊長は留守番である。
彼の仕事リストその1、留守番。 

 「カザマ隊、ただいま到着しました」

 「おう、ご苦労さん。とりあえずコーヒーでも
  飲みたまえ」

 「ありがとうございます。それで、戦況は?」

 「実は、噂のGが出現してな。バルトフェルト
  隊長は無駄な犠牲を出さないように少し戦線
  を下げたんだ。君達を待っているぞ」

 「俺達だけで何とかできるんですか?」

 「GにはGで対抗するのが一番と言っているら
  しい」

 「敵の数とかは聞いてますか?」

 「デュエルとバスターという機体が五機ずつい
  たが、後退するときに罠に誘いこんで一機ず
  つ撃破したので後八機のようだ。その他に、
  ストライクダガーとかいう量産機が十機いて
  半数を撃破で残り五機。最後に、傭兵部隊の
  ジンが十機ほどいて残存は七機。これが最新
  の報告だ」

 「結構、多いですね」

 「そうだな、バルトフェルト隊長の戦力のみで
  撃破は可能だが、損害がバカにならない。フ
  ェイズシフト装甲とビーム兵器とは厄介なも
  のなのだな」

 「わかりました。補充用の機体を補給してから
  現地に向かいます。コーヒーご馳走様でした
  」

俺達はすぐに補給を済ませて出発する事にする。

 「モビルスーツ部隊ですか。遂に来るべき時が
  来ましたね」

アスランが緊張した面持ちで語る。

 「今までにも海賊が乗っていたジンと戦ってい
  るんだから大丈夫だよ。問題は倍の数のGへ
  の対策だ。」

 「敵の技量や味方の戦力などわからない事が多
  過ぎます。とりあえず、行ってみるしかない
  ですね」

ラスティーの言う通りだ。
やっぱり、実際に行ってみないと分からないから
な。

     
アークエンジェルに戻ると、整備班班長のマッド
・エイブスに呼び止められる。
補充のディンがパイロットと共に到着したようだ

よく見ると、パイロットは三名なのにディンは四
機ある。

 「この一機は少し見た目が違うけどカスタム機
  なのか?」

 「ええ、Gのデータを参考に新型バッテリーに
  積み替えて、腕にコネクターをつけています
  。だから、ビームサーベルが使えるんですよ
  」 

エイブス班長が機体のスペックを教えてくれる。

 「機体は余ってるみたいだし、俺の専用機にし
  てしまおうかな?」

そんな不埒な事を考えていると、補充されたパイ
ロット達が挨拶をしてきた。

 「カザマ隊長ですね。ジブラルタル基地より転
  任してきました。ジョン・スミスです」

 「同じく、チャン・フェインです」

 「同じく、ネタニヤフ・カネンスキーです」

 「隊長のカザマだ。ようこそ我が隊へ。頼りに
  するからな」

 「「「よろしくお願いします!」」」

その後は艦長以下のスタッフと他のパイロット達
に彼らを紹介してから補給物資を積み込んで出発
した。

 「エイブス班長、やけに物資が多くない?」

 「バルトフェルト隊長あての物資がありますか
  ら」

 「まさか、コーヒーだったりして」

 「それもありますが、バクゥが使うビームサー
  ベルと専用のコネクターですよ」

 「現地で改造するのかって・・・。やっぱりコ
  ーヒーもあるんだ!?」

 「リストにコーヒー豆とフィルターが入ってい
  ました」

 「いついかなる時も趣味を忘れない男か・・・
  」

アークエンジェルはビクトリア基地を出発して合
流予定地を目指す。
アフリカのサバンナが目前に広がり、象やシマウ
マやキリンが群れを作って艦を避けるように走っ
ている。

 「うーん、さすがはアフリカだな。動物園で見
  た事がある動物達が本当にいるよ」

 「本当ね、子供達に見せてあげたわ」

 「子供の頃に両親に動物園に連れて行って貰っ
  た事を思い出しますな」

 「タリアさんは子供さん達を動物園に連れて行
  った事あります?」

 「そりゃあね、真ん中の子だけだけど。一番上
  の子はもう動物園って年じゃないし、一番下
  の子はもう少し大きくならないとわからない
  と思うからまだ連れいってないの。カザマ君
  は恋人と出掛けたりしないの?意外とデート
  スポットしても良いものなのよ」

 「そんな相手いませんよ。そういうのは年上の
  アーサーさんに任せます」

 「アーサーは頼りなさそうだから女性にモテそ
  うにないわね」

 「そりゃないですよ、タリア艦長。確かに彼女
  はいませんけど、これからチャンスはいくら
  でもありますって」

地球に降りてから仲良くなってきた我々は公式の
場所以外ではお互いに名前で呼び合うようになっ
ていた。
アーサー副隊長はタリアさんと呼べずにタリア艦
長だけど。

 「タリアさん、1つ質問なんですけど」

 「何かしら?」

 「結婚したのに苗字変わっていませんね。旦那
  さん婿養子ですか?」

 「違うわよ。仕事をしている時だけ夫婦別姓な
  の」

 「そうなんですか。でも、旦那さん凄いですね
  。カナーバ外交委員長の懐刀だって評判です
  よ」

 「本人はドサ周りだって以前こぼしてたわよ。
  仕事の性格上なかなか家族にも連絡できない
  みたいだし」

 「それだけ重要な仕事なんですよ。今度の評議
  会選挙ではザラ国防委員長とカナーバ外交委
  員長の一騎打ちで、カナーバ委員長有利との
  事じゃないですか。そうなれば、旦那さん出
  世しますからプラント本国に帰ってきますっ
  て」

 「でもね、私は今地球にいるのよね」

 「すいませんね。独立愚連隊に引き込んじゃっ
  て」

 「大丈夫よ、私は楽しんで仕事してるから。こ
  の部隊の性格上そんなに長い任務にはならな
  いでしょうし」

 「まあ、それは私もそう思います」

一通り話したところで格納庫へモビルスーツを見
に行くことにする。
向こうですぐに戦闘になる可能性が高いのでOS
の調整などを済ませておかないといけないからだ

 「ラスティー、アスラン、ジョン。調整の方は
  もう済んだのか?」

 「俺達のディンはジブラルタルで使っていた機
  体なので、それほどやる事はありません。実
  験機はもう調整は済ませてあります」

 「俺達も終わりました。ただ、シグーは実際に
  動かしてみないとわからない部分が多いんで
  すよ」

 「そうか、ごくろうさん。向こうに着くまで交
  替で休憩を取っておけよ」

 「「「了解!」」」

格納庫で整備員達に指示を出してるエイブス班長
を見つけて話かける。

 「エイブス班長!ちょっといいですか?」

 「どうしました?隊長」

 「正直、ここのでの戦闘で役に立ちそうな機体
  ってどれですか?」

 「ディンくらいじゃないんですか?」

 「やっぱり、そうですか」

 「地上でシグーなんて使っても意味がないんで
  すよ。多分、ジンに毛が生えたくらいの性能
  しか出ませんよ。ビームライフルも地上で使
  うとどうなるのか、誰も使った事は無いし・
  ・・」

 「ディン部隊の重要度が高いんですね」

 「本当は基地防衛用の機体以外はディンか、そ
  の後継機に統一すればいいでしょうけどね。
  ゲイツも重要だけど、ちゃんと飛べるモビル
  スーツがあればもう少し楽なんですけどね」  

 「ストライクはどうなんです?飛べるって話で
  すけど」 

 「説明書には景気のいい事が書いてありますが
  、ディンに比べるとたいした事ありませんよ
  」

 「シグーを置いていってディンに交換したくな
  ってきたな。まあ、実験機だから無理だけど
  。それで、飛べない機体を飛ばすのに使うグ
  ゥルは用意できてます?」

 「スイマセン。組み立てにもう少しかかります
  」

 「今日中に組みあがれば大丈夫だと思うのでお
  願いしますよ」

 「わかりました」

俺が再び艦橋に上がると、目の前にバルトフェル
ト隊の旗艦「レセップス」が見えてきた。
数隻の地上駆逐艦を従えているようだ。 
周りにバクゥ、ディン、ザウートが多数置いてあ
りその他にも、戦闘ヘリ、戦車、装甲車、歩兵師
団の駐屯地が見える。
これは予想外の大戦力だ。

 「タリアさん、すごい戦力ですね。俺達の援軍
  なんて意味あるんでしょうか?」

 「わからないわ、バルトフェルト隊長に会いに
  行ってみない事にはね・・・」

俺達は管制にしたがってアークエンジェルを置い
て「レセップス」に挨拶に行く。
タリア艦長とシホ、ラスティー、今日はイザーク
を連れて行く。
司令官室に通されるが案の定、部屋の入り口から
はコーヒーの香りが漂ってくる。
俺以外は顔を顰め、「なんなんだここの隊長は?
」という表情をしている。

 「バルトフェルト隊長、お久し振りです。カザ
  マ隊援軍に到着しました」

 「やあ、元気だったかい?君も出世したねー、
  今お祝いにコーヒーを煎れてあげよう」

 「ありがとうございます。それと、補給物資に
  コーヒー豆とフィルターが入っていたんで、
  後で届けさせます」

 「ありがとう、やっぱり君を部下に欲しかった
  ね。ダコスタ君は優秀なんだけど、ちょっと
  真面目すぎてね。もう少し柔軟性があればい
  いのにね」

 「ダコスタさんは仕事ですか?後、綺麗な副官
  さんは?お名前は何ておっしゃいましたっけ
  ?彼女」

 「アイシャよ。カザマ君、久しぶりね」

前回、バルトフェルト隊長の隣にいた美女が部屋
に入ってきた

 「本当は女性の名前はすぐに聞く習慣なんです
  けど、恋人さんがいたから誤解を避けるため
  に遠慮したんですよ」

 「あら、そうなの?遠慮しないで口説いても良
  いわよ」

 「バルトフェルト隊長に殺されてしまいますよ
  」

 「アイシャはそう簡単に僕以外には靡かないさ
  。頑張って口説いてくれたまえ」

 「無駄な事と野暮な事はしないんですよ」

他の四人は俺達の会話を聞いて唖然としていた。
正規の軍服も着ていない女性が副官扱いで、上司
と恋人同士である事を隠しもしないのだ。
真面目で融通が利かないイザークの精神は崩壊寸
前のようだった。

その後、コーヒーを貰いダコスタさんも戻って来
たので状況を聞く事にする。

 「実は、敵にモビルスーツ隊が出現してね。結
  構しぶといんだよ。それで、君達に頼もうと
  思ってさ」

 「そんなに高性能なんですか?」

 「いや、動きはイマイチだ。でも、フェイズシ 
  フト装甲とビーム兵器を装備してるから撃た
  れ強いんだよ。この前罠に誘い込んでようや
  く二機を破壊したんだ。でも、向こうのまぐ
  れ当たりでバクゥが三機もやられてしまって
  大変だったんだ」

 「単純計算で、後十二〜三機は犠牲になります
  ね」

 「それでは効率が悪いから、君達にお願いして
  いるんだよ」

 「わかりました。やってみます」

 「ところで、大戦力ですね」

 「戦闘ヘリと戦闘車両と歩兵部隊はほとんどア
  フリカ共同体の軍勢なんだ。ザフト軍にあれ
  だけの歩兵は出せないよ」

 「確かにそうですね。だからこそ我々がモビル
  スーツ隊を叩かないと彼らが前進できないわ
  けですね」

 「そういう事。我々はあくまでも援軍の立場な
  んだよ。でも、主力隊でもある。政治って複
  雑だよね」

 「簡単にしてしまうと、ブルーコスモスみたい
  になってしまいますよ」

今回のアフリカ作戦はプラントの同盟国であるア
フリカ共同体の要請で援軍を出しているという形
になっていた。
アフリカ共同体が南アフリカ統一機構政府を打倒
してしまえば、とりあえずアフリカ大陸は安定す
る。
アフリカ大陸の歴史からみて完全な安定は難しい
のかもしれないが、それはアフリカ共同体が解決
する問題なのでプラントは関与しない方針だ。
大西洋連邦やユーラシア連合みたいに口を出し過
ぎるとろくなことにならない。


打ち合わせを済ませてアークエンジェルに帰ろう
とすると、艦の出入り口で警備兵ともめている集
団を見つけた。

 「おい!何をしてるんだって・・・。カガリち
  ゃん?」

 「誰がカガリちゃんだ!なんでお前がここにい
  るんだ?しかも、こんな艦に乗って!」

 「俺がこの艦を指揮してるから。ここにいるの
  は任務だから」

 「彼女と知り合いなんですか?」

タリア艦長が聞いてくる。

 「以前、ヘリオポリスの事件の時に知り合いに
  なったんんだ。ここは俺が解決するから、艦
  の方は頼みますね。艦長」

 「わかりました。アーサーを応援に出しますか
  ?」

 「多分、役に立たないからいいです」

何気にむごい事を言ってしまった。

 「それで、俺達に何か用事なの?」

 「いや、ただ聞きたい事があったから・・・」

相変わらず、無鉄砲な娘だな・・・。

 「おい、女!俺達は忙しいんだ。さっさと帰れ
  !」

イザークが爆弾を投下した。

 「なんだと!私はカザマに用事があるんだ!オ
  カッパは黙ってろ!」

 「貴様、オカッパだと!俺の髪型をバカにした
  な!この髪型はな母上が似合うといってくれ
  たから気に入っているんだぞ!」

 「うるさいマザコン!引っ込んでろ!」

 「貴様ぁーーー!」

 「あーーー、イザークよ。アスランを呼んで来
  てくれ。そうすれば、事態は改善するから」

俺は爆発寸前のイザークを遠ざけるために仕事を
与えた。

 「それで、後ろの人たちは誰なの?」

忘れ去られていた集団の中から体格のいいオッサ
ンがでてきて自己紹介をする。

 「俺は(明けの砂漠)というゲリラを率いてい
  たサイーブってもんだ。そして、後ろの連中
  は俺の仲間達だ」

 「率いていた?過去形だな。今は、どうなって
  いるんだ?」

 「アフリカ共同体の政府の連中と交渉が成立し
  てな。我々の住んでいる土地の自治と鉱山の
  所有権を認めてもらう代わりに兵隊を出す事
  になったんだ」

 「争いが避けられてよかったよ。ゲリラ相手な
  んて大変だからな」

アフリカ共同体は中央集権型の政府の成立を初期
の頃にあきらめていて、部族単位の自治区を多数
つくり防衛と外交のみ共同で行う政治体系を取っ
ている。
将来、合意事項が増えれば政府の仕事は増やすみ
たいだが。

 
 「それで、カガリちゃんは俺に何の用事?あっ
  、ごめんね。アスランならすぐ来るから」

 「アスランがいるのか?って、違う!そんな用
  事ではない!」

その時、イザークがアスランを連れてやって来る

 「隊長なんですか?って、カガリじゃないか。
  お前どうしてこんな所へ?」

 「久しぶりなんだし、作戦準備が整うまで話し
  てろ。俺が許可する。イザーク、アスランの
  仕事の残りを頼むな」

 「どうして俺が・・・」

 「お前がカガリちゃんの相手してもいいんだぜ
  」

 「こんな凶暴な女嫌です!」

 「誰が凶暴なんだ!」

 「では、アスラン以外は撤収!」

 「色々、気を使ってもらってすまん」

ランボー(古い)のような逞しい男性が俺に話か
けてきた。

 「あなたは?」

 「カガリの護衛をしているキサカという者だ」

 「カガリちゃんの護衛?彼女お嬢さんなんだ。
  人は見かけによらないね」

 「まあ、そんなとこだ」

その後、俺達は艦内に引き上げた。
作戦準備が忙しいからだ。
ちなみに、アスランはカガリと楽しそうに話して
いたらしい。
可愛い弟分の恋は応援しないと。
半分は俺のためでもあるけど。
一人だけアフメドという少年が泣いていたと後で
聞いたが俺は知らない・・・。  

 

作戦準備が完了して後は出発するだけなのだが、
出発命令がなかなか来ない。

 「バルトフェルト隊長、出発はまだですか?」

連絡を入れてみる。

 「ちょうど今、出そうとしていたところ。多分
  、今出発すればちょうど明け方に戦えると思
  うよ」

我々はアークエンジェルとレセップスを先頭にし
て、後ろから他の部隊が付いてくるという形で出
発した。

  


明け方、サバンナに朝日が昇る。
その景色は過去に映像で見たものより数倍も綺麗
だった。 
見とれていると、索敵担当のバート・ハイムから
敵反応の確認が報告される。

 「総員、戦闘配置。モビルスーツ隊全機発進!
  」

バルトフェルト隊からもモビルスーツ隊が発進し
て一部が後続部隊の護衛に入る。
奇襲を警戒してのことだ。
俺は今回出撃はしないでラスティーにモビルスー
ツ隊の指揮を一任する。

 「カザマ君、今回はモビルスーツで出撃しない
  の?」

 「タリアさん・・・。俺はクルーゼ隊長とは違
  うんですけど。今回は戦力が十分にあります
  から、俺一機が加わったくらいじゃ変わらな
  いと思いますよ」 

 「それも、そうかもしれないわね」

モビルスーツ隊が先行して敵反応があった位置ま
で急行する。
今回はストライクにアスラン、イージスにニコル
デュエルにラスティー、バスターにディアッカ、
イザークとシホはシグーディープアームズに搭乗
している。
ディンの小隊は念の為に地上艦の直衛に入っても
らっている。 
俺はディンを頼りにしているので戦いに行かせた
かったのだが、バルトフェルト隊が多数のディン
を出撃させたので直衛に回したのだ。

 「しかし、バスターは地上での移動に向かない
  な。機体が重くてしょうがない」

 「デュエルも同じようなものだ、ヨシさんがグ
  ゥルを用意してくれなかったら、いつまでも
  目的地につかなかったぞ」

 「イージスって地上ではスキュラが撃てないん
  ですよ。変形すると動けませんからね。地上
  に降りてはじめて気がつきました」

 「バクゥとディンは速くていいよな。代わって
  欲しいよ。でも、ストライクはまあまあかな
  」

 「贅沢抜かすな!このシグーはビームライフル
  が使えるくらいしか利点が無いんだぞ!」

 「本当ですよ、ストライクと代えて欲しいです
  」

六人で話しているうちに敵が見えてくる。
情報通りGが八機と補充があったのか?ストライ
クダガーが十三機見える。
少し離れた所では敵のジンの部隊がバクゥの部隊
と交戦を始めている。
バクゥはアークエンジェルで部品を運んで現地で
改修したので、口にビームサーベルを咥えている

バクゥが一機のジンを切り裂く場面が見えた。
ディンの部隊は上空から敵にけん制の攻撃をかけ
ている。
たまに運の悪いストライクダガーが爆散している
ようだ。

 「よーし、攻撃開始!目標はGが最優先だ!」

上からビームライフルを撃ちまくる。
敵のバスターが高エネルギーライフルを撃ち、デ
ュエルとダガーがビームライフルを撃つ。
敵のモビルスーツが反撃をするが、照準までにえ
らく時間がかかるようで、そのペースは味方の半
分くらいだった。
むしろ、傭兵部隊のジンの方がいい動きをしてい
るのだが、彼らに援護はしないようだ。

ニコル達も敵に攻撃を加えながら不思議そうな顔
をしている。

 「なんで、ジンの部隊と連携しないんですかね
  ?」

 「ニコル、それは敵のGと量産機にはナチュラ
  ルが乗っていて、ジンには傭兵のコーディー
  ネーターが乗っているからだ」

 「味方じゃないですか。連携した方が有利だと
  思いますが・・・」

 「彼らを援護したら自分達の防御が手薄になる
  し、コーディネーターなんて消耗品扱いなん
  だよ。多分」 

ニコルとアスランはこのような会話をしながらビ
ームライフルを放つと、また一機のストライクダ
ガーが爆発する。

 「アスラン!Gが最優先だろ!一番性能のいい
  機体に乗っているんだから気合を入れろ!」

叫びながらイザークがライフルを放つが、やはり
命中したのはストライクダガーであった。

 「まあ、敵の数を減らすのが優先だからな」

 「・・・・・・・・・」

正直、Gと量産機は弱かった。
スペックは高いのだが、OSの不備とパイロット
の腕で損をしているようだ。
苦戦中のモビルスーツ隊の中のバスターの一機が
不意に爆発する。

 「やった〜、グゥレイト!」

 「撃破一番はディアッカかよ!よーし、俺も!
  」

ラスティーの射撃で更に一機のデュエルが倒され
る。

結局、敵モビルスーツ隊はジンの部隊を除いて全
滅した。
傭兵は引き際を心得ているので逃げ出したのだ。
こちらの損害はバクゥ三機とディン二機だけだっ
た。 

 「おい、ラスティー!敵が弱いんだったらもう
  少し手加減しろよ。敵機がバラバラで調査す
  るのが大変なんだぞ!」

エイブス班長の怒鳴り声が格納庫に響いた。
また、Gの整備に使えそうな部品も探していたよ
うだがほとんど見つからずに機嫌が更に急降下し
た。

結局、この戦いがターニングポイントになった。
守備陣地と敵通常部隊をモビルスーツ隊と艦砲射
撃で粉砕して後に味方歩兵部隊を投入してほとん
ど被害を出さないで占領する。
地下基地にでもなっていたら苦戦していたのだろ
うが、敵にその余裕はなかったらしい。 
そして、一週間後にはケープタウン郊外にまで部
隊を前進させた。

 「バルトフェルト隊長、市街戦ですかね?命令
  なら仕方ありませんけど、個人的には感心し
  ませんね」

 「今、降伏条件をめぐって話し合いをしている
  んだよ。南アフリカ統一機構の連中も素直に
  降伏すれば、アフリカ共同体に参加できると
  あれば無理はしないだろう」

 「えらい寛大なんですね」

 「向こうさんは欧米に留学経験がある技術者や
  官僚が多数いる。新国家の建設には彼らは必
  要なんだよ。後はどれだけ自分達を高く売る
  かなんだ」

 「そんなもんですか。でも、連合軍の駐留軍人
  やその家族、在住している白人の連中は納得
  しないでしょう」

 「今、市内ではそれらの人達に対する暴動が発
  生していて治安が悪化しているらしいよ。そ
  れにね、海上の封鎖を一部解除してその情報
  を連合軍に流している」

 「すると、どうなります?」

 「彼らは逃げ出すわけだ、時間がないからほと
  んど裸一貫でね。マダガスカル島に逃げ込む
  ように誘導されて」

 「すると?」

 「あの島はユーラシアの基地があるんだけど、
  今のところ補給路だけ断って放ってある。そ
  んな補給の厳しいところに多数の何も持たな
  い人間が入ってきたら?」

 「飢えますね、普通」

 「そのあと、交渉して無血開城させるわけだ。
  犠牲が出なくて無駄が無くていいよね」

 「あなたは恐ろしい方ですね」

 「君もそのうちそうなるよ」

コーヒーを飲みながらの2人の話は終わった。


三日後、バルトフェルト隊長の予想通りにケープ
タウンは開放されて、アフリカ共同体が全国土を
回復したとの報道が世界を巡った。
地球連合は悪辣なプラントの傀儡国家と非難して
承認はせず、プラント同盟国は即時に承認した。
三月二十二日の事であった。 

 
俺達はそれから三週間ほどアフリカで残敵掃討の
任務に就いた後、カーペンタリアに修理の為に向
かうのであった。
ついでに、マダガスカル島は補給を断たれ、食料
すら足りなくなってついに無血開城をするはめに
なった事も追記しておく。


(四月十八日、プラント定例評議会)


 「それでは、定例会議を始める事にする。わか
  っていると思うが、私は今回で議長を辞任す
  る事になっている。最後の会議が実りのある
  ものである事を祈る」

シーゲル議長が開会を宣言する。

 「まずは、アフリカでの作戦が成功した事はみ
  なさんご存知だと思います。アフリカ共同体
  のアフリカ大陸占領で地球の全南半球を勢力
  圏にする事に成功しました。マスドライバー
  基地もパナマを残すのみです」

カナーバ外交委員長が状況を説明する。

 「まだ、マダガスカル島が残っているようだが
  ・・・」

アマルフィー技術委員長が懸案事項を質問する。

 「今、モラシム隊が補給路を閉鎖している。先
  のアフリカ陥落時に多数の軍人が逃げ込んで
  いるので、補給事情の悪化は時間の問題でだ
  。その後、無血開城工作を行えば良い」

ザラ委員長が軍事的観点で説明する。 

 「その後は我々の出番です。アフリカ共同体の
  了承は既に得ているのですが、あの島に地球
  在住のコーディネーター国家を建国します」

カナーバ外交委員長の発言で議員達の間にざわめ
きが広がる。

 「そんな事をして大丈夫なのかね?」

エルスマン議員が心配そうに尋ねる。

 「大丈夫です。根回しは済んでいます。地球連
  合の承認が得られないのは分かっていますが
  、同盟国は承認してくれます。それに、地球
  在住のコーディネーター団体の代表も乗り気
  です。コーディネーターは隔離せよ。ブルー
  コスモスの主張そのままではないですか」

 「次は準備を開始した。オペレーションスピッ
  トブレイクの詳細についてお願いする」

シーゲル議長がザラ国防委員長に説明を求める。 

 「実行部隊の選出は終わっている。後は六月一
  日の実行日までに部隊を集合させて攻撃する
  だけでだ。必要な物資の準備も順調です」

 「了解したが。その後の連合の行動予測は?」

マッケンジー軍需委員長が更に質問する。

 「七十五%の確立でカオシュンの奪回作戦を行
  うものと思われます。それに、先月ハワイの 
  パールハーバーに太平洋艦隊の司令部の移動
  が確認されています」

ザラ委員長は連合軍の情勢を説明する。

 「守りきれるか?」

シーゲル委員長は心配そうだ。

 「日本国が自衛隊を援軍に出してくれます。後
  は台湾海軍とカオシュン駐留軍と援軍で迎え
  撃つので大丈夫です」

ザラ委員長は自信ありげに答えた。 

 「カオシュンが狙われるまで日本の参戦は秘密
  なんですね。でも以外でした。日本は大西洋
  連邦と仲が良いですからね」

エザリア議員は意外そうな顔をする。

 「国家に真の親友なんていませんよ。東アジア
  共和国に加入していた時にそれを嫌になるほ
  ど経験したようですよ」

日本にどうして自衛隊があるのか?
それは、東アジア共和国に加盟した時に時の首相
が憲法では自衛隊は戦力では無いといって解散を
拒否したからだ。
その後、東アジア共和国軍は内乱鎮圧任務が多く
、日本人は嫌悪してしまい多くの人が自衛隊に入
るようになっていた。
「スズキ部長」は例外なのだ。


 「そして、それが失敗した場合にオーブに手を
  打ってくる可能性があると?」

アマルフィー委員長が次の予想を聞いてくる。

 「オーブのマスドライバー施設は世界でも有数
  の規模です。それと、モルゲンレーテなので
  すが。最近、ナチュラルでも高性能を発揮す
  るモビルスーツを開発したようです。機体の
  スペックは例の連合の量産期の二十%増し位
  らしいのですが、OSが優秀でジンと遜色な
  い性能を発揮するようなのです。天才的なプ
  ログラマーがいるらしいと情報ですが・・・
  」

カナーバ委員長がオーブの戦力について説明する

 「連合は欲しがるだろうな。そのモビルスーツ
  と天才プログラマーは。うちにヘッドハンテ
  ィングしたいくらいだ。連合の事だから誘拐
  でも企んでいる可能性があるな」

 「それを恐れてなのか、彼のいや、彼なのかも
  わかりませんが、情報が手に入りません。か
  なり、厳重に警護してるみたいです」

 「そのままオーブで秘匿していて欲しいな。も
  し、連合に渡ったら事だしな。最悪、暗殺ま
  で考えなければばらないがそれはちょっと嫌
  だしな」

カナーバ委員長とアマルフィー委員長のやりとり
が終わった。

 「それで、オーブにはやはり傭兵部隊の派遣を
  ?」

 「それもするが、公海上で偶々カーペンタリア
  を出て偵察任務についていた潜水艦部隊が発
  見した連合艦隊を攻撃しても不思議はあるま
  い」

 「ありませんな。戦争中はよくある事です」

 「エルスマン議員にわかって貰えて幸いだ。オ
  ーブは最後まで中立を保ってもらいたいから
  な」

ザラ委員長が説明を終えた。

 「それで、アマルフィー技術委員長。連合のモ
  ビルスーツが一部ながら登場したみたいだが
  」

 「今の所はパイロットとOSが未熟なのでそれ
  ほどの脅威ではありません。シグーディープ
  アームズを少量ずつ各部隊に回しているので
  、フェイズシフト装甲の機体がきても大丈夫
  です。一部鹵獲した機体もあってそれを直し
  て使っている部隊もあります。それに、量産
  機であるストライクダガーは実体弾でも破壊
  できるのでそれほど問題は無いようです。フ
  ェイズシフト装甲は宇宙空間でなければ生産
  できないので量産機に回すのは難しいでしょ
  う」 

 「我々の方はどうなのだ?」

 「まず、ゲイツですが試作機が完成しました。
  後は量産できるように手を入れればラインに
  まわせます。後Gですが、デュエルとバスタ
  ーを量産する事が決まりました。去年、クル
  ーゼ隊が鹵獲した輸送艦群の中にフェイズシ
  フト装甲の材料がありまして、それを使うと
  結構な数の機体が量産できます。あの輸送艦
  隊が無事に地球についていたらと思うとぞっ
  としますね。我々にもまだツキがあるようで
  す」

 「そうか、我々はついているか。では、最後に
  来月最初の会議の前に議長選挙がある。私は
  平の議員に戻るからあまりいじめないでくれ
  よ。では、閉会だ」

シーゲル議長の言葉で議会は終了した。


(同時刻、ビクトリア基地)


残敵掃討任務を終えた我々はカーペンタリアに向
かう事になった。
インド洋は制海権をめぐって熾烈な戦いが続いて
いる。
インド沿岸のマドラスとセイロン島には大西洋連
邦インド洋艦隊が戦力を増強しており予断を許さ
ない。
戦力は十分に整えるべきである。
そこで、我々はアフリカ方面軍司令長官に出世し
たバルトフェルト隊長にお願いをして補給を融通
してもらった。
まず、ディンは全機を改良機に代えてもらった。
これで、ビームサーベルは使えるので多少は安心
だ。
それと、ケープタウンで連合が遺棄していったデ
ュエル2機とバスターを1機貰った。
普通は破壊して退去するものなのだが、こいつは
無傷で確保されたようだ。
他に、ストライクダガーが十機ほど確保されいる

これは本国の技術部に二機ほど送って、後は自分
達で運用するらしい。
バルトフェルト隊長は独自にナチュラルでも使え
るモビルスーツを作り上げてアフリカ共同体に提
供するつもりのようだ。
本国ではナチュラル用のOSは開発しないので、
自分達で開発するしかないのだ。
これには、アフリカ共同体の技術者やプログラマ
ーも協力しているらしい。
独断専行のような気がするのだが、シーゲル議長
とザラ委員長の許可はすでに取っているようだっ
た。
それと、シグーはもう必要ないので戦闘で破壊さ
れた事にしてビクトリア基地に置いてきた。
貰ったモビルスーツの代金でもある。
出発準備が終了して、バルトフェルト隊長にお別
れを言いに行く。

 「長い間お世話になりました。また派遣された
  らよろしくお願いしますね。司令官殿」

 「あ〜あ、もう自由に動けないじゃないか。仕
  事も増えるし最悪だね」

 「本当に遊びに出掛けないで仕事真面目にやる
  んですか?ダコスタさんにまた迷惑をかける
  んじゃないんですか?」

 「そんな事はないよ・・・多分・・・」

 「そんな、司令官なんですからちゃんと仕事し
  てくださいよ」

ダコスタさんは心配そうだ。

 「そうだ!大変な事を忘れてた」

 「なんです?」

 「君達の任務が変わったんだよ」

 「どういう風にです?」

 「お客さんを届けて欲しいんだ。オーブに」

 「オーブにですか?でも、そろそろこの艦も本
  格的にメンテナンスしたいんですよね」

 「それは、モルゲンレーテでやってくれるから
  大丈夫だよ」

 「中立国が他国の戦艦の修理をしていいんです
  か?」

 「政治の世界は色々あるんだよ」

 「わかりました。詳しい事情は聞きません。お
  客さんをオーブへ連れて行きます」

 「でも、気をつけてね。君達注目されてるから
  」

 「連合に目の仇にされてます?俺達」

 「されてるね。ここでは大活躍だったじゃない
  」

 「わかりました。気をつけます」

 「もう一つ、たいした事じゃないけど」

 「なんです?」

 「先日、捕虜交換があったんだよ」

 「こんな時期に普通やります?」

 「やったんだよ。それで、アークエンジェルの
  乗組員や(エンデュミオンの鷹)が指名され
  て戻ったらしいよ」

 「クルーゼ隊長が大喜びですね」

 「敵だけど、同情したくなるよね(エンデュミ
  オンの鷹)に。それに、僕はクルーゼが嫌い
  だし」

 「意外と、いい人でしたけどね。優秀だし、例
  の出撃グセが無ければ尚いいんですけど」

 「僕も本当はモビルスーツに乗りたかったんだ
  よね。(ラゴゥ)という新型機を用意してた
  んだけど使う機会がなかった。これからはも
  っと無いだろうしね。アイシャと2人で乗り
  たかったな」

 「閲兵式の時にでも乗ってくださいな。では、
  そろそろ時間なので失礼します。アイシャさ
  んとダゴスタさんによろしく」

 「また、応援頼むよ」

バルトフェルト司令官に別れを告げてアークエン
ジェルに戻ると、意外な人物が待っていた。

 「オーブまで連れてってもらうカガリ・ユラだ
  よろしく」

 「護衛のレドニル・キサカだよろしく」

 「タリア艦長どういう事?」

 「私が聞きたいです」

 「バルトフェルト司令官め、謀ったな。まあ、
  しょうがないか。カガリちゃん、キサカさん
  。よろしくね」

 「カガリちゃんは止めてくれ」

 「つれないなカガリちゃん。アスランに面倒み
  さすね」

 「余計な事はいい・・・」

顔が赤かったので説得力は無かった。

 
こうして、オーブに向けて出発した俺達はこれか
らどうなるのか?
カガリちゃんは何物なのか?
それは、誰にもわからなかった。 

 
       あとがき

運命の12巻を明日借りにいきます。
あらすじはだいたい知ってるんですけど後半は特
にひどいらしいですね。
友達が言うには、Zの設定を少量パクっているけ
ど、話の最後の部分は前作のSEEDをそのまま
パクってると話しておりました。
ラクスが独立勢力になってオーブと一緒にプラン
トの議長を打倒する。
あんまり前作と変わらない・・・。
しかも、シンは結構好きなキャラなんですけど主
役じゃないみたいだし、第3部のオープニングが
ストフリに・・・。
弟はあまりのひどさに見るのを止めてしまった。
んなもんで、私の作品に運命は存在しません。・
・・と思います。
この戦争が終われば大規模な戦争は暫らくおこら
ない政治体制にします。
プラントが大分有利に書かれていますが、ここま
で上手くやっても戦力比は生産力・人口・技術力
すべて込みで連合7:プラント3くらいです。
次回の更新は未定です。 

 


   

 

  

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