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「これが私の生きる道!出世編?3(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-01-27 14:26/2006-05-05 11:35)
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(事件の翌日、プラント緊急評議会会場)

今、プラントでは緊急評議会が開かれていた。
議題はヘリオポリスコロニー崩壊事件への対応と
、クルーゼ隊からの初回報告書の確認であった。

シーゲル議長は開会を宣言して、責任者であるザ
ラ委員長の報告を促す。

 「ザラ国防委員長。簡単な状況の報告をお願い
  する」

 「一月十日午前十時、クルーゼ隊所属のモビル
  スーツ隊と特別陸戦隊がヘリオポリス内のモ
  ルゲンレーテ社に突入して大西洋連邦のモビ
  ルスーツを奪取。その時に偽装した護衛機甲
  部隊と歩兵部隊と交戦してこれを撃破しまし
  た。同日、午後四時大西洋連邦の新造戦艦を
  確認後、コロニー内部へ逃走した為に、モビ
  ルスーツ部隊で追撃して攻撃。一時間後、敵
  艦が降伏したために拿捕いたしました。以上
  で報告を終わります」

ザラ国防委員長は要点のみを報告する。

 「何か質問は?」

シーゲル議長が議員達に疑問点を尋ねる。

 「クルーゼ隊長は中立国のコロニーに奇襲をか
  けて戦闘行為を行ったようだが、もし、これ
  が事実なら国際法違反は明確だ!どうして、
  このような無謀な事を行ったのだ?」

エルスマン議員が声を荒げて質問した。
自分の息子もこの攻撃に参加していたので、他人
事ではないらしい。

 「オーブは中立国でありながら、大西洋連邦の
  現役軍人を中立国領域に匿った挙句、兵器の
  製造とその運用試験を行おうとしていたのだ
  。クルーゼ隊長はそれを防ごうとしたに過ぎ
  ない」

ザラ委員長がエルスマン議員に反論する。 

 「それならば、こちらにお任せして欲しかった
  ですね。外交ルートから抗議を行いましたの
  に」

カナーバ外交委員長がやんわりと批判的な意見を
述べる。

 「そうだな。無法に対して無法で対応でするの
  は如何なものかとも思うし・・・。もっと、
  冷静に判断して欲しかったな」

マッケンジー特別軍需委員長もカナーバ外交委員
長に賛同する。
彼は評議会の議席は持っていないが、戦時特別委
員長職を拝命していて、人口・生産力に劣るプラ
ントを軍需生産計画と人材資源配置の面から支え
ていた。
ザラ委員長曰く、「マッケンジーがクシャミをす
ると、プラントは風邪をひく」との事である。

 「しかし、困ったものだな。報告を聞くと正し
  い者が誰もいない。ザフト軍は中立国で戦闘
  行為、大西洋連邦は中立国に偽装した軍人を
  入れて兵器の運用試験、オーブはそれを知っ
  ていて黙って協力している。いったい誰が一
  番悪いのか?」

アマルフィー技術委員長が困ったように表情をし
ている。

 「オーブの反応はどうなっているのですか?声
  明等は出ているのですか?大西洋連邦の反応
  は?」

エザリア議員がカナーバ委員長に関係国の対応を
尋ねる。

 「大西洋連邦は今のところ何の声明も出してい
  ません。普段なら極悪非道のザフト軍とか言
  われるのでしょうが、珍しく大人しいですね
  。オーブからは非公式に抗議が入って来てい
  ます。大西洋連邦にも出しているようです」

 「ウズミ代表も肝が大きいというか。向こうに
  も、後ろめたい部分があるのだから黙ってい
  ればいいのに」 

これはエルスマン議員の発言だ。

 「未確認情報ですが、ヘリオポリスでのモビル
  スーツ開発を知らなかったようです。ウズミ
  代表は」

 「あれだけ大規模な計画をか?大西洋連邦の軍
  人まで入国してたんだぞ!」

マッケンジー委員長が声を荒げた。
普通の為政者ならありえない事だからだ。

 「今回の計画はサハク家とセイラン家の主導の
  ようです。元々、オーブのコロニー群はサハ
  ク家の管轄ですし、ウズミ代表が知らないの
  も無理は無いかも知れません」

カナーバ議員がオーブの事情を説明する。

 「しかし、一国の指導者が部下の行動を知らな
  かったで済ます事は・・・」

 「出来ませんから、近日中に代表を辞任するで
  しょう。弟のホムラ氏の就任が内定している
  ようです。最も、院政になるだけで実権はウ
  ズミ氏のままですが」

 「それで、具体的な解決策は?」

シーゲル議長がカナーバ外交委員長に結論を急が
せる。
話がそれて、じれてきたようだ。  

 「とりあえず、後日に敵戦艦を襲撃した時の映
  像が届く。敵戦艦がローエングリンなる主砲
  をコロニー内で発射して崩壊に導いている所
  が映ってるから、ニュース映像で世界に放送
  する。これで、大西洋連邦が悪者にされる可
  能性が高いだろう」

ザラ議員は外部への対応策を発表する。

 「外交面ではヘリオポリスコロニーの住民の死
  者と被災者に賠償金と見舞い金を支給し、コ
  ロニー再建の資金と資源を提供します。次に
  、大西洋連邦に非があるとはいえ、戦闘行為
  を行ってしまった事を正式に謝罪します。も
  う一方の大西洋連邦の方は無視します。オー
  ブとの問題が解決すれば特に問題は無いです
  し・・・」

カナーバ外交委員長も対応策を発表する。

 「しかし、正式に謝罪してしまうと向こうがつ
  けあがりせんか?」

エザリア議員は対応策の成否が心配なようだ。

 「オーブにも後ろめたい部分があるのです。お
  互いに傷を持つもの同士、穏やかにに解決し
  ますよ」

カナーバ委員長はこの策に自信があるようだ。

 「まあ、そんなところかな。カナーバ委員長、
  他に何か工作はするのかな?」

シーゲル議長はカナーバ委員長にその後の方針を
尋ねた。

 「ホムラ氏はウズミ代表の影に隠れて目立ちま
  せんが、バランス型の優秀な政治家です。彼
  を支援してウズミ氏の影響力を小さくします
  。今、デュランダル外交官をオーブに向かわ
  せていますので、彼と秘密裏に会談をさせま
  す。こちらの条件は中立の堅持と万一、他国
  に侵略された時は傭兵主体のモビルスーツ部
  隊を派遣するというものです。まあ傭兵と言
  っても、一時的に転籍させたザフト軍パイロ
  ットですが。尚、この件はザラ委員長の了承
  済みです」

カナーバが説明すると、ザラ委員長が無言で頷い
た。

 「プラントの勝利にオーブの中立は絶対条件だ
  。連合との講和の仲介者候補としても、後方
  基地化したカーペンタリア基地の安定の為に
  も」

シーゲル議長は断言する。
プラントは現在戦術的に優勢ではあるが、全世界
を占領して完全勝利を目指せるほど戦力があるわ
けではない。
連合の、特に大西洋連邦に巣食うブルーコスモス
強硬派の勢力を軍部と政府から排除して、プラン
ト融和派や中立派と講和の道を模索するしかない
のだ。
戦闘に勝利をして、大西洋連邦現政権の支持率を
落として融和派と中立派の復権を目指す。
カナーバ委員長は密かに彼らと接触はしているが
、ブルーコスモス強行派の妨害と彼ら自身が権力
を失っているという理由から大きな成果をあげて
なかった。

 「さて、話は変わるが。例の奪取した機体とは
  どのようなものなのだ?」

アマルフィー技術委員長がザラ委員長に興味あり
げに尋ねる。
まだ、彼には報告書が回っていないからだ。

 「奪取した機体は5機で、全機がビーム兵器を
  基本装備又は使用可能であり、ビームを利用
  したサーベルも装備している。更に、実体弾
  の攻撃を防ぐフェイズシフト装甲を採用して
  いるようだ。細かい性能は技術部の調査後に
  報告書を回す。次に、拿捕した戦艦は奪取し
  たモビルスーツの運用専門艦でビーム攻撃を
  熱にして排出するラミネート装甲を採用して
  いるようだ」

議員達から驚きの声が上がる。
ザフト軍の優勢はモビルスーツあってのもので、
連合軍の試作モビルスーツはその優位を崩壊させ
かねないものだからだ。

 「実体弾が効かないのでは、現在のザフト軍の
  モビルスーツでは・・・」

 「たった5機のシグーディープアームズでしか
  対応できません」

アマルフィー技術委員長から絶望的な答えが返っ
てくる。
 
 「例の戦艦のラミネート装甲は?」

 「そちらはなんとかなる。現にジンの部隊で対
  応可能だったのだから。例のフェイズシフト
  装甲装備のモビルスーツが護衛に入らなけれ
  ばの話だが」

 「対応策としては、フェイズシフト装甲が効か
  ないビーム兵器装備の機体の量産か。候補は
  ?」

ザラ委員長がアマルフィー委員長に尋ねる。
 
 「ゲイツという試作機が後三ヶ月でロールアウ
  トします。元々、ビーム兵器搭載予定の機体
  でしたのでビームサーベルが使えるように改
  修すれば大丈夫ですし」

 「もう少し早めに完成できないのか?」

 「急がせますが、一ヶ月の短縮が限界です。そ
  れよりも、繋ぎでシグーディープアームズを
  量産します」

 「フェイズシフト装甲は使わないのか?」

 「詳しい事は実物を見ないとわかりませんが、
  特殊なものなので、量産コストを考えると頭
  痛の種になると思います」

 「一部のエース専用のカスタム機としては?例
  の五機を量産するという手があるしな」

 「これも、概略だけで判断しますと五機の内量
  産の可能性があるのが、遠距離射撃能力に優
  れた通称バスターと遠近攻撃力のバランスが
  取れている通称デュエル、この2機のみです
  。格闘戦を重視していて、ミラージュコロイ
  ドという姿を消す機能を装備しているブリッ
  ツなる機体は特殊任務用で少数生産が限界で
  すし、手足にビームサーベルを装備可能で、
  MA体型に変形するとスキュラという大型砲
  が撃てて通信機能にも優れたイージスという
  機体はもっと量産困難です。最後に攻撃距離
  にあわせて装備を付け替えられて五機の中で
  最も高性能のストライクという機体は一機量
  産する資金と材料でデュエルとバスターなら
  三機は量産できるとの報告です」

 「とりあえず、シグーディープアームズとゲイ
  ツが最優先で、後は残りは五機をくわしく調
  べてからという事だな」

アマルフィー技術委員長とその他の議員達の会話
は終了した。

 

 


(同時刻、月プトレマイオス基地内)

 「ハルバートン少将。今まで、お世話になりま
  した。新しい任地でもお元気で」

 「コープマン准将、君にジョークの才能があっ
  たとはな。今日、はじめて気が付いたよ」

 「そんな事をおっしゃいますな。昇進しての異
  動ではありませんか」

 「どうせ、サザーランド大佐の企みだろう。リ
  オデジャネイロ駐留軍司令官か。毎日、ゲリ
  ラの襲撃に怯えて楽しい日々が始まるな。し
  かも、まったくの畑違いだ!」

 「そこで踏ん張れば、またチャンスも生まれま
  すよ」

 「だったら、いいがな。ヘリオポリスの崩壊と
  アークエンジェルとGの全機奪取、コロニー
  のシャフトに陽電子砲をぶちかますアークエ
  ンジェルの映像の公開。首でも文句は言えな
  いところをサザーランド大佐の温情に感謝だ
  な。しかも、モビルスーツ量産計画推進時に
  は凍結されていた定時昇進が今になって解除
  されるというオマケまである始末だ!まった
  く、軍上層部の連中は!」

 「しかし、情報があっけなく漏れましたね」

 「中立国で機密の保持は非常に困難だ。スパイ
  の潜入を防ぎにくいからな。初めから技術者
  を抱え込んでここの軍事工廠で開発させれば
  良かったのだ。開発費をケチる為に、共同開
  発にするから・・・」

 「これからモビルスーツの開発計画はどうなる
  のでしょうか?」

 「中止は無いだろうが、規模は縮小されるだろ
  う。アラスカで量産する為の資材を載せた最
  大規模の輸送船団はクルーゼ隊に襲われて全
  滅してしまったからな。思えば、あれがケチ
  のつき始めだったらしい。月で量産は開始し
  ているが、こちらは、艦艇の量産が忙しいか
  らな。そんなに手は回せない」

 「そうなりますと、サザーランド大佐の方針が
  規定のものになると・・・」

 「そうだ、モビルスーツを搭載可能の戦艦と正
  規空母の少数生産。そして、MA搭載用の改
  装空母の大量生産と対モビルスーツ用に防御
  火器を多数搭載した軽巡洋艦と駆逐艦と護衛
  艦の量産。MAはビーム兵器の搭載とスピー
  ドを上げる改良をして主力として量産する。
  これで戦力数を3倍にして数で押していくら
  しい。そう計算通りになればいいが」

 「私は大丈夫だと思いますが」

 「まあ、それで勝利できれば万々歳さ。では、
  コープマン第八艦隊司令長官殿。後はよろし
  く」

権力闘争に敗れた男の最後の挨拶であった。

 

 
(同時刻、大西洋連邦首都ワシントンアズラエル
 財団理事室内) 

 「と言うわけで、ハルバートン提督は左遷され
  てしまいましたとさ。ちょっと、オーブでお
  しゃべりをしただけなんだけどね」

おどけた口調で金髪の30代後半くらいの男性が
話した。

 「まあ、彼はコーディネーター融和論者ですか
  らな。少し南米のアマゾンでゲリラと戯れて
  くればいい、そうすれば我々の苦労もわかる
  というものです。あいつらを焚きつけている
  のはコーディネーターなのですから」

銀色の短髪で唇が紫色の男が続けて話した。

 「ところで、彼から取り上げたモビルスーツの
  開発計画はどうなっています?」

 「例のGの内、デュエルとバスターは十機ずつ
  ほど完成しています。後、簡易量産タイプの
  ストライクダガーの量産も間もなく開始され
  ます。問題はまだOSが不完全でジンの60
  %ほどの動きしか出来ないところです」

 「OSですか。やっかいですね。開発陣にハッ
  パをかけさせないといけませんね」

 「Gが奪取されなければデータが収集出来たの
  ですが」

 「あの計画は潰す事が決まっていたんですから
  しょうがないですよ。それよりも、例の計画
  の方をお願いしますよ」 

 「わかりました」

二人の男の密談は終了する。
ヘリオポリス襲撃事件は各地で様々な変化を巻き
起こしていた。

 

 

 
(同時刻、ヘリオポリス崩壊宙域) 

 
 「もう一機そちらにあるぞ!そっちのはダメだ
  !完全に壊れていて中の人間は全員死んでい
  る!」

俺達は崩壊したヘリオポリスで脱出ポッドの回収
を行っていた。
壊れていないものは救助が来るまで耐えられるが
、アークエンジェルの砲撃とコロニーの崩壊で傷
ついたポッドは早く回収して救助しないと中の人
間が死んでしまう可能性があったからだ。

俺はこの救助作業をクルーゼ隊長に直訴して了解
を取っている。
初めは拿捕した戦艦の曳航作業の準備が忙しい為
に断られると思っていたのだが、以外にもあっさ
りと了解されていた。

ある程度作業を行った後、イザーク、ディアッカ
、ラスティーと交代する。
ニコル、アスランとヴェサリウスに引き上げると
、アークエンジェルの一部の幹部要員が連行され
ている場面に出くわした。
艦橋要員と整備関係の人間が数人と噂の「エンデ
ュミオンの鷹」もいた。
MAのパイロットは彼以外全滅したらしい。
例のモビルスーツのパイロット達は搭乗前に戦闘
に巻き込まれて全滅。
戦艦の乗組員も艦長以下幹部のほとんどが死亡。
残っていた最高責任者が少尉という信じられない
事態になっていたようだ。
そして、もう1つ信じられない事が・・・。
軍属用の軍服を着た少年少女が、数人いたのだ・
・・。

 「お兄さん・・・?」

 「兄貴・・・。」

 「アスラン・・・、ヨシヒロさん・・・」

 「ニコルさん・・・」

 「何でお前達がいるんだ!おい!連合の軍人共
  !どうして民間人を軍艦に入れたんだ!?」

頭に血が昇った俺は、一番近くにいた金髪の軍服
を着崩した青年の胸倉をつかむ。

 「副隊長!捕虜への暴力は!」

俺の激情振りに慌てたニコルが止めに入った。 

 「すまない、頭に血が昇っていた。謝罪する」

 「いや、いいさ。こちらに非が無いわけじゃな
  いんでね。実はおたくらの襲撃後、残った物
  資とモビルスーツの武器やパーツを回収する
  ためにモルゲンレーテに降りたら逃げ遅れて
  いた彼らがいてね。作業を見られてしまった
  ので、軍事機密の保護の為に少し拘束させて
  もらったのさ」

まあ、軍人だからそう判断するかもな。
俺でも、そうするかもしれないし。

 「では、彼らはこれで無罪放免だな」

 「ところがそうも行かないんですよ」

シホがいつの間にか隣にいて俺の言葉を否定した

 「今、クルーゼ隊長のところへ報告に行ってき
  たんですけど、彼らは戦闘行為をしていたよ
  うです。何でも、人手が足りなかったので一
  時的に軍属にしたみたいで・・・。拿捕艦の
  コンピューターの人員名簿に記録が残ってい
  ました」

それで、軍服を着ていたのか。 
いくら、人手不足だからって無茶をする。
また、ものすごく腹が立ってくる。

 「ここの最高責任者は誰だ!」

 「一応、おれが最上級者なんだよね。大尉なも
  ので。俺の名ははムウ・ラ・フラガ大尉だ。
  よろしくな!それで、お前さんの名前は?」

捕虜になっててよろしくもないのだろうが、彼は
歴戦の勇士らしく、特に怯えたり狼狽している様
子も無い。
さすがだと思った方が良いのだろうか?

 「(エンデュミオンの鷹)も地に落ちたものだ
  な。軍務経験もない少年少女を盾にして。俺
  はクルーゼ隊副隊長ヨシヒロ・カザマだ」

 「へー。あんたが(黒い死神)ね。以外と若い
  んだな。まあ、直接対決した事はないけど」

 「あんたの相手はミゲルとうちのクルーゼ隊長
  に任せている。俺は集団で袋叩きが大好きだ
  からな」

 「ミゲル?ああ、(黄昏の魔弾)ね。彼は強い
  よな。何回も死にそうになったよ。それと、
  クルーゼは本当にしつこいよな」

すいません、否定できません。
敵のパイロットながら、俺は心の中で彼に謝る。 

 「それでさ、責任逃れになってしまうけど、俺
  は最上級者でもあの船の所属じゃ無かったし
  、MA隊の指揮が忙しくて艦内の事をよく知
  らないんだ」

 「なるほど、それで艦内の責任者は?」

 「私です。ナタル・バジルール少尉です」

ショートカットの女性将校が名乗りを上げる。
少しキツそうだが、美人でスタイルも良いようだ

最も、俺には苦手なタイプの女性ではあるが。

 「どうして、彼らを軍属に?」

 「生き残る為です。それで、彼らも納得してく
  れました。工業カレッジの学生でしたので、
  スキルも高めでしたし。電子書類ではありま
  すが、了承のサインも貰っているので契約と
  しても有効です」

彼女真面目で、規律や規則に厳しそうだよな。
やる事に隙が無い。 

 「そうか、事情は大体了解した。アスラン!今
  の会話は記録して担当に提出しておいてくれ
  。それと、捕虜の皆さんを独房へご案内する
  ように」

おちゃらけていても、任務は忘れない。
あんな会話でも情報が結構入っている。

 「お兄さん!」 

 「すまないな、俺はザフトの軍人でお前達は敵
  軍の捕虜なんだ。お前達バカな事をしたな・
  ・・。おい!彼女達も独房へ早く連れて行け
  !」

俺は心を鬼にして担当の兵士に命令する。

 「さて、クルーゼ隊長に報告に上がるぞ。シホ
  はもう(フユツキ)へ戻るだろう?」

 「はい。あの、ヨシヒロさん・・・」

 「俺も辛いんだ、わかってくれよ・・・。それ
  じゃあな。シホ」

俺達はシホとわかれて艦橋に上がった。

 

 
 
 「イザーク達が最後のポッドを回収したようだ
  。もうそろそろ戻ってくるだろう」

クルーゼ隊長に報告に行った俺はヘリオポリスの
民間人の救助情報を教えて貰った。
 
 「しかし、4機も損害を出すとは・・・。不意
  を衝かれたとはいえ俺の責任です」

 「それを言うならば、私に一番の責任がある。
  オロールがかなり落ち込んでいたので、後で
  慰めておいてくれるとありがたい」

 「わかりました。ところで、どうして一部の捕
  虜をこの艦に?(リベッタ)に全員収容出来
  ますよ」

 「一応、念のためだ。彼らは新造戦艦とモビル
  スーツに詳しいからな、分散して置いておき
  たいのだ。それに、君の妹さん達は君が面倒
  を見た方がいいだろう」

 「公私混同です。彼女達は軍属で捕虜。ただそ
  れだけです」

 「君はたまに物凄く真面目になるな。彼女達は
  特殊な事情で戦闘に巻き込まれたと私は理解
  している。本国で多少の尋問はあるだろうが
  、早々に釈放されるように掛け合って見るつ
  もりだ」

クルーゼ隊長が思いっきり優しい!
何か怪しい!
いや、せっかくの好意だ。
感謝しなければ。

 「ありがとうございます。彼女達は責任をもっ
  て面倒を見ます」

 「よかったですね副隊長」

 「ほっとしました」

アスランとニコルが喜んでくれた。
一時的な出会いだったけど、妹達を心配してくれ
て嬉しかった。


クルーゼ司令の元を辞した後、のどが渇いたので
食堂に行く事にした。
レイナ達にも何か持って行こうと思い中に入ると
、ポッドから救出された民間人で溢れかえってい
た。
多分、二百人はいるだろう。
彼らは、オーブの救出艦艇が来るまでここに待機
する事になっている。
突然、赤服の軍人が三人も入ってきたので驚いた
ような目で見つめられる。
日頃見掛けないザフトの軍人が珍しいようだ。 
俺達は適当に飲みのを頼んでからトレイに載せ、
食堂を出ようとすると、見張りの兵士と赤い髪の
少女が言い争いを始めた。
どうも、一方的に少女の方が怒鳴っているようだ

 「ちょっと!なんで一人でトイレに行っては駄
  目なのよ!」

 「一人で出歩いて重要区画に紛れ込まれると大
  変だからだ。ついて行くといっても入り口で
  待っているだけだ、中には入らないよ」  

 「そんなのわからないわ!大体コーディネータ
  ーのあんたに襲われでもしたら私は抵抗出来
  ないのよ!」 

 「そんな事をするか!軍規違反で捕まってしま
  う!」

 「そんな物、誰も守ってないくせに!パパが言
  ってたわ。コーディネーターは汚いって!」

 「お前!いい加減に!」

兵士が彼女の暴言にキレ掛かっている。
まずい!止めに入らないと。

 「お嬢さんよろしいですか?」

 「あんた誰よ!」

 「私はクルーゼ隊副隊長ヨシヒロ・カザマです
  。何かお困りのようですが」

 「トイレに行きたいんだけど、そこの男がつい
  て来るって言うのよ。私はそんなのいや!」

 「わかりました。若い女性にはちょっとつらい
  問題ですね。女性兵士を配置しますので、彼
  女に用を頼んでください。それでよろしいで
  すか?」

 「それでいいわ」

どうやら納得してくれたようだな。

 「私はフレイ。フレイ・アルスターよコーディ
  ネーターなんて怖くて嫌なんだけど、あなた
  は紳士的なのね」

 「うーんそうかな?礼儀正しいのとそうでない
  のに、ナチュラルもコーディネーターも関係
  ない気がする」

 「そうかしら?あっ、女の人が来たみたい。私
  行くわ。ありがとう」

 「いえいえどういたしまして。フレイさん」

さて、時間を食ってしまったな。
今度こそレイナ達のところに・・・。

 「おい!お前待て!」

えっ、俺よばれてる?
振り返ると、金髪の男の子?
顔は綺麗だし、声変わりしてないみたいだけど・
・・が立っていた。

 「えーと、何か御用で?」

 「お前、少しくらい私達に親切にしても無駄だ
  からな!」 

 「えーと、どういう事かな君?」  

 「お前達ザフト軍はこの事態をわかっているの
  か?中立コロニーに攻撃を仕掛けただけじゃ
  なくてコロニーを完全に破壊してしまったん
  だぞ!いったい何人の死者が出たと思ってい
  るんだ!」

彼の言う事は正論だな。
俺達が一番悪いのは事実だ。

 「確かに、攻撃をかけた俺達が一番悪いと思う
  。しかし、中立国を語りながら戦争をしてい
  る大西洋連邦の要請で武器を作り、現役の軍
  人をひそかに入国させて、運用試験をする場
  所まで提供しているオーブも正しいとは言え
  ないだろう?」

 「あれは・・・。私達は知らなかった事で・・
  ・」

 「それでも、君達の国の指導者がやっていた事
  だ。彼らを支持している君達にも多少の責任
  がある」

 「しかし・・・」

 「ここでこれ以上言い争っても意味はない。私
  も仕事があるのでこれで」

飲み物を載せたトレーを持って退室しようとする
と、彼に再び呼び止められる。

 「おい!待て!まだ話は終わってない!」

 「いいかげんにしろ!お前も男らしくないぞ」

あっ!アスランが地雷を踏んだ気がする。 

 


 「私は女だーーーーー!」  


  
俺は地雷を踏んでしまったアスランの分のトレー
を取り上げて先に退室する事にした。

 「アスラン、ちゃんと決着つけろよ。俺達は先
  に行ってるから」

 「あの、ヨシさん助けては・・・」

 「君のミスだ。レディーに男の癖になんて失礼
  だよ」 

実は、俺も男だと思っていたけど・・・。

 「アスラン、頑張ってください」 

ニコルは切り捨てるのが早いな。

 「じゃあ、後はよろしくな」 

俺も巻き込まれたくないので、切り捨てる事にす
る。

 「ちょっと、まって・・・・・・」

 「よくも、男呼ばわりしたな!この、デコッパ
  チ!」

 「お前!人が気にしている事を!」

 「事実だろうが!」

 「お前だって、男女だろうが!だいたいお前が
  女に見えないような格好をしているから・・
  ・・・・」

この後、二人は一時間近く口喧嘩をしていたらし
い。
ちなみに、彼女の名前はカガリ・ユラと言うらし
く、アスランもあそこまで派手に喧嘩していて名
前を聞き出すとは大したものだと感心してしまっ
た。
でも、アスランがここまで感情的になるなんて不
思議な少女だな。
彼女は・・・。

俺とニコルはレイナ達がいる兵士用の部屋まで行
く事にする。
部屋の前には見張りの兵士が立っていたが、独房
でないのは、クルーゼ隊長の指示らしい。
彼女達が何かをするとは思えないというのが一番
の理由だろうが、独房はアークエンジェル組でい
っぱいらしく他にスペースが無かったようだ。
軍人達は四部屋しかない独房に男性と女性に分け
て入れられてる。
ちなみに、彼らは独房で先に捕らわれていたマリ
ュー・ラミアスと再会することになる。

 


 「飲み物を持って来たぞ」

俺達は部屋に入る。
レイナ達は男女で2部屋に分かれて収容されてい
て俺達が入ったのは女性部屋の方だ。
男性部屋の連中を呼び出して飲み物を
渡して話をする。

 「なんとなく変だとは思ったんだ。親父や母さ
  んに知らせるな、なんて言うから」

カナが俺に不審点を指摘をする。 

 「僕も父さんや母さんに知らせなくていいなん
  て、アスランに言われたから・・・」 

キラも疑問を感じていたようだ。 

 「そうか、色々すまなかったな。謝ってすむ問
  題じゃないのはわかっているんだ。俺はお前
  達を殺してしまうところだった。キラ、アス
  ランもお前を騙すつもりは無かったんだ。み
  んな俺の命令で動いていただけなんだ。許し
  てやってくれ」

俺はキラ達に頭を下げる。

 「お兄さんは軍人さんなんでしょ。仕事だから
  仕方無かったんでしょ。お父さんもお母さん
  もカナも私もみんなも無事だったから大丈夫
  。気にしないでね」

 「そうだよ、兄貴。事情があったんだろ。やさ
  しい兄貴がこんな事を理由も無くやるわけな
  いじゃん」

 「ありがとう、レイナ、カナ」

涙が止まらない。
何年も会っていなくて、先週再会したばかりなの
にこんなに気を使ってくれる。
家族ってありがたい。

 「よかったですねヨシさん」

ニコルが俺に声を掛けてくれた。

 「あの、すいません。どうしてこのような事に
  ?」

この中でリーダー格のサイが事情を聞いてくる。
俺は、軍事機密情報も含めてくわしく話した。
どうやら、ニコルは黙っていてくれるようだ。
みんな驚いた表情で聞いている。

 「おかしいとは思ったんだ。中立のオーブのコ
  ロニーで連合の戦艦が動いているし、待避ポ
  ッドへの入り口が閉じてしまって路頭に迷っ
  ていたら、軍事機密を見たからって拘束され
  るし。おまけに、死にたくなければ手伝えで
  すもん。電子書類まで用意周到に準備されて
  てサインさせられたし」

トールは息つく暇もなくしゃべり続ける。

 「君たち、何の仕事をやってたの?」

 「ミリィは艦載機管制でカズイは索敵、俺とト
  ールは火器管制の補助です。後、キラとカナ
  は整備の手伝いでレイナは食堂で戦闘食を作
  ってました」

サイがみんなの戦闘配置を教えてくれる。

 「あの、僕達の両親は無事なんでしょうか?」

カズイが一番の懸念を口にする。 
それは一番の問題だ。
もし、亡くなっていたら俺達は恨まれるだろう。
先ほどから、オーブ所属のの他のコロニーから救
援艦が到着してポッドの回収を行っているが、救
助された人員の確認には時間がかかる。
ちなみに、損傷していたポッドはこちらで回収し
て乗っていた人員はヴェサリウスで回収している
が、こちらには彼らの家族は確認できなかった。
家族が無事かどうかはもう少し時間が掛かるのだ

 「それで、俺達どうなっちゃうんですか?」

カズイが思い出したように聞いてくる。

 「君達は短時間とはいえ軍属になってしまった
  ので、一応捕虜の扱いだ」

 「えっ!じゃあ、僕達は捕虜収容所送りですか
  ?」

キラが怯えたような口振りで聞いてくる。

 「いや、あくまでも一応捕虜扱いという事だこ
  の部隊の隊長も君達の状況は了解しているか
  ら、そんな事にはならないだろう。規則上プ
  ラント本国まではついて来てもらうが、その
  後少し尋問に答えてもらえばすぐに釈放して
  もらようにする。俺も上に働きかけて必ず実
  行させるから安心してほしい」

これは俺の職を賭しても必ず実行する。
俺にはこれくらいしか出来ないから・・・。

 
そこまで話たところで、アスランが入室して来た

 「みんなの両親は無事が確認された。キラ、お
  前も両親も無事だ」

 「「「よかったーーー」」」

みんな安心したようだ。

 「アスランは情報が早いな。あの姉ちゃんとの
  喧嘩は終了したのか?」

 「カガリですか?もう、喧嘩なんてしませんよ
  。それより、ヨシさん!ニコル!俺を見捨て
  ましたね」 

 「でも、そのおかげで彼女を名前で呼べるよう
  な仲になったんじゃありませんか」

ニコル、ナイスツッコミ。

 「彼女カガリちゃんっていうのか。よかったな
  アスラン。ガールフレンドが出来て」

 「いや、俺には婚約者であるラクスが・・・」

やった!アスランがラクス以外の女性と。
このまま上手く工作すれば俺にも利益が。

 「えっ!アスラン、婚約者がいるの?」

キラがびっくりした表情で聞いてくる。

 「いるんだよ、プラント一の歌姫で笑顔の可愛
  いピンクの髪のお姫様が」

俺はキラ達に真実を教えてあげる。

 「あっ知ってる、少し前にニュースの映像で出
  てた。今のプラントの議長の娘さんでプラン
  トでは有名な歌手なんだって。連合の兵士に
  も隠れファンが増大中らしいよ」

カナ、よく知ってるな。
ん?連合の兵士にファンがいるのか?
昔の大日本帝国の東京ローズみたいなものか?   

 「議長の娘と国防委員長の息子。王子様とお姫
  様みたい」

ミリィはこの手の話題が好きそうだな。
問題はそのお姫様に、他に好きな人がいるって事
なのだが・・・。 

 「あっ、そうだ、実は、救助した人達に迎えが
  来たので帰るらしいんですよ。みなさん、お
  見送りしますか?」

アスラン忘れてたのか?

 「でも、みんなは一緒に帰れないからお見送り
  はつらいでしょう?」

自分達だけ帰れないのはつらいよな。
家族にもしばらく会えなくなるし、見送るったっ
て知り合いなんかいない可能性が高いし。

 「どうせ、部屋にいるだけですし、もしかした
  ら、知り合いがいるかもしれないしから行っ
  てみますよ」  

 「そうか?それじゃあ、許可を取るよ」  

許可を取った俺達は格納庫に向かった。


格納庫では、迎えにきた連絡艇に人が乗り込んで
いる最中だった。
みんなで知り合いを探す。
ふと気がつくとアスランがカガリと端で何か話し
ていた。
やった!アスランがラクス以外の女性と積極的に
話している! 

 「サイ!ミリィ!レイナ!カナ!」

声の方を向くと、先ほどの赤い髪の少女がミリィ
達を呼んでいた。

 「どうしてあなた達連合の軍服なんか・・・。
  それに、どうして連絡艇に乗ろうとしないの
  ?」

俺達に駆け寄ってきた少女が疑問を口にした。

 「フレイさん。彼女らは事情がありまして・・
  ・」

 「カザマさん・・・」

俺はフレイに事情を説明した。

 「そうなんだ。ねえ、みんな帰ってくるよね?
  」

 「大丈夫ですよ。可愛い妹達とその友人達です
  。俺が責任を持って送り返しますよ」

 「可愛い妹?ヨシヒロ・カザマ・・・。えっ、
  あなたレイナとカナの・・・」

 「兄です、妹達がお世話になっています。フレ
  イ・アルスターさん」

 「えっ、じゃあレイナとカナはコーディネータ
  ー?」

 「いいえ、家庭の事情で俺だけですよ」

 「そうなんですか・・・。では、私の友人達を
  必ず帰してくださいね。カザマさん」

 「お約束しますよ、フレイさん。それと、もし
  よろしければ名前で呼んでください」

 「わかりました。さっきは私って言ってました
  けど、俺の方がカッコいいですよ。ヨシヒロ
  さん」

彼女はウインクをしてサイ達の方に行く。
後で聞いたのだが、彼女はサイの婚約者だそうな

それと、少しフレイにドキドキしてしまったのは
ラクスには内緒だ。

 「ねえ、おじちゃん」

あれ?ここにはおじちゃんなんて・・・。

 「おじちゃんってば」

軍服の後ろの部分が引っ張られる。

 「えっ、俺?おじちゃんって・・・。俺、二十
  歳前なのに・・・」

振り返ると七〜八歳くらいの可愛い女の子立って
いる。

 「エルちゃん。お兄ちゃんでしょ」

隣で彼女の母親らしき人が女の子に注意していた

でも、そう言われると余計傷つく・・・。

 「おにいちゃん。あのね、助けてくれてありが
  とう。これ、お礼にあげる」

彼女は折り紙で折った花をくれた。

 「悲しい事件でしたけど、助けていただいて感
  謝している事は事実なんです。兵隊さんお元
  気でいてください」

 「ありがとうございます。その言葉だけで救わ
  れる気がします」 

 「バイバイ!お兄ちゃん」

 「バイバイ!」

親子は最後に連絡艇乗り込んでいった。

 

 


ヘリオポリス崩壊から三日が経った。
クルーゼ隊長から呼ばれて艦橋に上がると、一番
にこう言われた。

 「特別任務でホーキンス隊、ラコーニ隊、シラ
  カワ隊と合流する事になった。ある作戦でG
  を使うので貸して欲しいそうだ。ミゲルが取
  りに来るで準備して欲しい」

 「鹵獲機体をですか、何の為に?」

 「ユーラシア連合のアルテミス要塞は知ってる
  な?戦略上の価値もないので定期的に補給路
  を叩くだけで放置していたのだが、位置の関
  係上、部隊派遣が面倒でな。この際、一気に
  破壊する事になったのだよ」

 「貸して欲しい機体はブリッツでミラージュコ
  ロイドを使って、光波シールドを展開してい
  ない時に進入して奇襲をかけるという事です
  か?」

 「まあ、そういう事だ。準備の方を頼む」

 「了解」

二時間後、艦隊と接触するが、三隊合同艦隊で規
模がでかい。
しばらくして、ミゲルがやってくる。 

 「久しぶりだな、カザマ!ヘリオポリスでは大
  変だったらしいな。おっ!あれが鹵獲した連
  合の新造戦艦か。でかいなー」

 「まあ、苦労した甲斐はあったという事だな。
  お前の注文のブリッツは整備して使えるよう
  にしておいたぞ。細かいOSの設定はそちら
  でやってくれ」

 「おお!サンキュー、後はまかせろよ。アルテ
  ミス要塞は派手に落としてやるぜ。ところで
  、今お前の妹さん達がこの艦にいるらしいな
  ?」   

 「まあ、いろいろあってな。しかし、お前の情
  報網は相変わらず凄いな。どこから情報仕入
  れてるんだ?」

 「ニュースソースは秘匿しておくよ。それより
  、まだ少し時間があるから会わせろよ。お前
  の可愛い妹達に」

 「しょうがないなー。あいつらも退屈してるか
  らいい暇つぶしになるかもな、ついてこいよ
  ミゲル!」    

俺達は妹達のいる部屋にミゲルと行き、見張りの
兵士に許可を取ってから部屋に入る。

 「よう、暇してるか?レイナ、カナ、ミリィー
  」

 「お兄さん、ちょっと退屈かな?」

 「あれ、そちらの方は?」

 「こいつはアカデミーの同期で友人のミゲル・
  アイマンだ」

 「始めまして、お兄さんの大親友のミゲル・ア
  イマンです」

やけに親友を強調するな、ミゲル。 

 「始めまして、妹のレイナです」

 「同じく、妹のカナです」

 「二人の親友のミリアリアです」

 「レイナさん、アカデミー時代にお写真を拝見
  させていただいた事があります。実物はもっ
  とお綺麗だ。実は今は作戦中なのですが、終
  了次第プラントに帰ります。あなたもしばら
  くプラントにご滞在するとか。ご一緒にお食
  事でもいかがですか?」

完全にレイナ狙いでカナ、ミリィは無視らしい。
2人の機嫌が急降下する。
でも、ミリィにはトールがいるでしょうに。
女心は複雑である。 

 「すみませんが。私、お付き合いしている人が
  いますので・・・」

やっぱり振られたか。

 「マジ?」

 「本当だよ。隣の部屋にいるキラ・ヤマトって
  いうやつ」

 「えーと、カナさん、お食事にでも・・・」

 「私は姉貴の代理品か!」

ミゲルにキレイにビンタが入る。
バカな事を言うからだ。

 
一時間後、頬にモミジの付いたミゲルはOSを調
整したブリッツに乗って艦隊に戻って行った。


その後俺達はプラントへ進路をとったが、帰還途
中にアルテミス要塞攻略の報が入った。
ミゲルがブリッツに乗って奇襲をかけて、光波シ
ールド発生装置を破壊したらしい。
アルテミス要塞のガルシア司令は降伏を拒否して
再建不能になるまで完全破壊され、生き残りも少
数だった。 

 
後、補足ではあるが旧台湾のカオシュン基地がザ
フト軍の勢力下に入った。
1月7日の事であった。
この戦いは、ハイネがカーペンタリア練習部隊隊
長から前線に復帰して参加した最初の作戦である
が、ほとんど戦闘が発生していないので拍子抜け
だったと後にハイネは語っていた。
旧台湾は過去に東アジア共和国にかなり強引に吸
収された過去がある。
今回の戦争を独立の好機と考えた国民党党首蒋連
賛が台湾の独立の承認とプラントとの攻守同盟の
締結を条件にカオシュン基地とマスドライバー施
設の使用許可を認めたものあった。
ザフト軍の侵攻と共に台湾各地で蜂起した独立決
起軍が、駐留していた東アジア共和国軍を武装解
除させて戦闘は終了した。
駐留軍には台湾出身者が多数いて蜂起を支持した
為に、抵抗する余裕がなかったようだ。
ザフト軍の攻略部隊にはほとんど損失が無く。
そのまま、カオシュン基地駐留軍に名前を変えた

その他に外交面では、デュランダル外交官が日本
にをひそかに訪問。
台湾への物資の補給と、戦後日本と台湾が極東連
合を合同で建国する旨の秘密協定を結んだ。
台湾陥落後、大西洋連邦は東アジア共和国に台湾
再奪取の為の部隊の派遣を打診したが、自国のみ
での作戦実行にこだわる東アジア共和国政府の拒
絶に遭い、戦力の派遣に失敗した。

 「東アジア共和国は地球連合参加国の中で最大
  のプラント支持国家である」

大西洋連邦アルスター外務次官はオフレコでこう
発言したらしい。    

 

プラントに到着した俺は目が回るくらい忙しかっ
た。
ヘリオポリスの事件の詳細な報告書を書かなけれ
ばならないし、レイナ達の件もある。
奪取した戦艦とモビルスーツを技術部へ搬送する
ための申請も必要だ。
更に、四人のパイロットを一気に失ったので人員
補充の手続きも必要だった。
宇宙空間の戦闘において、大決戦以外で一部隊で
パイロット四人の損失は大損害で、当然、書類の
数も増えるというものだ。
最後に、一番の大仕事は軍本部に出頭して今回の
事件の処分を聞きにいくというものだった。

結局、ヘリオポリスの事件はプラントがオーブに
謝罪と補償をするという事で決着をみたらしいが
、関連部隊幹部の処分がまだ残っていたのだ。
オーブにも多少の罪があるので厳しい処分は望ん
でいないが、無罪というわけにもいかない。
そんなわけで、我々は呼び出されている。
人事部長室には以前、アスラン達の盾になれと俺
に言い放ったハゲオヤジが待っていた。

 「久しぶりだな、カザマ副隊長。それと、クル
  ーゼ隊長」

 「お久しぶりです。やっぱり、私は出世街道に
  は乗れませんでしたね」

 「そんな事はないのが・・・、処分を伝える。
  クルーゼ隊長は減給3ヶ月10%、カザマ副
  隊長はけん責処分。それと、全隊員に十日間
  の謹慎を命じる」

思ったよりも、軽いな。
俺も減給くらいはありえそうだったけど。

 「君達は今から謹慎だ。残務は軍本部預かりで
  やっておく。休暇を楽しみたまえ」

 「謹慎ではないのですか?」

 「表向きはそうだ。実際のところは、激務が続
  いて休養が取れなかったクルーゼ隊へのご褒
  美だ。本当に君達が謹慎しているかなんて、
  オーブの政府関係者は見にこないだろうしな
  。それと、カザマ君の妹さん達の件だが、ザ
  ラ委員長預かりになった。今、事情を聞いて
  いるので明日には釈放されるだろう。プラン
  トでの外出は許可されるが、監視は付くので
  我慢して欲しい」

 「ありがとうございます。ザラ委員長にカザマ
  がお礼を言っていたと伝えてください」

本当は直接お礼を言いたいんだけど、ザラ委員長
は忙しいからな。

 「では、帰るとしよう。せっかくの休暇だ楽し
  まなければな」

初めて発言したな、クルーゼ隊長。


退室した後、珍しくクルーゼ隊長にお茶に誘われ
たので、喫茶店に入って紅茶を飲む事にする。
街中であの仮面は少し周り視線が痛い。 

 「あの、クルーゼ隊長。質問があるのですが」

 「何かね?」

 「どうして、あれほどこだわっていたフラガ大
  尉に会わなかったのですか?」

 「簡単な事だよ。私は彼と対決して倒す事に意
  義を感じているのだ。捕虜になった彼に興味
  はないのだよ」

やっぱり、微妙に屈折してるなこの人。

 「では、捕虜交換で彼が連合軍に復帰しない限
  り、会う事はもうありませんね」

 「そうなのだ、私は艦隊の指揮だけしか仕事が
  無くなってしまうのだ。なんとも、張り合い
  のない事だよ」

いや、指揮だけしててくださいよ。
あなた、アデス艦長の胃薬消費量知っています?
もう話題を変えてしまおう。

 「ところで、クルーゼ隊長災難でしたね。減給
  はつらいんじゃないですか?」

 「そうなのだよ。これでは、ミサオにこずかい
  を減らされてしまう。大変な事だ」

 「ミサオさんって誰ですか?」

 「私の妻だよ、カザマ君」

 


 「えっ!」

 

 


ここは、軍人専用住宅の一角である。
レイナ達、ヘリオポリス組は尋問が終了するまで
ここに軟禁されて見張りを立てられている。
今日の内に尋問は終わり明日には釈放されるが、
オーブに帰国するまではここが仮の住居になる予
定である。
住宅は2軒用意されていて男女に別れて入れられ
ている。

 「本当に、そんな事を言ったんですか?聞き間
  違いとか」

男組の住宅にレイナ達とアスラン達が集合してい
る。
みんな、謹慎中で暇なので遊びに来ていたのだ。
お互いに自己紹介を終えたところで俺が衝撃の話
題を事実を持って乱入したのだ。

 「確かに聞いた!この耳で直接聞いたんだ!間
  違いない!真実だ!」

俺は疑いの目で見るニコルに懸命に訴える。

 「クルーゼ隊長の脳内奥さんなんじゃないの?
  」 

ディアッカがかなり失礼な事を言っている。

 「あのクルーゼ隊長がそんな嘘を言うわけない
  だろう」

ラスティーの言う事は最もだ・・・。と思いたい
。 

 「クルーゼ隊長に奥さんがいたのは驚きですけ
  ど、別に隠している様子でもないんですよね
  ?ヨシヒロさんには話したわけなんですから
  」

シホが冷静に的確な推論を述べる。

 「考えてみれば、俺達クルーゼ隊長の事何も知
  らないよな」

ラスティーの意見にアスラン達が無言で頷いた。

 「あんまり自分の事は話されないんだ。それと
  、独特の雰囲気のせいで家族の事を今まで聞
  いた事がなかった。変人だから独身だと勝手
  に思っていた」

 「何気に失礼な事を・・・。アデス艦長!どう
  してここに?」

いつの間にか横にアデス艦長がいてニコルが驚い
ていた。

 「ニコルよ。私は日頃、クルーゼ隊長の犠牲に
  なっているのだ。この話に加わる権利がある
  」

その意見に全員が納得する。

 「あのスイマセン。クルーゼ隊長とはどんな人
  なんですか?」

サイが俺達に最もな質問を投げかける。

 「私達の部隊の指揮官だ。有能な部隊長であり
  、モビルスーツのパイロットとしても超一流
  だ」

 「へぇ、すごい人なんですね」

トールが感心しているが、字面だけなら確かに凄
い人だ。

 「しかし、仮面をつけている」

今まで発言が無かったイザークが爆弾を投下した

 「「「「「仮面?!」」」」」

レイナ達は驚きの声をあげた。

 「あの、正規の軍人の方が仮面なんてつけてて
  いいんですか?」

キラの疑問はもっともな事である。

 「軍法では、軍服の正式な着用を義務づけてい
  るけど、仮面を付けてはいけないとは書かれ
  ていなかったような気がする」

 「アスラン・・・。普通は仮面をつけてはいけ
  ませんなんて書かないよ。常識の問題だもの
  」

キラは的確なツッコミをアスランに入れた。

 「しかし、クルーゼ隊長の奥さんか。どんな人
  だろう?」

イザークはクルーゼ隊長の奥さんの方に話題を変
える。
 
 「仮面をしてたりしてな」

ディアッカが茶化して言うが・・・。

 「あなた、お帰りなさい。お食事の準備が出来
  ていますからお風呂に入ってください(仮面
  を付けている)」

 「どうですか、今日の料理の出来栄えは?(仮
  面を付けている)」

 「あなた、明日の休日は庭の手入れをお願いし
  ますね(仮面を付けている)」

 「あなた、今日はもう寝ましょう。(仮面を付
  けている)」

全員の頭の中に同じような光景が思い浮かび・・
・・・・。

 「「「わははははっはははははは!!」」」

全員大爆笑だった。
特に、ラスティーとシホは部屋の隅で引きつった
ような声をあげている。
ツボにはまったようだ。


ひと段落して・・・。

 「よし!お宅訪問だ!」

俺達の明日の予定は決まった。

 
翌日、レイナ達の拘束は解かれ監視付きではある
が自由に外出できるようになった。

クルーゼ隊長のお宅訪問を計画した我々だが、問
題が1つあった。
彼の住所がわからないのだ!
いきなり計画は躓きを見せたが、解決策は簡単に
見つかった。
キラがそのスキルを駆使して軍本部の人事課の住
所録のデータにアクセスして調べてくれたのだ。

 「あの、直接人事課で照会すればいいのでは?
  これは違法ですよ。軍法会議ものですよ。せ
  っかくキラさんの拘束も解けたのに」

シホはあくまでも正論を述べるが。

 「大丈夫、ここのセキュリティーくらいでは証
  拠を残すようなドジはしませんから」

キラは自信満々に答え。

 「俺達は一応、謹慎中なんだ。軍施設に行くわ
  けにはいかない」  

と屁理屈でごまかしておいた。

 

住所もわかったので出かけようとすると、みんな
の様子がおかしい。

 「あれ?行かないのかみんな?」

 「それはな、俺の聞いた噂を教えたからだ」

同じく偶然休暇中のミゲルが入ってきた。

 「どういう事?」 

 「クルーゼ隊長の仮面の下の素顔と私生活を探
  ろうとする者は何故か戦死してしまうのだ」

 「本当か?それ」

 「実際に知っているだけで、5人はいる」

みんな明らかに引きはじめた。

 「あっそうだ。今日はレイナとデートの約束が
  」

キラがレイナを連れて出ていく。

 「俺は急に用事が」

 「私も突然用事が」 

ラスティーとシホは一緒に出ていった。
どうせデートだろ。

 「私はトールとデートに・・・」

 「カズイと買物の約束が・・・」 

 「イザークとディアッカと出かけるから・・・
  」

噂を広げたミゲルまでもが出て行ってしまう。

 「そういえばアデス艦長は?」

 「家族サービスだそうです。俺はラクスがオフ
  になったので遊びに行きます」

アスランにまで裏切られた・・・。

 「カナとニコルは残ってくれたか。一緒に行こ
  うな」

 「兄貴・・・。私、ニコルが楽譜を買いに行く
  のに付き合うから・・・・・・」


 「俺一人かよ!」

俺は一人きりになってしまい、裏切った連中に恨
みの声を上げた。

 
調べた住所を探して町中を歩いて行くと、場所は
歩いて5分圏内の一軒家であった。
手ぶらはまずいので、クルーゼ隊長の好きな日本
酒を買って行くことにする。
玄関でどう挨拶したものかと迷っていると、庭の
方から声がかかる。

 「カザマ君どうしたのだ?何か私に用かな?」

サンダル履きでタオルを首にかけたクルーゼ隊長
がいる。
ものすごくシュールな光景でどうやら、草むしり
の途中だったらしい。 

 「ええと、近所まで来たのでご挨拶をと思いま
  して」

 「そうかね。まあ、上がりたまえ」

家に上がらせてもらい、リビングに通される。
ソファーに座っていると、三十歳前後くらいの女
性がお茶を運んで来た。
そんなに美人ではないが、やさしい感じの女性だ

 「初めまして、カザマ君。ラウの妻のミサオで
  す。あなたの事はラウからよく聞いているわ
  」

カザマ君か、二十歳前だし別に腹も立たないな。

 「いいえ、クルーゼ隊長には日頃お世話になり
  っぱなしで」

 「ラウがお世話なんてしてるの?アデス艦長の
  ように迷惑かけてるんでしょ」

鋭いなこの人。

 「いいえ、そんな事は・・・」

 「まあいいじゃない、今はオフだし。もし、ス
  トレスで体調崩したら言いなさい。診てあげ
  るから。これでも私医者だし」

俺よりもアデス艦長を診てあげてほしい。
言えないけど・・・。 

 「クルーゼ隊長とは恋愛結婚で?」

 「うーん、昔から知り合いだったけど、腐れ縁
  ってやつね」

 「幼馴染ですか?」

 「ちょっと違うけど」

この後一時間ほどお話をしてからお暇させていた
だいた。
この事実は衝撃的だ、みんなに報告しないと。

 

 
 「ラウ、彼がとても気になってしょうがないの
  ね」

 「初めは仲間に引き込もうと思ったのだがな、
  私が引き込まれてしまったのだ」

 「不思議な子ね。優れてはいるけど、特別なも
  のは持ってなさそうなのに」

 「人が集まってくるのだ。後10年ほど観察し
  てみたいものだ」

 「人類の滅亡計画はどうするの?私は付き合っ
  てあげるって言ってるでしょ」

 「今は凍結だ。十年経てば私も軍の重鎮になっ
  ているだろう。その時、世界が混乱していれ
  ば計画はスムーズに進む」

 「わかったわ。体のメンテナンスは私に任せて
  ね。多分、後二十年くらいは大丈夫だと思う
  から」

 「十年で十分だ。後十年で世界は滅ぶのだから
  な」

 「本当はもうそんな気無いくせに・・・」

彼女の最後の言葉はクルーゼに届かなかった。


帰り道街中を歩いていると、車のクラクションが
鳴った。
横を向くと、車の窓が開きラクスが微笑んでいる

 「おひさしぶりです。ヨシヒロ、早く乗ってく
  ださいな」

周りの目があるので、俺は素早く車に乗り込む。

 「ラクス、久し振り。あれ?アスランが遊びに
  行ってるんじゃ」

 「いいえ、聞いていませんわ」

アスラン俺を騙したな。  
それとも、忘れられてる?
だとしたら哀れだな。

 「それよりも、今日は私オフですの。買い物に
  でも出掛けましょう。お昼ごはんもまだなの
  でしょう?」

 「ラクスは目立つから町中はつらくない?」

 「大丈夫ですわ。任せてくださいな」 

車中で色々な話をしながら目的地に向かう。
先に昼食をとる事にした。
着いたレストランは会員制で完全個室らしく、こ
れなら大丈夫そうだ。
メニューを見ていると、ラクスが質問してきた。

 「戦争が早く終われば、あなたにいつでもお会
  いできますのにね。いつ戦争は終わるのでし
  ょう?」  

 「最低でも、後2年くらいで終わりますよ」

 「どうして、わかるのですか?」

 「連合もプラントもお金が続かないからです」

 「お金が重要なのですか?」

 「お金が一番重要なのです。近代戦はお金がか
  かります。連合は今までにプラントから収奪
  した富を、プラントは中立国や同盟国との貿
  易の利益をつぎ込んでいます。しかし、いつ
  までも物資や利益を富の再生産が出来ない兵
  器につぎ込んでいると経済が死んでしまいま
  す。いくら戦争に勝てても、経済が死んでし
  まったらそれは負けと同意義です」

 「今回の戦争はナチュラル対コーディネーター
  の人種戦争ではないのですか?」

 「人類の歴史上、経済問題以外で戦争が起こっ
  た事実を俺は知りません」

 「大西洋連邦のブルーコスモス強行派はコーデ
  ィネーターの殲滅を訴えていますが」

 「彼らも利用されているんですよ。彼らを裏で
  援助しているのはプラント理事国でプラント
  からの物資で莫大な利益をあげていた企業家
  連中です。プラントの物資を安く買い叩いて
  地球各国に高く売りつけて儲けたり、食料を
  プラントに高く売りつけて儲けていた彼等は
  プラントが適正価格での貿易を求めたり、自
  分達以外の非プラント理事国から食料を買っ
  たり自給の道を模索する事が許せなかったの
  です。結果、ユニウスセブンの悲劇が起きま
  した。彼等はブルーコスモス強行派を連合国
  の、特に大西洋連邦の軍部や政府に送り込ん
  で開戦をして決着をつけようとしました。開
  戦時の月の大艦隊がプラント本国に攻め込み
  城下の誓いをさせて短期で戦争は終わる。そ
  して、プラントは屈辱的な条件を飲まされる
  。これが本来の彼等のシナリオです。すでに
  狂っていますが・・・。プラントは味方を増
  やして大西洋連邦軍に多大な打撃を与えて、
  政府内や軍部のブルーコスモス強行派のシン
  パを失脚させて中立派や融和派を復権させて
  話し合う。これが基本戦略です」

 「コーディーネーターの私達に味方してくれる  
  地球国家があるのでしょうか?今の同盟国や
  中立国はザフトの戦力を恐れているだけでは
  ?」

 「否定はしませんが、全てではありません。ナ
  チュラル対コーディネーターの争いなんてせ
  いぜい、ここ数十年の事ですが、地球では有
  史以来人種・宗教・イデオロギーなどの違い
  からくる争いが絶えません。特に、大西洋連
  邦とユーラシア連邦の前進国家であるアメリ
  カとヨーロッパ諸国は有色人種を差別して踏
  みつけてきました。その争いに比べれば、コ
  ーディネーターと手を結ぶなんて大した事で
  はありませんよ」

 「そうですか・・・。でも、講和のテーブルに
  彼等をつかせても戦争の根は無くならないの
  では?」

 「戦争の根なんて、完全に駆除なんて出来ませ
  んよ、対処療法が限界です。それに、ラクス
  が戦争の根と感じている企業家連中、ロゴス
  って言うらしいですけど、講和の条件次第で
  はブルーコスモスなんて簡単に切り捨てます
  よ」

 「それは、どんな条件なんです?」

 「今回の戦争で地球の人口は多少は減りました
  が、まだ世界は過密状態です。戦後、宇宙へ
  の人類の進出は爆発的に増えるでしょう。そ
  の事業に彼等が参加出来るならその利益は莫
  大です。戦争なんやってられませんよ。兵器
  生産なんて大して儲かりませんしね」

 「兵器生産は儲からないのですか?」

 「新兵器開発には莫大な資金がかかります。開
  発に成功しても、終戦になれば注文がなくな
  るかもしれません。そうなれば、下手すれば
  倒産です。連合がモビルスーツ生産より、艦
  船やMAの量産に力を注ぐのは、既存の技術
  の改良で開発費が抑えられるからです。少な
  くとも、一定の利益は確保できます。死の商
  人で儲かるのは転売している小規模の連中だ
  けです」

 「そうなのですか。それでもし、戦争が終わっ
  たら世界はどう変わるのですか?」

 「強大な大国が消滅します。大西洋連邦とユー
  ラシア連合と東アジア共和国は没落は防げま
  せん。その他に南アメリカ合衆国は多分独立
  を勝ち取り、日本・台湾連合、オーブ、大洋
  州連合、赤道連合、イスラム同盟、アフリカ
  共同体、スカンジナビア王国などが台頭して
  地球連合に変わる組織を作るでしょう。勿論
  それにプラントも参加します。宇宙への人類
  進出が進めば宇宙コロニー国家も将来的には
  ありえます。そして、人類は火星やその他の
  惑星にまで進出するかもしれません」

 「そこまで考えているなんて、ヨシヒロは凄い  
  ですね」

 「これくらいの事は評議会のメンバーなら誰で
  も考えてますよ。だから、彼等は選出されて
  いるんです」

 「私が戦争を終わらせる為に出来る事はあるの
  でしょうか?」

 「ありませんね」

 「どうしてですか?」

 「ラクスは軍人でも政治家でも無く、歌手だか
  らです。だから、みんなの為に歌ってあげる
  事がラクスの一番の仕事なのです。ラクスの
  歌でみんなが癒されるように・・・」

 「時には、決断して行動する事が大切ではあり
  ませんか?」

 「何をするのですか?クーデターでも起こして
  革命政権下で講和を結ぶのですか?それとも
  、独立勢力でも作って間に割って入って止め
  ますか?そんな事をしたら、事態が混乱して
  余計戦争が長引いて犠牲が増えますよ。戦争
  は軍人が条件を整えて、政治家が交渉して終
  わらせるものです」

 「そうなのかもしれないですね」

ラクスは何か深く考え込んでいるようだ。

 「さあ、難しい話は終わり。せっかくのデート
  だ。久しぶりに楽しまなきゃな」

 「あっ、そうでした。デートでしたわね」

 「あれ?ラクス俺が嫌いになった?」

 「そんな事ありませんわ。ただ、いつもと違っ
  て素直に認めてくださるので少し驚いている
  のです」

 「今までは、アスランへの後ろめたさが強くて
  ね」

 「今は小さいのですか?」

 「あいつ、ヘリオポリスの女の子とえらく積極
  的に話しててさ、上手くいけば婚約解消の可
  能性もあるかなって。あの朴念仁が名前まで
  聞いてたんだ。結構、脈はあるかもしれない
  」

 「そうですわね、アスランは婚約者の私にキス
  の一つもしない甲斐性なしですから」

 「何気にむごい事いってるね」

 「事実です。ヨシヒロとのキスがファーストキ
  スでしたし」

 「光栄な事なんだけど、アスランはバカだよな
  」

 「ですから、もしこれからアスランにキスされ
  そうになったら頬かおでこにさせませんと・
  ・・」

 「そこまで思ってくれて光栄だなラクス」

 「はい」

俺達は食事を済ませてから会員制の高級ブティッ
クで仲良く買物をしてから帰路についたのだった

その日の夜はみんなにクルーゼ隊長宅の様子を報
告してあげて(いつの間にかアデス艦長も参加し
ていた)夕飯を食べに行ってから就寝した。 

朝、自分の官舎で目を覚ますとラクスが朝食を作
っていた。
もう、驚くような光景でもない。

 「おはようございます、ヨシヒロ。私、急遽十
  日間のお休みをいただきましたの。ずっと一
  緒ですわね」

 「俺は妹達といろいろと予定が・・・」

 「紹介してくださいね。将来の義妹達なのです
  から」

 「今は無理ですよ」

 「これからアスランと合流して、アスランの婚
  約者として紹介されますわ。そうしないと、
  みなさんと遊べませんからね」

 「もちろん夜は2人っきりですわ」

俺はラクスをまだ過少評価していたようだ・・・

結局、ラクスはアスランの婚約者として紹介され
、みんなと一週間毎日のように遊んでいた。
彼女は普通に友人達と遊べる事がうれしいようだ

ラクスが喜んでくれてよかった。

 
楽しい一週間が終わり、レイナ達がシャトルで帰
る前日、俺はレイナとキラに呼ばれていた。

 「どうしたの?キラ、レイナ」

 「実は、ヨシヒロさんのノートパソコンを借り
  たときについプライベートホルダーの中身を
  見てしまって・・・。暗号強度が弱いからた
  いしたものでは無いと思ったので・・・」 

まずい!ラクスの秘密映像が!国家機密が!
あんなに強度が強い暗号がキラには弱いのか?
さすがはキラというところか。 

 「ごめんねお兄さん、すぐにキラの目は塞いだ
  から中をちゃんと見たのは私だけだから・・
  ・」

いや、すでにそれは問題ではない。
彼らに秘密を厳守させないと。

 「いや、そんな事はいいんだ。とにかく、秘密
  にしてくれ。レイナはカナにも言わないでく
  れ。彼女とは真剣につきあってるんだけど、
  いろいろ事情が複雑で・・・。政治的なもの
  もあるし、今ばれると俺は破滅の可能性があ
  って・・・」

頼まれてもいないのに狼狽して全て話してしまう

 「そうなんだ、お兄さんの頼みなら秘密は守る
  よ。ねっ、キラ」

 「はい、秘密は守ります」

 「ありがとう恩にきるよ」 

 「それでね、お願いがあるんだけど」

あれ?勝手にデータ見られて俺は被害者なのに立
場が逆転してる?

 「私、新しい服が欲しいんだ」

 「僕はヘリオポリスでノートパソコンを紛失し
  たから、新しいノートパソコンが欲しいです
  。最新型が最近発売になったんですよ」

二人にたかられて俺は金欠になってしまった・・
・。


いよいよお別れの日が来てシャトルに見送りに行
く。  
アスラン達やラクスまで見送りに来てくれた。

 「レイナ、カナ元気でな。親父と母さんによろ
  しく」

俺は妹達に声をかける。 

 「戦争が終わったらまた遊びに来い」

アスランが声をかける。

 「今度は俺達をオーブに招待してくれ」

イザークも立て続けに言う。

 「その時は海に連れて行ってくれよ。俺行った
  事ないんだ」 

ディアッカも名残惜しそうだ。  

 「みなさんお元気で。カナさん、ミニコンサー
  トを開きましょうね」

ニコル、いつの間に・・・。

 「「みなさん、お元気で」」

ラスティー、シホ。もうバレてると思うよ、お前
らの関係・・・。

 「今度はコンサートに招待するので楽しみにし
  てくださいね」

さすが、歌姫は言う事が違う。

 「お兄さん、お元気で」

 「兄貴、たまには帰って来いよ。ニコル、練習
  しておくから」

 「みんな、オーブに遊びに来てね」

 「歓迎するからさ」

 「いろいろお世話になりました」

 「「「さようならーーー」」」 

 
レイナ達はオーブに帰って行った。 

 

ちなみに、休暇は後二日残っていたのだが、それ
らは全てラクスの相手で潰れたのだった。

 「アスランに会わないでいいの?」

 「アスランには仕事だと言ってありますわ」

アスラン哀れ・・・。

 
休暇もとい謹慎が終了して任務に戻った我々は休
暇で鈍った勘を取り戻すために訓練に明け暮れて
いた。
先に戦死した四人の補充パイロットが新人の為に
いろいろ教えなければならない。
人員に多少の変更もあった。
オロールが「フユツキ」のモビルスーツ隊の編隊
長に就任して、シホがこちらに交代で就任したの
だ。
オロールはヴェサリウスだと死んだ部下を思い出
すからと転任を希望したが、戦力の低下を恐れた
俺のアイデアによりこの人事を決めたのだった。
尚、この人事は「フユツキ」側には不評だった。

 「俺達の姫がいなくなって野郎に代わってしま
  った・・・」

彼らの気持ちはよくわかる。

ヴェサリウスのモビルスーツ隊は俺が新入りとオ
ロール隊の生き残りを率いて、アスラン達は交代
で編隊長を務めるように命令しておいた。

機体にも若干の変更があった。
先の奪取機体の運用を任されたのだ。
機体の割り当てはアスランがストライク、二コル
がイージス、ラスティーがデュエル(アサルトシ
ュラウド搭載タイプ)、バスターがディアッカと
決まった。
ちなみに、ブリッツはミゲルが気に入ったらしく
ホーキンス隊に持っていかれてしまった。
フェイズシフト装甲は色が塗れないので、オレン
ジ色のシールドを装備して使っているらしい。
そして、イザークには俺のシグーディープアーム
ズを譲り、シホはジンカスタムのままであった。

2月に入り、俺達に新しい任務が命令された。
ラクスがユニウスセブンで追悼式典を行うのでラ
コーニ隊と護衛する事になったのだ。
普通ならザフトが護衛をする事などありえないが
、最近錬度の落ちた連合の艦艇が民間船や中立国
の船舶を誤射する事件が多発していて、俺達の出
番になったらしい。
あまりうれしくない現実だが、ラクスと一緒なの
は少し嬉しかった。

 

(月プトレマイオス基地第八艦隊司令室)

コープマン准将は最近、ハルバートン少将の事を
考えることが多くなっていた。
彼とは意見が対立する事も多かったが、優秀な軍
人であり上司であったと思い知らされたのだ。
自分が艦隊司令官に就任してから約一ヶ月弱。
この人員と装備でザフトと戦うのは正直気が引け
た。
まず勝利の可能性がないからだ。
これでも、ハルバートン提督の時よりは錬度も戦
力も上がっているが、こんな艦隊でも命令があれ
ば出撃させねばならない。
ハルバートン少将なら色々戦術も浮かぶだろうし
、肝も据わっているが自分ではまず無理そうだ。

そんな事を考えながら思考の海に沈んでいると、
来客があった。

 「失礼します。プリンス中佐と申します。以後
  、お見知りおきのほどを」

名前は王子様だが、貧弱で目つきの鋭い四十歳位
の小男が挨拶をする。 

 「用件はなにかな?」

 「第八艦隊の出撃命令です」

 「いつ?何処に?どうして出撃するのかね?」

 「今すぐ。ユニウスセブン跡に。勝利のためで
  す」

こいつはバカだ!確信する。

 「くわしい、任務を教えてくれ」

 「プラントのシーゲル議長の娘ラクス・クライ
  ンがユニウスセブン跡地に追悼式典の為に訪
  れます」

 「それで?」

 「彼女を保護してもらいたいのです」

 「保護?拉致の間違いではないのかね?」

 「言葉なんてどうでもいいんです。彼女の確保
  は連合軍の勝利への第一歩です」

バカか!こいつは?
民間人を拉致してどうして勝利につながる?
人質になんてしたら、苦境に立たされるのは俺達
だぞ!

 「それで、小娘一人の為に第八艦隊総出かね?
  」

 「安心してください。クルーゼ隊が護衛につい
  ています。一緒に撃破しましょう」

こいつは本格的なバカだ。
コープマンは確信した。

 

 

 
ユニウスセブンへの道中、俺達はパイロット達へ
の訓練を繰り返しながら、ラクスを乗せた船の護
衛の任務についていた。
ラクスは豪華な民間の宇宙船に乗っている。
しかし、ピンク色の船ってどうなんだろう?

 「すいません、親父がラクス様の大ファンでし
  て・・・。あの船を建造して彼女にプレゼン
  トしたんです」

ラスティーが申し訳なさそうに言うが、金持ちっ
て凄いよなって感心してしまった。

 「よーし、今度の直衛時のモビルスーツ隊の指
  揮はディアッカが執ること。それではご苦労
  さん」  

交代で艦隊の直衛に出ているのだが、俺は補充さ
れた新人の世話が忙しいので、オロールがやって
いた隊の半分の指揮はアスラン達に交代させなが
らやらせていた。
パイロットしては一人前に近づいたのだが、俺は
彼らをモビルスーツ隊の指揮官に育てあげなけれ
ばならない。
最近、実戦も無かったので直衛時の編隊飛行も大
切な訓練の内の1つだった。
ディアッカがアスランとシホを連れて出発する。

 「少しは様になってきたかな?」

俺が独り言をつぶやいていると。

 「彼らの指揮官としての素質はどうなのだ?」

いきなりクルーゼ隊長に話しかけらた。
ビックリするからやめて欲しい。

 「脅かさないでくださいよ。クルーゼ隊長、ど
  うして格納庫にいるんです?」

 「最近、モビルスーツに乗っていないから、せ
  めて見るだけでもと思ってな」

戦闘が無いのも理由の1つだが、ここの所クルー
ゼ隊長はモビルスーツに乗っていない。
先日、直衛に勝手に出ようとしたのだが、アデス
艦長に「奥さんにいいつけますよ」と言われて断
念したらしい。

 「そうですね。一番才能があるのはラスティー
  です。小さい頃から親父さんが人を使ってい
  るところを見ていたようですね。次はシホで
  す。彼女は常に冷静で判断力にも優れていま
  す。すでに、編隊長を経験済みですし。アス
  ランは才能はありまが、欠点は色々考えすぎ
  て決断が少し遅れるところです。イザークも
  才能は十分です。頭に血が昇ると周りが見え
  なくなり易いですけど。ディアッカは無難に
  こなしていますね。あまり、指揮官に興味が
  ないみたいですが。最後に、ニコルも才能は
  あります。少し優しすぎるのが問題ですけど
  」

 「なるほど、君はよく見ているな。感心してし
  まうよ」

 「仕事ですからね、一応」

こうして、我々はユニウスセブンへと向かってい
った。

 

(月プトレマイオス基地〜ユニウスセブン跡宙域
中間地点、第8艦隊旗艦「メラネオス」艦橋)

 「見て下さい。この見事な艦隊を!これだけの
  数があればクルーゼ隊など一捻りです」

誰かこいつを連れ出してくれ!
コープマンは心から願う 。

 「艦隊の編成くらい私でも心得ているよ。司令
  長官だからな」

 「それは大変頼もしい。今回加わった新しい仲
  間達もいますしね」

第八艦隊は急遽増強されて五十隻近くの大艦隊に
なっていた。
しかし、臨時編成組との訓練はしていないので連
携は難しい。
はっきり言って烏合の集だ。
戦力もMAの数が少なく、モビルスーツ隊への備
えに乏しい。
状況を整理すればするほど、頭が痛くなってくる

 「さて、私は(ラングレー)に行って指揮を執
  らせていただきます。私はMA隊の指揮が専
  門ですので」

「お前に専門なんてあるのか?」と思ったが、こ
こからいなくなってくれるので何も言わない事に
する。

 「では、蒼き清浄なる世界の為に」

彼はMA空母ラングレーに移乗していった。

 「彼はブルーコスモスのシンパなのだな」

 「ええ、何でもアズラエル理事の学生時代から
  の友人だとかで・・・」

参謀の1人が教えてくれる。

 「そうか、それでも上からの命令だから仕方な
  いな。ハルバートン提督の苦労が今更ながら
  によくわかる」

 「今も苦労なさっているようですよ。アマゾン
  の奥地でゲリラ相手に」

 「俺も今回敗北すると僻地に左遷されるだろう
  な。昔ならごめんこうむりたいところだが、
  今はもうどうでも良くなってきた」

 「そんな、まるで敗北が決定事項のようではな
  いですか」

多分、決定事項なのだが指揮官として口には出せ
ない。
自分に出来ることは犠牲を少なく抑えて退却する
事なのだ。

 「まあ、勝負は水物だからな」

コープマン司令官は自分に言い聞かせたのだった

   


俺達はユニウスセブン跡に到着した。
跡とは言っても、残骸は地球の重力に引かれてデ
ブリ帯に移動してしまっているが。

祭壇を作り花を大量に供えて全員で祈りを捧げる
アスランの表情は真剣そのものだった。
一年ぶりに母親の居場所に来れたのだから・・・

 「一年前のこの日にユニウスセブンで多くの方
  が亡くなりました。彼らの魂が安らかな眠り
  につけますように。そして、一日でも早く平
  和が訪れるますように」

ラクスはこの日の為に作られた鎮魂歌を歌い、式
典は終了した。

 

 

 
式典を終えて、デブリ帯を出たところで警報が鳴
った。

 「多数の艦船の反応をキャッチ!我々に向かっ
  てきています!」

 「ちっ!どうやら我々を探していたようだな。
  狙いはラクス嬢か? まあそんな事はどうで
  もいい。全艦戦闘配置、モビルスーツ隊発進
  準備!」

クルーゼ隊長が戦闘開始命令を出す。

 「(フユツキ)はラクス嬢を守りながらプラン
  トへ向けて最高速度で逃げ切れ。(エンジェ
  ルボイス)は足が速いから逃げ切れるだろう
  」

エンジェルボイスとはラクスが乗っている船の名
前である。
ネーミングセンスが安直な船だ。

 「残りの艦はラコーニ隊と合同で敵を迎え撃つ
  。近くの味方に救援を頼むのを忘れるなよ」

一ヶ月ぶりの実戦だ。
武者震いが止まらない。

 「モビルスーツ隊全機発進!ガモフの隊は直衛
  に回れ!残りの者はラコーニ隊と合同して敵
  を撃つ!」

合計三十六機のモビルスーツ隊が敵艦隊に突撃し
ていった。

 

 「副隊長、MA隊の数がこの艦隊の規模にして
  は少ないようです。空母が二隻しか確認でき
  ませんし」

それは、朗報だ。
MA隊にラクス達が追われるとやっかいなのだが
、この数では大丈夫そうだ。
艦船も旧式艦が多い上に、まだMAを搭載できる
ように改装を受けていないようなので、空母二隻
のみがMA隊の母艦のようであった。

 「空母を優先して落とせ!そうすればノロマな
  艦船だけになる」

MA隊はラコーニ隊のジンに追い回されている。
運の悪いジンが三機ほどやられたみたいだが、大
勢に影響はないようだ。

 「アスラン、シホ、対空火器を引き付けておい
  てくれ。俺が落とす!」

ラスティーが一番外側にいる駆逐艦にミサイルを
ぶち込みライフルと発射する。
彼のデュエルにはアサルトシュラウドが装着され
ていて火力を増強させてあるのだ。

 「ディアッカ!とにかく遠距離からぶちかませ
  !俺は敵の気を引くから、ニコルは隙をつい
  てスキュラを叩き込むんだ!」

イザークがニコルとディアッカに命令を出す。

ニコルはイージスを変形させてスキュラを駆逐艦
のどてっ腹に叩きこんだ。
駆逐艦は瞬時に爆沈する。

 「よし、艦隊防御に穴をあけたな。そこから全
  機進入して食いちぎれ!」

俺は最後の命令を出した。

 

 

 
戦闘開始から三十分、戦況はザフトの圧倒的優勢
だった。
MA隊はほぼ全滅で、護衛艦艇も三割が戦闘不能
だ。
我々の戦力はこれで打ち止めだが、ザフトには援
軍が来るかもしれない。
もともと、無理な作戦だったのだ。

 「MA空母(ラングレー)と(ペニントン)が
  沈没です。プリンス中佐の脱出が確認できま
  せん」

 「空母の連中は惜しいことをしたが、あのバカ
  が死んでくれて助かった」

思わず本音が出てしまう。

 「本当ですね、正直安心しました」

参謀が賛同する。
彼はやはり嫌われていたようだ。

 「このままでは全滅してしまうな」

 「はい、撤退を提唱します」

 「それが正解だな」

 「追撃を避けるためにも整然と退却しましょう
  。もっとも、彼らにも守るものがあるでしょ
  うから追撃は無いと思いますが」

 「全艦すみやかに整然と退却だ!」

結局、第八艦隊は四割の艦艇とほぼ全機のMAを
失った。
ザフトは六機のジンを失い、三機を損傷してGに
も損傷はあったが、軽微なものだった。

 
その後、コープマン准将は敗戦の責任を取ってリ
オデジャネイロ駐屯軍の参謀長として左遷され、
ハルバートン少将との再会を果たしたのであった

 

ラクスに追いついてプラントに帰国した俺はまた
軍本部に呼び出された。 
出頭すると、またハゲオヤジが待っていた。

 「カザマ君、君には新たに部隊を率いてもらう
  事になった。おめでとう、隊長に出世したん
  だよ」

 「またえらく急ですね、俺なんかでいいんです
  か?」

 「戦力が特殊でね。若い指揮官の方がいいと判
  断されたんだ」

 「特殊な戦力ですか?」

 「先日拿捕された戦艦の調査と修理が終了して
  ね。かなりの高性能なので試験的に運用して
  みる事になったんだ。火器の配置に穴があっ
  たが、火器を増設したから一段と性能もあが
  っている。大丈夫だよ」

 「つまり、一隻だけの部隊の指揮官ですか?」

 「そうなんだが、モビルスーツは奪取したGを
  搭載するし新型機も優先的に回すから」

 「それで、運用データを送れと」

 「最新鋭機を運用する最新鋭艦のエリート隊長
  これがキャッチコピーだ」

 「欠陥機の可能性があるモビルスーツを盗んだ
  戦艦で運用する捨て駒隊長ですか?」

 「そう皮肉を言うな。アスラン君たちも君の部
  下に留任するから、そうおかしな事にはなら
  ないよ」

 「わかりました。それで、部隊を作って私は何
  をすればいいのです?」

 「部隊編成後はただちに地球に降りてもらう。
  最初の任務はアフリカ戦線の救援だ。地上の
  他の基地からも援軍は出しているが、足りな
  くてな。拿捕戦艦は地球でも使えるようだし
  火力もなかなかのものだ。今、アフリカでは
  バルトフェルト隊長がアフリカ共同体と合同
  でアフリカ開放作戦を実施している。最近、
  南アフリカ統一機構は連合からの援軍で戦力
  を増強しているので大変なのだ。助けに行っ
  て欲しい」

 「あの、バルトフェルト隊長が苦戦してるんで
  すか?」

 「旧南アフリカ共和国のケープタウン北方10
  0キロの地点で足止めされている。強力な守
  備陣地があるうえに、モビルスーツ隊が出現
  したらしい・・・」

 「了解しました。それで人員のほうは?」 

 「君の希望はできるだけ適えるので希望する人
  材を選んでおいてくれ。パイロットは例の赤
  服六人と、地球でディン一個小隊が合流する
  」

 「なるべく急いで調べます。では、他に用事が
  無いならこれで失礼します」

俺の新しい戦場は地球のアフリカ大陸でバルトフ
ェルト隊長の援護か。
あの人には世話になったから恩を返さねば。

 

俺の新しい戦いがまた始まった。


        あとがき

火曜日・水曜日・木曜日の深夜と金曜日のこの
時間で仕上げました。
眠い・・・、次の更新はゆっくりにしよう。
気になってしょうがないけど・・・。
次は地球編です。
 

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