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▽レス始

「まぶ月〜第参夜〜(まぶらほ+月姫+他)」

ドミニオ (2006-02-03 20:23)
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 前回のあらすじ。

 怪獣大決戦に巻き込まれた末に存在まで忘れ去られた俺、式森和樹。
 伽藍の堂での束の間の(比較的、多少はマシな)平穏はあっさりと破られ、物騒極まり無い世界に首まで沈められるのだった。
 誰か俺にゴッドハンドを下さい。


 ピピピピピピピピピピバキャッ

 五月蠅い騒音の元を拳で黙らせる。
 布団の隙間から見えた文字盤が示す時刻は8時35分。

「……遅刻だ」

 HRは8時30分から。どうやっても間に合わない。間に合うはずがない。

「……………………寝るか」

 しばし考えた末に出た結論は、再び布団に潜り込むことだった。
 拝啓、担任さま。式森和樹は本日体調不良により欠席します。まる。

「ダメです」

 バキャッ!
 唐突に激しい衝撃が頭部に襲いかかる。

「…………お、おはようございます、管理人さん」

「はい。おはようございます、式森さん」

 脳髄をたたき割られたかの如き激痛にのたうち回る俺。
 何事も無いかのように穏やかに挨拶を返す管理人さん。

 …………すいません。さっきから頭がもの凄く痛いんですが、その折れた箒は一体何に使ったのか教えて貰えないでしょうか。

「ところで式森さん、学校はどうしましたか?」

「あー…………本日は体調不良の為欠席を――」

「式森さん、学校はどうしましたか?」

「ですから、体調が」

「式森さん?」

「……………………すぐに用意します」

「よろしい」

 尋崎華怜。葵学園『彩雲寮』管理人。
 彼女が赴任して以来、未だ学園を仮病で休んだ者は居ないらしい。人は彼女の事を『伝説の管理人』と呼ぶ。

 呼んでるのは俺だけだけど。


 吾輩は魔術師である。名前を式森和樹と言う。
 元の名前は立花玲夜と言うらしいが、そんな記憶は既に摩耗し忘却の彼方へ消え去った。

 あの日、青子ねえに出会って以来、色々な事があったものだ。

 橙子師に魔術を習い、ついでに解剖されそうになる。

 青子ねえに戦闘訓練を受け、別の意味で襲われそうになる。

 リィゾさんに剣を教わり、『姫様がー』とか叫びながら斬られそうになる。

 黒の姫様に気に入られ、当然のように血を吸われそうになる。

 プラ犬に懐かれ、お気に入りとして庭に埋められそうになる。

 更に、冬木のセカンドオーナーには売り飛ばされそうになり、ゼル爺には異世界に連れてかれそうになり、教会では宝物庫に入れられそうになり、MMMには誘拐された。

 ………………何でまだ生きているのか、不思議でならない。

 まあ、ともかく概ね元気である。精神的にはかなり荒んだと思われるが。

 ちなみに白騎士にはヤられて居ない。手加減が要らないという事は存外に楽なものである

 ちなみに某文学小説風に語っている事に特に意味は無い。

 単なる過酷な現実からの逃避だから。

 そんな俺は今、葵学園に通っている。本当は死ぬほど嫌だったのだが親に強制された。どうも裏取引があったらしい。死ね、腐れ親ども
 そして現在2年生の俺はいつキシャーが登場するかと心臓の悪い日々を送っている。

「大丈夫だ、フラグは潰した。例えキシャーが転校してきても原作みたいにはならないはず。遺伝子目当てで色々寄って来くるだろうけど、その辺は実力行使とか裏のコネで何とかなるはずだし。多分。キシャーには通用しないかも知れないけど

 その為の根回しは十分にしてある。伊達に何年も青子ねえに引きずり回されていない。
 石橋は叩いてから渡るに限るのだ。


 ただ大方にして災厄とは石橋を砕いてやってくるものである事は、世の真理であろう。


 ――――で、学校に着いた早々、嫌な符丁を見つけてしまった。

「何やってんだ、仲丸?」

「おお、そこに居るのは我が友、式森和樹ではないか!」

 嫌々教室へ向かう俺が見つけたのは、保健室の扉の前で蹲る仲丸だった。

「そうか、ついにこの日が来てしまったか……」

「何をブツブツ言ってるのか判らんがちょうどいい。式森、俺を手伝え! この中には」

「断る」

「3年の風椿玖里子が――ってなにぃぃぃぃ!?

「なにー、じゃなくてさ。言っておくけど覗きも脅迫も犯罪だぞ」

ちっがぁぁぁう! 友好的な取引だ。弱みは見せた方が悪い!!」

 んな無茶な理屈が通じるのは2−Bだけだ。
 俺の呆れた視線に気付かず、仲丸はべらべらと聞きたくもない弁舌を続ける。

「地位と名声と権力を作るのは学力でも成績でも無い、魔法が使える回数だ! で、お前何回だっけ?」

「8回。残りは3回だけど」

「3回!? そう、3回だ! 片手で数えても指が余る魔法回数しか無いお前が、楽しい学校生活を送るにはコレしかないだろうが!」

 別に。キシャーさえ居なければ俺は十分楽しいんだけど。

「どうでもいんだけどさ」

「どうした式森、協力する気になったか?」

「いや、単に」

「な〜〜〜か〜〜〜ま〜〜〜る〜〜〜!!」

 背中に気を付けた方がいいと言いたかっただけなんだけどね。

「げッ!? ま、松田ッ!!」

「身代わり魔法を使っての授業エスケープと覗き行為! B組協定第三条第七項違反により粛正を受けなさい!」

「黙れ松田ァ! お前何時から権力側に付いた!」

「決めたのはアンタでしょ〜〜〜〜〜!!」

 逃げまどう仲丸。
 光弾を撃ちながら追いかける松田。
 流れ弾が当たって砕け散る廊下と、死屍累々と倒れ伏す巻き込まれた被害者達。

 何時も思うのだが、どう考えても周りの被害の方が大きい

 阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がっていく一方、俺はというと。

「…………とりあえず授業はサボろう」

 余計なのが出てこない内にさっさとその場を待避するのだった。


「もうすぐ授業が始まるよ、式森君」

「出たなマッドドクター」

 昼休みを終え帰宅の途に着くなり、長髪に白衣の男に声を掛けられた。
 紅尉晴明。葵学園の養護教諭。魔法医学を初めとして黒魔術、召還魔術などの学位も持つ優秀な人間。だがマッド。俺の脳内での二つ名は『暁のマッドドクター』
 こんなのが葵学園で唯一の『魔術師』なのだから、魔術師という人種がどれだけ変わり者で構成されているかよく判るという者である。
 ちなみに俺も一応魔術師であると言う事実はスルーして欲しい。

「マッドとは酷いな。私は少しばかり人より探求心が旺盛な」
「何か用ですか?」

「……せめて最後まで言わせて欲しいのだがね。まあいいだろう。午後の魔力診断、受けないつもりかね?」

「もちろん」

「断言かつ即答しないでくれたまえ。困るのだよ、正確な魔力の強さと回数が判らないと」

「前回と同じでいいでしょう。どうせあんなの上っ面だけなんだから」

「身も蓋も無いね。ちなみに前回受けたのは何時だい?」

「確か5年前だったかな」

「…………流石にそれは無理じゃないかね?」

「じゃあ適当に偽造しておいてください」

「君、そういう事を仮にも教師である人間に頼むのはどうかと思うのだが」

「そうですね。俺も真っ当な教師には頼みません」

 例えばストレスで病院送りになった前の担任とか。

「まあ、それはともかくとしてだな。式森君、前にも頼んだが私の研究に協力するつもりは無いかね。君の魔術回路は私としても、とても興味深いのだが」

 またそれか。

「何度も言ってるじゃないですか。許可を取ってくれば幾らでも協力するって」

「一応聞くが、誰の許可かね」

青子ねえ橙子師姫様

「はっはっは。――君は私に死ねと?

「その通りです」

 世界平和と言うか、主に俺の平和の為にはそれが正しいと思うし。

 何やら凹むマッド。
 最近微妙に打たれ弱くなっている気がするのだが、何かあったのだろうか。

 ――――何故か脳裏に赤い長髪がよぎったりしたが、気のせいという事にしておこう。


「さて、そういうわけで寮に帰ってきたんだが」

 居る。絶対に居る。
 何故判るって、ドアの隙間からどす黒いオーラが漏れだしている

「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだっていうかどうせ逃げても無駄だし

 意を決してドアを開ける。

 【キシャー大暴れ】

 ドアを閉めた。

「……あれ?」

 何か今、妙なタイトルが見えたような。

 再びドアを開ける。

 【キシャーVS白猫 〜自室崩壊の危機〜】

 勢いよくドアを閉めた。
 人間は余りにも予想外の事態に遭遇すると思考が止まってしまうと言う。
 今の俺、正にそれ。

 とりあえずもう一度だけドアを開け、キシャーと戦っている白猫をサルベージする。
 その際、キシャーと一瞬だけ目が合った気がするが無視した。
 触らぬキシャーに被害無し。

 …………ゴメン、嘘です。キシャーは居るだけで被害が出ます

「なあ、アリス。何で俺の部屋にキシャーが居て、しかも暴れてんだ?」

 手の中の白猫ことアリスに話しかける。傍から見てると危ない人のようだが、この際気にするのは止めておく。
 そんな俺に、アリスは憮然とした視線を返すだけで何処かへ行ってしまった。

『あの五月蠅いの、始末しておいてよ』

 そんな声が聞こえた気がする。
 なあ、アリス。

 人間には出来る事と出来ない事があるんだよ?

 唯一の味方が居なくなった俺はサメザメと涙を流すのだった。


「あー……、それで、アンタ誰?」

 ドアの陰からこちらをジーっと見つめてくるおどろおどろしい視線に耐えきれず、声を掛ける。

「あ、挨拶が遅れました。わたし、宮間夕菜と言います。葵学園に転校してきました」

 そうか。……やはり、この運命からは逃れられる事は出来ないのか。

 虚空を見つめる俺を余所に、三つ指突いて頭を下げるキシャー。

「今日から和樹さんの妻です」

 認めた憶えは無いがな。

 死んだ魚のような目で現実から逃げる俺。
 ニコニコと満面の(しかし何処と無く黒い)笑みを浮かべるキシャー。

 俺の人生最大の不幸はこうして始まったのだった。


 無論、この時点での不幸など序の口でしかなかった事は言うまでもない。


<<補足という蛇足>>
 お休み。

<<あとがきという言い訳>>
 原作をなぞっていたらやたら長くなってしまったので前後編に分けました。
 ではレス返しです。


>3×3EVILさん
 ちなみに高校生の幹也と知り合いと言う事は彼が大学生の時には既に居ない『彼』との接点も出来るという事で……。
 大変参考になるお話をありがとうございます。
 お言葉に甘えて今後も趣味全開で暴走列車の如く突っ走りたいと思います。
 ……あれ、何か違う?

>緋月さん
 いずれは4人(二人+志貴&士郎)になる事でしょう。
 ちなみに作者内想定不幸度は高い方から幹也>和樹>士郎>志貴。
 対処する力を持てない彼は何気に一番不幸度が高かったりするのです。
 外伝に関しては、<<補足という蛇足>>を情報の穴埋めにする事で完全に外伝扱いにしようかと考えてます。
 ただ蛇足は蛇足なので掲載を止めるか現在考え中だったり。

>ashoさん
 橙子さんはどちらかと言うと貴重なサンプル的な目で和樹を見ています。彼女は青子先生よりも『魔術師』度が高いですから。
 設定集に関しては、本編がギャグ調なので説明文的な文章を削る意図も含めて公開しています。のですが、場合によっては無くなるかも知れません。現在考え中です。
 設定フェチなので世界観を考えるの自体は別に苦にならないんですがねぇ(汗

>九重さん
 夕菜との因縁を切っちゃうと不幸度が下がりますから(問題発言
 橙子さんの呪文に関しては大正解です。ルーン繋がりでレヴァリアースから引っ張ってきました。効果が若干違っているのはスヴィア・ブレイクに対抗しての事です。

>鮭缶さん
 あー、脳内プロットなら(汗
 作者はプロット立てるのが苦手なのでほとんど脳内プロットとメモ書きを組み合わせて書いてます。
 設定に関してはある程度煮詰めてますが、シナリオの方は半分くらい行き当たりばったりだったり(汗

>文駆さん
 倒れる度に立ち上がり、その度に強くなる。そう、彼こそが人類の決戦存在HERO。
 いずれ出会う『この世全ての不幸』との戦いの日々まで、彼はひたすらに戦い続ける。
 …………嘘です。
 今回の本編を見ると判ると思いますが、かなり(精神的にも)強くなってます。ただ天敵がもの凄く多いので不幸度は変わりませんが。
 ちなみに更新が早いのはプロローグは先に書き上がってたからです。作者は毎日更新したり半年更新しなかったりと、不定期連載の鑑のような人間ですので、執筆ペースに関しての期待は止めた方がよろしいかと(汗

>サイサリス
 まあ危険度は大して変わらないですが、衣食住が提供されるだけマシかも?
 前述のように橙子さんはどちらかと言うと魔術師的な目で和樹を見ているので、そういう意味で襲われる事は無い……かも知れません。
 ちなみに、仮に橙子さんが隠れて『和樹くん人形』とか作っていても、それは作者の関知する所ではありませんので、あしからず。

>雷樹さん
 実家の方からは『帰って来るな』とのありがたい電話をいただいております。別に和樹が嫌いなわけではなく、損得勘定から。つまり、そんな親なんです。
 千早に関しては原作設定なので幼なじみじゃない……筈だったのですが、どうも作者、小説とアニメの設定を混ぜて憶えていた模様(汗
 とりあえず設定は基本的に小説準拠、シナリオはアニメ混じりで行こうと思います。


 本編開始しました。
 レス返しでも触れていますが、知人から小説とDVDを強奪して借りて確認した所、作者は小説とアニメを混同して憶えていた事が判明しました(汗
 作者は小説設定で書いているつもりだったのですが、和樹の家が神社とか夕菜が泣いていた場所が河原とか、あの辺りアニメの設定だったようです。
 そういうわけで開き直って設定は小説準拠、シナリオはアニメ混じりというスタンスで行くことにしました。

 今回は前後編に分けた事もあって少々ローテンションになってしまいました。キシャーに関して投げっぱなしですし。その分、次回はテンションが上がるかも知れません。

 それはそれとしてキシャーが思ったより書きづらいです。
 後々キシャーがキシャーでありながら地味キャラになったりしたらどうしよう、そんな事になったら和樹の不幸度が下がってしまう、と今から悩んでいる作者であったり。

 以上、あとがきという言い訳 by ドミニオでした。

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