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▽レス始

「まぶ月〜第壱夜〜(月姫+まぶらほ+他)」

ドミニオ (2006-02-01 00:56)
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 前回のあらすじ

 立花玲夜20歳。大学2年。
 隠れオタク歴3年。デビューしてから1年半。
 死後の案内人のうっかりミスで死んでしまった俺は、諸々の都合により生き返る事になった。
 が、元の身体がミンチになった俺は何故かアニメやマンガ、ゲームの世界に飛ばされたのだった。


「で、今に至るわけだが」

 鏡を覗き込む。
 映ったのは10歳くらいの男の子の顔だった。

「んー。可も無く不可も無く。しかもかなりの女顔。評価は中から中の上。将来性に期待。……って所か」

 うむ、誰だこれ
 少なくとも俺の顔じゃない。

「……そう言えばバイト君が『若返ったり性別変わったり他人に憑依したりするかも』って言ってたな」

 マジか、よりによって引いたのが『他人の人生』かよ。

「つ、ついてねぇ……」

 せめて性別にして欲しかった。
 あれならまだマシだ、自分の名前が使えるし

「…………諦観の精神を思い出せ」

 諦めろ、どうしようも無いんだからと自分を叱咤する。

「まずは情報収集からだな」

 部屋の中を見回す。
 布団に本棚に勉強机、机の脇にランドセルが置いてある。

「ランドセルの中身は……と、生徒手帳発見。えーと、名前は式森和樹……で、小学3年生っと」

 ついでに窓の外に見えるのが神社の境内って所からして、どうやらここはまぶらほの世界みたいだな。

「本編で和樹は高2だから、今は8年前って事か。確か魔法回数の残りは7回……いや、8年前ならまだ8回だっけ?」

 使い切らないように注意しないとな。
 俺が介入してる以上確実に戻れるとも限らないわけだし、出来れば塵になるのは避けたい。

 そんな事を考えながら部屋を荒らして探索していて気付いた。
 部屋の何処に何があるか、思い出せる。

「……なるほど。意識すれば式森和樹の記憶を自由に引き出せるのか」

 これはかなり便利だと思う。
 まだ雪を降らせていない事も判った。よって魔法回数は残り8回。

「けど所詮は他人の記憶。意識しないと引き出せないんじゃ後々問題が出てくる」

 まずは式森和樹の記憶を自分の物にしていく必要がありそうだ。

「よし、そうと決まれば周辺の探索にでも行くか」

 和樹の記憶だけでは地図を見ているのと変わらない。
 今は夏休みらしいから大丈夫だが、いずれ新学期が始まれば学校に通わなければならない。
 その時に『道が判りませんでした』なんて言おう物なら痴呆症を疑われる事必死だ。


 だが僅か30分後に俺はこの行動を痛烈に後悔する事になるのだった。
 ……ちくしょう。


「…………マジデスカ」

 出会っちゃいましたよ。
 河原で泣いているピンクい髪をした女の子。

 うん、何だか凄く見たことある気がするぞ。

 普通ならっていうか原作通りなら話しかける所なんだが……。

 ぶっちゃけ俺はキシャーに関わるのはゴメンだ

 と、いうわけで。

「見なかった事にしよう」

 俺は踵を返し、一目散にそこから逃げ出した。
 いつの間にか泣き声が聞こえなくなってたり、何だかじーっと見つめてくる視線を感じたり、どろどろとした黒いオーラを感じる気がするけど気のせいだろう。

 気のせいという事にしておいて下さいお願いします。

「はっ、はっ、はっ……はあああああああ」

 逃げ切った事を確信すると同時に倒れ込む。
 地面は葦の長い草で覆われており、さやさやと風に揺れる様がキシャーからの逃亡に憔悴した精神を癒してくれる。どうやらここは病院の裏手らしく、すぐ近くには白い建物が見えた。

 ……ん? 何か憶えのあるシチュエーションだな。

 微妙に嫌な予感がする。
 早く移動した方がいいと考え立ち上がろうとした所に、寸分の狂いもないタイミングで声が降ってきた。

「君、そんなところで寝ているとあぶないわよ」

「は?」

「は、じゃないでしょ。君、ただでさえちっこいんだから草むらの中で寝転がってたら見えないのよ。
 気をつけなさい、あやうく蹴り飛ばされるところだったんだから。」

「……うわー」

 恐る恐る見上げると、そこには赤い髪膝に届くほどの長髪Tシャツにジーンズなんてラフな格好で片手にトランクを提げたお姉さまが居た。

 いや、流石にそれは無いだろう。だってここまぶらほの世界だし、と無駄な現実逃避を重ねつつ例のセリフを口に出してみる。

「蹴り飛ばされるって、誰に?」

「ばかね、ここには私と君しかいないんだから私に決まってるでしょ。まさか君が自分を蹴飛ばすわけじゃないでしょ。」

 ダメでした。無理でした。完璧に寸分の狂いも無く予定調和のセリフを返してくれました。ってか明らかに配役が違うだろう、これ!?

「――――な」

 なんで青子先生がここに居るんですかーーーーーーーーーー!!?

 え、なに、なんで月姫のキャラがここにいんの? ここ、まぶらほの世界よ? ってかアレか、実はまぶらほと月姫のクロスオーバーでしたとかいうオチか? それってアリなのかよ、おい!! せっかく平和っぽい世界に来たってのに一気に死亡確率上がったじゃねえか! こんなん聞いてねえぞ、ちくしょー!!

 ここぞとばかりに混乱しまくる俺。
 そんな俺を青子先生の言葉が現実に引き戻す。

「――――へぇ。君、魔術師なのね」

「え?」

 魔術師。
 その言葉の意味はまぶらほと月姫では大きく違う。
 ここはまぶらほの世界、のはずだ。だけど、目の前に居るのが正真正銘月姫の青崎青子なら、その口から出る『魔術師』という言葉の意味は――――

「…………人間は生まれながらにみんな魔術師だって、先生が」

「あはは、あんな与太話信じてるんだ?」

 やはり、違う。

「あんな『もどき』じゃなくて、魔術回路を持ったちゃんとした魔術師の事よ。あ、もしかして先祖返り?」

 もう間違いない。この世界にはまぶらほ世界の魔術師月姫世界の魔術師が混在している。
 そして、どうやら俺は後者らしい。

「勘弁してくれ……」

 これが主人公属性ってヤツなら、むしろ全力で遠慮したい。

「ん? 何か言った?」

 呟いた言葉は青子先生にも聞こえたらしいが、何でもないと言ってやり過ごした。

 状況はある程度理解した。
 この世界には二種類の魔術師が居る事。俺が月姫世界における魔術師、少なくともその資質を持っている事。

 そして、今の俺では魔術師の闘争にでも巻き込まれた場合、ほぼ確実に死ぬであろうという事。

「ねえ、キミ。聞いてる?」

「あ、はい――ってうわァ!?」

「何よ、失礼ね」

「いや、だって……」

 近い。近すぎる。思考に没入していて気付かなかったが、青子先生は息が掛かるくらいに顔を近づけて俺の顔を覗き込んでいた。
 ……むう。改めて近くで見ると、やっぱもの凄い美人なんだよなぁ。……顔赤くなってないよな、俺。
 ちょっと内心ドキドキしていたが、青子さんの方は気付いてないらしくあっさりと顔を離した。

「うん、やっぱ魔術回路があるわね。しかもかなり頑強なのが。
 ――と、いうわけで。君、私の弟子になりなさい!」

「へ?」

 何、その寝耳に水な展開。

「へ、じゃないわよ。君、師匠居ないんでしょ。そのままだと危ないし、君の魔術回路は面白いから鍛え甲斐があるわ」

 お。面白いって……。そんな理由で弟子を取ったりしていいのか? 世界に4人しか居ない魔法使いが?

 ――などという俺の困惑を余所に話は勝手に進んでいくわけで。

「私の名前は青崎青子っていうの。好きによんでいいわよ」

「え、じゃあ青」

「ちなみに名前で呼ばれるの嫌いなの」

 ……笑顔が怖いです、先生。

「じゃあ先生、とか」

「んー、それもパス。その呼び方をする子はもう決まってるから」

「え?」

 それはつまり、この世界には遠野志貴も存在するって事なのか?

「えーっと、だったらお姉ちゃん、とか?」

 ピシリ、と空気が歪んだ。
 青子先生の表情が無くなっている。
 さ、流石にお姉ちゃんは無かったか……?

「ちょっともう一回呼んでみて」

 近い近い近い顔近づけないでください青子先生照れるとか恥ずかしいとか以前に怖いです!

「………………お、お姉ちゃん?」

 瞬間、青子先生が稲妻の速度で顔を背けた。

「グッジョブ!」

 親指を立てた拳を突き出す青子先生。
 すいません、何がグッジョブなんでしょうか? 何で顔を背けるんですか? というかそのボタボタ零れてる赤いのはもしや鼻血ですか?

 びちゃびちゃと巨大な水たまりを作っていく赤い水
 明らかに致死量を超えるその量に俺は思った、『腐女子ってすげぇ……』と。

「……だ、大丈夫ですか?」

 正直関わりたくなかったが、そういうわけにも行かないので声を掛ける。

「ええ、大丈夫よ。それより君、名前は?」

「し、式森和樹……です」

「それじゃ和樹、今日から君は私の弟子よ。みっちり仕込んであげるから覚悟しなさい」

「は、はいっ!」

「よし、それじゃまずは挨拶回りでもしましょうか」

「挨拶回り?」

 世界中ブラブラしてふらっと現れては騒動だけ起こして居なくなる貴方が? 何処に?

「まずは姉貴の所に行って、次に宝石の爺さん。それからアルトルージュ達に見せに行って、ナルバレックをからかってから、ついでに志貴の所にも寄ろうかしら」

 すいません。危険人物のオンパレードに聞こえるのは俺だけでしょうか?
 遠野志貴はまあ、いいとしても、だ。

 貴方燈子さんと会って喧嘩しないで居られるんですか?

 ゼル爺やアルトが死徒だって判ってますか?

 協会と教会の全面戦争起こしたりしませんよね?

 俺は白騎士に尻を狙われるのはゴメンですよ?

「さあ、行っくわよ〜♪」

 ズルズルと引きずられていく俺。
 ドナドナをBGMに気分は売られていく子牛。
 もしかしたら俺は選択を誤ったのだろうか。

 …………あれ、そもそも俺に選択の自由ってあったのか?


<<補足という蛇足>>
・魔法[1]
 世間一般に知られている神秘。まぶらほ世界の魔法。
 リンカーコア(魔力源泉核)より魔力を直接放出し、無色の魔力に意志を通す事で、魔力の許す限りあらゆる神秘を再現する『初心者向け魔力制御法』。
 魔力に意志を通す際には術者の自己暗示が重要であり、魔法の存在が一般化している現在では、常識との兼ね合いによりこの自己暗示がかなり強化される。よってかなりお手軽な魔力制御法と化しており、やろうと思えばまるっきりの素人でも使用可能。
 その具現化原理は極小規模ながら固有結界に近く、魔法使用者は命を削って大禁呪の真似事をしているに等しい。
 無理矢理リンカーコアから魔力を放出させている為、使うたびにコアに回復不可能のダメージを与える。このダメージが限界値に達するとコアが崩壊し、肉体は塵に変わる。魔法回数とはつまり、リンカーコアがダメージに耐えられる回数である。

・魔術
 世間から隠匿されている神秘。型月世界の魔術。
 魔術回路を水路とする事でリンカーコアにダメージを与える事なく魔力を放出する技術。 ただし回路を通す事で術者の色に魔力が染まってしまう為、望む事象を引き出すにはそれなりの手順や行程を必要とする。
 以下、詳細はほぼ型月作品のそれと同じ。

・魔法[2]
『現代の技術ではどうしても再現不可能な出来事を可能とする神秘』。型月世界の魔法。
 古代においては魔術のほとんどが魔法と呼ばれたが、文明の発展とともにその多くは魔術へと堕とされた。現代においても魔法と呼ばれるものは僅か5つしか残っていない。
 以下、詳細はほぼ型月作品のそれと同じ。
 なお本作品において(回路を持った)魔術師は、魔法[1]を『もどき』、魔術を知らずに一流の魔術師を自称する者を『魔術師気取り』などの蔑称で呼ぶ事がある。


<<あとがきという言い訳>>
 9時間くらいぶりでした。ドミニオです。
 まずはレス返しを。


>sannさん
 こういうネタ物は自分で書いていて面白いのか今ひとつ判らないので、喜んでいただけたようで幸いです。
 主人公は至極ありきたりに和樹に憑依してしまいました。ついでに容姿がやや上方修正されていたりもします。
 仲丸という手もあったんですが、腐女子な方々を満足させるのに役不足なもので……月姫キャラだとキャラスペックの幅が狭まってしまいますし。

>東西南北さん
 最初はオリキャラでやるつもりだったんですが、どんなキャラにしようか考えている時に手元にあった「ここにいる睡蓮」を見てオラクルを受信しました。
 ただ、書いてみて余りにもキャラが原型を留めて居ない上に、たかが導入部がやたら冗長に……どうしようか結構悩みました。
 ……結局そのまま突っ走りましたが(汗


 今回のを読めば一目瞭然ですが、うちの夕菜はキシャーです。
 元々原作の夕菜も余り好きな方では無かったんですが、ここの掲示板でキシャーな夕菜達を見て『あぁ、こういうのもアリなんだ』と悟りました。
 我ながら最初はキシャーという言葉自体知らなかったとは思えません(汗

 なお、前もって言っておくと、作者は『最強物』とか『御都合主義』とか『ハーレム(割とプラトニックな)』とか、かなり好きです。
 そういうわけで主人公はかなり強くなる予定です。まあ無茶なパワーバランスにするつもりはありませんが、中身は割とヘタレですし。

 さて、次回はプロローグ三部作の最後となります。
 その後の投稿がどうなるかはともかく、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 以上、あとがきという言い訳 by ドミニオでした。

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