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▽レス始

「まぶ月〜第零夜〜(ここにいる睡蓮+他)」

ドミニオ (2006-01-31 16:01)
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「つまりあれか?」

 俺は目の前の二人組に問う。

「俺が死んだのは、あんたらのミスのせいだと」

「正確にはこいつのせいだけどな」
「まさか同姓同名の者が居るとは我ながら迂闊じゃった」

「そのままだとあんたらの都合が悪いんで生き返ってくれと」

「現世と幽世の魂魄数のバランスとか……まあ、色々難しいんだ」
「我のエリートコースにも響くのでな」

「だけど元の身体はミンチになってるから別の世界で生き返る事になると」

「流石に電車にひかれちまうとなぁ……」
「上半身と下半身が泣き別れしておったぞ」

「あっはっは。なるほど、そりゃしょうがねえなあ」

「あー、判ってくれたか?」
「これで我の玉の輿極楽生活も安泰じゃな!」

「「「あっはっはっはっは」」」

「っざけんなボケーーーー!!」


 ――話を整理しよう。
 事の始まりはどうって事無い、ありふれた事だ。
 最近貧血の多かった俺は大学へ向かう途中で駅のホームから転げ落ちた。で、ちょうどホームに入ってきた電車にひかれた。
 別に痛いとか苦しいとか、ましてや恐怖なんて感じなかった。
 当たり前だ。落ちたと判って混乱した頭のまま顔を上げたら目の前には電車がいて、そのままブラックアウト。
 何かを感じる暇なんてある筈も無い。

 で、気付いたら辺り一面蝋燭だらけのこの不思議空間に居たと言うわけだ。

「全く心の狭い男じゃな……」

 で、このブツブツと文句を言ってるやたら古風なセーラー服を着た女子高生らしきものの名前は睡蓮。何でも『死後の世界の案内人』らしい。

「無茶言うなって。普通そんなパッと受け入れられる筈無いだろ」

 こっちのTシャツにジーンズを着た高校生っぽい男は有川恵。助手のアルバイトとの事。ちなみに『バイトってありなのか?』と聞いたところ乾いた笑いを返された。彼にも色々あるらしい。

「んじゃ、もう一度訊くが。――――俺が死んだのはそっちの睡蓮とやらのうっかりミスのせいなんだな?」

「出来れば否定したいんだけどな」
「まさか死亡者と同姓同名のが居るなぞ予想外だったのじゃ」

 はっはっは、それは俺の名前が男らしくないと言いたいんだな?

 ――ちなみに俺の名前は立花玲夜と言う。
 男でもギリギリありだと思うのだがどうだろう。

「そうか判った。判ったから一発殴らせろ

 むしろ殺りたい。撲殺したい。英語で言うと殴っ血KILL?

「何じゃと!? 女を殴ろうとはお主本当に人間かッ!?」

「人間のカテゴリーから外れてるヤツに言われたくないわ!」

 そもそもうっかりミスで人を殺しておいて、こいつには罪悪感とか謝罪の気持ちとかは無いのかと問いたい。

「あー、そのだな」

 肩を叩かれ振り返ると、バイト君が憐憫の表情を浮かべていた。

「悪い、諦めてくれ。言っても無駄だから」

 その遠い目に『ああ、こいつも被害者なんだな』と悟る。

「俺の時なんか間違えて妹の灯を消すし、助かったと思ったら俺が成仏出来なくなるし、何かミスする度に俺が後始末に走らされるし」

 そもそも何で俺助手なんてやらされてんの――と、ブツブツ言い出したバイト君を見て、自分はまだマシな方なのだと理解した。
 正直、理解したくなかった。

「ああ。まあ、あれだ。お前の場合は悪い事ばっかでもないぞ。お前が行くのはアニメとかマンガ、ゲームの世界だからな」

 何とか持ち直したらしいバイト君の言葉に耳を疑う。

「…………熱とか無いよな?」

「熱は無い。額に手をあてるな。大体熱出したくても出せないから俺の場合」

 俺の手を振り払ったバイト君の声に冗談の響きは微塵も無かった。

「……マジか?」

「嬉しいだろ?」

 ニヤリと笑ったその顔は笑顔というよりは悪魔の誘いに見えた。
 だが言ってる事は事実。隠れオタク歴3年、オタクデビューから1年半の俺としてはアニメやマンガ、ゲームの世界とは=パラダイスに相違ない!

「……ちなみに主人公属性とかは?」

 言葉には出さず笑みで答えるバイト君に、俺は無言で右手を差し出した。

 ガシィッ!

「「契約成立!」」

 何がどう契約なのかは判らないが、少なくとも固く握りしめた手の中に相互理解が生まれたのは間違いなかった。

「おーい、話ついたぞー」

 で、この自体を引き起こした当の本人はと言うと、

「ぁむ、んぐ。…………ん? 何じゃ終わったのか?」

 何故かあるコタツに潜って蜜柑を食べていた。

「殴っていい?」
「思う存分」

 魂魄体の俺は殴れなかったので、バイト君に代わりに殴って貰った事を追記しておく。


「うぅぅ……」

 頭を抑えてうずくまる睡蓮を無視して、バイト君と話を進める。

「で、まずはコレなんだが」

「……ナニソレ」

 バイト君の手には何やら黄金色に輝く棒のような物が握られていた。
 若干くすんだ色をしているが、よく見てみると表面にびっしりと細かい溝が掘られているせいでそう見えるだけだと判る。

「トネリコの枝、ゾハルの燭台、天御柱、聖樹イシェド、天の梯子、宇宙軸。まあ色々呼ばれてるけど、俺は見た目から取って黄金のジェド柱と呼んでる」
「……いや、名前じゃなくてそれが『何』なのかが知りたいんですがネ」

 俺の胡乱げな問いに対して、バイト君は爽やかな笑顔全開で答えてくれた。

「イイモノだ!」

「嘘だッ!!」

 叫ぶ俺に取り合わず、こちらに棒を投げてくる。
 反射的に受け取ってしまってから『しまった』と思うが、もう遅い。

「――って、あれ?」

 てっきり何か良からぬ事が起きるに違いないと構えていたのに反し、黄金の棒は掴んだ瞬間溶けるように消えてしまった。
 ……何だったんだ、結局。

「さて、次なんだが」

フォロー無しかよ。

「まあちょっとした注意点なんだが。行き先によって若返ったり性別変わったり他人に憑依したりするから、そのつもりでいろよ」

 ふーん、若返ったり性別変わったりねぇ……………………………………ってえ!?

「ちょっと待て。若返るのはいいとして、性別変わったり他人に憑依したりってのは洒落にならんぞ!?」

 確かにTSジャンルやトリップ物二次創作なんかもあさるように読んでるが、自分が体験するのは遠慮したい。

「そうは言ってもな。例えば『マ○ア様が○てる』の世界に男のままで行きたいか? 主人公属性持って?」
「う゛」

 脳裏に浮かぶのは、セーラーカラーは翻らないようにスカートのプリーツは乱さないように登校する男子高校生

「い、嫌すぎる……」
「だろ? まあ仕様とでも思って納得してくれ。
 あ、それと行き先はランダムになるけど、それも仕様だから」
「へいへい」

 まあアニメの世界に行けるんだ。多少の事には目をつぶろう。
 ……諦観っていい言葉だよね。

「そういや、何で行き先がアニメの世界なんだ? 普通に平行世界とかじゃダメなのか?」
「あー、その辺も色々理由があるんだけどな。説明はめんどくさいから割愛」

「待てコラ」

 普通そういうの略さないだろ!? インフォームドコンセプトを見習え!

「どうせ結果は変わらないぞ?」

 判った。つまり聞くだけ無駄なんだな。

「……もういいから、とっとと生き返らせてくれ」
「オーケー。睡蓮、飛ばすから準備しろ――って何寝てやがるボケー!!

 器用な事にうずくまったまま寝ていたらしい。
 とりあえず芸術的な踵落としだったとだけ言っておこう。


「で、今から生き返らせるわけだが――――気を付けろよ」

 今更何を?

「行き先は何処になるか判らないわけだからな。もし死人が出るような作品だったらもれなく毎日が Dead or Alive のスリリングな日々にご招待だ」

「――は?」

 絶叫マシンなんて目じゃねェぞ、なんて笑顔で言うバイト君だが、こっちにとっては笑い事では無い。

 っていうか下手したら即出戻り!?

「ちょっと待てい!! そんなの聞いてな」
「はーい、一名様ご案なーい」

 ドンッと突き飛ばされる。
 背後には何時の間に空いたのか底の見えない穴が空いており、あっさりと呑み込まれる俺の身体。
 遠ざかる穴の入り口ではバイト君がにこやかに手を振り、その横で睡蓮が煎餅をかじっていた。

「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったなーーー!!」

 思わず某三人目の子供のセリフを叫ぶ俺。

 ドップラー効果と重量加速度をリアルに感じつつ、ひたすら落下しながら俺は誓った。
 ――生き返ったらまずジャプニカ暗殺帳に二人の名を書き加えよう。


<<補足という蛇足>>
・睡蓮
 森山大輔短編集『ここにいる睡蓮』より引用。
 恵の時にうっかりスキルでも身につけたのかその後もミスを連発。最近は既に開き直っていて性格まで変化している。ちなみに未だにエリートコースに乗っていると思ってるのは本人だけ。

・有川恵
 睡蓮の被害者第一号。原作後、一応は分離出来たが、結局魂魄が安定してしまって成仏(転生)出来なくなった。現在は成り行きで助手のような事をさせられ、ことある事に睡蓮の後始末に走っている。ちなみに恵は魂魄体だが、安定している上に睡蓮と波長が近くなっている為、睡蓮に触る事が出来る。

・黄金のジェド柱
 某『萌えろちっくラブコメディ』に出てくるアレから名前だけ借りている別物。主人公が危険な世界に飛ばされても生き延びられる力として与えた物。背景として、こっち側で寿命の調整が終わるまで出戻りされると面倒だから、という打算があったりする。

・立花玲夜
 本作主人公。20歳。工業系大学二年。
 高校入学と同時にたまたま席が隣になったクラスメイトにオタクロードに引き込まれる。以後卒業まで隠れオタクとして活動し、大学入学&一人暮らし開始とともにデビューする。
 なお主人公の名前がアレなのは母親が実はそっち系(つまり同類)だったというしょーもない裏事情が存在する。


<<あとがきという言い訳>>
 はじめまして。ドミニオという者です。
 まぶ月というタイトルの通り、まぶらほと月姫(型月作品)のクロスオーバーです。そして憑依物です。キャラ壊れてます。ついでに今回まぶらほと月姫が影も形も出ておりません。

 …………(汗

 NT初投稿なのにあからさまに問題起こしそうな作品を投稿している自分は何なのだろうと自問自答。
 一応プロローグ部分にあたる第0〜2話は既に書き上がっています。連続投稿が禁止らしいので時間をあけながら投稿していく予定です。
 が、今作品、実は多分に実験要素を含んでいます。
 要するに『こんな個人的趣味だけで突っ走った作品が受け入れられるのか』といった感じですね。
 そんなわけで、その後投稿を続けるかは皆様の反応を見て決めようかと思っています。
 それでは短くなるか長くなるかは判りませんが、しばらくの間お付き合い頂ければ幸いです。
 以上、あとがきという言い訳 by ドミニオでした。

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