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▽レス始

「宵闇に映える〜参〜(ネギま!、型月,etc)」

Dirtyface (2006-01-28 09:18/2006-01-28 09:21)
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 波乱に満ちた修学旅行が終わり、また学園生活が始まった。

 学園生活に変化はない。あるとすれば、僕の『事情』を知る者が増えたことぐらいだろう。
 あの『修学旅行』以来、僕は自分の無力さに打ちのめされていた。

 六年前の大災厄、僕の生まれ故郷を襲った、謎の魔族大量発生による殺戮事件。
 運良く村から離れていた僕がたどり着いたときには、すでに『終わっていた』。
 そう。
 『終わっていた』のだ。
 主演は村の人々、助演は魔族たち。彼らによる『血塗れの饗宴』は。
 村に足を踏み入るとそこは、すでに異界だった。
 『紅い』ペンキの色が褪せた壁の建物の横を通り抜け、村のみんなが利用する広場へと向かった。
 僕がいつも近道として使う、道とは言い難い道の向こうからは、甘ったるい腐った果実の匂い。
 まだ四歳になったばかりの僕は、必死に足を動かした。
 そして広場にたどり着いたとき、僕は視た。

 ――咲き誇る真紅の華々を。

 ペンキだと思っていた壁一面の『紅い』色は、夥しい量の血液で。
 今尚こぼれ、流れ出る液体は人の身体から洩れでたモノ。
 鼻につん、とつく刺激臭は鮮やかな緋色。
 その中心に、ひどく不細工なマネキンがあった。
 どれもが歪んだ表情をしていた。或るものは両腕が無く、或るものは膝から下が無く、或るものは腰から上下に解体かれていた。これらは、三流芸術家がつくった不出来なアートのオブジェのように、散乱していた。

 ここは世界の終焉だ。
 鮮烈な紅色に世界は崩壊を迎えている。

 ―――怖かった。怖かった。ただひたすらに怖かった。
 淡い茶色のローブの裾は、今は朱色。
 アンコールに応えて、今尚舞台に残っている助演俳優たちは、狂ったワルツを踊るために僕に殺到してきた。

 ………お父さんはヒーローだから、ピンチのときに駆けつけてくれるんじゃなかったの?

 ――瞬間、閃光、轟音。
 闇の中にいつまでも軌跡が残るような、白銀の一撃だった。
 そして、恐怖で身をちぢ込ませることしかできなかった僕の前に
 あの人は立っていた。
 神代の英雄の如き圧倒的な魔力と威厳を纏って。

 それが僕と『Thousand Master』と呼ばれる父との初めての邂逅だった。

 ――その後、恐怖に怯えてその場から逃げ出した僕をかばって、スタン老と姉が魔族の攻撃で石化の呪いかけられてしまったが、後からやってきた父が、姉の石化だけは食い止めてくれたため助かった。
 それ以来、僕は強くなるために必死に魔術の勉強をした。
 ――そうか。……お前がネギか。
 あの時何もできなかったのが、悔しくて。唯唯悔しくて。
 ――大きくなったな。
 もう何も失いたくなくて。
 ――この杖をやろう。俺の形見だ。
 あの日の父の背中に、『僕の理想』に追いつくために。

 …………それなのに、また何もできなかった。
 一般人の明日菜さん達を巻き込んで、色々な人たちに助けてもらって。
 それでも何もできなかった。
 ……召喚された妖魔を食い止めたのは?
 ……さらわれた木乃香さんを助けたのは?
 ……封印を解かれた幻想種を倒したのは?
 僕は、何一つできやしなかった。
 僕は、強くなると、失わないために強くなると、誓ったはずなのに。
 僕は、六年前から何もかわっていない。
 僕は、……僕は、

 ――無力だ。


 広場には、何も無かった。
 まだ舗装されたばかりのアスファルトはまわりの木々の影にいくらか侵食され、見るものに物寂しさを誘う。
 空には月。 
 此処は、すでに異界と化していた。
 広場から見える建物の灯りは、まるで彦星と織姫のように、遥か遠く届かない。
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは麻帆良学園から外れた広場にやってきた。
 黒いローブは鴉の羽の如く闇に紛れる。
 彼女は微かに吹く風を全身に受けながら、目にかかる前髪をわずわらしそうに払いのけながら歩く。
 広場の中心にある噴水の前までたどり着いたとき、化け物に出会った。

「見つけたぞ。『吸血鬼』」

 影絵の国で、闇より昏いカソックを着た男が立っていた。
 月の光が眼鏡に反射し、男の貌を歪ませる。
 男の存在は、ひどく幽鬼めいていた。
 男とエヴァンジェリンはお互い噴水の前に立つ。
 二人の距離は、『瞬動術』や『縮地法』を用いれば一瞬で飛び込める距離だろう。
 深夜とはいえ、月光のおかげでお互いの姿はよく見えたし、彼らの間を妨げるものは深夜のため給水が止まった噴水だけであったので、お互いの声が聞こえるのは当然のことだった。

「『聖堂騎士』―――アンデルセンだと」
「死者は死者らしく、大人しく死んでいればいいものを。血に飢えた『化け物』が。」
「―――それは貴様のほうだろう。『第十三課』がわざわざこんな極東の島国に何の用だ?」

 エヴァンジェリンは先ほどから感じる警鐘をそのままに、アンデルセンを凝視する。
 そこにあるのは、純然たる殺意。彼女はそっと右手で自らの口を覆った。
 応えるように、アンデルセンは両手に銃剣をもち、胸の前でクロスする。
 何、分かりきったことだ、吸血鬼、とアンデルセンは狂喜の混じった笑みを浮かべた。
 この時のエヴァンジェリンは、封印されていようが関係なく、滅殺対象だ。

「我らは使徒にして使徒にあらず。信徒にして信徒にあらず。教徒にして教徒にあらず!!逆徒にして逆徒にあらず。我ら死徒なり、死徒の群れなり。ただ伏して御主に許しを請い。ただ伏して御主の敵を打ち倒す者なり。闇夜で短刀をふるい、夕餉に毒を盛る者なり。我ら刺客なり。刺客『イスカリオテ』のユダなり!時至らば、我ら銀貨三十神所に投げ込み、荒縄をもって己の素っ首吊り下げるなり。さらば我ら徒党を組んで地獄へと下り、隊伍を組みて布陣を敷き、七百四十万五千九百二十六の地獄の悪鬼と合戦所望するなり。我ら神の代理人、神罰の地上執行者なり!―――故に、『吸血鬼』貴様は殺す。動いても殺す。瞬きしても殺す。息をしても殺す。殺してからも尚殺す。貴様の存在は神の名のもとに滅殺する。理解したか?『化け物』!!」

 その言葉に二人の枷は完全に解き放たれた。

 

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