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「これが私の生きる道!出世編?1(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-01-22 04:57/2006-05-05 00:30)
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約一年ぶりのアカデミーは、卒業当時と全く変わ
っていなかった。
校門をくぐりグランドの方に目を向けると、生徒
達がナイフを使った格闘戦を行っている。
一人の藍色の髪で少しおでこは広いが、男前の生
徒が教官を倒してしまうシーンを目撃した。

 「まさか、あのゴリ男を倒すなんてね。凄い逸
  材」

ゴリ男は本名は忘れたが、アカデミー最強の男で
、俺が奴を倒せたのは卒業直前だったのに、入学
して5ヶ月の生徒が倒すとは物凄い事だ。
ちなみに、ゴリ男は奴のあだ名で理由は見た目が
ゴリラにそっくりだからである。
みんな日頃は「教官」と呼ぶので、本名を知って
いる人はほとんどいない。

校長室に向かいドアをノックして部屋に入ると、
校長は不在でよく知った顔がいた。

 「おっさん!じゃなかった・・・。スズキ部長
  お久し振りです」

しまった!数ヶ月前は部下だったが、今の彼は出
世していたんだ。
彼は始めはただの平の教官だったのだが、指導の
巧みさと、教え子達の生存率の高さで名を上げ、
その実績でモビルスーツ科教育部長の肩書を貰っ
て、訓練マニュアルの作成と教官の指導まで行っ
ていて、臨時教官の俺には雲の上の人なのだ。
コーディネーターは優秀なせいか、個人プレイに
偏る兵士が多い。
その点、地球の日本出身の俺や彼はチームワーク
を尊重する。
アカデミー卒業後、俺と「ジロウ」に編隊行動や
チームプレイの大切さを実地で教えてくれた「お
っさん」は大切な師匠でもあるのだ。

ちなみに、もう一人の弟子である「ジロウ」はそ
の教えを忠実に守り大戦果をあげているようだ。

いきなり失敗したなと思っていると。

 「どうしたんだ?お前が敬語なんて。悪い物で
  も食べたのか?二人きりなんだからいつも通
  りでいいよ」 

と昔のままの返事が返ってきた。
その変わりの無さにほっとする。

ここで、一つ疑問が出てくる。
血のバレンタインから五ヶ月、まだアカデミーは
卒業生を出していない。
それなのに何故「おっさん」の教え子が戦場で戦
果を上げているかという疑問だ。
答えは、期間3ヶ月のパイロット養成コースがあ
るからである。
このコースは必要な事のみを教え、短期間で戦場
にパイロットを送るというジェットコースターカ
リキュラムである。

彼らはパイロットのみで出世はできないが、戦果
や任務達成率に応じて報酬が上がるシステムにな
っており、お金が欲しい人には大人気のシステム
になっていた。
この話を初めて聞いたとき、出世に縁遠い俺は、
「こちらにしておけば良かったな」と思ってしま
ったほどであった。
養成期間が短い気がするが、指揮を執るわけでは
無いので、アカデミーを半年で卒業よりはマシな
気がするし・・・。
このコースの募集は毎週行われており、「おっさ
ん」はメチャメチャ忙しいようだ。 

 「俺の任務聞いてる?」

 「ああ、聞いている。大変だな。同情するよ」

 「そんなに使えない?」

 「いや、ものすごく優秀だ。成績は下駄を履か
  せなくてもトップ5だし。それでも、前線に
  出して100%戦死させないなんて、虫のい
  い話あるものかい」

 「まあ気楽にやりますよ。別に運悪く戦死させ
  たとしても、軍法会議にかけられるわけでも
  無いですし、出世に縁遠いのは、今日に始ま
  った事では無いでしょ」

 「しかし、上層部もバカだよな。お前が出世出
  来ないなんて・・・。クルーゼ隊長もバルト
  フェルト隊長もお前をものすごく買ってるの
  に」

 「初耳ですね。バルトフェルト隊長はともかく
  、クルーゼ隊長は」

 「二人だけじゃない。現場でのお前の評価は最
  高なんだ。ザラ委員長もお前の評判を聞いた
  から、息子を任せる事にしたらしい」

 「それも初耳ですね。プレッシャーを感じます
  よ」

 「そんなわけだから、頑張れよ」

 「わかりました。そろそろ午後の講義も終わり
  ですよね?早速会ってみますか。逸材君達に
  」

 「わかった。別室に呼び出すから待機しててく
  れ。俺は忙しいから、付き合えないけど」

 「お偉いさんはたいへんだ」

 「茶化すなよ。今度、家に飯食いに来いよ。奥
  さんと娘達を紹介するから」

 「手料理楽しみにしています」 

校長室を退出してから、面接室に入室して椅子に
座って待っていると、5人の学生が入って来た。
代表して、さきほどの藍色の髪の少年が挨拶する

 「アスラン・ザラ以下五名出頭しました」

 「ああ、ご苦労さん。俺は君達の臨時教官を拝
  命したヨシヒロ・カザマだ。よろしくな」

 「カザマ教官のご活躍はアカデミーでも有名で
  す。ご高名なカザマ教官のご指導を受ける事
  が出来る我々は幸せ者です」

 「有名ね。アカデミーでは悪名のほうが多いん
  だよね。同期のミゲルとハイネと合わせて」

 「お三人ともトップエースではありませんか」

 「他の二人はともかく、俺は落ちこぼれだから
  な。お前らにも直ぐ追い越されるさ」

この時、同期の友人であるハイネは、カーペンタ
リアを拠点にモビルスーツ部隊を率いていた。
中立を宣言したにも関わらず、大西洋連邦に侵略
されている赤道連合を援護する為である。
戦況はザフト軍有利で、もう少しで赤道連合は全
国土を回復する予定だ。
当然、赤道連合はプラントの同盟国になるわけで
、ハイネの功績はとても大きい。

そして、ミゲルは俺達がクルーゼ隊に転属するま
で、副隊長待遇で配属されるようだ。
俺のクルーゼ隊長のイメージはモビルスーツ命の
独断専行オヤジなので、ミゲルに本当の所どんな
人なのか、情報収集を頼んでおいたのだ。
部下にも無茶をさせる人だと、俺の任務達成に響
くわけだし・・・。 

 「そんな事はないと思いますが・・・」

 「まあそんな事はどうでもいいや。とりあえず
  、お互いをよく知るために、自己紹介一人五
  分以内で」

とりあえず、自己紹介をさせてみる。
要約すると、議員の息子は4人で残りの1人は軍
と繋がりの深い、プラントで知らぬ者がいない大
企業の会長の息子らしい。

まず一人目は、グランドでゴリ男を倒したアスラ
ン・ザラ。
ザラ国防委員長閣下の息子である。
母親を血のバレンタインで失い、志願したらしい

基本的に男前なのだが、少し朴念仁っぽく、押し
の強い女に弱そうなタイプである。
成績はトップでモビルスーツの操縦と格闘戦と機
械工学が得意科目である。
趣味は機械工作のようだ。


二人目は、若草色の髪の可愛らしいといった表現
がよく似合うニコル・アマルフィー。
肉親を無くしたわけではないが、血のバレンタイ
ンを見て志願したようだ。
成績は3番目らしいが、爆弾処理のエキスパート
でモビルスーツでは格闘戦が得意だそうな。
趣味はピアノ演奏でプロ級の腕前。
俺も多少は弾けるが、もう何年もやっていないの
で下手になってるかもしれない。


三人目は、銀髪でオカッパ頭のイザーク・ジュー
ルである。
見た感じ、めちゃめちゃプライドが高そうだ。
成績は二番でアスランをライバル視していらしい

モビルスーツの操縦はバランスタイプで成績も優
秀だか、キレると周りが見えなくなると考査表に
書いてあった。
「おっさん」サンクス。
趣味はチェスと乗馬と民族学研究で、組み合わせ
が謎だ。

四人目は金髪で色黒(ガン黒)のディアッカ・エ
ルスマン。
成績は4番目で、射撃が自身でもモビルスーツで
も得意だそうな。
あのプライドの高いイザークの友達が務まってい
るらしいので、意外と人間の器が大きいのかもし
れない。
趣味は日本舞踊で実家には舞台兼稽古場があると
自慢気に語っていた。
金髪ガン黒が日舞を踊る・・・。
少し噴出しそうになった。

最後はラスティー・マッケンジー。
彼は温和そうな気のいい兄ちゃんだと、第一印象
で思った。
彼は軍と取引のある大企業の跡取り息子であり、
ここの会長の機嫌を損なうと、軍人の天下り先が
減るらしいので、ある意味ザフトにとっては一番
のVIPかもしれない。
もっとも、それは余計な心配でラスティーは親の
教育方針により、一般家庭の子供と同じ学校に通
っていたらしい。
友人も普通の一般家庭の子女が多いという話だっ
た。
成績は5番目で得意科目も不得意科目も無い器用
貧乏タイプなのだが、アスラン・ニコル対イザー
ク・ディアッカで対立しやすいこのチームを上手
く間に入って纏めている力量からして、一番指揮
官に向いているタイプに思えた。

基本的に五人共、家柄や親の地位を傘にきて威張
ったり、増長している奴は1人もいないので、少
し安心していた。
これなら何とかなるかもしれないと。

 

自己紹介終了後、今日は土曜日なので(短縮カリ
キュラムなので、休日は日曜日のみ)彼らと別れ
て、自分の宿舎に行って見ることにした。
俺の住処は教官用の単身者用の部屋で3LDKの
豪華な部屋だった。
学生の頃とは大違いの待遇に驚いたが、根が貧乏
人の俺には少し広すぎる気がした。
明後日から本格的に訓練を始めるために、パソコ
ンで生徒の情報を分析してカリキュラムを組む事
にする。
さすがに5人だけ俺が面倒をみるのは、世間体が
悪いので成績上位二十名をクルーゼ隊選抜試験の
名目で訓練することになっているのだ。
二時間ほどで作業を終えると電話の呼び出し音が
鳴った。
出ると「おっさん」からで、これから忙しくなる
ので、食事会を今日に繰り上げたのだが、俺の都
合は大丈夫なのかという用件だった。


特に用事も無いので誘いを受ける旨を伝え、家の
場所を聞く。
「おっさん」は歩いて5分ほどの家族向けの仕官
用の官舎に住んでいるようだ。
手ぶらで行くのはまずいので奥さんに花束、子供
達に玩具、ついでに「おっさん」にウイスキーを
買って行く事にした。
道を歩いていると、見た事のある顔がいた。
先ほど、初めて対面したラスティーとニコルの二
人だった。

 「よう!お前達、これから遊びにいくのか?ハ
  メを外しすぎるなよ」

 「ちがいますよ。これから、予定を決める所な
  んですよ。教官」

とニコルが答える。

 「教官はこれからどちらへ?随分、沢山のお土
  産ですね」

ラスティーが俺に尋ねるので、スズキ教官の家に
誘われている事を教えた。

 「俺達も一緒に行っていいですか?」

とラスティーが聞いてきたので、「おっさん」に
確認の連絡を入れると、奥さんが張り切って大量
に料理を作り過ぎたので、大歓迎との事だった。

官舎に到着して「おっさん」の家族に挨拶をする

奥さんは写真で見たことがあるが、物凄い美人で
娘さん二人も可愛かった。
あんまり「おっさん」似ではなかったが、言わな
い事にする。
連れてきたラスティーとニコルは娘さん達に大人
気で、お兄ちゃんのお嫁さんになる発言まで飛び
出した為に「おっさん」はちょっと焦っていたが
、所詮子供の発言なので気にするなよと言ってお
いた。
父親の気持ちは独身の俺にはまだわからない。

奥さんの手料理はとても美味しかった。
特に、ちゃんとした家庭料理を食べるのが数年振
りの俺には至福の時であった。

食後、お茶を飲みながら話をする。
内容は、俺のアカデミー時代の話(多少の悪事と
暴露話を含む)と開戦から今までの経験談で「お
っさん」も東アジア共和国で戦闘機のパイロット
をしていた頃の話をしてくれた。
ニコルとラスティーはこんな話が何の役に立つの
かわからないが、真剣に聞いていたようだ。

そして、二人はアカデミーに入るまでの話と家庭
の話をしてくれて、その後はこの家にピアノがあ
るのを見つけたニコルが演奏をしてくれた。
趣味がピアノ演奏で、音楽家志望のニコルの腕前
は見事なもので、全員拍手喝采だった。
ニコルに次いで、俺も昔の経験を生かして演奏を
してみると多少勘は鈍っていたが、そこそこ弾け
たので、多少の拍手をいただいけて少し満足だっ
た。

時間が遅くなったので3人でおいとまして、途中
で二人と別れてから宿舎へ帰る。
ラスティーとニコルが良い奴だとわかった事は収
穫だった。
仲良くやれるに越したことはない。
そう前向きに考えて、床についた。

翌日の日曜日は、生活用品の買出しと昼寝で潰す

任地と違い、一日丸々休めるのは気持ちいいもの
だと久しぶりに感じた。

 
月曜日、二十人の生徒と顔を合わせる。
俺の仕事は、毎日月曜日から土曜日まで午前か午
後の時間を丸々使ってモビルスーツの搭乗訓練を
行う事だった。
毎日、宇宙空間やコロニーの平地・森林・水辺な
どで実戦に即した訓練を行う。
事前の話通り、二十人の中で五人の技量は突き抜
けていた。
他の連中も悪くはないが、五人が凄すぎるのだ。
それでも、俺から見ればまだまだヒヨっ子で、実
戦ではまだ使えないのだが、彼らが自分を特別だ
と思って天狗になってしまわないかと心配してし
まう。
多分、そこを見越しての俺の就任なのだろうが。

数日後、何時もの訓練を終えてロッカーで着替え
ていると、イザークと他の訓練生の言い争う声が
聞こえてくる。

 「ああ、何度でも言ってやる!お前達は努力が
  足りないから未熟なんだ!せっかくのカザマ
  教官の指導もお前らには(豚に真珠)だ!」

 「そんな事はない、俺達は自分なりに進歩を続
  けていし、カザマ教官のおかげでそのスピー
  ドも上がっている。いくら成績優秀でも言っ
  て良い事と悪い事があるぞ!」

 「何を悠長な事を言っている!戦局はお前のト
  ロい進歩など待ってはくれんのだ。俺達の足
  を引っ張るな!」

内容を聞く限り、俺はイザーク達に評価されてい
るようだが、余り感心しない争いである。
様子を伺うと、残りの4人の中でディアッカはイ
ザークに賛同しているようだ。
ラスティーは間に入って争いを止めているし、ア
スランとニコルは「よくないよ。そういうのは」
という顔はしているが、特に止めには入っていな
い。

このままでは埒があかないので、俺は仲介に入る
事にした。

 「おい!イザーク。お前ずい分と自身過剰にな
  ったものだな」

 「いえ!自分は増長してなどおりません。事実
  を客観的に述べただけです」

 「話を聞いてると、お前達5人はもう実戦で活
  躍出来るらしいな。たいした自身だ。俺でも
  未だに100%の自信が持てないのに」

 「我々はまだカザマ教官には及びませんが、ナ
  チュラルなどに遅れをとりません」

やっと本音を出したな。
こいつら、敵を侮ってる。
能力はあっても世間を知らなさ過ぎだ。
今の内に矯正してやる!

 「よし、そこまで言うのなら証明してもらうぞ
  。五対五で決闘だ!お前達五人と残り十五人
  の中から四人と俺のチーム対決だ。試合は明
  日の訓練時間にデブリ訓練場で行う。いいな
  !」 

イザーク達は五人で集まって相談を始めた。

 「おい、カザマ教官に勝てるかな?」

 「残りの四人は雑魚だ。放っておいて、五人で
  掛かれば勝てるだろう」

 「そうだな。俺達の実力を見せ付けてやろう」

 「訓練でも、(黒い死神)を倒した実績は将来
  の役に立つだろうしな」

 「何とかなりそうですね。僕は賛成ですよ」

 「よし決まりだ!」

いつもは張り合ってるのに5人仲良く相談ですか
?可愛らしい事で。 

 「じゃあ決まりだな。お前達は5人で作戦を立
  てておけよ。俺もメンバーを選んで作戦立て
  るから」

そんなわけで、明日は集団模擬戦が行われる事に
なった。

 


日が変わり、今日は集団模擬戦の日である。
ここは、デブリでの戦いを訓練するためにわざと
ゴミが置かれている訓練宙域である。
両チームが所定の位置につき、対決に参加しない
生徒が発光信号を撃つと模擬戦開始だ。

 「カザマ教官、我々は本当に勝てるでしょうか
  ?」

不安になった生徒が俺に聞いてくる。

 「俺の言う通りにやれば100%勝てる!あい
  つらの天狗の鼻をへし折ってやれ!」

 「わかりました。みんな頑張るぞ!」

 「「「おーーーー!」」」

発光信号が発射されてから、戦いがスタートする

俺の必勝の作戦を説明すると、メンバーは成績を
考慮せずに、一番相性のいい4人を選んだ。
次に、二人チームを二つ作り、とにかくペアを見
失わないように行動させながら、常に四機を一緒
にして自分の後ろに下げた。
俺は先頭に出てイザーク達を探す。
案の定彼らは作戦を立てなかったようで、イザー
クはディアッカと二機で左端に、間にラスティー
が入り、右端にアスランとニコルが位置していた

連携は最悪で、あいつらの人間関係の縮図のよう
な布陣だ。
俺は最初にど真ん中に突っ込んでから、ラスティ
ーに演習用のペイント銃を撃ちかけて四人から引
き離した。
ラスティーは逃げるのに必死で一人だけはぐれつ
つあり、俺に追い込まれてある場所に誘い込まれ
る。
それから、俺のチームの残りの四機がラスティー
を集中的に狙いはじめた。
いくら成績がよくてもしょせんは訓練生であっと
いう間に倒される。
その間、俺はわざと隙のある動きを見せて残りの
四機の関心を引いていた。
こいつらは、誰が俺を倒して名をあげるかに注意
がいっていて仲間のピンチに気がつかない。
後は最初と同じようにディアッカを引き離し、次
はニコル、アスラン、最後はイザークを四機でタ
コ殴りにして決闘は終了した。
俺は一機も落とさずにけん制していただけだ。

訓練が終わり、ハンガーに機体を置く。
五人の機体はペイント弾で綺麗な花を咲かせてい
た。
通常はコンピューター判定でペイント弾は使わな
いが、負けた方に掃除と整備をさせる約束で整備
科の許可を取っていた。

 「さてと、我がチームの精鋭よ、よく頑張った
  。明日は褒美に飲みに連れていってやる」

15名から歓声があがる。
とても嬉しかったようだ。
反対にイザーク達はこの世の終わりのような顔を
している。

 「さて、反省会だ。イザーク!負けた原因がわ
  かるか?」

 「俺の技量不足です!」 

 「他の連中もそう思うか?」

四人は首を縦に振る。

 「それもあるが、一番の原因は敵を舐めて五人
  でチームを組まず、己の力量を過信して単独
  行動に徹したからだ!」

 「始めに、イザーク!なんでお前は俺にはまだ
  かなわないと言いながら、単独で俺を倒す事
  にこだわった?」

 「それは、デブリで教官の動きが鈍ったからチ
  ャンスだと・・・」

 「あれはわざとやってるんだ!そんなことも見
  抜けないとはな。実戦なら死ぬな!」

 「次は、何で最初にラスティーを助けなかった
  ?」

 「教官を倒せば援護になると思って・・・。そ
  れに、他の連中にやられるほどラスティーの
  腕は悪くないと思っていたので・・・」

 「いくらお前らの腕がよくても、四機に集中し
  て狙われたら勝てるわけないだろ。あいつら
  だってトップ二十位以内の精鋭だ!相手の実
  力を見抜けないと戦場では死ぬぞ!その他に
  も聞きたい事は沢山あるが、訓練はまだ始ま
  ったばかりだし、これで終わりにしよう。だ
  が、最後にアスラン!お前らの人間関係から
  してディアッカを助ける事は期待していなか
  ったが、どうしてニコルを助けなかった?や
  はり、ニコルはあんな成績が悪い連中にやら
  れるわけがないから、俺を倒してみんなに褒
  められようと考えていたのか?」

アスランは下を向いて答えない。

 「まあ今日はこれくらいにしておいてやる。最
  後に一つ、軍人は部下も上司も同僚も選べな
  い。俺もそうだった。親友と呼べる奴もいる
  し、師匠と思っている人もいる。だけど、正
  直嫌いだったり、合わない奴も多かった。そ
  れでも今日まで生き残れたのは、歩み寄って
  協力体制を築いて戦って来たからだ。戦争は
  一人のスーパーエースがいても勝てるもので
  はない。みんなでやるものだ。俺からは今日
  はこれだけだ。残りは後二ケ月で教える。そ
  れでは解散!」

生徒達が帰ろうとする。

 「あっ忘れてた!今日の負けチームは機体のペ
  ンキを落として整備しておけよ。後、来週の
  週末までに今日の反省点をレポートに書いて
  提出。量は自分の判断で!では、本当に解散
  !」

俺は引き上げる事にした。
後ろでイザーク達の悲鳴が聞こえたが、聞かなか
った事にした。 


 

 

 

あの決闘の後五人に恨まれるかと思ったが、自分
の至らなさを理解してくれたようだ。
こちらの教えを懸命に聞き、理解しようとしてく
れる。
アスランとイザークは以前ほど対立しなくなり、
五人のチームはそれなりに様になってきた。
訓練が終わっても、五人は質問の為に毎日のよう
に訪れる。
当然、時間が遅くなるので、俺はよく飯を食わせ
たり飲みに連れて行った。
俺には妹しかいないので、弟ができたみたいで嬉
しかった。
そして、俺自身にも成長があった。
生徒に教える為、教本を復習して空いた時間で機
体を動かしていると、忘れていたり俺が生徒の頃
には教本に書かれていなかった新しい戦法やセオ
リーを学びスキルアップした感じがする。
俺の教官生活は充実していた。

 

八月に入り、教官生活にも慣れてきた。
アスラン達もメキメキ腕をあげてきた。
多分、実戦を積ませればすぐにエースクラスにな
るだろう。
天才って本当にいるんだと感心してしまった。

 
今現在の戦況を確認すると、宇宙はお互いに戦力
を蓄えるために小康状態に入っている。
ザフトは訓練したパイロットを多数導入して、地
球からの輸送船団の護衛や連合の地球〜月間の補
給路を叩く戦闘に参加させて練度をあげている。
連合は最後の拠点である月を死守する為に、無駄
な消耗は避けているようだ。
L3にあるユーラシア連邦のアルテミス要塞は戦
略上の価値は小さいものの、難攻不落を誇ってい
るので、とりあえず補給路のみを断って放置して
いるようだ。

一方地球では、ジブラルタル・ビクトリアの拠点
化と赤道以北のアフリカ地域の制圧成功で地中海
の制海権を確保している。
北アフリカはアフリカ共同体という国家が親プラ
ントを表明して、アフリカ大陸の統一を目指して
南部の南アフリカ統一機構と一進一退の攻防を繰
り広げている。
ザフトはバルトフェルト隊長が支援を行っている
ようだ。
中東地域はもとからユーラシア連邦からの独立を
訴えていた地域なので、ザフトはイスラム統一機
構という組織に武器などを支援している。
おかげでこの地域の連合の圧力は大変小さくなっ
ていた。
他には、カーペンタリアを拠点にしているザフト
軍は先に大西洋連邦に侵略をされていた赤道連合
の全国土開放をすでに終了させており、余勢を駆
ってシンガポールを陥落させて新しい拠点にして
いた。
この結果、カーペンタリアは安全圏に入り、兵士
の休養と訓練用の拠点に様変わりしている。
隣国のオーブ連合首長国は中立を堅持してくれて
いるので補給も順調だ。
アジアを見ると、東アジア共和国は完全に守勢に
回っている。
旧中国のチベット・ウイグル・内蒙古・モンゴル
の独立闘争に戦力を割かれ、攻め込む力に欠けて
いて、当然ザフトはこれらの独立勢力にも援助を
している。
それと、旧日本国は今回の戦争で戦力を割く事は
しないと東アジア中央政府に宣言しておりこれも
火種になっていた。
東アジア共和国は旧中国人が全面的に仕切ってお
り、日本政府はそれに反発した形になっている。
東アジア共和国も日本を討伐する余力も無く、こ
の件を放置している。
大西洋連邦から日本討伐の援助の申し出が出てい
るが、工業国日本が大西洋連邦の影響下に入る事
を恐れる東アジア共和国は申し出を断っていた。
アメリカ大陸は先に大西洋連邦に併合された南ア
メリカ合衆国で、連合への反体制運動が起こって
いる。
旧南米国家の左翼ゲリラが大同団結してゲリラ活
動を繰り返しており、この地域の連合駐屯軍を釘
付けにしている。
結局、連合は北アメリカとヨーロッパ大陸・旧ロ
シア・インド亜大陸に戦力と生産力を集中させて
力を蓄えているが、Nジャマーの影響で生産力は
なかなか回復していないようだ。

経済の側面から見ると、始めはザフトの圧倒的不
利を予想していた俺だったが、実際はそれほどで
も無いらしい。
まず人口だが、兵隊に人をとられて生産力の減少
が心配されていたが、開戦時に連合が開戦時に出
したコーディネーター敵対宣言は地球在住のコー
ディネーターのプラントへの避難に拍車をかけ、
中立国経由で多数が移民してきている。
彼らはコーディネーターであるので優秀だ。
出身国でも技術者や弁護士・医者・会社経営者な
ど、生産性の高い職業についており、彼らの再配
置によりプラントの生産力と人口は増大している

貿易でも中立国や同盟国には多少値引きしている
が、適正価格で物資を売っており、財政状況も悪
くはなかった。
以前は、プラント理事国に低価格で買い叩かれて
いたのだ。
しかも、その物資を非理事国に高値で売りさばい
て二重の暴利を貪るという暴挙も行っていた。
だが、今は適正価格で貿易がおこなわれており、
プラントの貿易収支はよくなっている。
一方、連合側二ュートロンジャマーの影響で原子
炉が止まりエネルギー不足で生産が思うように伸
びなかった。
プラントの同盟国や中立国は島国であったり、旧
途上国である事が多く為に、原子炉の数が少なく
影響が少ない事もあり生産力の差が思ったよりも
出ていない。
資源も地球では掘りつくされていたり、発掘に労
力がかかる為に、安価に資源を生産しているプラ
ントの方が有利だった。
月は資源の宝庫なのだが、エンデュミオンクレー
ターを吹き飛ばした影響で生産力が落ちた上に、
地球への輸送路はザフトの通商破壊の被害に遭い
成功率は半分程度だった。
地球でもこの成功を踏まえて、海上輸送路の通商
破壊が予定されている。
その為、連合は備蓄資源を切り崩し、大戦力を蓄
えて最後の賭けに出るものと思われる。
それがいつになるのか?
半年後とも一年後とも言われ、モビルスーツの開
発計画の噂まで出てきて予断は許されなかったが
、俺が教官をやる余裕くらいはあるみたいだった

それと、俺の友人である2人だが、ハイネはシン
ガポール基地のモビルスーツ部隊の全指揮を任さ
れまでに出世した。
愛機は空中用モビルスーツ「ディン」のようだ。
色はやっぱりオレンジらしい。
彼もエースなのだが不思議とあだ名がつかない。
可哀想なので、俺が勝手に「オレンジハイネ」と
つけてあげた。
今そう呼んでるのは俺だけだけど。

ミゲルはクルーゼ隊で大活躍している。
連合の輸送艦隊を多数撃破・捕獲して、多数の護
衛艦艇とMAを落とし今では、ザフト軍パイロッ
トの中でトップ5の成績をあげている。
ちなみに、クルーゼ隊長はたまにモビルスーツで
出撃したい病の発作が起こり、旗艦ヴェサリウス
のアデス艦長を困らせているらしい。

今月は第二週が夏休みで完全休養になる。
俺がアカデミー生の時から夏休みは変わらない日
程だが、短期カリキュラムの学生を同じように休
ませていいのかと思ってしまうが、リフレッシュ
させた方が効率が良いのかもしれない。
教官もお休みなので、俺もラッキーだし。
ちなみに「おっさん」は短期パイロットコースの
仕事があるので、お休みは三日しか無い。
三ヶ月の教育期間しかない生徒を一週間も休ませ
られなからだ。

第一週の日曜日と合わせて八日間。
とても嬉かったので、ハイネとミゲルに自慢した
ら返事のメールに俺達も休みだと書いてあった。
ハイネは前線勤務が長かったので、ベテランのグ
リアノス隊長と交代でカーペンタリアで訓練部隊
の隊長をする事になったらしい。
それで、着任まで一週間休みだそうな。

ミゲルも交代休養で三日の休みを貰うらしいが、
首都には寄れないので、俺のクルーゼ隊着任まで
会えない。

何をしようかな?
そんな事を考えながら土曜日を迎えた。

休み前の最後の訓練が終わり、生徒達も嬉しそう
に休みの話をしながら着替えていた。

 「みんなは休み何をするんだ?安心しろ!宿題
  は出さないから。休み明けは地獄の強化メニ
  ューにするから骨休みしとけ」

俺が脅しながら言うと。

 「勘弁してくださいよヨシさん。休み明けはお
  手柔らかにお願いします。俺は日舞の発表会
  を開きます。時間あったら来てください。詳
  しい日時はメールするんで。後は、イザーク
  と出掛けるかも」

とディアッカが答える。
今、彼は俺を「ヨシさん」と呼んだが、これは俺
が「教官」と呼ばれると背中が痒いという理由で
公の場所を除いて名前で呼ばせているからである

訓練生二十名はおれをヨシさんと呼ぶのが習慣に
なっていた。
「ヨシヒロさん」はやはり西洋人には言い難いよ
うだ。

 「僕はピアノの演奏会を開きます。ヨシさんも
  一緒に出ませんか?」

とニコルが答える。

 「今の俺の腕だと、ニコルの足を引っ張てしま
  うから遠慮しておくよ」

 「そうですか残念ですね。僕も詳しい日時をメ
  ールするんで、時間があれば来てくださいね
  」

 「みんないいな。俺は親父の視察の付き添いで
  終了。跡継ぎはつらいよな」

ラスティーが残念そうに答える。

 「俺は実家で趣味の民族学の資料の整理と虫干
  しです。後はディアッカと出かけます」

イザークは嬉しそうに答える。
まあ人の趣味はそれぞれなので何もいうまい。

 「アスランは?」

 「明日はオフなのでラクスに会いに行きます。
  後はザラ家の仕事がいろいろあるので、休み
  がありません」

アスランも大変なようだ。
代々平民の俺とは違い、プラント創設の功労者で
あるザラ家は親戚や付き合いのある企業家・政治
家・官僚・軍人も多く雑事が多い。
ザラ閣下は休みなんて取れないだろうし、彼の母
は亡くなっているので、一人息子の彼に負担がか
かるのだろう。

 「だが、婚約者に会うんだろ。ラブラブじゃん
  か。俺だったら、今日は眠れないね。後の連
  中はモテナイ君ばっかりだからな」

とみんなをからかってみる。

 「うっ、否定できない」

 「僕はまだ若いですし」

 「女なんかに興味は無い!」

 「俺は妥協はしないんですよ。ヨシさんはどう
  なんですか?」

ディアッカに反撃されるが。

 「俺はアカデミー生の頃から女に不自由しなか
  ったのが唯一の自慢だ!」

自信満々に答える。
俺のアドレスメモリーは女性の名前が二十人ほど
載っている。
呼べばいつでもデートくらい出来る。
開戦からこのかた忙しくて会えなかったが、メー
ルは欠かさなかった。
マメな男は勝利するのだ。

 「とまあ、くだらない話はこれで終わりにして
  、みんなは楽しい休暇を送れよ!」

俺はみんなと別れて宿舎に向かう。
暫らく歩いていると、後ろから呼び止められた。
振り返ると、アスランだった。

 「アスラン、何か忘れ物か?」

 「ヨシさん。すいませんが、明日一緒にラクス
  の家に一緒に行って欲しいのですが・・・」

えっ!何で?
今まで生きてきてトップ3に入る衝撃だ!

 「俺がか?俺は思いっきり邪魔だろ」

人の恋路は邪魔したくない。

 「実はヨシさんの話をラクスにしたら、会いた
  いと懇願されてしまいまして・・・。ヨシさ
  んもラクスの歌のファンだからOKかなって
  思いまして」

 「そうか、彼女のお願いならよろこんで訪問さ
  せていただくよ。1ファンとしては、こんな
  に嬉しい事はないからな」

 「それでは、明日十時に宿舎に迎えに行きます
  ので」

婚約者の命令に逆らえないアスラン。
やさしいのか?ヘタレなのか?
優秀な男なのに可哀想な気がする。
俺はラクス・クラインに会えるのが楽しみだった
ので不満はなかった。
早く明日にならないかな?
そう思いながら、床についた。
    


日付が変わり、朝になった。
俺は珍しく一張羅を着こんでから、花屋で花束を
買ってアスランの迎えを待っていた。

彼は車で迎えにきてくれた。
ものすごい高級車・・・。
さすがブルジョア・・・。
今はセレブの方が正しいのか?

二人でクライン邸に向かう。
車の後部座席に白い箱が見えるが、ラクス嬢への
プレゼントか?

 「アスラン、その箱なに?」

 「彼女へのプレゼントです。電子ペットのハロ
  ですよ」

ハロってなんだろう?初めて聞くな?
まあいいか。
後で、見せてもらえばいいし。
数分後、クライン邸に到着する。
広い庭、大きな門。
議長閣下の家はさすがに違うね。 
門の監視カメラとマイクに向かって
名前と来客用件を伝えて扉を開けてもらう。
門が開き、車で本宅まで走る。
というか、車が無いと本宅までが遠い。

アスランが車を止めて玄関のベルを鳴らすと、中
からピンク色の髪のかわいい女の子が出てきた。
ラクス嬢の直接のお出迎えだ。

 「お久しぶりです。ラクス」 

アスランが挨拶する。

 「こんにちは、アスラン。来てくれて嬉しいで
  すわ」

ああ声も可愛いな。
ほんわかした感じで、守ってあげたくなるような
娘だな。

 「こんにちは。ラクス様。始めまして、アスラ
  ンの教官を務めています。ヨシヒロ・カザマ
  です」

 「こんにちは ヨシヒロ様。私はラクス・クラ
  インですわ。アスランがいつもお世話になっ
  ています。本日はお忙しい中来ていただきま
  してありがとうございます」

ヨシヒロ様!なんて丁寧なんだ。
うーんいい娘やな。

 「私のことは呼び捨てで呼んでくれて結構です
  よ。後、あなたの美しさには及びませんがお
  受け取りください」

と言いながら、買ってきた花束を渡す。
しまった!アスランより先に渡してしまった。
しかも、くどき文句のような挨拶を・・・。
俺は珍しく舞い上がっている。

 「まあ、美しいお花をありがとうございます。
  私もラクスでかまいませんわ」

いや、それはまずいだろ!
アスランに救いを求めるが、奴は気づいていない

それどころか。

 「ラクス、これが私からのプレゼントです。
  お受け取り下さい」

自分で精一杯のようであった。
プレゼントは例のハロであったが、どんな物なの
か興味がわく。
ラクスがふたを開けると、オレンジ色の丸い物体
が飛び出してきた。

 「ハロ!お前元気か?ハロ!ラクス。ハロ!ヨ
  シヒロ。ハロ!アスラン」

何だ・・・?これ・・・?
俺の眼が点になった・・・。

 

 

 
お宅に上がらせてもらい、お茶をご馳走になる。
少し早い昼食も用意してあるようで、これはラク
スの手作りのようだ。

 「久しぶりの作ったので、味の保障はできませ
  んが」

と言ってシチューをよそってくれる。
味の方は彼女が謙遜していたようで、とても美味
しかった。
食後にクッキーをつまみながら、いろいろな話を
する。
俺はラクスのファンで全ての曲を持っている事、
ファンクラブに入っている事まで話した。
後は、家族の事や子供の頃の話、アカデミー時代
の話もした。
開戦後の話と今の教官の仕事の話まで、一通り話
した所でアスランが席を立つ。

 「今日はこれで、お暇します」

と席を立った。
理由を聞くと、母親の墓参りに出かけるという事
なので俺もついて行く事にした。
ラクスも付き添うというので、3人で墓地に出掛
ける。
彼女の病死した母親の墓も同じところにあるらし
い。

途中で花束を買って、墓地に到着した。
まず、アスランの母親の墓に花を添えて祈りを捧
げ、次にラクスの母親の墓にも花を添えて祈りを
捧げた。

 「ここには来たかったんだ。アスランの母君が
  亡くなった血のバレンタインの責任は、俺に
  も少しはあるから・・・」

 「何故です?あなたに責任なんて」

 「俺はその時ジンで偵察をしていたけど、事件
  の予兆を察知できなかった。バレンタインの 
  チョコがいくつ貰えたかなんて話題で浮かれ
  ていて・・・」

 「そんな事を気にしないでください。あれは、
  地球連合が悪いんです」

 「正確にはブルーコスモス強硬派ですわ」

と、ラクスが答える。

 「そう言ってもらえると少しは救われるよ。俺
  の母親は何年も会ってないけど、もし亡くな
  ったりしたら、俺は耐えられるのかな?」

 「亡くなってからその存在の大きさに気づくも
  のなのかもしれませんわね」

時は夕刻、夕焼けの光が全てを照らし出していた


その後、俺はアスランに送ってもらう事になった
のだが、宿舎ではなくクライン邸に降ろされる。

 「えっ、何で宿舎じゃないの?」

 「ラクスが今日は泊まって欲しいそうなので」

おい!アスラン。普通婚約者の家に独身の男を泊
めさせないぞ!
お前はラクスの召使いか!

俺の心の叫びを無視して、アスランは自分の実家
に帰ってしまった。
結局、夜はラクスの手作りの夕飯をご馳走になり
、生の歌声を聞かせてもらった。
そして、夜はシーゲル議長の寝巻きを借りて眠り
についた。

明日の朝、もし議長が帰ってきたら、俺は最前線
に左遷だと思いながら・・・・。

朝になり、意識が覚醒してくる。
薄目をあけるとラクスの可愛い顔が見えた。

 「ヨシヒロ、おはようございます。朝食の準備
  が出来ましてよ」

駄目だ!理性が飛びそうだ!
これは拷問だ!きつい!
彼女、わざとやってるのか?
俺を試しているのか?


俺が朝食を食べ終わると。

 「暇だから、どこかに出掛けましょう」

とラクスが言うが、それは不可能だ!プラント1
有名な彼女に人混みはかなりつらい。
結局、キャンプ場でコテージを借りて遊ぶことに
する。
ここのキャンプ場は一軒同士の間隔が離れていて
プライバシーが保ちやすい。

昔、ハイネとミゲルで意味のない野郎キャンプを
した時に利用したのだ。

荷物を使用人の方に用意してもらい、車を借りて
出かける事にする。
使用人の目線が痛い!
あきらかに俺は危険なのに、何も言われないと更
につらいものがある。

 「さあ、ヨシヒロ行きましょう」

 「ラクス、ずい分荷物が多いけど、今日は日帰
  りだよ」

 「いいえ、ヨシヒロの休日は日曜日なので、余
  裕を見て土曜日までですわ」

 「えっ!さすがにそれはまずい・・・」

 「大丈夫ですわ。アスランもいませんし」

 「だから、駄目なんですけど・・・。それで、
  この事はアスランには・・・」

 「内緒でお願いしますね」

 「わかりました・・・」

ラクスは凄い子悪魔だ・・・。

結局、俺は押し切られてしまってキャンプに出掛
ける事にする。

昼間は釣りをしたり、散歩をしたり、昼寝をして
、ご飯を一緒に作り、お互いの事を色々話す。
それも、二人きりで・・・。
世間ではこの関係を恋人同士という。
夜になり二つあるベッドに別々に入る。
まだ一日目だ。頑張れ!俺の理性。

しかし・・・・・・。   

 「ヨシヒロ、少し寒いので一緒に寝ていいです
  か?」

何と、ラクスが俺のベッドに入ってきた。
寒いって、今は夏なんだけど・・・。
彼女は何かを期待するかのように、
目をつむる。


その夜俺の理性は崩壊した・・・。

 

再び朝が来る。
目を覚ますと、ラクスが一緒に寝ている。
当然裸だ。
タオルケットをはぐとシーツに赤い印がついてい
た。
まずい、一時の欲情で大変な事になってしまった

俺が葛藤していると、彼女が目覚ます。

 「おはようございます ヨシヒロ」

俺と違って、彼女はとても機嫌が良いようだ。

 「一つお聞きしたいのですが、どうしてこのよ
  うな事を?少なくとも、婚約者のいる女性の
  行動としては感心できるものではありません
  よ。あなたはアスランを裏切っているのです
  。彼の気持ちを裏切っているのですよ」

かなり強めに言う。

 「アスランは大切な方ですが、それは恋人や夫
  としてのものではなく、友達としてなのです
  。私の愛する方は他の方ですわ」

 「それはどなたで?」
 
念のため聞いておく。

 「ヨシヒロ、あなたですわ」

 「私とあなたが出会ってまだ三日しか経ってい
  ませんが・・・」

 「数ヶ月前、北アフリカ戦線のニュース映像で
  敬礼をしてモビルスーツに乗り込むあなたの
  映像を見て、一目ぼれしましたの」

彼女はとてもうれしそうに話し始める。

 「父にお願いして、お名前をお聞きして、パト
  リックおじ様にアスランの教官として最高の
  方だと推薦いたしましたの。ご無理をお願い
  した甲斐がありましたわ」 

俺の教官就任の理由はそう言う事であるようだ。 

 「ヨシヒロは私が嫌いですの?」

そんな悲しい表情はやめて!

 「いいえ、心から愛しています」

俺は悪魔の魂を売った。

   

結局、俺達は土曜日までを完全な恋人同士のまま
で過ごした。 
途中、ディアッカとニコルのお誘いメールが入っ
てきたが、用事があるのでと断りを入れた。
事実を説明するわけにいかないし・・・。
アスランはメール一つ入れてこない。
よっぽど自分に自信があるのか?
彼女を信じているのか?
いい奴だけに可哀想だが、腹も立つ。
複雑な心境だった。
俺達は恋人同士になったが、アスランとの婚約は
形式上はそのままで、時期がくるまで二人の関係
は秘密と相成った。
クライン議長・ザラ委員長・アスラン、誰か1人
にでもばれたら俺の人生は終了だ。
俺はビクビクしてるのに、ラクスはニコニコして
いる。
女とは図太い生き物だ。


土曜日の夜にクライン邸に到着してから着替えを
返し、初日に着てきた自分の一張羅に着替えて帰
宅する。
使用人が車で送ってくれたが、俺の心臓は爆発し
そうだった。
何か聞かれそうでビクビクしていたのだ。

日曜日、目を覚ますとキッチンから歌声が聞こえ
、覗き込むとラクスが歌を歌いながら、朝食を作
っていた。
俺は驚かなかったし、彼女が誰にも気づかれずに
どうやって入ったのか不思議ではあったが、気に
しない事にした。
気にしたら負けだからだ。
それからと言うもの、彼女は毎週日曜日になると
、俺の部屋に入りこんで朝食を作ってくれた。
俺は部屋を出るわけにいかず、彼女と夜まで甘い
時間を過ごし、彼女は夜遅く帰っていく。
誰かに見つかってしまう可能性を考えなくも無か
ったが、考えると負けなので考えなかった。

八月後半と九月はラクスの事が手一杯であまり思
い出す事がない。
仕事は完璧にこなしたから問題は無いだろう。

最終的に、アスランたち五人は赤服でアカデミー
を卒業して予定通りクルーゼ隊に着任した。
九月十日の事だった。

港に停泊中のヴェサリウスに着任の挨拶に行き、
クルーゼ隊長がいる艦橋にあがる。

 「ヨシヒロ・カザマ以下六名着任の挨拶に伺い
  ました」

 「よろしくな!カザマ君」

考えてみたら初めてまともに会話するんだよな、
クルーゼ隊長と。
やはり、仮面が怪しい・・・。

 「立派に育て上げたらしいじゃないか。私の出
  番は無いかもな」

 「ええ、モビルスーツー戦は我らにお任せを」

 「それは、私としては寂しいな。たまには出撃
  させてくれたまえ」

 「ご自由に・・・。」

アデス艦長が悲しい目でこちらを見つめていた。


その後、ミゲルとの引継ぎのためにブリーフィグ
ルームに向かう。
ミゲルとは「新星」攻防戦以来だ。

 「ミゲル!久しぶり!大活躍だな。ザフトのト
  ップエース殿」

 「お前こそ、名教官ぶりはこっちでも話題にな
  ってるぞ!」

ラクスとの事は噂になっていないみたいだな安心
、安心。

 「紹介するよ。今期卒業生の中でも最優秀の五
  人だ」

みんなをミゲルに紹介して、ミゲルも自己紹介を
する。
有名人だからみんな知ってるけど、五人はミゲル
を尊敬のまなざしで見つめる。

 「おう!よろしくな。お前らがんばれよ」

気さくなミゲルにみんな安心したようだ。
ミゲルからクルーゼ隊の残りのパイロットの紹介
をうけ、我々の自己紹介も終わった頃にミゲルの
離艦の時間が来た。 
ミゲルはホーキンス隊の副隊長を拝命していた。
また暫らくのお別れだ。

 「じゃあな、カザマ、死ぬんじゃねえぞ!」

 「お前こそな!」 

大丈夫また会えるさ。
こうして、俺はまた戦場に戻る事になったのであ
った。 


        あとがき

また一話かきました。ほんのすこしエッチな表現
があるんですけど、これは15禁なのかな?
これだけのペースで更新できるのは最後だと
思いますが、完結は必ずさせたいのでよろしく
おねがいします。

レス返しです

>テトラ様
 好意的な意見ありがとうございます。
 完結めざしてがんばります。

>通りすがり様
 すいませんまったくの初めての経験
 なので、常連の方には信じられない
 ミスを連発しています。なるべく
 直していきたいと思います。

>新聞寺様
 正直、こんな素人文章読んでくれる人
 いるのかな?  
 と思いながら書いていたので、
 感想が入っていると嬉しいです。

>たたたん様
 なるべく原作とは違うエンディングに
 したいと思います。

>福庵様
 キラを二人にしないようにしています。
 主人公は集団戦大好きの日本人気質の男です。

>特命鬼謀様
 この話のコンセプトは主人公が回顧録を執筆
 するために昔を思い出しながら語っている
 という話です。
 後で聞いた他人の面白い話などおりまぜて
 います。

>樹海様
 コーディネーターも人の子です。
 後方に引っ込めるとマスコミの批判になるから
 という理由です。
 本人達もそれを望んでいませんし。
 ミゲルとハイネはなるべく一緒に戦わせません。
 2人はザフトの幹部候補ですので。

>通行人様
 レス返しって大変ですね。
 ANDYさんのDestinyの小説のレス
 返しの量はすごい尊敬します。

>NEEDさんへ
 投稿前にチェックしているつもりなんですけど、
 私は主人公ほど優秀ではないので・・・。
 なるべく早めに直します。   

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