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▽レス始

「ジャンクライフ−4−(ローゼンメイデン+オリジナル)」」

スキル (2006-01-18 18:07)
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「どうしたらいいと思う?」
「なにが?」

水銀燈はイライラする気持ちを抑えて、自分の膝にのっけられた優に視線を向ける。
優はまどろんでいる様子で、水銀燈の髪をいじくりながら言葉を続ける。

「最近気がついたんだが、俺のクラスに俺と同じような指輪をした女がいる。」

髪をいじくられるのを鬱陶しいと感じる反面、心地よさも感じていた水銀燈はその言葉に視線を鋭くする。
今の所、水銀燈が人工精霊であるメイメイを使って、居場所を突き止めているのは役立たずの人形を贈った陰念深い相手、真紅の所だけである。
メイメイからの情報によれば今回の真紅のミーディアムは少年。つまりは、優の言う女性が本当にミーディアムだとしたら新たな姉妹の居所の発見に繋がる。

「アリスゲームは、お前のゲームだ。だから、指示を仰ぎたい。俺はどうすればいい?」
「そうねぇ。とりあえず、その女性の家を見つけてほしいわ。そうすれば、メイメイが調べるわ。」
「わかった。」

そう言うと優は再び心地よさそうに瞳を閉じるが、思い出したように言葉を続けた。

「――女性がミーディアム。そして、ドールは全て女性。導き出されるのは一つ。」
「優?」
「お前の姉妹にはそういう趣味の奴がいるのだな。いや、それに応えた柏葉も、ということになるのか。」
「どういうことぉ?」
「いや、こっちの話だ。気にする事は無い。」

そう言うと優は、水銀燈と共にいるベッドの上に散らばっているトランプを手に取る。

「約束の時間まではまだあるな。もう少しだけ、お前の膝を味わうか。」
「……。」

水銀燈はその言葉に先ほどまで繰り広げられていた優と自分による熾烈な戦いを思い出す。
それは暇そうにしていた水銀燈に、優がトランプで勝負をしようと言い出したところから始まった。
勝った方は負けたほうの言う事を聞く。その命令は公平かつ、両者の身の安全を保障するために妹の香織によって書かせたものである。
というのも、最初に命令の例を互いに挙げてみたところ、両者共に負ければ地獄ということが判明したのが原因である。
そして、三回勝負という規約の元にトランプゲームの一つである『スピード』を行い、優が勝利したのである。
そして、香織が書いた命令カードから優が選んだのは『膝枕三十分』であり、そして今に至る。

「……。」

そこまで思い返したところで、水銀燈は膝の上で眠る優に視線を向けた。
安心しきったその顔に、水銀燈は自嘲の笑みを浮かべる。
自分の膝で、そのように無防備な姿を見せるという事がどういう事か分かっているのだろうかと嗜虐的な思いが湧き上がるが、

「!!」

水銀燈は慌てた様子で、自分のスカートの中に進入しようとしていた優の手を握り締める。
油断した、安心しきっているような顔はこの手を進入させるために自分を油断させるためのトラップ。

「残念。あと少しだったのだが……。」
「このっ馬鹿ぁ!!」


ローゼンメイデン−ジャンクライフ−


柏葉 巴は困惑していた。それはもう過去に類を見ないほど困惑していた。
そして、その自分を困惑に陥れている存在は隣で、なにを考えているか分からない無表情を崩さずに歩いている。
長い髪、不健康そうな白い肌、そして女の子のように華奢な体。
最近学校でなにかと話題の樫崎 優である。
いつものように今日、出されたプリントを委員長という職務と幼馴染という肩書きの為に、不登校の桜田ジュンに届けようと学校を出たところに優はいた。

『待っていたぞ柏葉 巴。一緒に帰ろう。』

と、呆然と立ちすくむ巴に対して優はそう宣言すると、巴の返答を待つように腕組をして巴を見つめる。
巴はその視線で我に返ると、

『えっと、私、桜田君の所にプリントを届けなくちゃいけないから。』
『わかった。では、共にいこう。』

遠まわしにお断りの意思を示してみたのだが、優には全く伝わっていないようであった。
そして、元々口下手な所がある巴は明確な断りの言葉を言えぬまま、無言で桜田 ジュンの家へと向けて歩いていた。
どうしていきにり一緒に帰ろうなどと思ったのか聞きたくはあったが、なにか嫌な予感が巴の口を閉ざさせていた。
しばらくすると、見慣れたい柄が巴の視界に入ってきた。
プリントの届け先である桜田 ジュンの家である。

「樫崎君。」
「なんだ?」
「桜田君の家、ここだから。」
「ふむ。」

巴は手早く用事を済ませて、家に帰ろうとインターホンを押すと、間髪おかずにバタバタと誰かが走る音がして見慣れた女性が家から出てきた。
天然っぽい独特の雰囲気を持った女性は、巴の姿を見つけるとニッコリと微笑んだ。

「こんにちは〜。巴ちゃん。」
「学校で配られたプリントを持ってきました。」
「ありがとう〜。ここまで来るのは大変でしょぉ〜。あがってお茶でも、あらっ? 貴方は?」

その女性は巴の隣に無表情で立つ優に気がつくと、どこか嬉しそうに声をかけた。

「樫崎 優だ。」
「これはどうも〜。桜田 のりですぅ。」

そう言って頭を下げたのりに、優も軽く会釈すると視線を感じて、桜田邸の二階の窓へと視線を向ける。
そして、蒼い瞳と視線が合った。
金色の髪と、透き通るような蒼い瞳、そして身に纏った真紅の服を着た人形。
それに優はある可能性を感じ、のりへと視線を戻す。

「で、樫崎君も巴ちゃんもお茶でどお?」
「いえ、私は……。」

巴はここではちゃんと断ろうと言葉を口にしようとして、ぐらりと世界が傾くのを感じた。
最近頻繁に起こる立ち眩みである。体から力が抜け、倒れると思った瞬間、力強い手に受け止められる。

「だ、大丈夫! 巴ちゃん!!」
「だい、じょうぶ、です。」

心配かけまいと声を出すが、それすらもつらいと巴の体は訴える。

「桜田 のり。」
「は、はいっ!」
「柏葉を休ませたい。ひとまず家に入らせてくれ。」
「そ、そうよね!」

巴はその気遣いをなんとか断ろうとするも、言葉に出来ず、結局桜田邸のソファーに腰を下ろした。
優に手をひかれるようにしてここまできて、一息ついたところで巴の体を襲った立ち眩みは治まった。

「はい。お茶をどうぞ〜。」
「あ、お構いなく。」
「いただこう。」

巴は自分の言葉とは正反対の言葉を放った隣に座る優へと視線を向ける。
片手にシュークリームを持ち、しきりに感心したようにほぅ、ふむ、と呟いている。

「いつもありがとう巴ちゃん。ここまで来るのしんどいでしょう。」

巴は正面に座ったのりの言葉に、視線をそちらに向けると短く言葉を返した。

「学級委員長ですから。」
「巴ちゃんは学級委員長になったんだぁ。偉いのねぇ。」
「いえ。」
「樫崎君はなにかやっているの?」
「いや。つい先日まで不登校だったのでな。そのような役職にはついていない。」
「ふとう、こう?」
「ああそうだ。周りの視線、言葉、思いが煩わしくて、家に閉じこもっていた。」
「今は、学校に行っているの?」
「ああ。」
「その、どうして学校にまた行こうって思ったの?」

その言葉に潜められた真剣な響きに優は手にしていたカップを机の上において、のりを見た。

「変わったからだ。俺自身が、な。」
「どう、変わったの? そのきっかけは!!」
「俺の事を話したところで、お前の弟の助けにはならん。」

その言葉と向けられた視線に、のりは急速に力をなくすと乗り出した身を戻した。

「ごめんね。そうだよね。あまり、そういうことって、話したくないことだよね。」

その言葉を最後にシンッと場が静まり返り、巴がそろそろ帰ると告げようとした時

「貴方の名前は?」

場の静寂を貫く凛とした声がその場に響いた。
驚いた顔で、巴とのりはその声の発生源を見る。
そこには優が二階にいるのを見た蒼い瞳の人形がいた。

「し、しししし真紅ちゃん!!」

ばびゅん、とのりは凄いスピードで真紅と呼ばれた人形を手に取ると廊下へと駆け抜けていった。
リビングから廊下へと繋がる扉が力強く閉められ、その向こうからのりと真紅の会話が聞こえてくる。

「ふむ。ここにもいたのか。」
「えっ?」

巴はその言葉に慌てて優の方に視線を向ける。
そこには無表情だったはずの優の顔に感情という色が塗られていた。
欲しい物を見つけた子供のような笑み、巴はそれに言い知れぬ恐怖を感じ、そして優の意図に気がついた。
それは優が巴の家に、ローゼンメイデンが一つ、雛苺がいるということを嗅ぎつけ、居場所を突き止めようとしていることを、だ。

「ごめんねぇ。いきなり出て行っちゃって、この子はねぇ……。」
「すいません。私、帰ります。樫崎君。さよなら。」

巴は自分の荷物である鞄と竹刀を手に取ると、逃げるようにして桜田邸から出て行った。

「あれぇ、どうしちゃったんだろ巴ちゃん。」
「なにか急ぎの用事でもあったのだろう。」
「あ、樫崎君。この子はねぇ、最近流行の猫耳人形なのぉ。」
「ふむ。」

逃げられたか、と一人胸の中で呟いていた優はのりの言葉で、真紅へと視線を向ける。
可愛らしい猫耳をつけた真紅。
優は水銀燈にもつけてみたいと思いながら、真紅をじーと見つめ、そしておもむろに携帯電話を出すと写真を撮った。

「妹がこういうのが好きで、撮らしてもらった。柏葉も帰ったようだし、俺も帰らせてもらおう。」
「え、うん。また、その……。」
「なんだ?」
「ううん。なんでもないの。」
「そうか。では、邪魔をした。」

そう言って優は自分の鞄を持つと、玄関へと続く廊下に出て、二階から降りてきた一人の少年と出くわした。
驚きで固まる少年と、その指につけられた薔薇の指輪を見て、優は笑みを浮かべる。

「同士よ。お互い、嫁の事で苦労しそうだな。」
「はぁっ?」
「気の強そうな感じだが、まぁ、主導権を握れば案外上手くいくものだ。では。」

困惑の顔で、優を見る少年とのりに優は会釈をすると外に出た。
後には不思議そうな顔で優を見送る二人だけが残された。


あとがき
変人と人形のバカップルな風景から始まり、序盤の重要人物と優が出会った今回。
さらっと、主要人物を出してみました。それぞれが違和感なくかけていたらいいなぁ、とか思っております。

>空羽さん。
今回も水銀燈の登場は前半ちょっとだけになってしまいました。
まぁ、その分イチャイチャ分を増してみたんですけど、どうだったでしょうか?
>かれなさん。
この話を考えたときにまず考えたのが、できるだけサブキャラも絡めようという基本方針でしたので、梅岡先生などはこの後もでてきます。
いやまぁ、予定ですけどね。
そして、今回会話という会話をしていませんが、優がジュンと真紅に出会いました。
ここから、彼らの物語が加速しますのでお楽しみに。
>lafiさん。
可愛い水銀燈を書こうという目標は一応達成できているようで、うれしいです。
>D,さん。
梅岡はいい人なのですよ。近年稀に見る熱血漢です。ただ、その方向性が間違えているだけで……。
>西環さん。
ますますジュン達との接点が今回の話で出来ました。
次回からは、もっと、もっと、増やせると思うのでお楽しみに。

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