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「運命と宿命 第七話(GS+Fate)」

九十九 (2006-01-05 05:27/2006-01-05 09:20)
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「生徒…。まだ、残ってたの」

走り去る足音を聞き、凛は半ば呆然と呟く。

予想だにしなかった、第三者の出現により、戦闘は唐突に終わりを告げた。
その突然の事態に、凛は暫し呆気に取られてしまう。

「ぐっ…」

横島は、苦悶の声を発すると、その場に膝を突いてしまう。

ランサーとの死闘が終わり、極限まで高めていた、緊張が解けてしまったようだ。

「ちょっと、横島!大丈夫なの」

横島の行動に、凛は気を取り直すと、直ぐにその安否を問う。
しかし、返ってきたのは横島らしからぬ、恫喝の声だった。

「凛さん。貴女が今すべきは、俺の心配じゃないでしょう」

凛は、横島の瞳に気圧されてしまう。
その瞳には覚悟はあるかと、問うてきた時と同じ光が宿されていたから。

「ごめん。横島は、調子が戻ってから来て頂戴」

二重の意味を含んだ謝罪を受け、横島は苦笑した。

「すんません、直ぐに追いつきますから。それと、ランサーに関しては、大丈夫と思いますけど、一応注意だけはしといて下さいね」

「判ってるわ」

凛は、横島の忠告を受け取ると、自分の責任を果たす為に、校舎に駆けていった。

無関係な者を、巻き込んでしまった事に対する、覚悟を胸に秘めて。


横島は、折れた左腕に仙術を掛け、応急処置を施す。それにより、横島の傷は八割方は治ったといえる。

しかし、癒された身体とは対照的に、その表情は憤怒の様を示していた。

「くそっ!」

(結局、俺の力はまた届かなかった。巻き込みたくなかったのに、凛ちゃんにあんな表情させたくなかったのに。それなのに。俺は)

「くそったれが!!」

横島は、自分自身に叩きつける様に言う。

自分がランサーを追わなかった事に対する自責を、不甲斐なさを、慟哭として吐き出す。

その姿は、自傷行為を常としてきた者が持つ、凄惨たる痛々しさがあった。

横島の取った行動はサーヴァントとしては、最善だった。
あそこで、ランサーを追っていても、敏捷性で劣る横島では、リスクを含むだけで、結局助ける事は出来なかっただろう。

そして、なによりも横島は限界だった。

ランサーから受けた致命傷に加え、最後に放った横島ストラッシュ、あれにより、魔力の大半を放出してしまった。

ランサーを追っていたら、間違いなく倒されたであろう。

サーヴァントは、マスターを守護する存在である。
その責務を放棄してまで、その他を優先するなどサーヴァント失格だろう。

「はあ、はあ。………まだまだ、未熟だよな」

横島は、気を整え直すと、自嘲する。
自分に、斉天大聖並みの力があれば、なんの犠牲も出さずにすんだだろうにと。

「唯、あれが女の子だったら、追いかけることが出来たんだろうなあ。霊力的にも精神的にも。……本当に、俺って奴は」

横島は、なんだか色々と台無しにする事を言う。

彼は、そんな自分の性にため息を吐くと、己がマスターの元に向け走りだした。


「くそ、なんて間抜け!!」

凛は自分の迂闊さを呪う。
目撃者は消すのが魔術師のルールだ。

彼女は、それを嫌っている。
だから、目撃者なんて出さないならいいと、今まで努力してきたのだ。
それなのに、今日に限って彼女は失敗をしてしまった。

凛の顔には苦渋しかない。

(私の覚悟は甘かったんだ。一時でも、巻き込んでしまった者に対する責務を忘れ、呆気に取られるなんて。私とは違い、横島は忘れてなかった、むしろ、横島の方が、私よりも責任を感じていた。きっと、横島は経験したん事があるんだ。このどうしようもない無力感を)

そうして、凛は到着した。

月明かりに照らされた廊下に、それは、はっきりと浮かび上がっていた。

そこに、立ちこめるのは死臭。真っ赤に濡れた廊下の上に、少年はいた。
心臓を貫かれたのだろう、倒れ伏した体からは、未だに血が垂れ流されている。

その凄惨な死を、凛は懸命に直視する。

この死は、自分の責任であるからと。

「ランサーの槍で、心臓を一突きか。…その割りに、まだ死んでないってのは凄いわね」

凛は、呟く様にして、現状を把握し直す。この現実をしっかりと受け止めるために。

凛の言うように、少年はまだ死んではいなかった。

心臓の傷は、単純な一撃によるものではなかったのだろう。
その、おかげというべきか、心臓破裂による、血液の逆流はそれほどではなかった。

けれど、それだけだ。

脳に血液がいかねば、それで終わりだ。結局、少年は死を免れない。

「顔をみなくちゃ……」

凛は、うつ伏せになている、少年の顔に触れようとして、気付いてしまった。

自分の手が震えている事に。それを見て、凛は自嘲する。

「全然、覚悟出来てないじゃない」

それでも、凛は気を振り絞ると、少年の顔を確認した。

凛は、その顔を見て愕然とする。

月光に照らされた顔は、つい数時間前に会った、男子生徒のものだったから。

「なんで、あんたなのよ」

凛は、臍を噛む。

(本当に何て間抜けだ。あそこで、家に帰しとくべきだったんだ。そうすれば、こんな事には成らなかったのに)

弓道場でのやり取りを思い出し、彼女は自分の迂闊さを本気で呪った。

凛はポケットから、宝石を取り出す。その、宝石を見て、彼女は嘆息した。

父の形見である宝石。

それに含まれる魔力は、凛の持つ宝石の中でも、他に追随を許さない程に強力なモノがある。

この宝石を使えば、士郎を生き返らせることも可能だろう。しかし、それを行えば、この宝石の魔力は尽き、唯のペンダントになってしまう。これは凛の為だけに残された、聖杯戦争を勝ち抜くための、大切な切り札だ。

それを、やすやすと使える筈も無い。

それなのに、彼女は、あっけなく決意を固めた。

「覚悟か。横島に笑われるわね」

彼女なりの、責任の果たし方。

聖杯戦争での切り札を失うリスクを振り切って、凛は士郎の為に、宝石を使うことにした。

闇に濡れた廊下で、凛は士郎の命を救うために、集中し始める。一片の隙もないその姿は、一流の魔術師そのものだ。

そして、いざやろうとした、その時に、後ろから軽い笑い声が聞こえた。 

「横島さん。何のつもりかしら」

笑い声の張本人は、やっぱり軽い声で応える。

「いやー、なんか笑って欲しいみたいなことが聞こえたんで」

「まあ、いいわ。話は後よ。それより今はこいつを」

「助けるんすね」

「そうよ。父さんの残した宝石を使えば、生き返らせる事ができるわ」

「それで、切り札を失うことになっても、ですか」

横島は、事前に凛の切り札である、十の宝石と形見である宝石のことを聞いていた。

「ええ。これが、私なりの覚悟かしらね」

「そういうことなら、手伝いますよ」

凛は、横島がそう言っていくれると判っていた。

この二日間で、凛は横島の人となりを掴んでいた。馬鹿でスケベで馬鹿だけど、女性に対しては底抜けに優しい男だと。だから、きっとこう言ってくれるだろうと、予測していた。

だけど、凛は、それを受け取りはしない。

「残念だけど、遠慮しとくわ。これは、私の責任だから」

彼女は自分の責任を、他人に投げやりにするような人物ではないのだから。

凛は、話は終わりとばかりに、士郎に向き直る。宝石を士郎の心臓があった場所にあて、彼女は魔術を発動させようとする。

「復活でいきますか、再生でいきますか」

だが、またしても同じ声に遮られた。

「ちょっと、横島!これは私の責任っていってるでしょ」

先ほどより、ずっと強い口調で言う。

だが、横島は引かなかった。いや、引ける訳がなかった。

「いーえ、これは俺の責任でもあるんすよ。つー訳で無理矢理にでも手伝いますから。それと、急がないと衛宮が死にますよ」

責任を感じているのは、凛だけではないのだから。

横島の声は、場違いな程に軽い調子なのに、有無を言わせない強みがある。
それを聞いて、凛は仕方がないと、溜息を吐くと。一流の丁稚に命令した。

「復活でいくわ。三、二、一でいくから、タイミングを合わせてね」

「了解っす」

横島は、四つの文珠を出し、『復』『活』『補』『助』と込める。

横島が、心臓復活ではなく、復活補助としたのは、あくまでも凛が主であり、横島はサブでしかないから。

なにより、彼女の心意気を邪魔したくなかったからだ。

「いくわよ。三、二、一、Anfang」

凛の呪文に合わせ、横島が文珠を発動させる。

すると、士郎の体を中心に、闇に閉ざされた廊下に、暖かな光が灯る。

その光が収束して、やがて消えると、どくん、どくん、と衛宮士郎の体から鼓動が聞こえ始めた。

その鼓動を感じ凛は、ふうと溜息をついた。

「本当に出鱈目ね文珠って。全部使い果たすと思ってたけど、三分の一も残ったわ」

凛は、形見であるペンダントを見て、感心した様に言う。

「横島?」

返事がいつまで経っても来ないので、凛は不審に思い振り返ると、

「もうっ!お礼は、その体でいいすよ。凛さーーーん!!」

目の前には、下着一枚になった、変質者が飛んでいた。

おそらく、イロイロと限界がきたんだろう。

その姿を見て、凛は本当に少しだけ笑みをみせると、躊躇う事無く、魔弾をお見舞いした。

――――男性の急所に。

「っっっっっ(絶句)あはーーーー」

横島は奇怪な絶叫を上げると、地面に倒れ付した。彼の顔を見ると、もうアヘアへである。薬を決めた奴だって、まだましな顔をしているだろう。ガンドを撃った張本人でさえ、引いている程だ。

「ちょっと、横島。…大丈夫?」

凛は、変態に対し、恐る恐る声を掛ける。

その言葉を受け、横島はのろのろと顔を上げると、気持ちいい位に間違えた答えを返した。

「大丈夫だよ凛さん。俺は、これからも頑張っていくから」

その表情は、眩しい程の笑顔。声は清々しいほどに澄んでいる。

そんな横島を見て、凛は撃った。条件反射だった。

「はがっ!」

今度こそ、まともな呻き声を上げると、横島は沈黙した。

誰も居ない校舎内で、血だらけで倒れている少年と、同じく下着一枚で倒れている男。

物凄くシュールな光景である。

「何するんすか、凛さん!!」

回復したのだろう、横島は、がばっと起き上がると凛に詰め寄った。

流石の横島も、急所打ちは堪えたのだろう。ガンドの効能で不能になっていないかが心配される所だ。

「うるさいわね。なにか大切なモノを汚された気がしたのよ」

凛は傍若無人な事を言う。しかし、その発言はきっと正しかったりするのだ。

「うぅー」

横島は、納得いかない様子で服を着なおす。

そんな彼に、凛は檄を飛ばす。

「ほら、もう行くわよ」

「うぃーす」

横島は、やる気のない返事を返すと。凛の後に続いた。


「そういえば、横島。服は血塗れになってた筈だけど、どうやったの?」

帰路の途中、私は気になっていた事を質問した。

横島の服は、ランサーとの戦闘で血液や、土埃が付いていたのに、校舎で合流した時には綺麗になっていた。

まあ、綺麗といっても汚れが付着してないだけで、外見はぼろいままなんだけど。

私の問いかけを受け、横島は、いつもの調子で答えてくれた。

「これっすか。これはっすね、単純に作り直しました」

「作り直したってどういうこと?」

「この服はっすね、俺の魔力で作られてる訳じゃないですか。だから、新しく作り直しました」

「ああ、成る程ね。でも、それなら、新品みたいにすればいいのに」

「俺の場合これがデフォルトになってますから、変に手を加えると余計に魔力がいるんすよ。凛さんが新品の方が見栄えが言いというなら作り直しますけど」

「ふーん。横島って、根っからの貧乏性なのね」

私の痛烈な発言を受け、横島はがっくりと膝を落とすと地面にのの字を書き始める。

なんていうか、横島って芸が細かいわよね。

「貧乏性は俺のせいとちゃう、美神さんが悪いんや」

ぶつぶつと、横島は愚痴を言い出す。

その姿は、どこにでもいる普通の青年にしか見えず、ランサーこと英雄クーフーリンと互角の戦いを繰り広げた男にはどうしても見えなかった。

そのギャップに、私はつい笑いをこぼしてしまう。

「どうしたんすか、凛さん。急に笑い出すなんて」

横島は、立ち上がると怪訝そうに聞いてくる。

だから、その普通さが可笑しいんだって。
私は、横島に失礼と思いながらも一頻り笑ってしまった。

「ごめん、ごめん。横島が可笑しくって」

普通なら、カチンときてもおかしくない、セリフだったのに、横島は真面目な顔をすると、急に悩み始めた。

「ああっ。今のセリフは、喜ぶべきか、怒るべきか、関西人としてなら喜ぶべきだが、しかしっ」

前言撤回。やっぱり普通の青年ではなかった。

「馬鹿なこと言ってないで、とっとと帰るわよ」

私は、横島をはたくと、宣言通りにとっとと先に行く。

「凛さん。そんな急がんで下さいよ」

横島は、そう言いながらも、きちんとこっちの歩調に合わせてくれている。

本当に馬鹿みたいに穏やかな時間。
ついさっきまで、命を掛けた激闘が行われたなんて嘘の様だ。そして、この時間を過ごせているのは、後ろにいる軽い男のおかげである。

「本当にありがとう」

私は、ぼそりと自分でも聞き取れない程の音量で横島に礼を言う。

聖杯戦争に参加してくれたこと、忠誠を誓ってくれたこと、命を掛けて戦ってくれたこと、文珠を使ってまで補助してくれたこと。

きっと、横島は素直に受け取らないだろう。だから今はこれでいい。

私が、きちんと礼を言うのは、多分最後だ。
その時は、とびっきりの笑顔でお礼を送ろうと思う。

それが、横島には一番の贈り物になると思うから。


「戻ってきて早々悪いんだけど、横島。紅茶淹れてくれる」

あれから、横島と一緒に帰ってきて、とりあえず、紅茶を淹れてもらうことにした。

横島の淹れる紅茶って美味しいし。

「うーす」

横島は、疲れた様な返事を返すと、台所に消えていく。その間に私はお風呂の用意をしておくとしよう。

「どうすか」

横島の淹れた紅茶を飲み、一息つく。

「ん、まあまあよ。それより、横島。ランサーの事なんだけど、クーフーリンで間違いないのよね」

早速、今日起きたこの話し合いをすることにする。本当に、今日は色々あったし。

横島は、向かい側に座り、微妙に優雅な仕草で紅茶を飲んでいる。

「ええ、間違いないと思いますよ。ランサー自体否定していなかったし、あいつの宝具の特性も納得いくモノでしたし」

横島は、大事なことを、さらっと言う癖みたいなものがあると思う。

「横島、ランサーの宝具の特性解かったの?」

「ええ。発動直前に文珠で解析しましたから。“刺し穿つ死棘の槍”突けば必ず、心臓を貫いているという結果を導き出す、因果逆転の魔槍。いやー、危なかったっすよ。まじで」

横島は、紅茶を飲みながら、合いも変わらず軽い調子で言う。

因果逆転の魔槍か。はっきりいって反則じゃない。

回避しようとしても、すでに貫いているという結果がある為に、どんな回避も意味を成さない。

さすがは、クランの猛犬と呼ばれる、クーフーリンの宝具ね。

まあ、対する横島の文珠も反則なんだろうけど。それに眼もね。

ランサーを瞬時に半神と見抜く眼、それに、発動前から相手の能力を曝け出す文珠の能力。ランサーの宝具よりもずっと反則に近いと思う。

本当に味方で良かった。

「でも、横島。発動直前より前に、解析できなかったの?」

その言葉に、横島はこういう時によく見せる、困った様な顔をした。

「凛さん。俺の眼ってどう思いますか?」

「どうって、凄いと思うけど。公園の時とか、学園の結界とか、その上、魔術回路を見抜いたり出来るんだし」

ちょっと、話題がずれた気がするが、大切なことなんだろう。横島が、珍しく真面目顔だし。

「そうっすね。けど、それは有機物、それに念等を含めた、目に視えない何かしか、視れないということなんすよ」

ここまで言われれば、大体判ってきた。

「横島の眼は、無機物の解析が出来ないってことかしら」

横島は、満足そうに頷くと。さらに説明を続けた。なんか試されたみたいで、むかつくわね。

「凛さんの言う通り、俺は無機物を解析出来ません。無論、無機物にも魂は宿りますから、その魂から発する念を視ることは出来ますが」

「それじゃあ、ランサーの槍が、魔槍って解ったのは、それ自体を解析した訳ではなく、槍から発する念を視たからね」

「百点満点っすよ、凛さん」

むかっ。このむかつきはきっと横島だからだろう。いや、偏見なんだけど。私は、視線で先を促した。それを受け、横島はびくぅとすると、説明を開始した。うん、凄い失礼だと思う。

「え、と。文珠の話に戻りますけど、文珠は使用者のイメージで効果が変幻するって前回言いましたよね」

こくりと、頷く。

「だからっすね、相手の武装が判っていないと、効果が激減するんすよ。今回の場合はっすね、相手の武装はゲイ・ボルクであり、さらに、その由来から心臓に関係するだろうという、イメージがあったからこそ、ばっちり特性が解りました」

「しかし、それらが判っていないと、イメージが半減し、よくて、相手の武装が、どういう風な効能を持っているかしか判らないと。こんなかんじかしら」

私の注釈を聞き、横島は悔しそうな顔をする。ふん、マスターを試すような真似をするからよ。

「凛さん。人の解説は最後まで黙って聞くもんすよ」

私は、横島の文句を無視し、続きを促す。

「凛さんの言った通り、何も判らん状態で使っても、心臓に関わる様な気がする、くらいしか判らんかったでしょうね。勿論、発動直前っていうのも、大きく関係ありますが」

うーむ。横島の霊眼に意外な弱点発覚ね。

横島の眼は、その名の通り、霊を見ることに特化しているんだろう。まあ、私が勝手につけたんだけど。

うらうらと横島の能力について考えていると、急に横島が、背筋を正して言ってきた。

「凛さん。謝っておくことがあります」

「えっと。突然どうしたの。しかも謝るって」

「このシリアス状態を逃すと、もう言えないだろうと思ってですね」

冗談めかして言っているが、横島の表情は真剣そのものだ。

「それで、なにを謝るの」

「衛宮のことっす。俺は、あいつが女性だったら、きっと追いかけれました。だから、すみませんでした」

そういう事か。確かに、横島の魔力の事を考えれば、それは考えられる。

けれど、私は見ている、横島の命懸けの戦闘を。それを、考慮すれば横島の行動を責める訳にはいかないだろう。

「別にいいわ。横島にも責任の一端はあったかもしれないけど。あれは、マスターである私の責任よ。だから、別にいいわ」

そう、あれは私の責任。だから横島を咎めれる筈も無い。

「それじゃ、この問題はお終い。私は、お風呂に入ってくるから、紅茶の片
付けよろしくね」

横島は、申し訳なさそうな顔をするが、元気に返事を返してくれた。

「はいっ」

よしよし、この調子なら、覗くことはすまい。

……いや、一応釘を刺しておこう。

「横島。判ってると思うけど、私はサーヴァントである、貴方の気配は判るから。そのつもりでね」

「あっ」

横島は、はっとした様な声を上げ、その失態に気付くと、慌てて口に、手を当てる。

「横島さん。次は無いですよ」

「…はい」

横島は、がっくりと肩を落とすと、紅茶の片づけを再開した。

――――さすがは、横島ね。


湯船に手を付け、湯の温度を確かめる。

ちょっと熱い位だが、今日はちょうどいいだろう。

「それじゃあ、入りますか」

私は、脱衣所に戻ると、服を脱ぎにかかる。勿論、横島が覗いてないか確かめてからだ。

「っと、宝石を出しとかないと」

ポケットから宝石を取りだし、戸棚に置く。

その宝石の内の一つ、父さんの形見であるペンダントを手に取る。

現在、このペンダントには、最初に込められていた魔力の、三分の一程度の魔力が込もっている。

もし、自分一人で、衛宮君の治療を行っていたら、間違いなく、込められた魔力はスッカラカンになっていただろう。

それを考えれば、やっぱり横島に手伝ってもらって、良かったという、現金な自分がいるわけで。

ま、終わりよければ全て良し。

衛宮君は死ななかったから、これで桜が泣くことはないだろう。良かった、良かった。

………良かった?

「ちょっと待った」

あれから、どたばたしていたから、深く考えなかったけど、冷静に考えれば、片手落ちもいいところだ。

私は衛宮君の記憶を弄ってないし、何より、ランサーは目撃者の始末を優先した。

戦闘狂たるランサーが、戦いを中断してまで、目撃者を追ったことから、それは間違いなくマスターからの指令だろう。

そこまで、徹底したマスターが、目撃者が生存していることを知ったら。

「生かしておくわけないじゃない」

私は、急いで宝石をポケットに入れなおす。

あれから三時間か。間に合わないかもしれないけど。

私も、横島もあれだけの事をしたんだ、絶対に間に合わせる。


あとがき
明けましておめでとうございます。
新年最初の回はインターバルです。
直ぐに、セイバーとの邂逅に行こうと思いましたが、一話いれました。
横島君の文珠と霊眼の追加説明と、巻き込んだ人への思いが、今回の話でした。
前回、なまけもの様が、横島君のスキルパラメーターを考えて頂いたので、折角だから、きっちり表そうと思い、今回横島君のスキルパラメーターを表示し直そうと思います。
霊能力EX、陰陽術B+、仙術C、悪運A、心眼(真)C、心眼(偽)A、仕切りなおしB、戦闘続行B、カリスマ(偽)B+
ほとんど変わってませんが、それだけ的確だったのです。
因みに、霊能力EXは文珠も含めた値です。うっかり、説明を忘れていたカリスマ(偽)ですが、簡単にいうと人外懐かれスキルです。忘れていてすみません。なまけもの様どうもありがとうございました。
インターバルの回でしたが、楽しんで頂けたら幸いです。

シヴァやん様
ありがとうございます。
ご指摘どうもです。

紅様
未熟な腕がひしひしと判ります。
テンポはそのままにして、読みやすい様に精進します。

rin様
そう言って頂けると幸いです。
横島君の文珠ストックですが、この世界に飛ばされる前に、結構貯めておいたので、馬鹿みたいに使わない限り、困ることはないでしょう。

とり様
どうもありがとうございます。
セイバー戦は次回ですね。楽しんで頂ける様、頑張ります。

なまけもの様
毎回鋭い指摘ありがとうございます。
文珠の解析については、あんな感じで、横島君の眼は無機物に弱いです。
それに、無機物はやっぱり士郎君でないと。
ソーサーについてですが、矢避けの加護に該当しています。
スキルパラメーターは、ありがたく使わせてもらいました。どうもです。

T城様
ありがとうございます。
おっしゃる通り、横島君は強くなります。これについては、また後日、本編で書くつもりです。
ご指摘、早速使わしてもらいました。

ゆか様
サイキック猫騙しは、やっぱり間合いの関係で難しいですね。

トケト様
ありがとうございます。
楽しんで頂いて幸いです。続き、どうだったでしょうか。

渋様
そう言って頂くと、嬉しい限りです。
士郎君については、共同作業でいきました。
どうも、頑張ります。

ryo様
ありがとうございます。

kuesu様
どうもありがとうございます。
ガンドについては、同レスの匿名様参照です。
セイバーはやっぱり、セイバーのままですね。

匿名様
ガンド補足どうもです。
情報を制する俺は世界を制すってことで、勉強し直してます。
某管理人さんとか、某元大尉さんとかに、みっちりと。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
それでは、九十九でした。

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