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「風の聖痕 IF「右手に風を、左手に貴女を」 第01話(風の聖痕)」

タクハイ (2006-01-02 23:17/2006-01-08 14:42)
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「二度と私の前で風術のような下術を見せるな!!!」

これが和麻が父親である厳馬に風術を見せたときの反応。
炎術至上主義の厳馬の言葉としては予想道理のものであり、和麻は神凪をこのときにすでに見限っていた。


風の聖痕 IF 「右手に風を、左手に貴女を」
第01話「変わりゆく環境」


和麻が風術を初めて使った次の日の早朝、神凪の屋敷に存在する訓練を行うための庭に和麻がひとりで立っている。
和麻は自然体で立ちながら目をつぶり静かに集中している。
しばらくすると風が和麻を中心として吹き始める。
和麻のまわりを風が弱くも強くもならず一定の強さで吹き続ける。
そんな状態が30分ほど続いた後、唐突に風が止み和麻が目をあける。
そのまま考えをまとめるかのようにブツブツとつぶやいていたがふと何かに気づいたかのように顔を横に向ける。

そこには怒りを堪えるかのような顔をした分家の子供たちが立っていた。

「何か用?」

和麻が特に感情も込めずに尋ねる。
いつもこんな反応を示さない和麻が反応したことに彼らの顔に軽い驚きが見える。
しかし、すぐに怒りの表情をとりもどし昨日和麻に炎を放とうとした少年が和麻に向かって怒りの込もった言葉を放つ。

「昨日はよくもやってくれたな!」

「用件はそれだけ?なら訓練の邪魔だからどこか別のところに行ってくれないか?」

あくまで感情を込めずに淡々と言葉を返す和麻にいらついたのか少年が和麻に炎を放つ。

「ふざけるな!」

ゴウッ!!

しかし和麻に当たる前に炎は強い風にかき消される。

「「「なっっ!!!」」」

炎がかき消されたのをみて分家の子供たちが驚きの声をあげる。
和麻はそれにかまわずに腕を水平に振りぬく。
スッと彼らの間を風がすり抜ける。
一瞬後カラーン!と彼らの後ろで金属音がする。
彼らが振り向くと炎術の標的に使う的をつける鉄の棒がきれいな切断面を見せ転がっている。

「次ぎは当てる、ケガをしたくなかったら早く帰れ」

和麻が淡々と変わらない口調で警告する。

「この出来損ないが!」

「生意気なんだよ!」

「調子にのるな!!」

今まで見下してきた和麻にまるで相手にしていないかのように扱われたことが気に食わないのか、何人かが声を張り上げて先ほどよりも強い炎術を放とうとする。

ドサッッッ!!

しかしその炎が放たれる前に炎を放とうとしていた者は全員一瞬にして風に吹き飛ばされ地面に転がる。

「グッッッ!」

1人がうめきながらも立ちあがろうとするが完全に立ちあがる前に和麻が腕を斜めに振り下ろす。

ザッッッッ!!

鈍い音がして転がっている彼の前の地面が刀で切られたようにえぐられる。
和麻は驚きで声の出ない分家の子供たちのほうを見て短くいい放つ。

「帰れ」

その声を合図にして今まで固まっていた子供たちが我先にと逃げ出す。
それを見送った後和麻は再び訓練を行おうと彼らに背を向け再び集中し始める。
しかし、何かに気がついたかのように振り向くとそこに操が静かに立っていた。

「やはり風術が使えるようになったのですね和麻様」

「ああ」

操の問いに短く答える和麻。そして

「それよりもいいのかこんなところに来て俺と話してても、下手をすれば操があいつらの標的になるぞ」

昨日のことを除いて操が和麻を助けてくれたのは分家の人間の目の届かない場所だけである。
また、和麻も操が自分と親しくすることで操に被害が及ばないように、人目のあるところではなるべく操とはかかわらないようにしていた。

「多分もうそうなってますよ、今回和麻様のところに向かうときも私は声をかけられませんでしたから」

「すまない」

操をそういった状況に追いやる原因となったのが心苦しいのかつらそうに和麻は操に謝る。

「かまいませんよ、私にはあの状況が続くことも絶えられそうにありませんでしたから。
それに・・・」

そこでクスッと笑って操は続ける。

「和麻様は私のことを守ってくださるのでしょう?昨日の様に」

そこで昨日叫んだ自分の言葉を思い出したのか和麻の顔が真っ赤に染まる。
そして歯切れ悪く答える。

「ええと・・・まあ・・・うん・・・」

そんな和麻の様子を見てさらに操は楽しそうに笑う。
和麻はしばらく憮然とした表情をしていたがしばらくして真剣な顔をすると操に言う。

「でも、俺一人の力じゃ操を守れないときがあるかもしれない」

操も真剣な和麻の表情に笑うのを止め、やはり真剣な声で答える。

「でしたら私も強くなります和麻様に守ってもらうだけでなく隣で戦えるように」

「わかった、じゃあこれからいっしょに訓練して強くなろうな?」

「ハイッ」

和麻の問いに操はそう答える。
そしてその日から彼らの強くなるための訓練が始まった。


ある平日の彼らの訓練内容は

早朝に起きて10kmほど走った後におもに身体能力を上げるための訓練を行う。

その後学校に行くが終わったあと寄り道などせずに帰宅する。

帰宅した後は簡単な組み手などを行い体術の向上を行う。

その後、精霊魔術の訓練としてより多くの精霊を制御できるように訓練を行う。

そしてそんな日々を続けながら休日や長期の休みには、神凪家の所有する修行のための山などに行き精霊魔術や肉体を限界まで行使することにより限界の位置をさらに高めた。


それから3年の月日が過ぎた。

分家の子供達はあの後も何度か和麻や操に襲いかかろうとしたが、和麻が風術によって奇襲や彼が適わない分家の大人達との戦闘を避けたおかげで、和麻たちが中学一年になってしばらくしてからあきらめたのか襲おうとはしない様になっていた。

また、それぞれ両親との仲は険悪になっていた。和麻の場合、厳馬・深雪共に会話は必要最低限しか行わず、操の場合も父親である雅行に和麻と親しくするなと言われた事に反発したことで関係が悪化していた。

そんな中、和麻達の実力は和麻の場合風術の力は分家の中で一流と呼ばれるごく一部の術者以外が相手なら正面から戦っても負けないだけの力を持っていた。操も炎術・体術共に実力を増しており特に炎術は分家の中でも1,2位を争うぐらいの実力を身につけていた。

けれども、そんな彼らの立場は決して良いものでは無かった。
和麻は神凪本家の人間にも関わらず風術という下術を使う『恥さらし』。
操は優秀な炎術師でありながらも『恥さらし』をかばう『変わり者』。

神凪一族が中学生以降になってから行う退魔の仕事も通常は先輩の術者の補助から始まっていくのに対して、彼らは神凪一族の下部組織である風牙衆を除いて初めから2人だけで行わされていた。

もっとも、2人は風牙衆と友好的な関係を築く事によって経験不足などの問題を解決し、見事に依頼をこなしていたのだが。

そんな彼らの次なる運命の分岐点が高校生になったときに現れる。


設定
注:この設定はあくまで作者が考えたものであり原作「風の聖痕」でも同じ設定であるとは限りません。

<和麻が風術を使えなかった理由>
通常精霊魔術では火・水・風・土のどれかひとつの属性の精霊と契約するとほかの精霊に直接干渉することはできなくなる。
これは精霊に干渉するための精神や気と言ったものが契約した精霊に対して特化したものに徐々に変わって行くことがその原因である。

神凪一族は初代が炎の精霊王と契約したことでその体質そのものが炎術に特化したものになり、炎の精霊がそれに引かれて自ら契約を結びにくるので生まれたときから炎の加護をもち炎術が使用できる。

和麻の場合は隔世遺伝という状況である。和麻の先祖にあたる人間に強い風術を扱うことができる人間がおりその人の血を濃く受け継いだために和麻は生まれたときからすでに風の精霊と契約した状態になっていた。(通常、風は火に打ち消されるため火と風の性質を同時に受け継いでも炎術の才能しか発現しない)

和麻が今まで風術を使えなかったことは神凪一族に生まれたことが原因である。
精霊魔術の行使には強い意思が必要となる。
通常起こり得ない現象である炎や風を操るという行為を自分自身が認め、その上で精霊に干渉する。
しかし、和麻は神凪一族の人間であり自分自身が風術を使えるなどと言うことは考えたことすらなかった。

この認識が和麻が風術を行使することへのリミッターとして働き。
和麻が現在の状態ではどうすることもできなくなり、かつそれでも現状を打破したいという状況になるまで和麻は風術を扱うことができなかった。


<和麻が最初から大量の精霊を制御出来た理由>
和麻は幼い頃から炎術を習得するために訓練を行っていた。
その中には当然精霊魔術の訓練も入っていた。
自分が炎術を使えない理由が制御が行えていないせいではないかと考えた和麻はこの制御の訓練にも力を注いでいた。
これが和麻が初めて精霊魔術を使うにもかかわらず大量の精霊を制御出来た理由である。


あとがき

>ヒロヒロさん
感想・意見ありがとうございます。
文章については今後も読みやすいように他の方の文章を参考にして改善したいと思っています。
句読点の数もできるだけ減らし読みやすい文章を心がけていきたいと思います。

>春風さん
感想ありがとうございます。
頑張って完結まで持って行こうと思います。

>みどりさん
感想・意見ありがとうございます。
操の和麻に対する呼称ですが後から何度か読み返すとやはり私にも違和感が感じられたので修正させて頂きました。
なおこのSSでは操の年齢は和麻と同い年として書いています。
原作では特に操の年齢が明確に書かれてはいなかったと思うのですがもしみどりさんがお知りなら教えてくださいお願いします。

操の自己犠牲については心情の補足説明を新たに修正として入れさせて頂きました。

とても参考になる意見ありがとうございました。

>フクロウさん
感想・意見ありがとうございます。
最後に書いてあった2つ名についてですが後から読み返して自分でも少し蛇足だったかなと思ったので削除しました。

>カナリアさん
感想ありがとうがとうございます。
頑張って完結まで持って行きたいと思います。


今回最後に最後に書いてある設定についてですが、本文中に入れると説明が多すぎて見づらくなると考え文の最後に入れ差して頂きました。
ただこの方式が不快に感じられる方もいらっしゃると思いますので設定に対する意見などがありましたら書き込みをよろしくお願いします。

最後に駄文にもかかわらずここまで読んでくれてありがとうございました。感想、意見、誤字の修正などが有りましたら。どうぞよろしくお願い致します。

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