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「風の聖痕 IF「右手に風を、左手に貴女を」 プロローグ(風の聖痕)」

タクハイ (2006-01-01 02:56/2006-01-02 22:56)
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このお話は風の聖痕の再構成、カップリングは和麻×操です。また物語の展開上、神凪一族の扱いはそんなによくないと思います(アンチ物ほどではないと思いますが)。こういう話が嫌いな人、特に和麻×綾乃派の人は見ない方が良いかもしれません。それでもかまわないという人は見てください。
 またこの作品は私の初投稿のお話になります。まだまだいたらぬ所の多い駄文ではありますがよろしくお願いいたします。


 神凪 和麻、彼は天才だった。体術に優れ自分よりも年上の相手にも勝利をおさめ、様々な術式の習得にも優れており高度な術も使いこなす、学校の成績もよく日本でなければ飛び級も可能だっただろう。

 しかし、彼にはただ1つだけ欠けている才能が存在した。それは、炎術の才能。炎の精霊王と契約した神凪一族で最も重要視される才能を彼は持っていなかった。故に彼はどんなに優秀であろうとさげすまれる。精霊王に選ばれなかった『出来損ない』と。


風の聖痕 IF「右手に風を、左手に貴女を」
プロローグ


 和麻には炎の精霊に干渉する力が全くなかった。通常の精霊魔術師が行うように目的の精霊と契約する事で炎の精霊の力を借りる事もできなかった。

 ごく普通の精霊魔術師の家系であったのなら炎の精霊と契約出来なくても、他の相性のよい精霊と契約すれば良いだけなので問題は起きなかったのであろう。しかし、神凪は世界でもトップの炎術師の家系であり。しかも、和麻はその本家の血筋の人間だった。


 精霊王の加護はその血に宿る。最初に精霊王の加護を受けた神凪の初代から血が遠ざかるほど生まれたときに与えられる精霊王の加護は少なくなっていく。現に分家の人間では現在最高位の炎である黄金の炎は失われており、本家の人間にも黄金の炎が出せない物も居た。

 しかし全く炎の加護が存在しない人間は分家の人間であっても今まで生まれてきた事は無かった。しかも、彼の父親は神凪でNo2の実力を持つ神凪 厳馬である。炎の加護が受け継がれないなどという事は考えられなかった。そしてその事が彼が『出来損ない』と呼ばれる原因になる。


 現在、神凪初代の直系である本家とその流れから遠ざかった分家には明確な力の差が存在する。決して表に出る事はないが本家に力でかなわない分家の人間は本家の人間に対して強い妬みが存在した。その分家の人間にとって、本家の人間でありながら炎術の才能が全くない和麻は格好の鬱憤晴らしの対象になっていた。

 通常、炎の精霊王の加護を受ける神凪一族はその血に強い炎の精霊に対する高い干渉力を持ち、生まれながらにして並の炎術師と同じ力を持っている。そして、精霊魔術は力を借りる精霊の加護を受ける。よって彼らは炎に対する強い耐性が備わっている。しかし和麻にはその加護が無いため炎に対する抵抗力が全くなかった。


 そして本来通じる事のない分家の炎が本家の人間に通用することが彼らの妬みのはけ口となる絶好の理由となってしまった。

 和麻が炎術以外の才能に秀でていた事も原因だったのだろう。本家に対する分家の人間の嫉妬の感情は大人では和麻に対する蔑み、その子供では和麻に対する虐待として表れた。本来それを止めるべき存在である父親の厳馬、母親の深雪は炎術の才能のない和麻を決してかばおうとはしなかった。

 父親の厳馬は炎術師である以外の生き方を知らず、炎術の才能のない和麻に対し他の生き方を教えてやることもできず、ただ厳しく接する事しかしできなかった。また、自身も炎術至上主義であるが故に炎術の使えない事を理由に虐待を受ける和麻を助ける事はなかった。母親の深雪は炎術の才能のない和麻を自分の息子とは認めず自分の子供としてあつかわなかった。


 もっとも、和麻に対する助けがなかったわけではない、宗主である重悟だけは和麻を分家の人間からかばった。しかし、それは結局本当の意味での助けには成らなかった。重悟がいくら分家の人間に注意をしたところで実質的な罰のない状態では和麻に対する虐待は無くならなかったのだ。


 そんな状況で、和麻は自分の力でそれを解決しようとした。彼はまず何としてでも炎術を身につけようとした。自分を極限状態まで追い込み、精霊を感じようと身体と精神を共に限界以上まで酷使した。また、ありとあらゆる精霊魔術の習得方法を調べ炎術を習得しようとした。だが彼に炎術が身につく事は無かった。

 小学校の中学年になったころに彼は炎術を身につける事を諦めた。そして、他の手段によって問題を解決しようとした。神凪の炎術は強力であり、普通の方法では防ぐ事はできなかった。そこで彼は耐火の効果を持った呪符を大量に作りそれにより炎術を防ぐ事にした。


 結果としてその試みは成功した。一発の炎術の攻撃に対して10枚以上の耐火の呪符を消費するというとんでもなく非効率的な物ではあったが、とにかく彼は炎術を防ぐ手段を手に入れた。元々体術で彼は同年代の人間よりも優れていたので、彼は相手の炎術を呪符で防ぎ、相手に隙ができた瞬間に急所に打撃をたたき込み気絶させる事で初めて自力で虐待から逃れる事ができた。

 これで虐待が無くなれば何も問題は無かったのだろう、しかし、そうはならなかった。今までただ一方的に攻撃するだけの獲物だったはずの『出来損ない』に反撃され、やられたことは分家の子供達にとって耐えられない事だった。彼らはすぐにやり返した。数を集め、1人の相手に対して多人数で囲み1人がやられてもその間に他の物が攻撃する事で再び『出来損ない』に対して一方的な攻撃を行った。そして一度反抗した事によって虐待は以前よりもひどくなった。

 再び虐待が行われても和麻は諦めなかった。むしろ、たった一度でも自力で虐待から逃れる事ができたという事は彼に希望を与えた。更に効果の高い耐火の呪符やその他の耐火の道具を作るために魔術道具の作成方法を学び、多人数相手にも対応出来るように更に体術を鍛えた。


 それから、分家による和麻の虐待と、和麻の努力により虐待から逃れるといういたちごっこが繰り返される日々が続いた。たった1人で立ち向かう和麻にとって、この戦いは勝ち目のある戦いではなかった。なにしろ、彼が10の力を鍛える間に彼らは1人が1の力を鍛えれば十分に対応する事ができるのだから。それでも彼は屈することなく戦い続けた。

 そして数年の年月が過ぎ、和麻にとって分岐点とも言える出来事が起こる。


「グッ!」

 神凪の屋敷にある鍛錬用の広場からうめき声が聞こえる。声を上げたのは小学6年になった和麻。その彼の周りを彼とほぼ同年代の少年少女が囲んでいる。耐火の魔術道具が全て破られたのか、服の一部を焦がした和麻が倒れ込む。

「どうだ、思いしったか!!」

 その中の一人の少年がそう和麻にむかって言い放つ。それにつられるように周りの子供達も次々と和麻をののしる。

「所詮あんたなんてただのおちこぼれなのよ!」

「お前は精霊王に選ばれなかった出来損ないなんだからな!」

「出来損ないのくせに生意気なのよ!」

「これに懲りたらもうはむかうなよ!」

 そんな彼らを和麻何も言わずにらみつける。その眼には決して屈しないという意思を表すような強い光が宿っている。その目が気に入らなかったのか子供達の中でおそらく一番年長であろう少年が和麻を蹴り飛ばす。

「ウッ!」

「何とか言えよ!!」

 だが和麻は何も言わずただにらみつける。この状況で何を言ってもただ相手を喜ばせるだけと解っているから。そして相手が油断し逃げ出す事のできるチャンスが来るのをじっと待つ。

 何も言わない和麻が気に入らないのか少年が彼に向かって炎を放つ。

「くらえ!」

 和麻に炎が降り注ぐ。しかし、そこで和麻が動き出す。一瞬で立ち上がり、気によって自分の前面のみを守り、炎を突破する。そして炎を放った少年のアゴに向かって拳をたたき込み、その勢いのままできた隙間から逃げようとする。

 和麻を襲う分家の人間も宗主の前では襲おうとはしない。また、まだ未熟な彼らは燃やしたい物だけ燃やすという炎術のコントロールができないため本家の屋敷の中では炎術は使えない。その事が解っている和麻は何とか本家の屋敷に逃げようとする。

 しかし、今回は運が悪かった。和麻の逃亡にとっさに反応した少年が和麻の足下に向かって炎を放つ。

「ツッッ!」

 足を焼かれた和麻が体勢を崩す。とっさに受け身はとったが、焼かれた足では逃げられるほどの速度は出せない。

「よくもやったな!!」

 さらに、殴った少年も狙いがずれたのか顔を押さえながら立ち上がる。そして、その顔に怒りを染めて和麻をにらみつけ、掲げた手に大量の炎を生み出す。

(これは死ぬかもしれないな)

 その炎を見ながら和麻は場違いなほど落ち着いた思考で考える。今まで何度も虐待を受け何度も死にそうになりながら生き延びてきた和麻も今回ばかりは耐えられそうにない。

(まあ、しかたないか)

 と心の中に今まで頑張ってきた事が嘘のようにあっさりとあきらめと言える感情が浮かぶ。この数年間、頑張って生き延びてはきたがその中でよい事などほとんど無かった。どんなに頑張っても両親は自分の事を認めてくれる事はなかった。

 厳馬は耐火の魔術道具を使用する自分を弱者と呼び、深雪はつい最近生まれた弟の煉のことしか見ないで自分の事など少しも見ようとはしない、重悟も変わらず分家による虐待をいさめるしかしない。きっと自分が死んでも悲しむ人間など居ないのだろう。ならばここで死んでも別にかまわない。そんな思いが和麻の心によぎる。

「死ね!!!」

 そして、分家の少年の手が振り下ろされ用とした瞬間、和麻の前に1人の影が躍り出る。

「待ってください!、そんな炎をぶつけたら本当に死んでしまいます!!」

 影の正体は大神 操、神凪の分家の1つ大神家の娘で本人の資質はそれなりだが、その性格が戦闘向きでない事からおもに後方支援の要員として訓練を受けている。

 そんな彼女にとって流石に殺すような攻撃を許す事はできなかったのだろう。和麻の虐待が行われているときも、それに加わろうとしないで辛そうな顔をして囲いの外から眺めているだけで、無理矢理この場に連れてこられたというのがよくわかる。また、何度か大きな怪我をしたときに手当を隠れて手伝ってくれた事もある。和麻にとって分家の人間の中で唯一警戒をする必要のない少女であり数少ない心の拠り所であった。

 その彼女が小さな背中を振るわせながらも他の分家の子供達から和麻を守るように両手を広げて立ちふさがる。

「どけ!!!」

「いやです!!!」

この時彼女の脳裏に浮かんでいたのは和麻との思い出、自分と同い年にもかかわらず周りの暴力に屈しない強い意志。
自らも厳馬の出す課題と虐待によって傷ついているにも関わらず父親の課す厳しい訓練により傷ついた自分をいやしてくれた優しさ。
そしてどんなに『出来損ない』と蔑まれようとも諦めずに努力している和麻の姿は気の弱い彼女にとって憧れであり、その憧れは彼女の中で既に好意という形に変わっていた。

(和麻様を死なせたくない!!!)

そんな思いが彼女を自らが犠牲になるかもしれないという状況にもかかわらず彼女にかばうという行動をとらせていた。


「じゃあ、一緒に死んじまえ!!!」

 いつもは気の弱い操がはむかい、さらに『出来損ない』をかばっている事が気に入らないのか分家の少年は掲げていた手を振り下ろす。

 神凪一族に炎の耐性があるといってもそれにも限界は存在する。強い怒りによって増幅された炎は分家の人間では耐えられそうな威力では無かった。

 その時、和麻の中で時間が制止したかのように周りの風景がゆっくりになる。

(操が死ぬ!)

 少年が腕を振り下ろす。

(ダメだ!) 

 操には耐えられないような炎がゆっくりと彼女に迫る。

(そんの認められない!) 

 あと5m

(力を!!)

 あと3m

(どんなものっだっていい!) 

 残り1m

(この状況を何とかするだけの力を!) 

 そして彼女にぶつかる直前。

(オレにくれ!!!)

 風が吹いた。


「え??」

 炎が迫った時思わず目をつぶっていた操が何もなかった事に驚き目を開ける。

「いったいなにが・・・」

 そして感じる、彼女の後ろで高まる風の精霊の力を。

「和麻様?」

 そうつぶやいて後ろを振り向く。

 そこには大量の風の精霊を纏い立っている和麻の姿があった。

「操は・・・・・」

「死なせない!!!」

 その言葉と共に和麻は腕を振る、そして、生まれた衝撃波により操を除いた分家の子供達が飛ばされ、壁や地面に叩きつけられる。

 そして操の無事を確認すると元もと限界に近い状態で、初めて大量の精霊を使役した事により一気に疲労が襲いかかってきたのだろう。

「無事でよかった・・・」

 そう言ってゆっくりと倒れ込んだ。

「和麻様!!」

 操があわてて駆け寄り和麻の状態を調べる。

 しばらく和麻の額に手を当てたり顔色を観察し、どうやらただの疲労だと解ると安心したかのようにため息をつく。

 そして、和麻を部屋で休ませるために背中と足の裏に手を入れ、俗に言うお姫様だっこで和麻を抱え上げ、しっかりとした足取りで和麻の部屋に向かう。

 部屋にはいると、とりあえず和麻をベッドに寝かせる。そして汚れた彼の服を脱がし、怪我ややけどの手当をしていく。そして、服を着せ改めて和麻をベッドに寝かせる。

 しばらく、和麻の寝顔を見ていた操は特に状態に変化がない事を確認すると自分も部屋で休むために部屋を出る。

「助けてくれてありがとう、和麻様」

 部屋を出るときに振り向き寝ている和麻に一度そう言った後、操は和麻の部屋の扉を閉める。

 和麻が風術を使った事、それによって分家の子供を全てなぎ倒した事、そしてその際に操られた大量の風の精霊達。気になる事は多かったが操も自分が死にかけたという恐怖で正直かなりの疲労がたまっていた。自分の部屋に帰るとそのまますぐにベッドに倒れ込み寝てしまった。


 この日の出来事が和麻と操2人とって運命の分岐点になる。


 あとがき

 駄文にもかかわらずここまで読んでくれてどうもありがとうございました。感想、意見、誤字の修正などが有りましたら。どうぞよろしくお願い致します。

 〈修正〉
 操の和麻に対する呼び方を修正しました。
 最後に書かれていた二つ名を削除しました。
 操が和麻を庇うときの心情を補足しました。
 

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