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「司貴聖伝史(まぶらほ+藍蘭島+オリジナル)」

イグレッグ (2005-12-02 22:42)
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司貴聖伝史


第六話 司貴一族の里(中編)


和樹は夕菜達を連れて、富士の樹海の奥深くに存在する司貴一族の隠れ里に帰郷していた。
そして今は五方星の一人、水術師・行人と別れ、和樹の実家に向かっていた。

「それじゃあ和樹・・・・・私は家に帰る・・・・・」

仁宇が『龍鳴神社』と書かれている鳥居に近付いた時、和樹達にこう言った。

「・・・・・龍鳴神社・・・? 仁宇さんの家って・・・ここ何ですか?」

「そうだ。歴史ある由緒正しき神社だ。どうだ、記念にここへ参拝に行かないか?」

仁宇が夕菜達にお参りを進めていたその時、神社から続く長い階段から何かが転げ落ちてきた。

「イヤアァァァァァッ!」

転げ落ちてきたのは青色の行灯袴という巫女衣装を着て、綺麗な黒髪を左右に結んだ髪型をした少女だった。

ドオオオオオーーン!!

転げ落ちてきた少女は顔面から地面にぶつかり、大きな轟音を出した。

「あの! 大丈夫ですか?」

「宮間さん。心配しなくて大丈夫だよ。あやねちゃんだから」

「えっ?」

夕菜が階段から落ちてきたあやねという少女に声を掛けるが、和樹が心配ないと断言する。

「ちょっと!! 少しは心配しなさいよ!!」

「ほら・・・」

「本当です・・・」

「さすが我が娘ながら丈夫だな・・・」

和樹が言った心配無用な発言が聞こえたのか、あやねが突然、立ち上がってきた。しかも無傷で。

「あら? お父様? 和樹様まで?」

「お父様? あなた・・・仁宇さんの娘さんですか・・・?」

「ええ、そうよ。私は龍鳴院あやね・・・・・あんた達見かけない顔ねえ・・・『外』の世界のお客さん?」

「珍しいわね・・・・・」

何時の間にか、夕菜達の後ろにワラ箒を背中に背負った赤い巫女衣装を着た少女が立ていった。

「はっ!? 何時の間に? 気配すらなかったぞ?」

「あら? 小さい子ね・・・・・小学生?」

玖里子がワラ箒の少女に対してとんでもない爆弾発言を言ってしまった。

「かっ、風椿先輩!!」

「えっ? だってそうでしょ。そっちの青い服の子が姉で・・・こっちの子は妹でしょ?」

玖里子は更にとんでもなく恐ろしい事を言ってしまった。

「・・・風椿先輩・・・・・あなた・・・なんて・・・おそろしい事を・・・・・」

「えっ?」

「そっちの青い袴のあやねちゃんは神城さんと同い年で・・・・・そしてあっちの赤い袴のまち姉ぇは・・・・・風椿先輩と同い年なんですよ!!」

和樹が発言した後、一瞬、その場が沈黙状態になった。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「「「えっええええーーーーー!?」」」

その場の沈黙は夕菜と玖里子と凛のとてつもなく驚いた叫び声で破られた。

「うそ!?」

「あたしと・・・同い年・・・・・」

「ん? あやね・・・何やっているんだ・・・・・?」

仁宇が自分の後ろにしゃがんで隠れている、娘のあやねに気付いた。しかも両手で今でも笑い出しそうな口を抑えていた。

「・・・・・プゥプゥ・・・小学生・・・プゥプゥ・・・妹・・・クスクス・・・」

どうやらあやねはさっき、玖里子がまちに言った事がすごく受けたらしく、口を抑えながら、必死で笑いを堪えていた。

「うふふ、あ・や・ね」

「おっ、お姉ぇ様!?」

なんとあやねの目の前にまちが顔を近づけてきた。しかも表情に不気味な含み笑いを浮かべていたまちの右手には五寸釘、左手にはワラ人形を持っていた。

「お姉ぇ様!? まさか!?」

「えい」

まちがワラ人形に五寸釘を突き刺した。それと同時にあやねは甲高い悲鳴を上げた。

「ほげぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

「さすが我が娘・・・見事な呪術だ・・・・・」

娘のまちのワラ人形の呪術を見ていた仁宇はなぜか感心していた。

「さて・・・・・」

次にまちはその不気味な目付きを、玖里子に定め、睨んだ。まちの視線は怒りのほかに少し妬みが含まれていた。

「あっ、あの・・・・・まちちゃん・・・・・」

「大丈夫・・・・・あなたは特別よ・・・・・」

まちはそう言いながら、左手にワラ人形、右手には五寸釘ではなく剣山を持っていた。それを見た玖里子は体中、とてつもない恐怖を感じ取った。

「ちょっ!? ちょっと、待ちなさ・・・」

「えい」

「イヤアアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

玖里子は必死で止めようとしたが、空しくもまちは剣山でワラ人形を突き刺してしまった。その時、玖里子の悲鳴はあやねに勝るとも劣らぬほどの叫びで里中に響き渡った。


「宮間さん・・・・・やっぱり僕が抱えようか・・・・・」

「大丈夫です。反重力魔法で軽くしていますから・・・」

夕菜はまちのワラ人形の呪いを喰らって気絶してしまった玖里子を反重力魔法で背負っていた。何で夕菜が背負っているのかというと、まちの呪いで気絶してしまった玖里子を最初は和樹が背負おうとしたが、それを夕菜がすごく猛反対してしまい、代わりに夕菜が玖里子を抱えていくことになったのだ。

「でも・・・女の子にそんなことさせちゃ悪いよ・・・・・」

「そうだな・・・せめて荷車があれば乗せていけるのに・・・・・」

「そうだ・・・ちょうどこの近くに朱堂さんの家があるから荷車の一台ぐらいあるかも・・・・・」

「朱堂さん・・・?」

「誰ですか?」

「司貴の里の職人一家だよ。退魔武具からカラクリ、建具、陶芸、金物、その他、色々なんでも作ってしまう程の腕前だから、荷車も作っているんだ。僕の愛刀『天凰』もその人達が作ったんだ・・・」

「『天鳳』・・・? それがお前の刀の名か?」

「うん・・・でも今は・・・退魔の仕事を休んでいるから、手入れ以外・・・刀を抜いていないんだ・・・ごめんね・・・あの時、ついかっとなっちゃって・・・・・」

「いいえ。私もごめんなさい。あの時・・・私もつい」

「私もすまない・・・お前を一方的に悪党と決め付けてしまって・・・こんなに里の人達に親しまれているお前が・・・悪党なんて・・・到底思えない」

「もういいんだよ・・・宮間さん。神城さん。それより早く朱堂さんの家に行って、荷車を借りよう・・・いつまでも宮間さんに魔法を使わせちゃ悪いし・・・・・」

和樹はそう言いながら夕菜達と共に朱堂の家に寄って行った。


「ここが朱堂さんの家ですか・・・?」

「なかなか・・・いい家ですね・・・・・」

その家は立派で純和風な日本家屋で、庭には焼き物用の釜戸と蔵がいくつか建っていた。和樹は玄関に近づいて声を掛けてみた。

「すいませーん。朱堂さーん居ますか?」

「おや? 和樹じゃねえか!」

家から出て来たのは職人の羽織を着た一人の青年と同じ羽織を着たペンギンとイタチだった。

「なっ、なんでペンギンとイタチが!?」

「あっ、ゲキさん。とげ太さんといた一さんも・・・」

「なんだ。お前、里に帰って来てたのか? お〜いみんな・・・和樹が帰って来たぞ!」

ゲキという青年が家に向かって声を掛けると、その家から朱堂家の人達が出てきた。

「和樹じゃねえか?」

「お帰り!!」

「戻って来たのか!」

「元気にしていたか?」

朱堂家の男達に言い寄られて来て、和樹は少し後退りしてしまう。

「おいゲキ! テツ! エン! バク! ギン! お前らこんなに迫られると、和樹が困るぞ!」

和樹に言い寄ってきた五人に声を掛けたのは一人の男だった。その男は職人の羽織を着て、体つきはたくましく、歳は三十代後半で、その顔つきはいかにも『職人』という威厳を醸し出していた。

「芦高さん・・・お久しぶりです」

「よおっ、元気にしてたか?」

「和樹さん・・・この人は・・・?」

「この人は朱堂芦高さんと同じ職人のとげ太さんといた一さん。それと芦高さんの息子さん達。長男のゲキさんと次男のテツさん、三男のエンさん、四男のバクに五男のギンくん。その下に妹一人に弟一人の七人兄弟なんだ。芦高さんは仁宇さんと同じ父さんの古い友人で司貴一の刀匠兼天才カラクリ師で、僕の刀『天鳳』を作ったのもこの人なんだ」

「そう言う事だ・・・ところで和樹。このお嬢さん達は『外』の世界の客人か?」

「はい・・・初めまして宮間夕菜と申します・・・こっちの気絶している人は風椿玖里子さんです」

「なんでこっちの人、気絶してるんだ?」

「実は・・・まち姉ぇ・・・怒らせちゃって・・・・・」

「なるほど・・・・・さっきの大きな悲鳴はこの姉ちゃんだったんだね・・・・・」

「かわいそうに・・・・・」

「お気の毒・・・・・」

なぜか朱堂家の人達はすごく納得していた。

「そっちの刀を持ったお嬢ちゃんは?」

「はい・・・神城凛と申します・・・・・」

凛が自分の名前を言うと、それを聞いた朱堂五兄弟は、急に彼女に向かって言い寄ってきた。

「君、りんって言うの?」

「オレ達の妹と同じ名前!」

「君も料理得意なの?」

急に朱堂兄弟に質問攻めにされ、さすがの凛もたじろいでしまう。

「なっ、なんですか!? 何を言ってるんですか?」

「神城さん・・・・・実は・・・ゲキさん達の妹さんの名前も君と同じ・・・りんなんだ・・・・・」

「私と同じ名前?」

「ああ、職人の腕は不器用なのに何故か料理の腕だけはいいんだよな・・・ハハハッ」

「悪かったな・・・・・」

ヘラヘラ笑っていたゲキの後ろには、職人の羽織を腰に巻いた少女と、頭にはゴーグルらしき物を身に着けていた少年が立っていた。

「おっ! りん、ライも来たか・・・」

「来たかじゃないだろう!! ゲキ兄ぃ、ひでぇよ! あたいだって早く一人前になるために毎日頑張ってるんだぞ!!」

「姉ぇちゃん、何言ってんの・・・この前、ちかげの家に行って、寝台を直すつもりが余計に壊したじゃないか・・・・・」

「うるせえぞライ! お前だってこの前、作ってくれって頼まれていた箒にまた余計なカラクリを付けただろ!!」

「失礼だな! ボクの作った全自動カラクリ箒は『外』の世界にある掃除機というカラクリより優れた傑作なんだぞ! 姉ぇちゃんが作ってるガラクタよりはいいね!」

「何だと!」

「何を!」

りんと言う少女とその弟のライと言う少年が姉弟喧嘩を始めてしまった。その姉弟喧嘩を見ていた和樹は思わず苦笑いを浮かべた。

「りんちゃんとライくん・・・相変わらずだね・・・・・」

「全くだ、毎回、毎回よく飽きねえもんだな・・・・・ところで和樹・・・何用でここに来た?」

「あっ、ちょっと・・・荷車を借りに来たんです。気絶している風椿先輩を乗せてあげるために・・・」

「そう言う事か、でもなんで、こっちのお嬢さんがそっちの気絶してる姉ちゃんをおぶっているんだ?」

「いやあ・・・・・色々と、理由があって・・・・・」

「そうか・・・ならいいぜ! ちょうどゲキとりんとライが荷車を作ってたから、さっき出来上がったばっかりだ。どれを貸して欲しいんだ?」

「もちろんゲキさんが作ったので」

「やっぱりな、いいぜ・・・ゲキ! お前の作った荷車を持って来い」

「あいよ」

「ちょっと待て! 父さん! やっぱりってどういう意味だい!?」

「そうだ! 姉ぇちゃんはともかく、どうしてボクまで!」

「ライ!? あたしがともかくってどういう意味だ! 言っとくが今回あたしが作った荷車は歪みも無く見た目も完璧なんだぞ!なのに、どうしてお前にともかくって言われなきゃなんねえんだ!」

「その完璧に作った荷車なんだが・・・何だ、これは・・・・・」

ゲキが自分の作った荷車と一緒にりんとライが作った荷車も持ってきた。りんの作った荷車は彼女の言った通り、歪みもなく見た目も完璧だが、唯一の欠点というとゲキの作った荷車と比べて、余りにもデカすぎることだ。

「りん・・・何なんだ、この大きさは・・・これじゃあ動かすのに四、五人ぐらい人手が要るぞ・・・・・」

「そっ、それは・・・・・その・・・そう! 大は小を兼ねるってよく言うじゃないか・・・アハハハ」

ゲキに指摘されたりんは思わず苦笑いを浮かべ、その場を茶化そうとした。

「ほら、やっぱり・・・」

「ライ・・・お前も人の事、言えんぞ・・・・・」

ライの作った荷車は、ゲキの作った荷車と同じ大きさだが、その荷車にはゼンマイを巻くと動く動力機関が搭載され、ハンドルと運転席も設けられ、、車輪が三個付けられていて、荷車というよりオート三輪だった。彼に作った荷車(?)の欠点は、動力機関と運転席を取り付けた為、荷物を置くスペースがなく、荷車としては全く使えないのであった。

「ライ・・・オート三輪なんて作ってどうするんだ? 余計なカラクリなんて付けず、ちゃんとした普通の荷車を作れないのか・・・・・?」

「ひでぇな! 僕の作った荷車(?)に搭載されてる動力機関はゼンマイを回しただけで三十馬力のパワーを生み出す優れものなんだぞ!」

「その優れものの動力機関を荷車に付けてどうするんだ? 荷物を置く場所が無きゃ、荷車としては使えないだろう・・・・・」

りんとライの作った荷車を見て、芦高は思わず頭を抱えた。

「りん・・・ライ・・・またこんな物作って・・・これじゃあ二人とも当分見習いのままだな・・・・・」

「ええー!?」

「そんなー!?」

「ちょっと待って下さい、芦高さん」

「なんだ?」

「二人が作った荷車・・・もしかして、うまく組み合わせれば使えるかもしれませんよ?」

「おっ! 和樹のダンナ! なんかいい考えでもあるのか?」

その後、りんとライの作った二台の台車は、和樹の考えを元に、朱堂家の人達によって作り直された。


「・・・・・んっ・・・・・?」

「あっ、玖里子さん! 目が覚めたんですね・・・・・」

「あれ? 夕菜? んっ!? 何、この車?」

ようやく意識を取り戻した玖里子が見た車らしきものとは、和樹が運転しているオート三輪みたいな乗り物が、夕菜達が乗っている大きな荷車と接続していて、トラックのように牽引して走っていたのだ。

「それにしても、すごいな、ライくん・・・ゼンマイを巻くだけでこんな大きい荷車を引っぱって行けるなんて、さすがだよ・・・・・」

「ちょっと夕菜! この車みたいな乗り物・・・一体何なの?」

「あっ、・・・はい・・・実は・・・・・」

夕菜がこれまでの経緯と朱堂家の人達の事、そして自分達が乗ってるカラクリ荷車について話した。

「ふ〜ん・・・こんな事が・・・・・」

「はい。和樹さんのおかげであのお二人が作った荷車が無駄にならずに済みました」

「しかし、退魔武具からこんな物なんて作れるなんて、さすが司貴一族! 見事ね・・・・・でもなんで凛・・・あんなに落ち込んでるの? 何かあったの?」

凛は体育座りの姿勢になって、周りにはものすごく暗いマイナスオーラを発生させ、口からは小さな声で独り言をブツブツと喋っていた。

「・・・・・同じ名前のりんなのに料理が上手・・・同じ名前のりんなのに料理が上手・・・同じ名前の・・・・・」

「ねえ、夕菜・・・これどういう事?」

「はい・・・それは・・・・・」


何で凛が落ち込んでいるのかというと・さっき、和樹のアイディアでりんとライが作った荷車を組み合わせて作り直し、その作業が終わった後、りんが賄いにとオニギリを十個以上作って、持って来たのだ。その場を離れたほんの三分間で。

「おっ! ちょうど、小腹が空いてきたんだ・・・」

「ナイスタイミング!」

「まあ・・・付き合い長いからな!」

りんはそう言いながら、照れ臭そうな表情になった。

「しかしこれだけの数、よく作ってこれたな・・・」

「まあ、りんは本職は不器用なのに、料理の腕は司貴の里の中でも一番なんだよな・・・本当笑える話」

「アハハハハ」

「ひでぇよ兄ぃちゃん!」

兄達に笑いのネタにされ、りんはムキになる。

「・・・・・今・・・なんて言った・・・・・?」

「えっ? 笑える話だけど・・・・・」

「・・・・・いや・・・・・それより前だ・・・・・」

「ああ、りんの料理の腕は司貴の里の中では一番だけど・・・それがどうかした?」

実は凛の料理の腕は絶望的と言えるほど悪かった。前に和樹のことを調べているうち、彼の特技は料理だと知り、その事について、多少許せなくなり、和樹を切り捨てようとした時も少し八つ当たりも混じっていたのだ。

「・・・同じ名前のりんなのに・・・料理が・・・上手なのか・・・・・?」

「そうなんだよ・・・大工の腕もこのくらいうまければ、苦労はしないのに・・・・・」

「いるんだよな・・・・・仕事は下手で、料理は上手い奴が・・・りんはまさにそれだな・・・・・」

「うるせぇぞ! テツ兄ぃ! ギン兄ぃ!」

「ああでも、その逆もあるぞ・・・仕事は上手くて、料理が下手な奴も・・・・・」

グサッ!!

凛の心に、五男のギンが言った言葉が突き刺さった。彼の言う通り、凛はまさにそのタイプだった。

「ん? どうした? あたいと同じ名前の凛・・・・・?」

「凛さん?」

「同じ名前のりんなのに料理が上手・・・同じ名前の・・・・・」


「・・・という訳だったんです」

「なるほど・・・・・凛と同じ名前の子がいて、その子が料理上手で、それがショックでああなっちゃったって訳ね・・・・・」

「はい・・・・・」

「あの・・・神城さん・・・余り気にしないほうがいいよ・・・ほら、昔からよく言うでしょ、天は二物を与えず≠チて・・・・・」

グサッ!!

和樹は凛に励ますつもりで言った言葉がまた彼女の心に突き刺さって、追い討ちを掛けてしまい、更に落ち込ませてしまった。

「・・・・・どうせなら・・・剣の才能じゃなく・・・料理の才能がよかった・・・・・」

「ちょっと和樹さん!」

「あんたね! 止めを刺してどうするのよ!」

「ごっ、ごめん・・・・・んっ?」

和樹が運転しているカラクリ車が、じょじょにスピードを落とし、動きが遅くなって止まってしまった。

「和樹さん・・・どうしたんですか?」

「どうやら、ゼンマイが切れたみたいだ」

和樹はそう言いながら、カラクリ車から降り、動力部に付いているゼンマイのネジを巻いた。

和樹がカラクリ車のネジを巻いていたその時、広くて青い空の上に、二羽の巨大な鳥が飛んでいて、その鳥の上に人が乗っていた。

「今日も司貴の里の空もいい眺めだ・・・・・」

「ちょっとお父さま」

巨大な鷲に乗っている男が空の眺めていた時、巨大な隼の乗ってる眼鏡をかけた物静かそうな少女に声を掛けられた。

「どうした、ちかげ?」

「あれを見てですの・・・」

「んっ! あれは・・・」

ちかげという少女が空から地上を見て何かを見つけ、それに続いて彼女の父親も地上を見て、何かを見つけた。その見つけた何かとは、カラクリ車に乗っている和樹達だった。

「あれは和樹ではないか? 『外』の世界の者もいるな・・・」

「そうですの」

「ちかげ。せっかくだから会っておこう・・・彼が帰ってくるのも久しぶりだからな・・・・・」

「はいですの」

「武鷲! 和樹の近くまで降ろしてくれ」

「青隼! こっちもですの」

武鷲というちかげの父親が乗っている巨大な鷲と、青隼というちかげが乗っている巨大な隼が地上にいる和樹達のもとへ向かい降りていった。

「ん?」

「どうしたんですか、玖里子さん?」

「ねえ、あれ・・・何だか鳥がこっちへ向かってくるわ・・・」

「鳥?」

「あれは・・・衛吾さんとちかげちゃんのようだ・・・」

和樹達は鳥に乗っている二人がこっちに向かってくる二人に気付き、そしてその二人が乗っている鳥も和樹達のいる所までは降下し、二羽の巨大な鳥、武鷲と青隼からちかげとその父・衛吾が降りてきた

「久しぶりだな・・・和樹」

「お久しぶりですの」

「衛吾さん、ちかげちゃんお久しぶりです」

「和樹さん・・・この人達は・・・・・?」

「初めまして。私の名は絵摩衛吾と申します。和樹の父君・烈火の古い友人です。こちらにいるのは娘のちかげです」

「初めましてですの」

二人は礼儀正しく夕菜達に挨拶をし、それに続いて夕菜達も挨拶をした。

「こちらこそ初めまして。宮間夕菜です」

「風椿玖里子よ。こちらこそ初めまして」

「そしてあそこにいるのは神城凛さんです」

「・・・・・どうせなら・・・剣の才能じゃなく・・・料理の才能がよかった・・・どうせなら・・・・・」

凛はまだ立ち直れず、落ち込んだままだった。

「和樹・・・なんであの子、落ち込んでいるんだ?」

「それは・・・・・」

「料理の上手い同じ名前のりんちゃんに会って、それがショックでああなってしまったんですの?」


「えっ!?」

「どうしてわかったの!?」

「簡単な推理ですの・・・和樹さん達はきっとりんちゃんの家に寄っていたのですね、このカラクリ車が証拠ですの・・・それでりんちゃんに会って、料理が上手だと知り、ああなってしまったんですね・・・」

ちかげの名推理により、それを聞いた夕菜と玖里子は思わず感心した。

「すごい・・・」

「名推理ね・・・」

「さすがだ、ちかげ・・・見事な洞察力だ」

「お父さまのような立派な天翔狩人≠ノなるためにはこのくらい当然ですの・・・」

「天翔狩人・・・!?」

「司貴の中で最も優れた風術師に与えられる称号のことだよ」

天翔狩人とは、風を操る風術だけでなく、弓や銃といった射撃、二本の刀を扱う二刀流、鳥と共に戦う鳥使い、そして優れた知識と観察力が揃ったときに与えられる風術師の称号である。ただし、一つでも欠けてればその称号は与えることが出来ず、そのため、長い司貴の歴史の中で天翔狩人を名乗れた風術師はほんの少数だけであった。

「私は厳しい修行の末、今は亡き大兄上に続いてこの称号を与えられました。そして今は娘が私の跡を継ぐため修行中です・・・」

「そうなんですの」

「なるほど・・・そのために優れた知識も必要なわけね・・・」

「ところで和樹・・・なんで『外』の世界の者を連れて戻ってきたのだ?」

「それは・・・・・」

和樹は衛吾とちかげにこれまでの経緯を話した。

「・・・そうか・・・仁宇が・・・でも何故・・・?」

「わかりません・・・もしかして・・・司貴全体に係わる重大な事と何か関係があるんじゃ・・・?」

「何ですか? その重大な事って?」

「えっ、それは・・・」

「和樹・・・この事は家に戻ってから、説明したほういいのではないか・・・」

「うん・・・そうですね・・・わかりました・・・それじゃあ衛吾さん、ちかげちゃん、先を急ぎますので失礼します」

「ああ・・・こっちも足止めして悪かったな・・・後で君の家に土産を持ってくるから・・・」

「わかりました楽しみにしています」

こうして、衛吾とちかげと別れた和樹達はカラクリ車に乗って、実家に向かった。


後書き

イグレッグです。司貴聖伝史の第六話が出来ました。わかった人もいるかもしれませんが、この小説に出てくるオリジナルキャラの竜鳴院仁宇(りゅうめいいんじんう)と朱堂芦高(しゅどうあしたか)と絵摩衛吾(えまえいご)は下の一覧の通り。

龍鳴院仁宇(りゅうめいいんじんう)=龍神導師仁宇

朱堂芦高(しゅどうあしたか)=剛熱機械師駄舞留精太

絵摩衛吾(えまえいご)=二代目天翔狩人摩亜屈(衛宇吾)

今は亡き衛吾の兄・絵摩伸矢(えましんや)=初代天翔狩人摩亜屈

武者烈伝に出てくる光の七人衆の擬人化です。他のキャラも共演させますので、感想があったらお願いします。次も更新できるよう頑張ります。

レスです

御汐さんへ

ご期待に答えて更新しました。次も他のキャラを出せるようにします

タカちゃんへ

五神と属性の設定は作中のキャラのつじつまを合わせるためにこのようにしました。

壱拾里菅理さんへ

司貴一族は基本的には東洋五行ですが、この小説では西洋魔術師のネギ君も出演するため西洋四大属性の設定もあります。

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