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「司貴聖伝史(まぶらほ+ネタばれにつき伏せ+オリジナル)」

イグレッグ (2005-11-05 20:45)
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司貴聖伝史


第五話 司貴一族の里(前編)


式森和樹は夕菜達と共に龍鳴院仁宇の式神・飛龍に乗り、司貴一族の里に向かっていた。

「和樹さん。すいません。ちょっと、聞いていいですか?」

夕菜が和樹に話し掛けてきた。

「宮間さん。何か?」

「はい・・・・・私達・・・・・今・・・・・和樹さんの実家に・・・・・向かっているんですよねえ・・・・・」

「それが・・・・・」

「・・・・・先、仁宇さんが司貴一族の里へって言ってましたけど・・・・・そこに和樹さんの家があるんですか?」

「司貴一族って!? もしかして・・・・・あの不老長寿の肉体と魔法回数無制限の魔力を持つ伝説の民じゃ・・・・・!?」

「貴様!? あの司貴一族だというのか!?」

夕菜に続いて玖里子と凛が真剣な表情で言い寄ってきた。それに対して和樹は笑い返してきた。

「アハハハ・・・・・もしかして君達・・・・・何か勘違いしていない・・・・・?」

「えっ?」

「司貴一族の里はね本当は権力と争いを嫌う魔術師とシャーマン達が造った隠れ里なんだ・・・・」

「隠れ里?」

司貴一族の里とは強大な魔力を持つ魔術師とシャーマン達が権力や争いを嫌い、人が近づけない富士の樹海の奥深くに造った隠れ里なのだ。そして日本に異国の者が多く来日して来た南蛮渡来や文明開化の時にその噂を聞いた魔術師とシャーマン、錬金術師など、この里に移り住み、異国の血も混じったのだ。そしていつからか強大な魔力を持った為、不老長寿の肉体と魔法回数無制限の魔力を持つ伝説の民と言うことになってしまったのだ。

「つまり・・・・司貴一族が不老長寿とか魔力が無限だと言うのは全くのデマなんだよ」

「モグモグ・・・・・そう言う事だ・・・・・」

なぜか仁宇は一人だけおやつを食べていた。

「仁宇さん・・・・・何食べているんですか?」

「豆大福だ。私の妻の手作りだ。食べるか?」

仁宇は食べながら和樹達に豆大福を差し出した。

和樹はその豆大福を手に取り、それに続いて夕菜達も豆大福を取って食べた。

「いただきます」

「むっ!? これは・・・・・」

「美味しいです・・・・・」

「当然だ! 私の愛する妻が作った豆大福だからな!」

仁宇は『愛する』と言う文字を強調しながら言った。

「妻? と言うことは仁宇さん。結婚しているんですか?」

「そうだ。娘も二人いてな。それが妻に似て可愛いのだ」

夕菜の質問に仁宇はにやけた表情で答えた。その表情を見た玖里子と凛は少し呆れ顔になった。

「この男・・・・・凄腕の陰陽師で愛妻家であると同時に・・・・・」

「物凄い・・・・・親バカです・・・・・」

「おっ!? もうすぐ『入口』に着くぞ!」

「入口?」

『入口』と呼ばれた場所は富士の樹海の中心辺りだった。その場所に飛龍を降ろし、仁宇と和樹達も飛龍から降りて、仁宇は懐から式神の霊符を出し、飛龍を霊符にしまった。
行き成り樹海のど真ん中に降ろされた玖里子はぼやき始めた。

「ちょっと!? いきなり樹海の真中に降ろすなんて、何処に『入口』があるのよ!?」

「そうだ!! こんな所に降ろすなんて・・・・・貴様ら!! 何を考えている!?」

それに続いて凛も怒鳴り始めた。

「まあ、まあ・・・・二人とも落ち着いて。今『入口』を開けるから・・・・・」

和樹が玖里子と凛をなだめながら言うと、ポケットからメダルみたいな物を取り出し。そのメダルには五芳星が彫られていて、その星の中心に太極紋が書かれていた。
そのメダルを上にかざすと、突然、辺り一面が光りだし、そこには開かれた扉が現れた。

「和樹さん? これは・・・・・?」

「司貴の里への『入口』だよ。普段は強力な結界で隠してあるんだ」

「結界だと!?」

「うん。このメダルはその『入口』を開く為の通行証みたいなものだから・・・・・それより早く入らないと『入口』が閉じるよ」

和樹がそう説明した後、仁宇と和樹は『入口』の扉に入り、それに続いて夕菜達もその扉に入った。そして全員が入った直後、扉が閉まり、また光りだし『入口』の扉が消えた。

『入口』入った和樹達は司貴の里に続くトンネルの中を歩いていた。

「和樹さん・・・・・この道・・・・・何処まで続くんですか?」

「もう・・・・・随分・・・・・歩いたわよ・・・・・」

「一体! 何時になったらその里に着くと言うのだ!?」

「ああ、後もう少しだから。そろそろ『番犬』の近くを通るから・・・・・」

「番犬・・・・・?」

「ダレダ!?」

突然、巨大な声が聞こえてきた。それを聞いた夕菜達はその辺をキョロキョロ見回すと、そこには身長十メートル以上ある巨大な犬がいたのだ。
その巨大な犬はなんと四つ首でその頭は金色の頭と銀色の頭、鉄のように黒い頭と鋼のような灰色の頭がついていた。

「久しぶりだね。金(こがね)、銀(しろがね)、鉄(くろがね)、鋼(はがね)・・・・・」

「コレハ、コレハ和樹殿デハナイカ・・・・・」

「司貴ノ里二戻ッテ来タニデスネ・・・・・」

「オ帰リナサイ。和樹殿、仁宇殿・・・・・」

「オヤ? コノ娘サンハ客人カ?」

金、銀、鉄、鋼と呼ばれる四つ首の番犬は一匹ずつ(?)挨拶をしてきた。和樹と仁宇もその巨大な番犬と気軽に挨拶を交わしていた。それを見ていた夕菜達はただ唖然とするしかなかった。

「あのう・・・・・和樹さん・・・・・この番犬さんは・・・・・?」

「何あれ!? ケルベロスの変異種!?」

「しかも言葉まで喋っている!?」

夕菜と玖里子と凛の三人はそれぞれ違った反応を見せた。まさかこんなSクラス召還獣並みの迫力を持つ番犬が出てくるとは思わなかったからだ。

「安心して。金、銀、鉄、鋼は司貴の入口を守る番犬だから、普段は一族以外の人間が入ってきたら敵と見なすけど、一族の僕達が一緒だから客人として歓迎してくれるよ」

「そう・・・・・何ですか?」

「ソノトウリダ。ヨウコソ司貴一族ノ里ヘカワイイ娘サン・・・・・」

「モウスグ出口デス・・・・・」

「ゴユックリドウゾ・・・・・」

「久シブリダナ。『外』ノ世界ノ客人ガ来ルノハ・・・・・」

金、銀、鉄、鋼は夕菜達に挨拶をし、それに続いて夕菜達も挨拶をした。

「初めまして・・・・・宮間夕菜です・・・・・」

「風椿・・・・・玖里子よ・・・・・」

「神城凛だ・・・・・」

「ナカナカ良イ娘サン達デスネ。所デ和樹殿・・・・・何用デ戻ッテ来タノデスカ?」

「うん。お祖父さんと姉さんから大至急、家に戻って来いと言われたので帰ってきたんだ」

「ソウデスカ・・・・・デハココヲ通ウテ下サイ。モウスグ司貴ノ里ガ見エテキマス」

「ありがとう。それじゃあ行こう」

そう言うと和樹達は番犬が居る場所を後にし、そしてしばらく歩くと出口が見えてきた。

「もうすぐ外に出るよ」

和樹がそう言いながら出口から出てそれに続いて夕菜達も出口から出てきた。

「ようこそ・・・・・司貴一族の里ヘ・・・・・」

そこは緑の山々と青い海に囲まれた里で、自然が豊かで賑やかそうな村や街並みがあった。

「ここが・・・・・司貴一族の隠れ里・・・・・」

「隠れ里と言うより・・・・・むしろ『国』ね・・・・・」

「まさか・・・・・富士の樹海の奥にこんな所があったなんて・・・・・」

「この里の周りには強力な結界が張ってあるから外から見えないようになってるんだ」

「なんて綺麗な場所なんでしょう」

「ああ、こんな綺麗な里に住んでみたいな・・・・・」

「まあ・・・・・中には任務と称して『外』の世界から帰ってこない者もいるけどな・・・・・」

夕菜と凛が里の綺麗な景色を見て感動しているところをなぜか仁宇がミズを注すようなことを言う。

「任務・・・・・!? 何!? それ?」

「・・・・・ああ!? 何でも無い! それじゃあ行くぞ!」

変な事を聞いた玖里子が仁宇に突然、質問して来たが、彼がとっさにはぐらかし、里に向かった。


和樹達は実家に向かいながら里の村の道を歩いていた。
初めて里に来た夕菜と玖里子と凛は不思議そうに村の周りをキョロキョロ見ていた。
その村にはなぜか異様な光景が見えていたのだ。
村の畑から獲れる野菜が異常に大きかったり、魚が不気味でグロテスクな容姿をしていた。

「和樹さん・・・・・何か・・・・・この里・・・・・少し変じゃ・・・・・ありませんか?」

「まあ・・・・・『外』の世界から来た君達から見ればそうかも知れないけど・・・・・この里に生まれた僕達から見れば見慣れている光景だけど・・・・・」

「ねえ!? 夕菜! 凛! あれを見て!!」

「はい?」

「どうしたんですか? 玖里子さん」

「あれって・・・・・もしかして・・・・・ユニコーンじゃない!?」

玖里子が物凄く驚くようなものを見つけた。
それは何とスペインの継承戦争に巻き込まれて絶滅したはずの一角獣ユニコーンだった。里の野原に放たれて、まるで北海道の牧場にいる馬のようにのびのびしていた。

「ウソ!?」

「そんな!? 信じられん!?」

「このユニコーンは昔、継承戦争から逃げて来た魔術師の一家がこの里に来た時、一緒に連れて来たんだ。最初は本の数十頭しかいなかったけど、今じゃ数百頭に増えているんだ」

昔、争いと弾圧から逃れる為、司貴の里に流れてきた魔術師と共に今じゃ絶滅しているか、数が激減しているユニコーンをはじめ多くの幻獣がこの司貴の里に移り住んで来たのだ。
この里の山や草原にすっかり馴染み、のびのびと暮らしている。

「まさか・・・・・魔術師だけでなく・・・・・幻獣もこの里に移り住んでいたなんて・・・・・」

「なんだか・・・・・ますます欲しくなってきたわね」

「玖里子さん!! 何を考えているんですか!!」

「決まっているでしょう! 和樹の遺伝子よ! それにこんなものあるなんて、ますます欲しくなったわ!」

「そんな事!! 妻である私が許しません!!」

「その前にこの男は私が斬り捨てる!!」

玖里子が不用意な発言で夕菜と凛を怒らせてしまった。今でも彩雲寮の門で始まった三つ巴が再び起こってしまいそうな状態になってしまった。
そして三つ巴に入ろうとしたその瞬間、畑と田んぼで農業をしていた里の民達が何時の間にか夕菜達の背後を捕らえていた。そして喉元には小刀が向けられていた。

「えっ!?」

「何!? 何なの!?」

「早い!? 何時の間に・・・・・!?」

特にこの事に驚いたのは凛だった。刀を抜く間もなく、喉元に刃を向けられていたからだ。

「みんな!! この人達は僕の大事な客人だから手を出さないで!!」

和樹が真顔で里の民達にそう言うと、小刀をしまい。素早く畑と田んぼに戻り、再び農作業を始めた。まるで何事も無かったかのように。

「もう・・・・・宮間さん!! 風椿先輩!! 神城さん!! こんな下らない事で喧嘩しないで下さい!! いいですね!!」

「そんな!? 下らない事って言わないで下さい!! 和樹さん!!」

「そうよ!! あたしにとっては重要な事よ!!」

「私の人生が狂ってしまうかもしれない一大事なんだぞ!!」

和樹が三人に注意するが逆に彼女達に反論され、たじろいでしまう。

「わっ、わかったよ・・・・・家の用事が終わったら・・・・・ちゃんと聞いてあげるから・・・・・」

「ハハハハハッ、さすがのお主もこの娘達の前では形無しだな」

そんなたじろぐ和樹を見て、隣にいた仁宇がからかうように笑った。

「それにしても・・・・・この里の人達・・・・・かなり鍛えられている・・・・・私に刀を抜かせるヒマも無く・・・・・後ろを捕らえるなんて・・・・・」

「それはそうだ。 司貴の里の者達は皆、退魔士としての訓練を受けている。『外』の世界の退魔士など比べものにならん・・・・・」

「退魔士!? それどう言う事!?」

「仁宇さん! もうっ・・・・・しかたがない・・・・・君達『司貴星連』って知ってる?」

「えっ!? 司貴星連って・・・・・まさか・・・・・!?」

「あの・・・・・最強と言われている・・・・・謎の退魔士集団!?」

「玖里子さん、凛さん・・・・・何ですかそれ?」

「あっ!? 夕菜は帰国子女だから・・・・・知らないのも当然ね・・・・・」

司貴星連とは強大な魔力を持て余していた司貴一族の者がその強大な力で苦しんで困っている人達の為に役立てようと組織された。設立されたのは約二千年以上前。悪霊や妖怪、それを利用しょうとする邪まな人間。そして歴史の裏で暗躍していた邪悪なる存在と戦い、苦しんでいる人達を護っていた。
今でも日本や世界各地で司貴星連は日夜活躍している。

「まさか・・・・・!? 貴様も退魔士だというのか!?」

「うん・・・・・まあ・・・・・今は休業中だけどね・・・・・」

「えっ? どうしてですか?」

「・・・・・それは・・・・・」

「おい和樹!」

突然、仁宇が夕菜達に問い詰められている和樹に声をかけた。

「何ですか? 仁宇さん・・・・・」

「あれを見ろ・・・・・」

仁宇が川の方へ指を指した。和樹達がその川の上を見ると、川の水の上には中学生ぐらいの少年が立っていた。

「何!? あの子!?」

「水の上を立っている!? 魔法か?」

「行人くん・・・・・」

行人と呼ばれる少年は両目を閉じ、精神を集中させていた
そして彼の周りには式神の霊符が十枚以上あった。

「あれって!? 式神の霊符よね。しかもかなりレベルの高い・・・・・」

「何が・・・・・始まるんですか?」

「まあ・・・・・見てみな。今から凄いものが見られるぞ・・・・・」

仁宇が夕菜達にそう言うと、行人という少年の周りにあった霊符が光りだし、そこから十体以上の鬼が出現した。その鬼は彼に向かい襲い掛かって来た。

「危ない!!」

凛が叫ぶと、行人は両目を開き、そして彼の両手に水が集まり、その集まった水が諸刃の曲刀に変わった。

「水が!? 武器になりました!?」

行人は襲ってきた鬼たちの攻撃をかわし、水でできた武器で反撃した。彼が最初の攻撃で二体倒し、その倒された鬼は霊符に戻った。
また鬼の攻撃をかわし、彼も斬りかかったが鬼はなんなくかわしたかのように思えたが、何時の間にか斬られ、霊符に戻った。

「どうなっているんだ!? さっきの攻撃はかわされたはずなのに・・・・・!?」

「なんだかまるで・・・・・水の上を踊っているみたいです・・・・・?」

「行人くんの型『舞曲の太刀』だよ・・・・・」

和樹がそれを見ている夕菜達に説明し始めた。

「行人くんは水術師で『五方星』の一人なんだ・・・・・」

「五方星・・・・・?」

「司貴の長を護る親衛隊の事だよ・・・・・」

五方星とは五行の力を司る五神の加護を受けた水術師、炎術師、地術師、木術師、錬金術師の五つの家系から選ばれた最高位の退魔士である。
水を司る青龍の加護を受けた水術師の家系『東方院』
火を司る朱雀の加護を受けた炎術師の家系『南条寺』
木を司る白虎の加護を受けた木術師の家系『西(シー)』
土を司る玄武の加護を受けた地術師の家系『北辰堂』
金を司る黄龍の加護を受けた錬金術師の家系『中乃宮』
その五つの名門から本家と分家を含め、その中から五人の最高の術者が選ばれ、司貴の長を護る親衛隊『五方星』になれるのだ。

「彼が水術師である事はわかった・・・・・でも、この舞ってるような戦い方とどう関係しているんだ・・・・・?」

「彼の家は水術師の家系であると同時に舞師の家系なんだ・・・・・」

行人の家、『東方院』は水術師の名門であると同時に舞師の家柄でもある。彼の武の型『舞曲の太刀』は剣術に水術と舞を組み合わせて生み出された武術の型で、相手の動きをリズムに取るように読み、相手の攻撃を回避するだけでなく、相手の動きを先読みし、先手を取ることもできるのだ。

「たああああっーーー!!」

行人の掛け声と同時に水面から水の龍が現れ、残った鬼達を一瞬で薙ぎ払う。フィニッシュが決まり、そして美しい水の舞で終了のポーズを決めた。

「ふう・・・・・、んっ?」

行人が水の上で立ったまま、呼吸を整えてたその時、拍手して近づいてきた和樹達に気付いた。

「見事な水の舞だったよ。行人くん」

「和樹さん!? 里に帰って来てたんですか・・・・・?」

「うん。『外』の世界のお客さんを連れてね・・・・・」

「お客さん?」

「初めまして。宮間夕菜です」

夕菜が行人に挨拶すると彼は少し顔を赤く染めた。

(なんて・・・・・綺麗な人なんだろう・・・・・)

行人が心の中でそう呟くと突然、大きな強風が吹いて来た。

「きゃあっ!?」

強風で夕菜と玖里子のスカートがめくれ、下着が見えてしまい、それを目の前で見ていた行人がなんと大量の鼻血を噴き出してしまったしまった。

ブウゥゥゥゥゥッ!!

大量の鼻血を噴き出してしまったせいで行人の水術が乱れてしまい、川に落ちてしまった。川の水がなんと行人の鼻血で赤く染まってしまった。

「行人くーーーん!? 大丈夫!?」

「やれやれ・・・・・この位で集中力を乱すとは・・・・・まだまだ修行が足りんな・・・・・」


「あのう・・・・・大丈夫・・・・・ですか?」

「はい・・・・・なんとか・・・・・水術で止血しましたから・・・・・」

「行人くん・・・・・相変わらず、この手の刺激に弱いねえ・・・・・」

「全くです・・・・・五方星になったのに・・・・・情けない・・・・・」

自分のコンプレックスで少し落ち込む行人に玖里子が急に顔を近づけてきた。

「なっ、何ですか!?」

「あ〜ら〜、あんたって近くで見ると、けっこう可愛いわね〜」

「かっ、可愛いって!?」

「年下も悪くないわね〜、なんだかあの子の気持ち、少し解った気がするわ〜」

なぜか玖里子が行人に対し訳のわからない事をいってくる。


「それじゃあ・・・・・僕はこの辺で・・・・・」

分かれ道に差し掛かった所、行人は和樹達とは別の道に行こうとしていた。

「おい行人。お主の家はもう少し先の方だぞ・・・・・」

「いいんです。僕はこっちに用事がありますから」

仁宇と行人の会話を見て、和樹はクスッと笑った。

「何ですか? 急にクスッと笑って?」

「いや。行人くん・・・・・またお父さんと喧嘩したんだね?」

「なっ!?」

「だって、この先ってあの娘の家でしょ・・・・・君ってお父さんと喧嘩する度、いつもあの娘の家に行くんだから。それにさっきの水の舞、ちょっと動きに乱れがあったし・・・・・」

「ちっ、違います!! もうっ!!」

行人は顔を赤くし、プンスカと頬を膨らましながら、あの娘の家がある方向へ行ってしまった。

「和樹さん・・・・・あの娘って、誰ですか・・・・・」

「行人くんの小さい頃からの幼馴染みだよ・・・・・彼にとって・・・・・と手も大切な・・・・・」

夕菜にそう言った和樹の顔はとても優しい表情になっていた。


後書き

やっとこの小説の新しい話が更新できました。苦労した甲斐がありました。実はこの小説は『まぶらほ』と『ネギま』の他に『ながされて藍蘭島』もクロスさせています。私のオリジナル設定で『ながされて藍蘭島』の主人公である東方院行人も含め、『ながされて藍蘭島』のキャラは司貴一族の民という設定にしています。他のキャラも出てきますので次の話も更新できるようにがんばります。感想があったらお願いします。

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