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▽レス始

「幻想砕きの剣 7-2(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2005-11-23 09:26/2005-11-25 14:08)
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「毒…ですか?」


「そうじゃ。
 君の傷を分析してみたが、どう見ても毒が付着しておった」


「でも、私は全く平気でしたけど……」


 この会話は、禁書庫に潜った翌日にゼンジーとリリィが交わした会話である。
 禁書庫に潜ったリリィは、最下層に到達する前にモンスターに斬り付けられた。
 どう見ても毒の類が塗ってある剣だったのだが、リリィには特に問題は表れなかった。
 結局は最下層で守護者に気絶させられ、気がつけば地上だったが、一夜明けた今でも毒が回ったような感触は感じられない。
 医療班が解毒してくれたのかと思ったが、それも違うらしい。


「それがおかしいのじゃ。
 念の為にと傷口を拭ったタオルを分析した結果、人体に有害な液体が検出されておる。
 そのタオルを使ったのは、君の血を拭った時だけ。
 恐らく斬り付けられた剣に毒が塗ってあったのじゃろう」


「それなら、どうして私は平気なんです?
 さっきの診察でも、全く問題は無いんでしょう?」


 リリィの言うとおり、ゼンジーの健康診断では全くの正常値が出ている。
 毒の影響なぞ微塵も感じられない。
 むしろとてつもなく健康体である。


「それが解らないんじゃよ…。
 深い傷口とは言わぬが、それでも毒が刷り込まれるには充分な傷口だった。
 それがどうして………。
 何か特殊な免疫でもあるのかね?」


「ありません。
 だからそのでっかい注射器をしまってください」


 どこから取り出したのか、ゼンジーは背中に巨大な注射器を背負っていた。
 隠しているつもりらしいが、背中からはみ出す大きさだ。
 こんなモンで刺された日には、血を抜きすぎて貧血になる以前に、血管に上手く刺さらず腕に大きな穴が開いてしまう。
 リリィが今すぐ逃げ出そうとしているのを見て、ゼンジーは残念そうに注射器をロッカーに放り込んだ。
 医療器具だというのに、ヤケにぞんざいな扱いである。


(大丈夫なの、この医務室の医療品は……)


 改めて観察してみると、所々に怪しい物体が陳列されている。
 しかもその一つ一つに、『ジョセフィーヌ』だの『ハロルド』だの『ぺペロンティーノ』だの、それぞれ違った名札が付けられていた。
 気のせいか、その全てが妖気を放っているような……。

 一際恐ろしい気配を放っているのは、ベッドの下にあるナニカである。
 リリィはゼンジー先生にまつわる怪談を思い出す。


(………まさか…何人もの血を吸ったと言われる伝説のチェーンソー、『セリーヌ』がこの下に…)


 そう思うと、リリィは急に恐ろしくなってきた。
 丁度ゼンジーの話も一段落した事だし、この場をさっさと離脱する事にする。


「よ、用事はそれだけですか!?
 それでは私は失礼します!」


「お大事にの〜。
 おかしいと思ったら、すぐに保健室に来るんじゃぞ〜」


(絶対に行かない!)


 リリィは廊下を高速で歩きながら、心中絶叫していた。


 現在。
 場所は図書館、時は昼休憩。
 リリィはルビナスと話し込んでいる。
 記憶を失っているとはいえ、彼女の頭脳はかつて救世主候補として“破滅”と戦った時と同じ知識を持っている。
 系統は違えど、その知識はリリィの魔法の構成にも大いに役立つものだった。

 ルビナスの方も、そろそろホムンクルスの生成が最終段階に入り、充分な反応を得られるまで時間をかけなければならないらしい。
 それまで働き詰めだった鬱憤を晴らすかのように、ルビナスはリリィの頼みに付き合っていた。


「だからね、ここはこういう構成にするでしょ?
 するとこっちに回路が出来て…」


「あ、本当だ…やっぱり伊達に救世主候補やってないわね、ルビナス」


「ほほほほ、まだ記憶が全然戻ってないんだけどね〜♪。
 それより、ルビナスじゃなくて……」


「はいはい、解ったわよ先生」


「……先生…………あぁ………何度聞いてもいい響きだわぁ…」


 リリィに『先生』と呼ばれ、頬を染めて身を捩るルビナス。
 どうやら教師役に陶酔しているらしいが、それでもこの陶酔の仕方はどうかと思う。
 しかし、これがリリィに錬金術の技術を教える交換条件だったので仕方ない。
 本人の談によると、『博士でもよかったんだけどね』との事。
 しかし彼女がフローリア学園マッドサイエンティスト筆頭なのは周知の事実なので、それでは面白みが無い。
 事実を言われているのと大差ないからだ。


「と、ところで…やっぱり記憶は全く戻らないのね?」


「ええ。
 大河君とかが色々と調べ上げては教えてくれるんだけどね…。
 やっぱり実感が無くて」


「大河が?」


 あの大河が、どうやって調べ上げているのだろうか。
 とてもではないが、図書館にあるような膨大な資料の中からデータを探し出せるような根気のある性格はしていないと思う。
 実際には赤白の精霊コンビから聞いた内容の幾つかを話しているだけなのだが、リリィにはそんな事は想像も出来ない。


「でも、『あの』大河よ?
 信じるなとは言わないけど、最低でも2割くらいはウソやデタラメが混じってるんじゃないの?」


「2割じゃなくて3割よ。
 しかもかなり現実味のあるデタラメを混ぜてくるから、中々気を抜けないの。
 この適度な緊張感が堪らないわ」


 何をやっているのだ、大河とルビナスは。
 変人ぶりにちょっと頭を抑えながら、リリィは溜息をついた。
 今の救世主候補生といい彼女といい、救世主候補になる条件は『変人である事』も含まれるのだろうか?


「そうそう、記憶と言えば、ミュリエル学園長もよく聞いてくるわね」


「お義母様が?」


「ええ。
 でも、時々ひっかかる点があるのよね…。
 何か知ってるみたいな言い方する事もあるし」


 やはり義母とルビナスの間に、何か個人的な関係があるのかとリリィは考える。
 が、それはやはりプライベートであり、踏み込むべきではないと考えた。


「それはともかく、ホムンクルスの体は何時ごろ出来るの?」


「そうねー、あと一週間もしない内に完成すると思うわよ。
 ようやくナナシちゃんも外に出して上げられるわ。
 退屈だって偶に騒いでるのよ」


「今のナナシは脳味噌だけなんでしょ?
 どうやって騒ぐっていうのよ」


 どうやってかと言うと、時々ナナシの脳を収めた容器がガタガタ揺れるのだ。
 夜中に急に騒ぎ出す事もあり、ポルターガイストみたいでちょっと怖い。
 ちなみに、ナナシが起きている時に大河がやって来た時など、なんと容器が大河に向かって跳躍してみせた。
 足もないのに、見上げた根性である。
 これが愛の力というものか。

 落下して容器が砕け散ったら、ナナシの脳味噌もタダでは済まない。
 血相を変えて大河が受け止め、その時は事なきを得た。
 しかし何度も同じような事があっては堪らない。
 それからと言うもの、実験室に近寄らなくなった大河だった。


「私の体は、もう8割方完成してるんだけど…。
 最終調整はナナシちゃんの体が出来てからになるわ。
 ちょっとした趣向を思いついたから、2人の体を揃えておく事にしたの」


「趣向?
 …地下で言ってた、怪しげな機能を本当に付けるつもりじゃないでしょうね?」


「……それはもうとっくに付けてるけど?」


「付けてんの!?」


 地下でルビナスが言っていたのは、空を飛び水中を爆進し口から火を吐いて変身するホムンクルス。
 ルビナスの事だから、それだけでは済むまい。
 さらにルビナスは、『ちょっとした趣向を思いついた』と言っている。
 この上更に増えるとしたら、真っ先に合体機能が上げられるだろう。


(ヘタすると、ナナシの体にも同じ機能を付けかねないわね…。
 あのボケボケ娘とマッドサイエンティストコンビ…考えるのも恐ろしいわ。
 ナナシの事だから、ルビナスに頼まれたら二つ返事で実験台にだってなりそうよ)


 顔中の穴から火を吐き、水中を『キャプテンネモ水中ライブ!』とか叫びながら自在に泳ぎ回り、鉄腕唖戸夢のように足からジェット噴射を出して空を飛び、敵地の真っ只中にも関わらずセーラー○ーン顔負けの長ったらしい演出付き変身シーンを披露するナナシとルビナス。

 想像してリリィはゲンナリした。
 が、ルビナスはそんなリリィは眼中に無く楽しそうなままだ。


「待っててね、ダーリン…。
 ナナシちゃんと2人で愛のルパンダイブで特攻するから、逞しく抱きしめてほしいの…。
 その時のために極上の締め付けを実現したから、きっと喜んでくれるわよね…」


「………(ムカッ)。
 わ、私の飼いぬ………!?」


「……?
 飼いぬ…?」


 ルビナスが陶酔しているのを見て、原因不明の苛立ちを覚えたリリィは、衝動的にルビナスを怒鳴りつけようとする。
 が、自分が何を言おうとしているのか気がついて慌てて口を噤んだ。
 無理矢理引き戻した息がせり上がって来た空気と首元で激突し、衝撃が走る。
 気管に何かが入り込んで咽るリリィを、ルビナスは不思議そうに見た。


「か、かいぬ……そう、飼ってた犬じゃないんだから、そんなに悶えてるんじゃないの!
 そ、そろそろ休憩時間も終わりね!
 私はもう行くわ、またお願い!」


「ハイハイ。
 私もいい気分転換になったわ」


 昼休憩が終わる頃、ようやくリリィとルビナスは腰を上げた。
 リリィは午後の授業に出るべく、ルビナスは講義をすべく去って行く。
 リリィが逃げるように早足だったのは言うまでも無い。
 その後姿を、物陰から何者かの視線が見送っていた。


「……リリィお姉様…あんなにナナシちゃんだかルビナスさんだかと楽しそうに…。
 私にはネコミミシッポを触らせてくれないのに……ああ、この悲しみの余り、大河お兄様と一緒にリリィお姉様を拉致監禁してしまいそう…。
 大河お兄様に、何か対策を考えてもらおうかしら…」


 ………リリィに災厄が迫っているのかもしれない。


「それにしても……リリィお姉様は、犬は苦手だった筈ですが…?」


 言わずもがな。
 一方、図書館から逃げ出したリリィ。


「……わ、私の飼い主にちょっかい出さないでよ……?
 私いったいどうしちゃったの……!?」


「救世主クラスに集合をかけておきました。
 それぞれ出かけているので、一時間もすれば集合すると思います」


「ご苦労様」


 ある日の午後、ミュリエルは救世主クラスを学園長室に集合させた。
 まだ大河しか来ていないが、妙にその顔には、何時にない緊張感というか殺気が漂っている。
 ついでに、ミュリエルの顔を見た大河も妙な緊張感というか警戒心を滾らせていた。


「……どうかしたのですか、大河君?」


「いや…よく解らないんスけど、何やら学園長に気を許すなと本能が…」


「…色々と腹の探り合いをしている中ですから、気を許していないのはお互い様では?」


「そーゆー次元じゃなくて、もっとこう…なんつーか沽券に関わるような」


(……本当に記憶操作の術の効き目が弱かったのかしら?
 おかしいわね……疲れていたとはいえ会心の手応えだったのに)


 密かな争いを展開しつつ、大河は他の救世主候補が来るのを待っている。
 本当はギリギリまで待って行こうと考えていたのだが、まるで足が操られているかのように学園長室に向かったのである。
 その理由はミュリエルが大河にこっそり掛けておいた操り人形の術だという事は言うまでも無い。
 本当はミュリエルが合図を出した時にだけ発動するはずなのだが…。


(どうも、大河君には妙な性質があるようね…。
 暗示の類は中途半端にしか掛からないし…。
 ベリオさんやリリィも、大河に魔法が効き辛いと言っていた事があったわ。
 ひょっとして抗魔体質なのかしら?)


 確かめてみるべきだろうか、とミュリエルは考慮した。
 大河を観察すると、ミュリエルから距離を取ってはいるが、この場を離れるべきかどうか迷っているようだ。
 普段の大河ならば、適当に理由を付けてさっさと逃げているはず。
 それをしないのは、ミュリエルの暗示が少しは効いているからかもしれない。


(どれくらいの効果が出ているのか、一度は確かめなければ今後に差し支えるわ。
 でも、確かめる手段と言うと……)


 そこまで考えて、ミュリエルはチラリと横で立っているダウニーを見る。
 最も効果的な手段は、大河の暗示を実際に発動させて見る事だろう。 
 勿論、操っている大河を使ってナニをするかは決定事項だ。
 時間があるとは言い辛いが、ちょっとしたストレス解消にはなるだろう。
 …暗示を発動させて大河を操ったとて、そこでナニをする必要性はないのだが。


(……ダウニー先生、邪魔ね…。
 八つ当たりに減給にしちゃおうかしら?
 だって今度は波平カットにしてるもの。
 アフロ、カツラを経て今度は波平…。
 人をバカにしているとしか思えないわ。
 …大河君が原因だと言うのはよく解るけど)


 …ダウニーの頭は、大河にカツラごとアフロを毟り取られて以来、ずっと波平カットのままだった。
 流石に生徒達も深い理由というか哀愁を感じ、面と向かって笑う者は居なくなった。
 が、代わりに同情心に満ちた視線が常に向けられている。

 ダウニー本人も開き直ってしまったのか、もうカツラを被って誤魔化そうなどとはしていない。
 ……しかし、時々居酒屋で自棄酒をカッ喰らっている所からして、やはり完全には吹っ切れていないようだ。
 自棄酒代が同情した生徒の奢りだというのが、また悲しい。


「…それでは、私はまだ仕事があるので失礼させていただきます」


 ダウニーはミュリエルの八つ当たりを察知したのか、足早に学園長室を出て行った。
 邪魔者が居なくなったミュリエル。
 もう彼女の邪魔をする者は居ない。


「…さて、大河君」


「…何でがしょ」


 2人きりになってより警戒心が増したのか、重心が完全に撤退体勢に入っている。
 が、それではもう遅いのだ。


「ハイッ!」


 パチン


       ■■■BLACK * OUT■■■


「……およ?」


 大河はふと目を開けた。
 壁に寄りかかったまま眠ってしまったらしい。
 鼻腔を花の匂いがくすぐる……多分香水の匂いだ。

 視界の端に、人影が何人か立っている。
 赤、黒、金、緑…実にカラフルである。


「あ、お兄ちゃん起きた?」


「…未亜?」


「そんな所で寝ちゃってるなんて…疲れてるんじゃない?」


「いや、最近はそう大暴れした記憶はないんだけど…。
 昨日も熟睡したままだったし」


 大河が起きたのを察して、黒い人影…未亜の髪の色だった…が話しかけてくる。
 キョロキョロと辺りを見回すと、椅子に座ったままのミュリエル、大河に背を向けたまま振り向こうともしないリリィ、心配そうなベリオとカエデ。
 リコはまだ来ていないらしい。


「…学園長、何だかちょっと疲れてませんか?」


「いえ…単に書類に目を通し続けて、肩が凝っているだけです。
 (やっぱり暗示は中途半端に効いてたのね…。
  もうダメだと言っても全然聞かないから、止めるのに苦労した…。
  腰が抜けて立てない……)」


 …どうやらミュリエル学園長、大河に暗示をかけてストレス解消をしようとした所、逆襲にあってしまったらしい。
 それはそれで気持ちよかったミュリエルだが、いつ救世主候補生がやって来るか解らない状況では流石に安心して楽しめない。
 そのせいで一層感度が上がっていたような気がするが、ミュリエルは覚えていなかった。
 とりあえず大河の記憶だけは封じておいたが、今後はそう気軽に愉しめなくなってしまったようだ。


(……若いツバメを好きに出来る爛れた職場っていうのも、結構魅力的なのだけれど…。
 ま、いいわ。
 激しいのもこれはこれで……)


 …学園長も大河に毒されている。


(そーいえば、カエデさんにも何か呪縛がかかっていましたね。
 私の術とは系列が違うようですが……。
 解いておいたほうがいいでしょうか?
 でも今すぐというわけには……解き方が解らないし)


 目を覚ました大河は、ミュリエルを見て首を捻っている。
 覚えてはいないが、記憶にひっかかる何かはあるらしい。
 今回は騒ぎ出さないようだが…慣れたのか?
 それとも無意識ながらも自分が主導権を握っていたからか?


 扉の向こうから軽い足音が聞こえてきた。
 この足音はリコのものだ。


「すみません、遅れました」


 扉を開けて、リコが駆け込んできた。
 数日前までは、考えられもしなかった明瞭でよく聞こえる声だ。
 何故こうも変ったのかは不思議だが、今はそれ所ではない。

 色々と気になる事はあるが、それを聞くのは後でいい。
 今は客人との件を片付けるのが先だ。
 事は本気で切羽詰ってきている。


「これで全員揃いましたね。
 今日集まってもらったのは………リリィ?」


「…なんですか、お義母様」


「…何かありましたか?」


「…何の事です?」


 取り付く島も無い。
 何やら大河との間に、妙な確執が見える。
 仲が良くないのはいつもの事だが、今回はそういう性質ではない。
 男女間の仲ともまた違う。
 いや、男女間には違いないのだが……それ以外に、根本的な反感が…。


「…まぁいいわ。
 それはそれとして…王宮から辞令が来ています」


「辞令…ですか?」


「要するに強力要請でござるな?」


 ベリオは首を傾げた。
 救世主クラスは王族直属の部隊と言ってもいい。
 他の者には一切命令権が無い。
 学園自体は王族ではなく王宮の下にあるので、王宮以外の何者かにも命令権がある。
 王宮からの命令が来た場合でも、救世主クラスならば拒否できない事は無い。
 …さすがにフローリア学園の立場は悪くなるので不可能に近いが。


「そうです。
 行ってもらえるかしら?」


「敵は“破滅”…ですか?」


 リコの質問に、リリィはビクリと身を震わせた。
 ミュリエルは気付いたが、敢えてそれを黙殺する。
 死の危険があるのには変わりないが、今回はまだマシな方だ。
 今のうちに“破滅”への恐怖を克服してくれなければ、どちらにせよリリィは戦えない。
 冷たいようだが、こればかりは…。
 千尋の谷に放り込まなければ、リリィは生き残れない。
 心を鬼にするミュリエルの内心は、同じ“母”にしか理解できまい。


「“破滅”かどうかはまだ解りません。
 しかし、この任務を遂行すれば、今後“破滅”と戦う為にまたとない経験として生きるでしょう」


「つまり、相手は“破滅”かもしれないモンスター…でござるか」


「そうです。
 そして相手は…」


「それは私から説明しよう!」


 バタン、と扉が開いた。
 誰かが威勢良く入ってくる。
 パラボラアンテナを連想させる帽子を被り、赤を基調とした服を着て、生意気そうながら聡明さを窺わせる、凛々しい表情。


「相棒!」


「同士よ!」


ガシィッ


「ク、クレアさん……」


「…爆弾が増えた…」


 入ってきたのは、大河2号ことクレアであった。
 突然救世主クラスの前に現れて、大河と一緒に散々手を焼かせてくれた記憶はまだ新しい。

 そのクレアは、一目見るなり叫んだ大河に駆け寄って手を取り合っていた。
 その様子は、まるで10年単位で供に戦ってきた戦友のよう。


「誰でござるか?」


「私も知りません…」


「……説明したくもないですよぅ…」


 カエデとリコが首を傾げるのも他所に、大河とクレアは無駄に息が合っている所を披露している。
 駆け寄って握手、そのままクレアが一回転して大河に体を預け、受け止めた大河がクレアの体を振り回して持ち上げ、室内にも関わらず放り上げて空中三回転。
 落ちて来る所をばっちりキャッチし、大河の右手の上でクレアが左手一本のまま倒立、2人の腕の力を合わせてクレアが跳躍。
 華麗にムーンサルトを決めて着地した。


「「「「おおおおおおお!!!」」」」


 思わずミュリエル達も拍手した。
 クレアと大河は二人揃って頭を下げる。
 まるでサーカス…というより雑技団のノリだ。
 またはフィギュアスケート。
 というかクレアはこれほどの運動神経を持っていなかったはずだが。


「って、何をやっているのですかクレシーダ王女!?」


「なに、久々に会った同士と親交を深めてみただけだ」


「う〜む、確かに綺麗に決まったでござるな。
 師匠、今度は拙者もやってみたいでござる!」


「カエデさんも止めなさい!」


「おっしゃ、そういう事ならもう一丁!
 応えろカエデ!
 流派!!東方不敗は!!」

「王者の風よ!!」


「全新!!」


「系列!!」


「「天破侠乱!!」」 


「だから止めなさいって!」


「「見よ!! 東方は赤く燃えているぅっ!!」」


 ガシっと拳と拳を、力いっぱい突き合わせる。
 と、その途端。


どっごぉぉぉぉぉぉ………ん……


 窓の外で大爆発が起きた。
 奇しくも(?)カエデと大河の後ろ…窓から爆炎と煙が見える。
 思わず唖然として黙り込むミュリエル達。
 その中で、大河とカエデ、そしてクレアだけが冷静だ。

 クレアは無言で窓に近づき、外を見る。


「……あの建物は研究練だったな…」


「じゃあルビナスが実験でもミスったんだろ」


「タイムリーな演出でござったなぁ」


「タイムリーで済みますか!」


 はっはっは、と笑うカエデたち。
 激しく裏手でツッコミを入れ、溜息をつくミュリエル。
 このまま放っておくと、超級覇王電影弾とかも出来そうだ。
 カエデが「師匠…お会いしとうございました〜」とか言って泣き出しても何の違和感もない。
 さすがの大河も生身でMSぶっ壊すような人間外ではないが…。
 いや、ノリ次第ではそれも可?

 まぁ、研究練に関してはいつもの事だ。
 ルビナスが来てからというもの、規模が少しずつ大きくなっているが…。
 リリィ達も、あの手の爆発には慣れてきている。


「あ、あの…クレアちゃんがクレシーダ……王女って……?」


 恐る恐る尋ねる未亜。
 クレアは振り返り、平均以下の胸を張った。
 将来性に期待する。


「そう言えば正式な自己紹介はまだであったな。
 私が46代目王位継承者、選定姫クレシーダ・バーンフリートであるッ!


「のぐわっ!?」


 バリィン!


 どっかの物騒な名物ばかりある塾の塾長よろしく、クレアは大音量で叫び声を上げた。
 そのあまりの迫力だか気迫だか音量だかに、部屋に飾られていた姿見にヒビが入る。
 ミュリエルは慣れた様子で耳を塞いでいたが、大河達は鼓膜を激しく揺さぶられて仰け反りかえった。
 特に五感が鋭いカエデなど、目を回して後ろに倒れこんでしまった。


「……クレシーダ殿下、自己紹介の度に備品を破壊するのは止めていただきたいのですが」


「私が壊しているのではない。
 何故か自己紹介の度に勝手に壊れておるのだ。
 それに、私の叔父貴によると自己紹介は全力でやれ、との事だ。
 第一印象というのは人間関係において極めて重大なファクターだからな」


「大声を出せばいいというものではありません!
 それに叔父と言われると、エダジマ殿の事ですね?
 そういえば最近話を聞きませんが…」


「うむ、また何処かへ武者修行の旅に出かけたらしい。
 ネットワークがどうの魔王がどうのと言っていた。
 まぁ叔父貴の事だ、殺した所で死にはせん」


「そうですか…あの方が居られれば、“破滅”との戦いも大分楽になるのですが。
 (ネットワーク? 魔王? 聞き覚えがあるような無いような……気のせいですね)」


 ミュリエルは首を傾げたが、大河はそれを聞いてイヤな想像をした。


(ネットワーク……魔王…まさか俺のバイト先…?)


「そ、それはそれとして……王女様、なんですか…」


「うむ。
 敬って媚びへつらえ」


「媚びるか?」


「お前はやるな。
 ぶっちゃけ気味が悪い。
 むしろキショい」


 大河の茶々を真顔で一刀両断し、クレアは腕を組んだ。
 何気に鳥肌まで立っている。
 ちょっと大河は落ち込んだ。


「ま、そういう訳だ。
 先日は世話になったな」


 悪びれもせず言い放つクレアとは対照的に、リリィ達は呆然としている。
 それはそうだろう。
 王家の実質的指導者と言われているクレシーダ王女が、そして救世主を選ぶ選定姫が、何よりこの国のトップが大河の同類だというのだ。
 先行き不安にもなろうと言うもの。


「わ、私は何だかアヴァターから逃げ出したくなってきました…」


「言わないで未亜…私だってのすごく不安よ」


 何だか失礼な事を言われているような気がするクレアだったが、聞き流す事にした。
 このくらいの寛容さが無ければ、人の上に立つ事は出来ない。

 ベリオが恐る恐る、会話の繋ぎといった顔でクレアに聞く。


「あの時はどうして急に消えたのです?」


「別に私は消失などしておらぬが…午後からミュリエルとの会談を予定しておってな。
 何も言わずに去ったのは悪かった………ん、何だ大河?」


 大河は無言でクレアの前に立った。
 目が据わっている。

 こういう時の大河は……危ない。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!
 何をする「トレイター!!」!!??!??」


 問答無用で召喚器を呼び出す大河!
 その手は高く掲げられ、今にも振り下ろそうとされている。
 その手の中に、白く光を反射する棒状の何か…恐らくは剣。

 慌てて止めようとするミュリエル達。
 が、一足遅く大河の腕が振り下ろされた。
 惨劇を予感し、それぞれの心に絶望がよぎる。


スパアアァァァァン!!!

「をぐっ!?」


「…へ?」


 が、予想は外れた。
 間の抜けた、しかし何だか爽快な音が響き渡る。
 トレイターの一撃を受けたクレアはというと、頭を抑えて蹲っている。
 タンコブくらいは出来ているかもしれないが、致命傷ではない。


「……えーと…?」


 戸惑いながら大河の手を見る未亜達。。
 そこにあったのは……浪速の魂。


ハリセントレイターであるっ!」


 馬鹿でかいハリセンだった。
 殺傷力は皆無に近く、例え召喚器で強化された身体能力を持ってしても致命打を与える事は難しい。
 しかし使い方の大原則さえ守れば爽快かつ強烈な音を演出する、まさに夢のツッコミ召喚器。
 ……心なしかトレイターが泣いているような気もしないでもない。
 大河に言わせると、『トレイターも俺と同じで芸人気質だから喜んでいる』となるのだが…真実の是非は定かではない。


「た、大河さん……わざわざ召喚器を使って、何をしているんですか…」


 脱力したリコが呟く。
 大河はちょっと照れたような顔をしたが、真顔で言い訳しはじめた。


「いや、怒りを表現するんだから全力で殴らなきゃならんだろ?
 俺達救世主クラスの全力っていったら、召喚器込みだし……。
 でも召喚器を呼び出してぶん殴ったら確実に死ぬだろーから、殺傷能力が無くて思いっきりドツけるような器具を…」


「そーじゃなくて、何だってわざわざ召喚器にハリセンなんぞやらせてるのよ!」


「「その場のノリであるッ!!」」


 何故かクレアまで口を揃えて答える始末。
 リリィをはじめ、ミュリエルから未亜まで頭痛を感じた一瞬だった。
 しかし何故かカエデだけは感激している。


「その場の勢いで新たな能力を発現させるとは…さすが師匠でござる!
 クレア殿も師匠を信頼し、召喚器で殴りかかられているのに慌てもしないとは…。
 感激したでござるよっ!
 かくなる上は、拙者も今からこの場で何か新忍法を…」


「やめんかぁっ!」


 リリィの膝蹴りがカエデに直撃した。
 放っておけば、原作エンディングのよーに巨大化しそうな勢いのカエデだった。
 そしてたとえ大河と反発していようとも、八面六臂のツッコミを入れるリリィ。
 実にご苦労な事だ。


「それはそれとして、大河!
 いきなり何をする!?
 場合によっては侮辱罪で牢に繋いで調教するぞ!」


「すな!」


「なら何のつもりだ!?
 早急に私を納得させてみよ!」


 ビシっと指を突き付けるクレアに対抗し、大河もトレイター…まだハリセン…を突きつける。


「何のつもりも何も、オシオキに決まってるだろうが!
 闘技場で魔物の檻を開けたのはまだいいとしても、その後声も掛けずに消えやがって!
 撃ち漏らした魔物に攫われたんじゃないかとか、怪我をしてどっかで野垂れ死んでるんじゃないかとか、幼女にハァハァするアブないおっさんにイタズラされてるんじゃないかと、スッゲー心配したんだからな!
 王女なんだろーが!
 尚更自分の行動には責任持たんかい!
 事情も説明せずに、部下が着いてくると思ってんのか!?」


「そ、そうです!
 しかもそのせいで私達はミュリエル学園長に叱責されましたし」


「いや、そのお蔭で大河がお義母様に追い詰められてたから、私は水に流してもいいんだけど」


 ベリオ、リリィの台詞である。
 未亜はもうコメントしようとも思わないようだ。

 一方クレアはちょっと引いている。
 反論しようにも、大河の言っている事が正論なので反撃できないのだ。
 が、それでも何とか反撃の言葉を捻り出す。


「ぬぬぬ…私にあのような事をしたのだから、逃げても無理はないと思うのだが…」


「それでも一言声をかけて行くなり、地面に何か書いていくなりせんかっ!」


「やかましい!
 私はもう少しで未知の世界を覗き込むところだったのだぞ!
 慌てて逃げて何がおかし「お兄ちゃん」ぬおっ!?」


 唐突に未亜が会話に割り込んだ。
 クレアと大河の間に割って入り、大河を正面から睨みつけている。
 ビビって一歩下がる大河。
 クレアも彼女に対する苦手意識が残っているのか、押しのける事ができなかった。


「クレアちゃんに何をしたの?
 慌てて逃げるような事をしたのよね?
 しかも白昼堂々。
 闘技場まではずーっとお兄ちゃんから目を離してなかったから、それまで何もしていなかったのは信じるよ。
 って事は、お兄ちゃんがクレアちゃんにナニかシたのは私達がモンスターと戦っている時だよね?」


「い、いやそれはそのワザとじゃなくて」


「ワザとじゃなければ許される?
 ノンノン、過失でも故意でも私的裁判では私形です」


「ま、待て未亜!
 その前にちょっと話が・・・」


 今にも大河をボコリそうな未亜を引き摺って、大河は学園長室の外に消えて行った。
 唖然としたままそれを見送るベリオ達。
 ミュリエルが気まずそうにクレアを見る。


「……で、実際何があったのです?」


「……聞くな」


 戻ってきた時、何故か未亜は上機嫌だった。
 揃ってベリオ達は首を傾げたが、理由を聞くのも怖い。
 時々未亜の目がクレアを盗み見て、唇の端だけで哂うのがもっと怖い。
 ミュリエル達は、さっさと話を進めてこの場を乗り切る事にした。


「ちょっとばかり言いがかりを付けさせてもらうが、卑怯だぞ大河!」


「?」


 戻ってきた大河に、クレアはいきなり指を突き付けた。
 卑怯と罵られた大河だが、何かをした覚えは無い。
 しかしクレアは構わず続ける。


「召喚器をハリセンに変えてまで全力ツッコミをしておきながら、その理由が正論で構成されたシリアスというのはどういう事だ!?
 ボケるならボケるで、徹頭徹尾ボケぬか!
 ボケから一転してシリアスなぞ、お主のキャラに……合ってはいるが、こちらが付いていけぬ!
 原作でもボケからいきなりシリアスになると批判が」


「ストップ!
 クレシーダ殿下、ストップです!」


 楽屋ネタに突入しそうな気配を感じて、ミュリエルが慌ててクレアを止める。
 それで我に帰ったのか、クレアはバツの悪そうな顔をした。


「と、とにかくだ。
 私を殴ったのはこの際不問に処す。
 だがその理由が真面目なものであるならば、ハリセンなぞ使わず素直に拳を使うがよい。
 まったく、ハリセンなぞ使うからてっきりボケの一環だと思ったではないか。
 漫才詐称罪でしょっぴかれるぞ」


「それが理由ですか……」


「漫才詐称罪などという罪はありませんが…」


「当然だ。
 私が今決めた。
 王女の私が決めたのだから、新法を通せば問題ない。
 議会の連中も買収すれば何とかなるしな」


 ベリオの疲れた声が毀れる。
 ミュリエルも何だか色々と馬鹿らしくなってきているようだ。


「そう言えばお兄ちゃん、目下の人を殴るのは最低だって言ってたよね?」


「それは躾とドツキ漫才にも適用されると思うか?
 否! 断じて否! よって今回はノープロブレム」


「年下ではあるが、一応目上の人間なのだが…。
 まぁ、確かに漫才ならば多少の無茶は許すがな」


 クレアはふと顔を上げた。
 首を回して大河を見る。


「殴ると言えば……大河、ちょっとツラ貸せ」


 グイ、と妙に強い力でクレアは大河の襟首を掴んだ。
 特に抵抗しようともせず、大河はクレアに引き寄せられる。


「な、なんだ?」


「以前闘技場で私に何をしたか、忘れた訳ではあるまいな。
 というか、忘れてなかったんだから何を言われるか解ってるな?
 放課後、便所の裏まで来い」


「便所の裏!?
 体育館の裏じゃなくて!?
 ってか何処の便所だよ」


「体育館はフローリア学園には無い。
 闘技場ならあるが、あそこの裏は断崖絶壁だ。
 何処の便所でも構わん、貴様が行く便所の裏に私が居る」


 メチャクチャ言っているクレア。
 大河も妙な迫力に圧倒されている。

 が、大河はこれを好機と考えた。
 どの道クレアとは話をしなければならないのだ。
 描写してはいなかったが、ダリアからクレア訪問の連絡も受けていた。
 割符は渡してなかったが、最初のアクロバットが割符代わりだった。
 ダリアは本当にクレア直属のスパイだったのだな、と大河は納得する。

 それ以外にも、別の意味でチャンスだが…。


「わかった。
 放課後だな」


「ちょと大河さん!?」


 リコが慌てている。
 流石にクレアが毒牙に掛かるのを見過ごせないのだろうか?
 否。


「そんなシチュエーション羨ましいです…。
 放課後のトイレの裏で告白するなんて、どこの少女漫画ですか!?」


「トイレの裏で告白するかいっ!!」


 リコに向かってクレアが吼える。
 ちょっと顔が赤いような気がしないでもない。
 ムードもシチュエーションもあったものではない。
 学園は掃除が行き届いているから特に気にはならないかもしれないが、やっぱり嫌だろう。

 しかしリコは全く聞いていない。


「しかも人目が無いのをいい事に、告白から即行為に流れ込むだなんて…。
 不潔です、ふしだらです、羨ましいです…。
 初心者なのに外で?
 それだけでなくそのギリギリな年齢で?
 大河さんのリビドーを一人で受け止めようと?
 神ですか、神のつもりですか?
 壊されますよマジで」


「年齢の事をお主のような童女に言われてもな…。
 ……ミュリエル、この者はいつもこうなのか?」


「いえ…つい一週間も前までは、正反対だったのですが……」


 流石のミュリエルとクレアも対応に困る。
 一週間前までのリコとは正反対である。
 一体何があったのか?


「大河さん、今度シチュエーションプレイに付き合ってくれませんか?」


「あ、拙者も、拙者もー!」


「私も地球でよく堪能したわねー」


 ボケっとしているミュリエルとクレアの前で、リコの暴走はまだ続いている。
 カエデも加わるし、ベリオも無言で大河の服の端を摘んでいる。
 未亜がサラっと近親相姦を暴露したような気がするが、この兄妹には今更だ。
 リリィはリリィで、シチュエーションプレイという言葉を聞いて何かを連想したらしく、耳を塞いで念仏を唱えている。
 というか、大河との情事はそのまんまシチュエーションプレイだと思うのだが。


「………ふむ、忘れ去られておるな」


「…そうですねぇ…」


 騒ぎが一段落すると、ミュリエルによる説教が待っていた。
 クレアはそこそこ楽しんでいたようだが、時間を無駄にした事には変わりない。
 説教を終え、今度こそクレアとミュリエルは本題に入る。


「さて、先程の話の続きですが…」


「シチュエーションプレイの話ではないぞ」


「クレシーダ殿下が茶々を入れないでください!
 話の続きですが、相手は“破滅”かもしれないモンスターです。
 ……クレシーダ殿下、ご自分で説明されますか?」


「うむ、黙っていてもつまらん。
 というか出番をよこせ」


「それは天の意思に言ってください。
 では、どうぞ」


 ミュリエルに促され、クレアは大河達の前に仁王立ちする。
 こうして見ると、やはり彼女が一国の指導者だというのが不思議で仕方がない未亜達だった。
 確かに行動力はあるだろう。
 どの程度かは解らないが、少なくとも歳の割には聡明なのもよく解る。
 何より威風堂々とした立ち振る舞い…以前は子供っぽい雰囲気だったが…は、人の上に立つのに必須の条件だ。
 条件は満たしている。
 が、やはり彼女は子供なのだ。
 どれだけ聡明でも、経験不足は否めず、彼女自身も自分が世間知らずであると理解している。

 ならば何故彼女が選定姫となったのか?
 簡単な理由である。
 彼女はそれが最良だと判断して行動し、その結果が周囲に認められたからだ。
 その判断力と行動力こそが、彼女が指導者足り得る理由であり、曲がりなりにも海千山千の領主達と渡り合える理由である。
 王宮でも、彼女は歴代の王位継承者の中で最たる名君の素質を持っていると言われている。
 彼女が“破滅”が現れる時代に居合わせた事を、皮肉な事だ、平和な世ならば最高の政を敷いただろうと嘆く人物も居れば、“破滅”の時代に居合わせたからこそ能力全てを発揮するだろう、と評する人物も居る。
 クレアは本当に一目置かれていたのだ。


「さて、話が脇道に逸れまくったが、改めて説明しよう。
 と、その前に……皆の者、先日は本当にすまなかった。
 この通りだ」


 クレアに頭を下げられて、ベリオ達は本気で慌てた。
 特にカエデは大慌てである。

 体育会系真っ青の縦社会に生きていたカエデにとっては、冗談抜きで驚天動地と言っていい。
 目上の人間…人の上に立つ者は、みだりに人に頭を下げるべきでない、というのが彼女の常識だったからだ。
 無論例外もあるが、目の前で唐突にされると本当に驚く。
 特にカエデは彼女には迷惑を掛けられていないのだから。

 一方、リコと未亜はそれほど驚いては居ない。
 リコにとっては人間の上下関係なぞ大して関係なく、未亜にとっては王族がどうのと言われた所で実感が無い。


「あ、え、えーと…頭を上げてください。
 クレアちゃ……えーと、クレア様? にも事情があったのでしょうし…」


「いや、事情ならば誰にでもあろう。
 謝るべき時には、きちんと謝らねばならぬ。
 それと、呼び方は今まで通りにしてくれ。
 ここまで来てお主らにまで様付けされては、堅苦しくてかなわん…。
 …簡単な謝罪で申し訳ないが、そろそろ本題に入りたいと思うのだが」


「は、はい!」


「今から二日前、王宮に辺境警備隊からの緊急連絡が入った。
 それによると、レッドカーパス州とアルブ州の境にある村をモンスターの集団が襲い、人質をとって立て篭もっているというのだ」


「人質…ですか?
 モンスターが?」


「うむ。
 アルブは自然が豊かな土地だ。
 当然モンスターも多いが、現地の人間は自然と調和して上手くやっていた。
 ウソか真かは定かでないが、中には人間に懐く…とは言わないまでも、食事と引き換えに人間に強力するモンスターも居たそうだ」


「あ、その話は俺も知ってる。
 確か触手を持ってるモンスターと取引をして、AVを撮ろうとしたとか何とか」


 ちなみにそのAVは、何時ぞやセルに渡した『幻の女優・姉妹で触手を奴隷』というAVだったりする。
 閑話休題。


「そういう話もあったな…。
 それは置いておいて、だ。
 今度のモンスターは、徒党を組み、集団で襲ってきたという報告だ。
 統制を取っているモンスターが存在している。
 明らかにこれまでの行動とは一線を隔す…」


「……それが“破滅”の影響か?」


「恐らくな」


 そこまで聞くと、クレアは大河達を見回した。
 臆している者が居ないか確認するためだ。
 とは言え、所詮これはただの情報である。
 相手が本当に“破滅”かも解らない。
 多少腰が引ける者は居るかもしれないが、恐怖を覚えている者は…。


「………?」


 妙に体を縮こまらせている者が居る。
 赤い髪をした魔法使い……リリィである。
 恐怖を覚えているのは間違いなさそうだが、話を聞いただけでこれほどの反応を示すだろうか?
 この我の強そうな魔法使いが…。

 クレアは視線で大河に問いかけた。
 問われた大河は肩を竦め、今は放っておけと返す。
 気にはなったが、大河に任せる事にした。
 何だかんだと言っても、救世主クラスの中心となっているのは大河だ。
 これは大河の管轄だろう。


「人質が居るのでは、大勢の軍隊を向かわせても意味が無い。
 人質に構わず蹂躙するのならば話は早いが、そうもいかぬ。
 そこで少数精鋭の部隊を向かわせる事にしたのだが…」


 そこまで言って、クレアは思わず言葉を止めた。
 心の中で、鋭い痛みが走る。
 それは良心の叫びである。
 王女として生きると決めた時に、“破滅”を何としてでも打ち払うと決めた時に、心の奥底に沈めたはずの良心。
 これまでにも度々感じてきた。
 人としては無くしてはならない物だろう。
 だが、最良の行動をするためには…この痛みは、良心は時に邪魔者なのだ。

 クレアの止まった言葉を引き継いで、大河が言葉を繋げる。


「そこで、精鋭の俺達に話が出回ってきたって訳だな」


「そういう事だ」


 クレアは大河を見て、彼にのみ解るように目配せした。
 申し訳ない、という意味である。
 それを受け取った大河は、同じように目配せで返した。

 クレアは確信する。
 やはり大河は裏事情を理解している。
 そして黙っている。
 彼も良心の痛みに耐えているだろう。


「それでは…私達が、人質救出と…“破滅”のモンスターの討伐を同時に?」


「そうです。
 これは訓練ではなく実戦…それも王宮直々の依頼による作戦です。
 王宮直々とは言え、拒否権はあります。
 もしあなた達が拒否すれば、私にも強制する権利はありませんし、また王宮としても、今の時点で無理強いはしてこないでしょう。
 これに成功すれば、あなた達の救世主承認への大きな足がかりとなります。
 拒否するか承諾するか、心して決めなさい」


 ミュリエルは鉄面皮のまま言い切った。
 彼女もクレア達の考えは承知している。
 と言うより、“破滅”への対策を練っているクレアとアザリンに付き合い、彼女も会議に参加したのだ。
 この救出作戦の本意が何処にあるのか、熟知している。

 ベリオ達は、少しばかり怖気づいているようだ。
 急に来た“破滅”の影に、心を決める時間すらなかった。
 しかし、それに構わず大河は言い切る。


「行くに決まってるじゃねーか。
 この程度でビビってちゃ、“破滅”なんぞと戦えないっての。
 それに、実戦経験を積むまたとない機会だしな。
 人質奪還に関しては、隠密行動が専門のカエデと、怪我人を治療するベリオが居ればなんとかなる。
 何より、俺達が拒否したら人質の死が確定するんだろ?」


「確定する訳ではない。
 ……が、生還の確立はぐっと下がるな」


 ベリオ達に言い聞かせるような大河の言葉に、クレアは乗った。
 心が痛むが、これは人の上に立つものの宿命と言ってもいい。
 大を生かすために小を殺す。
 それが政治というものなのだ。
 そしてそれは戦争もしかり。
 情に流されるようでは、戦時の指導者ではいられないのだ。

 人質が死ぬ、との言葉を聞いたベリオが奮起した。


「私も行きます。
 この身は神に仕え、人々を救うために救世主を志しました。
 ここで命惜しさに引き下がるようなマネは出来ません」


「私も行くよ。
 お兄ちゃんを助けるって、もうずっと前に覚悟を決めたもの」


「私はマス…未亜さんの意に沿うまでです。
 大河さんも助けたいですしね」


「師匠が拙者を頼りにしているのに、応えないようでは弟子は名乗れぬでござる!」


「………行くわよ」


 リリィだけは言葉少なかったが、次々と奮起する。
 それを見ても表情を変えず、ミュリエルは淡々と言い放った。
 その裏では、大河に対して合図を送っている。
 感謝の合図だったが、大河は彼女の内面から複雑な感情を読み取った。
 当然だろう、リリィ…娘を死地に送り出すのだから。


「出発は明日の早朝です。
 各自体を休めておくように」


「………やはり、割り切れんものだな」


「殿下と言えども人の子です…」


「“母”に言われると、一層立つ瀬がなくなるな…」


 大河達が退室した後、ミュリエル達は沈んだ顔を見せていた。
 救世主候補生達…大河は気付いていたようだが…を騙すような行為に続き、辺境に犠牲を強いる。
 己の力不足に、クレアは忸怩たる思いだった。
 全てを救える訳ではない。
 解ってはいるが、それでもと願わずには居られない。


「……それにしても、恐るべきはアザリン殿…。
 まさかあのような方法で…」


「うむ…。
 確かに彼女の領地における兵士達の戦意は高かろうが…。
 それを見据え、自領を盾にするなぞ普通は出来ぬ。
 その後の計画といい、その発想といい、何よりもその決断を後押しする苛烈さと家臣…」


「パコパコ…もとい、タイラー殿でしたか?
 よい家臣に恵まれているのですね」


 彼女達の脳裏に、今頃王宮であちこちの領地のデータを比較し、計画を進めているであろう少女の顔が思い浮かぶ。
 この計画と発案者の名前を聞かされた時には、思わず唖然としたものだ。
 確かに不可能ではない。
 成功の可能性も高い方だ。
 王宮どころかアヴァター中の物資と人間を総動員するこの計画。
 成功すれば、確かに相応の戦力を得ることができ、何より辺境の民を救う事が出来る。
 彼女は家臣から聞かされた計画に少々手を加えただけだ、と照れくさげに笑っていたが、この計画を実行可能と断じる事自体が非凡なのだ。


「では、私も計画のための根回しに回ります」


「うむ。
 ならば私ももう行こう。
 …便所の裏に、な」


「ははは……大河君の毒牙にかからぬよう…」


 一方大河達。
 威勢良く参加を表明したはいいものの、やはり未亜達の表情は暗い。
 それを見て、大河は少し考える。

 今のままのモチベーションで事に臨む訳にはいかない。
 臆病風に吹かれたままでは、実力の半分も出せないだろう。
 何とかして普段通りのテンションに戻さなければ。

 特にリリィは危険である。
 “破滅”に対するトラウマがフラッシュバックしかけているのだろうが、状況はそんな事を言っていられるほど余裕が無い。


「とうとうデビュー戦かぁ…。
 こりゃー一丁決めてやらんとな。
 そして助け出した妙齢の女性に感謝され、なんなら現地妻を…」


「……でりゃ」


「あたっ」


 馬鹿な事を言い出した大河だが、それに対するツッコミは一応入った。
 が、やはりテンションが低い。
 未亜にフツーに殴られて、大河は頭をさする。


「おいおいお〜い、大丈夫かよ?
 というかボケたんだからもうちょっと激しいツッコミしてくれよ。
 寂しいじゃね〜かよ〜」


「………」


「……ダミダコリャ」


 処置なし、と言わんばかりに両手を挙げる。
 ベリオが非難がましい目を向けてきた。


「大河君…よくそんな馬鹿な事を言っていられますね…。
 怖くないんですか?」


「べっつにー。
 そりゃ怖いけどさ、それ以上に勝てる自信があるからな。
 必要以上の怯えを持っても、ロクな事にはならないし」


「そっちじゃなくて、私達の前で、よくもまぁ現地妻などと…」


「そ、それは唯の冗談…」


「目が本気でした」


「あぅっ、リコまで!?」


 実際、出来るならついでに…くらいには考えていた大河だった。
 冷たい視線を感じ、大河は振り返る。
 そこにはリリィが相変わらず不景気な表情で大河を睨みつけていた。
 どうやら無意識に睨みつけていたらしく、大河が見返すとリリィはプイ、とそっぽを向いた。
 しかし何も言おうとはしない。


「確かに、怖気づいてしまっては普段の実力の半分も出せぬでござる。
 とは言え、師匠のように何の考えもなく、根拠もなく“勝つ!”とは言い切れぬでござるよ…」


「何気に失礼な事を言っていませんか、カエデさん」


「そうでござるか?
 相手の情報も無いのに、師匠は既に勝った気でいるような気が…」


 確かに、大河の態度は危機感というものが足りていないように見える。
 そういう意味では、確かに大河は考えが足りないと言っていいかもしれない。
 しかし、カエデのいう事は根本的に的外れでもあった。


「こんのバカ弟子がぁ!」


「ぬあっ!?」


 ガッツン!


 大河の拳がカエデの脳天を直撃する。
 派手で硬質な音がした。

 唐突に振るわれた暴力に、未亜が目を丸くする。


「ちょっ、お兄ちゃん何を!?」


「ええい、あまりにも腑抜けた事を言ってるから活をいれてやっただけだ!
 情けないぞ我が弟子よ!
 確かに敵の情報が無い以上、不必要に楽観的な見解は控えるべきだ。
 しかしだな、さっきのお前の言葉はそれ以前の問題だ!

 根拠もなく“勝つ”とは言い切れない!?
 そこを言い切るんだよ!
 相手が“破滅”だろうがその辺の珍獣だろうが、何が来ようがぶっ飛ばす!
 負ける事ばかり考えるな、勝つための道を考えろ!
 逃げるのも兵法の一手ではあるが、最初から逃げ腰になるヤツがあるかい!

 今のお前は、自分で作り出した幻影に脅える子犬同然だ。
 強くなるために救世主候補生となった事を忘れたか!?」


ガガガガーン!!!  (← ベートーベンの『運命』)
 そ、そうでござった…拙者は臆病な自分を克服するためにアヴァターに来たというのに…。」


 大河に一喝に、カエデは心底衝撃を受けた。
 自分が臆病風に吹かれていた事だけではなく、戦う前に負けようとしていた事に気付いたのだ。
 頭をド突かれてちょっと涙目になったまま、カエデは雷に打たれたように立ち竦む…本当に雷に打たれたらすぐ倒れるが。


「目が覚めたでござるよ師匠…。
 ここで踏ん張ってこそ、拙者は強くなれるのでござるな!
 もう無闇に脅えるような事はないでござる!

 雑念を振り払い、明日のための調整に入るでござる。
 つきましては、師匠にも付き合っていただきたいと……」


 カエデは拳を握り締め、大河を自分につき合わせようとする。
 とりあえず普段通りのテンションには戻ったようだ。

 それを見て、未亜とベリオも苦笑する。
 自分達も見えない敵のプレッシャーに押しつぶされそうだが、カエデと大河のお蔭で何とか乗り越えられそうだ。


「そうだね。
 今からでも体の調子を整えておいた方がいいよね。
 明日に脅えてるよりも、少しでも準備しなくちゃ。
 お兄ちゃん、私もちょっと付き合ってほしいな」


「同感です。
 …とはいえ、やっぱり直には吹っ切れません。
 でも、明日には普段通りの私に戻ってみせます。
 大河君、明日のためにお祈りしませんか?
 神頼みでもしないよりはマシですよ。
 その後聖水の作成とかを手伝ってください」


 …落ち込んでいても、大河争奪戦は勃発するらしい。
 それを一歩引いた場所から、忌々しげに見るリリィ。
 舌打ちをして、無言でその場を去って行った。


「あいにく、俺はクレアに呼び出されてんの。
 お前らに付き合う時間があるかどうかは……クレアの用事次第だけど、多分ないぞ。
 ちょっと長い話になりそうだから」


「そうでござるか? 残念…」


「まぁ、先約があるのでしたら……」


「クレアちゃんに用事……お兄ちゃん、上手くやってね。
 期待してるから」


 未亜の発現に、振り返って顔を見るカエデとベリオ。
 一体何を上手くやれと言うのか。
 言われた大河も複雑そうな顔で苦笑いしている。
 実を言うとベリオの中でブラックパピヨンも同じ事を大河に言っているのだが、ベリオは気がつかなかった。


「ま、まぁ善処するよ…」


「善処じゃダメ。
 確実にやって」


 未亜の目が据わりつつある。
 レズレズサディストモードに移行しつつあるのだ。
 それを見て、カエデとベリオ、リコは大河の“用事”とやらが女絡み…エッチな事だと予測した。

 あのような幼い女性に?
 幾らなんでも危険だろう。


「ご、ご主人様、幾らなんでもそれはデンジャーすぎます!」


「チャレンジ精神も程度によりけりですよ!?」


「そうでござる! いくら幼いのは浪漫と言えど、浪漫は届きそうで届かないから浪漫なのでござる!」


「「「だから考え直してくださ「お黙り」……ハイ」」」


 必死に大河を止めようとしていたリコ達は、未亜の一言に敗北した。
 未亜は支配者としての貫禄を身に付け始めているのかもしれない。
 というか、ぶっちゃけ目が怖い。
 邪魔するものは踏み潰す、と言わんばかりの目付きである。


「…ま、まぁ…実際の所、そう大した事をするわけじゃないって。
 お前らが考えているような展開になるかは相手次第だし、話さなきゃならない事があるしな」


「えー」


「そこ、残念そうな顔しない!」


 ベリオ達が安堵の息を吐く中、未亜一人だけが不満そうだ。
 さっきはクレアちゃんを……するとか言ってたのに、などとブツブツ呟く。
 三点リーダ二つ分に何が入るのかは、公然の秘密である。


「そんなわけだから、俺はもう行くわ。
 えーと……トイレの裏で待つって言ってたな」


 大河はどこかのトイレに行ってしまった。
 未亜達はそれを見送り、顔を見合わせる。


「さて、私達はどうしましょう」


「拙者は鍛錬でござるな。
 これが最も落ち着くでござる」


「座禅とかしないんですか?」


「聞くだけ野暮です。
 カエデさんが何もせずにじっとしていられると思いますか、マスター」


「リコ殿酷いでござるよ〜!」


 限りなく事実だ。
 基本的に騒がしい性格だし、敵に気取られないよう気配を殺しているならまだしも、目を閉じて座禅を組んで瞑想するなどというマネはまず向かない。
 集中力が長続きしないらしい。


「カエデさんは修行…じゃあ、私はお祈りですね」


「マスター、少し付き合ってくれますか?」


「うん、いいよ」


 ベリオは礼拝堂、カエデは森へ、そして未亜はリコに連れられて闘技場へと向かう。
 リコに連れられて、未亜は首をかしげた。
 闘技場などへ行って、何をするのか。


「リコちゃん、闘技場に何か用事があるの?」


「用事があるのは私ではありません。
 マスターです」


「私?」


 驚いて未亜は、一瞬歩みを止める。


「はい。
 マスターは赤の主としての力を、ほとんど発揮出来ていません。
 ラインは繋がっているので、充分な力が流れて行っているのですが…」


「あ、それは解るよ。
 リコちゃんとの間に何かの繋がりを感じるし、そこから流れ込んでくる何かのお蔭で体力が増してるもん」


「体力が増しても、大河さんには勝てませんでしたけどね。
 未亜さんはその力を垂れ流しにしている状態にあります。
 体力が増強しているのは、流れ込んできた力を体に蓄えているからです。
 しかし、この状態は言わば満タンになったコップのような状態です。
 確かに満タンではありますが、その状態に更に力を注ぎ込んでも、どんどん溢れ出ていくでしょう。
 はっきり言って、今のマスターでは宝の持ち腐れです」


「う、そうなんだ……」


「そうなのです。
 ですから、マスターには自分の体に蓄えられている力のコントロールを練習してもらいます。
 それが出来れば、“破滅”との戦いでもそうそう遅れは取らない筈です」


「そういう事なら……。
 でも、明日までに間に合うの?」


「基本的な力のコントロールと、身体能力の強化、それと放った矢に力を篭めて破壊力を幾分か増す…。
 スパルタ式でやれば、この位は出来るようになる筈です。
 でも明日は戦闘が予想されますから、体に負担がかかり過ぎないよう、身体能力の強化までにします」


「うん、解った。
 それじゃ、お願いするね、リコ先生♪」


「できれば老師と読んでください。
 外見は少女でも、中身はフローリア学園よりも年上ですから」


 言っててちょっと虚しくなったリコだった。
 とは言え、彼女は本の精霊であり、人間ではない。
 ヒトの寿命は適用されないし、年齢で人を見るという観念も薄い。
 そもそも29とか30程度の微妙な年齢ならともかく、4桁5桁まで行くと歳を気にするのも馬鹿らしくなってくるだろう。


「それで、私はどんな事をすればいいの?」


「そうですね……。
 私から流れ込む力を感じ取る事から始めて、その力を一点に集中させる事にしましょう。
 普通は心得も無い初心者には簡単に出来る事ではないのですが、私からサポートします。
 それが終わったら、実戦で使えるように私と試合ってもらいますよ」


「………キラーン」


「?」


 未亜の目が細く輝いた。
 試合…つまり絶対指導権を賭けた、救世主候補生同士の戦いである。
 もし未亜が負ければ、黙っていればいい。
 もし勝てば?


「う……卯譜扶夫婦布阜付賦」


「ま、マスター!?
 なんだか物凄い邪念の感情が流れ込んでくるのですが!?
 あ、あぅ……た、大河さんに抱いてほしくなってきました…」


 邪悪な企みを練り上げている未亜と、その影響を受けているリコ。
 黒いオーラを放って笑う女性と、ピンク色のオーラを放ちつつ身をよじる少女というヘンな光景が出来上がった瞬間だった。
 丁度訓練をしようと闘技場に入って来た不運な生徒が、精神的安定を図るために速攻で気絶した。
 ちなみに起きた時の生徒は、何を見たのか覚えていなかったそうだ。


「それじゃあ張り切っていきましょう!」


「なんだかよく解りませんが…教えたくなくなってきました…」


 煩悩に突き動かされた未亜は非常に物覚えがよく、結果的には、放つ矢に力を篭めるまでは何とか習得したらしい。
 その後、自己保全本能に従って全力で未亜を叩き潰しに来るリコと未亜の戦いは…どちらが勝ったのかは神のみぞ知る。


 一方、こちらは大河。
 トイレから出てきて、一つ息を吐いた。
 バシャバシャ手を洗って、未亜に持たされているハンカチで手を拭く。


「さってと……クレアに便所の裏まで来いとは言われたものの…」


 幾らなんでも、本当に自分が居るトイレの裏にクレアが居るとは思えない。
 そもそも大河が使ったトイレは、普段は使われないトイレである。
 妙に混んでいたので急遽移動してきたのだが、何だか妙に薄暗いトイレである。


「…そーいえば、ここのトイレって幽霊が出るって話だよな…。
 会おうとしている人の姿で現れるとか現れないとか…。
 その人の姿で現れたら自分が取り付かれている証拠で、知らない内に背中に……手形が付くんだっけ?
 何時だったか、聞いた時にはベリオに話してからかってやろうと思った覚えが…」


 よくある怪談である。
 普通なら鼻で笑って信じずに、しかし一縷の『もしかして』という思いに密かな恐怖を覚える程度だろう。
 しかし、ここはアヴァターである。
 幽霊から魔物まで何でもござれ、の根の世界である。
 トイレに幽霊が居ようが妖怪が居ようがベンジョムシが居ようが不思議ではない。


「……ちょっとだけ…。
 幽霊はともかくとして、あの王女なら俺の行く先を予測して先回りするくらいやるかもしれん」


 そう言って、大河はトイレの奥にある窓から外を覗いた。
 特に理由は無いが、こっそりと、外に気付かれないようにだ。
 トイレの壁にへばりついて外を窺う男…。
 気にしてはいないが、マヌケな光景である。

 暗く、視界が狭いのでよく見えないが、人影が見えた。
 じっと目を凝らすと、その人影が頭にヘンな形の帽子を被っているのが解った。


「……本当に居るし…」


 言わずもがな、そこに居たのはクレアである。
 確かに『お前が行く先のトイレの裏に私が居る』とは言っていたが、何故このトイレの裏にいるのか。


(ひょっとして、トイレが混んでいたのもコイツの仕業か?
 いやいや、いくら王女でそのくらい朝飯前だからって、わざわざやるとも…)


 狭い視界から覗くクレアは、妙に黒い闘気を纏っている。
 懐から光る『何か』を取り出して、愛しげにその光物を撫でていたり。


(ってか、あれ刃物じゃん!
 まさか尻叩きの恨みを刃で晴らそうと!?)


 在り得る。
 彼女のプライドの高さなら、その位の事はやるかもしれない。
 王女として、この非常時に自軍の戦力を削るような真似をするとも思いにくいが、そこは『大河の同類』で『希代の名君』、そして『年頃の(行動力抜群の)乙女』である。
 気高く、また現実的ながらも夢を見る一面もあり、受けた屈辱は必ず晴らす。
 そんな彼女に、大河は何をした?


(……自業自得ながら…デンジャー)


 大河はそう認識した瞬間、気配を殺してトイレから離れようとした。
 話し合わなければならない事はあるが、それより命が優先だ。
 それ相応の準備をしなければなるまい。

 大河はトイレを出ると、そそくさと自室まで走り出した。
 腹を刺された時のために適当な本…教科書を服の下に仕込み、刃物を握っても大丈夫なように特別製の手袋(傭兵科生徒に貰った)をつけ、他には…。
 そこまで考え、大河は足を止めた。


「……考えてみれば、トレイター召喚しとけばそれで済むじゃん」


 まったくもってその通り。
 ヘタな防具よりも、トレイターの身体強化能力による防御力アップの方が強いのである。
 そうでなければ、刃物で斬りつけられたり棍棒で殴られたりよく解らないエネルギーをぶつけられて、なお戦う事は出来ないだろう。
 ……大河の悪友はフツーの状態で攻撃を受けても平気な顔して戦っていたよーな気がするが、気にしてはいけない。

 焦るのが馬鹿馬鹿しくなった大河は、自分がトイレの前に居る事に気がついた。
 先程とは別のトイレである。
 人が居ない。
 そしてトイレの奥には窓がついている。


「…………」


 大河の視線はその窓に集中していた。
 クレアの言った、『お前の行くトイレの裏に私が居る』という言葉がリプレイされた。
 そして現に、先程のトイレの裏にクレアは居た。

 ここは3階である。
 クレアが居るはずが無い。
 場所もさる事ながら、クレアの足では先回りできないだろう。
 が、大河には奇妙な確信があった。
 そこに何か居る、と。


「…………………」


 無言で大河は窓に近寄り、気配を殺して外を見る。
 窓から見える景色は、雄大な自然だった。
 ちょうど崖の上に位置するので眺めはいい。
 …しかしその眺めの中に一筋、不自然な光線が混じっている。
 まるで……そう、まるで何かが太陽の光を反射しているような…。


「……………………………………」


 大河は無言で視線をずらした。
 体の位置を変え、窓のすぐ下が見えるように動く。
 外壁には色々と取り付けられている。
 例えばの話だが……人が隠れたり登ったり出来ないわけではない。

 ………アンテナみたいな帽子が見えた。


「…………………何でここに居るんだぁっ!?」


 つい叫び声を上げ、大河はすぐさま逃げ出した。


 誰も居ないトイレを飛び出し、廊下を駆け抜ける。
 すれ違い、振り返った生徒が妙に驚いた顔をしていたが、大河は気がつかない。
 また別のトイレに到着。


「…まさかここにも居るのか…?」


 止めておけばいいものを、大河は怖い者見たさを発揮してトイレの裏側を覗き見る。
 今度は窓から覗くのではなく、校舎を迂回して影から覗き見る。


「……居たよオイ…」


 クレアはやっぱりそこに居た。
 今は光物はしまっているようだ。
 出て行くべきか、大河は暫し悩む。
 が、その悩みは中断された。


「大河!」


「うひぃ!」


 クレアに声をかけられ、隠れていた大河は30センチばかり足首の力で飛び上がる。
 近寄ってくるクレアの足音を聞いた瞬間、大河は走り出していた。


「あ、おい待て大河!
 何故逃げる!?
 待て、待たぬか!」


「刃傷沙汰はイヤじゃあああぁぁ!」


「な、何を人聞きの悪い事を言っておる!?
 私は刃物なぞ持っておらぬぞ!」


「のおおおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!」


 大河はあっという間に風になった。
 いかなクレアと言えども、本気で走る大河に追いつくのは不可能である。
 チッ、と舌打して、クレアは懐に手を入れた。
 内側のポケットに入れていた、通話用の魔法玉を取り出す。


「あーあーあー、メーデー・メーデー。
 ターゲットが逃走した。
 追跡と誘導、及び報告頼む。
 どうぞ」


「チェックメイトキングトゥ、チェックメイトキングトゥ、こちらホワイトファング。
 ターゲットの誘導は既に開始していますわ〜。
 もう檻の中に居るも同然ですね〜。
 ではでは、そこから西側のトイレの裏に生えている木に登ってくださいな。
 どうぞ」


「了解した。
 どうぞ」


「健闘を祈りますわ〜」


 通信相手はダリアのようだ。
 クレアは魔法玉をしまい込むと、全速力で走り出す。


「ふふふ…何故逃げたのかは知らんが、逃げ切れると思うなよ大河…。
 私は尻叩きの屈辱を晴らすためならば、体力の限界すら突破してくれるぞ」


 ……どうやら大河の向かうトイレの裏に行くために、ダリアまで引き込んで走り回っているらしい。
 大河と同じく、無駄な事にばかり根性を注ぐお姫様だ。

 それはそれとして、クレアは大河の後姿を見て呟いた。


「それにしても…大河は何故背中に無数の足跡をつけているのだ?」


 …大河はとり憑かれているのかもしれない。



こんにちわ〜。
うわぉ、レスが30超えた!
ご声援、ありがとうございます!
やっぱりエロが混じってる時は多くなるなぁ…。

書き始めた時は、こんなにレスを貰えるなんて思ってもみませんでした。
自分でも、精々カエデの辺りで息切れして止めてしまうんじゃないかと思っていたのですが…。
これも皆様の暖かいレスのお蔭です。

それではレス返しです!
レスへの返答は、纏めて書こうとせずにちまちま書いておいた方がいいですねー。


1.ゴッド様

ネコりりぃ、やっぱり人気がありますね…。
また可愛がってあげなければ(邪笑)


2&21.3×3EVIL

堕落じゃなくて墜落ですか。
某究極超人と同じで、こっちの方が似合いますね。

リリィの調教は、エロゲで言うと一番面白い所ですねぇ。
ダメだダメだと思っているのに、結局流されて悶えるリリィ…。
………………………………すいません、ちょっと悦ってました。

ちなみに時守は、ふみこたんが光太郎をダシにして小夜タンをからかっているのを見るのが大好きです。


3.サイサリス様

やってしまってから何ですが、アザリンはマジで扱いがムズイっす。
彼女は当分王宮に篭って手回しやら何やらを続けるので、当分出番は作れそうにありません。
本気でどうしよう…(;-д-)


4.大仏様

おお、クリアされましたか。
確かにロクに使った事も無いキャラを使って、破滅の将と一騎打ちはキツイですよね。
時守は接近戦タイプなのでカエデは割と楽にこなせましたが、ベリオとブラパピが…。

ブラパピは姿は見せてないから大丈夫ですよ〜。
正直、会議にブラパピ乱入はちょっと強引だと思ったのですが…他にネタが思いつきませんで。

例え律儀でも、あの触手は敵! 敵! 敵!
我らがツンデレに何をし腐るか!!


5.竜神帝様

あのシンジに、ネットワークの仕事が務まるんでしょうか…相当鍛えなおさねば。
どっちかと言うと、カヲル君とかエヴァンゲリオン本人かもしれません。
または、誰かがコッソリ世界に入り込んで、ネルフやゼーレの知らない所で暗躍していたかですね。


6.ディディー様

そう言っていただけると幸いです(^‐^)
本当は一話ずつ区切ろうかと思っていたんですが、上手く行きませんでした。
まぁ結果オーライという事で。


7.K・K様

白のコンビは精神的に完敗していますが、その分白の主が物理的に一人勝ちしてますから、バランスはとれているのでは?

確かに人生何が役に立つか解りませんが、それを言われてもリリィは虚しくなるだけでしょうね…。
仲間達全員?
多分やりますよ。
と言うか、ネコモードにして床に放り込んだら自然の成り行きでそうなります。

デートイベントなら、多分あと2章ほど先ですね。
2度目の遠征から帰ってきた次の章でしたから。

パラダイム・シフトは新宿少年探偵団で当たりです。
丁度いい設定だと思ったもので、ついでに引っ張ってきました。

装飾品…その手がありましたか……。

では、オギャンナラ!


8.神曲様

まだカエデとリコにはバレていませんから、辛うじて最下層は免れています。
ま、それも時間の問題ですけどね…(ニヤリ)
でもそうなってしまった時より、今の方がある意味萌えるような。

大河のパワーアップは、もう少し先の話になります。


9.試作弐号機様

アザリン様はオリキャラじゃありませんよ。
吉岡平の無責任シリーズの登場キャラで、その可憐さと苛烈さと来たら、時守ごときでは書き切れないほどのお方です。
面白いので、お勧めのシリーズですよ。

戸愚呂之兄……絶対に珍味、いやゲテモノですね。
飲んだらどっかのグルメみたく、内側から食われるのでは?

ネコりりぃは陥落まであと一歩です。
でもプライドとかが邪魔するので、その一歩を中々踏み込めないんですよね。
ヘタに踏み込むと、大河君みたいに頬を張られるのです。


10.沙耶様

まだ萌えてますか?
流石はR&R会長です。

クレアとナニするのは来週ですね。
初っ端から目覚めてもらいましょう(ニヤリ)


11.水城様

海賊の姉御はやはりドムの部下ですから、何処かで顔が割れる危険性があります。
何よりドムが承知するかどうか…。

ええ、アザリン様は扱いにくいですよ!
アニメ版の彼女ならまだしも、真無責任艦長の彼女は半端じゃないッス。
凡人の時守に、彼女のような大器が描けるのか…何とかやってみます。


12.悟様

クレアとアザリン…イイ。
能力的にも性格的にもビジュアル的にもイイ…。
扱えるかどうかはともかく、このコンビを製造できただけでもアザリンを出した甲斐はあったと思いたいです。


13.くろがね様

あ、アンドロイド…なんて居ましたっけ?
破滅のゴーレムぐらいしか思い浮かびませんが、あんなのと一緒にしたらファンの人にリアルで殴られそうですね。

無責任艦長は…一応居ます。
でも出てくるかどうかは解りません。
彼もアザリン様と同じで扱いにくそうですから。


14.アレス=アンバー様

ネコりりぃを学園長が見たら…?

1.呆れる
2.自分も混ざる
3.母乳を与えようとする
4.その他

さあ、どれでしょう?
取り合えず1は除外、ですかね…。

イムニティはもうあの頃には帰れません。
でもまだ帰ろうとしています。
…ムダなのに。


15.竜の抜け殻様

ドム繋がりでも、あっちのドムは…。
ジェットストリームアタックはやらせてみたいです。
でも、アレって人間がやるにはちょっとキツイよーな…。
いや、そうでもないかな?

! そーだ、何もガン○ムや人間にやらせる必要は無いんだ!
集団戦闘という恰好の舞台があった!
ちょっと応用を利かせれば…。

イムは萌えよりもヘッポコに進むかもしれません。


16.皇 翠輝様

イムはとっくにフツーの道を外れています。
ええ、大河と契約した時点でもう落下しはじめてますから。

リリィは強情だからこそのツンデレでしょう。
あっさり全面降伏してもらっては、時守が楽しめませんからねぇ…ケケケ。


17.悠真様

リリィは最後まで逃げ続けているつもりで居てもらおうと思います。
でも実際はお釈迦様の手の上、というかむしろ穴の中で壁に沿って回り続けているだけですが。

知らないネタがあるのは仕方が無い事ですよ。
無知なのではなく、単に時守が無節操なだけです。
むしろ全部把握している方が驚きです。
何せ時守自身も知らないネタが時々紛れ込んでますから。

大河はしっと団を率いるどころか、付け狙われると思いますが…。
女性関係を暴露しなくても、救世主クラスという高嶺の花園に一人だけ公認で存在する。
これだけでしっと団には敵でしょう。


18.Rin様

はい、その玖珂光太郎です。
神をもぶっとばす、時守が知る限り最も単純で最も熱血で最も気持ちがいい主人公です。


19.カシス様

パコパコには指揮を取る他に、大掛かりな作戦を提案してもらいました。
彼の強運があれば、多分何とかなるでしょう。

リリィのネコ化は未だ進行中です。
本人が楽しいと思っているかは別ですが…。
イムはもう完全に愉しんでいます。

オリジナルの敵か、ガルガンチュアとは言わないまでも、無限召喚陣みたいな大技が必要になってきますね。
一つ二つ案はあるのですが…。


20.神〔SIN〕様

無事に読めましたか!
何はともあれ良かったです。
えーと、最初に聞かれてから2週間くらいでしょうか?

出来れば読んだ後の感想を軽く聞かせてください。

ムドウもシェザルも、そこそこギャグ…とは言わないまでも、マヌケなキャラになってもらおうと画策中です。
薔薇は…ちょっと勘弁…(汗)

カエデの里の上様は、ムドウを差し向けたわけではありません。
単にムドウが偽って入り込んだだけです。
シェザルの父とリリィの世界の破滅…。
条件が揃えば…どちらか一方は出来る…かもしれませんが、ちょっと難しいです。


22.なまけもの様

ルビナスにも紹介を頼みはしましたが、やはりダリアの方が連絡は容易に付きます。
ルビナスも忙しいし、一介の教師ではそこまでのコネを作るのは難しいですから。

アザリン様は、攻略対象には入っていません(キッパリ)
だって時守はタイラー×アザリン様派ですから。
ユリコさんをどうしようか、本気で悩んでいます。
タイラーの性格からしたら不倫させるのも難しいし、かといって彼女を出さずに挿げ替えるのも何だか抵抗が…。

パラダイム・シフトは太田忠志の「新宿少年探偵団」です。
映画にもなりましたけど、アレは…(汗)

ネコりりぃ、相変わらず好評ですね。
さて、次はいつ出せるやら…。


23.20face様

銀河のアイドル皇帝…言いえて妙ですね。

一番最初に接したのが無責任三国志でしたけど、流石にちょっとイメージできませんね…。
タイラーはそろそろ逝きそうな爺様でしたし。(年甲斐を感じさせなかったけど)
次に見たのがアニメで、次が真印の小説です。

バラバラで申し訳ありませんが、作中に登場する彼らの姿は、アザリンとタイラーが真印、ドムはアニメです。
でもタイラーに関しては迷っています。
やっぱり彼とアザリン様の姿はセットにしないと…。


24&27.黄色の13様

そうですね、同一存在って事でいいんじゃないでしょうか。
流石に本人じゃありませんし。

Aがセンチネル……言われて見ると納得できる物がありますねぇ。
しかし、Aはセンチネルにしては世界に関わりすぎかもしれません。
センチネルは誰とも、何とも深く関わらず、糸が切れた風船のように世界を旅するそうですから。


25.砂糖様

コンペイトウ…どっちにしろ偏食になってますな。

イムをルビナスの後に回すと、彼女が落ちるのは半端じゃなく後になってしまいそうです。
体の完成がもうすぐとはいえ、それは時間的な話で、話数にすると軽く5、6話先…。
そんな先まで待てますか?

魔導兵器異常の破壊力、か…。
いっそ“破滅”と戦う時に、空中に彼女のネコスーツ姿でも映し出してみましょーか?
案外効果があるかもしれません…リリィのバーサーカー化のオマケ付で。

クリアされましたか…おめでとうございます!
パパが帰ってくる所も見られましたか?


26.ATK51様

お久しぶりです!
帯変更が必要かどうか、正直判断に迷っています。
18禁な行為自体はやっていますが、直接的な描写はしていない(つもり)ですし、本番は…。

残念ながら、アザリン様は大河とはくっつきません。
タイラーとくっつけるべきか、本気で思案中です。
彼女は不倫するよりも先に奪い取ろうとしそうですからね…。

ネコりりぃの首から下が獣…。
ここで人面ネコを想像しちゃダメですよ?
せめて気ぐるみを…。


28.アルカンシェル様

受験中にこんなの読んでていいんでしょーか(汗)
少しでもリフレッシュになっていれば嬉しいのですが。

ポスティーノに関しては、何の問題もありません。
彼はネットワーク専属というわけではありませんし、乗っているバイクを見せなければ異世界の人物だとは気付かれませんから。

リリィは最終的には、もうちょっとデレてもらいます。
少なくとも、大河の膝枕で丸くなる当たりまでは。


29.鈴音様

先に26人も書き込んでいれば、そりゃ書く事も少なくなりますよね…。
いやはや、凄い人数です。

あのシリーズで時守が最後に触れたのは、立ち読みした漫画のヤツです。
最終巻まで無かったので、続きが非常に気になります。

孤高のイムが死に、今度産まれたのは…萌えのイム? それともマヌケのイム?


30.ナイトメア様

特別に何か考えているわけでもないのですが…電波のお告げに動かされていると、何時の間にかキャラがエライコトに(汗)
波平ダウニーはちょっと弱いかな、と思ったのですが、先にこっちをやるとアフロが読まれてしまいそうでした。

後半の方々は…居るでしょうね、確実に…。
特に突撃する部隊の方々は、本人が出なくてもありとあらゆる世界でしっと団としてその後光を存分に発揮していますから。


31.なな月様

クレアとアルストロメリア攻略はまた別ですよ。
でもアルストロメリアの容姿はどうしようかな…クレアが成長したような感じか、別パターンで行くか…。
クレアが成長したような感じの方が想像しやすいんですけどね。

衝撃のお方と踊りながら指パッチンするあのお人は出してみたいです。
出すならやっぱり敵側ですか…味方の戦力増強しすぎたしなぁ…。

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