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▽レス始

「幻想砕きの剣 6-6(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2005-11-02 21:14)
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 昨日禁書庫でリコと未亜を散々苦戦させ、リコに恐れを為して撤退したイムニティ。
 リコはいつ彼女が未亜や自分に奇襲をかけてくるかと警戒していたのだが、彼女はそれ所ではなかったらしい。
 ロジックの象徴、白の精霊、イムニティは……………………


「…………イムニティ…アナタとは数万年来の付き合いですが…そんな趣味を持っていたとは知りませんでした」


「私の趣味じゃないわよッ!」


 荒縄で亀甲縛りに縛られた上、野外で逆様に釣られていた。


「アナタの趣味じゃなければ何だと言うのです。
 本当にイヤならば、瞬間移動でさっさと抜け出せばいいでしょう」


「出来るんならとっくにやってるわよ!
 でもこの縄に縛られてから、瞬間移動も魔力も全然使えないのよ!
 どうなってんのよ、今度のマスターは!?」


「……アナタのマスターの趣味だったのですか」


 リコが振り向いた時に、イムニティの赤い目が垂れ目に見えたのは逆様になっていたからだろう。
 忌々しげに体を揺するイムニティ。
 しかしその度に体に縄が食い込み、あうぅ、とかひっ、とか悲鳴を噛み殺している。


「……やっぱりアナタの趣味ではないのですか?」


「断じて違うッ!」


 とりあえず、今のイムニティには自分と戦う力はなさそうだ。
 今のうちにさっさと封印してしまおうかとも思ったが、この場で封じ込めるだけの準備は無い。

 リコは何となく空を見上げてみた。
 イムニティを縛る縄がずっと続いている。
 ……どうやら召喚の塔の屋上に細い棒が据え付けられ、そこからイムニティは垂らされているらしい。


「………本当に…アナタのマスターは何を考えているんですか…。
 というか、そのマスターは誰なのですか?」


「ジロジロ見るなぁッ!」


 イムニティはちょっと涙目になっている。
 彼女としても、心底不本意らしい。
 マスターを選んだ事を、ちょっと後悔しているかもしれない。

 リコはイムニティを警戒して、戦闘態勢をとっている。
 縛られて逆さ釣りにされる少女と、それに向かって戦おうとしている少女。
 しかも色違いなだけのソックリさん。
 …………なんと言うか、猟奇的な風景である。


「…本当に…アナタのマスターは誰なのですか…」


 頭痛を堪えつつ、リコは何気なく聞いた。
 が、ふと思い当たって動きを止める。

 そもそもイムニティが開放された時に禁書庫に居た人物は、リコ・リリィ・大河・未亜の四人だけ。
 リコはイムニティと同じ精霊だし、未亜は自分と契約し、かつ救世主になっていないのでイムニティのマスターではない。
 残りの2人は気を失っていたが、その状態でも契約は不可能ではない。
 そしてその2人のうち、こんな事をしそうなのは一人だけだ。


「今まで気付いてなかったの?
 千年の間に、随分間が抜けたわね。
 アナタが今考えた通り、私のマスターは当真大河よ」


「そ、そんな!?」



大河達が守護者と戦っている時のイムニティ…


 ……体の自由が利くようになってきた。
 理由は解らないが、封印が揺らいでいるようだ。
 しかし、今のイムニティは千年ほど封印の中で過す事を余儀なくされ、そのエネルギーも殆ど残っていない。
 この封印を壊すには、誰かをマスターに選ばなければならない。

 イムニティは視界を封印の外に向けた。
 この千年間、殆ど風景に変化はなかった。
 精々守護者が昼寝をしているか、何かの振動で本が落下した程度。
 あとは埃が積もっていく程度である。

 しかし今は、そこには当の守護者と戦う3人の女性と、1人の男が居た。


(……あれは…オルタラね。
 私を封印しておきながら、救世主候補を連れて何をしに来たのかしら…。
 あら?
 あの男も召喚器を持っている……救世主候補なの?
 男なのに?
 実はニューハーフとか…)


 疑問に思っていると、守護者が赤毛の魔法使いと黒髪の弓使いの攻撃で消し飛ばされた。
 そのままへたり込み、バカな話をしている。

 と、雰囲気が変る。
 リコが魔法を使い、救世主候補達の動きを封じてしまった。


(そりゃそうでしょうね…。
 私を自由にする訳にはいかないもの。
 ヘタに近づかせると、封印越しでも私の声が届くかもね。
 それにしても、オルタラは何を考えているのかしら…。
 私達の存在意義を否定しているかのよう…)


 ふと視線を移すと、そこには物陰に隠れて様子を窺っている守護者が居た。
 オルタラ達は気付いていない。
 イムニティは自分を解放できる人物が減るかもしれないと思って焦ったが、どのみち封印の中では何も出来ない。


(ああもう、本当に厄介な封印を……封印………が、解けかけてる?)


 先程もそうだったが、千年間揺るぎもしなかった封印が、急速に弱まっている。
 これなら、封印越しにでも誰かに呼びかける事が出来るかもしれない。


(でも、誰に声をかける?
 ……丁度いいわ。
 守護者が襲いかかろうとしているみたいだし、それを見て決めましょう)


 外では男…大河というらしい…が、恐ろしい事にイムニティの呪縛を破りかけていた。


(……何なの、この男…。
 物理的な力じゃあの呪縛は解けないのに…)


 イムニティは大河に興味を持った。
 男なのに召喚器を操っている事といい、オルタラの呪縛に抗える事といい、先程の戦闘でも充分な戦闘力を発揮していた。
 イムニティが声をかける、第一候補は決まった。

 タイミングのいい事に、守護者が大河達に襲いかかる。
 赤毛の魔法使いが吹き飛ばされた。
 大河が石碑…導きの書に向かって放り投げられる。


(チャンス!
 ……我と……契約せよ……


 イムニティは封印越しに念を放つ。
 正直な話、届くかどうかは5分5分だった。
 軽く空間を弄り、大河とイムニティの意識交感を加速する。
 これで一瞬の間に、そこそこ長く会話ができる。
 それでも声が届き、返答が来るには少し時間が必要だとイムニティは判断した。
 しかし、予想外に早く返答があった。


(………誰だ…?)


(届いた!)


 内心ガッツポーズを取りながら、イムニティは念を放つ。


(我と契約せよ…救世主に相応しき者よ…)


(…契約ったって…俺、印鑑とか持ってないぞ?)


(サインでもOK…って、違うでしょうが!?)


 予想外の返答に調子を乱されるイムニティ。
 ちょっと不安を感じた。
 が、この際贅沢は言っていられない。
 仮に大河がイムニティの意見に賛同しなくても、今はこの封印から抜け出るのが先である。
 例え大河がイムニティの望みを叶えないとしても、今回の“破滅”が終わり、大河との契約が切れたら、改めて自分の目的に沿う人物を見つければいい。


(とにかく落ち着いて………
 契約に手続きは要らぬ…。
 我を受け入れよ………我と契約せよ…)


 口調を作りながら、イムニティは再度契約を迫る。
 が、大河はどうも乗り気ではなさそうだ。


(手続き不要って……なんかスッゲー胡散臭いんじゃが…。
 詐欺の匂いがぷんぷんするし。
 ってか、アンタ誰?)


(………………。
 わ、我は導きの書の精霊…お前を救世主に相応しい者として認める…。
 我と契約せよ………)


(……ん〜…やだ!)


(んなっ!?)


 イムニティは予想外の返事に驚愕した。
 彼は救世主になるために、ここにやって来たのではないのか。


(だって救世主って、怪しい所や疑問がテンコ盛りなんだよ…。
 ヘタに契約すると、後からとんでもない竹箆返しが来そうだしな)


(…その疑問に答えをやろう…我と契約すればな………な、何なのよコイツは…)


 イムニティはすっかりペースを乱されてしまった。
 予想外の返答ばかり貰い、口調こそ維持しているものの、内心は産まれてから一度も無かったパターンに狼狽しきっている。
 今までの救世主候補は、自分達が声をかければ喜び勇んで契約してきた。
 それこそが彼女達の望みだったからだ。
 多少怪しんだ者もいたが、導きの書の精霊が他に行っては堪らない、と冷静な判断も出来なかった。

 確かに大河の指摘は鋭い。
 “破滅”を滅ぼし、世界を救う事を目的に救世主になった者にしてみれば、この契約は詐欺そのものかもしれない。
 イムニティとて、それに心痛めた事もある。
 だが、それが存在理由なのだ。
 彼女は既に割り切ってしまった。


(だからさー、契約書も条件も聞かされてない契約なんか信用出来ないって言ってんの。
 後から魂とか自分の一番大切なモノとか要求されて、それが契約だなんて言われたら堪ったもんじゃないだろーが)


(そ、そんな事を言っている場合ではないだろう…。
 我と契約せねば、守護者を打ち払う事は出来ぬ……)


(む、確かに今の俺達だけじゃムリだが…。
 しかし大体、お前と契約したらどうなるのかだって言ってないじゃないか。
 どの位のメリットとデメリットがあって、どういう効果が得られるんだ?
 そんなんで契約しろって迫っても、まともな人間なら頷かないってーの)


(ええい、どうしろというのだ!)


(そうだな、まずは自分の名前とかを明らかにしろ。
 それから契約書を持って来い。
 勿論契約書はコピーして、オリジナルとコピーをそれぞれが持つんだ。
 お互いに契約内容を勝手に変更されちゃ堪らんだろ?
 最低でもそれだけの条件を満たさねば、契約はしない!)


(………名はイムニティだ。
 契約書は………これでいいのか?
 コピーも署名も判子も今は押せんだろう)


(む、それなら仮契約って事でどうだ?
 お試し期間を一日、クーリングオフあり。
 その位しないと、お客さんは寄ってこないぞ。
 俺の世界では、このくらい常識だ)


(客商売ではないのだが……ま、まぁよかろう。
 死んでもらっては元も子も無いしな…。
 では、これで契約(仮)は完了した。
 主よ、本についている鎖と紐を外せ。
 そして命令せよ。
 そうすれば我は主に従おう…………なんと言うか、どっと疲れたわ。
 こんな救世主候補、見た事も聞いた事も想像した事もない…)


(この鎖か…。
 引っ張れば外れるな。
 よいしょっと………)


 大河は吹き飛ばされて叩きつけられたまま、腕を動かして鎖と紐を絡め取った。
 千年間ずっと巻きついていた封印の鎖と紐が、ズルズルと外れていく。


(ああ、やっと封印を破れるわ…。
 千年ぶりの外の世界……!
 さぁ、残った忌々しい封印を、派手にぶち破って………?)


 封印の鎖と紐が外れ、仮とはいえマスターを得たイムニティ。
 その力で一気に封印を蹴破ろうとしたが、いざとなって動きを止めた。
 封印が完全に消えているのだ。
 鎖と紐は外れたが、最後の強力な封印が残っている筈なのに。


(…どうなってるのかしら?)


(…い……おいイムニティ!
 返事をしろ!)


(なんだ、我が主よ)


 大河に目を移すと、右腕から血を流して横たっていた。
 イムニティからのフィードバックを受けている大河なら、この程度では死にはしない。
 遅くても翌朝までには回復するだろう。

 守護者は完全に消し飛んでしまったようだ。
 何をしたのかは見ていないが、イムニティの力を得た白の主としては、さして難しい事ではない。
 まがりなりにも、もう力をコントロール出来るようになったのは瞠目すべきではある。


(最初の命令だ、あの連中を……ま……れ………)

(主? ……………気を失ったみたいね)


 最後の念を送る前に、大河は気を失ってしまった。
 大河をオルタラ…どうやらリコと名乗っているらしい…が診察し、黒髪の女が介抱している。

 さて、自分はどうするべきか。
 自らの主を救世主に祭り上げるため、リコを殺す。
 それが自分の方針である。
 マスターとなった大河も、命令を残す前に眠ってしまった。
 何か命令されたのは解かったが、声が小さくて聞こえなかった。
 命令が何だったのかは、結局解らず終いだ。


(なら、今からでも自分の方針に従って行動するわ)


 イムニティは導きの書から抜け出した。


「お久しぶりね、オルタラ」




「………と、まぁこういう経緯よ。
 ちなみに私のローブのポケットにあるのがその契約書。
 一日経っても契約解除やクーリングオフの通知が来なかったから、もう本契約になっているわ。
 見てみる?」


「そんな………って、何ですかこの契約書は」


 当真大河(以下甲と記す)はイムニティ(以下乙と記す)が……………(中略)……とするものである。

 細かい内容すっとばすが、時給750円、一日10時間のフレックスタイム制、休憩時間あり、昇進あり、危険手当なし、有給相談に応ず、仕事内容は救世主となった暁にはパートナーとして乙…イムニティを選び、またその後はイムニティと協力して作業に当たる事、その見返りとしてイムニティは大河の命令を聞き協力する………。

 署名欄には、確かに大河のサインが書かれている。
 ついでに、結局作業内容の具体例は書かれていない。
 が、そういう問題ではない。
 リコは呆れた目でイムニティを見た。


「しょうがないじゃない、マスターの世界の契約の常識なんて知らなかったんだから…。
 マスターの世界から、適当に契約書を検索してコピーしてきたのよ」


「…どう見てもバイトかパートの契約書ですね…。
 アルバイト感覚で白の主をやるというのも凄い話ですが」


「せめてもっと大きな取引に使う契約書にすればよかったと思っているわ…。
 最後にマスターが残した命令を聞き取り損ねてアンタ達と戦って、そのお仕置きにこうして吊るされているってワケよ…。
 精霊をふん縛って逆さ釣りにするわ、命令を一つ聞き損ねただけでメチャクチャ怒られるわ…世も末よね」


 逆様のまま遠い目をするイムニティ。
 しかしリコは同情しなかった。
 イムニティのお陰で自分はファーストキスを奪われ舌まで入れられたのだし、それはノーカンとして記憶から締め出すとしても、その前に何度も攻撃を受けている。
 それより何より…大河と契約したのが気に入らない。


「人が目を付けていた相手と契約するからです…。
 トンビにアブラアゲを攫われました…忌々しい…」


 不機嫌になるリコ。
 座った目付きで睨まれて、イムニティのトラウマがちょっとフラッシュバックした。
 慌ててイムニティは注意を逸らそうとする。


「そ、それよりこんな所で油を売ってていいのかしら?
 アナタのマスターと私のマスターは、今何をしているのかしらね?
 赤の主と白の主……並び立つと思う?」


「 ! ! ! 」


 リコは愕然とした。
 が、それはイムニティが意図した驚きとは違う。


「そ、そうでした……大河さんも、マスターと同じ援護を受けている…。
 両者に同じ援護が付いている以上、実力差は埋まっていない!
 つまり、未亜さん達に勝ち目はありません!」


 リコは叫んだかと思うと、身を翻して去って行った。
 物凄い勢いだ。
 瞬間移動するよりも遥かに早い。


「え? え? あ、あのちょっと、リコ? アンタ何を言って…確かにその通りだけど、何だかニュアンスが違う気が……」


「待っていてください大河さ…もといマスター!
 緊急の情報を告げに、私もそちらへ参ります!」


 ………どうやら未亜の命令を破り、情事に乱入する理由を見つけたようだ。
 イムニティに関しては、マスターが恋人同士兼兄妹という事で、争っていないのだから無理にどうこうする必要は無い。
 だからと言って、別に仲良くする理由も無いのだが。

 イムニティは大河と未亜の関係を知らなかったが、夕方に大河にコンタクトを取り、未亜と戦う気は無いと言い切られている。
 リコを見れば未亜の方がどうなのかは予想がつくし、そうなるとマスターの意に背いてまで戦う事もできない。
 冷戦状態、が最も正確な表現だろうか。


「えーっと……リコー、せめてコレ解いてから行ってほしかったんだけど…」


 後には夜空を見上げながら揺れる蓑虫一匹。
 夜風が身に染みる。
 別に風邪など引きはしないが、寒いものは寒い。
 結界を張って他人に見られないようにしてあるが、それは同時に助けが来ない事も意味する。


「しくしくしく…………」


 さめざめと涙を流すイムニティだった。


「あ、流れ星……」


 時は戻って、リコが散歩に出た頃。
 大河の部屋では、ギシギシとベッドが軋む音が響いている。
 艶かしい喘ぎ声が上がり、ベッドの上で絡み合っている人物の律動が一際激しくなった。
 そして行為の激しさは頂点を迎え、二人は体を硬直させた。

 絡み合っていた2人……未亜と大河は、体を弛緩させてベッドに横たわる。
 2人以外にも、カエデとベリオが寝転がっているのだが、こちらは完全に気絶している。


「…お兄ちゃん…なんだか今日はとっても激しいね。
 カエデさんもベリオさんも、もうノックダウンしちゃった…」


「未亜こそもう喋れるのか?
 普段なら一度イッたら、暫く荒い息で恍惚としてるのに」


「んー……ちょっとね」


 そう言いながら、未亜はカエデとベリオを見る。
 色っぽい寝姿…というか気絶しているのだが、色々な所から公共の場で口に出せないような液体を溢れさせている。
 暫く復活しそうにない。


(確かに私もパワーアップしてるけど、相手はあのお兄ちゃん…。
 念には念を入れるべきね。
 2人が復活するまで何とか時間稼ぎして、その後三人で一気に攻勢に出るのよ)


 未亜はカエデとベリオが完全に気絶しているのを確認して、話す話題を決めた。


「ねぇお兄ちゃん、救世主の事だけど…」


「ん?」


「やっぱりね、何かとんでもない役割があるみたいなの。
 ……もし私が救世主になっちゃったら…お兄ちゃんはどうする?」


「……その役割次第だな。
 未亜を守るか、未亜を止めるか、それとも……手を貸すか。
 何れにせよ、未亜と俺が幸せになるように動くさ」


 嬉しそうに笑う未亜だが、どうにも床で話すような事ではないと思う。
 夜伽話には相応しくない。


「そう? そうだよね、お兄ちゃんは…。
 ………あのね…お兄ちゃんに言っておかなきゃいけない事があるの。
 地下にあったお墓の事、覚えてる?」


「…ああ、ナナシの寝床の事か」


「うん。
 アレに何て書いてあったか覚えてる?」


「確か……赤の主、ルビナスって…それがどうかしたのか?」


「…私ね………選ばれちゃった」


 取っておきの秘密を打ち明けるように、未亜は囁いた。
 大河はその意味が理解できなかったのか、未亜をきょとんとして見つめている。


「だからね、その赤の主っていうのになったの。
 ……正確に言うと、選ばれたんじゃなくて成り行き上なんだけど」


「えーと……赤の主? に未亜がなって…」


「細かい理屈は、今はどうでもいいの。
 それよりも………その契約のおかげで、今の私は体力溢れ返ってるよ?
 とっても強いよ〜?」


 未亜の表情は、まるで千年来の仇敵を初めて追い詰め、トドメを刺そうとしている復讐者のようだ。
 大河はちょっと怖くなったが、未亜に馬乗りになられて逃げられない。


「つ、強いって…」


「だからぁ、今までみたいに途中でダウンなんかしないの!
 ふふふふ……苦節数年、黒星4桁以上、ついにお兄ちゃんを屈服させる時がやって来た!
 覚悟はいい?
 小便は済ませた?
 神様へのお祈りは?
 私の下で搾り取られて、安眠を請う準備はOK?」


「む、むぅ…なんだかよく解らんが、俺は誰の挑戦でも受ける!
 ……可愛い女の子限定だけど」


「ムカッ!
 それじゃあ行くわよお兄ちゃん!
 精の貯蔵は充分か!?」


「やったらぁ!」


…………そして約一時間経過…。


「ウ、ウソ……なんで勝てないの…?
 時間稼ぎすら出来ないなんて……。
 っていうか、今日は普段の最高速度をガンガン出してるじゃない…」


「ふはははは、さっきまでの威勢はどうしたんだ未亜!? ほら!」


「あううぅ! お、お兄ちゃん、もう許してぇ!」


「う…んん…師匠…激しすぎでござるぅ…」


「はふ…素敵です……あん、大河ぁ…」


 最初は互角だった2人の戦いは、30分もしない内に大局が決定していた。
 復活しかけたカエデとベリオ・ブラックパピヨンを未亜ごと責めて、また気絶させる。
 未亜だけはリコとの契約の恩恵を受けて気絶しないでいられたが、もう反撃できるような力は残っていなかった。

 それというのも、今日の大河は妙に体力とか精に満ち溢れているからだ。
 今までならフィニッシュにしか出さなかった威力の突き上げを平然と繰り出し、その激しさは過去平均の2倍3倍となっている。
 猛攻を受けて、未亜は完全にやり込められてしまった。


「わははは、許すはず無いだろーが!
 ほれほれ、もう一回イッて来い!」


「ああんっ!
 だ、誰か助けてぇ…!
 し、死んじゃうぅ……♪」


 色っぽい嬌声交じりに叫ぶ未亜。
 助けてと言ってはいるが、もう完全に行為に没頭してしまっている。
 そろそろ理性が飛んできた。

 その時である。


「マスター、ご無事ですか!?」


「「え?」」


 ドアを壊さんばかりの勢いで、リコが乱入してきたのである。
 リコは4Pの現場を直に目撃して、顔色を真っ赤に変えた。
 目を5秒ほどグルグル渦巻きにして、すぐにクールダウンする。


「リ、リコ?
 一体どうした…」


「大河さん、少し黙っていてください。
 マスターに火急の報告を持ってきました」


「……未亜はもう殆ど動けそうにないんだが」


 リコは淡々と言うが、報告を受ける未亜は大河に突かれて息も絶え絶えだ。
 リコを認識しているかすら怪しい。
 が、その辺りの状況をスパッと無視して、リコは未亜に向かって報告する。


「先程イムニティと遭遇し、ある情報を得ました。
 それは大河さんが白の主に選ばれたという話です」


「…あ、バレた?」


「バレました。
 マスターは私と契約して増強された体力を当てにして大河さんに挑もうとしていましたが、大河さんもマスターと同じようにイムニティと契約している以上、そのアドバンテージは無効となります。
 ですから今のマスターでは、決して大河さんに勝てません。
 ………聞いてますか?」


 どう見ても聞こえていない。
 それはリコとて解っているはず。
 大河は黙って状況を見守っている。

 リコが自分に敵対するとは思ってないが、仮にも大河は白の主。
 立場上、そう穏便に話を済ませる事が出来るとは限らないのだ。

 リコは未亜が聞こえていないのにも関わらず、報告を続ける。


「赤の精たる私としては、赤の主のマスターが白の主の大河さんに負けるのを黙って見ておく事は出来ません。
 ですから、私はマスターの手助けをするつもりで駆けつけて来ました。
 ……拒絶が無いという事は、承諾したという事でよろしいですね?
 …そういう訳で大河さん、私も参加させてもらいます」


 電光石火、問答無用のリコの論理展開。
 マスターたる未亜の拒絶がない以上、リコは参加するしないについては自由意志である。
 ついでに言うと、夕方に交渉して未亜に言われた、『今日は諦めて』は緊急事態につき無効扱いになっていた。

 大河としても、リコが参加するのは問題ない。
 というか、実はイムニティとの契約で体力から精から、とにかく持て余しているのである。
 このまま続けたら未亜を壊してしまうのではないか、と心配するほどに。


「ああ、リコがそれでいいなら歓迎するよ。
 俺としても、とにかくこの滾りをちょっとでも発散させたいからな。
 でも、いいのかリコ?
 赤の精が白の主に抱かれて、何か支障とかが出るんじゃあ…」


「…問題ありません。
 マスターが大河さんに赤の主としての契約を譲渡しなければ、どれだけ交わっても大河さんは救世主にはなりません。
 私も別に機能障害をきたす事はありません。
 ですから……よろしくお願いしますね、大河さん……いえ、ご主人様


「……………はっ!?」


 頬を染め、はにかみながら大河を見るリコ。
 無表情だった顔に、今まで誰一人見た事のない恥じらいが浮かんでいる。
 両手を落ち着きなく組んで、目線はあちこちをさまよっている。

 大河はリコに何を言われたか、一瞬理解出来ずに混乱する。

(ご主人様……御主人サマ…ごしゅ…ごしゅじん様?)

 ブオォォッ!!


「きゃっ!?」


 大河の頭から、血だか水蒸気だかが猛烈な勢いで噴出した。
 あまりの破壊力で、大河の理性というか脳の神経が焼き切れてしまったようだ。

 それでも何とか最後の理性を振絞り、リコを見る。


「リ、リコ……ナンだその、ご、ご、ご、ごしゅじん……」


「…(ポッ)
 い、言わせないでください…。
 私のマスターは未亜さんですが、心のマスター…ご主人様は大河さんです…。
 ですから、その…私を………可愛がってください、ご主人様!」


 ブチッ


「リコーーーーーーー!」


「ああんっ!
 ご、ご主人様ぁ!」


 それから暫くは未亜が復活してくる事もなく、リコは大河に散々開発されてしまった。
 夜が更けてくると、カエデとベリオも復活し、何故かいるリコに驚いたが、まぁいつもの事だし、とあっさり割り切って情事に参入。
 未亜は未亜で大河に勝てなかった鬱憤をリコ達に思いっきりぶつけたようだ。
 それでもリコを可愛がる事が出来たので、何とか機嫌が直ったらしい。

 というか未亜さん、初心者のリコを相手に大河とサンドイッチは辛いんじゃないでしょーか。
 いくら精霊でも、後ろのナニかが切れたら辛いですよ?
 せめて馴らしくらいはしてください。


 その淫靡な光景を、ある仕掛けを使って覗き見ていた一つの視線があるとは、誰も気付かなかった。


 翌日の朝。
 大河の部屋のベッドに、計5人の人影が密集している。
 幾らなんでも狭いだろう。
 というか、思いっきり重なって絡まりあっていた。

 それでもベッドの大きさは足りない。
 足りないが、ベッドの隣に何やら青くて手触りのよさそうな液体らしき物が張り付いている。
 リコと未亜はそっちに転がっていた。


「……ん………朝ですか…」


 まず最初にリコが目を覚ました。
 周囲を見回し、裸体が満遍なく転がっている状態を見て苦笑する。
 これでは雰囲気もなにも有った物ではない。

 リコは転がっていた液体から降りて、軽く撫でる。


「…昨日の夜からご苦労様」


 ……どうやら液体はぽよりんのようなスライムらしい。
 固まってベッドの代わりをしていたようだ。
 スライムは『気にしないで』と言う様に、体を軽く震わせた。
 このスライムに意思は無いはずなので、単なるリコの錯覚だろう。
 というか、意思があったらやっていられない筈だ。


「…ふぅ………昨晩は凄かったです…。
 まさか私が体力負けするなんて…大河さん…ご主人様だけじゃなくて、マスター達から房中術の要領でエネルギーを受け取っていたのに…。
 マスターが大河さんに勝てない理由がよく解りました。
 ……まぁ、昨日の私はマスターではなくてご主人様に味方しましたが」


 リコは昨晩の未亜の痴態を思い浮かべる。
 なんとリコは、ファーストキスを奪われた意趣返しに、自ら召喚したスライムを未亜にけしかけたのだ。
 スライム(無性・ぽよりんではなく魔力で動くだけの液体の塊)に纏い付かれて、喘ぎ声を上げる姿。
 中に入れると大河が嫌がりそうだったので、外だけを大河の指示に従って愛撫したが、これがまた効果覿面。
 全身をくまなく撫で回され、大河に内部を嬲られる感覚に、未亜は抵抗も出来なかった。


「……また今度やりましょう、スライムプレイ」


 邪な事を考えつつ、リコは服も着ずに、眠り続ける大河の顔を覗き込む。
 キスをして、大河の上に乗って二度寝を始めた。
 彼女は本の精霊なので、普段はカモフラージュしているが体重は殆ど無い。
 大河が寝苦しくなったり、起きたりする事は無いはずである。


「おやすみなさい……」


 暫く時間が経ち、ようやく大河達は起き出した。
 と言っても、動けるのは大河とリコだけだ。
 残りの三人は昨晩の行為が激しすぎ、腰が抜けている。


「……本当に凄かったですね…」


「師匠…まだ本気を出していなかったんでござるな…」


「あうぅ…腰が痛いの…」


 それぞれベッドの上でぼやく三人。
 動くのも億劫なので、服も着ずに寄り添って布団に潜っている。
 もし誰かが入ってきたら、素晴らしい光景を拝む事が出来ただろう。


「それじゃ、俺とリコは朝飯を取ってくるから」


「ちゃんと鍵をかけて行くので、ご心配なく」


「うん…よろしくね、リコちゃん…」


 大河とリコは、鍵をかけて部屋から出る。
 今はちょうど食事の時間帯なので、寮内に殆ど人は居ない。
 リコは大河に寄り添い、そっと腕を組んだ。
 大河も拒まず、むしろリコに密着する。
 リコは嬉しそうに頬を染めた。


「ご主人様、幾つか聞きたい事があるのですが…」


「ん?」


 リコにご主人様と呼ばれる度に、大河の心が色々と沸き立つ。
 世間体を考えれば止めさせるべきだろうが、そんな瑣末事でこの幸福を捨てられるか?
 答えは否。


(これも有名税というものか…。
 例えフローリア学園生徒全員が嫉妬して闇討ちを仕掛けてこようとも、我が萌えの心で打ち砕いてくれる!
 漢たる者、そのくらいはせねばいかん!)


「あの、ご主人様?
 聞いてますか?」


 大河が心の中で決意を固めていると、リコが少し強く腕を引っ張った。
 それでようやく大河は我に帰る。


「あ、ああ…何を聞きたいんだ?」


「まずは……これからの事なんですけど」


「言うまでもないな…俺が未亜と戦う筈がないだろう?
 いや、別の意味での戦いはやってるけど」


 躊躇いなく言い切る大河。
 それを見て、リコは心底ホッとした。
 これで大河と戦わなくてすむ。


「救世主に関しては……保留、としか言いようがないな。
 昨日イムニティと少し話したんだが、救世主その他の事に関しては話せないんだろ?
 途中で話を中断させて吊るしちまったし」


「はい…申し訳ありませんが、私とイムニティの2人に認められなければ、ある程度以上の事は話せないのです。
 私とイムニティが話せる内容に差はありませんから…。
 そう言えば、そのイムニティは?」


「昨日からずっと蓑虫のままだな…。
 きっと朝日を見て感涙している事だろう」


 まぁ、哀しみというか虚しさの涙も感涙と言えない事はないが。
 流石に哀れになったのか、リコが大河に懇願する。


「そろそろ解いてあげませんか?
 あの縄、何の仕掛けがあるんです?」


「……仕掛け…?」


「イムニティが、あの縄に縛られたら魔力の行使も瞬間移動も出来なくなった、と言っていましたよ。
 ご主人様が何かされたのではないんですか?」


「いや、俺は何も…」


 大河は首を傾げる。
 本当に心当たりは無い様だ。
 実際、あの縄はその辺の雑貨屋から買ってきた物だ。
 特に不可思議な力がある訳ではない。

 リコも不思議だったが、正直それほど興味がある事でもない。


「とにかく、イムニティを開放するのは未亜達に食事を渡してからだな。
 放っておくと空腹で凶暴になるだろうし」


「昨晩のご主人様ほどではないでしょう。
 それと…人前では、大河さんと呼びますから」


「あ、そう……?」


 ちょっと残念そうな大河。
 確かにソッチの方が助かるが、それ以上に失った物が大きい気がする。
 そんな大河を見て、リコはクスリを笑う。
 そして大河の耳元に口を近づけて囁いた。


「そんな顔をしなくても、2人っきりの時には幾らでも呼んであげますよ。
 呼ぶだけじゃなくて、あんな事やこんな事もしてご奉仕しますから……ね?」


 食堂には、相変わらず凄い喧騒が満ち溢れている。
 何度かリコと大河が異常な量を食べていたので、食事を食べ損ねた生徒が結構居たのだ。
 また食い逃しては堪らない、と我先に食堂へ殺到し、普段以上の大騒ぎになってしまっている。
 どの位の大騒ぎかと言えば、食堂の入り口に何度か使われた形跡のある担架が置かれているくらいだ。

 が、リコにはそんな事は関係ない。
 ツカツカ歩いていくと、リコの周りだけ人ゴミが割れた。
 料理長が直々に指名したVIPだけの事はある。
 生徒のうち何人かは迷惑そうな顔をしているが、食堂は戦場だ。
 譲る方が悪い。
 大河もリコに付いて行き、窓口まで行って注文する。


「サンドイッチとスープとハンバーガー、5人前。 お持ち帰りで」


「あとアップルパイとコロッケを一つ」


「………それだけかい?」


 料理長が意外そうな顔をした。
 確かに多いが、大河とリコのコンビを基準に考えると少量としか言いようがない。


「部屋まで持って行ってやらにゃならんのでな。
 あんまり多くても、持ち運びに困るから……」


「誰か病気にでも掛かってるのか?」


「どちらかと言うと過労です。
 昼までには回復するでしょう」


「…ま、そんなら仕方ないやな」


 人のいい料理長は、岡持ち……ラーメン等を配達する時に使うアレ……まで付けてくれた。
 一昨日大河に救われた恩返しもあるのだろう。
 ……どうでもいいが、休暇を取るのではなかったのだろうか。


 朝食を受け取って、自分の分を行儀悪く食べ歩く大河。
 それを嗜めながらも、楽しそうなリコ。
 感情を表さなかったリコが、傍目から見ても機嫌良さ気にしているのを見て、リコのファンクラブが狂喜したらしいがそれは割愛。
 ただレアショット(今後はそうでもなくなったが)を独占しようとした者が何名か出たため、大乱闘が起きたとだけ述べておく。

 大河とリコは岡持ちを一つずつ抱えている。
 一人で二つ持ってもいいのだが、そこは男の見栄とご主人様に対する心遣い。
 2人並んで新婚さんのように歩いていると、闖入者が現れた。


「グッドモーニング、ダーリン♪
 今日も天から降り注ぐ太陽光をソーラーシステムでエネルギーに変えてるみたいに絶好調ね〜♪」


「…ルビナス?」


「……朝っぱらから、えらくハイテンションですね」


 大河とリコの前に立ちはだかったのは、目の下に隈を作っているルビナスだった。
 どう見ても寝不足で、ネジが飛んでいる。
 そんなに仕事が忙しいのだろうか?
 講義にホムンクルスの生成、爆破事件の調査と重なって、ついに限界を迎えてしまったのか?
 リコと大河はそろって一歩後ずさった。


「あん、酷いリアクション…。
 それはそれとして、ダーリンにちょっとお話があるんだけど…リコちゃん、借りていい?」


「はぁ…まぁ、私は……ちょっと残念ですけど、構いませんが」


 両手を合わせて頼むルビナス。
 元マスターの願いだから、断り辛い。

 リコが大河を見ると、肩を竦めて岡持ちを渡された。
 両手に一つずつ岡持ちを抱えるリコ。
 体に対して、岡持ちの比率はかなり大きい。
 ……なんと言うか、小学生のお遣いを連想させる。

 和む絵から強引に目を逸らし、大河はルビナスを見た。


「ここじゃ話せない事なんだよな?」


「ええ。
 私の部屋…というか、研究室に来てほしいの。
 個室は別にあるけど、ここの所研究室でばっかり寝泊りしてたから忘れてたわ…。
 見せたい物があるのよ…」


「体が完成したとか?」


「残念ながら、それはまだ。
 でもホムンクルスに関係する事よ」


「……リコ、後でイムニティと一緒に話がある。
 時間を空けておいてくれ……そうだな、遅くても夕方くらいに」


「解りましたご主……大河さん」


 何の用かと首を傾げながらも、大河はルビナスについていく。
 リコはそれを見送って、未亜達に朝食を持って行った。
 研究科の棟に向かう間、大河は改めて学園を観察していた。

 相変わらず活気がある。
 しかし、所々に翳りが感じられるような気がする。
 先日の召喚の塔爆破事件で、不安が高まっているのだろう。
 …傭兵科生徒が殺気立っているのは別の理由だが。
 まだセルは追い掛け回されているらしい。


「やっぱり“破滅”が迫ってきてるのね…。
 皆不安がってるわ」


「そうだな……いくら“破滅”に対抗するための救世主クラスが居るとはいえ、こういった忍び寄る危機感は如何ともしがたい…。
 まぁ、全然危機感がないよりはマシだけどな」


「危機感がないと言えば、王宮…というか、賢人会議の連中、自分達が死の危険に晒されているって自覚が全く無いみたいよ。
 昨日ミュリエル学園長に聞いたんだけど…」


「学園長に?」


「ええ、時々休憩時間が克ち合うから、一緒にお茶してるの。
 色々と聞かれるんだけど……どうしてかしら?」


「さぁ…で、学園長が何だって?」


「そうそう、王宮の腰が重いって愚痴ってたわよ。
 選定姫は別格として、爺様達は日和見なんだって…。
 今回の事だって、よりにもよってフローリア学園にテロが起きたでしょ?
 同じように、王宮の中にまで入り込んでテロを起こすくらい不可能じゃないって、どうして解らないのかしら」


「解ったら解ったで問題が出るかもな。
 ヒステリーを起こされて、『ワシの警護だけをせよ』とか言われたら、俺はきっとソイツの寝首を掻くね」


「あぁ、言いそう言いそう」


 支配者階級が腐敗しやすいのは、どこの世界でも同じである。
 小を殺して大を生かすのが政治というものだが、自分の命は常に大に属すると考えているからタチが悪い。
 支配者…所謂経営者としてなら余計な出費は抑えるのが当然だが、出すべき時に出費しないのは無能以外の何者でもない……無能でなければ害悪だ。
 平時にはよい経営者であっても、有事の際のよい導き手であるとは限らない。
 有事の際に都合よく使える人材がいるとは限らないから、仕方ないと言えば仕方ないかもしれないが…何れにせよ邪魔くさい。


「それでも、話が解る人が居ない訳じゃないみたいよ。
 賢人会議の中でも、ホワイトカーパス州代表議員の………名前は忘れたけど、貴族のおじさんとか、あと最近領主になった女の人とか…。
 尤も、使える人達に限って発言力が弱いんだけどね。
 いっそ一人も居なければ、賢人会議の権威を徹底して貶めてやれるのにってボヤいてたわ」


「ふぅん…それでも居ないよりはマシだろ。
 ルビナス、今度その人達の名前を聞いてきてくれないか?
 何か在った時の為に、そっちにパイプを繋げておきたい」


「うん。
 でもそう簡単にパイプを作らせてくれるとは限らないわよ。
 その人達も、結局は自分の領地を支配し、守護する政治家だもの。
 他の誰かに被害の皺寄せが出るとしても、自分の庇護下にある民衆を守るのが仕事よ。
 何かを頼むなら、相応の対価を持っていかなきゃならないわ」


「………ホワイトカーパスについては、手はない事もない。
 他に辺境の地を収める領主に関しても、一応ある。
 ……どっちにしろ、邪魔な賢人会議を叩き潰さなきゃならんだろうけどな」


「出来るかしら?」


 そう言われて大河は獰猛な笑みを浮かべた。
 ルビナスは大河を見て、嬉しそうに笑う。
 大河は全力…文字通り全ての力で“破滅”を叩き潰す気だ。
 邪魔をする者は排除し、人類の戦力が最大限に発揮されるようにお膳立てを整えて。
 その足を引っ張る保身しか脳に入っていない連中なぞ、あっという間に葬り去るだろう。


「出来る。
 …そんなバケモノを何度も見た事がある。
 立場は一介の兵士に過ぎないのに、その強烈な存在感で他者を圧倒し、策謀一つで陣営の意思を纏め上げ、圧倒的な武力で敵を殲滅する。
 上層部が邪魔になるなら上層部を傀儡に変え、あらゆる手を使って勝ちに行く。
 それが“人の極み”ってモンだ。
 俺もその極みまで行ってやるぜ。
 ……面倒くさくなって正面突破するかもしれんが」


 不敵に笑う大河は、ルビナスにはとても頼もしく見えた。
 実際には非道な手段を取るのも厭わない、と言っているのだが、この場合は限度を多少超えても許されるかもしれない。


「それじゃあ、今からでも“あらゆる手”を使ってもらおうかな」


「何?」


「まぁまぁ、とにかく来れば解るから」


 ルビナスは大河の手を引いて、自分の研究室に入って行く。
 ルビナスに手を引かれて歩く大河を、何人かが嫉妬の目で睨みつけているが気にしない。


「そう言えば、今日のナナシは静かなんだな?
 普段と違って、下半身もルビナスが制御してるみたいだし」


「ナナシちゃんは、今日はオヤスミよ。
 ……というより、暫く目を覚まさないわ。
 詳しい事は省くけど、ちょっと負荷がかかりすぎちゃったの」


「…大丈夫なのか?」


 大河は心配そうにルビナスを通してナナシを見た。
 ルビナスはちょっと気まずそうに頬を掻くと、研究室の扉を指した。


「ナナシちゃんはこの向こうにいるわ」


「……は?
 え、でも、その体でルビナスと共生してるんじゃあ…?」


「それがねぇ…ここの所、私は忙しかったでしょ?
 元々ナナシちゃんと私の2人で脳を使ってたから、かかる負担が2倍どころか3倍4倍だったのよね。
 そこにここ最近の激務が加わって、とうとう許容範囲を超えそうになっちゃった」


「なっちゃったじゃないだろ!?」


 思わず叫ぶ大河。
 当然である。
 最悪、廃人になる可能性だってあるのだから。


「大丈夫よ。
 まだ余裕があるうちに、手は打っておいたから。
 昨日の夜に……ちょっと、ね…」


 クククク、と笑うルビナス。
 彼女は本気で自分の分身たるナナシを実験に使いかねない。
 ヤバイと感じ、大河は急いで研究室の戸を開けた。
 ただし振動を与えると何が起こるかわからないので、極力慎重に。


「ナナシ!
 ……あれ?」


 大河の目に入って来たのは、怪しげな機材が山ほど置かれているが、それほど怪しくは無い部屋。
 本の類は殆ど置かれていないが、結果レポートらしき紙が挟まったバインダが本棚の一角を占めている。
 本棚の残りのスペースはラベルも張られていない薬品が置かれている。


「えーと…ナナシは……?」


「目の前よ」


 後ろからルビナスの声がかけられる。
 大河の前には、ヘンな形をした人形が置かれていた。
 …なんと言うか、道頓堀辺りで見かけられそうな形をしている。
 これがナナシ?


「その人形に簡易脳を搭載して、一時的にそっちに感覚を移ってもらったの。
 こうすればこの体の脳の負担が軽減されるからね。
 本来ならこの位の負担はどうって事無いんだけど、結構劣化しちゃったから…。
 正直な話、明晰な頭脳を保っていられる時間は余り残ってないのよ。
 だからさっさと新しい体を作っちゃおうってワケね」


「…それで、この食い倒れ人…もといナナシはどうするんだ?」


「ホムンクルスが完成するまでお休みなさい。
 ま、時々目を覚ますだろうけどね。
 ……それで、これが本題なんだけど………ホムンクルスの材料が、一つだけ足りないのよ」


「……それで、俺にそれを摂取するのを手伝えってか?
 このパターンはまさか………」


 大河は使い古されたお約束を感知して、冷や汗を垂らす。
 コレに関しては人助けのようなものだし、放っておけば脳死してしまいかねない。
 未亜も解ってくれるだろう。
 大義名分もあるし、拒む理由はない。


「その通り!
 足りない物は男性の精液よ。
 ダーリン以外のオトコの精に触れるのは私も嫌だし、ナナシちゃんだって『どうせならダーリンのえっちな液から作られて、禁断の父娘プレイを…』とか言ってたわ。
 さっきは『あらゆる手を使う』って言ってたんだから、この位ならお安い御用よね?
 自分で言うのもなんだけど、私達は戦力になるわよ〜。
 …ちなみに無用だとは思うけど…」


「?」


「断るなんて言ったら、これを公開しちゃうからね♪」


 ルビナスが指を鳴らすと、部屋全体に魔力が走る。
 大河が警戒する暇もなく、今度は壁に映像が映し出された。


『リコ〜、もう一回だぞ〜! ご主人様の命令だからなぁ』


『ご、ご主人様の…あんっ、お望みのままに…!』


『お兄ちゃん、私もシテほしい…』


『いやはや、リコ殿が乱れる姿は扇情的でござるなぁ』


『カエデ、アタシ達も絡もうじゃないか…』


「の、のああああぁあぁぁぁ!?」


「いや〜、昨日の夜は凄かったのねぇ。
 それにしてもベリオちゃんがブラックパピヨンだったなんて、意外だったわぁ」


 映し出されたのは、昨晩の宴のクライマックス。
 リコが乱入してベリオが気絶し、さらに未亜が復活。
 そしてリコが未亜と大河のサンドイッチにされる直前だ。


「ど、どうしてこんなの記録してんだよ!?」


「昨日の昼間に、ダーリンの部屋にちょっと仕掛けてみたのよ。
 新発明のテストだったんだけどね……ちなみにダーリンの部屋に仕掛けたのは私の趣味。
 出歯亀って結構楽しいのね」


「いやそういう問題と違くて!
 そこも問題と言えば問題なんだけど!」


 パニックしている大河を面白そうに眺めていたルビナス。
 ルビナスは情事の現場を目撃されて動揺しているのだろうと思っていた。
 しかも乱交、あまつさえ未亜との近親相姦なのだ。
 そりゃ慌てもする。
 だが、やっぱり大河は反撃せずには居られない。


「ルビナスがストーカーだったなんて!」


「ちと待ったらんかいッ!」


 言われ無き……本人にしてみれば……言いがかりをつけられ、ルビナスは声を荒げた。


「どうして私がストーカーになるのよ!?
 マッドとか狂科学者とかの批評だったら甘んじて…というか喜んで受け入れるけど、ストーカーはないでしょストーカーは!
 ストーカーっていうのはね、親しくもない相手を勝手に自分の恋人だとか思い込んで付け回し、留守の間に部屋に入り込んで盗聴器とか隠しカメラとか仕掛け、誕生日には窓にイモリのよーに張り付いて『お祝いに来たよ〜入れておくれよ〜』とか喚く、脳味噌が腐れて正常な判断が出来ない人の事を言うのよ!」


「……お前ソレ、自分を省みて何か疑問を持たないのか?」


「………………?」


 ルビナスは大河が何を言っているのか理解できないらしい。
 大河に言わせると、ナナシとルビナスを足して、その情熱をちょっとダークサイドに傾けたら、そのまんま当て嵌まる。
 が、ルビナスには本当に思い当たる節はない。


「う〜ん…そりゃ確かに脳は半分くらい醗酵しかけてるし、親しくもない相手にヒトメボレして速攻でプロポーズにまで行ったし、盗聴器でも隠しカメラでもないけど勝手に部屋に入り込んで仕掛けたし」


「自覚あるんじゃねーか!」


「でも初対面から3時間程度でプロポーズしに行ったのはナナシちゃんだもの!
 そして脳味噌は腐れてないわ、あくまで醗酵させてるのよ!
 それに新しい体が出来たら、胸を張って『私の脳は出来たてホヤホヤの新品です』と言えるわ!」


「それってつまり赤ん坊か胎児の脳味噌って事だぞ」


「ぐっ……な、何より私は窓にイモリのよーに張り付かないわ。
 ……あら、こうして考えてみると意外と類似点があるわね」


 何故最初から気付かない。
 大河はドッと疲れた。


「でも、こんな可愛い女の子に付け回されるのはイヤ?」


「………微妙な所だな…」


 覗き見されるのはイヤだが、その辺はまぁルビナスも弁えている筈だ。
 今回このような手段を取ったのは、本当に時間が無くなりかけているのと、発明品の実験ついでに好奇心を満たそうとしただけだろう。
 ……存外タチが悪い。


「とにかく、大人しく精液を提供してちょうだい。
 見返りと言っては何だけど、新しいホムンクルスの体に移った後も、私やナナシちゃんを好きにしていいわよ。
 ちなみに体温だってちゃんと人並みだし、ナナシちゃんと揃って性器は極上品、更にオプションパーツが色々と…」


「オプションパーツ?
 と言うと、地下で言ってたドリルやら光線やらか?」


「その通り。
 そうそう、ナナシちゃんたっての希望で、ナナシちゃんボディはアタッチメント方式になっているわ。
 腕が外れたり頭が外れたりっていうのも、本人からすれば結構便利みたいね。
 もう引っ張っただけじゃ取れなくなってるけど」


 大河の目がキラーンと光った。
 条件としては悪くない…というか最初から最後まで不都合など全くない。
 ルビナスの事だから、やると言った以上は……悪ノリしつつも……実行するだろうし、そうなると彼女達のカラダがどうなっているのか、興味が尽きない。


「……いいぜ、乗った。
 でもこの映像記録は…」


「言われなくても全部消すわ。
 誰かに流出したら、大変な事になるからね。
 一人一人の記憶を消すのは面倒臭いわ」


「いや、徹底的にプロテクトをかけて、俺にくれ。
 そしてこれを撮った機材もくれ。
 ハメ撮りするから」


「…………チャレンジ精神って素敵♪」


 そのチャレンジ精神は、研究室で自分が出演しているAVを鑑賞しながらアナタを抱く事も含まれているのでしょーか?


 その後、小一時間ばかり経過。


「うん、この位でいいわ。
 ……不完全燃焼みたいね?」


 頬を紅潮させて、ルビナスはビーカーに並々と(!)入った精液を満足げに見た。
 流石に恥ずかしそうだが、何とか取り繕っている。


「そりゃぁな……一回も入れさせてくれなかったし」


「ちょっと力を入れて抱きしめただけでポロッと取れる体を抱ける?
 体温は人並みになっても、今の体の頑丈さが変る訳じゃないものねぇ…。
 ああ、それにしても口が疲れたわ…」


 ルビナスとしても最後まで行きたいのは山々だったが、生憎この体は本当に脆い。
 頑丈さだけなら目を見張るものがあるが、それ以上に体のパーツの連結部分が弱い。
 風化するだけならまだしも、1000年間ほど地下で過していたのである。
 万が一、危険な菌とかが付着していたら洒落にならない。
 体の外側や口くらいは洗う事が出来るが、さすがに秘所の奥まで洗浄は出来なかったルビナスだった。


「……それにしても、やっぱりダーリンはこういうのが好きなのね…。
 また大きくなってるわ。
 処女の私でも……疼いてきちゃいそう…」


 トロンとした目をするルビナスは、とてもとてもマニアックな格好。
 白い白濁に塗れた服が床に放り出され、彼女が纏うのはたった一枚の白衣のみ。
 あまつさえ白衣の間から覗く褐色の素肌にも、イロイロと大河が発射した液が垂れた後。
 ちなみに靴は履いたままだ。

 ルビナスは大河の剛直をまた擦り始めたが、ふと我に返った。


「いけないいけない、早くコレを保存しなくちゃ…。
 ダーリン、残念だけど続きは体が完成してからよ。
 ナナシちゃんと一緒に奪ってね♪」


「おう、楽しみにしとけ!
 ……参考までに聞きたいんだが、それはどうやって保存するんだ?」


「フツーに冷蔵庫に入れておくだけよ?
 この冷蔵庫は特別製だけどね」


 大河はちょっと想像してみた。
 …顔色に縦線が走る。


「……俺しばらくヨーグルト食べたり牛乳飲んだりできない」


「デリケートねぇ…昨日のエッチじゃ、ゴックンした後の口にもキスしてたじゃない」


「本当によく観察してやがるな……気分が盛り上がってる時は違うんだよ。
 後で口を洗っとけ、クールダウンしてきたら色々と気になってくるから」


「そんなものかしら…」


 ルビナスは首を傾げながらも、特製冷蔵庫にビーカーを入れた。
 そのまま食い倒れ人…もといナナシを部屋の脇に退かすと、今度は机に向かった。


「それじゃあ、私の用事はこれだけだから…。
 これから本格的にホムンクルスの生成に移るわ。
 暫く遊べなくなるけど、時々でいいから会いに来てね。
 私もナナシちゃんも待ってるわ……ナナシちゃんは眠りっぱなしだけど」


「ああ、頃合を見計らってな。
 それじゃ、頑張ってくれ」


 大河はルビナスの部屋を出る。
 時計を見ると、結構な時間が経っていた。
 考えてみれば、殆ど朝食を摂っていない。
 それに加えてルビナスと運動。
 大河はかなり消耗してきた。


「…とにかくメシだな。
 部屋に帰ると未亜達の相手で食事どころじゃなくなりそうだし…。
 しょうがない、そろそろ空いてきてるだろうから食堂に行くか」


 大河は食堂に向かって歩き始める。
 しかし、何かを忘れているような気がして仕方ない。
 リコに時間を空けておいてくれと言ったが、それは夕方までの話。
 考えてみれば集合場所を決めていないが、まぁ屋根裏部屋で決まりだろう。
 いざとなったら、マスター権限でイムニティに探させれば………。


「あ、イムニティ開放するの忘れてた」


「…太陽が眩しいわ……。
 …………はぁ…私って不幸…あん、でも、こ、この縄の感触は…?
 なんなの、このキモチ…………」


 白の精霊は、存在意義に反するナニかに目覚めつつあるっぽい。


 食堂にたむろする人数は、大分減っていた。
 そのお陰で、大河はあっさりと注文する事が出来た。
 顔を覚えていた料理長に多少訝しがられたが、首を突っ込まれるような事でもない。
 定食を受け取って、さあ食べようとした時に大河は珍しい人を見かけた。


「………ダリア先生?」


 最近学園でややこしいあだ名で呼ばれているダリアである。
 ちなみにあだ名とは『乳の母』だ。
 アレに母性本能がどれだけあるのかは知らないが、学園一般女生徒から見れば胸の大きさはそれこそウルトラの母より大きい。
 やっかみ半分で付けられたあだ名だろうか?

 普段のダリアは、学生食堂になど来ない。
 夜中に摘み食いしに忍び込んでくる事はよくあるが、大抵は自分で作った弁当を持っているからだ。
 何だかんだ言っても美人だし、性格に多々問題有れどフランクで親しみやすい教師なのでよく生徒達に昼食の誘いを受けている。
 が、どういう訳か、その殆どは断っているのだ。
 尤も、誘いを受けた時には大抵相手に奢らせていたりする……相手が生徒でも。

 そのダリアが、今日に限って食堂に居る。
 しかも奢らせている訳でも自分の弁当を食べている訳でもなく、そのヘンの生徒達に色々と話を聞いていた。
 そもそも今は休憩時間では無い筈なのだが。


(………考えてみれば、ダリア先生って自由な立場に居るよな…。
 多少の事はミュリエル学園長も何故か容認してるし、何時何処でどんな奇行をしていても誰も疑問に思わない…。
 フリーウーマンってよりは一種のヘンタイなのかもしれんが)


 身も蓋も礼儀もない大河の考え。
 それに反応した訳でもあるまいが、ダリアはクルリと振り返って大河を見つけた。
 笑顔で手を振られたので、大河も仕方なく振り返す。


ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん


 ……乳を揺らさずに移動出来んのかこの教師は?


「おはようぅ〜〜ん♪
 大河君、怪我は大丈夫?」


「ピンピンしてますな。
 というか、実は昨日の昼にはほぼ完治してたんだが」


「あらあら、頑丈さに磨きがかかってるわねぇ。
 前は『ゴーレムに殴られてもタンコブで済みそう』だったけど、『フローリア学園裏の絶壁から紐なしバンジーやっても傷一つ負いそうにない』にランクアップね。
 デュエルセイバージャスティス追加授業風に言うと、『破滅のゴーレム』から『召喚器』くらいかしら」


「メタな発言はヤメレ。
 それはそれとして、珍しいですな、朝っぱらから食堂に来るなんて」


「そおかしらぁ〜?
 私、結構食堂でご飯食べてるわよぉ?」


「そうかなぁ………俺、食堂でダリア先生が一人で食事している所見た事ないぞ。
 精々学生にタカってる時ぐらいだし、それ以外の時は学校の外に食べに言ってるだろ。
 弁当持って………そーいえば、昨日は誰かさんと逢引してたな」


「み、見てたの?」


「ちょっと小用で出かけた時にチラっと」


 少し驚いたというか焦った顔のダリア。
 昨日セルに私物を届けに行った時に、大河はダリアが学園の外の森に入っていくのを見ていたのだ。
 その時はそれほど興味はなかったし、ヘタに後ろを尾けると手痛い竹箆返しを喰らいそうだったので深入りしなかった。
 が、よくよく考えてみれば不自然である。
 昨日は召喚の塔爆破事件の後始末やら対策やらで非常に忙しかった筈。
 如何にダリアと言えど、食事は片手間にやらないと仕事が間に合わないほどだった筈である。
 それがどうして態々、弁当を持って行ったのはいいとしても、何故学園の外の森にまで出ていたのか。
 気分転換にしても手間がかかりすぎる。
 無責任で仕事をしない昼行灯と言われているダリアだが、これでもミュリエルの片腕なのだ。
 仕事を放り出すような真似はしないはず。


(それに……あの時一緒に歩いていた人の肩に、見覚えのある紋章があったような無かったような…)


「ああん、女性のプライバシーを詮索するのはよくないわねぇ」


「詮索してないっての…偶然見ただけだ。
 それじゃあ……ビジネスの話をするか?」


「………何の事?」


 ダリアはすぐに驚愕と焦りを隠して普段の態度に戻ったが、大河はそれを見逃さない。
 もう少し揺さぶってみる事にした。
 ビジネスの話と言われて、ダリアは少し顔つきを厳しくする。
 が、大河はそれに肩透かしを喰らわせた。


「取引だよ取引。
 前に珍酒『微笑念』を交換したじゃん」


「それはビジネスじゃなくてプライベートよぉ〜ん」


「細かい事は気にするなよ。
 ちなみに取引材料は………ダウニー先生のアフロ特集でどうだろう?
 傭兵科を代表とした薔薇の有志達が集まり、あのソウルフルな髪型の秘密を徹底調査した一品だ。
 これでアフロが再生する理由も一目瞭然」


「…………一考に値するわね…」


 ダリアは思わず本気で呟いた。
 彼女もダウニーの事は好きではなかった。
 最近では笑えるシーンを色々と見せてくれるので好感度が上がってきているが、元の評価がとても低い。
 これがあれば、ダウニーをからかう材料には事欠かないだろう。


「ま、その取引は置いておいて……何の話をしてたんだ?」


「うん?
 ああ、一昨日の召喚の塔爆破事件の事よ。
 妙な噂が飛び交ってたからそれとなく誘導したり、学生が調べて出た結果を聞いたりね。
 これも一応仕事なのよ」


「ああ、情報操作っつーか…パニックが起こらないように意識の誘導をしてるのか。
 ダリア先生の割には、凄い仕事やってるなぁ…」


「見直した? 見直した?」


「ああ、見直した」


「おほほほ、私は単なる昼行灯じゃないのよぉ〜!」


「まるで諜報員みたいだ」


「…カッコいいわねぇん」


 さりげなく爆弾を混ぜてみたが、ダリアは動揺を表に出さなかった。
 が、ちょっとだけ下がったテンションが大河に事実を気付かせる。


「………王宮か、それとも頭でっかちの貴族どもか」


「あら、何の事かしらぁん?」


「いや……ダリア先生でなくても、学園に王宮が放ったスパイは居るだろうなぁ、と思って。
 足の引っ張り合いは人類の十八番だし、そうでなくてもお互いに監視する必要はあるだろ?」


「そうねぇん、戦力が一点集中すると、謀反が起きた時に対処しきれないものねぇ」


「………何とか王宮の触覚を探し出してコンタクトを取れないか…」


「接触してどうするのぉん?
 ヘタに正体を知ったら、消されちゃうわよぉ〜」


「何、ビジネスだよ。
 取引するのさ。
 『お前が知らない情報がある。
  このまま調べてもまず得られない。
  教えてやるからクレアに繋ぎを付けろ』ってな」


「………ちょっと待って」


 ダリアは真面目な顔になり、周囲を視線だけで見回した。
 顔を動かさず、周囲を観察しているとは悟られないように。
 その行為自体が、大河の予測が当たっていた事を示していた。

 ダリアは誰にも聞かれていない事を確認して、猛然とスプーンを動かした。
 30秒程で食べきると、何時も通りの態度に戻って立ち上がる。


「ちょっとお願いがあるから、礼拝堂裏手の森まで来てくれないかしらぁ?」


「はいはい、メシ食ったらな………ってオイ…」


 大河の目が思わず横線になった。
 大河の注文した朝食は、何時の間にか全て無くなっていた。
 さっきダリアが高速で食い尽くしたのは、大河の朝食だったようである。
 文句を言おうとしたら、ダリアは既に食堂を出て遥か彼方。
 呆然としている大河に、周囲から同情の視線が寄せられた。
 中には『わかるぞ同士よ』とか言って頷いている生徒が居るのを見る限り、彼女の食い逃げはそれほど珍しくないらしい。


「ううう………メシ…」


 待たせると後が(色々な意味で)怖いので、泣く泣くそのまま森に向かう大河だった。


その頃のイムニティ…


「あ、くぅん………こ、これは…中々刺激的…かも…」


 …手遅れになる前に大河はイムニティを開放するのか?
 それは誰にも解らない………が、もう8割方手遅れって気がする。


 森にて。
 大河とダリアは少し奥まった広場に出た。
 ここなら人には聞かれない。


「それじゃ、改めて自己紹介するわねぇん。
 私はお察しの通り、王宮…というよりクレシーダ王女様直属の諜報員、ダリア………ダリア………だりあ…ねぇ、私の苗字何だっけ?


「いや、俺に聞かれても…そーいえば今まで気にした事も聞いた事もなかったよーな…。
 書類とかはどうしてたんだ?」


「ダリアとしか書いてなかったわねぇ…我ながらよく就職出来たわ。
 というか、ここの人事部ってどうなってるのかしら…」


「………………………………………」


「………………………………………」


「………………とりあえず苗字はスルーしてだ」


「……そうねぇん。
 世の中には苗字のない人だって居るし…。
 とにかく、私は大河君が気付いた通り、王宮のスパイと言っていいわ。
 クレシーダ様直属だから、繋ぎも付けられるわよぉん」


 やっぱりか、と大河は腕を組んだ。
 少し重心を移動させて、すぐにでも移動できる体勢を取る。
 諜報員や暗殺者の類の怖さは、大河は身に染みて知っている。
 カエデのように正面から戦おうとするよりも、罠を張り巡らせ、正体を見せずに戦う“影”達の方がよほど恐ろしい。
 とはいえ、ここはダリアの方が指定してきたポイントの中。
 警戒するのであれば、ダリア以上に周囲に仕掛けられた罠を警戒せねばならない。
 だが、罠というのは発動したらまず防げない。
 発動前に潰すか、発動しても届かない場所にいるかが重要だ。
 どちらも今の大河には難しい。


(チッ、空腹で眩暈さえしていたとは言え、この俺が…。
 相手が“影”だって解ってたのにノコノコ付いて行きやがって、警戒心っつーモノは無いのか!?
 こうなっちまったら仕方ない、ハッタリで乗り切る!)


 ヤケクソ気味に開き直る大河。
 ここで弱気を見せたら、ダリアに付け込まれる。
 ダリアを相手に警戒心を緩めた自分を罵りつつ、大河は胸を張って平常心を装った。

 ダリアもそれに騙される…とは言わないまでも、判断し損ねているようだ。


(う〜ん、この子も諜報員の素質充分ねぇ…。
 ここまで何もせずにやって来たのは減点だけど、昼行灯を装っている私を見ておきながらも警戒心を捨ててない…。
 強い人が持つ慎重さや臆病さを持っているのね……結構な修羅場をくぐって来てるわ。
 今の大河君は……ハッタリかしら?
 それとも何が来ようと通じないっていう自信?)


 試してみたいが、せめて情報を引き出してからだ。
 手っ取り早く行動不能にして、色々と脅迫しながら吐かせるのが尤も効率的なのだが、相手が相手。
 ミュリエルとも互角に渡り合う大河(黒)である。
 例えこの場で屈服させ、反抗しないように物証を握ったとしても、何時何処で何を仕掛けてくるか解らない。
 はっきり言って、リスクとメリットのバランスが取れていない。


「それで、私の知らない情報って何なのぉん?」


「その前にダリア先生がクレシーダ王女直属だっていう証拠は無いのか?
 俺の勘違いや虚偽だったら厄介な事になりそうだしな」


「流石に用心深いわねぇ………そう…だったら、クレシーダ王女様がフローリア学園に来る時、先に大河君に知らせておくというのはどうかしら?
 そして大河君は、私に…何でもいいから、割符を渡す。
 私はクレシーダ王女様にそれを送って、学園に来る時に持って来てもらう。
 情報はその後でいいわ。
 どうかしら?」


「……ああ、解った。
 それで行こう。
 にしても、随分譲歩してくれるな?」


「本当はまだ疑わしいんだけど、私の生徒だからオマケしてあげるわぁん♪
 じゃ、そういう事ねぇ〜」


 大河とダリアの間に漂っていた、緊張感が全く感じられないのに妙に人を萎縮させる空気が消え去った。
 情報は欲しいが、ここで強硬策に出ても意味がない。
 ダリアの諜報員としての表情は隠され、いつもの昼行灯の顔が出てくる。

 ダリアはわざとらしくシナを作った。
 唯でさえ大きな胸が、更に強調される。


「そ・れ・で、私からの報酬の事なんだけどぉん」


「報酬?」


「口止め料って言った方がいいかしらぁ?
 実を言うと、この所忙しい上にイイヒトが居ないのよぉ〜。
 だから……ね?」


 そう言ってダリアは大河に抱きついた。
 大きな胸に大河の頭が埋まり、口と鼻が塞がれる。
 だがそんな事が気にならない程に極上の肌触りを感じていた。


「ほらほら、パフパフ〜♪
 大河君、こういうの好きでしょ?
 初めて会った時にイカされかけてから、実はずっと狙ってたのよねぇ。
 未亜ちゃんが怖くてちょっかい出せなかったけど」


「………フガフガフガ(今は未亜が怖くないのか?)」


「何言ってるのか解らないけど、未亜ちゃんだったら多分大丈夫よぉ。
 他の娘達もね〜。
 ちゃあんと取引材料は持ってますからぁ〜」


 あの未亜を押さえ込み、更にベリオやカエデやリコを納得させる理由なぞあるのだろうか?
 先程のルビナスの時には、時間も無かったし、放置しておく訳にもいかなかったから納得させられるだろうが…。

 まぁ、何にせよ誘われているのに手を出さないなら大河ではない。


「それじゃ遠慮なくこの胸を…」


「あんっ、やっぱりそっちに来るのぉ?
 って、え? あ、あれ? 胸は胸でもそっち?
 やぁん、そこ弱いのぉ!」


「以前揉んだ時にダリア先生の性感帯は把握したもんね♪
 それじゃあまだ見ぬ源泉を探して発掘開始しまーす」


「んっ、うぅ、ふふふふ…。
 もっとよ…もっとして………あんっ、こっちも反撃するからね?
 あら、ついさっき誰かとエッチしてたみたいね。
 むぅ、ちょっと気に入らないから、八つ当たりも兼ねて……えいっ!」


「お? おお? おおおぅ!」


「諜報員には、色仕掛けだって重要な技術なんだからね?
 本職仕込みの夜の技、たぁっぷり味わってちょうだいな」


「こっ、これは凄い……負けずに反撃ィ!」


「ああっ!
 そう、コレよ、このテクニック!
 あんっ! もっと味あわせてぇ!」


 そのまま2時間ほど経過…。


「ふぅ〜、堪能させてもらったわぁ…。
 歳に似合わないテクニック持ってるわねぇ」


「ダリア先生こそ、俺と互角に渡り合うとは…。
 責めと受けのテクニック、堪能させてもらいました」


「息一つ乱さずに言われても、説得力ってものがないわよぉ?
 ま、拷問に対する訓練も受けてるから、ちょっとやそっとじゃ沈まないわよ♪」


 驚いた事に、ダリアは大河の獣欲を受け止めきって見せた。
 大河が受身に甘んじていた事もあるが、驚異的なタフネスである。
 何せルビナスとの行為が不完全燃焼で終わったため、大河の勢いは暴走初号機の如し。
 それでも空腹と昨晩の疲れで能動的な動きが長続きせず受身に廻っていたが、その気になればまだやれる。
 一方ダリアもまだ余裕を残しているが、こちらはかなり汗が出て呼吸も乱している。


「オトコはみーんな私の胸にばっかり注意が行くのよねぇ。
 だから他の弱点を重点的に責められるのは新鮮だったわよぉん」


「ダリア先生こそ、随分フェティッシュなプレイを知ってるな。
 前にやろうとしたら、焦れったいからって途中で強制終了するハメになったんだよな…」


「あらあら、若いのねぇ。
 で、やっぱりそれって未亜ちゃん?」


「ノーコメント」


 大河は服を整えて溜息をついた。
 それをダリアが見咎める。


「あらあら、女との情事の後に、それは無いんじゃないの?
 人によっては侮辱だと思われるわよぉ」


「あ、悪い……って、半分はダリア先生が原因だぞ」


「私?」


 はて、と首を傾げるダリア。
 視線で大河に問いかけるが、大河は無言で両手を組んだだけだった。

 ぐぎゅるるるるるるアオーーンぐううぅぅぅ〜〜

 大河の腹の虫が盛大に鳴く。
 なんか余計な鳴き声が混じっていたきもするが、きっと音源は別だ。

 ダリアは食堂で大河の朝食を横取りした事を思い出し、アハハハと愛想笑いした。
 しかし大河の目は冷たく恨めしい。


「と、ところで大河君はどうして私が諜報員だって解ったのぉ?
 私としては、結構重要な事なんだけど」


 今後も諜報員としての活動は続く。
 その間に、誰かに気付かれるような事もあるかもしれない。
 大河が特別なのではないのだ。
 欠点があるなら、早急に対処しなければならない。


「ん〜?
 だってダリア先生なら興味を示しそうにない資料を集めてたからな。
 しかも飛びっきり重要なヤツを」


「あら、私だってちゃんと仕事はしてるのよ?
 教師も意外と性に合ってるから、半ば本気だったんだけど」


「仕事はしてるだろうさ。
 でも、それを生徒達に見せた事があったか?
 ダリア先生は基本的に、仕事は速攻で、自分だけで済ませてるだろ。
 そして人の前では、決して必要以上の仕事をしている姿を見せない。
 昼行灯を装う為に必要だったんだろうが、ちょっと度が過ぎたな。
 いくら一大事とはいえ、急に情報を集めだしたら不自然に思われるぞ」


「あっちゃ〜〜……」


 大河の指摘に天を仰ぐダリア。
 確かに性急すぎたかもしれない。
 普段が普段だけに、学生達に調査結果を聞いても『ああ、また怠けたんだな』くらいにしか思われないかもしれない。
 が、一度怪しまれるとそうも行かない。
 そしてスパイ行為の対象のミュリエルは、確実に疑い、そして証拠を見つけ出す人間だ。
 そう考えると、見つかったのが大河で本当に助かった。


「う〜ん…どうしようかしらねぇ…。
 もうちょっと情報収集したかったんだけど…」


「それならセルを窓口に……っと、そう言えば今はアイツ学園に居ないんだっけ」


「あら、セル君なら今朝見かけたわよ。
 門からコッソリ、周囲を警戒しながら入って来てたわ。
 どうしたのかしら?」


「ああ、それは大した事じゃない。
 じゃあ学生の噂はセルから聞いて俺が纏めておくよ。
 他にも何人か、噂に聡い生徒も知ってるから」


「じゃあお願いするわねぇん。
 ……それじゃあ、その報酬だけど…」


 ダリアは目を細めて、大河の股間に目をやった。
 思わず隠す…なんて事はせずに、むしろ仁王立ちする大河。
 おかしな趣味に目覚めなければいいのだが。

 ダリアはそれを見て淫蕩な笑いを見せる。


「今後の口止め料も込みって事で、報告に来る度にエッチで良いわよね?」


「報告の頻度がどのくらいになるかは解らないけどな」


 2人で顔を見合わせて笑う。
 と、その時大河の腹が再び鳴った。


「悪いけど、俺はそろそろ行くわ。
 メシを食わないと、本気で錯乱しそうだ」


「2人でモーニングコーヒーとは行かないわねぇ。
 そうそう、未亜ちゃん達に関しては、明日までに私が説得しておくわ。
 だからそれまで黙っててくれない?」


「それは別にいいけど……大丈夫なのか?」


 満面の笑みで頷くダリア。
 聊かの不安を感じる大河だったが、ダリアを信用する事にした。
 ダリアをその場に残して、今度こそ食事をしようと歩き出す。


「じゃ、お願いねぇ〜♪」


 ダリアの暢気な声を聞きながら、大河は森を後にした。


 その頃のイムニティ


「はぁ…はぁ……はぁ…か、体が……疼いて…痺れるの…。
 し、白の……精霊…なのに………。
 マスター…早く……来て…私を……見て…」


 ………もう完全に手遅れかな。



………ふ。
ふふふふふふふふ終わったー!!!
大学祭が終わったー!
寂しいよーな嬉しいよーな眠いよーな、複雑な心境ッス。

かと思えば、今度はゼミを決めて就活か…時の流は早いですのぅ。
うかうかしていると、あっという間に四年生になってしまいそうです。
とにかくスーツを買いに行かなきゃ。

でもとにかく時間は少しは空いたし、また二次創作に戻れそうです。
丁度書き溜めしていたのが尽きそうだったので、ギリギリセーフでした。


それではレス返しです!
ああ、眠気でテンションが低い…。

1&2.悠真様

暴走リコはともかく、泣きリコの反応はちょっと怖かったのですが、一安心です。

ダウニーにはまだ色々と苦労をしてもらう予定です。
ですが、それが却ってパワーアップに繋がるかも…。
だってアフロになった時点でパワーアップしまくってますし。

3.神曲様

しっとの心は父心、押せば命の泉湧く…と。
仙人になるくらいは可能でしょうね、だってしっとに駆られてギャグキャラに堕ちたら普通に不老不死となりますから。
ええ、ちょっとした不思議アイテムを引き寄せたり、新能力に目覚めた所で何ら不思議はありません。

4.悟様
お褒めの言葉、ありがとうございます。
と言うか、神とまで…実は投稿する1時間くらい前に4コマを見て思い出し、急遽付け加えたのですが…大当たりだったようですね。


5.竜の抜け殻様
ああ、あのイラストですか。
あの絵はいい絵ですね!
少々生意気そうな表情がなんとも…。
あそこのSSを読んで、時守も書き手に回る事を決意しました。


6.黄色の13様
そう、正にその人です。
でもタイマンを張ったら、周囲一帯が廃墟に変る気が…。


7.ディディー様
神を倒すしっと……恐ろしいしっとですね。
きっとしっとの父を超え、しっとの神として名を残す事でしょう。

やはりダウニー達には、次善の策があったと思われますか。
何事も計画通りには行きませんし、そもそもイムニティが“破滅”の軍団に味方できたのは、未亜が契約の事を覚えていなかったという偶然のせいですからね。
恐らくイムニティが接触してきてくれるのは、「そうなれば理想的」程度の事だったのでしょう。


8.竜神帝様
あくまで殆ど、であって完全にではないんです。
なぜなら彼らはフンドシ一丁になっていない。
………何時の日か、フンドシ一丁になって最上級呪文を使わせてみたいと思います。


9.K・K様
イムが垂れ目に見えたのは、単に逆様だったからです。
ちょっとしたヒントのつもりだったのですが…。

赤の主に関しては、実はちょっと気付いていたりします。
リコがあれほど暴れてパワーアップしたのは、未亜から流れ込んだエネルギーの影響。
そのエネルギーの主がいったいどんな人物なのか、戦々恐々としているイムニティでした。


10.くろこげ様

召喚しません…今はまだ。
その前に登場させたいしっと団の特攻部隊がいるので、召喚するならその後です。


11.神山 武大様
ギャグキャラはまだ増えるかもしれませんよ。

おかしいですねー、よろず小ネタ掲示板に入って、その中に幻想砕きの剣があるはずなのですが…。
注意書きとか、ちゃんと読みましたか?
それで読めないのなら、時守にはもうお手上げです。


12.鈴音様
考えてみれば、あの本も謎ですね…。
いくら殴っても神の必殺技喰らっても、戻っていくだけで破壊されない…。
ある意味不死身かも。

学祭はいかがでしたでしょうか?
時守は目一杯愉しみました…正確に言うと腹一杯ですが。


13.水城様
精霊の体質…というより、性質の変化。
では、大河と契約したイムニティは…?

むぅ、ルビナスの本格始動ですか…次の次の章あたりで一応予定はあるのですが…。
そこに行くまで、また時間がえらくかかりそうです。


14.砂糖様
暴れながらリコれーざー……あかん、どうしてもデコれーざーになってしまう(笑)
というかむしろ太陽拳?
しかし、よっぽど印象深く決まってしまったのですね…リコのイメージが…(汗)

赤の主にして嫉妬レディー…そしてその従僕のリコの立場は…?
嫉妬レディー2号?
それともブレーキ役?


15.アルカンシェル様
ファフレル様もアルカンシェル様だったとは…全く気付きませんでした。
余程疲れておられたのですね。
お体をお大事に…。

イムのマスターの予想は当たったでしょうか?
イヌミミはまずカエデに付ける予定です…ただしかなり後に。


16.大仏様
ああ、あの台詞ですか。
入れたいのは山々だったのですが、ちょっとリズムが崩れそうだったし、何より台詞の細部が思い出せず涙の断念…。
今度撃たせる時には、ちゃんと言わせましょう(笑)


17.沙耶様
いやいや、耳血はマズイでしょー。
せめて頭血に……。

リコの「作戦成功、です。ブイ」は、星野ルリをイメージして書きました。
少女時代に、無表情なままでチョキを突き出すような感じで。

そーか、もっとやっていいのか…未亜に対するリベンジはスライムプレイで果たしたとして、今度はナニをしよう…。


18.カシス様
学園祭、愉しんできましたよー…主に腹と舌が。
セルはレギュラーキャラですが、ギャグキャラですからねぇ…しっと団でも充分勝てます。
でも、暫くはセルは逃げ切る予定です。
ちょっとした伏線……かな?


19.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます、後で直しておきます…<m(__)m>

巨大怪獣になって暴れるリコ……何故だろう、戦闘機とか次々に撃墜しているのに、和む絵柄しか浮かんでこない…。
無表情のまま、バタバタ腕を振り回してビルを壊そうとしたり、その辺に放置された出店の匂いをかいで鼻をヒクヒクさせたり…。
うん、やっぱり和む。


20.なな月様
エネルギータンクが無くなると撃てなくなる…ならロールが外れたら?
目からか口からか、はたまたデコからか。

傭兵科は危険です…トロワ・バートンより危険です。
でも重要な戦力だから、学園長も迂闊な事はできません。
結局、傭兵科は天蓋邪境にどんどん近付いていく事に…。

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