「どうした?お前たち」
かおりが不思議そうに聞くと二人は申し合わせたように同時に口を開いた。
「「敵がきた」」
その言葉に山瀬姉妹と和美が反応した。
「兄さん」
「俺たちが叩きのめす、みんなは任せたぞ」
「わかりました」
同級生、山瀬千早としてではなく、獅子座の黄金聖闘士・和樹の従者、山瀬千早として頷くと話についてこれないメンバーを立たせる。
「ちょ、ちょっと神代ちゃん、なんなの!?」
「あとでいくらでも説明しますから今は黙ってついてきてください!」
戸惑う玖里子を引っ張る神代の横に立っていた禍々しい鎧が突然襲ってきた。思わず動きを止めてしまった二人と鎧の間に和樹が割って入り鎧を蹴り砕く。
それを合図に会場のいたるところに立っていた鎧たちが動き出した。
聖衣を装着していなくとも黄金聖闘士としての実力を持つ彼ら二人は次々と倒していく。
誰かが警報機を押したらしく観客たちが逃げる物音と悲鳴であたりが満たされる。
「ライトニングファング!!」
地面から噴きだした雷柱が観客を避け、鎧たちだけを貫く。
「さすが、兄さん。僕の技じゃ、周りに影響を与えすぎちゃうし、ね!」
クロードは和樹がうちもらした鎧を確実に倒す。
聖衣を纏っていない彼らの肉体は常人と同じであり、鎧たちの持つ武器を受け止めることができない。そのため、二人は相手の攻撃を見切って避けている。
「ラスト!!」
クロードの蹴りで最後の鎧が砕けた。
「みんなが心配だ!行くぞ」
駆け出そうとした二人の前に石像が立ちはだかった。
「邪魔だ!!ライトニング…」
「どけ!!アトミックサンダー…」
「「ボルトーー!!!」」
二人の放つ雷光にリビィングスタチュー(生きた石像)は一瞬にして粉々に砕けさった。
会場から出た二人が眼にしたのは撃墜されて落ちていく飛行機だった。
――――――――――――――――
「「すみません!」」
「ごめん!兄さん」
千早、神代、和美がそろって和樹に謝る。
今、和樹たちはかおりの部屋にきている。
「すんだことをグチグチいうのは趣味じゃないからもう何も言わないよ」
会場を出ようとしていたメンバーは偶然、連れ去られようとしていた夕菜を見つけ、取り戻そうとしたが、失敗し、さらに玖里子までさらわれてしまった。
「あの鎧たちを操っていた小宇宙…強大なものを感じた……無視できないね。兄さん」
「ああ、辰巳に頼んで俺とお前のパンドラボックスを持ってきてもらおう」
和樹とクロードのようすにかおりが声をかけた。
「おい、式森兄弟!おまえたち何か知っているのか?」
「えい、なにも、ただ俺たち聖闘士が動かないとまずいって事ならわかってますけど」
和樹の口から聖闘士という言葉が出たとき、沙弓の目が輝いた。
「なんです?そのセイントとは?」
「人知を超えた究極の破壊法である小宇宙を身に付けた者、この世に邪悪がはびこるときかならずやあらわれるという希望の闘士!それが聖闘士だよ」
「それが式森兄弟なのか?」
和樹たちは頷いてみせる。
「やつらの小宇宙はかすかですけど感じられます。そこに向かえばいい」
「よし!じゃあいくぞ!!」
「いくつもりですか?かおり先生。小宇宙を操れる人たちに魔法は利かないし、銃を撃っても平気な顔をして避けられちゃいますよ。光学兵器ならもしかしたら当たるかもしれないけど」
和美の忠告にかおりと凜は驚いて目を見開く。
「ついてきてもらわないと、俺やクロードは戦いにかかりきりになるだろうから救出役がいなくちゃなんないし」
――――――――――――――――――――――
身体能力の高いかおり、沙弓、凜が和樹たちとともに行くことになった。聖闘士たちの力を知る三人はだれも反対はしなかった。
「先生、このまま真っ直ぐ行ってください」
「お前たちのそのカン、あてになるんだろうな?」
「カンじゃありません。向うにいる者の小宇宙が僕たちを導いているんです」
ヘリを操るかおりに進行方向を指示すると、沙弓と凜の方を向いた。
「杜崎はわかっているとして、凜ちゃん、間違っても俺たちに加勢しようとなんてしないでよ」
「はい…」
歯切れの悪い返事を返す凜の頭を軽く撫でる。
「おーい!あれじゃないのか」
かおりの声に外を見ると三角マスト船がいた。
「あれですね。俺たち先行きますから、目立たないようにあとから適当にきてください」
「先行くって、飛び降りる気か!?まだ高度が高い、やめろ!!」
和樹とクロードは自分のパンドラボックスを背負うと扉を開けた。
「か、和樹さん!?」
「式森君!?」
止めようと凜と沙弓が動くよりも早く、二人は飛び降りた。
――――――――――――――――――――――
二人は三人の心配をよそに余裕を持って甲板に着地した。和樹たちの存在に気づき、漆黒の鎧を纏った兵がぞろぞろと現れる。
「あの鎧…ティターンだね」
「ああ…」
(なぜティターンが動いている?誰が指示をだしている?)
「どうしたの?兄さん」
「いや、なんでもない!レオ!」
和樹の意思に反応してパンドラボックスから獅子座の黄金聖衣が姿を現し、彼を包む。
「サジタリアス!」
クロードも聖衣を纏う。
「ライトニングプラズマ!」
「インフィニティブレイク!」
幾多もの雷光と光の矢が兵たちを一瞬にして葬る。
「この程度の雑兵いくらきたところで僕たちを倒すのことはできない」
「出てきたらどうだ?漆黒のピュペリオン!黒雷のコイオス!」
二人の前に漆黒の鎧をまとった二柱の闘士が現れる。
「我々を名指しで呼ぶとは獅子座の黄金聖闘士、君はいったい…」
両肘にレイピアの刃を思わせる装飾をされた鎧のコイオスは探るような視線を和樹に向ける。
――――――――――――――――――
和樹とクロードが飛び降りた後、船を囲んでいた結界を無理やり突破して進入したかおりたちは警備の手薄さに警戒しながらも順調に進んでいた。
「大丈夫ですか?伊庭先生」
「あばらがやられたみたい。いちおう平気。
たぶん宮間と風椿は船倉あたりにつかまってると思うんだけど…」
銃声がかおりの言葉をさえぎった。三人はそれぞれ近くにあった物陰に隠れる。足音から一人だとわり、凜が飛び出そうとしたがかおりが手で制す。
「ディステル…」
「カオリ、まさかお前が和樹と仲間だったとはな」
「式森のことを知ってるのか?」
「ああ。和樹は今、神を相手にしている」
「神?あんたいつからそんなもん信じるようになったのさ」
ディステルから視線を外さずにかおりは凜と沙弓に声をかける。
「逃げるよ」
「相手は一人ですよ」
「アイツを甘く見るな!」
ディステルの目が金色に光ったとき、かおりが衝撃波を放った。
「今だ!いくよ!!」
三人が逃げようとしたとき、船が大きくゆれ、そして次に落ちるような浮遊感が襲った。
―――――――――――――――――――――
「ここは我々の戦う場には少々狭いな。場所を移す」
大きな二つの角のあるピュペリオンが跳んだ。
「エボニーボルテクス」
漆黒の竜巻が船を中心に海を円形に割り、フィールドを作る。
「!?なんて小宇宙しているんだ!」
「驚いている場合か!」
クロードに怒鳴りつけると和樹は船から飛び降りる。クロードも慌てて下り、落ちる船を受け止める。
「クロード、お前はそっちの細い方を任せる。俺はあのツインホーンとやる」
「わかった」
船をおろして構える。
――――――――――――――――――――
「神城、杜崎大丈夫か?」
「はい」
「なんとか」
あたりを見まわすが、ディステルの姿はなかった。
ガタンッと言う音に三人は自分の武器を握り、振り返った。そこには青い顔をした夕菜と玖里子がいた。
「夕菜さん、玖里子さん!」
「二人とも何ともない?」
「ナニかされそうになったところを逃げてきたの!ヴィペールとかいう変態がまだ追いかけてきてる、早く逃げましょ!」
「和樹さんはどうしたんですか!?」
「式森なら神様と戦っているそうだ」
あとがき
アーレスです。
次回は戦闘中心で行こうと思います。
それではまた………君は小宇宙を感じたことがあるか!?
レス返し
>D,さん
どちらでもありません。
>ジェミナスさん
それは結構考えています。
>御気さん
次回です。次回明かします(多分)