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「幻想砕きの剣 6-3(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2005-10-12 21:05/2005-10-19 23:30)
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「当真君、どこに行っていたのですか?
 学生は全員寮で待機しているように、と指示が出ているはずですが」


「げっ、見つかった…」


 学園に帰還そうそう、大河はダウニーに見つかった。
 門をくぐったらすぐ横に、まるで大河が帰ってくるのを待っていたかのように待ち構えていたダウニー。
 その目に普段とは違う光が宿っているのは、大河の気のせいだろうか?


「見つかった、ではありません。
 貴方の行為は、戦場で言えば命令違反…重大な犯罪行為と言っても過言ではありません。
 多少の事なら大目に見ないでもありませんが、不審人物がうろついているかもしれない状況で貴方は何をやっていたのです」


 流石に大河も言い返せない。
 アルディアの事を話す訳にもいかないし、いい言い訳も思いつかない。
 むしろ言い訳は事態を悪化させるだけだろう。
 結局大河はしばらく説教を喰らった。


「そもそも貴方という人は………」


 説教されている途中、大河はふと違和感を感じた。
 その原因は一目瞭然で、ダウニーの頭である。
 アフロが無い。
 つい昨日までは確かにアフロだったのに。
 そう言えば、召喚陣爆破を調査していた時もアフロがなくなっていた。


「な、なんです?」


 大河が頭を見つめているのに気付いたのか、ダウニーは少し後ろに下がった。
 その手は無意識にだろうか、頭を抑えている。
 それを見て大河はピンと来た。


「ダウニー先生……カツラってどう思います?」


「ど、どうもこうも………ある程度の年齢になった男性の必須品では?」


「……ダウニー先生、お幾つでしたっけ」


「まだ四十まで行っていませんね…」


 ダウニーの顔から脂汗が滴り落ちる。
 大河の目が鋭くなった。
 獲物を狩る猛獣の目だ。
 言うまでもなく、その目はダウニーの頭に釘付けである。


「そ、それでは今日はこのくらいにしておきます。
 自宅待機の命はもう解かれましたが、一度戻って反省文を書いてくるように。
 それと、傭兵科の部屋には近づかないようにしてください。
 妙に殺気立っていますので、近づくと噛付かれますよ」


「へ〜い」


 ダウニーはさっさと逃げていく。
 その背をちょっと憐憫が入った視線で見送った。

 傭兵科クラスが殺気立っている原因は言うまでもなくセルを探しているからだろう。
 まるで山狩りだ。
 セルが学園から逃げ出したのは大正解だった。

 大河がダウニーの後姿をぼんやり見送っていると、一際強い風が吹いた。


ポロッ

「あ」


 ダウニーの頭から何かが飛んだかと思うと、急に頭が膨れ上がった。
 否、膨れ上がったのではなく抑圧されていた髪が飛び出しただけだ。
 本来なら風に吹かれた程度で飛んでいくはずはないのだが、アフロのボリュームが余りにも大きく、内側からの圧力に対抗し切れなかったのだろう。
 どうやらダウニーは連日爆笑されるのに耐え切れず、非常手段に訴えたらしい。
 一ヶ月以上も耐えたのだから、その克己心は評価されるべきか。


「…やっぱりカツラで無理矢理アフロを抑えてたんだな」


「ああ、飛んで行かないでください〜!
 レビテーション!」


 宙を舞い風に翻弄されるカツラを追いかけて、アフロダウニーは宙を舞った。
 そのまま何処へともなく飛んでいく。
 その日、ダウニーは帰ってこなかったそうだ。


「師匠〜!」


「お、カエデか」


 大河が声をかけられた方向に目をやると、そこには屋根の上を飛んで走るカエデがいた。
 その姿にちょっぴり浪漫と憧れを覚える大河。
 屋根の上を走って移動したり、ビルからビルに跳んで移動したりする姿に憧れを覚えるのは大河一人ではあるまい。
 さすがは本職の忍者、と大河は感心した。


「よっ…と。
 師匠、何処に行っていたのでござるか?」


「ちょっとそこまで、な」


 カエデは大河の前に飛び降りた。
 よろめきもしないカエデの体術に、ちょっと格の違いを感じて対抗心を燃やす。


「どうした?」


「学園長から召集がかかったのでござるよ。
 部屋に居ないから、未亜殿やベリオ殿も探し回っていたのでござる。
 どれ、発見の報告を…」


 カエデは懐から筒を取り出した。
 導火線に火をつけ、上に向けて掲げる。
 大河は興味深そうにそれを見た。


「それはアレか、狼煙ってやつか?」


「そうでござる。
 …本来なら煙を動かして連絡を取るのでござるが、この世界には拙者以外には狼煙による伝聞が理解できる人物は居ないでござるからな。
 ………?
 煙の出が悪いでござる。
 不良品だったでござるか?」


 カエデは筒を覗き込んだ。
 大河は慌ててカエデを引っ張る。


「おい、お前子供の頃に花火を覗き込んで火傷したクチだろ!?
 失明でもしたらどーすんだ!」


「大丈夫でござるよ。
 これは煙が出るだけでござるから、花火のように何かが飛び出すわけでゴォッわきゃあ!?


    ひゅるるるるる…………   ドカーン…


「……………………(゜д゜)」


「……………………(-Д-;)」


 カエデの鼻先を掠めて、火の玉が猛烈な勢いで宙に上って弾け飛んだ。
 ちょっと焦げた鼻先を抑えもせずに、呆然として空を見上げるカエデと大河。
 弾け飛んだ火の玉は、どういう理屈か文字の形になった。
 確かに文字の形に弾ける花火もあるが…。
 カエデも大河も知らない文字だ。
 強いて言うならルビナスの墓に刻まれていた文字に似ているかもしれない。


「……何が…出るだけだって…?」


「…………おかしいでござるなぁ」


 気の抜けた声で話す二人。
 まぁ、これなら大河発見の報告も伝わっただろう。

 それにしても、何をどうすれば狼煙が花火に化けるのか。


「……ルビナス殿に頼んで作ってもらったのでござるが…やはり危険だったでござるか」


「それだ」


 謎は全て解けた。
 多分カエデの説明が不十分か上手く伝わらなかったのだろう。
 いくら彼女でも、狼煙を作れと言われて自作の花火を作る事はない。
 …謎機能をつける事はあるかもしれないが、彼女とて情報の重要さは熟知している。
 情報伝達の道具にまで小細工はしないだろう。
 文字の形になったのは、ルビナスの遊び心だろうか。
 まぁ、失明するような光を打ち上げたりしなかっただけマシというものか。


「……ルビナスに頼まずに、自分で作ろうとは思わなかったのか?」


「火薬の調合とかは、本職に任せた方がいいと思ったのでござる…。
 頼んだら、ついでだから最後まで作ってやると…」


 今後は極力マッドに頼むのはやめておこうと誓う二人だった。


「それはそれとして、学園長が呼んでるって?」


「あ、そうでござった!
 至急学園長室に集合せよ、との仰せでござる。
 リリィ殿には保健室にて伝え、リコ殿は行方不明でござるが……とにかく一旦戻るでござるよ」


「わかった、急ぐぞ」


 大河に合わせてカエデも走る。
 運動神経の塊のような大河だったが、やはり素の状態ではカエデに一歩も二歩も譲る。
 かなりスピードを出しているのに、カエデは易々とついてきた。


「それで師匠、何処に行っていたのでござるか?」


「ちょっとセルが危険な状況になっててな。
 ほとぼりが冷めるまで隠れる事にしたんだよ。
 隠れ家までちょっとついて行ってた」


「セル殿が?」


「心配しなくても、長くて一週間程度でどうにかなるだろ」


 大河は気楽に言ったが、傭兵科クラスの執念……この場合、女無し仔たちの執念か……を甘く見ている。
 特に今回は、中心人物とも言えたセルが首謀者である。
 最悪一ヶ月は続く。


 カエデは首を傾げたが、大河はそれ以上のことは説明しなかった。
 そのまま走るが、途中で足を止めた。


「……何だこの穴?」


「…人の形………でござるな」


 道のど真ん中…大河の前に、大きな穴が開いていた。
 成人男性一人分ほどの大きさで、先程までは無かったものだ。
 大の字の穴はかなり深い。
 心なしか、穴の中から焦げ臭い匂いが漂ってくるのだが。


「……何か落下してきたでござるか?
 しかしこの形は人間でござるよな…。
 普通こんな穴が空くようなスピードで落下したら、体が粉微塵に砕け散るのでござるが」


 そう言ってカエデは空を見上げるが、飛び降りるような場所は何もない。
 周囲の建物の屋根は低く、距離的に道の真ん中に飛んでこれるような幅でもない。
 周囲を見回しても、人間の残骸らしき物体もない。
 もう一度穴を覗き込むと、穴の底で何かが動いたような気がした。

 一方大河は、この穴が何なのか思い当たって冷や汗を流していた。
 大河が帰ってくるまでは存在しなかった穴。
 何もない空から降ってきたらしき物体。
 そして空を飛んでいる可能性がある人物。
 最後に、先程カエデが打ち上げた狼煙改め花火。


「……カエデ、行くぞ」


「は? しかし、この穴の中にはひょっとしたら人が…」


「武士の情けだ。
 見て見ぬフリをしてやれ…」


「は、はぁ…」


 妙に鎮痛な大河に引かれ、カエデはその場から去って行った。


 その暫く後。
 穴の淵に手がかかった。
 穴の中から、何かが出てくる。


「ぬ……ぬぬぬ…」


 真っ黒な髪、溢れるボリューム感、そして薄汚れた顔。
 ……なんだかちょっぴり焦げているダウニーだった。
 ご丁寧にもアフロが完全復活している。


「くっ、何だったのだあの火の玉は…直撃してしまったぞ…。
 お陰でカツラは燃え尽きるわ地面にめり込むわまたアフロが完全復活するわ…」


 ……どうやらカエデが打ち上げた花火に直撃したようである。
 さらに直撃した瞬間に花火が弾け飛び、その衝撃でレビテーションの魔法も切れて超高速で自由落下、見事に地面にダイブを決めたらしい。
 車田落ちとどっちがマシだっただろうか。
 彼の手には、空中で掴んだらしきカツラ…の残骸が握られている。

 とことん運が悪いダウニーだった。


「と、とにかく上がらねば……って、ああぁ〜〜〜!?」

 ボコリ


 ダウニーが手をかけていた淵が崩れ落ちた。
 一拍置いて、穴の底から大きな激突音がする。
 受身もとれずにモロに落下したようだ。


「クッ……ま、負けんぞ……私は負けんぞ………」


 ……彼に幸あれ。


「当真大河及びヒイラギカエデ、ただいま到着いたしました!」


「でござる!」


 大河とカエデは学園長室に駆け込んだ。
 振り返るミュリエル。
 少し目を点にして、咳払いした。


「…大河君がどこに行っていたのかは不問にします。
 戒厳令を破った事は重罪ですが、今はそれ所ではありませんから。
 ……が、アナタ達は何処から入ってきているのですか」


「「窓から」」


「ここは5階ですよ!?」


 そう、大河とカエデは何故か扉ではなく開いていた窓から入ってきたのである。
 聞かれた大河はケロっとしている。
 カエデに至っては何故怒られているのか理解していない。


「そう言われても……。
 拙者の里では、皆このような入り方をするでござるよ?
 急いでいる時には、直接家主の部屋に駆け込むのでござる。
 たまに曲者と勘違いされて死に掛ける人もおったでござるが」


「ここはアヴァターなのよ。
 もう少し常識と礼儀の違いを弁えてちょうだい。
 …それで、大河君は何故?」


「いや、急いで集合って言われたから。
 正面から入って階段上がるよりも、明らかにこっちの方が早いし」


「…校舎の壁でロッククライミングするよりも、階段を登った方が早いと思うのですが」


「ロッククライミングしてない。
 走ってきた。
 垂直に」


 そう言って窓の下を指差す大河。
 ミュリエルが窓から身を乗り出して下を見ると、確かに壁に大河のものらしき足跡がある。


「これぞ忍法、垂直壁昇りでござる。
 師匠が体得しているとは思わなかったでござるよ」


「ふっ、昔は水上歩行や天井に張り付きに憧れたもんだぜ。
 だから軽身巧を必死こいて身につけた。
 飛檐走璧が出来るようになった時は感動モノだったぞ」


 いつぞやのブラックパピヨン戦以来のお披露目である。

 いくら中国拳法の秘術と言っても、5階まで上がってこられるわけがない。
 少なくとも大河はムリだ。
 だから召喚器の身体強化能力に任せて、力技で走りあがってきたらしい。


「……ま、まぁいいわ。
 ただし大河君、貴方はあの足跡を全て消しておくように」


「……アレをですか!?」


「校舎を足蹴にして汚したのです。
 当然の事でしょう?」


「いや確かにそうですけど、一歩間違えれば死ぬじゃん!?」


「落ちたら壁を走りなさい」


 ミュリエル学園長、アンタ大河を殺す気か?
 ……まぁ、落ちたところで下の屋根がへこむだけって気がするが。

 そうこうやっている内に、ベリオと未亜が遅れて到着した。


「揃いましたね。
 当真君、話はまた後で…。
 とりあえず命綱の種類から始めましょう。
 個人的には蜜柑の網がよいのですが」


「おう、絶対に頑丈な命綱にさせるからな」


 ……足跡を落とすのは確定事項のようだ。
 放っておいても、雨や風で流されるので大河は逃げ切るつもりなのだが。

 息を整えるベリオと未亜。
 2人を見て、大河は面子が足りない事に気がついた。


「学園長、リコとリリィが居ないんだけど」


「リリィはまだ保健室です。
 体調不良のまま呼び出しても、意味がありません。
 リコは…発見できないので仕方ありません」


「…どこに行ったんだ?
 普段は待機命令を破ったりしないよな、リコは」


「待機命令自体が普段通りじゃないですけどね」


「リコはダリア先生に探してもらっています。
 それより、そろそろ話を始めますよ」


 ベリオと未亜が落ち着いたのを確認して、ミュリエルは話し始めた。


「今回みなさんを呼びたてた理由は、お願いがあるからです。
 …みなさんにある物を取ってきてもらいたいのです」


「ある物?」


「壊れた召喚陣を元に戻すための魔法書です。
 リコ・リスがいれば、魔法陣自体は何度でも書く事ができます。
 ただし、それは元々あった魔方陣と同じ魔方陣ではありません。

 召喚陣は次元と次元を繋ぐ出入り口のようなもの…。
 言わば橋の両端です。
 片一方が崩れ落ちれば、当然橋は崩壊…とは言わないまでも、通行不能になります。
 崩れ落ちた橋の付け根を修復しても、それだけでは橋はかかりません。
 そして崩れ落ちた橋がどこに繋がっていたか、それが全く解らないのです」


「つまり…魔方陣を修復しても、元の世界との架け橋は修復できない…と言う事ですか!?」


 驚愕するベリオ。
 カエデも驚いている。
 しかし大河と未亜はそれほど動揺していない。


「…落ち着いていますね、未亜さん。
 大河君は神経の図太さが違うからまだ解りますが…」


「ん〜、私は別に帰れなくてもいいもの。
 さっき帰れないって聞いた時は驚いたけど、特に戻る理由もないし。
 平和で楽が出来る世界なら、私はそっちに行ってもいいかな。
 この世界は居心地がいいし、元の世界よりも楽だし、色々と新しい楽しみも見つけたしね…」


 蛇のような目で、一瞬カエデとベリオを見る未亜。
 2人の背にちょっと震えが走った。
 そんな未亜を見て、何やら悪夢を見たような気がするミュリエルだった。
 『新しい楽しみ』とやらが何かは知らないが、彼女は大河に汚染されてしまったらしい。


(若いのに、可哀相に…)


 心中嘆くミュリエル。
 実際には若いからこそ、だろうか。


「ま、実際の所な…。
 俺たちとしては、元の世界よりもアヴァターの方が住みやすいんだよな。
 救世主候補の特権もあるし、何より衣食住にかかる費用が比較にならん。
 “破滅”の事は厄介極まりないけど、死の危険ならどの世界にでもあるし。
 あっちじゃあ勘違いしたバカどもの面を見なけりゃならん。
 あのクソッタレどもが、今更どのツラ下げて未亜にちょっかいだし腐る…!
 その度に猟奇殺人を起こしそうになるんだぞ、俺は」


「え? 殺っていなかったのですか?
 てっきり追っ手が居ないから楽、という意味だと……」


 心底驚いた顔のミュリエル。
 大河をなんだと思っているのか。
 ま、実際埋葬…もとい埋め立てまではやったのだが。


「それはともかくとして、普通に召喚陣を書き直しただけでは、元の世界に帰れないという事でござるな?
 そしてその対策が、今から取ってくる何かにある、と?」


「そういう事です。
 貴方達に取りに行ってもらう物は、『導きの書』という本なのです」


「導きの書…って、神がアヴァターを作り出した記録とか、この世界の理とか、あと救世主について書かれているっていう本の事か?」


「知っているのですか?」


 首を傾げるミュリエル。
 大河は自分から図書館などで資料を探るような事はしないだろうし、教師達も導きの書の事を知っている人物は一握り。
 精々ダウニーや民俗学、それに歴史を受け持つ教師程度で、それにしても御伽噺のようなものとしか思っていないはずだ。
 その御伽噺にも、千年前の“破滅”で失われたとある。


「ああ、リコからさっき聞いた。
 でもあの本は、千年前の“破滅”で失われたんじゃなかったのか?」


「そう、リコから…。
 確かに彼女なら聞きかじっていてもおかしくないわ。

 『導きの書』は失われてはいません。
 この学園の地下にあるのです」


「地下!?」


 ベリオと未亜と大河の脳裏に、ナナシの住居の事がよぎる。
 しかし、大河はリコが言っていた事をもう少し正確に思い出した。


「ああ、確かリコもこの学園の地下にあるらしいって言ってたな。
 確か図書館の地下がどうこうとか…。
 しかし、どうしてそんな物があるんだろーね、この学園は…」


「リコが?」


 ミュリエルは内心首を傾げた。
 存在くらいなら知っていてもおかしくないが、本が学園地下にあるのは機密事項…。
 王宮さえも知りえないはず。
 それを何故リコが知っていたのか。
 リコの姿が見えない事と相まって、ミュリエルはリコに対して疑惑を持ち始めた。
 が、今はそうも言っていられない。
 リコがテロリストというなら話は別だが、ミュリエルの勘はノーと告げている。
 今までの行動にも怪しい点は見られない。


「…リコが何故知っていたのかはともかくとして…。
 貴方達には、その本を取りに行ってもらいます。

 かの本には、召喚士の始祖、ラディアータ・スプレンゲリが書いたと言われる本で、大河君がリコから聞いた通り、世界の成り立ちからその針路、さらに“破滅”と救世主が生まれた訳、そしてどうすれば世界を死の滅びから救えるかが書かれているそうです。
 私も読んだ事があるわけではありませんが、それが召喚陣を修復できる唯一の可能性です。

 かつてこの学園があった場所には、救世主を目指す者が必ず訪れるという神殿があったそうです。
 救世主を目指すものは神殿に必ず辿り着き、導きの書の神託を受けた、と…。
 導きの書がこの学園の地下にあるのではなく、導きの書の上に学園があるのですね」


「でも、どうしてその神殿を潰してまで学園を建てたのでしょうか?」


 ベリオが緊張しながら聞いた。
 しかし流石に素直に答えが返ってくるとは思っていない。
 以前大河が指摘したように、事は国家機密である。
 非常時といえど、そうそう漏らすことはないだろう。


「残念ながら、その資料は残っていません。
 仮に残っていたとしても、王家の特別禁書扱いを受けて、図書館の最奥で埋もれている事でしょう。
 発掘するには、時間が全く足りません。
 私が閲覧を許されている領域よりもずっと奥です。
 選定姫クレシーダ王女ですら、みだりに踏み込む事はできないのです」


 ただ、いくら禁止しても散歩気分で忍び込みそうなヤツが目の前にいるが。
 しかもミュリエルは気がついていないが、大河一人ではない。
 何も考えずに入って行きそうな忍びが一人と、さらに存在を隠している怪盗が一人。
 ルビナスも隙を見て潜入しそうだ。


「その領域よりも下は、導きの書の試練の場となっています。
 『書』は自らを託す相手を試し、その試しに合格した者のためにだけ開かれるといわれています
 そして、試される者……すなわち、救世主。
 だから私やルビナスさんは入っていけないのです。
 ルビナスさんならば入れるかもしれませんが…なにせ千年前の救世主候補生のようですし…入れるかもしれませんが、彼女は現在爆破された塔の調査のために手が離せないそうです。
 召喚器も呼び出せませんし」


 それを聞いて緊張が走った。
 それと同時に、ガチャリとドアが開く音。


「つまり……これは実質的な救世主認定試験ですね、お義母様」


「リリィ!?」


 扉を開けて入ってきたのはリリィだった。
 まだ心なしか顔が青いが、しっかり立って歩いている。


「お前、体は大丈夫なのか?」


「ただの貧血よ。
 いよいよ救世主になれる時が来たっていうのに、暢気に寝ていられるわけないじゃない。
 ここで引っ込んでたら、何のためにこの学園に来たのか解らなくなっちゃう」


「それはまぁ…そうですけど」


 そう言いつつも、リリィはどこか陰って見えた。
 ミュリエルたちはそれを貧血…“破滅”に対するトラウマから来るものだと解釈したが、大河は違った。
 大河の耳に、地下で脅えていた幽霊達の叫びが蘇る。
 おそらくリリィも、救世主に対して疑念を持っている。
 しかし悠長な事を言っていたら、誰かに先を越されてしまう。


「…リリィ」


「はい」


「いいのね?」


「はい!」


 ミュリエルの確認に、迷いを振り切るかのように返答するリリィ。
 ミュリエルは大河たちに顔を向けた。


「貴方たちも、いいの?
 これは今までの試験や訓練とは違うわ。
 何があっても、私達は手を貸してあげられないのよ」


「……はい、先生。
 苦しむ人々のために尽力する事こそ、神が私に示した道ですから」


「拙者は弱い自分に打ち勝つために、もっと強くなるためにここに参った。
 ここで臆していては、何のために参ったのかわからぬ」


 カエデとベリオは即答した。
 未亜はすこし間を置いて、はっきり頷く。


「本当はイヤだけど……“破滅”もアヴァターもどうでもいいから、さっさと安全な世界(元の世界にではない)に逃げたいけど。
 ここで自分達だけ逃げたら、一生後悔しますから」


「未亜がこう言ってるんだから、俺を止めるものはないぞ。
 ま、どうせ選ばれるのは俺だけどな」


「いやいやいや、師匠といえどもこれは譲れぬでござるよ」


「そうです。
 私だって、この役目を譲るわけにはいきません。
 それが大河君でもね」


「アンタみたいなバカが救世主になったなら、文字通り世も末でしょうねぇ…」


「私は別に誰でもいいけど」


 未亜の何気ない一言にリリィはカチンと来た。
 リリィのレーゾンテールとも言える救世主を、誰でもいいとはどういう事か。


「何よそれ。
 随分と投げ遣りじゃないの。
 救世主になりたくないなら、導きの書を取りに行かずにここで待ってればいいじゃない。
 私が取ってきてあげるわよ。

 そんな投げ遣りな気持ちで、私と競おうとするんじゃないわよ!
 私がここまで這い上がってくるのに、どれだけの思いをして、何を踏みしめてきたのかわかる?」


「解らないし、それほど関係があるとも思いません」


 リリィの剣幕をサラっと受け流す未亜。
 血を吐くようなリリィの言葉は、未亜に大した感慨を与えなかった。
 未亜はリリィを正面から見据える。


「私は自分が救世主にならなくても構いません。
 お兄ちゃんが無事で、みんなが元気で、ついでに“破滅”を打ち払えればそれで問題なしです。
 救世主がお兄ちゃんだろうがリリィさんだろうが、はたまたナナシちゃんだろうがどうでもいいです。
 リリィさんがどう考えようと、私は結果的にお兄ちゃんと一緒に居られればそれでいいんです。

 無理に救世主になる必要はありませんけど、誰かが救世主になった時にはサポートします。
 自分が救世主になったら、“破滅”を追い払ってから、お兄ちゃんと静かに暮らします。

 リリィさんが何を超えてきて、何のために救世主になろうとしているのかは知りませんけど、どうして自分が救世主になる事に拘るんですか?
 誰がやっても、“破滅”を追い払って平和になるならそれでいいじゃないですか」


「そんないい加減な事を言って、本当に救世主が務まると思うの!?
 このブラコンを極めた変態妹が……」


「ヤカマシーネコミミ」


「はぐぁっ!?」


 リリィがどれだけ訴えようとも、救世主に関する考え方自体がまるで違う。
 それを自覚しなければ、どこまで行っても平行線だ。
 いい加減論争するのも面倒くさくなった未亜は、リリィのウィークポイントに直撃弾を叩き込んだ。

 このシリアスシーンで予想もしなかった一撃に、リリィの舌端がビキッと凍る。

 ネコミミの一言に首を傾げながらも、頃合と見計らってミュリエルが仲裁に入った。


「リリィも未亜さんも、それくらいにしておきなさい」


「で、でもお義母様!
 神聖な救世主を、こんな無責任で投げ遣りな人に…」


「人の誠は人それぞれですよ、リリィ。
 自分の物差しだけで全てを計ってはいけません」


「それじゃあ、救世主がどうでもいいと言う言葉が正しいというんですか!?」


「ある意味ではね。
 それに、未亜さんは救世主がどうでもいいと言ったのではなくて、誰であろうと構わない、という意味で言ったのです。
 私も“破滅”に対抗できるなら、それが誰であろうと構いません。
 ……大河君が救世主になったら、と思うと聊か別の意味の不安を感じますが」


「だからどうして事在る毎に俺を引き合いにだすかな」


 自覚が有るのか無いのか、それこそ投げ遣りな大河。
 まだ納得していないリリィだが、尊敬する義母の言う事を聞いて引き下がる。


 もう一度リリィを見て、戦闘に支障がないか検分する。

 …顔色は…まだ少し青いが、血の気が戻り始めている。
 ふらついてもいない。
 目つきもしっかりしているし、宿る光も強い。
 先程未亜の一言に突っかかったのは、“破滅”へのトラウマから気を逸らす為だろうか。
 何だかんだ言ってもムードメーカーの大河が居るなら、“破滅”への恐怖も和らぐだろう。
 今のうちに耐性をつけさせておくべき。
 ……問題有りながら、許容範囲か?
 この先、リリィが生き延びる可能性を少しでも上げるための投資と思えば悪くない。

 ミュリエルは無言で目を閉じ、頷いた。


「いいでしょう。
 リコ・リスが見つかっていませんが、発見できないのだから仕方ありません。
 今から図書館に………………」


 言いかけたミュリエルが止まった。
 リコの姿が見えない。
 今回はムリに急いで行かなければならない理由は無いので、リコを発見するまで待った方がいい。
 戦力は多いに越した事はないのだから。

 とりあえず図書館まで行って、その途中にダリア辺りからリコの手懸りがあったか聞くつもりだった。
 が、ふと思い当たってしまった。


(まさか……図書館の地下に!?)


 理由は知らないが、リコは導きの書の存在と在り処を知っていた。
 ひょっとして、導きの書を単独で取りに行ったのか?
 あれで結構責任感が強い一面もあるし、召喚陣が破壊された事に責任を感じて暴走する可能性もある。
 姿が見えないのも、図書館の地下に潜ったからだと考えれば納得が行く。
 鍵が無くても、リコは召喚術の使い手だ。
 自分を逆召喚して扉の向こうに送り出せばそれで済む。


(で、でもあの地下には結界が…)

 ぼよんぼよんぼよんぼにょんぼよん


「……なんか珍妙な音が聞こえてくるんだが」


「……理由は特にないけど…何となく殺意を沸き立たせる音だわ」


「…私も何となく腹が立ってきた」


 静止したミュリエルを不思議そうに見ていた大河たちだが、ミュリエルが立ち直る前に廊下から何かが聞こえてきた。
 接近している事から見て足音かと思うが、こんな足音は聞いた事が無い。

 未亜とリリィは何故か胸を押さえて、湧き上がる何かを感じているようだ。
 精神攻撃かと思ったが、こんな所に誰が仕掛けてくるのか。

 次の瞬間、扉が勢いよく開かれた。


「ミュ、ミュリエル様〜!
 大変です〜!」

 ぼよんぼよん


「…………なるほど」


 大河は未亜とリリィに目を向けて納得した。
 知らず知らずのうちに視線に憐憫が篭る。
 カエデとベリオは平気そうだ。
 平均以上だからだろうか?

 未亜とリリィは無言で大河を蹴り倒した。
 未亜は平均程度で、コンプレックスを抱くような必要はないと思うのだが。


「ミュリエル様、凍ってる場合じゃありませんわ! リコちゃんが〜!」


「り、リコ・リスが!?」


 さては予感が当たったか、と覚悟するミュリエル。
 本の試練は本当に厳しく、救世主クラス総出で動くならともかく、リコ一人ではまず突破出来ない。
 昨日のリコの大奮闘は聞いているが、それを加味しても突破できるとは思えない。
 先走ったリコが最悪の事態になっている可能性もある。


「リコちゃんが、図書館の地下に入っていってしまったようです〜!
 図書館の扉に召喚陣が描かれていました〜!」


「クッ、矢張りですか!
 一刻の猶予もありません、救世主候補生に命じます。
 図書館の地下に潜り、リコ・リスを救出し、導きの書を持ち帰りなさい。
 ただし、戦闘不能と判断したらすぐに引き返してきなさい。
 無駄な特攻は許しません。 いいですね」


「「「「「 はいっ! 」」」」」 


 そのまま全員が図書館に向かった。
 駆け足で行きたい所だが、何せ向かう先が先。
 体力を消耗させては不利になる。
 カエデや大河は多少走った所で平気だが、後衛組は明らかに体力不足である。
 タイミングの悪い事に、体力回復薬として活用できる聖水は丁度品切れ。
 かなり厳しい戦いになる事が、大河たちでも予測できた。

 そうは言っても、トロトロ歩いて行ける状況でもない。
 結果、早歩きで図書館に向かう事と相成った。

 その途中、カエデが未亜に話かけた。


「未亜殿、その……本当にいいのでござるか?」


「? 何がですか?」


「だからその…救世主になる事でござる。
 いや、拙者も実を言うと救世主自体はどうでもいいのでござる。
 それは手段であって目的ではない……とくに拙者の場合は、強くなるための目標というか通過点であるからして。

 救世主が誰であろうと、“破滅”を打ち払えれば民草は気にせぬ。
 たとえ救世主でなかろうと、己らの安全が保障され、滅びが回避できれば万々歳でござろう。
 そういう意味では、未亜殿が言った『誰でもかまわない』は賛成でござる。

 しかしそれでは、いざという時に己を奮い立たせる事が出来ぬでござるよ。
 拙者が血液恐怖症を跳ね除けようとするように、実戦での恐怖を跳ね除けるには強力な精神力が必要でござる。
 それが救世主かどうかは別として、執着するものがあるからこそ、人は戦う気力を得られるのでござる。

 実戦とは、未亜殿が思っている以上に危険で厳しい、冷たいモノ。
 ……こう言ってはなんでござるが…中途半端な覚悟だと…」


 戦うどころか、足が竦んで足手まといになる。
 カエデは言葉を濁したが、言わんとしている事は明白だった。


「カエデさん、そこはキッパリ言い切る所です。
 容赦のない実戦だからこそ、力量不足は最悪の事態を招く…。
 それを告げるのに、躊躇しちゃダメですよ」


「う、申し訳ない……。
 未亜殿の方が、よほど覚悟が出来ているかもしれぬでござるな。
 いや、拙者が腑抜けだっただけでござるか…。
 で、実際の所、どうお考えで?」


「………私は…さっきも言ったけど、誰が救世主かなんてどうでもいい」


 未亜ははっきり言い切った。
 自分に言い聞かせるように話すのではなく、既定の事実を述べるように。
 いや、未亜にとっては既定の事実でしかないのかもしれない。


「アヴァターに来た時なら、きっと『もう“破滅”なんてどうでもいいから、お兄ちゃんと2人で地球に帰る』って言ってたと思う。
 今もそうしたい、っていうのは変ってないよ。
 でもね、なんて言うか…………そう、『心』なんだよね」


「心?」


「うん。
 最初は私、お兄ちゃんと一緒に生きていければそれでいいって思ってた。

 けど、それだけじゃやっぱりダメなんだよ。
 幸せにならなくちゃ。
 生きているだけのお兄ちゃんじゃ、私もお兄ちゃんも幸せになれないの。
 他の誰も居ないんじゃ、それじゃやっぱりダメ。

 …お兄ちゃんは、みんなを助けたいんだよね。
 私だけじゃなくて、みんなを幸せにしたいんだよね。
 それはお兄ちゃんがお兄ちゃんである理由、証。
 それが折れたら、お兄ちゃんは当真大河でいられなくなる。
 仲間を見捨てたら、お兄ちゃんはお兄ちゃんである事を放棄しちゃう。
 私の為にみんなを捨てたら、お兄ちゃんの芯の部分がポッキリ折れちゃうの。

 自分ではそんな事ない、自分は何よりも私を優先するって言い聞かせてるけど、昔からお兄ちゃんにはそんな事はできないの。
 私を助ける為でも、お兄ちゃんは誰も見捨てたくない。
 それが駄目だった時、お兄ちゃんの心は大きく傷つく。揺らぐ。

 生きてるだけじゃ意味がないの。
 それはただの人形と同じ。
 私は活き活きしているお兄ちゃんが好き。
 一緒に居てくれるだけのお兄ちゃんじゃなくて、一緒に居て、楽しそうにしてる当真大河を愛している。
 その為には、命だけじゃなくて『心』も守らなきゃいけない。
 心が折れたまま生きていくのは、とても辛い事だから…。」


 だから、と未亜は息を吸い込んだ。


「私はお兄ちゃんの手助けをするの。
 お兄ちゃんが当真大河でいられるように、仲間を…カエデさん達を見捨てないでいられるように。
 私が好きなお兄ちゃんでいてくれるように。

 腕の中に繋ぎとめようとするだけじゃなくて、一緒に胸を張って歩いて行けるように。
 それが出来れば、私はきっとお兄ちゃんの本当の恋人になれる。
 依存してるんなくて、一人の人間としてお兄ちゃんを愛していると、はっきり言い切れるの」


 そう言って未亜は笑った。
 彼女の心は、アヴァターに来た時と比べて成長している。
 つまり世界が広がっている、と言う事だ。
 大河と自分しか居なかった世界の中に、ベリオ、ブラックパピヨン、カエデ、リコ、リリィ、セル、沢山の人達が現れ始めた。
 そしてそれを未亜は楽しんでいる。
 相変わらず大河がその中心を占めているが、それは多分一生変わらない。
 だが確かに未亜は自立し始めていた。

 カエデはそれを聞き、やはり未亜は北の方に相応しい人物だと思った。
 しかし、大河が常に未亜の為に生きているような言い方をしているのが気に入らない。


「まるで師匠が我々と未亜殿を天秤にかけたとき、未亜殿を取ることが確定しているかのような言い草でござるな。
 そろそろ新しい女房に目が行く頃かもしれぬでござるよ?」


「古女房を舐めないでよね?
 新品は馴染むまでの時間がかかるものよ。
 物心ついて以来の絆は伊達じゃないわ。
 お互い身も心も知り尽くしているもの。
 私以上にお兄ちゃんに合わせられる人はいないと自負しているわ」


「絆は年月ではござらぬよ。
 ムリに合わせては苦しかろう、拙者が変って差し上げるでござる」


「大丈夫よ、もうお兄ちゃんに合わせるのが自然になっちゃったもん」


「「うふふふふふふ………」」


「…ミュリエル学園長、やっぱり走って行きませんか…」


「……最初からそうすればよかったわね」


 背後から発生する不穏なオーラに押されて、先頭を歩いているベリオとミュリエルが冷や汗を垂らした。


「まったく…今から救世主認定試験だっていうのに、何をしてるのかしら」


 リリィはおどろおどろしい空気に圧迫されながらも軽口を叩く。
 未亜との間に先程のしこりも残っているので、口調には棘が含まれていた。
 とはいえ、これなら緊張して動けなくなったり、萎縮したりする事はあるまい。
 ライバルが多いのはいただけないが、戦力が多いのはいい事だ。

 リリィがそう自分を納得させようとしていると、大河が話しかけてきた。


「おいリリィ、ちょっといいか?」


「? 何よ」


「地下にあった、あの鎧の事だけどな」


 リリィの目が鋭くなった。
 ミュリエルとベリオは先頭を妙に早足で歩き、未亜とカエデは小競り合いで暗黒闘気を量産している。
 状況はちょっとアレだが、誰も聞いていない。
 大河の隣に移動し、小声で話し出す。


「あの鎧の事…。
 鎧があった場所は、お義母様が言っていた神殿でしょうね。
 宗派は解らないけど、それっぽい雰囲気があったわ」


「柱に刻まれて模様とかな。
 でも、何でそんな所にあの鎧が?」


「さぁ……。
 これから潜る場所は、その神殿と同じだと思う?」


「多分な。
 場所と規模からして、別の施設とは考えにくい…。
 導きの書とあの鎧は、同じ神殿の違う場所にあったと考えるのが自然か」


「……ひょっとして、あの鎧って試練なんじゃないの?
 ほら、あの鎧を倒した者だけに導きの書が…………現れなかったわね」


「だな。
 それだと結局、幽霊達の脅えように説明がつかない」


 2人で頭を捻っていると、前から声がかけられた。


「何をしているのです?
 急ぎますよ。
 戦闘に備えて、テンションを上げておきなさい。
 …暗黒闘気は発生させずにね」


「「はーい」」


 図書館に入って直進する。
 以前大河達が発見した扉の前に到着すると、そこには魔法陣が描かれていた。
 扉に直接書き込んである。
 おそらくこれが逆召喚用の魔法陣なのだろう。

 大河はそれに近寄ってしげしげ眺める。


「………戦闘中に魔物を呼び出す魔法陣とは少し違うな。
 やっぱり召喚用と逆召喚用の魔法陣は別物なのか?」


「いいえ、同じ物よ。
 召還用魔法陣は世界と世界と繋げる通路みたいなモノって言われたでしょ。
 一方通行じゃなくて、どっちからでも入れて出られるのよ。
 規模にもよるけど、一つの魔法陣で繋げられる対象は一つだけ。
 別々の魔法陣を使っているのは、繋げる対象が別だからなの」


 リリィが解説すると、ベリオが近寄ってきた。
 扉に手を当てる。


「……ここ、結界が張ってありますね。
 かなり強力な結界です。
 でも、魔法陣が描かれている所だけ無効化…ううん、破られてるの?」


 とてもではないが、リコに破れる結界ではない。
 しかし昨日の大暴れを考えると、彼女は何か秘密を隠している。
 それを使って結界を破ったのだろうか?


「詮索は後回しです。
 ベリオさん、リリィ、大河君、退いて下さい。
 扉を開けます」


 リリィ達は下がって道を空けた。
 扉の前にミュリエルが立ち、手を扉に近づける。
 その様子をリリィが食い入るように見つめていた。
 義母の技量を、呪文を、少しでも目に焼き付けようとしているらしい。

ガチャリ


「……はい?」


 金属音がして、扉が開いた。
 リリィの目が点になっている。
 てっきり魔法で封じられていると思っていたのに、ミュリエルは手の中の鍵で開けてしまった。


「どうしたのリリィ?」


「あ…いえ、鍵だったら私達が持って行ってもよかったんじゃないかな〜と思って…」


「………確かにただの鍵ならそうですが、これは余人が触れる事は禁じられています。
 たとえ救世主候補と言えど、下手に触れると問題にされるのです。
 それに、貴方達がいつ怪我をして戻ってきてもいいように、医療品なども揃えておかねばなりませんしね」


「学園長、早口になってまっせ」


 茶々を入れる大河をギロリと睨んで黙らせる。
 どうやらミュリエルもかなり動揺していたらしい。


「と、とにかく…この先が禁書庫です。
 何度も言いますが、中は危険に満ちています。
 最低でもリコ・リスを連れて帰ってきてほしいですが、ムリだと思ったらすぐに引き返しなさい。
 強引に進んでも、得られるものは危険だけですから」


「はい! 行くわよみんな!」


 ミュリエルに見送られて、大河達は禁書庫の奥に踏み込んだ。
 そこは図書館独特の静謐さをずっと濃くしたような空気が漂っている。
 足音がフロア全てに響き渡るような気さえした。


「ここが禁書庫でござるか…。
 拙者、こういう本しかない所は苦手でござるよ……」


「そうですか?
 私は結構好きですけど…。
 気をつけてください、あちこちに侵入者撃退のための罠があるそうです」


 暢気な事を言いつつも、周囲の警戒を怠らない。
 大河は警戒を任せて、リコが通った痕跡がないか調べていた。


「一応言っておくが……その辺の本を気軽に開くなよ。
 こーゆー場所には悪魔が憑いている本とかが保管されてるのがオチだからな」


「言われなくても、開いたりしないわよ。
 大体そんな事をしてる暇はないわ。
 ……って未亜!
 言われた傍から何やってるのよ!」


 未亜の手には適当に抜き出した本が収まっていた。
 アハハハ、と笑って誤魔化す未亜。
 本を元の場所に戻して、大河の傍まで戻ってきた。


「ほ、ほら、ひょっとしたら“破滅”の事とかを書いてる本がどこかにあるんじゃないかと思ったの。
 それでなくても、ここは禁書庫でしょ?
 私たちが知らない事実とか、歴史の裏側とか書かれてるんじゃないかな〜と…」


「…それは非常に興味をそそられるけど、今はそんな事してる場合じゃないでしょ。
 リコの発見、導きの書の確保!
 それが第一目的よ」


 厳しく言われて、未亜はちょっと小さくなった。
 下手に突付くと罠があるかもしれないし、リリィに反論する事はできない。

 周囲を警戒していたカエデがボソリと呟いた。


「しかし解せぬでござるな。
 救世主を目指す者が訪れると言う神殿…そんな重要な物の上に、何故学園を建てたのでござろう?
 神殿を覆い隠し、さらに余人に悟られぬようカモフラージュまでする。
 しかもミュリエル殿が発見するまで、誰も知らなかったのでござろう?
 普通は代々の学園長…管理者に伝えられているでござるよな」


「そうですね…。
 挙句、本の試練だけでも大変だというのに、人為的に仕掛けられた罠の数々。
 放っておいても、本に相応しい人物しか奥に進む事は出来ないはずです。
 だというのに、何故態々罠を仕掛けるのでしょう?」


「それはこーゆーバカが荒らしに来るのを防ぐため…といいたい所だけどね。
 大体、どういう形の神殿だったのかしら?
 図書館から繋がる本の試練場……洒落のつもりなの?」


「まるで…救世主の誕生を防ごうとしてるみたい」


 未亜の言葉を聞き、大河とリリィはギクリと身を強張らせる。
 幽霊達の怨嗟の声。
 もしあれが本当に救世主の仕業だったとすれば、確かに救世主を誕生させまいと考えるのも分る。
 しかしリリィは首を振ってその想像を打ち消した。


「馬鹿な事言ってるんじゃないわよ。
 とにかく、導きの書を手に入れれば解る事だわ。
 こうしている間にもリコが危ないかもしれないし、考えるのは後回しにして先に進むのよ」


「そうだな。
 今回はリコの安全確保が最優先事項だ。
 幸い、この辺りには罠も少ないみたいだ。
 カエデは未亜と、リリィとベリオが組みになって散会、階段かリコが通過した痕跡を探せ!
 魔物が出たらすぐに助けを求めること!」


「了解したでござる!」


「アンタに仕切られるのは気に入らないけど…まぁ、妥当な組み合わせね」


 罠に関する洞察力に優れたカエデに未亜を預け、豊富な知識を持ったリリィとベリオで探索する。
 大河の五感の鋭さはケモノ以上なので、大抵の罠には引っかかる前に発見できる。
 5人はそれぞれ散って行った。


 注意深く周囲を観察しながら、大河はフロアを徘徊する。
 本には決して触れない。
 艶めいた題名が書かれている本を見つけた時には思いっきり心が揺れ動いたが、さすがに構っている暇はない。
 それでもこっそり持ち出そうかと思ったが、罠でもしかけられていたら目も当てられない。

 大河はふと本棚の隙間を見た。
 リリィとベリオが周囲を探索しているのが見える。
 よく考えれば、この組み合わせはちょっと失敗だったかもしれない。
 リリィはブラックパピヨンの事を知らないからだ。
 今ここに居る面子の中では、一人だけ知らない。
 リリィではなくカエデと組ませて探索させた方がよかっただろうか?
 どちらにしろもう遅い。


「ま、とにかく探してみますか…リコが通っていったなら、発見しやすいだろ」


 そう思っていた大河だが、考えが甘かった。
 フロアの一角から、未亜の声がする。


「みんなー、ちょっとこっちに来てー!」


「どうしたー!?」


 切羽詰った声ではない。
 軽く走って未亜の声の発信源らしき場所まで走ると、未亜とカエデが床を見つめていた。
 リリィとベリオは既に到着している。


「何か見つけたのか?」


「魔法陣でござる。
 恐らく禁書庫の入り口に描かれていた、逆召還のための陣でござる」


 カエデが指差す先には、無造作に描かれた魔法陣があった。

 リリィは苦虫を噛み潰したような顔をする。
 床一枚を隔てただけの逆召還といえど、結構な魔力を消費する。
 本の試練がどれくらいの長さなのかは知らないが、ポンポン使っていたら確実にエネルギー切れになってしまう。
 もっとも、それはリリィ達が先日まで認識していたリコの実力なら、の話だが…。


「まずいわね…思ったよりもリコは奥まで進んでいるみたいよ。
 こんな進み方をしていたら、魔物に襲われたらひとたまりもないわ…」


「こればっかりやられたら、とてもじゃないけど追いつけないな…。
 とにかく急げ!
 せめて図書館の構造に詳しい人が居れば…。
 フロアの構造自体は、ほぼ地上と同じ…同人少女でも連れてくればよかった」


 大河の中では、リリィに思いを寄せる少女は『同人少女』で定着してしまったようだ。
 リリィはそれを聞いて眉を顰める。


「あんな子を連れてきても、足手纏いにしかならなわよ。
 構造には詳しいかもしれないけど、戦闘能力が皆無じゃ話にならないわ」


「いや、案外強いかもしれんぞ。
 曲がりなりにもフローリア学園の生徒だし、何か凄いアイテムを作ったりしているとか…」


「そんな訳ないでしょ」


「言い切れないぞ。
 キャラの性格や能力なんてのは、書き手の受信した電波次第でいくらでも変質するからな…。
 同人少女もあそこまで変わってるんだから、これ以上変質してもおかしくない。
 実を言うとな、あの同人少女は元々図書館でのイベントで使って終わりの、一発キャラだったんだ。
 しかも性格は控えめで…あの時はちょっと俺達のノリに巻き込まれてたが…清楚、さらに病弱とは言わないまでも体が弱くて迂闊に走ったり出来ないなんて裏設定まであったんだ」


「うそぉ!?
 原型とどめてないじゃん!
 というか、私はソッチの方が助かったわ…ええ、色々な意味で」


 ついでに言うと引っ込み思案で恋愛沙汰にも奥手。
 もう正反対である。
 大河のメタな発言に制止も忘れて驚くリリィ。
 そのリリィ達を、カエデが一喝した。


「何をしているでござるか!
 早く扉を探して、リコ殿を助けに行くでござる!」


「う、そうだった…」


「悪い悪い…」


 未亜達はすぐに探索を再開した。
 大河は魔法陣が描かれている場所に立ったまま、周囲を見回す。

 リコがどうしてわざわざ此処に魔法陣を描いたのか。
 おそらく、この床の真下には空間…下の階層が広がっている。
 リコは何らかの確信の元に、ここを通り抜ける事を選択した。
 もし近くに階段があるのなら、そちらを使えばいい。
 此処を通り抜けたのは、確実に大幅なショートカットが出来ると確信していたからだろう。


(つまり……入り口から直線を引いた線を中心にして、反対側に階段がある…かな?)


 推理どころか憶測とさえ言えない。
 この理屈には、リコが禁書庫の構造を知っているという前提がある。
 幾ら何でもムリがあろう。
 しかし大河は直感に従って走り出した。


一方リコは…

 獣の匂いがする階層で、天井に唐突に魔法陣が描かれた。
 その魔力に反応し、モンスター達が振り返る。
 ワーウルフ、スケルトン、スライム…救世主候補生にとってはそれほど強力ではないが、結構数が多い。
 モンスター達が目を天井に目を向けると、描かれた魔法陣が一際強く光る。
 次の瞬間、魔法陣の中から人影が飛び出してきた。


「グゲッ!?」


 真下にいたワーウルフ(小)が悲鳴を上げる。
 人影に踏み潰されてしまったからだ。
 降ってきた人影は、眉を顰めながらも両手を天井に向けて翳した。

ピシャアアァァァァン!

 モンスター達が動き出そうとする前に、魔法陣から発射された稲妻達が駆け巡る。
 閃光が駆け巡った後、動いているモンスターはもう居なくなっていた。
 一拍置いて、ワーウルフが倒れこみ、スケルトンが崩れ落ち、スライムは既に焦げ臭い匂いを立てている。

 人影…リコは踏みつけていたワーウルフの死体から退いた。


「……失礼なワーウルフでしたね」


 下敷きにしておいて我ながら勝手な言い草だとは思っているが、少々傷ついたらしい。
 一応形だけ手を合わせて拝み、リコは周囲を見回した。


「……まだ先は遠いですね。
 そろそろモンスターも増えてきましたし、逆召還でショートカットは止めて地道に行きましょう。
 トラップも残っていない筈ですから」


 そう呟いてリコは歩き始めた。
 階段はもう隠されてはいない。
 隠されていたのは最初の階層だけで、それからは探索する事もなくあっさりと姿を晒している。
 魔物さえ居なければ、普通の図書館と変わりないくらいだ。
 もっとも、普通の図書館の本にはトラップなんぞ仕掛けられてないが。
 元々大河達より先行するために態々召喚陣を使ったのだ。
 ちょっとやそっとでは追いつけない距離を稼いだ以上、召喚陣を使う理由はない。


「……困った人達。
 こんな危ないモノを…」


 足元に転がる頭蓋骨を見て、リコは溜息をついた。
 彼女には休憩は意味がない。
 エネルギーを消費しすぎない最も効率的な速度で、素早く進まなければならない。
 もう自分が禁書庫の奥に進んだ事も露見しているだろう。
 大河達に追いつかれる前に事を済ませなければ、話は確実にややこしくなる。
 大河の顔を思い浮かべて、リコは物思いに耽る。


(本当に強い人…。
 多少侮っていたとはいえ、私の全力を退けて見せた。
 今までの救世主候補生とはどこか違う…男だから?

 それにしても、塔の爆破はちょっと有難かったかもしれませんね。
 今日一日逃げ切れば、大河さんの指導権は潰えます。
 私が大河さんとその、交わる訳には行きませんし。
 どうにかして誤魔化しきれないかと悩んだ挙句、全く妙案が思い浮かびませんでした…。
 これで指導も有耶無耶に出来るでしょう。
 例え追いつかれたとしても、疲れきっていると言えば見逃してくれるはず。

 ハァ……最下層に向かって導きの書の封印を解いてゴチャゴチャするより、大河さんをかわす方が数段厄介とはどういう事でしょーか?
 とっても不条理を感じます。
 それだけ大河さんのエッチに向ける執念が凄いという事ですが、なんとゆーかとても説得力がありますね。
 私ともし契約したら……物凄い事になってしまいそうです。
 執念が妄執にまでランクアップしてしまうかも…)


 色々と考えつつも、リコは最下層に向けて進んでいく。
 途中で遭遇するモンスター達を鎧袖一触に蹴散らし、テクテク歩いて進んでいく。


視点は戻って大河達…。


「でぇりゃああああ!」


「シルフィス!」


「貫け! (…あれ? 何だか威力が何時もより強いような……)」


 大河がワーウルフの足を斬って動きを止め、ベリオがシルフィスをぶつけ、さらに未亜がシルフィスを掠めるように矢を放つ。
 シルフィスの余波を浴びながら飛んだ矢は、ワーウルフの後ろで呪文を唱えようとしていた魔法使いに直撃した。
 奇声を上げて倒れる魔法使い。
 矢は硬い仮面の上に突き立ったにも拘らず、魔法使いはまるで爆発でも受けたかのように吹き飛ばされた。

 その破壊力に目を剥いたリリィ。


「ちょっと、今のは何よ?
 未亜単独じゃ、あんな威力は出せないはずよ」


「秘密兵器ですよ」


 ベリオがレーザーで周囲を薙ぎ払って牽制しながら答える。
 カエデが飛び蹴りでスケルトンの頭を吹き飛ばした。

 現在交戦中。
 下層に向かう階段を見つけ出し、早速進んだ大河達。
 そこから暫くは何事もなかった。
 拍子抜けしたくらいだ。
 時々出てくるモンスターも、数だけは多いスライム程度。
 リリィの魔法で一息に消し飛んだ。

 が、そろそろモンスターが増えてきた。
 流石に軽くあしらう事は出来なくなり、一行はリコを案じつつも目の前の危機に集中している。


「さっき未亜さんの矢は、私のシルフィスの近くを通ったでしょう?
 あれでシルフィスのエネルギー属性を浴びて、神聖な力を浴びたまま魔法使いに当たったんです。
 いわば属性付加ですね。
 …それを考慮しても、ちょっと威力が大きすぎですが…」


「へぇ…ベリオが考えたの?
 それともこの突拍子の無さは大河?」


「それが意外にも未亜さん発案なんだそうです。
 召喚器は頑丈だから、炎や電気を纏わせても平気なんじゃないかって」


「…未亜が?」


 心底意外、と言った風にリリィは驚いた。
 しかしすぐに気を取り直す。
 図書館に潜る前に突っかかった相手だけあって、彼女のアイデアを即採用するのは抵抗がある。
 が、そうも言っていられない。
 今は効率とスピードが最優先だ。


「それなら私の魔法でも出来そうね。
 う〜ん……カエデにヴォルテックスでも纏わせようかしら?
 多少でも相手を麻痺させられれば、カエデの大技が決まりやすくなるかもしれないわ」


「あ、それはいいですね」


 だが思いついたはいいものの、今は実験も出来ない。
 カエデは大河と共に最前線で敵を切り払っている。
 この敵を撃退したら、カエデに話してみようと思うリリィだった。


またまたリコ…

 リコの進軍ペースは一定のままだった。
 早くも遅くもなっていない。
 最短ルートを通って階段を下り、立ちふさがる魔物だけ吹き飛ばし、時には相手にせずに瞬間移動で逃げる。
 最も効率的な方法を選択し、確実に前に進んでいく。
 もしその姿をリリィが見ていたら、戦闘能力はともかく判断力は自分では及ばないと認めただろう。

 しかし、本人にはそんな事を考えているつもりは無く。
 効率的に進んでいるのは、時間をかけないためではなく、流石に消費してきたエネルギーを少しでも保存するため。 
 エネルギーが減ってきた。
 つまりどういう事かというと。


(…お腹が空いたなぁ)


 …まぁ、要するにそういう事である。
 地下に潜る前…大河がリコと会った時には、それこそアホらしくなる量の料理を食べていたが、もう消化してしまったらしい。
 最初の階層付近で、逆召還を乱発したのは失敗だった。
 最初の隠された階段は大河達の足止めになるから、逆召還で通過したのは悪くない。
 が、そこからがよろしくない。
 どうせ雑魚しか居ないのだから、自分の足で駆け抜けてくるべきだったのだ。
 とにかく大河達が来る前に片付けてしまうつもりだったので、少しでも早く先に進む事だけを考えていた。


(……やっぱり昨日の戦いで、エネルギーを使いすぎています…。
 普段ならもう少し保つのですが、食事だけだと限界がありますね。
 何もしないよりはマシだと、我ながらソコソコの量を食べたと思うのですが)


 あれがソコソコなら、この世の人間に沢山とか結構な量を食べるのは不可能だろう。
 食堂料理長の長い人生の中でも、あれほどの悪夢は無かったと後に明言しているくらいだから。

 リコはハンカチに召還陣を描き、自分の部屋に置いておいた物を取り出した。
 出てきたのは…サンドイッチである。
 いちいち魔法陣を描いて次元を繋げなくても、これなら何時でも召喚したい物を取り出せる。
 魔力を使うのは魔法陣を繋げる時だけなので、疲労も少ない。(リコの感覚では)


(食べないよりはマシですから)


 もきゅもきゅサンドイッチを咀嚼しながら、リコは進んで行った。


視点は戻って大河達。


「…これで何回目だよ」


「最初の戦闘から数えて、48回目ね。
 一階毎に歓迎してくれなくてもねぇ…」


「過剰な歓迎は迷惑がられるでござるよ」


 流石にうんざりしている大河達。
 真面目なベリオと未亜は何も言わないが、体力の無い後衛組はバテて来ている。

 リリィがこっそり大河に近づいた。


「ちょっと、前みたいに連結魔術でどうこうとか出来ないの?
 神水を作れば、もっとガンガン進めるのに」


「ここは鎧のあった場所とそう離れてないみたいでな。
 まだ負荷が残ってる……。
 それに、どうもこの辺りの空間がヘンなんだよ。
 ここで連結すると、どこかにバグが出るかもしれん」


「チッ、使えないわね…」


「お前の貧弱さが悪いんだ。
 主に胸の貧弱さが」


「……怒りで沸々と気力が戻ってきたわよ…」


 状況も弁えずに一触即発の空気が漂う大河とリリィ。
 しかし、それは致命的なスキであった。
 相手を全て撃退したと思い込んだ大河達は、残心を忘れ警戒を怠ってしまった。
 ベリオに影が落ちる。


「ベリオ殿、下がるでござる!」


 カエデが叫ぶと同時に、クナイが飛んだ。
 ベリオが慌てて飛び退くが、一歩遅かった。


「キャッ!」


 ベリオの腕に、獣人が振り回した棍棒が当たる。
 しかし獣人の腕にはカエデが投げたクナイが突き刺さっており、ベリオは致命傷を免れた。
 すぐに駆け寄ったカエデが獣人を蹴り飛ばし、吹き飛んだ所に未亜がトドメを刺す。


「ベリオ!」


 大河達はベリオに駆け寄ったが、ベリオは何とか体を起こした。
 カエデがベリオの袖を捲り上げ、傷の診察をする。


「だ、大丈夫です…。
 大した事はありません」


「大丈夫じゃないでござるよ。
 どうやらあの棍棒、何かクスリが塗ってあったようでござる。
 種類は解らぬでござるが、このままだと最悪の事態もあるでござるよ!」


 ベリオの傷口が、僅かに変色している。
 ベリオは自分の傷口を見て、毒を浄化しようとするが上手くいかない。
 どうやら特殊な毒のようである。


「リリィ、何とか解毒できないか?」


「ダメ…“破滅”を打ち滅ぼすために、私は攻撃魔法ばかり覚えてたから…」


「チッ、肝心な所で使えないのは誰でも同じか…」


 この中で魔法を使えるのはベリオとリリィのみ。
 大河は現在は使用不能。
 リリィは攻撃魔法が専門なので、ベリオに解毒が不可能ならこの場ではどうにも出来ない。

 それでもベリオは立ち上がろうとしたが、大河に止められた。


「ベリオ、今ムリをして進んでも意味が無い。
 回復役が抜けるのは痛いが、今から引き返せ」


「そんな!」


「この毒が致死的な物だったらどうする気?
 口惜しいのは解るけど、今は一度下がりなさい。
 導きの書に辿り着いたと思ったら、毒が回って涅槃に直行なんて笑い話にもならないわ。
 それに、私達には怪我人を庇いながら戦えるほど修羅場を潜っていないわよ」


「う…」


 厳しく言い放つリリィに反論できず、ベリオは押し黙った。


「しかし、そうなるともう一人抜けなきゃならんな。
 一人で戻ろうとしてベリオが途中で倒れたら、もう手の打ちようが無い。
 まだ魔物が残っていないとも限らないし…」


 そうは言っても、ここに居る誰もが帰りたがらない。
 それも当然で、ベリオの護衛として帰還する事は救世主レースの脱落を意味するからだ。
 未亜はどうでもいいと言っていたが、大河から離れるのは不安だし、そもそもベリオを担いで地上まで行く体力はない。

 が、意外にもカエデが自分から名乗り出た。


「それなら拙者が戻るでござる。
 拙者ならばベリオ殿を背負って地上まで走り、そのまま戻ってこれるでござる。
 ベリオ殿に残された時間がどれほどのものか解らぬ以上、迅速に学園長の元まで送り届けねば」


 そう言われて大河とリリィは考え込んだ。
 カエデの言う事は正論である。
 戦力的にキツイが、それはまぁ何とかなる。
 リリィは最初、未亜を護衛につけようかと思っていたのだが、考えてみれば召還器の恩恵があるとはいえ、未亜の足はそれほど速くない。
 ベリオを運んで走れるほどの膂力があるかも疑問である。
 救世主になれるかどうかの瀬戸際と言えど、仲間を見捨てるのは気分が悪い。

 大河を見ると、同じ事を考えたのか無言で頷かれた。


「…仕方ないわね。
 カエデ、お義母様の所にベリオを届けたらすぐに戻ってくるのよ。
 ……ま、戻ってこなくても私が救世主になるのは変わりないけどね」


「ベリオを頼むぞ、マイ弟子」


「了解したでござる。
 すぐに戻ってくるでござるよ。
 それでは、御免!」


「みんな、気をつけて…」


 カエデはベリオを背負い、道を引き返して行った。
 いきなり戦力が2人減って、未亜は不安げな顔をしている。


「大丈夫かな、ベリオさん…」


「多分な。
 見た所即効性の毒じゃない。
 あれはそういう症状じゃなくて、もうちょっと時間をかけて効いてくるタイプだ。
 カエデの足なら、戦闘を避ければ十分間に合うはずだ」


「…その言葉、信じるからね」


 リリィ達三人は、そのまま道を進み始めた。
 しかし、進軍スピードはかなり落ちている。
 カエデとベリオが脱落し、さらにカエデが引き返して来たときの為に、なるべく敵を減らしておかなければならない。
 無視して進む事もできなくなり、リコに追いつくのは不可能かと思われた。

 しかし、階段を下りた先で未亜は奇妙な物を見つけた。


「あの…お兄ちゃん、コレ…」


「ん? どうしたのよ未亜…って、ナニコレ…」


「……ペットボトル…と言う物だな…」


 禁書庫の奥に、一つだけコロンと転がるペットボトル(大)。
 誰が捨てたのか予想がつくが、マナーが悪い。

 思わずリリィは周囲を見回してW.Cを探す。
 こんなモノ飲み干したら、幾らなんでもモヨオス筈だ。
 しかしそれらしき物は見当たらない。
 ちょっと怖いというかフシダラというか不謹慎な想像を振り切って、リリィは周囲を見回した。
 遠くに…というか本棚の影になっている場所からはみ出したゴミが見える。
 リリィはそっちに向かって歩き出す。


「おいリリィ、どうした?」


「あっちにもゴミが捨ててあるわ。
 理由は解からないけど、リコが捨てた物じゃないの?」


 この禁書庫にいる人物は他に心当たりが無い。
 捨てたとしたら、やはりリコだろう。
 彼女は召喚師なので、例えば自室に置いておいた食べ物に目印をつけ、腹が減ったら呼び出すくらいは出来るだろう。
 こんな所にゴミを捨てていくのはどうかと思うが、ゴミ箱もないし、持って行けば機動力も削がれるし、逆召喚して態々送り返すなぞ力の無駄遣い以外の何者でもない。
 そもそも食事のために魔力を使う事自体、無駄遣いと言えるが。

 リリィが捨てられたゴミに近づいた時、未亜の目に本棚の上で動く『何か』が見えた。


「リリィさん、避けて!」


「え?」


 本棚の上から、人型の獣が飛び降りる。
 未亜は反射的に矢を放ち、大河はトレイターを槍に変えて突っ込んだ。
 生々しい音がして、リリィの眼前で獣が矢に貫かれる。
 獣の手から剣が零れ落ち、突然の事態に反応できなかったリリィ目掛けて落下する。
 次の瞬間、獣は大河の槍に貫かれた。


ガシュッ!


「痛っ!」


 零れ落ちた剣が、リリィの腕に切り傷を作る。
 腕を押さえ、周囲を警戒したリリィだが、他には何も気配はない。
 どうやらさっきのが最後の一体だったらしい。
 おそらくリコが殆ど吹き飛ばしたのだろう。


「リリィ!
 傷口を見せろ!」


 腕を押さえる手をどけて、大河はリリィの腕を見た。
 未亜も駆け寄ってくる。
 リリィは慎重に手をどけて、傷口を晒した。
 もし剣に毒が塗られていれば、リリィもこの場でリタイアである。
 祈りながら、魔力を全身に通して検査した。


「リリィさん、大丈夫なの?
 体が痺れるとか、目が眩むとかはない?」


「……大丈夫…みたいよ」


「…この剣、どう見ても何かが仕掛けてあるんだが」


「いや、本当に毒の類は感じられないのよ。
 さっきから念入りに体を点検してるんだけど、毒素の類は全く見られないわ」


 リリィの体には、特に異常は発見できなかった。
 傷口に妙な感触はあったものの、毒の類は全く発見できない。
 剣には妙な光沢…何かが塗られたような痕跡があったが、本当に異常は見られない。。

 応急処置を施して、リリィは放置されていたゴミを拾い上げた。


「……これ、学食で使われてるテイクアウト用のディッパーじゃない」


「リコ、だな」


「…本当にリリィさん、大丈夫なのかなぁ?」


 約一名会話に乗ってこない人物がいるが、それは置いておく。
 リリィはディッパーをしげしげと見る。


「…まだ捨てられて、そんなに時間が経ってないわね。
 大河、未亜、どうやらリコにもうすぐ追いつけるみたいよ!」


「もう一踏ん張りか。
 未亜、やれるか?」


「充分!」


 階段を下りると、そこかしこに骸骨が転がっていた。
 こう書くとナンか猟奇的だが、単に砕け散ったスケルトンが散らばっているだけだ。
 何となくイヤな気持ちになる大河達。
 大河はしゃがんでシャレコウベを覗き込んだ。


「……帯電してるな。
 リコが電撃叩きつけたのか?」


「でも、リコさんの電撃ってそんなに強くなかったよ?
 少なくとも、私と戦った時は」


 骸骨達は、一瞬で巨大な衝撃を叩きつけられたように吹き飛んでいる。
 リコの電撃には、それほどの破壊力は無かったはずだ。


「……本当に私達との戦いでは、手を抜いてたのね…」


 悔しそうに歯を食いしばるリリィ。
 しかし悔しくても苛立たしくても、実力差は縮まらない。
 プライドに障るが、リリィはリコが自分以上の魔法使いだと認めなければならなかった。


「しかし、どうして俺の時には全力を出したんだろうな?
 なんかこう、負けたら食べられそうな気がして俺も必死で抵抗したんだが」


「さ、さぁ?」


 まさか自分が唆したとは言えないリリィだった。
 疑問は置いておいて、先に進む大河達。
 もう一つ階段を下りると、そこにも骸骨やら獣人やらの骸が転がっていた。
 今までの階層では、倒したモンスターは消し飛んでいた。
 しかし今は破片やら何やらが残っている。


「明らかにパワーダウンしてるね。
 リコさん、バテて来てるんじゃないの?」


「そうみたいね…。
 と言う事は、どこかで一休みしてるんじゃない?」


 あちこちにリコが捨てていったと思しきゴミが放り出されている。
 それを追えば階段まで直行できるのだから、楽といえば楽だった。
 が、未亜はそれに疑問を抱く。


「リコさん、真っ直ぐ階段がある所に向かってる…。
 今までの階層では、階段の位置はまちまちだったのに…。
 ひょっとして、ここの構造を知ってるのかな?」


「ここは禁書庫よ?
 …とはいえ、明らかに脇目も振らずに進んでるわよね…。
 確かに構造を知っていなければ出来ないわ。
 目印らしき物もなかったし…」


 リリィ達が首を捻る。
 大河は周囲を警戒するが、この階層は本当に敵が残っていなかった。
 今までの階層は、リコが追わなかったのかスルーしたのか、まだ何体か残っていたのに。


「この階層は念入りに掃討してあるな…。
 おい、多分リコはこの先だ。
 急げ」


「この先?
 どうしてよ?」


「今までは構わず先に進んでいたのに、ここだけ全滅させてあるんだぞ?
 多分、階段あたりで休憩してる筈だ。
 モンスターを全滅させたのは、休息を邪魔されないためだろ」


 なるほど、と手を打って、未亜達は足を早めた。
 リコの捨てたゴミを辿っていくと、例によって階段まで辿り着く。
 その階段から、ゴソゴソと何かが蠢く音がする。

 リリィは未亜と大河に目配せする。
 大河は慎重に階段を下りて行った。
 足音を立てずに移動できるスキルは大河しか持っていないので、リリィと未亜は様子見…ただし静かに攻撃の準備をしている。

 大河が階段を下りていくと、中腹辺りで音の発生源を発見した。
 小柄で人型、頭には丸い飾りがついている。
 階段に腰掛けて、何かを食べているようだ。


「リコ…?」


「ムグ?」


 リコはフランスパンを頬張ったまま振り向いた。



学園祭の準備。
今週の日曜に資格試験。
そのための補講が週に3回。
課題が多い。
…ナンデコンナニイソガシインデショウ?

まぁ、補講は明後日が最後ですから大分楽になりますけど。
愚痴はともかくとして、中々話が進みません。
何より萌える電波が来てくれません!(涙)
あとギャグも思いつきません……。
気長にやる事にします。

リコや〜い、ポイ捨ては感心できないぞ〜。
それではレス返しです!


1.20face様

 ミュリエル学園長に関しては、存外近いうちに…具体的に言うと、導きの書編が終わった辺りでどうにかするつもりです。

 同人少女、最初はこんなキャラじゃなかったのになぁ…。
 知らない内に電波に犯されたのでしょうか?


2.ディディー様

 ほ、本当に全部読んでいたとは…。
 感謝感激雨霰です!

 目が悪くならないように祈っています。
 リコかイムニティのどちらかとは、契約できませんからね…。
 さて、どっちにするべきか…って、もう決めてるんですけど(笑)


3.リル様

 そうだったんですか…。
 ライトノベルとかから適当な記述ばかり拾っていたので、詳しい事は知りませんでした。
 多分同じ誤解をしている人が、日本全国にぞろぞろと…。
 学の保体の時間?
 あれは昼寝の時間です。
 自分でも気をつけよっと…。

 アヴァターにはコンドームはありませんが、代わりに避妊の術がある事にしてます。
 未亜なんかは、ゴムのお金が掛からなくなったとか言って喜んでます(笑)


4.竜神帝様

 リコは導きの書編の終盤でしょうか。
 予定としてはミュリエル学園長の前あたりですね。


5.3×3EVIL様

 遠いですね…DSJ(T_T)

 パイプカット…そりゃちょっと幾らなんでも(汗)
 あ、ナナシは安全日があるかもしれませんね。
 死体だから排卵日も何もないかも…。
 その代わり、得体の知れない菌がついている気もしますが。


6.神曲様

 満足できるエネルギー源でしたでしょうか。
 時守もレスを貰うたびに元気が沸いてきます!

 禁書庫に潜った以上、ねこりりぃは暫くお預けですね…残念。


7.なまけもの様


 ぐあああぁぁぁ!?
 寄りにもよってレス返しの名前を忘れるとは、なんと言うミスを!
 レスをくれる人はイエスキリストよりも有難いというのに…時守 暦、一生の不覚…。
 深くお詫び申し上げます。

 ダウニーのアフロは治った訳ではありませんでした。
 そして再発……ダウニーがシリアスキャラに戻るのは何時の日か。
 私にも解かりません。

 女無し仔達の会は、主催者が嫉妬マスクこと宮本君でしたからねぇ…。(多分)
 少なくとも誰か一人は『モノホン』が紛れ込んでいると思います。
 いつか出番を作ってあげよう(笑)


8.くろこげ様

 生徒が圧勝している姿しか…姿しか………どうしよう、“破滅”の軍団に見せ場を作れないかもしれない(汗)

 保健室の魔人には、そこそこ暴れてもらう予定です。
 流石に前線に出すと問答無用で戦局が確定しそうなので、防衛専門にしようと思います。
 てか、あの人が前線に出たら味方の方が逃げ出しそうです。


9.砂糖様

 いえいえ、まともな生徒もいる事は居ますよ。
 ただ書いても面白みが少ないと言うか、時守が書けそうにないだけで。
 一人くらいは極一般的な、所謂『振り回される』生徒を出してもいいかなーと思いますが。

 救世主クラスで一番まともそうなベリオでさえアレですからねぇ…。


10.水城様

 アルディアはメサイアパーティではないですね。
 ですが、その一言のお蔭で決心がつきました。
 丁度いい能力を持ってる人が居ますし、ちょっと反則技かもしれませんが、いつかは…。


11.沙耶 又は『R&R』会長様

 おお、相変わらずいい塩梅にテンションが高いままですね。
 そこまで萌えてくれると、本気で書き手冥利に尽きます。

 パトラッシュと一緒に、今際の際に見るのがねこりりぃが描かれた絵…。
 きっと閻魔大王に地獄行きを申し渡されても極楽に行けるでしょう。
 天使の代わりにねこりりぃ(3頭身)が降りてきた日には……。


12.K・K様

 R&Rの会にまた一人…と。
 ウチの子をそんなに応援してもらってありがとうございます。

 う〜ん、神との戦いはまだまだですよ。
 あくまで今は、人間界における内紛の域を出ていませんから。

 ダウニーのフノコは、結局治ってませんでした。
 実を言うと、今後もフノコからさらに進化する可能性が…。


13.ケケモコソカメニハ様

 すみません、ちょっと頼りすぎていました。
 知りたい事があるなら、自分で調べねば…。

 ああ、確かに田辺さんと小村さんは似ていますね。
 やたらと前向きだったりする所とかが…あとメガネとか。
 流石に小村さんのメガネは真っ二つにされても復活しないと思いますけど。
 しかし、どーしてタライしか降ってこないんでしょうね?
 きっと神様とかアルファの人達はドリフが好きに違いない(笑)


14.アルカンシェル様

 そう、それが問題なんです!
 神との戦いよりもダウニーの髪型よりも、彼女の扱いに悩んでいます。
 いっそこのまま名前も出さず、同人少女で押し通すか、それとも名前を考えてレギュラーとして扱うべきか。
 仮にレギュラーにしてもストーリーに絡む予定はありませんが…ここまで最初の予定と変った以上、どこまで行ってもおかしくない気が…。
 それに彼女のようなタイプは、正規レギュラーとして位置した途端に魅力が半減する危険性がありますし。

 もてない男の希望・嫉妬マスクにも、3年ほど付き合っていた彼女は居たのですよ。
 振られましたが…。


15.カシス様

 アルディアは一筋縄では行きそうにありません。
 多重人格なんて厄介な設定にした以上、それらしい役割を振らなければ…。
 作者もセルも振り回される事になりそうです。

 はい、決してムリをせずに愉しみたいと思います。
 …そのムリの基準が問題ですが、ウチの部署はほぼ仕事が終わってますから大丈夫ですよ〜。


16.なな月様

 いや、流石にフノコ妹は…難しいです。
 あ、でもやろうと思えば………(思案中)………アリ、かな…?
 流石に絡みはムリですが、タイミングさえ間違えなければ…。

 いずれにせよ、コンプリートも出番も相当話を進めなければなりません。
 生暖かい視線で見守っていただけると嬉しいです。

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