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「まぶらほ〜魔獣使いの少年〜第一話(まぶらほ+モンコレ)」

ラフェロウ (2005-09-30 20:42)
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僕が自分の能力に気付いたのは、ちょうど小学4年生になった時だった。

魔法回数が極端に低く、周りから落ちこぼれ扱いをされていた僕は、式森本家の蔵である魔道書を見つけた。

無名の魔術師が書いた、召喚に関する魔道書。

何故か僕はそれに酷く惹かれ、それを手にして貪るようにして読破した。

読めない字は辞書で調べたり、翻訳しながら。

二ヶ月かかってやっと僕は中身を理解した。

厚さが15cmもあったから翻訳するだけでも小学生には大変だった。

そして僕はその内容を自然と理解し・・・魔獣を召喚した。

自分の血を媒介に描いた召喚陣から出てきたのは、真っ白な毛並みの可愛い子犬。

最初は普通の子犬かな?って思っていたら、なんと魔界の雪原に住むウィンターウルフの子供だった。

その子を祖父に見せにいったら、祖父は物凄く驚いていた。

そして、僕に召喚術士としての才能があると言って、その手の本と道具をいっぱい買ってくれた。

それで僕は勉強して、色々な魔獣達を召喚した。

凄く大きな魔獣や凶暴な魔獣も召喚したけど、自然と怖いとは思わなかった。

そして、彼らも僕を認めてくれた。

そんな彼らともっと一緒に居たいと思っていたら、自分の身体に召喚陣が浮び、その中に魔獣を入れることができた。

祖父の話では、僕の魔力が体内で檻(部屋)を形成して、その中で魔獣達を住まわせることが出来るそうだ。

入れられる数には限界があるけど、仲の良い魔獣達とずっと一緒に居られるのは嬉しかった。

友達が少なかった僕のとって、大事な大事な友達だから。

それから僕は魔獣達との生活を始めた。

彼らと遊んだり、身体を鍛えたりして。

いくら大人しくても魔獣は魔獣。遊ぶのでもかなり体力とかが必要なんだよね。

そして小学6年になった時・・・僕は蔵であの剣を見つけた。

そして――――――――――――


まぶらほ〜魔獣使いの少年〜


第一話「やって来ちゃった・・・。」


ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピ――ペチンッ

『ご主人さま〜、朝ですよぉ〜っ』

『起きてくださ〜いっ!』

「うぅ〜ん・・・あと五時間〜・・・。」

『『長すぎですよっ!』』

布団の中でモゾモゾと動く少年と、その少年の周りをピョコピョコと飛び回る小さな、ほんとに小さな小人サイズのメイドさんが二人。

『う〜ん、またご主人さま起きないよ〜、どうする?』

『う〜ん・・・よし、お掃除しようっ!』

『・・・そうだね、そうしよっか。』

主を起すのを諦めた小人二人が、その身体に似合わずせっせとお掃除を開始する。

因みに余談だが目覚ましを止めたのもこの小人さん。

彼女達の名前はブラウニーズ。

妖精、またはスピリットと呼ばれる種族で、見た目は小人だが良く見ると耳が獣の耳である。

ついでに何故かメイド服。別に某団体とは関係ない。

戦闘能力はまったくないが、意外に力持ちで綺麗好き。人や他の種族のお手伝いを好む性質を持っている。

なので、今日もせっせと主の部屋のお掃除開始。

散らかっている本(召喚関係や魔獣関係)を片し、ゴミを纏める。

小さいので効率は悪いが、それでも細かい所を丁寧に掃除してくれるので少年の部屋はかなり綺麗だ。

そして時間をかけてお掃除終了。と言っても彼女達が出来るレベルでだが。

小さい上に飛べない彼女達に、高いところの掃除は酷と言うものだ。

「うぅ〜ん・・・?あれ・・・げっ!?」

ブラウニーズが小休止していると、主である少年が目覚め、枕元の目覚ましを掴んで驚愕の声を上げた。

「また遅刻だぁっ!」

ガバッと飛び起きる少年。名前を式森和樹。

葵学園に通う二年生で、容姿は中肉中背で髪は癖がある黒髪。それなりに良い男と言える容姿である。

『あ、ご主人さま起きた〜。』

『おはようございますご主人さま〜。』

足元でピョコピョコ跳ねるブラウニーズ。

「おはようっ、でもなんで起してくれないのさっ!?」

彼女達の視線も気にせず、服を着替える和樹。

『だってご主人さま起きないんだもん〜。』

『五時間って言ってたもん〜。』

可愛らしく頬を膨らませる妖精。大変愛らしい。

「はぁ、また寝ぼけてたのか・・・ごめんな。さ、学校行くから入って。」

妖精に謝り、その左手に二人(二匹?)を乗せる。

そして自分の右肩へと持ってくるとそこに小さな召喚陣が浮かび上がる。

『それじゃぁご主人さま、また呼んでね〜。』

『呼んでね〜。』

二人は和樹に手を振るとその召喚陣の中に入る。

二人が入ると、その陣は消えてしまう。

「よし、簡単にご飯食べて学校行こう。」

手早くパンとコーヒーを準備してそれを食べ、身嗜みを整え、荷物を確認。

寮の部屋を後にし建物から出ると、そこには喪服姿の女性が箒で玄関先を掃いていた。

「あら、おはようございます式森さん。」

「あ、おはようございます尋崎さん。」

一応急いでいるのだが、ちゃんと立ち止まってご挨拶。

彼女の名前は尋崎華怜。この寮の管理人であり、いつも喪服姿の美人さんである。

前までは和樹も管理人さんと呼んでいたのだが、何故か彼だけ名前で呼ぶように強制されてしまった。

その理由は・・・言っても和樹は理解しないだろう。

「今日は随分ゆっくりなんですね?」

「いや、お恥かしいことに寝坊です・・・それじゃ。」

「はい、行ってらっしゃい。」

ニッコリと微笑んで和樹を送り出す華怜。

それに大して和樹も笑顔で答える。

その笑顔に、彼女の顔が赤くなるのだが・・・喪服のヴェールで見えないのが残念。

そして和樹がその事に気付けるはずもなく、駆け足で学園への道を急いだ。


「ふぅ・・・・。」

一時間目の授業中、私は小さくため息をつく。

チラリと視線を横に向けると、そこには誰も座っていない座席が一つ。

「和樹ったら、今日も遅刻して・・・。」

思わず声に出てしまうが、周りの連中はまったく気にしない。

と言うか、皆何かしらの悪巧みや計画を立てていて授業を聞いちゃいない。

そんな教室の中を何気なく見ていると・・・少し前の座席の仲丸の姿が一瞬だけブレた。

「・・・・・あいつまさかッ」

私は素早く身代わり写しの魔法と転移魔法を唱え、教室から移動した。

あの馬鹿男、また性懲りも無く・・・下手をすればまた和樹が巻き込まれる可能性もある。

私は魔法で身体を浮かせて仲丸の姿を探した。


「あれ・・・?あれは仲丸かな?」

学園へと辿り着いた和樹の視線の先には、保健室前で怪しい動きをする男子生徒の姿。

その姿は正しくも変質者であったり。

「何してるのさ、仲丸。」

どわぁぁぁぁぁっっ!!?って、なんだ、我が親友式森ではないか。」

心にも無い事を言い放ちながら汗を拭う男。

名前を仲丸由紀彦。B組のアジテーター。またはベスト・オブ・本末転倒。別にB組馬鹿筆頭でもOKだ。

誰が親友なんだか・・・。で、何してたのさ、今授業中だろ?」

「ふふふ、良くぞ聞いてくれた。と言うかお前も手伝えっ!」

「嫌。」

即答っ!?

「だっていつも俺を生贄にしとうとするじゃん。絶対に嫌だよ。」

「そ、そう言わずに話だけでも聞け!いいか、この中には今あの三年の風椿玖里子が居るのだ!生徒会から教師共まで操る葵学園の影の支配者である彼女の恥かしい姿を写真に収めて脅せば・・・どうなると思う?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「だぁぁぁっ、待てまてマテ!無言で去ろうとするなっ!!」

「仲丸・・・。」

「な、なんだよ?」

「お供え物は何がいい?」

俺死亡確定なのかよっ!?

まるで漫才のような二人のやり取り。どうでもいいが保健室の人たち誰も気付かないのか?

「えぇい、せっかく俺様が魔法回数7回のお前に幸せな人生を歩む為の手助けをしてやろうというのに、お前はそれを蹴ると言うのか!?」

「うん。だって仲丸俺を身代わりに使うつもりでしょ?」

ドキィッ!?・・・・・ソ、ソンナコトハナイヨ?」

「自分でドキッて言った上に言葉片言だけど?」

じぃ〜と疑惑の目を向ける和樹と、冷や汗ダラダラな仲丸。

「あ・・・仲丸後ろ後ろ〜。」

「はぁ?突然なんだ、ドリ〇か?」

突然後ろを指差してそう言う和樹に、首を傾げる仲丸。

それでも一応後ろを振り向くと・・・。

な〜か〜ま〜るぅ〜・・・・っ!

修羅姫様な松田和美嬢がそこに居た。

既に彼女の周囲には攻撃魔法がスタンバイ。

いつでも発射可能だ。

「ま、ままま松田っ!?」

「あんた、魔法による授業エスケープおよび覗き行為はB組協定違反だっていつも言ってるでしょうっ!?」

「だ、黙れ松田!貴様、いつから権力側についたんだっ!」

「決めたのはあんたでしょうがっ!!」

放たれる魔法攻撃。

「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!、も、戻ればいいんだろ戻ればっ!!」

「黙りなさい!、和樹を巻き込もうとした罰よ、大人しく灰になりなさいっ!!」

「うぎょえぇぇぇぇっ!!?」

爆音を上げて遠ざかる二人。

「和美、相変わらず元気だね。」

そんな二人を見てもマイペースな和樹であった。

「まったく、またB組の馬鹿共なの?」

ちょうどその時、保健室のドアを開けて上半身下着だけの女性が出てきた。

「あら?」

「の?」

目が合う和樹と女性。

とりあえず和樹は自分が疑われるのは嫌なので

「覗いていたのはB組の仲丸由紀彦です。それじゃ。」

「え?あ、じゃあね・・・?」

きちんと一礼してその場を後にする和樹。

残された女性はそんな彼の行動に少々戸惑っていた。


「くそぉぉぉっっ!何故俺が貴重な魔法回数を使って修理せねばならんのだ!?壊したのは松田だぞっ!?」

「自業自得。」

「抜け駆けするからだ。」

昼休み、あちこちボロボロだが蘇生した仲丸が吼えていた。

それに対して冷たく返す和樹と浮氣光洋。

和樹は秋葉紗苗手作りのお弁当、浮氣はパンを食べている。

因みに、紗苗が和樹に弁当を渡しても何も言われないのは、彼女が和樹を餌付けしているか、何かの実験をしているからと思われているため。

実際の所紗苗は和樹に惚れているのでそんな事は無い上に、知っているのは女子だけなのでまぁ問題ないだろう。

ただ、当人である和樹がその弁当の気合の入り方とか渡す時の紗苗の赤い顔とかにまったく気付いてないのが涙を誘う。

「うるさいっ!くそっ、松田さえ来なければ風椿は俺のものだったのにっ!!」

「ありえない」

「無理無理。」

またも冷たく返す二人。

仲丸の行動もほとんど毎度の事なので二人も真面目に相手をしない。

「えぇい淡白な連中め。俺のように壮大な野望とか目標は持たないのかっ!?」

「ふ〜ん、あんたの野望って覗きなわけ?最低〜。」

「げっ、松田っ!?」

いつの間にか和美が和樹の後ろに現れ、弁当から玉子焼きを摘み食いしている。

その光景を見た紗苗がギリギリと歯を鳴らしていた。

「俺なら、目標にするのはあっちだな。」

浮氣が校庭を指差すと、そこには何故か巫女(?)服姿の少女が居た。

腰には刀なんか挿しちゃっている。

「一年の神城凛。けっこう美形だろ?」

「浮氣は年下好きか・・・・。」

「でもあの子の家、結構な名家なんでしょ?」

「マジかっ!?」

名家の単語に反応するのはやっぱり仲丸。

全然懲りていないらしい。

「でも、このクラスの皆も美人で可愛いけど、この学園ってそういう子多いよね。」

何気なく言った和樹の言葉に、教室に居た女子全員がピクンッと耳を傾けて反応する。

和美もどこか嬉しそうに和樹の髪を手櫛で整えている。

「まぁ、式森にはまず関係のない話だけどな。」

浮氣が皮肉を込めた言葉を向けるが、それに反応するのはクラスの女子達。

殺気の篭った瞳で浮氣を睨むが、まったく気付いていない。

「おいおい、せめて夢くらい見させてやれって。」

フォローに見せかけた嫌味を言う仲丸にも殺気の視線が降り注ぐ。

和美に到っては頬を痙攣させて攻撃魔法を唱えようとしている。

「そうだね。」

和樹は二人の言葉を特に気にもせずに弁当を平らげる。

「だがな式森よ、このクラスの女子が可愛いなんてのは貴様の妄そ―――「黙れ」『バキィッ!』――へぶぅっ!?」

いつも一言多い仲丸が和美の魔法を纏った拳に殴られて沈黙する。

その仲丸をゲシゲシと他の女子がリンリする光景を見て、浮氣がやっと自分に向けられている殺気に気付く。

その光景もいつもの事とばかりに和樹は気にせずに荷物を纏めて席を立つ。

「あ、秋葉さんお弁当ありがとう。とっても美味しかったよ。」

「あ・・・・式森君・・・。うん・・・・また作る・・・・・。」

「楽しみにしてるね。」

紗苗に弁当箱を返して笑顔でお礼を言う和樹。

彼女の頬が赤くなっているが、やっぱり和樹は気付かない。

そのまま教室を出ようとした所で、ちょうど教室に入ってきた二人とぶつかりそうになる。

「きゃっ、ちょっと危な――あ、式森君。」

「あ、ごめんね中田さん、結城さん。」

「うぅん、式森君なら全然良いのよ。気にしないで。ね、結城。」

「うん、むしろそのまま押し倒されても・・・きゃっ。」

赤くなってイヤンイヤンしている結城を無視して一子が和樹に向き直る。

「で、式森君どうしたの?荷物持って。」

「うん、この後魔力診断でしょ?また男子達の賭けの対象になるのも面倒だし、早退するんだ。」

「そんな・・・ね、私たちがそんな事させないから一応受けて?もし使ってたら大変なんだしっ」

心配で顔を歪めた一子が懇願するが、和樹は優しく笑って大丈夫と返す。

「そうそう使ったりしないから心配しないで。それじゃ、先生によろしくね。」

「あ、式森君っ」

手を軽く振って帰ってしまう和樹。

その後ろ姿に肩を落す一子。

松葉はまだ妄想から帰ってこない。

「今日の帰り、デートに誘おうと思ってたのになぁ・・・。」

落胆して教室に入る一子。一応松葉を引き摺って。

その後、和樹が帰ったことで怒りMAXな女子によって、彼の魔法回数を当てる賭けをしていた男子が地獄を味わうのだが・・・余談なので置いておこう。


和樹が紅尉に捉まって居るのと同時刻、準備室で刀を持った少女が念話でなにやら会話しており、和樹が寮へと向かっている時に生徒会室で電話片手に話している三年生が居るのだが・・・今回は省略。

それよりも問題なのは、部屋に帰ってきた和樹と、その部屋で着替えていた少女であろう。

和樹は部屋に誰か居ると察知して警戒しつつ扉を開けた。

その中に居たのは、なんと下着姿の美少女。

ああ―――なんてお約束―――

そんなフレーズが浮ぶ和樹の耳を、少女の悲鳴が貫いた。

慌てて外へと飛び出してドアを閉める。

とりえず夢ではない事を頬を抓って確認。

それから扉をノックすると、「どうぞ」の声。

扉を開けると先ほどの美少女が、三つ指ついてお出迎え。

―――――なんでさ――――

某魔術使いの言葉が浮んだ和樹だった。


「で、君誰なの?」

「あ、はい、私は宮間夕菜と申します!和樹さんの妻になりに来ました。」

「あ〜・・・端?俺の端って何?」

「違います!端じゃなくて妻です!夫と妻の妻ですっ!」

「ああ、そっちか。」

ポンッと手を叩いて納得する和樹。

と言うか普通『妻』と聞いて『端』で変換するか?

和樹の漢字能力は昔の携帯レベルかもしれない。

「でも、俺まだ結婚できる年齢じゃないし、第一君の事知らないよ?」

「そ、そんな!?私のこと忘れちゃったんですかっ?昔約束したじゃないですかっ!!」

「そんな事言われても・・・。」

と和樹が困っていると、ドンドンッと荒っぽく扉をノックする音。

和樹が誰かな?と思いつつ開けようとすると、夕菜がそれを遮ってしまう。

「ちょっと、居ないのっ?」

「帰ってください!和樹さんは誰にも会いません!」

勝手に決めないでよと和樹が呟くが、聞いちゃくれない。

「あ、その声は夕菜ちゃんねっ?良いじゃない、運が良ければ一回で済むんだし。」

「ダメです!そんな事許しませんっ!」

扉を開けようとするドアの外の人と、それを邪魔する夕菜。

だが、相手の方が力があったのか扉が開いてしまう。

「お邪魔するわね。」

「玖里子さん帰ってくださいっ!」

「あれ?三年の風椿先輩?」

玖里子を帰らせようとする夕菜とそれに気にせずに上がる女性。

今朝方会ったあの風椿玖里子嬢であった。

「あら、私のこと知ってるなら話が早いわね。さ、しましょ?」

「はい?」

何を?と聞く前に押し倒される和樹。

その上に馬乗りになり、和樹の制服を脱がそうとする玖里子。

「ちょっと、警察呼びますよ?」

「それ女の子の台詞・・・と言うかなんで冷静かな・・・?」

割とこういう事に慣れている和樹は冷静に対処しようとする。

修羅場慣れってのも嫌な慣れだが。

「玖里子さん退いてくださいっ!和樹さんに変なことしないでっ」

「いいじゃない、一回くらい。その後なら好きにしていいから。」

なにやら勝手なことを言い合う二人。

和樹はスルリと玖里子の下から抜け出すと、被害を被らないように二人から離れる。

と、再び扉が開き、今度は巫女(?)服姿の刀少女が入ってくる。土足で。

「貴様が私の良人か?」

「はい?」

またか・・・と内心ため息をついている和樹。

「私の良人になると言うので悪いが調べさせてもらった。だが調べて驚いた。成績は普通、運動神経も普通で趣味も特技も無し。おまけに最悪のクラスと言われるB組の所属でしかも覗きまでしているとは・・・。」

「いや、最後の俺じゃないよ?」

覗き云々は仲丸の犯行だが、どうやら罪を擦り付けられたらしい。

この事を和美にでも話せば、即女子達により仲丸制裁が開始されるだろう。

因みに和樹の成績云々は、和美達に目立つな!と言われた和樹が手を抜いているからで実際の所運動神経は抜群。勉強も基本的なものなら大抵が上位を狙える。趣味は魔獣達との散歩や遊び、毛繕いで、特技は当然魔獣を従えることだ。

が、これらも和樹を巡るライバルを減らすために和美達が意図的に情報改ざんをした。

さらに男子が調子に乗って色々吹いて周った為に、和樹の評価がかなり酷くなってしまっていた。

が、教師陣からの信頼などは厚く、彼らからは『B組の最大良心』、『B組最終防衛ライン』などと呼ばれている。

「貴様のような男を良人にせねばならないとは、この上ない屈辱!」

「いや、ならしなければいいじゃん。」

至極真っ当な和樹の意見も、刀少女こと神城凛はまったく聞かない。

「黙れ!貴様さえ消えれば私は自由になれるのだ、本家の命令も消える、よって潔く死ねっ!!」

「うわっ、危ないなっ」

明らかに和樹の首を狙った刃を軽く避ける和樹。

脳内では『これなら碧鱗の人達の方がよっぽど強いな〜』なんてお気楽に考えながら。

「えぇい、避けるな大人しく死ねっ!!」

「快楽殺人者の手にかかるつもりは無いよ。」

ひょいひょいと避けながらも言い返す和樹。

その言葉がよほどムカついたのか、さらに攻撃の手を増やす凛。

「何してるんですかっ!止めてくださいっ!!」

先程まで玖里子との口論に夢中になっていた夕菜が気付き止めに入った。

「むっ、邪魔するなら女とは言え容赦しませんよっ」

「私は和樹さんの妻です、和樹さんを傷つけるなら私が相手になります。」

「ならば、神城家八百年の歴史が生み出した技、その身に刻むがいいっ!」

凛の刀が淡く光り始める。

「剣鎧護法!?刀に取り付かせてるのっ?」

後ろで眺めていた玖里子が驚きの声をあげていた。

「だったら私も。宮間の精霊魔法、特とご覧あれっ」

対抗して夕菜も魔法で精霊を召喚して凛と対峙する。

「西洋かぶれが、いい気になるなっ!」

「そっちこそ、調子に乗らないでくださいっ!」

激しく激突する二人。

余波で和樹の部屋が大変なことになっている。

水浸しだったり焦げたり壊れたり・・・・。

温厚な和樹でもいい加減怒りが溜まってくる。

そんな彼を押し倒すのは・・・

「あの二人が潰し合いしている間に・・・しましょ。」

「だから、強姦罪とか女性でも適用されますよ?」

「そんな事言わないで、ちょっとだけでいいんだから。」

ズリズリと這って逃げる和樹と、それを追いかける玖里子。

「ああっ!?何してるんですかっ!!」

それに気付いた夕菜が、和樹諸共なレベルの魔法を放つ。

流石にヤバイと思った和樹が対処する前に、玖里子が胸元から霊符を取り出して扇のように広げる。

「霊符!?」

「剪紙成兵っ」

玖里子が投げた霊符が夕菜の攻撃を防ぎ、さらに紙の兵士になって二人に襲い掛かる。

それを凛が切り捨て、夕菜も燃やして対処する。

が、その余波でさらに部屋がボロボロになる。

・・・・・・・・・・いい加減にして。

「「「え?」」」

静かな、しかし響くような声に一瞬三人の動きが止まる。

三人の視線の先には、俯いて震えている和樹の姿。

その手には・・・自分と和美達を写した海の写真が。

先ほどの攻撃などで写真立てが壊れたのか、あちこち焦げて水浸しになっていた。

「いい加減にしてよ・・・俺にも、限界があるからさ・・・。」

「ふんっ、軟弱者が何を――「黙れ」――うっ」

顔を上げた和樹の言葉に黙らせられる凛。

彼の眼光に貫かれて、身体が硬直する。

「理由も知らない俺の部屋に勝手に入って、やれ妻だのしましょうだの死ねだの・・・身勝手すぎるよ。だから・・・やれ。」

和樹が短くそう呟くと、彼の影から何かが彼女達の影へと移動し・・・三人の身体がビクッと痙攣して倒れる。

「あぐっ・・・な、何をした・・・っ!」

「うぅぅ・・・あ、頭が・・・体が・・・っ。」

「ちょ、なんなのよ・・・っ」

「暫く動けないですよ。この子達の攻撃はただの人間には辛いでしょうから。」

そう言って膝立ちになる和樹の足元に、黒い物体が浮かび上がる。

『ギギギギギッ』

「ひっ!?な、なんですかそれっ!」

「ぐっ、貴様妖魔の類かっ!」

夕菜がそれを見て短く悲鳴をあげ、凛が妖魔(悪霊や妖怪など)と勘違いする。

「妖魔?そんなんじゃないよ。この子は魔法生物。名前をシャドウ・ストーカー。影から忍び寄り影から攻撃する魔法によって作られた人工生命体。まぁ、現代じゃほとんど作れない生物だけどね。」

和樹がその身体を撫でると、シャドウストーカーは黒いクラゲのような身体を嬉しそうに振るわせる。

「そ、そんな生き物をどこから・・・?」

「召喚で呼び出した。場所は知らないけどね。」

シャドウストーカーを肩に乗せて笑う和樹。

醜悪に見える見た目も気にせずに戯れている。

「召喚って、あんた魔法使ったのッ!?」

「さてね。その事を貴女たちに話す必要は無いでしょう?身分偽装に強姦に殺人の犯罪者さんには。」

和樹は笑っている。だが、その目はまったく笑っていない。

和樹が持っている写真。それは、皆と、大切な人達と行った旅行の写真。

大事な彼の宝物。それを傷つけられて笑っているほど、彼は聖人ではない。

むしろ、大切なモノを傷つける相手には一切容赦しないのだから。

「そんな、私は本当に・・・!」

「え〜と、とりあえずどうして俺のところに来たのか話してもらえます?」

倒れている夕菜達の前にしゃがんで問いかける和樹。

その肩ではシャドウストーカーが三人を威嚇していた。

主を怒らせた相手、彼ら魔法生物は主に忠実なためにかなり怒っているようだ。

「・・・あたしが説明するわ。あんた、自分の先祖ってどんなだか知ってる?」

「先祖?そうですね・・・割と有名な人が多かったと聞いてますけど?」

「割と何かじゃないわよ、あんたの祖先には、『賀茂保憲』や『安部康親』とかの子孫が沢山混じっているの。日本の有名魔術師も50は下らないのよ?さらにポーランド人が居るはずだけど、、彼女は魔術師『トファルトフスキ』の子孫なんですって。他にもスイスの『パラケルスス』やイタリアの『ミランドーラ』とか『呉の董奉』とか外国からもかなりの数の有名な血が入ってきてるのよ。」

出るわ出るわ、魔法関係の教科書には必ず載っている有名人の名前。

それが全部和樹の祖先だと言うのだ。

「(ふ〜ん・・・なら俺の力もその人達のお陰なのかな?)」

「で、その情報が葵学園のサーバーからハッキングされて漏れ出したの。」

「つまり、皆俺の遺伝子目当てってこと?」

「そう。あんたの血には世界中の有名な魔術師の血がギュッと詰まってんのよ。言っちゃあなんだけど式森の家系って、大した魔術師がいないでしょ?その分、全部あんたに濃縮されてるって訳。あんたが魔法回数七回なのに名門である葵学園に入学できたのは、その潜在能力のおかげなの。出なきゃあんたみたいな取柄のない男が、学園に入学できるわけないじゃない。」

かなり失礼な事を言っているが、和樹は特に気にしていなかった。

いつもの事だと受け流し、続きを諭した。

「ほら、あたしの家って魔法業界じゃ成り上がりだから睨みを利かせる何かが欲しい訳。だからあんたの遺伝子をちょこっと・・・ね?」

「・・・・・・ふ〜ん、神城さんも?」

「気安く呼ぶな!」

「凛ところも旧家で伝統とかもあるけど、ここんとこずっとヤバイみたいなのよね〜。だから家族会議で新しい強力な血でも入れようってことになったんじゃないの?」

「確かに貴様を婿にしてこいと言われた。だが貴様のような男を婿にするつもりなどない!」

「そりゃ結構。俺も殺人凶の奥さんなんて嫌だし。」

「なんだとっ!?」

『ギギギギッ!』

凛が和樹の言葉に無理をして立ち上がろうとすると、彼女の顔の目の前に二匹目のシャドウストーカーが現れて威嚇してきた。

「うっ!」

「良いよ、気にしないから。」

今にも飛びかかろうとするシャドウストーカーを宥め、今度は夕菜のほうを見る。

「彼女も?」

「夕菜ちゃんの家は最近落ち目ぽいし、もう一度大きくなるために・・・って所かしら?」

「違いますっ!確かに家からそう言われました、でも私は約束したんですっ!!」

「でも結局は同じ、俺の遺伝子目当てでしょう?」

「そんな・・・違いますっ!!」

「違わないよ。勝手に部屋に入って勝手に妻とか名乗って・・・さっきだって風椿先輩ごと俺を攻撃してきたし。信じられないよ。」

「そんなぁ・・・っ!」

「もう良いよ。帰って。そして二度と俺に近づかないで。貴女達みたいな人が近くに居ると迷惑だから。」

そう言って背中を向けて荒れた部屋を元に戻す為に片付け始める。

彼女達の痺れにも似た症状は時間と共に癒えるようで、凛や玖里子はもう立ち上がれている。

「帰れと言われても、こっちも色々と訳があるのよね。」

「知りません。そっちがこちらの意志を無視するな俺もそちらを無視します。」

「貴様・・・よくもやってくれたな、その妖魔共々葬ってくれるっ!!」

凛が再び切りかかるが、その刀を素早く避けて腕と取り、そのまま締め上げてしまう。

「ぐぅっ!?」

「本当なら俺だって女の子にこんな事したくないけど・・・殺されるのは御免だからね。」

「き、貴様・・・本当に式森和樹なのかっ?」

「そうだよ。君たちが上辺しか知らない式森和樹。でもどうでも良いよ、もう関わりたくないからさ。」

そう言って腕を開放する和樹。

しかし凛の刀は未だ取り上げたまま。

「貴様、返せっ!」

「二度と関わらないなら返してあげる。それとも、俺を殺して犯罪者になりたいの?ならその辺の銀行でも襲えば良いよ。」

「ふざけるなっ!私は貴様を殺して自由になるんだっ!」

「なれるわけないでしょ?それとも何?俺の命にはそんな価値無いて言いたいの?」

「そうだ、貴様のような軟弱な男にっ」

「そう、なら君は最低だね。だって君の言っている事って、その辺のホームレスの人殺して、彼らには生きる価値が無いって言ってる人達と全く同じなんだから。」

「そ、そんな事・・・っ」

「あるわよ凛。」

二人の口論に、玖里子が加わった。

「言っちゃなんだけど、あんたの行動はもう犯罪者よ?あたしも無理矢理押し倒したけど、あんたはもう彼が通報したら即逮捕レベルなのよ?」

「で、ですがっ!」

「凛、頭を冷しなさい。彼の言い分が正しいわ。」

「くっ・・・・・・・。」

唇を噛み締めて俯く凛。

それを見て安堵し、和樹にウィンクをする玖里子。

「これであたしの罪も消してくれると嬉しいんだけどな〜?」

「頭の回る人ですね。まぁ、助かりましたけど。でも遺伝子云々は嫌ですよ。」

「あら頑固ね。でも、ちょっと興味湧いてきたわ。あんたのその強さとか、その魔法生物とか・・・ね。」

「好奇心旺盛なんですね。知りませんよ、怪我しても。」

「和樹・・・さん。」

ようやく身体が自由になってきたのか、夕菜が立ち上がって懇願する目で和樹を見詰めてきた。

「酷いです和樹さん!私は妻なのに・・・約束したのにっ!」

「じゃぁ逆に聞くよ宮間さん。君は酷くないの?」

「え・・・・?」

和樹の言葉に唖然とする夕菜。

「君は、僕の妻だと勝手に名乗ってるけど、もし君が逆の立場だったら?約束した、俺が夫だって見知らぬ男に突然言われたらどうする?」

「そ、それは・・・でもっ」

「それに、君は俺の何を知ってるの?何も知らないでしょう?例に、俺の好きな色言える?」

「・・・・・・・・・・。」

因みに黒と白である。

「言えないよね、何も知らないんだから。俺も君の事何にも知らない。なのに押し掛けて妻なんて言われても、正直迷惑なんだよ。」

「そんなっ、私は・・・っ」

「言い訳は聞きたくないんだ。見なよこの部屋。滅茶苦茶だ。こんな事をするのが妻なの?だったら俺は妻なんていらないよ。」

その言葉が向けられたのは、夕菜だけではなかった。

玖里子と凛にも言葉が向けられていた。

「・・・・・・・・・ッ」

「あ、夕菜ちゃんっ!」

夕菜は耐え切れなくなったのか涙を溢して部屋から出て行った。

「・・・・・・・・・あの子、前まで海外に居たのよね。」

「・・・・・それで?」

「昔から親の都合であちこち行ってたらしいんだけど、ある子供と約束したんですって。大きくなったらお嫁さんになるって。あの子会うたびいつも言ってたわ。」

「・・・・・・・・約束か・・・。」

「あたしと凛は家の命令だけど、あの子はそれだけじゃないのよ。だから・・・。」

「追いかけろと?」

「そうよ。」

「・・・・・・・・・・・案外いい人なんですね、風椿先輩。」

「な、何よ突然。」

「いえ、そう思っただけです。・・・神城さん。」

「・・・・・・・・なんだ。」

「本当に自由が欲しいからって、他人の自由を奪ったら・・・その時点でもう自由になれないよ。」

「・・・・・・・・え?」

「その事、良く覚えておいてね。はい。」

「あ・・・・式森・・・?」

刀を優しく手渡されて戸惑う凛に、優しい笑顔を浮べ・・・和樹もまた、夕菜を追って走り出した。

その手には、彼女が落としたと思われるペンダントを持って。


「・・・・・・私は、何を考えていたんでしょうか・・・・。」

公園で一人、ブランコに座る夕菜。

その瞳からは涙がこぼれ、彼女のスカートを濡らす。

「和樹さんの言うとおりですね・・・私は和樹さんのこと何も知らない・・・。なのに勝手に妻だと名乗ったりして・・・。」

和樹の立場に自分を置き換えて考えてみたのだろう。

見ず知らずの男に強引に迫られる恐怖と怒り。

若干男女での違いがあるにせよ、和樹を不快にさせたのは確か。

「もう和樹さんに逢わす顔がありません・・・・このまま・・・・・えっ?」

絶望感に苛まれながら呟いていると、視界の端を白いモノが通過した。

顔を上げると、彼女の周囲だけ白い美しい結晶・・・雪が降っていた。

「雪・・・・どうして?・・・・あ、あれは・・・。」

視線をさらに上に上げると、そこには可愛らしい踊りを踊る小さな妖精の姿。

白い服を着た、白銀の妖精がキラキラと雪を降らせながら踊っている。

「そんな、どうして妖精がこんな所に・・・・。」

普通、妖精は人の住む場所には現れない。

それなのにあの雪の妖精は街中の公園で踊っているのだ。

「・・・・・・・・・・・・大きくなったら・・・・・・。」

「え・・・・・?」

突然後ろから声が聞こえ、振り向く。

「・・・大きくなったら、お嫁さんになってあげる。・・・・君はそう言ったっけ。」

「か・・・・和樹さん・・・?」

そこには、純白の大型犬を連れた和樹が立っていた。

その和樹の肩へと妖精が降り立ち、彼に頬擦りする。

「このペンダントで思い出したよ。ちょうど10年前かな?」

「・・・・は、はいっ、思い出してくれたんですねっ!」

「うん。・・・・でも、俺、その時に断ったんだよね。僕には勿体無いよって。」

「え・・・・?」

「それでも君はお嫁さんになるって言って・・・俺は仕方なくこう言った。『じゃぁ、大きくなった君が、僕が惚れるような大人になっていたら、その時はまた約束しよう』って・・・。」

「・・・・・・・・そうでしたっけ。約束の事ばかり考えてて、忘れてました・・・・・。」

「じゃぁお相子かな。君も俺も。」

ゆっくりと歩き出して夕菜の前に立つ和樹。

妖精、スノードロップはお座りして待つ犬・・・ではなくウィンターウルフの頭に乗って二人を眺める。

「和樹さん・・・私、和樹さんが惚れるような大人になれましたか・・・・?」

「・・・・・・・まだ、早いかな。」

「そうですか・・・・。」

和樹の返答にそれほど落胆はしない夕菜。

答えは判っていたのだろう。

「それじゃぁ、友達から始めようか?」

「え・・・・?」

「いきなり妻じゃ俺も困るけど・・・でも、友達からなら歓迎するよ。宮間さん。」

「和樹さん・・・・っ。はい、お友達からよろしくお願いしますっ!!」

歓喜の涙を浮かべて和樹に抱きつく夕菜。

その光景にスノードロップが真っ赤になって手で顔を覆い(それでも指の間から見てる)、ウィンターウルフは尻尾を振っている。

「それと和樹さん、名前で呼んでください。」

「え、でも・・・。」

「お願いしますっ、ちゃんと呼び捨てで。」

「判ったよ・・・・夕菜。」

「はいっ、和樹さんっ!」

友達から関係を始めた二人を、雪の妖精が降らせた雪が祝福するように輝いていた。

「良いのですか、玖里子さん。」

「良いじゃない、感動のシーンなんだから。でも、これ以上は夕菜ちゃんに譲る気は無いわ。凛はどうするの?」

「私は、軟弱者は嫌いです。ですが・・・式森――先輩は尊敬に値すると思います。」

いつの間にか来ていた二人が、和樹達の様子を物陰から窺がっていた。

凛は道すがら聞いた玖里子の知る和樹の情報(B組男子が流したデマではない正確な方。しかも学園教師陣の私情入りまくり)を聞いて、和樹に対する評価を改めていた。

『B組で一番信頼が出来る人』、『B組の最大最後の良心』、『B組に対するリベリオン』、『B組でなければ模範的生徒』等など、和樹の正当な評価を聞いた為、凛の和樹を見る目は柔らかいモノになっていた。

「あらあら、これは負けてられないわね。」

「べ、別に好きとかそう言った感情はないです!ただ、信頼できる人物であると――」

「はいはい、そういう事にしておくわ。」

「玖里子さんっ!」

からかう玖里子とそれにムキになる凛。

そんな二人の所にも、輝く雪が降り注いでいた。


「大変だったんですね、式森さん。」

「はい、大変でした。」

寮の一室。和樹の部屋ではない場所で、和樹と喪服を着た女性・・・華怜が向かい合ってお茶を飲んでいた。

あの後現れた玖里子が部屋を弁償すると言い、その日は解散となったが・・・時間的に部屋の修理が間に合わず、本日和樹君は宿無しとなっていた。

困っている時にジャストタイミングで現れた管理人さんこと華怜は、困っているなら自分の部屋が空いていると言って半ば無理矢理和樹を連行してきた。

そして彼女の料理を食べて食後のお茶と相成った。

既に入浴は済ませ、後は寝るか勉強するかなのだが・・・勉強道具はボロボロなので無理。

と言うわけで寝るしかないのだが・・・それが最大の問題だった。

「あの、尋崎さん・・・・」

「はい、なんですか?」

和樹の声に柔和な笑顔(ヴェールは外している)で答える華怜。

彼女の素顔を知る人物は、この寮では和樹だけだったりする。

「何故、布団に枕が二個並んで置いてあるのでしょうか?」

二人がお茶を飲んでいる部屋の隣、布団が敷いてある部屋をチラっと横目で見ると、そこには普通サイズの布団に、枕が二つ並んで置いてあった。しかも枕元には何時でも使用可能なティッシュと、何かが入った小箱が。

何が入っているのかは・・・彼女しか知らない。

「それはもちろん、二人寝る為ですよ?」

平然と言い放つ華怜。

流石に冷や汗を流す和樹。

和樹のマイペースも、彼女の前にはボロボロに崩れ去る。

「あの、もしかして俺もあの布団で寝るのでしょうか・・・?」

「そうですよ?布団は一組しかないですから。」

これまた平然と返す華怜。微妙に頬が赤かったりするが。

「え〜っと・・・俺、床で結構ですから。」

「そんなっ、それじゃ風邪を引いてしまいますよっ。私の事は気にしなくていいですから。」

「気にします!駄目ですよそんなの。」

了承。

「しないでくださいっ!!」

で、そんなやり取りが長らく続き・・・結局和樹君敗退

華怜の着やせして見える豊満な大人の肉体に包まれて眠ることに。

途中、彼女の手が妖しく動いていたが、気合で眠りに付いた彼が気付くことは無かった。

「んふふ、とっても元気でしたね・・・♪」

と、翌朝和樹が出て行った後、何かを思い出して頬を染めている華怜が居たとかどうとか。


げんなりと続く。


モンスター図鑑

ブラウニーズ
小さな妖精で、多種族のお手伝いが大好きな種族。
お掃除などが大好きで、温和な性格の固体が多い。
何故かメイド服などを着用しているが、特に意味はないらしい。

ウィンターウルフ
雪原に住まう純白の狼。
雪の女王を守護する存在と言われ、固体戦闘能力は惹低いが、数が揃うと強い。
特にこれといった能力は無いが、寒さに強く、風や水系統の魔法に耐性を持っている。

スノードロップ  
雪原の妖精。雪の女王の娘とも呼ばれる。
愛らしい姿だが、魔法が使えるので割りと強い。
氷の魔法が得意で、彼女達が踊ると雪が降ると言われている。

シャドウ・ストーカー
魔法生物と呼ばれる種族で、その名の通り魔法によって生まれた人工生命。
それが魔界や人が寄り付かない辺境で繁殖したのが彼ら。
知能等は低く、主の命令には必ず従う。
影に潜る能力を持ち、その触手で相手を混沌(頭痛や痺れ等の症状を引き起こす)を与える。
耐性が弱い相手なら一撃で倒す事も出来る。


※注意:モンスター図鑑の内容はカードの能力と見た目、後は作者の脳内妄想です。


あとがき。

ラフェロウです。

設定だけの段階だったのに意外にも好評だった為に勢いで書いてしまったこの話。
メインヒロインズが目立ち過ぎて、和美達幼馴染ヒロインズが目立っていない・・・と言うか千早と沙弓出てないしorz
一応次回は和美が主役?なお話かと。いや、主役は和樹ですが。
次回は夕菜が転校してきて、和美達と初顔合わせ。ついでに幽霊編も収録予定(何)

あとこの話の夕菜はキシャー化しません。・・・・・・・・・・と思います(え)
このまま清純派で通して欲しいのが作者の願い・・・たぶん無理でしょうけど(汗)

それと、和樹の固有スキルをFate風で紹介。


女殺し・A+(無自覚に笑顔や行動で女性を虜にする。ほぼ常時発動)

殺し文句・A(無意識に女性を落す言葉を発する。このレベルだと真顔で言い放っている)

女性磁石・B+(どんな場面でも周囲に女性がいる)

愚鈍・EX(朴念仁。もはや救い様などありはしない)

博愛主義・B(大抵の相手なら心を許し、助けようとする。ただし悪人は除外される)

媒介魔術・限定A(自分の血を媒介にする事により、魔法レベルの魔術を行使可能。式森の血筋故可能だが、召喚魔術のみ)

異形の主・A(魔獣や魔物を従える能力。式森の複雑な血筋が彼にこの能力を与えた)

カリスマ・B−〜A+(相手、場合によって変動する。魔獣相手には強大なカリスマとなる)

黄金率・B−(人よりかなり裕福。普通に金持ちレベル。)


そして和樹が持つ最大の特殊能力(宝具みたいなモノ)

魔獣の檻・EX
・自身の魔力を元に檻と呼ばれる空間を体内(魔力内)に形成し、その中に特定のモノ(和樹の場合は契約した召喚獣)を内包できる能力。
式森の特殊な血筋と和樹の才能が生み出した一種の奇跡。
内包できる存在は魔力に比例し、対象が大きければ大きいほどキャパシティーを消費する。
また、その空間はいくつも存在し(魔力の量に比例)、一つの空間に複数の存在を内包可能。
それぞれ出入り口の場所が異なり、身体の様々な場所に門が開かれる。
内包されている存在は、宿主から魔力を与えられているため食事も必要ない。

・和樹が把握している門の数は現在9。この数は魔法回数とは比例していない。
一つの部屋に、S級なら一匹、A級なら二匹、B級で三〜四匹となっているが、和樹が現在内包しているのは主にC・D級だけ。
S級を内包した場合、魔力がかなり持っていかれるので他の部屋を圧迫させてしまう。


と言う能力になっています。色々矛盾等も多いかもしれないため、後々手直ししていきますが概ねこんな感じです。
あと、和樹自身は確かに強いですがそれは一般人に対してであり、相手がプロなら均衡したりします。
それとカテゴリーランクですがこれは『D』を一般人の基準として考えての独自設定です。
英霊と比べたりしないでください(何)
でもこれで考えると和樹の幸運ってF?(マテ)


それとこの小説内での召喚獣の扱いですが、ベヒーモスなどがS級なので、それより強いバハムートや六皇子などはEX級としてあります。まぁモンコレのアース・ベヒモスもかなり強力ユニットなのでS級扱いでOKかな〜と思いまして・・・(汗)
基準がラフェロウの考えなので、多少の矛盾や誤差は見逃して欲しいです・・・(マテ)
ただ、「このユニットは如何考えても〇級だろう!」と言う意見等は大歓迎です。

モンコレの方の設定を活かそうとすると、色々辻褄合わせが大変だったり・・・。
でも頑張って書いていこうと思っています。

余談ですが、ラフェロウは純正(単一属性)魔デックオンリーでした。
アヌビス主力で押せ押せ、死んでもギアスやらスペルやらで道ずれ&手札減らし。
大抵の勝ちが相手のデック尽きだったりしました(何)
まぁ、全然弱いんですけどね、私(涙)


そんな訳でレス返しです。

と言うかここまでレス付いたの初めて・・・皆さんモンコレ好きなのかな?そうだとかなり嬉しい。


D,様
感想いつもありがとうございます。
今まで色々なまぶらほ二次を見ていて、召喚士な和樹君は見たこと無かった(私が無いだけ?)ので、思い切って書いてみました。構想自体は夏前から考えていたんですけどね。

装備カード>はい、ちゃんと装備カードも登場しますよ。と言ってもアイテムとしてですけど。
モンコレのアイテムはかなり面白い能力持ちが多いので色々便利です。
私の主力カードはティポーンとヴゥリトラ>羨ましいです(何)
私はあまり強力カードやレアを持っていなかったので・・・主力はアヌビス達。
一番の相棒は沼竜ことスワンプ・ヒドラと竜を狩る天使でしたね。


SLY様
感想ありがとうございます。私もノベルからカードに入った人間です。

真の名>一応、和樹君もこれを行っています。ただ、魔獣に分類されるモンスターの場合は、よほどのモンスター(ベヒモスとか)でないかぎり自分から召喚に応じて使役されてくれます。
これは和樹君の博愛主義と式森の血が相乗効果を起した結果だったりします。
その余波で和樹君は普通の犬猫鳥などに好かれまくりです。

ネロ教授>実は最初は教授みたいに身体(影とかから)ズルズルとヘルハウンド達が現れる感じにしようと思っていたりしました(汗)
でもなんか召喚ぽくないので止めましたが(苦笑)
今回の話も楽しんで頂ければ幸いです。


A・H様
こちらこそ初めまして&感想ありがとうございます。

モンコレナイト>私も結構これ好きでしたよ〜。
なるべくモンコレを知らない人にもわかるように書いていきたいと思って頑張っております。
もちろん、主体であるまぶらほを活かせる形で。
今回の話はご期待に添えたでしょうか?


幻覚キャベツ様
感想ありがとうございます。

儀式スペル>これは、地形を媒体とした大規模効果魔術として考えております。
なので魔法回数が少ない和樹君でも、回数を気にせずに使えるありがたいスペルですね。
ただ、行使には地形・術式・時間が必要になるので連発は無理ですが(汗)
しかし空中庭園ですか・・・その案頂きです!(何)
メイド編の続きとして、幻覚キャベツ様がよろしければ書かせて頂きます。
既にラフェロウの脳内で妄想ストーリーが構築され始めていたり・・・(マテ)

魔法が使えるモンスターの魔法使用回数>ほぼ無限と言いたいですが、一応限度があると言う設定にしてあります。呪文詠唱や、召喚士から供給される魔力等を考えると長くなるので今度のあとがきで詳しく設定を記載させていただきます。

サボテンマン・・・なんて凄いレアカードを(何)
自分も手札破壊をしてました。勝てない上に嫌がられて止めましたが(汗)


無虚様
こちらでもレスさせていただきますが、訂正ありがとうございます。
これは一万桁ではなく、一万の位と言いたかったのです(汗)
素直に5桁と書けばいいのに私の馬鹿・・・orz


偽・無法召還士様
はじめまして&感想ありがとうございます。

『黒き翼の堕天使』の憑依合体>う〜ん、面白い案なのですが、和樹君はまだ上位悪魔を呼べるレベルではないので難しいですね。他のモンスターなら可能なのですが・・・(汗)
カース・エレメンタル等の能力である手札破棄は、相手の手札、つまり選択肢を奪うという能力なので、相手の精神を侵食・破壊する〜みたいな能力になると思っています。漫画でもカース・エレメンタルが術者の精神を喰らおうとしてましたし。
魔法回数の減少は・・・確かに似合っているのでこれでも良いとは思いますが、とりあえず相手の精神に攻撃するようなモノとして考えています。その辺りの設定も追々考えて行こうと思いますが、ご意見等がございましたら大募集中です。


東西南北様
感想ありがとうございます。
キシャー降臨・・・このお話では無い・・・と言いたいのですが・・・もしかしたらあるかも・・・(汗)
まぁ、降臨するとしてもかなり先になりますでしょう。と言うか私は清純派で居て欲しい・・・(涙)


なまけもの様
感想ありがとうございます。
そうですね、クロスと言うよりモンスターの能力と姿、ちょっとの設定を融合させた話と言った方が正しいかもしれませんね(汗)
和美が主役なのは、単純に作者の好みです(何)
ハーレムを作るのは私の作品の主人公共通の運命ですから(マテ)


草薙様
感想ありがとうございます。
とりあえず言える事は・・・私は伊東勢先生の作品が大好きです!
と言うかもう今回の話で伏線(でもなんでもない)が・・・(何)


早々様
感想ありがとうございます。
大丈夫です、ちゃんと皆登場・・・むしろ主役級の活躍をする・・・はず(何)


MT様
感想ありがとうございます、期待に答えられるように頑張ります。
おもしろいと言って頂けるのが何よりの励みです。


ドラ夫様
感想ありがとうございます。
私もカード=モンコレでしたね。周囲皆がモンコレ派だったので自然と私も・・・(苦笑)
聖エルドの神官戦士ですか・・・確かに面白いのですが種族人間の召喚は流石の和樹君でも難しいでしょうね(汗)
ただ、どこぞの誰かを召喚しちゃうのかなり美味しいアイデアです。


β様
感想ありがとうございます。
やはりいきなり強力モンスター(ドラゴンとか)を召喚じゃぁ、ちょっとストーリー的に面白くないように思えたので、あえてレベルが低め(コスト2とか3とか)のモンスターを多めに登場させる予定です。

ハイドラゴンでもアイテムで武装したオークやバードマンの群れにあっさり撃退されますけどね(笑)>
確かに。なのでこの話でもタイマン勝負では勝てない相手に連携やアイテムで勝負します。
大きなモンスター同士のガチンコバトルも好きですが(汗)

超重量級>この辺りも和樹君が成長するために登場させる予定です。誰が登場するかはまだ判りませんが(苦笑)
とりあえずベヒーモスは決定ですね。設定が微妙に違いますが(何)

首が二つのオルトロス>忘れてませんよ〜、単に和美ちゃんの脳内辞書でヒットしなかっただけです。
私が最初組んだデックにはハウンド・ウルフ満載でしたから思い入れがありますし。
でも六王国あんまりやってなかったり・・・(汗)

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