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「来訪者、横島忠夫 第5話(鬼畜王ランス+GS)」

真空ワカメ (2005-09-28 02:32)
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どれくらいの時間が経ったのだろうか。
意識を手放して睡眠に専念していた横島には正確に把握することができなかった。
頭がボーっとしており、現在の状況が掴めない。
10秒、20秒と時間が経過するにつれ、だんだんと意識が覚醒してくる。
やがて、周りを見渡して現状を確認するぐらいまでに回復することができた。


「……どこだここは?」


最後に残っている記憶は自分がハウゼルにナンパをしていた途中までだった。
そこでぷっつりと切れている。そして気が付けばこんな所にいるのだ。
自分の寝ているベッドを確認してみると、とにかくデカイ。キングサイズって言うんだっけ?
シーツもふかふかだし、まるでホテルのスイートルームの様だ。
横島はそんな感想を持った。
しかし、部屋全体を見渡してみると、またもや疑問だらけなのである。
ベットのサイズに負けないぐらい、部屋だってでかい。
おまけに、いかにも高そうだと言う感じの絵やツボ等がセンス良く飾られているのである。
備え付けであるソファー、テーブル、いずれも格調高い代物に見える。
少々散らかっているのが気になるがまあ許容範囲だろう。
しかし、そんな数々の高級品以上に人の目を引く部分があるのだ。
それは部屋のある一部分。おそらく入り口だったであろう場所だ。
何故か、そこだけ廃墟と言った方がいい位にボロボロに壊れていたのだ。
とても高級感のある部屋だけにそこだけが一際異彩を放っている。

しばらく、その破壊されている場所を呆然と眺めていた横島であったが
そこから、人が出てきた事によりようやく話が進む。


「あら、忠夫さん。目が覚めましたか?」

「えっと……ハウゼルさん、ですよね?」

「はいっ」


嬉しそうに返事をするハウゼル。


「なんでそんなにボロボロなんですか?」


ハウゼルは先の戦闘によりボロボロになっていた。
服は所々擦り切れており、顔も城を破壊した際に出た埃やススでドロドロに汚れてしまっていた。
せっかくの美貌もこれでは流石に色あせてしまう。
しかし、女性に対してボロボロ等と言う物言いはあまりにも失礼である。
指摘を受けたハウゼルは自分の状態を確認してショックを受けてしまった。


「あ!いや、これはその……すいません失礼します!」


横島にこのような姿を見られるのは非常に不本意であるハウゼルは
入浴と着替えをするためにその場から素早く立ち去って行ってしまった。
一人置き去りにされる格好となった横島はとりあえずベッドから出ることにした。
その時、部屋の外からなにやら話し声が聞こえてきた。


「まったくハウゼルの奴、あんなに強いならケイブリスだって一人で倒せるじゃないか」

「そうねえ……でもようやく落ち着いてくれたんだし、この話は蒸し返さない方がいいわね」

「う〜もうハウゼルを怒らせるのは辞めよ」

「その方がいいわね」


ピク ピク

横島が誇る地獄耳が発動する。
声で分かる。間違い無く美女である。
横島はすぐさま部屋を飛び出し目標を確認する。


「……あら、目が覚めたようですね」


先に横島に気が付いたホーネットが軽く微笑みながら気軽に喋りかけてきた。
すぐ隣にビキニのような服しか着ていないという格好のシルキィもいるのだが横島には全く目が入らない。
思わず本能の赴くままに飛び掛っていた。


「ごっつい美人のね〜ちゃんやぁ!!」

「え、ちょ、ちょっと……」

「あ、危ないですホーネット様!」


その素早い身のこなしに、すでにかなり疲労していたホーネットは反応が遅れてしまう。
シルキィも同じ様で声を出す事が出来ても体の方は付いていかなかった。
5メートル、3メートル、1メートル……


もうダメかと思われたその瞬間、横島の横から赤い光を放つ強烈な魔法が飛んできた。


「にょばああぁぁ……」


横島をその鈍い悲鳴と共に体ごと魔法が飲み込んでいく。
かなりの熱量を持っているその魔法は横島の体を容赦なく燃やしていく。
ホーネットとシルキィはただそれを眺める事しか出来なかった。


「……………………」


やがて、赤い光が収束していき、その場に残っていたのは魔法でこんがりとローストされた横島だけであった。
モクモクと黒い煙を体のそこいらから出して、その場に倒れこんでいる。


「ふぅ、嫌な予感がしたと思ったら」

「ハ、ハウゼルさん………」


苦しみながらも横島が見上げてみると、そこには笑顔のハウゼルがいた。手には銃らしき物を持っている。


「今のは、ハウゼル……さんが?」

「もう、忠夫さんったら。ちょっぴりお茶目が過ぎますよ」

「いや、お茶目って…」

「ホーネット様に飛び掛るなんて……私って結構、嫉妬深いんですよ」

「…………(血の気が引く)」

「うふふ、それじゃあ忠夫さん。改めて私はお風呂に入ってきますのでちょっと待ってて下さいね……くれぐれもホーネット様に手・を・出・さな・い・よ・う・に……ねっ忠夫さん」

一部分にだけ思いっきり力を入れて言うハウゼル。
その瞬間だけ目が完全にすわっていたのを横島は確認した。
言いたい事を言ったハウゼルは横島に手を振りながら意気揚々とその場を後にしていった。


「………やっぱりハウゼルって怖い」


震えながら言ったシルキィの一言にホーネットは何度もうなずきながら同意するのであった。


来訪者 横島忠夫 第5話


ただ今横島は食事中である。
この世界に来てからかなりハードな戦闘をこなしたり走り回ったりしていたのに
今まで一度を食事を取っていなかった(取れなかった)からだ。
お腹が減ったような仕草を盛んに見せていた横島に気づいたハウゼルが気を使ってくれたのだ。


「むしゃむしゃむしゃむしゃ……んんっ!」

「大丈夫ですか、忠夫さん」


喉が詰まった横島にさっと水を差し出すハウゼル。
当たり前の様に横島の隣の席に着き、とても献身的に世話をやいている。


「んぐっ、んぐっ……ぷはぁ、危なかったあ…」

「くすっ、そんなに慌てて食べなくても料理は逃げませんよ」

「いや、こんな美味い料理、食える時に思いっきり食っとかな絶対後悔します!」


そういって、再び猛スピードで食事を再開する。
横島にとってまったく見たこともない、未知の料理であったが食べてみるとすごく美味しかったのだ。


「あの〜、横島さんでよろしかったんですよね?」


その光景を、シルキィと一緒に眺めていたホーネットが喋りかけてくる。


「もぁい」

「食べながらで結構ですので、少し質問に答えていただいてもよろしいですか?」

「ホーネット様!こんな人間に敬語なんか使わなくてもいいですよ!」


シルキィが横島を見下した表情で言う。
彼女は人間を軽視しており、そのため自分の主であるホーネットの低姿勢が気に入らない様である。

が、


「シルキィ?」


ハウゼルが微笑みながら問いかけると一瞬で静まった。
そんなシルキィを無視してホーネットは横島に問いかける。


「横島さんは、人間ですよね?」

「?……ほう、でふけど」

「それだったらどうして魔人領にいられたのですか」

「もぁむぃんにょう?」


食べながらなので横島はまともに喋れていない。
とりあえず横島は食事を中断し、会話に専念することにした。


「……ふぅ、すいませんその事なんですけど」


横島は事情を話すことにした。
自分に優しくしてくれてるし、何かしらの力になってくれるだろうと期待して。


「多分、なんですけど俺この世界の人間じゃないんですよ」

「「「えっ?」」」


横島も少しは考えていたのだ。
最初に来た時は自分が過去に来てしまったと思っていたのだがどうもおかしい。
例えばここ。目の前にいる3人の美女。
露出度が平均的に高いのもあるが、それ以上になんともファンタジーな格好なのだ。
最も、自分の世界にも変な格好をしていた人は大勢いたのでこれは決定的ではないのだが。
途中で倒してきた魔物も違和感があった。
自分の世界で見た、悪霊や魔族達とはどうも違うのだ。
わりとコミカルなのが多かったからそう思ったのだろうか。
ほかにもいろいろ変に感じるところはあったのだが
具体的にどこが自分の世界と違うのかと言われれば答える事はできない。ただ、感覚でわかるのだ
「ここは違う」と。なんとなく頭で理解していた。


「……異世界の住人、と言う事ですか?」

「だと思います」

「なるほど……」


普通に考えれば納得など到底できないであろう。
しかし、ホーネットにはそれをあっさりと否定することはできない。
なぜなら、自分達の主である魔王、リトルプリンセスも異世界の住人であったからだ。
シルキィは未だに口を空けたまま硬直している。ハウゼルも似たようなものだ。


「それで、横島さんはケッセルリンクを倒したと聞きましたが」

「ケッセルリンク……誰っすかそれ?」

「……忠夫さんが倒したあのスーツを着たメガネの魔人の事です」

「ああ、あのおっさん」


シルキィより先に正気に戻ったハウゼルが説明する。
ぽんっと手を打ち納得した様子を見せる横島。


「まあ倒したって言えば倒したんでしょうけど、ってかあのおっさん俺の攻撃避けずに食らって勝手に死にましたよ?」

「何故人間のお前が魔人を殺せるんだ!」

「シルキィ落ち着きなさい、横島さん。この世界では通常、人間の攻撃は魔人には効かないのです」

「へ、どういう事ですか?」


ホーネットはこの世界の魔人と人間の関係について説明する。
そして、自分達もまた魔人であることも言う。
魔王リトルプリンセスの事、現在戦争中である事、自分達の理想、すべて包み隠さず横島に教えていく。


「はぁ、そうなんですか」


なんとも淡白な反応の横島。スケールが大きすぎて付いていけないようだ。


「はい、ですから横島さんがどうやってケッセルリンクを倒したのか教えて頂きたいのですが」

「どうやって言われても、普通にこうやって」


横島は手にサイキックソーサーを出す。


「そ、それは……」

「サイキックソーサーって言いますけど、これと後、文珠を当てたら死にそうになってましたよ」

「なんでしょうこれは、魔法ですか?」


横島のサイキックソーサーの幻想的な力(に見える)釘付けになっているハウゼルが言う。
文珠の方は聞き流されたようである。


「魔法?いや、違います。これは霊力って力で」

「「「霊力?」」」

「はい、まあどんな力って言われても俺もよくわかんないんで答えられないんすけど、とりあえずこれが俺の力です」

「その力なら魔人を倒す事ができると言うことですか…」

「忠夫さん、すごいです」

「いやぁ〜そうっすか?うはははは」


ハウゼルが尊敬の眼差しで横島を褒め称える。


「調子に乗るな人間!」

「な、なんすかシルキィさん」

「ふん、私は認めないぞ!霊力って言うのは魔人に効くかもしれないがそれだけで人間にあっさり負ける程魔人は弱く無い!」

「はぁ」

「ケッセルリンクだって、油断さえしなければお前なんかに負けはしなかったはずだ」


魔人を舐められたくないシルキィは、敵であるケッセルリンクをフォローする。
もっとも、その指摘はかなり的を得ているのだが。


「シルキィ……」


ハウゼルが呼びかける。
その瞬間、自分が不用意だった事に気づいたシルキィだったが時既に遅し。


「ちょっと、外でお話をしましょうか」

「い、いやだ……」

「シルキィ、あなたにはよ〜く言い聞かせないといけないようね」

「ちょっ、お願いハウゼル許して!」


すっと席を立ち、シルキィの首根っこを掴みずるずると引きずっていく。


「あぅ〜ホーネット様助けてぇ〜」

「シルキィも懲りないわねえ」


それだけ言ってホーネットは横島の方に向きを変える。
二人はそのまま部屋を後にした。
シルキィの弱弱しい悲鳴が徐々に遠くなっていった。


「それで、横島さんはこれからどうなされるのですか?」

「……え?ああ、そうですねえ、とりあえず自分の世界に帰りたいんですけど」

「……そうですか」


その答えにホーネットはかすかに落胆の意味を込めた声を上げる。
横島の答えがリトルプリンセスと同じだったからだ。
やはりみんな自分の世界に帰りたいのか……リトルプリンセスの説得の仕方を考えて少々気が重くなる。


「なにか当てはあるのですか?」

「いや〜当ても何もこの世界に来たばかりですし、もうどうしていいのやらさっぱりです」

「……それでしたら、しばらくの間この城に滞在しませんか?」

「え、いいんすか?」

「ええ、ハウゼルもその方が喜ぶでしょうし」


とは言うものの、ホーネットにも多少の打算はある。
第一にその力である。
魔人を倒す事ができる横島の力は現在、ケイブリス派と戦争中であるホーネットには非常に魅力的なのだ。
それだけではない。
同じ異世界の住人である横島ならば、あるいはリトルプリンセスも説得に応じてくれるのではないか?
そんな期待も込められている。
最も、横島も自分の世界に帰りたいと言っていたのでこちらの方はあまり期待していない。


「ここまで優しくしてくれるなんて……これはもう俺に対する愛の告白としか思えん!ホーネットさ〜ん!!」


先程ハウゼルに燃やされたのに懲りずに飛び掛る横島。


「ちょ、ちょっと横島さん、やめて下さい!」

「ああ〜やらかいな〜いい匂いだな〜たまらんなぁ〜」


何故か成功してしまう。
ホーネットは身をよじりながら抵抗するがあまり効果がない。
横島はこの幸運を逃すまいと煩悩を全開にして抱きついている。
その抱きつきは何故か的確にホーネットのツボを刺激している。
ホーネットはそのくすぐったいような気持ちいいような曖昧な感覚に少しずつ飲まれていく。


「お、お願いです…横島さん……やめてください……」


徐々に抵抗の力が弱くなっていくホーネット。
目がとろんとし、だんだんと思考がぼやけてきたようだ。その様子が横島にもわかる。


(……いける!これならいける!このまま一気にホーネットさんとのひと夏のアバンチュールを!!」


「タ・ダ・オ・さ・ん?何をなさってるんですか?」


血の気が引く。
振り返ろうとしたが、ハウゼルに頭を掴まれてしまい無理だ。


「ハ、ハ、ハ、ハウゼルさん」

「ホーネット様には手を出さないようにといいましたよね?」

「い、いや、そうですけど……なんでハウゼルさんが怒るんですか?」

「…………………!!」


それからしばらく、見るも無残な制裁が横島に与えられる事になった。


「ふぅ……横島さんったら」


ホーネットが一人、顔をほんの少しだけ赤くして呟いた。


「それじゃあ、この城にいる魔人を横島さんに紹介しますね」

横島はハウゼルのお仕置きを食らい、結局その日はそのまま永眠就寝となってしまった。
そして次の日、ホーネットに呼び出された横島はこうしてホーネットの執務室へと足を運んでいた。


「魔人の人達っすか?」

「ええ、ここにいる皆が魔人です」


部屋に入るとそこにはすでに複数の人達がいた。
ホーネットとハウゼルとシルキィ、後二人見たこと無い人物がいる。

一人は赤い髪が奇麗な小柄な女の子。もう一人は男なのでどうでもよかった(横島主観)


「まず私からですね。魔人筆頭、ホーネットです。あらためてよろしくお願いします」

「ラ・ハウゼルです。忠夫さんがここに残ってくれて嬉しいですわ」

「魔人四天王、シルキィだ。………なんでホーネット様はこんな人間を……」


ぶつぶつと小言を言うシルキィではあったが面と向かって反対をする事はない。
流石に昨日で懲りたらしい。


「後はこの二人、横島さんとは初対面になると思います」

「……サテラだ」

「………………………メガラス」


サテラは不機嫌そうに、メガラスはひたすら無愛想に言う。
横島的にはすぐにでもサテラを口説きたかったが、昨日のハウゼルの恐怖がそれを許さなかった。


「ホーネット、なんで人間がここにいるの?」


サテラは何も聞かされていなかったのかそんな事を言う。
メガラスにしても同様の疑問を持っている。


「この方は横島忠夫さんといいます」

「ど〜もっす」

「横島さんをこの城の客人として迎える事にしました」


さらっと言うホーネットだったが二人がそれで納得するわけも無い。
人間が魔王城の客人になるなんて普通ではありえないからだ。


「ちょ、人間なんかを客人にってどういうことよ!?」

「…………………………」


事情を知らない二人の疑問はもっともである。それはホーネットも理解している。


「そうね、私も普通の人間だったらそんなことはしないわ」

「だったらなんでよ!?」

「横島さんは魔人を倒す事が出来るそうです」

「「なっ!!」」


サテラとメガラスの声が重なる。


「そ、そんな嘘をつかないで!人間に魔人を倒せるわけないじゃない!」

「………………二刀?」

「いえ、横島さんは霊力という力で魔人に傷を付けることができるそうです」

「忠夫さんはね、それでケッセルリンクを倒したのよ。凄かったんだから」

「いや〜はっはっは」


ハウゼルが何故か嬉しそうに横島を誉める。
だが二人にはその前にハウゼルが言った事が信じられなかった。


「ケッセルリンクを!?そんな……嘘に決まってる!」

「いいえ、私はしっかりと見ました」

「…………………信じられん」

「そうだ、私は信じないぞ!そんなに言うんだったらサテラと戦ってみろ!」


サテラが興奮した様子で横島に近づいていく。
だが、メガラスがその前にすっと入りサテラを止める。


「メガラス?」

「……………俺と戦え」

「え………」


メガラスはサテラの代わりに戦うという。
この男、以外とフェミニストな所があるようである。


「そんなぁ〜ホーネットさ〜ん」


情けない顔をしてホーネットに助けを求める横島。
だが、ホーネットは期待とは違う答えを出す。


「……そういえば、実際に戦う所は見たこと無かったですね」

「……ホーネットさん?」

「というわけで横島さん、メガラスと戦っていただきますね」

「えぇ〜〜〜!!」


ホーネットも一度、自分の目でも確認しておきたかったのだ。
実際に魔人と戦う横島を。本当に魔人を倒せるのかを。


「いざとなった時には止めますので、安心して戦って下さいね」

「忠夫さん!頑張ってくださいね、メガラスなんてもうコテンパンにしてやって下さい!」

「ハ、ハウゼルどうしたの?」


サテラはちょっと前に見たハウゼルとのギャップに戸惑ってしまう。
メガラスはちょっと悲しくなってしまった。


「なぜ俺はこんな所で戦わなければいけないんだ……」


ここは魔王城を出てすぐの平野。
結局は横島は断る事が出来ず、流されるままにメガラスと戦う事になっていた。
対峙しているメガラスは魔人というだけあってとても強そうに見える。
と、同時にそのすかした態度が自分の天敵であった西条をかすかに連想させてむかむかしてくる。
だが、強そうである。できれば逃げたい。でもむかつく。でも逃げたい。
横島の気持ちは非常に不安定だった。


「頑張って〜忠夫さん!」

(………ここでメガラスに殺されればそれで良しとしよう)

「ふん!人間がメガラスに勝てるもんかっ」


他の魔人達は少し離れた所で観戦することになった。
審判を努める事になったホーネットがメガラスと横島の間にいる。


「いいですか、二人とも味方同士ですのでくれぐれも本気で殺しあわないように」

「………………………」

「うぅ〜帰りたい、煎餅布団が待っている俺の家に帰りたい」


この期に及んでぶちぶちと言う横島。
しかしホーネットは気にせずに試合の開始を告げる。


「それでは始めてください」


そう言ってその場を素早く離れるホーネット。


「………ハイ・スピード!」

「うおっ!!」


開始早々、いきなり己の持つ必殺技を容赦なく放つメガラス。
超音速で自らの体を敵にぶつけるこの技はその威力、速さともに尋常ではない。
横島は回避を試みたがその凄まじいスピードに対応しきれなかった。
直撃こそ避けれたものの、左腕はもろに食らってしまう。


「……いってえええぇ!!」

「…………………………」


左腕から血がとめどなく流れ出し、自分の命令を聞いてくれない。
横島の方に向きなおす無言のメガラスであったが実はかなり驚いている。
情けない、どこにでもいる普通の人間にしか見えなかった横島が自分の必殺技を完璧ではないにしろ回避したのだ。


「ちくしょう……やりゃあいいんだろやりゃあ!」


ヤケクソ気味に叫んだ横島はハンズオブグローリィを作り出し、メガラスに飛び掛る。
メガラスとまではいかないが、それでも十二分に素早い動きで距離を詰めて斬りかかる。


「おらよっ!」


意外なスピードに少々驚いたメガラスだが、それでも自分には遠く及ばない。
余裕を持ったメガラスは大きく動かずギリギリの所で軽く横に動くだけで回避に成功する。

が、しかしそれは横島の狙い通りであった。


「……………………なっ!?体が……!」

「へっ、掛かりやがったな!」


横島はメガラスが回避した瞬間に隠し持っていた文珠を発動させていた。
その文珠は「縛」
メガラスは文珠の力によって縛りつけられ、身動きが取れなくなってしまった。


「よくもやってくれたなこんちくしょう!!お礼はしっかりさせてもらうぜ!」

「くっ!!」


横島が右手を大きく振りかぶる。
通常ならば人間の攻撃など恐れるに足らないが、魔人を殺せると言ったホーネットのお墨付きに加え
自分の動きを完全に封じる横島を実際に目の当たりにしてメガラスは焦りを隠せなくなった。


「横島、バーニングファイヤーパンチ!!」


バキィィィッ


「うおぉぉぉぉ!!」


メガラスが大きく横に吹っ飛んでいく。
流石に本気でやって(横島の場合は霊波刀)殺してはいけないという事で素手を選んだ横島だった。
もちろん、やられた分の恨みを込めているためかなりの霊力が付与されていたが。
吹き飛ばされたメガラスは勢い良く大岩を破壊してそのまま岩ごと埋もれていった。


「………………横島さんの力は本物のようですね」

「あっさりとメガラスを…………」

「流石忠夫さん………素敵です」

「そんな、メガラスが一撃で!?最初で決めてればあいつを亡き者に出来たのに!」


横島の戦いを目の当たりにした皆は驚きを隠せない。
ちなみに最後の一言はシルキィである。


(メガラスが油断していたのもありましたが、それを差し引いてもあの横島さんの力はすごい…)


ホーネットは横島の予想以上の力を素直に受け止める。
そして、自分の判断が間違っていなかった事に安堵する。


「サテラ、これで横島さんを客人として迎える事に納得できましたね?」

「……う、うん。あいつは………強い」


サテラはあっけに取られた様子のままこくりっ、と頷いた。
そんなサテラを見てホーネットは微笑んだ。


(これでサテラも人間を見直して、人間嫌いが少しは直ってくれるといいんだけど)


ちなみにサテラ以上に人間が嫌いなシルキィについては全く考えていない。


「……っんぎゃあ、いってええ!!」


左腕に強い痛みを感じた横島がその場にしゃがみこんでしまう。
手の感覚がかなり鈍くなっており、思いのほか重症であった。


「忠夫さん!大丈夫ですか、すぐに治療をっ」

「さぁ、サテラ。横島さんの所に行きますよ」

「う、うん、わかった」

「……あいつの力は役に立つ。しかしそれではホーネット様に身の危険が…私は一体どうすればいいのか」


横島の力を目の当たりにした魔人達は

皆、それぞれの思いを持ちながらも横島を受け入れる事を認める事にするのであった。


なお、メガラスは岩に埋もれたまましばらく動き出す事は無かった事を追記しておく。


後書き


メガラス(笑)


いや、悪いとは思ったんだけどね。ほんと、ごめんなさい。

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