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「世界一の手品師(まぶらほ)3」

平成ウルトラマン隊員軍団(仮) (2005-08-11 11:14)
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この辺は導入編だから楽だよなぁ。
オリジナル展開の「まぶらほ……?」は疲れる疲れるw


 淫魔の食料となる物は、3つある。
 一つは快楽そのもの。
 二つ目に男性の精液。
 三つ目に魔力である。

 この内のどれか一つだけでも生存可能なので、極端な話、彼女達はひたすらオナニーしていれば、それで生きていく事が可能なのだ。
 それでも彼女達が男性を襲う理由は3つ。

 一つ。彼女達には、オナニーやレズよりも、男性とのセックスの方が気持ち良いから。
 二つ。快楽以外の食料をも、同時に摂取する事ができるから。
 三つ。男性とのセックスこそが、彼女達の存在理由であるためである。


 だが、何事にも例外は存在する。
 普通の淫魔には無い恋愛感情を持ってただ一人の男性-和樹-とだけ交わり、恋愛感情が快楽を何倍にも膨れ上がらせている沙弓も、そんな例外の一人だ。


 そして、彼女と同じく人の心を残しているが故に、彼女とは逆に、男をこの上なく憎悪し、魔力を奪いつくして殺してしまう目的で次々と男性と交わる淫魔も……


 「ん?」

 夕菜が転校してから数日たったある日。
 生物部員で杜崎家と肩を並べる退魔の名家、神城家の次期当主と噂される天才美少女剣士、神城凛は、部室の片付け中、部室の奥から出てきたとある写真を目にした。

 なんの事はない、眼鏡をかけた少女が写っているだけの写真だが、妙に気になる。
 写真の少女が美しかった事もあるが、退魔の血が何かを訴えているような気がしたのだ。

 彼女は他の部員達に断って、小さな体で割と大きなアルバムを抱えて部室を後にした。


 「んで、あたしの所に来たの?」
 「はい。
 玖里子さんが葵学園の裏の支配者だとか言われてるのは知ってましたから、その玖里子さんなら、この写真の方の事も知っているのではないかと思いまして。」
 「そうはいうけど、あたしだって親しかった訳じゃないから……
 卒業アルバムに書かれてる程度の事しか知らないわよ。」

 金髪の沙弓なみのプロポーションを持つ美少女、風椿玖里子は、アルバムを持ってやってきた凛に向かってこう返答した。

 「まあ、どうしても気になるんなら、紅尉か、和樹にでも聞いてみたら?
 今葵学園にいる人間の中じゃ、この二人が一番彼女の事を知ってる筈よ。」
 「和樹?」
 「2−Bにいる式森和樹よ。
 アイツ、魔法使用回数0っていう飛びっきりの変り種で、それに興味を持った紅尉が、まだ小学生のあいつを連れて来たの。
 その頃から葵学園に出入りしてたから、あたしなんかよりも葵学園に詳しいわよ。」

 実際、玖里子も、和樹には興味を持っているので、入学当初から彼には色々とちょっかいを出している。
 沙弓が淫魔になってしまい、和樹が沙弓と暮らすようになってから、胸の奥が慢性的に切なくなっているのは、彼女だけの秘密だ。

 「2−Bの、式森先輩ですね。分かりました。」
 「あっ、ちょっとまって。」

 早速2−Bに向かおうとする凛に、制止をかける玖里子。

 「何ですか?」
 「あたしも連れて行ってくれないかしら?」


 「あの、二人ともちょっと待ってくれない?」
 「へ? 玖里子さん?」

 玖里子はもう下校しようとしていた和樹と沙弓に声をかける。

 「どうかしたんですか、風椿先輩。」

 沙弓が玖里子にたずねる。
 玖里子は、千早同様、沙弓が罪悪感を感じてしまう相手である。
 理由も同じで、和樹に想いを寄せていたのを知っていたからだ。

 それなのに、自分は消去法で和樹を選び、挙句和樹と暮らす幸せに囚われ、抜け出せなくなってしまっている。
 和樹も沙弓も、未だにお互いの事を友達としている理由も、この期に及んで友人同士という関係を崩したくない沙弓のわがまま。
 いずれ、千早か玖里子が和樹の恋人になって、自分は無理にでも身を引こう、と沙弓は考えている。

 「ん〜〜、ちょっと和樹に話があるのよね。」
 「僕、ですか?」
 「ええ。あんた、音邑先輩の事、覚えてる?」

 音邑と聞いた途端、和樹の顔が強張る。

 「けやきさんの事、忘れるわけ無いじゃないですか。」

 和樹は辛そうに告げた。

 「彼女の事、詳しく聞きたいって娘がいるの。」

 玖里子はそう言って、後ろで控えていた凛を前に出す。

 「生物部で……そこの杜崎沙弓同様、退魔の家系の神城凛です。
 もっとも、退魔の家系といっても、私は分家の分家ですが。」
 「生物部……そか、けやきさんの後輩って事になるんだね。」

 和樹は、退魔の家系より生物部の方に反応した。

 「部室の掃除で見つけたアルバムにある、彼女の写真を見た時、何故だか退魔の血が何かを訴えているような気がしたんです。
 それで、気になって彼女の事を調べてみようと思いましたので、お話を聞きに来ました。」
 「そう……でも、女の子が聞いて気持ちの良い話じゃないよ?
 それでも良い?」
 「はい。」

 和樹の確認に、何のためらいも無く頷く凛。
 和樹は、目をつぶって当時の事を話し始めた。


==================================


 そもそも、件の少女、音邑けやきは玖里子の二年上である。

 けやきは一年の時、母親と妹を奇病で亡くしている。
 魔力がどんどん失われていき、やがて枯渇して灰になってしまう死病だ。
 彼女は、衰弱していく二人に魔力を注いでいたが、それも空しい抵抗だった。

 そして、二人が死んでしまった後、優しかった筈の父親が恐ろしい変貌を遂げた。
 暴力を振るうようになった。
 仕事を全くしなくなって昼間から飲んだくれ、趣味の骨董品集めに没頭するようになった。
 収入は、娘……つまりけやきに、無理やり体を売らせて得るようになった。

 始めて客を取った時、けやきは吐いたという。


 けやきは、父親が憎くて憎くて堪らなかった。
 日常的に彼の殺害を考えるようにすらなっていたという。

 それでも、最早残骸しか残ってない家族という枠組みに、自らトドメを刺す事がどうしても出来なかった。

 やがて、彼女の父親は外に女を作り、借金だけを残して蒸発。
 一人残されたけやきは、それでも生活の為に体を売るしかなかった。


 ある日、けやきは体の不調を訴え、紅尉の元を訪れた。
 その彼女に、紅尉は非情な診断結果を出してしまった。

 母親や妹と同じ奇病。
 あと半年の命。

 そして、けやきは更に残酷な宣告を受ける。
 母と妹を少しでも生きながらえさせようとして行った魔力注入こそが、この奇病の感染ルートだというのだ。

 その時、紅尉は、和樹は、けやきのクラスメート達や、当時の生物部員達は、死に逝くけやきの最後の日々をただ見守るしかなかった。

 何かから解放された、その明るいしぐさが周囲の人間には悲しかった。

 紅尉は、けやきの生活を保障し、彼女の借金を肩代わりして全て返した。
 不当な業者には、容赦ない鉄槌を下した。

 それをしている紅尉は、ひどく悲しげだった。
 何故かと聞いた和樹がもらった返答は、

 「いや、自分が情けなくてね。私は医療に関しては自信があった。
 それなのに、彼女の病気には手が出せず、こんな病気とは無関係の事しか出来ない。
 なさけないよ、まったく。」

 だった。


 やがて、彼女は姿をくらました。
 彼女の制服が外で見つかった事、その日風が強かった事から、灰になって風に飛ばされたのだろうと……


 その日、彼女がいつも気にかけていた裏庭に立っている病気の楓の木が、何故か元気になっていた。


==================================


 話を聞き終えた少女達は絶句した。
 ここまで悲惨な話は想像していなかったからだ。

 確かに世界には、これより遥かに悲惨な話はいくらでも転がっているかもしれない。
 しかし、間近で見ていた人間が生で話すのは、説得力、訴える力が違った。

 「ね? あまり気持ちの良い話じゃなかったでしょ?」
 「は、はい……すみません。そんな話をさせてしまって……」
 「話さなかったら、無かった事になる訳じゃないから……」

 和樹はそう言いながら、凛の頭を優しくなでた。

 「で、こんな話聞いてどうするの?」
 「え? ええ、そうですね。
 人の残した恨み憎しみというのは、性質の悪いあやかしを生み出したり呼び寄せたりする温床になります。
 音邑先輩は、人を恨む理由はいくらでもありますから、彼女の家あたりがあやかしの巣に変わり果てているかも知れません。」
 「そう、けやきさんの家に行くんだ。」

 と、そこで後ろに控えていた沙弓が話に入ってくる。

 「じゃあ、私も一緒に行っていいかしら?」
 「杜崎さん。」
 「お前自身があやかしだろう。あやかしが退魔行など聞いた事がない。」
 「一応、人間だった頃に身につけた技は今でも使えるわ。
 戦力的には、何の問題も無いはずよ。」
 「ふん。」

 その後、玖里子も行くと言い出し、結局この場にいた四人全員で、けやきの家に行く事にした。


 「完全に廃屋ですね。数年前まで人が住んでいたとは思えません。」
 「同感。」

 凛の一言に、玖里子が同意する。
 音邑家は、見る影も無くボロボロに朽ち果てていた。

 「こんな短期間でこうなるって事は……」
 「あやかしの気配が強いわ。
 しかも、この感じは、淫魔ね。」

 沙弓の一言で、少女達は警戒を強くする。
 下手をしたら、自分達も沙弓のように淫魔にされてしまうかも知れないからだ。

 四人は慎重に、音邑家に上がって行った。


 そして、奥の居間に着いた時、四人は異様な光景を目にした。
 うずたかく積もった灰の山。
 よく見ると、ただの灰ではない。人間が魔力を枯渇させて死んだ時の灰。
 この灰の山は、無造作に積み上げられた死体の山だった。

 「うっ。」

 玖里子は思わず吐きそうになる。
 うずくまる玖里子の背中を和樹がさすってやる。
 そして、二人の武道少女は、戦闘態勢を取って周囲を警戒した。

 と、まだ踏み込んでいない二階から、人、否、あやかしの気配が降りてくる。
 ようやく落ち着いた玖里子が、和樹と共に居間に入ってきた気配に目をやる。
 そこには……

 「久しぶりね、和樹君、風椿さん、そして……いつぞや返り討ちにして同族にしてあげた退魔師さん♪」

 死んだと思われていた音邑けやきの姿があった。
 唯一、会った事もなければ、写真も見ていない筈の沙弓が反応する。

 「あの時の……物理攻撃も魔法攻撃も効かない淫魔!!
 神城さん気をつけて。こいつは、打撃も魔法も無効化してしまうわ!!」
 「そんな馬鹿な!!」
 「試してみる?」
 「言われるまでもないっ!!」
 「ちょっとまってっ!!」

 凛は和樹の制止も聞かず、神城家に伝わる剣鎧護法という刀に鬼を宿らせ魔力をめぐらせる事で攻撃力を高める、対妖物用簡易エンチャントを施してけやきに斬りかかる。

 が、樹木をも容易に切り倒してしまえる筈の斬撃は、けやきの瑞々しい肌に傷一つつけていない。

 「そんな馬鹿な!?」
 「次はこっちの番よ。
 私と同じ、見ず知らずの男に汚されるおぞましい思いを、一生味あわせてあげるわ。」

 けやきがそう言って、驚愕する凛の手を掴もうとして、玖里子の簡易式神に阻まれる。

 「音邑先輩、なんでっ?」
 「あの病気なら、淫魔に生まれ変わった時に消えてしまったわ。」
 「そうじゃなくて、この灰の山、けやきさんがやったんですか?
 杜崎さんを淫魔にしたのも?」

 和樹は外見は変わらずとも、中身が変わり果ててしまったように見えるけやきに、そう捲くし立てた。

 「……そうよ。あの優しかったお父さんも変わってしまった。
 男なんて、みんな信用できない。みんな女の体目当てに寄ってくる蛆虫だわ。
 そんな連中に生きる資格なんて無い。
 女でも、命を狙ってくるんだったら容赦しない。
 男に抱かれないと生きていけない淫魔にして、私と同じ惨めな思いをさせてあげる。」
 「そういう音邑先輩も、変わってしまったじゃないですか。」

 と、和樹と玖里子がけやき相手に舌戦を繰り広げている横で、沙弓は凛を退避させていた。

 「あなたはもう下がってなさい。淫魔にされるわよ。」
 「だが、私は」
 「攻撃が効かない時点で、私達はもう一般人と大差ないわ。」

 そう言われては、凛も引き下がるしかなくなる。
 何しろ経験者の言葉だ。重みが違う。

 「分かった。無理はするなよ。」

 凛はそう言って引き下がった。

 そして、凛が居間を出て行くと、沙弓も舌戦に参加した。

 「私は、淫魔にされても幸せでしたよ。
 式森君が淫魔に変貌した私でも「友達だから見捨てられない」って受け入れてくれて、抱きしめてくれましたから。
 優しく、女に生まれた喜びを刻み込んでくれましたから。」

 その沙弓の言葉に、反応するけやき。

 「そんなのっ、体のいい性欲処理人形として使われてるだけだわ。
 大体、淫魔の癖にそんな幸せなセックスしか知らないあなたが、何をいってるのよ!!」
 「でも、先輩は女の幸せを知らないんじゃないんですか?」
 「知った口を利いて!!」

 と、けやきが魔法を沙弓にぶつける。
 沙弓はそれを払うが、着弾さえすればそれでいい類の魔法だったらしい。
 魔法が沙弓に当たった途端、

 「え? ふぇ、ああああぁ、駄目っ!!
 な、何をっ!!」

 彼女の服が、着用者の芸術品のような肉体を弄り始めた。
 上着は上半身を舐めるように愛撫し、ブラは、豊満な乳房を揉みしだく。
 パンツは勝手にずり落ちて、スカートはクリトリスを刺激しつつ、膣内や菊門に潜り込み、形を様々に変えていく。

 彼女は勝手に動く衣類と、それらが生み出す快楽に翻弄され、マトモに動く事が出来ない。

 「しばらくそうしてて。
 じきに快楽の事しか頭に無くなって、相手が誰かなんてどうでもよくしてあげるから。」

 それを聞いた沙弓は血相を変えて暴れるが、事態は悪化こそすれ好転はしなかった。

 「いや、んふぁ、いあん。やぁ。
 しき、んっ、式森、くぅん、じゃなきゃ、ああああああっ!!」

 快楽に翻弄されつつ、涙を流して嫌がる沙弓。

 しかし、和樹も玖里子もけやきに手を出しかねていた。
 知り合いだから攻撃し辛いのは勿論だが、先ほどの凛の攻撃が全く効かなかった事が大きい。
 そのおかげで、どのような攻撃を行えばいいのかが分からないのである。

 「さて、風椿さん、さっきはよくも邪魔をしてくれたわね。
 お礼に淫魔にしてやるわ。」
 「やってみなさいよ。
 沙弓さんと同じように、和樹の腕の中で何十年でも何百年でも、何千年でも何万年でも、人間のままでいるよりずっと幸せになってやるんだから!!」

 そう玖里子が言い終えるや否や、けやきのディープキスが襲い掛かってきた。
 口腔内を蹂躙され、想像も出来なかった極上の快楽に曝される玖里子。
 その彼女の胸を執拗に愛撫するけやきの右腕と、下半身に伸びる左腕。
 左手が目当ての場所に潜り込んだ瞬間、玖里子が大きく目を見開いて失神してしまった。

 「ふふっ、見た目によらずウブなのは、昔と同じね。
 たったこれだけで失神しちゃうなんて。」

 けやきはそういいながら、左手に付着した玖里子の愛液を舐めとる。
 と、和樹がけやきに抱きつく。

 「何のつもりよ。離しなさいよ!!」
 「今の玖里子さんを見て思いつきました。いくら攻撃が通じなくても、本来淫魔の栄養になるものなら普通に与えられる筈です。
 過剰な快感で貴方を失神させられれば、無防備にできます。」
 「淫魔相手に、セックスで勝負しようっていうの?
 何考えているのよ。」
 「そういうけやきさんこそっ、僕も紅尉先生も、クラスメイトや生物部の人たちもそんなに信用無かったんですか?
 皆、守ってあげられなかった、助けられなかったって、悔しい思いで過ごしていたのに!!」
 「そんなの、傷物の女よりそうでない女の方が良かっただけよ。」
 「そんな事無い!!」

 和樹は、そう言ってキスでけやきの口を封じて、舌をねじ入れる。
 けやきは自分の舌で押し返そうとするが、それがかえってキスをディープキスに変えてしまう。

 「「ぷはぁっ」」

 一分ほど続いたキスが終わりを告げる。
 和樹からは力が抜けているのに対し、けやきの方は変化なし。

 「馬鹿な子。私には、吐き気がするような男共と商売で寝るしかなかった、ってトラウマがあるのよ。
 貴方が男である以上、嫌悪感の方が先に立って全然気持ちよくならないわ。」
 「くっ!」

 そう言って、けやきは和樹を突き飛ばす。

 「本当なら、セックスしてあげて魔力を一気に全部吸い出して殺す所だけど、貴方にはそれが通用しないわね。
 まあ、いいわ。いずれにしろ死んでもらう事に変わりは無いもの。」

 と、一樹に歩み寄るけやきに、今度は沙弓が後ろから抱きつく。
 望まない快楽に喘ぎ声を上げながら、それでも和樹を殺すという一言に、なんとか反応したのだ。

 「何よ。貴方の相手は後。」
 「そう、ひゃん、いかなあああんっ!!
 あん、あなたに、あっ……あっ……女の、幸せをっ……」

 沙弓はそう言って、至近距離から魔法を打ち出す。
 いくらなんでも、この体勢から魔法を避ける事は出来ない。

 けやきは、沙弓の魔法の直撃を受けた。


 その魔法は、沙弓の経験や、その時の感覚・感情をトレースさせる魔法だった。
 勿論、杜崎に伝わる魔法でも、一般で使われている魔法でもない。
 この場で、沙弓が即興で作った魔法だ。
 既存の、思考走査の魔法を反転させただけなので、この状態でも即興で作ってしまう事が出来た。

 和樹と会話を交わすだけで、沙弓/けやきの心は満たされていく。

 和樹と交わっている時の、けやきにとって想像も出来なかった程の至福の感情。
 それによって、信じられないほど強く深くなる性の悦び。

 そして、至福……つまり行く所まで行った幸福感だと思われていた物が、絶頂に近くなるほど大きく深くなる。

 知らなかった。好きな男との交わりが、こんなにも幸せな物だっただなんて。


 「そんな事無い、そんな事無いわ。
 騙されているだけ、騙されているだけよ。」

 けやきは頭を抱えて座り込み、壊れたレコーダーのように繰り返す。
 と、そこに外から様子を窺っていた凛が入ってきた。
 沙弓の痴態や、玖里子がイかされる様を見たせいか、その顔は真っ赤に染まっている。

 「凛ちゃん?」

 唯一、マトモに反応できる和樹が彼女の名前を呼ぶ。

 「え? あのですね、その、退魔の家系にはですね、このような調伏困難なあやかし用に、相手を封印する術という物があります。
 今なら、隙だらけです。チャンスだと思いましたので、入ってきたんですが。」

 喋り方もぎこちない。
 未だに蠢く衣服に翻弄され、嬌声をあげている沙弓の方をチラチラ見ては、目を逸らしている。

 「そっか、その方が良いかもね。」

 和樹は悲しげに応えた。

 「え? あ、はい。なんですか?」

 凛は、和樹の言葉を聞き逃した。
 なので、和樹は改めて凛に言った。

 「けやきさんを封印して。凛ちゃん。」


 「なるほど、そんな事があったのか。」

 年齢不詳、老教師が新人の頃からずっと青年のままの紅尉は、保健室で和樹から今回の話を聞いていた。
 彼等二人のほかにも、沙弓、玖里子、凛の姿もある。
 制服が凄い事にされていた沙弓は、ジャージに着替えている。

 「多分、それは音邑君本人じゃない。
 本人はもうとっくに死んでしまって成仏していて、君等が出会ったのは後に残された負の感情が凝結して生まれたあやかしだろうと思う。
 私の自惚れでなければ、彼女は私の事を医師としては信用してくれていたみたいだからね。
 君や生物部員、クラスメート達にも大分救われていた筈だから、本人ならそんな男だからという理由でなにもかもを否定する事はしない。」
 「そう、ですか。」

 紅尉の言葉に、和樹は力なく応える。

 「それで、紅尉先生。
 今、彼女をこの石に簡単に封印しているんですが、後半日程度しか持ちません。
 これはどうすれば良いのでしょう?」
 「そうだね……あの楓の木に彼女を封印してしまおう。」

 紅尉が保健室の窓から見える裏庭の楓を見ながら言った。

 「あれは、生前の音邑君が気にかけていた楓の木だ。
 彼女も音邑君の分身なら、あの木に危害を加えるような事も無いだろう。
 それに、内側から彼女の魔力が作用して、楓の木も丈夫になるはずだ。
 各地で封印に使われている樹木が、齢千年を超えるなんて話、君や杜崎君ならいくらでも聞いた事があるだろう?」
 「分かりました。」

 そういって、二人の退魔少女は連れ立って楓の木に向かう。

 「死んだ妹の名前が楓だから、気になる……か。」

 和樹は以前けやきに聞かされた言葉を反芻していた。


 その日の帰り。
 玖里子が偽けやきに淫魔にされてしまったので、沙弓同様和樹が彼女の面倒を見る事になった。
 だからといって、和樹が沙弓を放り出すような事をするはずも無い。
 沙弓も、和樹にとってはかけがえの無い友人であり、その生命維持の為に性交渉が必要ならば躊躇い無く彼女を抱く、というスタンスに変化は無かった。

 なので、今日からは、和樹、沙弓、玖里子の三人がマンションの住人になる。
 三人は連れ立って、マンションに向かって歩いていた。

 「あたし、最低かも。」

 と、玖里子はポツリとこぼした。

 「音邑先輩が辛い人生を送ったって聞かされて、偽者とはいえ音邑先輩が封印された所も見たのに。
 今は、これから和樹に抱かれて暮らしていくんだ、って思うと幸せすぎて涙が出てくる。」
 「私も、同じだから。」

 沙弓が玖里子に相槌を打つ。

 「二人とも何の話をしているの?」

 先行して歩いていた和樹には聞こえなかったのか、二人に尋ねる。

 「ん、女の子の秘密。ね? 沙弓さん。」
 「そうよ。」
 「ふ〜〜ん。」

 和樹は深くは追求しなかった。


 その夜、二人の少女は、激しい性の快楽の中、愛する少年と睦み合う幸せを噛み締めていた……


 凛と玖里子の登場編で、いきなりハーレム化をやらかしてしまいました。
 まあ、こうなったら一人殺すも二人殺すも同じ事w
 千早も淫魔化してハーレムの仲間入りでしょうな……
 それまでに何人になってるかは、知りませんけどw

 レスいきます。

>皇 翠輝さん
『まぶらほ……?』は重たいですからねぇ。
アホみたいな数の登場人物のほとんどがアクが強くて、かなりエネルギー使います。
しばらくは、こっちに浮気してるかもw

>ナナシ
魔力と引き換えに何らかの力を……無限の精力?(爆)
まあ、冗談は置いておきまして。
淫魔化解除は多分ありません。
まあ、千早はいずれハーレムに入れますけどね。

>sakuさん
まあ、そういう主人公を目指しましたからね。
基本的に原作の和樹よりロースペックです。
多少手品の技術で普段有能でも、あの反則級の魔力には勝てませんし。

>HAPPYEND至上主義者さん
夕菜は、もう脇役街道を爆進してもらうつもりですw
仲丸が不運にもハートを射止めてしまい、キシャーでズタボロになる展開を予定してます(爆)
子供に関しては、淫魔も繁殖は可能という設定を考えてますので、ご安心を。
淫魔の繁殖法は二種類考えてあります。
人間の女性を同族に変えてしまう事と、「食事」で得られたエネルギーを卵状にして産み、卵が日を追って大きくなっていき、直径1m強になった所で卵から生粋の淫魔(セックスする必要があるため、見た目は成人女性)が生まれてくるという方法。
後者の方法なら、和樹の子供を生む事も可能なので安心してください。

>幻覚キャベツ
銃刀法違反の人より、風椿の人のがヒロインになっちゃいましたw

>D,さん
……わがまま娘以外の何にしろと?
それはそうと、夕菜は猫被っていて、バイオレンスな女だとはばれてませんでしたよ。
どうせなら刺激的な人生を、とB組を選んだんだと思います。F組、面白みが無いらしいですし。

>チンパンジーのパン君さん
手品よりも、むしろ回数0の方によってきますね。
世界広しといえど、そんなのは和樹一人しか確認されてないわけですし。

>なまけものさん
少なくとも、和樹から離れる事はないと思います。
沙弓が辛そうにしてたら、手を差し伸べようとするでしょうし。

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