なんだかんだで4人に増えた横島一行。
これからどうするのかと思いきや、
「さてと、んじゃあこれから一緒に行動する訳だけどさ。一度自己紹介といかねえか?」
横島のこの発言で全員自己紹介をすることになったらしい。
「じゃあまず俺からな。横島忠夫18歳、仕事はGS・・・つっても解らんか、まあ退魔師みたいなもんかな?で出身は異世界らしい。」
そう締めくくって、よろしくと他の三人に笑いかける。
「じゃあ次は僕するね。僕はフェンリルで〜す!えっと年齢とか出身地は解んないです。よろしくお願いしま〜す。あと好きなのはお兄ちゃんです!」
元気一杯にそう言うフェンリル。
最後の発言のせいでアシュレイが、
(可愛いわね〜。でも横島ってやっぱりロリコン?)
なんて思ったのは秘密である。
「じゃあ次あたし、夜羽子・アシュレイよ。出身は日本で年齢は・・・秘密で。一応ダークロアの幹部でヴァンパイアよ。」
「私で最後ですね。初めましてジル・リンクスです。出身は護人の森の里です。詳しい場所は教えれませんけど、年齢は13です。よろしくお願いします!」
アシュレイ・ジルの順番で喋り自己紹介が終わった。
「皆よろしくな〜。さてとちょっと二人に質問があるんだけどいいか?」
最後にもう一度挨拶をし、それから二人の方を交互に見て問いを投げかける。
「何?」
「何ですか?」
「ダークロアとか他の組織の事を聞きたいんだ。あと二人が組織内でどれ位の強さなのかをさ。」
そして、質問の内容を尋ねる二人にそう答える。
「まあいいわよ。じゃあ、あたしが答えるわね。」
そう答えてアシュレイが話し出す。
「まず組織の説明からね。今現在この世界には4っつの大きな組織があるわよ。
まずは私達のダークロア、獣人やヴァンパイアに魔族、他にも一部の鬼族とかあとエルフ達が属してるわ。
次に阿羅耶識、これは東洋の霊能力者が主体の組織で東洋呪術連盟が正式名称。構成員は巫女や神主、退魔師なんかが主ね。あとは鬼族とか仙人とか数が少ないけど東洋の竜族ね。あと男で強力な術者や能力者が多いのも特徴よ。
次にWIZ-DOMね。これは西洋魔術結社のことよ。その名の通り、西洋の魔女や魔法使いの集まりよ。他にも色々混じってるけどね。ここは魔術の研究が主な目的で戦争事態にはあんまり興味ないみたい。あっちから攻めて来る事は殆ど無いわ。
最後にE.G.Oね。これは正式名称は長いからパス、他の組織に比べて新しい組織で超能力者や超科学者の集まり。最初は他の三組織の調和を目指してたらしいけどね〜。最近はそんな様子は全然見えないわね。
まあこんな所かしらね?」
そこまですらすらと淀み無く話すと一息入れる。
「は〜。何処か特に強い所とかはあるのか?」
「ないわ。ダークロアって言いたい所だけどね。E.G.Oは多少劣るけど情報戦じゃ飛びぬけてるし。他の三つは規模も構成員の力も拮抗してるから。」
横島の問いにすぐに答え何故かため息を吐く。
(だから戦力増強のためにもフェンリルが欲しいんじゃない。)「じゃあ今度は私達の組織内での位置の説明ね。」
「ああ、頼むよ。」
少し心の中で文句を言った後、自分達の事を話し出す。
「あたしは最初に言ったとおり幹部よ。多分上から10人には入るかしらね。完全覚醒した訳じゃないから能力全部使える訳じゃないけど、したら間違いなくトップ3に入るらしいわよ?」
「そうですね。夜羽子さんは真祖ですし。」
「真祖って・・・あの真祖か!?」
答えるアシュレイに同意するジル。それに驚く横島。
「どの真祖かしらないけどその真祖だと思うわよ?レイ・アルカードが滅んだから生まれた二人目の真祖なんだって。
あ、でもあたしは元は人間よ?高位の存在は力と記憶を持ったまま転生するらしいんだけど、あたしはその真祖アシュレイの転生体らしいわ。
フェンリルはフェンリルの転生体ね。まあ実際は転生じゃあ無いんだけど。」
「どういう事だ?」
「フェンリルは死んでないのよ。昔に数人がかりで封印されちゃったんだけど、その封印が解かれて何故かそんな子供になったその娘が出てきたって訳。」
疑問に答えつつ補足説明を入れる。彼女の説明によるとフェンリルは、かなり特殊な例らしい。
「なるほど、ジルの方はどうなんだ?」
「あ、えっと。」
その説明に納得しジルの方に話しかけるが、何故か顔が赤くなる。
「なあ、なんで赤くなるんだ?熱でもあるのか?」
「あ、いえ!その・・・男の人とまともに話すのって実は初めてで。」
怪訝に思った横島が尋ねるとそんな答えが返ってくる。
「あ〜そっか。セイバーの里って確か。」
「ジルの里がどうかしたんか?」
「セイバーって代々一族の女子が受け継ぐらしいのよ。里の女の子を集めて先代のセイバー達が鍛えるんだって。でその間外界との接触まるで無しって聞いたけど。」
「あ、はい。その通りです。」
アシュレイが横から口を挟み説明しだし、ジルがそれを肯定する。
「私の里の女子は4歳の時にその代のセイバー達に一時預けられます。そして数ヶ月の生活で、適正が有る者達が残され残りは里に返されます。
それからは選ばれた者達全員で修行場に移り住み込みで修行し、先代に認められ証としてセイバーとしての名前が許されるまで共同で生活するんです。
生活に必要な物は里の大人の女性達が運んできてくれるので外に出て行かずずっと修行するんですよ。」
「あ〜なるほど、それなら男と話すのはおろか顔も見れんわな。」
「はい。それで緊張しちゃって。さっきもその・・・。暖かい感じがして、お父さんってこんな感じかな〜ってボーっとなっちゃいました。」
4歳からそんな生活を送っていれば父親の顔も殆ど覚えていないのだろう。横島が頭を撫でた時は横島に、父性を感じ父親を重ねたのだろう。
「それにかっこよかったし・・・。」
「ん?どうかしたか?」
「はう!いえ!なんでもないです!」
思い出したのか急にボーッなるジルに横島が心配して問いかけると、慌てて顔をブルブル振ってなんでもないと言うジル。
その様子に首を傾ける横島だが、
「そ〜いえばさ、あたしも聞きたいんだけど。」
「俺に?何をだ?」
横からアシュレイが話しかけてくる。
「横島ってよく頭を撫でるけどなんで?」
「ああ、くせなんだ。」
それにさらっと答える。
「くせ〜?」
「ああ、向こうの俺の住んでた世界にさ、妹が居るんだけど。仕事場と住んでる場所が遠いんだわ。
まあ毎日出なきゃならない仕事じゃないし問題はないんだけど、泊り込みで行くことが多くてな。結構文句を言われるんだ、自分も連れてけ〜ってな。
で、それを宥めるのに頭を撫でてたらいつの間にか。」
「くせになってたと?」
「そそ、そうなんだよ。」
さきほどの答えに疑問符を浮かべるアシュレイに説明する。
「直そうとは思ってるんだけどなかなかな〜。仕事場の女の子の頭を撫でた時は、周りからすごい目で見られたし。
あ、居候で中学生位の娘が二人住んでるんだ。さすがに大人にはやらんぞ。」
その時の事を思い出したのか、懐かしいような恐ろしいような顔を浮かべる横島。
「ふ〜ん、まあいいわ。で、これからどうするの?」
「あ〜どうしよう。」
まあ納得した様子のアシュレイだが次に出た問いかけに横島が悩み始める。
「呆れた、考えてなかったの?」
「しょうがないやんか・・・。そういえば俺って、ここだと戸籍もねえんだよな〜。」
心底呆れた顔をするアシュレイと、それにさらに肩を落とし悩む横島。
「はぁ〜。じゃあ、あたしの家に来る?」
「何!家あるのか!?」
「当たり前でしょうが・・・。言わなかったっけ?あたしは元は普通の人間。人としての戸籍も有るし家だって有るわよ。」
はぁ〜っとまた盛大にため息を漏らす。
「あ、そっか。でもいいのか?親とかは?」
「一人暮らしに決まってるでしょうが!親は海外で仕事中、あたしがヴァンパイアになってダークロア所属って事も知らないわよ。」
「なら大丈夫か。じゃあ頼めるか?住む場所が他に無いし。」
親などの心配も無いようなので、ひとまずやっかいになることにしたらしい。
「いいわよ。じゃあ行きましょうか。」
「うし、フェンリル〜起きろ〜、ほっといて悪かった。」
「うにゃ?」
そう決まると、いつの間にか寝ているフェンリルを起こし街に向かって歩き出す。
━数時間後━
「ここよ。」
「こ、ここか?」
案内された家は2階建ての結構な大きさのある家。
「そうよ、結構大きいでしょ?」
「ああ、ここに一人で住んでるのか?」
「ええ、まあ本当は親の家なんだけどね。高校卒業と同時にあたしにくれたのよ。」
結構とんでもないことをさらっと言ってくれるアシュレイ。
「家をくれる親っていったい・・・。てか高校卒業?」
「あ〜老化止まってるからね16歳で。一応実年齢は二十歳よ、あたし。・・・黙ってた意味なかったわね。」
「二十歳って、そうだったんか。」
そういえばピートも数百歳だったな〜と思い出す横島。
「まあいいじゃない。自分では16歳のままのつもりだしね。永遠の16歳!あ〜いい響き!」
「中身は年齢相応って嘘じゃ?何処かおばさん臭いきが・・・。」
「何か言ったかしら?」
「イエナニモ。」
続くアシュレイの言葉にボソッと呟く横島、その彼を憤怒の視線で射抜くアシュレイ。
「じゃあ荷物中に運び込んで〜って、殆ど無かったわね。」
「あ〜そうやな。とりあえず買い物行くか?要る物もあるだろうし。」
「そうね、そうしよっか。」
「急に口調を変えんでも・・・。」
「何か言った?横島?」
「イイエナニモ。」
おばさん発言に少しはショックだったのだろう、口調を変えるアシュレイに突っ込む横島。
それに今度は笑ってない笑顔を向けすべてが凍るような声を出すのだった。
━十数分後━
なにはともあれ買出しに近くのデパートに来た横島達。
美少女を周りにはべらす横島に、男共の嫉妬と怒りの視線が突き刺さる。
(((((てめ〜こっちに一人寄越せ!)))))
(嫌じゃ!)
なんか思念で会話してるし・・・。
「あ〜、ここって。」
「この服とか一緒に買いに来た所だね、お兄ちゃん。」
「なんだ来た事あったんだ。ここら辺じゃ一番大きいのよね。ここ。」
「わ〜。人が一杯。男の人も一杯居る。」
横島達が来たデパート、それはこの世界に来て初めて買い物をした、あのデパートだった。
「じゃあ行きましょう。」
そう言って入っていくアシュレイに、
「あ、待てって先に行くなよ。」
「あ、待って〜。」
「待ってくださ〜い。」
追う三人だった。
それから初めは日用雑貨を買い、次に洋服、最後に食料を買い込んだ。
洋服を買う時にアシュレイが横島をからかったり、フェンリルが前のお姉さんに見つかり着せ替え人形になったり、
ジルが更衣室で服がうまく着れずに半裸で出てきて、横島がパニクッたりしたが、おおむね平和に買い物が終わった。
半裸のジルを見て、
(胸大き・・・って、違う違う違う!俺はロリコンじゃなぁぁぁ〜〜〜い!変態じゃなぁぁぁ〜〜〜〜い!)
などと一人が悶えていたのは秘密。
「ふ〜疲れたわね。何処か入って休憩しない?」
「そうだな、もう昼だし飯食うか。」
「さんせ〜い。お腹減っちゃったよ〜。」
「はい。私も少しお腹が・・・。」
アシュレイの提案に全員が賛成しレストラン街のフロアに向かう。
しばらく店を物色した後、
「ここにすっか?」
「どこでもそう変わらないと思うしいいんじゃない?」
「お腹すいた〜。早く入ろうよ〜。」
「どこでもいいですよ。」
一軒の前に立ち止まり聞く横島に頷く三人。
「じゃあ入ろ「あ〜〜〜〜〜〜!!!あなたこの前の!!!」え?」
入ろうと言いかけた言葉を遮って横から叫び声が聞こえる。
そちらを振り向くと、
「あ、君は!」
「やっほ〜。またあったね〜。今回は別に攻撃する気とかは無いから、安心してね。」
最初にフェンリルを追っていた女子高生が立っていた。
かなりフレンドリーに、ウィンクまでして話しかけてくる。
「あ〜藤宮真由美〜!」
「あ〜!夜羽子だ〜!久しぶり〜。」
指差し叫ぶアシュレイにこちらも叫び旧友に会ったように話しかけてくる。
「知り合いか?」
「ちょっとね、そっちこそなんで知り合いなの?」
「あ〜最初にフェンリルを追いかけてたのが彼女なんだ。」
「なるほどね。」
「どうしたの〜?」
二人のやり取りに首を傾げて聞いてくる真由美に、二人揃ってため息を吐くのだった。
━後書き━
はい第九話お送りしました〜。
いや〜たくさんのレスありがとうございます〜。
今回は現状確認と泊まる先の確保、あと最初の女の子の再登場でした〜。
アシュレイとジルの過去が明らかに、またフェンリルがあそこに現れた理由も公開しました〜。
フェンリルの封印が解けた理由はまったくの偶然です。特に理由らしい理由なんてないですw効果が弱まって解けただけ。
フェンリルが子供化したのは、封印中に貯めていた力が無くなっていっていたからです。
自己防衛のために消費の少ない子供化し、さらに封印することで魔力切れの消滅を防いだんですね〜。
ええ魔族・神族は人間が覚醒して力を得たタイプでないかぎり、魔力が0になると消滅してしまいます。魔族の血を引くとかアシュタルテーみたいな転生体でないかぎりって事です。
フェンリルは100%純魔族です。転生体じゃないタイプなので、魔力0で消滅してしまうのです。
ええ『なでなでヒール』というレスを頂きましたが、違います(大汗
癖ですが別に何か出てる訳ではありません!本当です(大汗
ジルがああなったのは本文中に書いた通りの理由です。
子供で免疫0なので^^;横島君子供には無条件で好かれそうだし^^;
子供にあの笑顔は毒でしょう。まあ一発で落ちる事は無いと思いますが。
敵の幹部に一目惚れとかさせてみたい気もするんですがねw
メイド天使とかメイド天使とか・・・。
まあそうはならないでしょうが、多分・・・きっと・・・もしかしたらなるかも?w
ああ、そうだ。ジルは今の人間社会についての知識は一応持ってます。ダークロアに入った時に教わっていますので。
ではまた次回お会いしましょうさようなら〜。