次の日の朝。(といっても戦いが終わったのが12時は確実に過ぎていたので、実際はその日の朝なのだが)
目覚めた横島は、自分の腕の中でこちらも正面から抱きつき眠っているフェンリルを起こしにかかる。
「お〜い、朝だぞ〜起きろ〜。」
軽く体を揺すりながら話しかけるが起きない。
「お〜いフェンリル、起きろ〜。」
もう一度揺すりながら話しかけると。
「う〜ん。」
薄らと目を開けこちらを見てくるが、
「お兄ちゃ〜ん。」
寝ぼけているようでさらに強く抱きつき体を擦りつけてくる。
(うおっ!やわらか・・・ハッ!いかんいかん!)「こらフェンリル朝だぞ〜。起きろ〜。」
一瞬意識がマズイ方向に向かいかけるが、なんとか軌道修正しもう一度起こす。(今度はじゃっかん強めに揺すっている。)
「う〜ん。あ、お兄ちゃんおはよ〜。」
「ああ、おはよう。」
今度はきちんと目が覚めたらしい、しっかりと挨拶を返してきた。
「じゃあ離れてくれるか?」
「へ?あ!う・・・うん。」
その言葉に今の自分の状況を把握し、全身を一瞬で染め上げどこか名残惜しそうに離れる。
「さてと・・・今度はあっちだな。」
立ち上がり軽く体をほぐしながら見る方向には毛布の塊。
端から蒼銀の髪が見える。昨日の少女アシュレイのようだ。
(ヴァンパイアやし朝には弱いんかな?)「お〜い、起きろ〜。」
「ん〜。」
軽く体を揺すってやるが、まるで起きる気配が無い。
「お〜い、朝だぞ〜。早く起きろ〜。」
もう一度強めに揺すりながら話しかけるが、
「ん〜。後5分。」
起きそうにない。(何か不思議なセリフが聞こえたが無視しよう。)
「起きろっちゅうに。あ〜さ〜だ〜ぞ〜。」
「うるさいわね〜!」
大きめの声で話しかけもう一度揺すろうとした時に、毛布を跳ね除けこちらに向かって怒鳴るアシュレイ。
「へ?」
「え?」
むにゅっ・・・そんな擬音が聞こえてきそうなほどタイミング良く、肩を揺すろうとした手が・・・胸を鷲掴みにする。
「き・・・。」
「き?」
「きゃあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
ズドゴッ!!!
「うぎゃ〜〜〜〜!!!」
悲鳴と同時に放たれた全力の拳を顔面に受け吹き飛ぶ横島。
(ムウ、あれはお兄ちゃんが悪い。でもあのお姉ちゃん誰なんだろう?)
ピクピクと痙攣する横島に冷やかな目を向けながら考えるフェンリル。
「どどど、どこ触ってるのよ!この変態!誰にも触られた事なんて無いのに!」
顔中真っ赤にして怒鳴るアシュレイ。(まあ当然だろう。普通は怒る。)
「いってて〜。わざとじゃない事故だよ事故!変態はやめれ!」
起き上がりながらこちらもアシュレイに怒鳴る。
「でもあたしの胸触った・・・ううん鷲掴みにして握ったのは本当でしょうが!」
「う・・・それは。・・・ごめん。」
確かに握ったのは事実、事故だとしてもそれは変わらない。
「・・・今回だけは許してあげる。でも次やったら・・・。」
「ワカリマシタゴメンナサイモウニドトイタシマセン。」
震えながら許してやると言うアシュレイ。
だがそれに続けた言葉の時には、ハッキリとその背後に魔王が見えた。
「ねえねえ。」
「ん?どうしたフェンリル?」
「あのお姉ちゃん誰?」
いつの間に横に来ていたのか、横島の服の袖を引っ張りながらフェンリルが聞いてくる。
「あ、フェンリルは知らんわな。彼女は夜羽子・アシュレイ、ダークロアの一員でヴァンパイアらしいぞ。フェンリルを迎えに来たんだってさ。」
「え?」
横島の説明にアシュレイの方を見る。
「初めまして。横島の言うとおり、あなたを迎えに来たアシュレイよ。」
にっこり笑い、なるべくゆっくり丁寧に話しかける。
「あたしと一緒にダークロアに来てくれるかな?」
「嫌。」
そのままの笑顔でフェンリルに聞くが一言で拒否される。
「え、でも「嫌。」だか「嫌。」あの「嫌。」・・・。」
説得しようと口を開くが「嫌。」の連続に阻まれまともに話せない。
「あ〜、フェンリル。何か言いたいみたいだし話だけでも聞いてあげような?」
「うん。」
見かねた横島がフェンリルにそう言うと素直に頷く。
「え〜っと・・・何で嫌なの?」
「お兄ちゃんと一緒に居たい・・・。」
理由を聞くアシュレイに即答で答える。
「じゃあ・・・お兄ちゃんも一緒に来るならOKなの?」
「・・・うん。一緒に居れるならいいよ。」
「だそうだけど?」
質問の答えに今度は横島に話しかける。
ちなみに顔には思いっきり『頷け首を縦に振れ!』と出ている。
「あ〜俺はごめんだぞ?」
「何でよ!」
こちらも嫌だと言う横島に憤怒の表情を向けてくるアシュレイ。(美人の顔が台無しである。)
それに多少引きつつも理由を説明する。
「いや・・・だってさ。今その組織って戦争・・・でいいのか?とにかく今現在他の所と争ってるんだろ?今までの状況からすると。」
「それがどうしたってのよ?」
説明しつつ確認を取る横島に怪訝な顔を向ける。
「どうしたって、普通そんな時に仲間入りしたら絶対駆り出されるだろ?戦いにさ。俺は戦いたくなんかないぞ?元の世界に帰る方法を探したいしそんな暇は無い。」
それに対して当然だろ?といった感じで返す。
「う・・・。でも、仮に方法が見つかったとしてよ?あんたが帰った後その子はフェンリルはどうするのよ?」
「あ〜フェンリルに選ばせるつもりなんだけど、俺の世界に連れて行こうかと。行きたくないってんならしょうがない、この世界でフェンリルが安心して暮らせるようになるまで帰るのを待つさ。」
「はあ!?」
さらっと、とんでもない事を言ってのける横島に、これでもかという位呆れ果てるアシュレイ。
「それって・・・その娘が望むならずっと一緒にいるって事?」
「そうだけど?」
「あんたね〜。なんで其処までする必要があるのよ!」
呆れながら聞いた質問にかるく答えるが、即質問で返ってくる。
「護るって約束したからな。約束はやぶらないって決めてんだ。」
「はあ・・・もういいわ。」
今度の答えにさらに呆れ方を大きくして答える。
(まったく・・・普通約束だからって其処までする?)
いや、しないだろう普通は。
「ん〜・・・どうしようかしら?」
そのまま空を見上げ考え込むアシュレイ。
数分考えていただろうか何か考えが浮かんだようで、横島達の方を向きながらこんな事を言ってくる。
「よっし!じゃあね、あたしも付いていくわ!」
「「ええ!?」」
「なによ〜。不満?」
「いやいやいや・・・なんでいきなりそうなるんだ?」
その思ってもみなかった言葉にあわてて聞き返すと、
「しょうがないじゃない。その娘をほかっとく訳にもいかないし。それに無理やり連れて行こうとしてもあんた邪魔するでしょ?なら気が変わるまで一緒に行動するのが一番かなってね。
そうすれば他の組織が狙ってきてもあたしも護って戦えるしね。あたしの仕事はその娘を護ってダークロアに連れ帰る事、連れて行くのが現状では無理なら、もう一つを優先させるだけよ。」
説明を聞き終え、なるほどなと納得する。
「ん〜なら仲間って事だよな?じゃあよろしくな。」
「一時的にだけどね。まあ仲良くしましょ、ぎすぎすしても意味無いしね。」
それならと近づき握手を交わす二人。
「あなたもねフェンリル。よろしく。」
「うん、アシュレイお姉ちゃんでいい?」
「ええ、いいわよ。」
フェンリルとも握手する。呼び方も決まったらしい。
「あ〜そうそう、あたしの事は夜羽子って呼んで。アシュレイは最初のこの力の持ち主の名前だから。」
「ん、わかった。俺は横島でも忠夫でも好きに呼んでくれ。」
「じゃあ横島って呼ぶわ。」
この二人の呼び方も決まったようだ。
するとそこへ、
「そろそろいいかしら〜?」
横手から話しかけてきた存在が居た。
「「「え!?」」」
三人ともそちらに顔を向けるとそこには、
黒髪を腰まで伸ばし頭には二つのヤギのような角、目は髪と同じ黒、肌はアシュレイと同じくらいの白さ、その見事な胸と腰を薄い黒い布で巻き隠した美女が居た。
「うお!綺麗な姉ちゃん!」
「ありがと〜。」
いきなりの横島の発言にも気分を害した様子すら無く、天然を思わせるような笑みで微笑み返してくる。
「ア、アシュタルテー!?な、なんであなたがここに?」
「なんでって、ここは元々私の管轄地域なんだけどな?それにあなたが来てるって報告があったから会いに来ただけよ?迷惑だったかしら〜?」
ん〜と首をかしげながら聞いてくる。その様子は幼く見え容姿と合ってないのだが何故か可愛く見える。
(アシュタルテーって事はアシュタロス!?・・・ってこの世界じゃんなの関係無いわな。)
横島は一瞬取り乱しそうになるがすぐに落ち着く。
(あんなに美人で可愛い姉ちゃんやしな〜。あんな筋肉達磨と一緒にしたら悪いな。)
なんか頭でとんでも無い事を考えている横島だった。
「会いに来ただけってあんたね〜。一応現ダークロアのトップ3でしょうがあんたわ。」
は〜っと今日すでに数回目のため息を吐く。
そのセリフは何気に凄い事を言っているのだが。
「いいじゃないの、夜羽子とはお友達なんだし。それに何か困ってるようなら手伝おうと思ったんだもの。」
フフフっと笑い言ってくるセリフは本心からの物だと雰囲気で解る。
「そう、悪かったわ。友達に会うのに理由も何もなかったわね。」
「そうね〜。それで一緒に行動してその娘護るって聞こえたんだけど?」
「ええ、そうよ。まかせっきりも心配だしね。でもそれが何か「じゃあ一人じゃ大変だろうからもう一人連れてくるわね〜。」ってええ!?ちょ待っ。」
途中にそんな事を言うと一瞬で消えてしまう。
「消えた!?」
「あ〜転移能力ね。いくつか有るアシュタルテーの十八番よ。」
すぐに転移して戻ってきたアシュタルテーは一人の女の子を連れていた。
「この娘を護衛に一緒に付けるわね。セイバー(護人)の一族でも屈指の使い手だから安心してね〜。」
「ジル・リンクスって言います!よろしくお願いします!」
そう紹介された女の子は元気良く挨拶するとちょこんと頭を下げた。
「じゃあがんばってね〜。私はお仕事あるから戻るけど、何か困った事があったら遠慮なく言ってきてね。」
「ちょちょっと〜〜〜〜!?」
「バイバ〜イ。」
言いたい事だけ言ってさっさと消えてしまうアシュタルテー。
「あの今の人は?アシュタルテーさんだっけ?」
「アシュタルテーは現ダークロアのトップ3の一人、戦闘なら間違いなく最強よ・・・見えないでしょうけど。性格はあのとおり・・・これでもかっていう天然よ!!」
脱力仕切った様子で横島の質問に答える。
「アユタルテーって事は魔王だよな?魔王が天然なのか?」
だらだらと汗をかきながらそう聞く、
「確かに魔王よ。性格は・・・彼女の覚醒前の人間だった頃の性格に、アシュタルテーの女神の部分が足されて2で割ったような性格ね。」
「女神?魔王じゃないのか?」
「二面性よ。アシュタルテーは場所や時期によって、魔王だったり女神として扱われたりしてるからその影響ね。
ちなみに彼女は六代目らしいけど初代以来の女神の方の温和な性格らしいわ。見た目は魔王だけどね。」
「へ〜。そうなんか〜。」
アシュタルテーは元々は豊穣の女神として扱われやさしく慈悲深い女神だったらしいです。
「あの〜私は〜。」
「ああ、ごめんごめん。えっとジル・リンクスだっけ?」
話し込んでいた横島におずおずと横から話しかけてくる少女。
そうすっかり忘れていたが、話していた人物が連れて来た護衛の少女ジル・リンクスだ。
ちなみに見た目はフェンリルと同じ位の年で身長も同じくらい、緑の髪に虎?の耳、目は髪と同じ緑で勿論美少女。
プロポーションはフェンリルと同じで全体的に小柄、ただその四肢は無駄なく鍛えられている。(胸はフェンリルより大きく傍目からも大きいのが解る。)
(ん〜アシュタルテーさんの破天荒さに気を取られてたけれで・・・かなり可愛い。」
「そんな可愛いだなんて・・・。あ、あと呼び方はジルでいいですよ。」
声に出していたらしく真っ赤になりながら答えてくる。
そのやりとりの間フェンリルは膨れて、夜羽子はじと目で横島を見ていた。
「あの、私。もしかして御迷惑ですか?」
おずおずと本当に申し訳なさそうに心配そうに聞いてくるが、そんな声でそんな顔されたら迷惑だと言える訳も無く。
「いや、そんな事は無いよ!大丈夫だから心配しないで。」
やはり即答でそう答え頭を撫でつつ微笑みかける。
(あ・・・。)
(もう!お兄ちゃんてば〜!)
(こいつって案外たらし?いや、あれは無意識ね・・・たちの悪い。)
その行動にジルは全身赤くなり、フェンリルはさらに膨れ、夜羽子はまたため息を吐く。
(俺なんかしたかな?)
いい加減に気が付きたまえ横島君。
「あの!迷惑で無いならこれからよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしくな。」
赤いまま言ってくるジルにまたまた笑顔でそう答え、
(あう〜、横島さんてカッコイイかも・・・なにか暖かいし。)
(あ〜あ。お兄ちゃんてば、やさしいのはいい所だけど。)
(落ちたわね・・・あたしも気をつけなきゃね・・・って何に気をつけるのかしら?)
そんなこんなで4人に増えた横島一行。これからどうなることやら。
━後書き━
はい!REKIです!
第八話お送りしました〜。
大勢の方にレスをいただけて感謝感謝です。
アクエリアンエイジのカードゲームにも興味を持っていただければ幸いです。
こんかい登場の二人、
アシュタルテー様は容姿はサーガ2の2段目です。結構反則な能力をお持ちのカードですよ。
転移能力はオリジナルです。彼女本人か彼女と一緒にいる一人を彼女の知っている場所に瞬間移動する能力です。(多発はできません、結構疲れるので。)
性格は少し天然入った温和な人です。(女神+人間時)/2な性格だそうですw
もう一人は、
ジル・リンクスちゃんでした〜。人虎の少女でセイバー(護人)の一族って設定です。容姿はサーガ2の一段目。それを見れば胸が大きいのも理解して貰えるかとw
(アシュレイより若干大きいですwもっともアシュレイは一段だとペチャパイ気味なのですがw)
セイバー=護人ってのも多分オリジナル設定です。
まあアクエリ事態が個人個人にそうそう設定が無いのですが^^;
さて次回は町に戻ってこれからの相談になるかと思います。
最後にあのキャラが再登場するかも。
では次回をお待ちくださいな〜サイナラ〜。
レス返し〜。
遊鬼様と皇 翠輝様につきましては前の話のレスに直接返信いたしましたのでそちらをご覧ください。
すごいぞ文球使い様
ええ、結構上がってますよ〜。ただ3〜4個はほぼ全霊力でです。一回霊波刀をだしたらほぼ2個になりますね〜。使わなかったら3個か4個作ってストックできます。
森型様
五字指摘ありがとうございました〜。
ええ、みっちり仕込まれてますからねw
姿は魔王中身は女神?でした〜。
新キャラ気に入って貰えたですかね?
カシス様
多分横島から行く事は無いでしょう・・・多分ですがw
ありがとうございますがんばりますw
D,様
ん〜どうでしょうか?霊波刀はこの世界では物質化無しで普通に武器として物体を切り裂けるので問題無しっすね。全力戦闘態勢では形状が変わりますw
う・・・マインドブレイクネタ読まれてる・・・文字は違いますがね^^;
アクエリといったらマインドブレイクでの覚醒でしょうw
triger様
横島君は自分の事を過小評価する傾向にあるので^^;
実際は一文字でも第一段階のアシュレイなら縛れたりします^^;
圧縮されてるから少し上程度なら無問題・・・。
過小評価+念の入れ方で6個使用になりました^^;
この世界に来る時の失敗が後に引いてたりします。
うぐ(大汗・・・考えてみますがそれはREKIの文才では無理な気がひしひしと(滝汗
渋様
そうっすね〜策や反則は美神とその母親譲りですw
術は戦闘に使えるようなのは・・・無いかも(大汗
片手まで修行期間が大体半年と少しですからね〜そんなに甘くないですw
体術と文珠の使用法でがんばるので簡便してください。
桜葉 愛様
そのまま使ってる訳ではないかとw
受け流し方は体で覚えさせられていますのでやり方を教わったわけではなかったりw(まあ口頭で教えられはしましたが。)
タダスケ凄過ぎっすよね?^^;この横島君は数の変わりに遠隔起動と発動の速さが鍛えられています。
新キャラは彼女達でした〜気に入って貰えたかな?
ガルガンチュア様
結構がんばりましたw(結構ふざけてもいましたがw)
ロリコン疑惑が消える日はあるのか!・・・いや無いですねw
あう・・・鬼姫はでないっすね^^;
どうでもいいのかよ!(オイオイ
がんばりまっすw