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「黄昏の式典 第九話〜嘲笑:始まりの時・前編〜(月姫+奪還屋+GS+スプリガン)」

黒夢 (2005-07-21 17:14/2005-07-21 17:36)
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翌日、闘技場――――

昨日の激闘から一日経ったそこには裏の世界に生きる者たちにもとってもおよそ信じられない光景が広がっていた。

大破壊という言葉でも生ぬるいほどに損傷……いや、消滅していた闘技場の地面がわずか一日で嘘のように修復されているのもそうだが、何よりも信じがたいのはありとあらゆる、それこそこの闘技場に初めて訪れた時のように、何もかもが、真の意味で元通りになっていることだ。

「……まぁ、この大会がおかしいのはわかってたけど……どうやって残留霊気とかまで処理したのかしら?」

眉をひそめ、口にした美神の疑問はこの闘技場にいる者達の代弁でもあった。

ハオとアーカード……あの常識を逸するレベルの熾烈な激突によって生じた霊気と魔力の残り香を完全に除去することは不可能ではないが、もちろん簡単でもない。

それどころか協会に認められたそういったものの除去専門の封印指定の魔術師、もしくは除去に類する古代の遺跡に匹敵するものでなければ不可能のはずだ。にもかかわらず実際にこうして見渡した限りではわずかな空気の濁りすら見当たらない。

そしてもう一つ。観客ではなく選手専用の席に入ることができる選手たちの注目を集めているチームが二チームあった。言わずと知れたふんばり温泉チームと殲滅者チームだ。

「それよりも俺はあそこにいるハオって奴のほうが気になるぜ。どうやって吹き飛んだ手足を治しやがったんだ?」

ついに興味に耐えかねて疑問を口にした雪之丞の視線の先にはふんばり温泉チームが座っているのだが、問題は全身裂傷、腹部貫通、全身火傷、さらには手足を吹き飛ばされたはずの竜、蓮、ハオの三人がまるで何事なかったかのように完治して座っていることだ。

「……僕はあのアーカードさんの方が気になります。いくら最強と呼ばれている吸血鬼だからといって、あの炎を何度も浴びて無事なんて……」

見ているだけでも肌が沸き立つような恐怖を与えるあの無慈悲な業火の炎をその身に何度も浴びて無事であることも信じられないのに、なおかつ何事もなかったかのように足を組んで堂々と座っているアーカードの異常さに同族であるピートは改めて自分との格の違いを理解し、恐怖した。

「そういやー、あの司会が世界各国から一流の治療魔術師を集めたとかなんとか言ってたような……あのアーカードって言う明らかにおかしい人を除外して考えれば、あんがい治せるんじゃ……」

「あのねー……いくら魔術でも無くなった手足を元どおりにできるわけないでしょう。よくて人形の手足をくっつけるぐらいよ」

「へ?人形の手足って……そんなもん付けてどうするんスか?」

「人形って言っても、もちろんただの人形じゃないわ。魔術師が作った人体とほとんど変わらない精巧なものよ。私も稀代の人形師って呼ばれてる人が作った人形を持ってるから、生きて帰れたら見せてあげるわね」

もはや美神が何を持っていても不思議に思わない横島ではあったが、その後の「生きて帰れたら」という言葉に嫌でも現状の現実を認識させられ、背筋に汗が伝うのを感じた。

「それでは第二試合!両チームの選手の入場です!」

ちょうど話しが一段落したその時、司会の声が会場中に響き渡り、それに伴って両サイドからそれぞれ四人の選手が姿を見せる。どうやら、会話をしているうちに試合開始時間が来たらしい。

「大丈夫ですかね……アルクェイドさん達……」

不安げに月夜チーム側を見つめ、弱気な声を漏らす横島を美神は一度軽く殴ると、呆れた声を漏らした。

「あんた昨日私の話を聞いてなかったの?心配しなくても、勝つのは間違いなくアルクェイドさん達に決まってるでしょう」

あの昨日の会合の後に美神達は一度横島の部屋に集り月夜、デモンベインチームの戦力等について話し合っていた。

その時に美神はアルクェイド、秋葉、シエル、志貴の司会の言っていた言葉から推測、かつ知りえる限りの情報を三人に教えておいたのだが、どうやら横島はまだ理解しきれていないらしい。

しかし、表面の態度ではなんでもないように言う美神も心のうちでは人知れず大きな不安に覆い隠されていた。

(……確かにアルクェイドさん達は、月夜チームは強い。この大会でもたぶん有数の戦力があるわ。でも……司会の言葉が本当なら、いくらなんでも相手がやばすぎる。ウィッチクイーンの孫に無限城の雷帝、おまけにドクター・ジャッカルと鬼里人の親玉の一人……正直、ミスったかもね)

確かに美神の思うとおり月夜チームのメンバーは強者揃いだ。

真祖、死徒狩りの最強の真祖の姫、異端狩りの埋葬機関第七司祭、国内最大の混血の一族遠野家当主、今もなお数多の混血を震え上がらせる最強の退魔、七夜の一族の生き残り。

聞くものが聞けば恥も外聞も投げ捨てて全力で逃げ出す、月夜チームとはそういった者達なのだ。

だが……それに並ぶほど、相手となる裏稼業チームのメンバーはとびっきりの異常者揃いだった。

魔術史に名を残すクロウ・リードに並ぶ二大魔術師の一人、ウィッチクイーンの孫、美堂 蛮。

裏の世界において最強と呼ばれる一角である無限城の下層階に君臨した雷帝、天野銀次。

人を殺すことが趣味であり、裏新宿において最強との噂も多い殺人ドクター、赤屍蔵人。

遠野家すら凌ぐ日本最強の混血の一族、鬼里人の中で七頭目と呼ばれる七人の頭首の地位にいる毒蜂。

実を言うと、美神はこの四人の明確な噂をいくつか聞いたことがあった。しかし、それをあえて美神はアルクェイド達には伝えなかった。

なぜなら、いくら親しくなろうとも最後に勝利する勝者は一チームのみ。だからこそ、信頼はしても信用はしない。それが数多ある勝負の大原則だからだ。

「…神さ……神さん」

(いいえ。アルクェイドさん達もそれを承諾して話し合いに加わったんだから、私に問題はないはずよね。実際にアルクェイドさん達も何か隠してるみたいだったし……)

「…神さん」

(あっ!そうだ……なんだかいろいろありすぎて、すっかりあのことアルクェイドさんに相談するの忘れてたわ。……たぶん鍵を握ってるのはアルクェイドさんとあの紅麗って奴ね。九郎さん達が当たるからあいつはその時締め上げてもらうとして……)

「美神さん!!」

「え、あ、な、何?横島クン?」

知らず知らずのうちに自らの中に潜り込み思考に没頭していた美神だが、耳元で響いた大声に現実に引き戻されると、慌てふためき、言いよどみながらもなんとか返した。

「いや……本当に、大丈夫なのかなーって思って……」

「ッ!?」

その言葉に一瞬気づかれたか、とわずかに動揺した美神だが、それを決して表面には出さずにいつもの調子を崩さないよう睨みを利かせながら口を開いた。

「しつこいわねー。私の言葉が信じられないって言うの?」

若干強めに、これ以上余計なことを言うなという脅しを含めて言うが、横島の視線は闘技場に向いたままで、その脅しすら意に介していないようだった。

「そうじゃなくて……あの黒服の奴……物凄く、ヤバイ気がするんです」

目に見えて額に汗を浮かべ、途切れ途切れに言う横島の言葉に美神は目を見開き、今度こそ表面に出して驚いた。

(ったく、変なところで鋭いんだから。でもまあ、仕方がないか。……あれじゃあね)

嘆息して美神は自分の視線を横島の見ている辺りに落とせば、そこはある種の異界のようでもあった。黒服の男性、赤屍から立ち上るねっとりとした黒く澱んだ霊気は澄んだ闘技場の空気を侵食し、犯しつくしている。これでは横島でなくとも一般に霊力が高い者なら誰でも顔色を悪くするだろう。

(あいつ……本当に人間なの?悪霊でもここまで歪んだ霊気してないわよ)

一般に悪霊と呼ばれているものは現世への恨みなどが原因で力を増すが、赤屍から立ち上る霊気は長い間GSをやっている美神にも感じたことがないほどにねっとりとして、真っ黒だった。

だからこそ美神は、あの赤屍の黒い噂だけでも早いうちに説明しておいたほうがいいと思い立った。

「……あんたの言うとおり、あいつはやばいわ。なにせあいつは……」

「裏新宿に拠点を置く運び屋、赤屍蔵人。通称ドクター・ジャッカル。その戦闘能力は裏稼業を営む者達の中でも突出し、その本気を見た者すら誰一人としていないっていわれる最悪のクソ野郎だ」

説明しようと美神が口を開いたその時、突如として背後から響いてきた声は美神の言葉を遮り四人の耳に浸透していく。

何の気配もなく唐突に聞こえてきた声に四人は少なからず驚き、動揺しながらも決して混乱はせず身構えながら振り返った。

そこにいたのは日本人で、いたずらが成功した子どものような笑みを浮かべた横島達ぐらいのまだあどけなさを残した少年だった。しかし、その瞳の奥にはプロを思わせる鋭く冷徹な眼光を垣間見ることができる。

「!?あんたは!」

「確かスプリガンチームの……」

「御神苗 優だ。あんた達の話が聞こえてきてちょっと気になってな。よかったら一緒に観戦しないか?」

初めて会い、会話したにもかかわらずなんの気負いもなく言われたその突然の誘いに戸惑った横島達とは対照的に、美神は少々驚いた程度に感情を止めると裏との付き合いで培った薄い笑みを貼り付け、口を開いた。

「……もちろん。でもその前に、あんたあの赤屍蔵人の知り合いなの?」

美神の脳裏に思い出されるのは先の優の言葉。普通に聞いている限りでは特におかしいところはないと思うだろうが、あれには噂を聞いた程度では含めることのできない明らかな嫌悪の念が確かにあった。

「知り合いってほどじゃねーが、一度仕事で戦り合ってる」

「!!……へぇ、詳しく教えてもらえないかしら」

まるで何でもないかのように語る優の予想外の言葉に美神は目を見開き、ついで聞き返すが、その時優の背後から近づいてくる人影が見えた。

「おい!優!なにやってんだよてめぇは」

「まったく。これだから団体行動ができない奴は……」

それは金髪の青年と体格のいい男性で、美神はこの二人も見覚えがあった。

「いいところに来たな。ついでに紹介するとこっちの目つきの悪いのがジャン。この筋肉バカがボーだ」

「……殺されてぇのか?優」

「誰が筋肉バカだ!?バカは貴様だろうが!この夢想ものめ!」

あからさまに舐め腐ったその物言いにかなりマジな殺気と怒気を漂わせ、ジャンとボーは優を睨み付ける。

普段ならこれに優が冗談だと笑い終わるのだが、しかし、優にとっても決して見過ごすことのできないものがあった。

「ちょっと待てボー!まさかまだあの時のこと疑ってんのか?」

「当たり前だ!あんな話を信じる者がどこにいる!!おかげで私は死に掛けたんだぞ!!」

「信じるも信じないも本当だって言ってんだろうが!」

ここまで優が必死になるのはそれなりのわけがある。なにせ、これにはある意味自分の意義が関わってくるのだ。

「言い訳はいい!どこの世界にビームを乱射するV字形の生命体と蝶の仮面を付け爆弾を振り撒く変態がジャングルにいる!子どもでももう少しマシな嘘をつくぞ!!」

……待て。

「いやマジだって!なんとかリーム様を知らんとは何事だーとか蝶サイコーとか言いながら攻撃してきたんだよ!」

……だから待ってください。

「まだ言うか貴様は!!」

「俺だって信じたくねぇけどマジなんだからしょうがないだろうが!!」

確かに優とてこのようなことは認めたくない。

だが、真実を捻じ曲げ、現実から目を逸らしてはいけないのだ。なぜなら彼は、スプリガンなのだから!!

……思わずその二人?を見て、手元にあった遺跡で抹殺しようとしたのはここだけの秘密だ。

「てめぇら……騒ぐんなら他所でやりな」

いい加減後ろで騒がれるのに苛立ってきた雪之丞が二人にその目つきの悪さを惜しみなく前面に押し出し睨みを利かせるが、次のジャンから出た言葉によって雪之丞は騒動の一端を担うことになった。

「ん?ああ、いたのか。ちっちゃくて気づかなかったぜ」

ブチッ

どこかでそんな音が聞こえた気がした。

「て、てめぇ〜〜殺す!!」

マーダーマシンに変貌しそうな雪之丞を慌てて横島が後ろから羽交い絞めにして動きを封じるが、怒りからか普段は考えられない凄まじい霊力が漏れ出している。さすがにこの状態の雪之丞を一人で止めるなどいかに横島といえどもできるものではない。

「お、落ち着け雪之丞!!ピート!見てないで手伝え!!」

「は、はい!」

戦線にピートも加わり、何とかなだめようとするが、まるで効果がない。ちなみにジャンはというと漏れ出しているその霊力の巨大さに感心し、その様子を観察していたりする。

「お騒がせしてすみません」

周りから絶えず感じる興味の視線に頭を抱えていた美神だが、声をかけられたことに反応し、顔を上げた。そこにいたのは映画などで拳法使いがよく着ていそうな黒い胴着に身を包んだ長髪の男性。美神はこの人物にも見覚えがあった

「あなたは確か……朧さん?」

「はい。はじめまして美神令子さん。さっそくですが、実はあなたに尋ねたいことがあるのです」

「?尋ねたいこと?」

「この大会の裏についてです」

一瞬の驚きの後に美神の目つきが変わり、真剣さを帯びて朧を見つめた。

「どういうこと?あなた達はアーカム財団の指令できてるんじゃないの?」

スプリガンとはこの大会の出資者でもあるアーカム財団が抱える最強の特殊部隊であるのだ。ならば、この大会にはアーカムの指令で出てきていると考えるのが当然であり、それは朧も肯定した。

「確かに私達はアーカムの意向で参加をしています。ですが、詳しいことは何一つ知らされていないのです」

「……アーカムも、か」

「と、言うと?」

神妙な面持ちで語る美神にただならぬものを感じた朧は若干声に真剣の色を含ませ、先の美神のように聞き返した。

「覇道財閥も同じなのよ。聞いただけだけど、参加選手にも詳しいことは何も言っていなかったらしいわ」

「……どうやら、予想以上にこの裏は深いようですね」

「そうね。それと……あんた等いい加減にしなさい!!」

周りの止まる事の無い喧騒についにきれた美神の怒声が、会場の一角に大きく響き渡った。


黄昏の式典 第九話〜嘲笑:始まりの時・前編〜


先鋒戦   シエルVS赤屍蔵人


月夜チームサイド


「では、行ってきますね」

「先輩……気をつけてください。あいつ……かなりヤバイ」

先ほど闘技場の中央で向き合った時に感じた言い知れぬ悪寒を思い出したからか、志貴の額には汗が浮かび、それが頬に伝っている。

「志貴の言うとおりね。たぶんあれは……人間の域を超えているわ」

「あなたのことを心配するわけじゃないけど、相手はあの裏新宿の住人だということを忘れないように」

「……肝に銘じておきます」

三人の忠告を素直に聞き、最後にそう言い残すとシエルは戦場たる闘技場へと気負いなく歩みを進めた。


裏稼業チームサイド


「クス……できれば真祖の姫君か遠野志貴君と当たりたかったんですが……まぁ、いいでしょう」

「ずいぶん余裕だな。相手は仮にもあの埋葬機関の司祭だ。油断していると、思わぬ痛手を受けるかもしれないよ?」

指先で蜂を弄びながら、毒蜂は淡々と事実を語るかのように、赤屍へと忠告の言葉を送る。しかし、赤屍はそれを一笑すると、切り捨てた。

「油断?まさか。確かに残念ではありますが、彼女が面白い相手だということに変わりありませんよ」

淡々と語り、帽子の切れ間から覗かせた瞳は、獲物を貪欲に喰らい尽くす猛獣のそれだった。

「あ、赤屍さん殺しちゃ駄目ですからね!!」

「ジャッカル、負けやがったら承知しねぇぞ」

「クス……さて、ご期待に添えるとしましょう」

銀次や蛮の声を背後に捉えながら、悠然と赤屍は闘技場の中央に歩んでいった。


闘技場中央付近に歩み出た両者は特に会話をすることもなく静かに、ただただ無言で闘争という名の始まりの時を待っていた。

「クス……」

だが、緊迫感によってつり合いがとられていたその静寂は不意に浮かべた赤屍の嘲笑によっていとも容易く、まるでガラスを割るかのように崩される。

「なにが、おかしいんですか?」

普段なら大して気にもせずに無表情で流すであろうその嘲笑が、シエルはなぜかこの時、無性に気になった。

「いえ、あなたはいったい、どなたと運命と自由と真なる混沌に彩られた終焉の狭間で踊ることになるのかと思いまして」

帽子の広いつばに指を当て、赤屍は帽子の切れ間からシエルを一切の感情を削げ落としたかのような瞳で覗き見る。

「いったい何を……」

その黒く、底の知れない瞳にわずかに身体が硬直するかのような悪寒が走り抜け、その言葉が浸透するように内に溶け込んでいく。わけのわからない感覚にシエルは困惑の色を示すが、次の言葉によってそれは驚愕へと変貌した。

「覇道は舞台を整え、アーカムは主役を集め、クロノスは観客を招待した。後は、無限城が配役を決めるだけです」

「!?あなたは、何を知っているんですか……?」

まるでそれが当然のことのように、真実を雄弁に語る赤屍をシエルは厳しい眼差しで射抜き、真剣な声色で言葉をつむぐ。

「クス……どうやら少し多弁になっていたようだ。そうですね、この続きは試合の後にしましょう。もっとも……」

このやり取りが楽しいのか、面白げに語る赤屍の声を遮るかのように司会の声が会場全体に響き渡った。

「何やら話し込んでいるようですが、今日は時間が無いのでどんどん進めさせていただきます!
先鋒戦!シエル選手VS赤屍選手!!始め!!」

司会のマイクを使った大音量の声が響き、唐突に試合が開始された。だが、シエルはそれを聞いていなかった。なぜなら、かき消されたはずの赤屍の声が、確かにシエルに届いていたのだから……


―――――あなたが生きていたら、ですが


その一瞬後、シエルの視界から赤屍の姿がなんの前触れもなく、唐突に消失した。

「っ!!?」

動揺も一瞬にシエルはすぐさま代行者がよく用いる黒鍵と呼ばれる剣の柄を取り出し、それに魔力をすばやく通して長剣を形成すると振り向きざまに自らの首元にかざした。

その一瞬後、わずかな、それこそ刹那の間すら置かずに軽快な金属音が辺りに低く鳴り響く。

「良い反応です。さすがはその若さで埋葬機関の司祭に数えられる方だ。その調子で、私を楽しませてください」

これは、ヤバイ。

その狂気に歪んだ嘲笑を間近で捉えたシエルの思考はその言葉だけで埋め尽くされた。

そして、同時に理解した。これは人間という規格を、完全に超越している、と。

視線が交差し、シエルは心から吹き上がる恐怖とも畏怖とも取れぬ感情に従い身を翻して大きく後方に跳ぶと、牽制をかねて数本の黒鍵を赤屍に向けて放つ。

風を切り裂き弾丸の速度で赤屍へと飛翔する黒鍵は牽制といえども埋葬機関司祭の放つそれだ。人間である以上は直撃すれば絶命は間違いない。

シエルはなお空中に滞空しながら赤屍の行動を鋭い眼差しで観察し、避ける、受ける等の行動を起こした場合に追撃を加えるため両手には計八本もの黒鍵を指の間に挟みながら機を窺っている。

だが、結局構えた黒鍵はシエルの意図通りに使われることはなかった。


なぜなら――――


――――幾本もの銀色の閃光が、シエルの急所を狙い飛来してきたのだから……


「!?クッ!?」

短く悲鳴のような驚愕の声を漏らしながらもシエルは空中で身を捻り、黒鍵をその閃光の群れへと投擲した。

銀の閃光はその黒鍵によって次々に弾かれるが、なおも残る数本の閃光はシエルの心の臓腑を突き破らんと迫りくる。それをシエルは若干の焦りを含めた視線で捉えるが決して心を乱さずにタイミングを計り、大きく足を振り上げると踵落としを決めるかのように蹴り落とした。

その反動を利用し、一本の石柱へとなんとか無事に降り立ったシエルを見れば、掠り傷はおろか服すら切れていない。だが、その表情は硬く、驚きに目を見開いていた。

思い出されるのは一瞬前のあの時だ。

赤屍は迫る黒鍵に怯む事もなく、どこからからメスを数本取り出すと飛翔する黒鍵に向かい投擲したのだ。ここまではそう不思議なことではない。撃退の可能性ももちろんシエルの考慮の中に含まれていたからだ。問題はその後だ。弾丸とかした黒鍵をその力強いとはお世辞にも言えないメスが方向をずらし、なおかつ空中にいたシエルに襲い掛かったのだ。

(……考えられるのは、黒鍵の先端のわずか下に当て方向をずらしたと言うことですが……そんなことが可能なんですか?)

今行われたそれはそう簡単に信じられるものではなかった。あくまで牽制だったとはいえ、『弓』の異名を持つ自分の投擲が一瞬で見切られ、かつ利用までされたのだ。もしも狙っていたとしたら、その技量は計り知れない。

「……駄目ですね」

突然、赤屍は一つため息をつくとそんなことを言った。いったい何を言っているのかとシエルは思ったが、次の思いもよらぬ言葉によって思考が停止した。

「私が見たいのはあなたの本気だ。それとも……今のがあなたの全力なのですか?だとすれば、こうしてあなたと対峙しているだけ時間の無駄です。申し訳ありませんが、次で終わりにしましょう」

嘲笑するわけでもなく、ありのままの事実を語るかのように宣言する赤屍の言葉の真意を無意識の内に探り出したシエルは一つの結論に行き着いた。

完全に舐められている。数多の異端を狩る埋葬機関において『弓』の異名を持つ自分が、完全に格下に見られている。

それを認識した途端に急速に混乱と驚愕は息を潜め、変わりに冷たい怒りがこみ上げてくるのをシエルははっきりと自覚した。

「今の言葉、すぐに後悔させてあげます。もう泣いて謝っても許してあげません」

「それは楽しみだ。ぜひ、私を後悔させてください」

二人の常人を逸した殺気が辺りの空気を凍りつかせ、さながら秘境の霊地のような物々しい気配が両者の間に漂い始める。

それはさながら……他ならぬ真の試合の始まりを告げる狼煙のようであった。

「……はっ!!」

先ほどとは異なり、先に動いたのはシエルだった。

その両手に持てるだけの黒鍵を携え、その全てに渾身の力を込めて投擲する。先ほどの牽制程度とはわけが違う、真実本気の投擲だった。

「クス……」

赤屍は迫り来る黒鍵の弾丸を見つめ、微かな笑みをその顔に刻み込むとどこからか数本のメスを取り出し、先ほどと同じようにそれぞれの黒鍵に向けて投擲する。

だが、そのメスの全てはまるで通行の邪魔だと言わんばかりにいくつかは弾かれ、いくつかは粉砕され無残にも空に散った。

「!?」

ひしゃげ、折れ曲がり、砕け散ったメスの残骸を細い目を見開いて見つめ、赤屍は試合が始まってからはじめて驚きの表情を浮かべた。

なぜ、一度は黒鍵を弾いたにもかかわらずそのメスは全てが意味をなさなかったのか?

その理由は先ほどとは異なる黒鍵の投擲方法にある。シエルが今用いたのは埋葬機関秘伝の鉄甲作用と呼ばれる投擲技術であり、その威力は一本で乗用車を吹き飛ばすほどだ。

小ざかしい妨害など意味がないと風切り音が告げ、飛翔する黒鍵が狙い違わず赤屍に突き刺さらんとした。しかし、それらは突如として出現した赤の軌跡によってその全てを斬り裂き、吹き飛ばされた。

「!?」

まるで先ほど空に散ったメスの巻き戻しを見るかのように砕け散った黒鍵の残骸を見つめ、今度はシエルが石柱の上にたたずみながら驚愕の色を示した。

「クス……先ほどの言葉は訂正しましょう。まさにあなたの投擲は『弓』から放たれた『矢』そのものだ。これなら、私も楽しむことができそうだ」

血のように紅い……いや、血で構成された紅い剣を携え、赤屍は笑う。

その姿は剣を持つ身でありながら、死神のように見えた。

(これは、血液操作?……いえ、何かもっと別の……)

すぐさま心を沈ませ、冷静になるとシエルは赤屍が手に持つ剣を観察するが、わかるのは剣から立ち上る異様な気配が不愉快だということぐらいだった。

牽制の意味合いを込め、シエルは試しに黒鍵を三本ほど投擲してみた。もちろんそれらには鉄甲作用を用いて、だ。

だが、その三本はシエルの予想通り、一筋の紅い閃光が虚空へと走ると微塵に切り裂かれていた。

(速いですね……志貴君と同等……いえ、それ以上……)

シエルですら最初の一太刀しか捉え切れなかったその神業とも言えるであろう早業は、同じチームの志貴のナイフ捌きに匹敵、あるいは凌駕していると思われた。

「どうしたのですか?来ないのなら、こちらから行かせてもらいますが?」

「お構いなく。ここからが、本番です!」

シエルは一度大きく咆哮すると、全身のバネを使い勢いよく前方に跳躍した。

そのまま向かい側の石柱の腹を蹴りつけると、縦横無尽に跳躍を繰り返し、目に見えない赤屍に対する包囲網を作り上げる。

「ほぅ……これはこれは……面白い。実に、ね」

赤屍は自らの周りを弾丸さながらのスピードで跳び回るシエルに感嘆の声を上げ、それを皮切りにいたる所から無数の黒鍵の雨が赤屍へと降りしきった。

(終わった……)

全ての黒鍵が狙い違わず赤屍へと殺到するのをなおも高速で移動しながら見つめ、シエルは自身の勝利を確信した。

これだけの数、先ほど見た悪魔のような早業でも受けきれるものではなく、もしも回避すれば、それぞれの黒鍵は赤屍の周りの石柱を破壊し、赤屍の動きを束縛することになる。

いずれにしろ、赤屍の勝利は無くなり、そして……赤屍の命もまた、無くなる。

シエルはこの時、赤屍を殺すつもりでいた。

殺すことに戸惑いを覚えなかったわけではない。なにしろ赤屍は普段シエルが相手にしている吸血種などの異端ではなく、人間なのだ。しかし、あの感情の全てが抜け落ちたかのような冷徹な瞳を見た時から、シエルの中に一つの予感があったのだ。

アレを生かしておけば、必ず多くの人が死ぬことになる、と。

だが、そのあまりにも愚かな確信とあまりにも無謀な覚悟をあざ笑い、打ち破るかのような声が、シエルの耳に届いた。

「赤い暴風(ブラッディー・ハリケーン)」

その瞬間、シエルは不覚にも夢を見ているのではないかと思ってしまった。

しかし、それも仕方がないだろう。なぜなら、突如として巻き起こったメスの暴風が赤屍を包み込みと凄まじい気流となって迫る黒鍵を全て切り飛ばしたのだから……

「っ!!?バケモノですか、あなたは!?」

あまりにも非常識で、出鱈目で、理不尽なその力にシエルは思わず声を荒げるが、下から黒鍵を切り飛ばしながら迫りくる赤い暴風を見据え、足をつけた石柱を力の限り蹴ると身をよじって回避する。

そのまま地に降り立ったシエルは再び赤屍と相対し、同時に背後から轟音と土煙が舞った。シエルという目標を失った暴風が石柱のてっぺんを粉微塵に切り裂いたのだ。

「お久しぶりですね。『弓』のシエルさん?」

「……ええ。もう二度と会うことがないと思っていましたよ」

冗談めかして言う赤屍にもさして怒った様子もなく、シエルは軽く返しながら、胸のうちで激しく舌打ちした。

(あれだけの黒鍵を使ったにもかかわらず、掠った程度ですか……)

そう。今の攻撃は少なくとも赤屍に届いていたが、それでもわずかに腕や足、頬を切り裂いた程度で、まったくダメージはなさそうだ。

「クス……中々楽しめましたよ。あなたのようなタイプは、私の身近にいませんので」

「……まるでもう勝負がついたような言い方ですね。少し早計じゃないですか?」

確かに残存する黒鍵の残りは多いとはいえないが、それでも戦闘を行うのに十分な数は残っている。まして、シエルはまだ切り札を残しているのだ。

だが、赤屍はそれを否定し、静かに、断罪者のように、その言葉をつむいだ。

「いいえ。終わりですよ。なぜなら――――


トスッ


「え……?」

静かな軽い音と、シエルの気の抜けた、呆然とした声が闘技場に小さな波紋を広げるように響く。

その音の響いた中心、そこには――――


――――あなたは浴びてしまいましたから。赤い死の雨を……」


――――全身からメスを生やしたシエルが、呆然とたたずんでいた。


「が、はぁッ……!?」

全身を突き刺された激痛にシエルは膝を突き、うめき声を漏らすが、その声色には苦痛と混乱が入り混じっていた。

その時、シエルは足音すら立てずにいつの間にか自分の目の前に立っていた赤屍が静かに見下ろしていることに気づいた。

「いったい……あなたは何を……」

「おや?聞こえませんでしたか?あなたは赤い死の雨を浴びた、と」

答えになっていない答えにシエルは眉を顰め、難色を示すが、そのとき一つの光景が脳裏に蘇った。

天を突き崩すかのように地表から上がってきた赤い暴風のことを……

「まさか……ここまで計算して……」

「クス……」

驚愕への返答は、薄い微笑だった。

「……あなたは、本当に人間ですか?」

信じられなかった。数多の異端を狩り、自惚れではなく、おそらく現代において人間ではかなりの力を有する自分が、子供のようにあしらわれたのが、到底信じることができなかった。

「……ええ、人間ですよ。自然の摂理を……人の“業”の深さを知りえるのは、人間だけですから……」

若干の沈黙の後に淡々と語り始めたその言葉は、シエルにはとても理解できないものだった。しかし、なぜだろう。ほのかに身を照らす夕焼けを背景にたたずむその姿は、ひどく悲しく、寂しそうに見えた。

「……クス、話しはここまでにしてそろそろ決めてもらいましょう。死ぬも生きるも、あなたしだいだ」

ゆっくりと、まるでそれを見せ付けるかのように赤屍は手に握る赤い剣をシエルの首筋に当て、選択を迫る。

「…………降参です」

幾秒の沈黙の後に紡がれたその言葉によって、ここに勝敗は決した。


「一つだけ、教えてください。今この世界に、いったい何が起こっているんですか?」

痛む身体を持ち上げ、シエルは自らのチームがいる場所に戻ろうとする赤屍に一つの、そして最大の謎を投げかけた。

問いかけたシエル自身返答は期待していなかったのだが、赤屍は律儀にも立ち止まると、沈黙の後に振り返りもせずに、こう告げた。

「あなたはもう、知っているのではないですか?この世界の、始まりと終わりの時が近いことを」

「!?」

その言葉に、シエルの脳裏にある光景が思い出される。それは、他ならぬあの満月の夜に会合したアンデルセン神父の告げた、最後の言葉。

「私達は選ばれたのです。世界の始まりと終わりを防ぎ、世界の終わりと始まりを壊す者として、他ならぬ世界と超越者達によって……彼の存在に対抗するために」

それには、いったい如何なる意味が込められていたのか。最後にそれだけ言うと、今度こそ赤屍は立ち止まることなく闘争の場から去っていった。


次鋒戦     遠野秋葉VS美堂 蛮


月夜チームサイド


「すみません……負けてしまいました」

ボロボロのカソック着を揺らめかせ戻ってきたシエルは開口一番にそう言うと、三人へと苦笑いを浮かべた。

「そんなことより傷は大丈夫なんですか!?」

慌てて志貴はシエルへと詰め寄ると、メスの突き刺さっていた箇所を見て、そう声を荒げた。

「遠野君は心配性ですね。私なら大丈夫ですよ。もう傷も治りかけていますし……それより、次は秋葉さんですか……」

見ていて面白いぐらいの志貴の慌て様にシエルは微笑みを浮かべると、一転して厳しい顔つきに変えて秋葉へと向き直る。

「なんですか?」

いきなり睨む、とはまた違う真剣な顔で見つめられた秋葉は疑問の声を上げるが、その次にシエルが言い放った予想外の言葉に秋葉の思考が凍りつく。

「秋葉さん……次の試合、戦わずに棄権することをお勧めします。あなたなら十分間逃げ切ることぐらいならできるはずですから」

「そうね。それがいいわ」

意味のわからないそれにアルクェイドも同意するのを呆然と聞いて、秋葉の思考がその意味を理解する。その瞬間、秋葉は叫び声のような怒声を上げた。

「ちょ、ちょっと待ってください!あなた達、いったい何を言って……!」

シエルが負け、すでに一敗も許されない状況で何を世迷言を言うのかと秋葉は言外に言い放つが、それをシエルは切り捨てた。

「言いたくはありませんが、今の秋葉さんではおそらく彼には勝てません。なら、能力を明かす前に逃げ回り棄権した方が次の試合を有利に進められます」

「なっ!何を根拠にそんな」

そこから終わりのない言い合いに入る前に、アルクェイドがシエルの言葉を引き継いだ。

「あいつが、あのウィッチクイーンの孫だからよ。妹は知らないと思うけど、ウィッチクイーンはおそらく魔法使いも含めて最高クラスの神秘の行使者。そんな奴の孫ってだけでもヤバイのに……しかもあの眼……私の予想が正しければ妹、地獄を見ることになるわよ」

「ッ!!そんなの、やってみないとわかりません!」

「あ、秋葉!」

自分が負けると面と向かって言われたことへの怒りに顔を真っ赤に染めてそう言い放つと、志貴の静止の言葉に耳も貸さずに闘技場の中央へと歩んでいった。


裏稼業チームサイド


「さすがだねドクター・ジャッカル。あの埋葬機関の七位を容易く手玉に取る技量……蝉丸が後れを取るはずだ」

「そうでもないですよ。私にとっては残念なことですが、彼女には迷いがあり、戸惑いがありました。あれでは本来の実力の半分ほどしか発揮できていないでしょう」

わずかに失意の念を滲ませたその赤屍の言葉に銀次が反応した。

「迷いに戸惑い……?」

「ええ。私を殺すことへの迷い……この大会の謎を解く手がかりを失うことへの戸惑いが……」

「……そういえば何か言ってやがったな。てめぇ……本当に何を知ってやがるんだ?」

虚言は許さないとその視線に込め、蛮は赤屍に問う。

「クス……そんなに気になりますか?美堂君……」

だが、赤屍はそれにひるみもせずにあくまで淡々と、幽鬼のおうな雰囲気で聞き返すと、蛮はより一層視線を厳しくした。

「気にならねぇはずがねぇだろうが。あのクソ親父が、俺たちにわざわざ頼むぐらいだからな」

その時のことを思い出したからか、殺気とも取れる怒気を滲ませ、蛮は吐き捨てるように言う。

「蛮ちゃん……」

「話したいのは山々ですが、今はまだその時ではない。いかなる形であれこの大会が終わるとき……その時こそ、全ては真実と絶望に晒され、選択という運命が切り開かれます」

「ちっ!」

言外に語らないという言葉に蛮は大きく舌打ちすると赤屍から視線を外した。

「それより、次は美堂君のようですが、自信のほどは?」

「……誰に向かって聞いてんだ?ジャッカル」

そのあまりにも愚かな問いかけを貪るかのように、蛇のような幻影が、蛮の周りに轟く。

「クス……これは要らぬことでしたね」

「ば、蛮ちゃん!相手は女の子なんだから傷つけちゃだめだからね!!」

「わーってる。卑弥呼の時みたいに軽くあしらってやるよ」


闘技場の中央付近に進み出た蛮と秋葉は互いに相手を見つめていたが、両者には決定的な違いがあった。それは相手に向ける感情だ。

蛮は良くも悪くも特に何の感情もその視線に乗せずに淡々と秋葉の行動を観察している様子だったが、秋葉はその眼に隠そうともしない敵意を溢れさせ、常人ならその視線だけで竦みあがるほどの眼光を向けていた。

「……これから試合が始まるにもかかわらず、ずいぶん余裕そうですね?」

まるでこれから始まる試合など意にも介していないかのようにポケットから取り出したタバコに火を付ける蛮を見て、秋葉は不快に眉を顰めた。

「まぁな。嬢ちゃんぐらいの相手なら、気負うこともねぇしな」

それをさも当然のことのように肯定すると、蛮はタバコの煙を肺一杯まで吸い込み、吐き出した煙でわっかを作る。

「ッ!!その言葉、後悔させてあげます」

その言葉、態度が気に障ったのだろう。秋葉は視線に怒気の他に若干の殺意を含めた。


「次鋒戦!秋葉選手VS美堂選手!!始め!!」


「一瞬で、終わらせます!」

蛮を見据え、秋葉は絶対の自信と共に力強く宣言する。その瞬間、同時に秋葉の髪が鮮やかな真紅に染まり、言いようのない悪寒が蛮の身体を蹂躙した。

まるでその悪寒が正しいことを代弁するかのように秋葉と蛮を挟むようにそびえていた石柱の一部が何の前触れもなく抉り取られるように消失し、それに驚愕の表情を浮かべた蛮は、直後に崩れた石柱の先に消えた。

「……逃げ足は速いんですね」

石柱が崩れたことで起こった砂塵の風に紅い髪をなびかせ、クスクスッと煽るように笑うと振り返ることもなく秋葉は背後へと話しかける。

そこにはいったいいかなる手段を用いたのか、秋葉の背後に回りこんだ蛮がひしゃげたサングラスをかけ、根元を残して消滅したタバコを口先で弄びながらたたずんでいた。

しかし、今の秋葉の発言が気に障ったからか、あるいはその意味のない行動に飽きたのか、微かに音を響かせるほどに強くタバコを吐き捨てると、蛮は歪に変形したサングラスを外し淡々と語りだした。

「……今のが遠野の血に伝わる紅赤朱の能力ってわけか。原理はわからねぇが、まさか見えない力でこんなことができるなんて思わなかったぜ。おかげでグラサンがこんなんになっちまった」

感嘆した様子でサングラスを一瞥すると、秋葉にも見えるようにすぐ足元に投げ捨て、蛮は再びタバコを取り出すとライターで火をつけ一服した。

「私の『檻髪』を所見でかわしたことは素直に賛辞します。ですが、それもいつまで続きますか!?」

足元に転がってきたサングラスを秋葉は気紛れからか、今度こそ本当に消滅させると、吹き荒れる砂塵の流れに従い振り返り、背後に立つ蛮を視界に納めようとする。

だが、そこにはすでに蛮の姿はなく、虚空にタバコの煙の余韻を残すのみだった。

「どこ見てんだ?俺はここだぜ?」

その時、嘲笑するかのような声が、背後から聞こえた。

「!?なっ!!?」

夢想すらしていなかったその事実に秋葉は勢いよく再び振り振り返るが、そこにはすでに姿がない。この時、試合が始まってからある一定の余裕を保っていた秋葉の表情が初めて崩れた。

「ったく……ちっと遊びに付き合ってやろうと思えば……これじゃあ遊びにすらならねぇぜ」

相変わらず声だけがどこからか響き、秋葉の神経を徐々に削っていくが、声の響き具合からどうやら背後に回りこまれているということはないようだ。

だが、比較的自尊心が高い秋葉はその明らかに自分を舐めている発言に激怒し、顔を真っ赤に染め上げた。

「その減らず口、二度と叩けないようにしてあげる!」

声が聞こえてくる角度の先にあった石柱に向け檻髪を使い、その石柱を根元から抉り取る。石柱は支えが無くなったことで轟音を立てて崩れ落ちたが、そこに蛮の姿はない。

「ようやくその檻髪つー能力の原理が見えてきたぜ。そいつは相手を視認しないと使えねぇな?」

再び声がどこからか響き、秋葉は先ほどと同様に瞬時に声の方向の石柱を破壊する。

「まだわかんねぇのか?嬢ちゃんと俺の力の差がよ。今こうして話してる間にも、俺は嬢ちゃんを殺すこともできるだぜ?」

「…………」

先ほどまでとは違う、苛立ちを含めたその無慈悲とも取れる発言に対して、秋葉は何も語らない。ただ顔を伏せ、地面を見つめているだけだ。

蛮は秋葉のちょうど右前方の石柱の陰に隠れながらその様子をじっと見つめていた。

早くも戦意喪失したのかと思い立ったが、不意に、今までとは決定的に違う違和感に気づいた。

そう……周りの空間の温度が上昇していることに。

「……捕まえた」

薄い笑みを張り付け、秋葉はゆっくりと伏せていた顔を上げる。その笑みは親が子を見るかのように穏やかであり、獲物を見る狩人のように残酷であり、いたずらに引っかかったことに喜ぶ子どものように純真だった。

しかし、その様は共通して美しく、可憐で、無慈悲な一体の赤髪の鬼をそこに見る。

秋葉はゆっくりと優雅に右辺の石柱へと身体を向かせるとその先にある一本の石柱を穏やかな視線で見つめる。

「あなたの予想は正しいわ。確かに私の能力は相手を視認することで最大限の効果を発揮する見えない『髪』による『略奪』。でも、応用しだいでは、今のあなたの状況のように『髪』の牢獄を作り上げることもできるわ」

そう。蛮が感じた空間の温度の上昇。それは蛮の周りに張り巡らされた蜘蛛の糸のように繊細な紅い見えざる牢獄が起こしたものだ。

わずかでも触れれば死をもたらすそれは、対人戦では間違いなく最強に類する能力。

だがしかし、ヘッ、と、この身動きすら迂闊に取れない絶望的な状況の中で、蛮はなお、笑う。

「だから『檻髪』か……中々しゃれた喩えじゃねぇか。だがまぁ……」

石柱に隠れ、秋葉は知りえることができないが、蛮の腕の周りに巨大な蛇のようなものが轟き始め、静かに脈動する。

「殺しはしないわ。四肢を『略奪』して、芋虫のように地べたに這いつかせてあげる」

その言葉と共に秋葉は蛮の手足を石柱ごと『略奪』しようと集中する。しかし、その前に

ごきゃッ

と、鈍い、まるで何かが千切れる音が、闘技場に、会場に、静かに響き渡った。

「え……?」

今の音は何ナノだろう?

呆然とそんな思考に囚われながら、秋葉は音が響いた場所、自らの右腕へと視線を落とす。そこには――――

「『檻』なんてもんは、案外簡単に抜けられるもんなんだよ」

いかなる手段を用いたのか。再び秋葉の背後に回りこんだ蛮は静かに、ポタポタと何か水が滴る音を背景に独白する。

その手には、何か棒状のものが握られていた。それは――――


――――あるはずの腕が、なかった。


――――紅い血を流す、細く、白い右腕。


「!!!?あ……あああああ……ああああああ!!!?」

意識したことで襲われた激痛に秋葉はその場で膝を折り、無くなった腕の代わりのように左手で付け根を押さえるが、思い出したかのように溢れ出した夥しい量の血は瞬く間に周りに血の池を作り出す。

(なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!?)

わけがわからない。なぜ、なんで、自分が血を流して倒れているのかが、わからない。

極度の混乱によって生じた疑問は思考をループし、秋葉は激痛を紛らわすかのように混乱しつくした。

秋葉の『檻髪』は非常に使い勝手が良い優れた能力だ。視認したものの繊細さに応じて『略奪』し、髪の牢獄を作り上げ、さらには自らの周りに纏う事で対接近戦の最高の防具にもなる。

もちろん秋葉は試合が始まってから絶えずその身を『檻髪』によって身体を守っている。それなのになぜ、このような事態に陥っているのか?その尽きることのない疑問が、秋葉を混乱と恐怖、そして怒りへと誘った。

「ッこのー!!」

背後にたたずむ蛮へと振り返り、怒りから命をも『略奪』しようと試みるが、それよりも早く、目の前に何か、血を撒き散らすソレが、視界をふさいだ。

怒りの中で、理解した。それは、他ならぬ自分の右腕だと……

ばぎゃッ

「聞き分けのねぇガキにはもう一本……いっとくか」

ドサッと言う音を立てて視界を塞いでいた右腕が地面に落ち、同時に蛮が何かをほうって、秋葉の目の前にソレが落ちた。

右腕に折り重なるように落ちたソレは……見慣れた、左腕。

「〜〜〜〜〜!?!?!?あああああーーーーー!!?」

その瞬間に怒りは消え、後に残るのは痛みさえも超える拭い様のない絶対の恐怖。

その恐怖から逃れようと秋葉は立ち上がろうとするが、それはできなかった。

めきゃッ

「人の忠告聞かずに仕掛けてきたんだろうが。だったら、最後まで付き合えよ」

身体を支える左足が無造作に、まるで人形の足を壊すかのように捥がれる。

秋葉は勢いをそのままに地に倒れ伏せ、同時にまた、下のほうから、嫌な音が響いた。

「そのままじゃ不恰好で恥ずかしいよな?だったら、こいつも取っちまうか」

ドサドサッと目の前に見慣れた、自分の両足がほうられる。

すでに動くこともできずに、秋葉は霞む思考の中で思った。


――――四肢を『略奪』して、芋虫のように地べたに這いつかせてあげる


それは奇しくも、自分がこの男に言ったものと同じだ、と。

「んで最後に……頭だ」

無情な言葉に続き、血に濡れた手が頭にそっと添えられる。

「兄さん……」

もはや抵抗することもできずに目を瞑り、まぶたの奥に最愛の兄の姿を思いながら、秋葉は一瞬後に訪れるであろう死を覚悟した。

だが、その時が訪れることはなかった。

「ジャスト一分だ」

ガラスが割れるような音と共に、暗闇に光が注がれる。

「え……?」

「悪夢は、見れたかよ?」

まるで何事もなかったかのように眼前に立つ蛮に思わず秋葉は気の抜けたような声を漏らし、続けて自らの四肢が繋がっていることを呆然と確認する。

「なんで……確かに、腕と足が……」

「嬢ちゃんは一分間の長い悪夢を見てたんだよ。俺のグラサンを壊したあの瞬間からな」

その言葉に唖然と辺りを見回せば、あれだけ破壊したはずの石柱は眼前の一本しか壊れていなく、確かに試合開始の場所からまったく移動していないことがわかった。

「あれが、夢……?」

いまだに信じられないと言いたげな表情で秋葉は全身を見渡し、呆然とその場に顔を伏せた。

「信じる信じないは嬢ちゃんの勝手だ。んなことよりさっさと降参しな。今の嬢ちゃんじゃ相手にならねぇよ」

悪夢の中でとは言え、絶対の恐怖と死の一歩手前まで体験したのだ。精神が極限まで疲労した今の秋葉では確かに蛮の敵ではないだろう。

「まだ……」

「あ?」

「まだ終わってません!」

「!?ちッ!!」

まるで残りの力全てを乗せるかのような咆哮とともに秋葉は檻髪を無差別に開放し、力の限り周りにあるもの全てを手当たり次第に『略奪』する。

指向性を排除したそれは無差別に闘技場を蹂躙し続け、十メートル四方を石柱の欠片すら残らずに円形状に全ての物体を灰燼に帰した。

「はぁはぁはぁ……」

能力を限界以上に行使したための疲労から息遣いが荒くなり、秋葉の紅髪が元の黒髪に戻る。

「これなら……」

秋葉は安堵から一度大きく息をつくと、身を起こそうと足に力を込める。だが、その時、秋葉はその瞳に写してしまった。石柱の上に悠然と立つ、蛮の姿を。

その時、秋葉は理解した。自分は、負けたのだと。

もはや抵抗すらできぬほどに疲労した秋葉はそれでも石柱を飛び降り、ゆっくりと近づいてくる蛮を気丈にも睨み付ける。蛮は無表情で秋葉の瞳を真っ向から覗き、続けて月夜チームの方に目をやった。

何やら志貴が短刀を取り出し、メガネを外しているのを見えるが、対して気にも留めずに再び秋葉へと視線を向け、呪詛を紡ぐかのように、秋葉の耳元でそっと、告げた。

「喰われちまいな」

その言葉と共に訪れた腹部への衝撃に、秋葉の意識は今度こそ深遠の暗闇に落ちた。


月夜チームサイド


冷徹に、残酷に秋葉へと近づいていく蛮を見た志貴は、内からこみ上げてくる叫び声が聞こえた。

それは大きく、そして静かに己へと浸透し、すぐにその声に結論を出した。すなわち、ヤバイ、と。

「ッ!!」

その直感に従い志貴はポケットから七つ夜という収納式のナイフを取り出し、即座に己の能力を封じるメガネを外す。

しかし、その行動はわずかに遅かった。

秋葉の腹部に突き刺さる蛮の右腕、そして身を預けるように蛮の胸に倒れる秋葉を目にした志貴は悲鳴にも似た叫び声を上げた。

「あ、秋葉ーーーー!!」

声を枯らさんばかりに絶叫し、志貴は目の前に広がる点と線に刃を走らせる。その一瞬後、ハオとアーカードの激突すら防ぎきった結界が音を立てて砕け散った。

それと同時に志貴の傍らにいたアルクェイドとシエルは駆け出し、続くように志貴も駆け出す。

蛮は迫る三人を冷徹な眼差しで見つめると、胸に抱えた秋葉を三人に向けて投げつけた。

「「!?」

その行動に驚愕を示し、先行していた二人は慌てて勢いを殺すと秋葉を受け止める。

その行動に怒りを深めた志貴は三人を追い抜き、さらに加速して下辺から切り上げるように刃を走らせ――――

「待ちたまえ、志貴君」

――――横から伸びてきた腕にいとも容易く動きを封じられた。

「なっ!?」

一切の手加減抜きで放った一撃を受け止めた人物、毒蜂を呆然と見上げ、志貴の思考は一瞬過度の混乱によって真っ白になった。しかし、次の毒蜂の言葉に、思考は白から赤に変化する。

「妹の身を心配に思うのはわかるが、しかし、だからといって手を出すのはだめだよ、志貴君。それに……おそらく、彼女には傷一つないはずだ」

その言葉に、志貴は切れた。

「胸を貫かれて、無事なわけあるか!!」

そう……あの時、志貴は確かに見た。蛮の右腕が胸を貫き、紅い鮮血が空に舞うのを。

「志貴……」

不意に秋葉の容態を見ていたアルクェイドに声をかけられ、志貴は毒蜂に摑まれたままだった腕を振り払い、三人へと駆け寄った。

「アルクェイド!秋葉は……え!?」

「……見てのとおりよ。傷どころか、アザすらないわ」

アルクェイドの言うとおり、見た限りでは秋葉は胸を貫かれているどころか掠り傷すら見当たらない。

「な……確かに、胸を貫かれて……どういうことだ……?」

混乱した志貴は呆然と秋葉を見つめ立ち尽くし、シエルは蛮を睨み、口を開いた。

「『邪眼』……ですか?」

「……さぁな?敵に教えてやる必要はねぇよ」

蛮は無表情にそれだけ告げると志貴達に背を向け、チームのベンチへと歩いていった。

「……とにかく、まずは妹を運びましょう。表面はなんともないけど、もしかしたら内面が傷ついてるかもしれないしね」

「あ、ああ……」

それに曖昧に頷くと志貴は秋葉を背負おうとするが、背後から声をかけられた。

「志貴君」

いまだその場にいた毒蜂は虚空を見つめながら志貴に声をかける。

「どうやら、君は戻る必要はないようだ」

「え……?」

毒蜂の言葉の意味がわからず、志貴は毒蜂の見つめる虚空の先を見る。そこには試合経過を示すモニターがあり、すでに次の対戦表が表示されていた。


副将戦    遠野志貴VS毒蜂


あとがき

ご愛読ありがとうございます。

今回はGSチームとスプリガンチームの出会い、シエルVS赤屍、秋葉VS蛮となったわけですが、如何だったでしょうか?

赤屍さんの相手には志貴が良いという要望が多かったんですが、クジで決めたらこうなっちゃいました。これも神のお導きということでどうか納得のほどを。

正直、今回はかなり難しい試合でした。

この第二試合では結構色々な複線が交じり合うので、下手なことをやるとその複線自体が消滅してしまうというプレッシャーがあったので……

試合の結果は正直やっぱりな、と思うところがありました。シエルはこの大会でも中の上ぐらいにはいるんですが、本文でも語られているとおり十分な力が発揮できずに終わり、しかも相手が悪いという不運に見舞われてしまいましたしね。

次鋒戦にいたっては……秋葉にとって最悪の組み合わせでした。初っ端から邪眼に捕らわれ、そこからずるずると最後までいってしまいしたから。決して秋葉が弱いわけではないんですが……まぁ、この大会の裏にそれなりに関わってくる銀次が相手じゃなかっただけ運が良いですね。下手すれば、本当に何もできずに死んでいましたから。後、念のために。蛮が秋葉に邪眼をかけたのはサングラスが壊された瞬間です。最後に蛮が月夜チームに邪眼を使ったのはある確認のためです。何の確認かは……次回をお楽しみに。


相性表


シエル ― 赤屍蔵人 ×

この二人についてはもはや何も言うことはないでしょう。むしろ赤屍とシエルが気が合うこと自体がありえません。


遠野秋葉 ― 美堂 蛮 △

限りなく○に近い△ですね。試合ではそんなそうには見えなかったでしょうが、両者共に天才といって差し支えのない能力を秘め、頭もいいので、癖のある友人としてなら仲がよくなる可能性があります。ちなみに蛮は琥珀との相性は◎と言って良いでしょう。


裏設定5


裏の四大組織として有名な無限城だが、こう呼ばれ始めたのはもちろんわけがある。そのきっかけとなったのは魔術師の間に広まったある噂に起因する。

それは『無限城には全てがある』というもので、その言葉に惹かれ何人もの魔術師などが無限城に入ったが誰一人として戻ってくる者はいなかった。その事が更なる噂を呼び、ついには封印指定の魔術師や精霊クラスのシャーマン、死徒二十七祖第十位ネロ・カオスまでをも呼ぶことになる。

だが、そこから帰還できた者はネロ・カオスだけであり、彼は後にこう語ったという。「あれは我が混沌とは異なる生と死が入り混じる混沌の城。千年城すら、あれの前では霞むであろう」と。

ちなみにこのころはまだ雷帝・天野銀次はいなかったが、中層階・ベルトラインの住人のレベルは個人差にもよるが、並の死徒の数倍以上であり、その後、ベルトラインを支配することになるデル・カイザーの戦闘能力は神話に名を残す大英雄、死徒二十七祖、神クラスのシャーマンに匹敵するとまで言われている。これらのことから対人戦という範疇に含むならば、無限城は世界最強の城として君臨することは間違いない。


番外編予告おまけ

(いつ投稿することになるかはわかりませんが、これは本当の予告です。まぁ、本編には関係のない遊びのようなものですが)


1.


「御主人ソウイエバイイワスレテタケド」

――――始まりは、その言葉が原因だった。

「ん?なんだ?チャチャゼロ。お前が改まるなど珍しいな」

――――いや、正確には違う。

「コノ場所ナ。俺ノキオクダトアイツノテリトリーナイダ」

――――全ての始まりはここに来た時からすでに始まっていたのだ。

「あいつ?誰のことだ?」

――――そう

「アイツダ」

――――今思い出しても身の毛も凍る

「ん?……え゛」

――――運命をかけ

「いい夜だな。吸血鬼」

――――存在をかけた

「ナッ、俺ノイッタトオリダロ?」

――――DEAD・or・ALIVEの命がけの追いかけっこが。

「言うのが遅すぎるわー!!この大馬鹿人形が!!」

こうして『星』のフェイク真祖とオリジナル真祖が会合し、半ば一方的な追いかけっこが幕を開けたのは、今から百年近く昔のことだ。

「チャチャゼロ!!何とかしろー!!」

「無茶イウナヨ、御主人」

「いいぞ、いいぞ、いいぞ!仮にも真祖を掲げるならば、逃げ抜いて、生き延びて見せろ。この私から!」


ネギま+ヘルシング――――「闇夜の会合」


エヴァンジェリンは第一部では出てきませんが、それなりに知り合いは多いんですよね。ちなみにアーカードもけっこう知り合い多い方です。まぁ、この追いかけっこの結末ですが……気長にお待ちください。

それと、密かに前回のレスで三試合目が終わった辺りで行う番外編の参戦作品の希望を受け付けたんですが、それらに加えて希望作品がある方はレスにて作品を上げてください。

なお、前回希望作品を上げてくださった皆様の作品ですが、その後のレスで私が上げた作品はほとんど確定していますのでご安心ください。未確認の方は前回のレスをご確認ください。

ついでにもう一つ。私はけっこう突発的な思いつきでこう言ったものをやるかもしれませんので、その辺りはご了承のほどを。

それでは次回、黄昏の式典 第九話〜殺人の目覚め、雷の咆哮:始まりの時・後編〜をよろしくお願いします。

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