「ありがとアルト。で、夕菜はもう聞いたけど残りの二人、玖里子さんと凛ちゃんでいいのかな?ここに来た理由を聞かせてもらえるかな?」
そういまだに震え固まったままの三人に話しかける。
「え・・・ええ、解ったわ。」
そう言ってうなずく玖里子だが、まだ震えは完全には止まらないようだ。
死徒のそれも祖クラスの、ほとんど本気と言っていい殺気を余波とはいえ浴びていたのだから当然とも言えるが、
直接当てられていた凛などはいまだに固まり震えたままだ。
「じゃあ何か適当に飲む物でも持ってくるからさ、適当にそこのテーブルの周りにでも座っててよ。」
そう言って台所に歩いて行く。
「ふう・・・出す必要なんて無いと思うけど。」
その後ろ姿を見送りながらため息とともに呟くアルトだが、
「まあ一応お客さんだしね、落ち着くのにも何か飲んだほうがいいだろ?」
苦笑と共にそう答え台所に入っていく。
「はあ・・・、やさしすぎるわよ。」(まあそこがいい所でもあるんだけど。どう考えたって招かざる客じゃない。)
もう一度ため息を吐き呆れるが、その顔はどことなく嬉しそうにも見える。
「で、あなた達もボーっと突っ立ってないで座りなさいよ。せっかく和樹がああ言ってくれてるんだから。」
まだ立ったままの三人に対してそう言うと自分も腰を下ろす。
「そうですね。」
「そうね、それじゃ。」
「あ・・・は、はい。」
そう答えアルトとは反対側に三人ならんで座る。
ちょうどその時和樹がお盆に人数分の湯飲みを乗せて戻ってきた。
「おまたせ。はい、どうぞ。」
初めにアルトに渡し、続いて三人の前に置きアルトの隣に座る。(和樹の分はアルトが受け取っていた。)
「じゃあ話して貰えるかな?」
「ええ、解ったわ。多分三人ともここに来た経緯は違ってても、大本の理由は同じだろうし私が話すわね。」
「ええ、お願いします。」
玖里子が代表して話すらしい。
(まあ妥当な判断といえる。夕菜は理由を聞き流しているし、凛はまだ喋れる状態では無いだろう。)
「えっとまず直接の目的だけど、あ〜っと和樹の遺伝子なのよ。」
「僕の遺伝子?」
「そう。」
想像もしなかった理由に対し和樹が思わず聞き返すが、玖里子はなんでもないように返す。
アルトの眉がピクリと反応したのだが、誰も気づかなかったらしい。
「和樹、あなた自分の先祖とか家の家系の事知ってる?」
「ん〜あちこちの国の血が混ざってる事位なら。」
「そう、そのあちこちの国の血にね有名な魔術師。それこそ教科書にも出てくるような超有名魔術師の血縁者がね。ごろごろ居るのよ。」
それを聞いて驚く和樹、かなりの国の人間の血が入り混じっているのは聞いていたが、
そんな有名人の血縁者が居るとは思ってもいなかったからだ。
(なるほど・・・母さんと和葉の魔術回数はそれでなのか。)
和葉とは和樹とは一つ違いの妹である。
魔術回数が1万を超え尚且つ魔術回路まである規格外であり、その身の安全のため父の友人である青の魔法使いに預けられていたりする。(最初は預けただけだが今では弟子入りしてしまっている。)
(ん?ならなんで僕の所に来たんだろう?)
そんな事を考えるが、自分の妹とその現保護者の性格を思い出し、
(和葉の所に普通行くんじゃあ・・・そんな理由で行ったら確実に消されるね・・・それで僕か。)
すぐに納得してしまう。
「まあそんなあなたの家系の情報を、どっかの探魔士(クラッカー)が地下市場に流したらしくってね。
それを見た私たちの家が「自分の家の家系に取り入れるためにだ、君たちに僕を婿として連れて来いと命令した・・・と?」ええそうよ。」
玖里子の話を遮り言った和樹の言葉に肯定をしめす。
「他の二人もそうなんじゃない?本人の意思はともかく。」
「多分合ってると思います。そんなような事を言っていた覚えもありますから。」
「ええ、本家のほうから昨日そういった手紙が届きました。」
二人に対して確認をとる玖里子に肯定の返事を返す。
「は〜〜〜〜〜。」
盛大にため息を吐き彼女たちの家にあきれ果てる和樹、
(なんなんだよそれ、まったく。これだから名家とか旧家とか言われてる家の考える事は・・・僕の意思はまるまる無視?)
む〜っと唸る和樹に対して、
「私は家の事なんか関係ないですよ!ただ和樹さんに会いに、約束を果たしに来ただけですからね!」
「私も家の命令なんか聞くつもり無いわよ?ここには一様来ておかないとあとがうるさいし。
あの態度も手っ取り早く嫌われて、他の人間に変えさせようとしてやったんだし。」
「私も本家の命令など聞くつもりは一切無い。大体分家筋の私に言うほうがどうかしている。」
三者三様に自分自身の考えを話す。
「ん?ならなんで凛ちゃんはここに来たの?来る理由がない気がするんだけど。」
「そ・・・それは。」
うっ・・・と言葉につまり目が泳ぐがすぐに土下座して謝りだす。
「す、すまない!本家から命令が来た跡に式森先輩の事をどんな人物かと思って調べたのですが、あまりに普通と言うか目立たない奴といった事ばかり解ってしまって、
それで本家は、こんなごくごく平凡な男と結婚させる気なのかと、自分の事をなんだと思っているのかと頭に血が上りきってしまって、それで!」
「あ〜それで切りかかってきたと?」
「はい。あのような無礼許されない事だと解っています。あのまま殺されていても文句も言えない言いようが無い事をしたとも。」
そう頭を床にこすりつけながら謝り続ける。
「そうね、私も最初の一撃で殺そうかと思ったわ。まあ和樹の部屋を汚すのも和樹に人を殺して嫌われるのも嫌だったからなんとか手加減したけど。」
話の間中ずっとだまっていたアルトがおそろしく冷たい声でそう話しだす。
「その後和樹をバカにされた時は本気で殺す気でいたし・・・和樹に止められたとはいえ、よく抑えれたものだと自分でも思うわ。」
「ひっ・・・あ・・・う。」
またぶり返し強くなっていく殺気に凛の体が震えだす。
「まあまあアルト、僕も怪我はしてないしさ。何か壊れた訳でもないんだし許してあげてよ。」
やばいと思ったのか慌ててアルトをなだめにかかる和樹、どちらがバカにされたのか解らない光景だ。
「もう!和樹は優しすぎるわよ!あなた殺されかけたのよ!あれだけバカにされたのよ!もっと怒りなさい!」
なだめる和樹に対して今度は怒り出すアルト、その声色からは怒りよりも心から心配している様にしか聞こえないが。
「ありがとう心配してくれて。でもさあやまってくれたんだしさ、ね?僕は別に気にしてないし、あれくらいじゃ僕は怪我したりしないよ。」
「それは・・・解ってるけど。」
むう・・・と膨れるアルトに笑顔で返す和樹。
「ならいいでしょ?許してあげてよ。」
「はあ・・・解った。解ったわよ!」
心底しょうがないといった感じで応えるアルト、だが完全に機嫌が直った訳では無いようだが。
「あの〜所で一ついいかしら?聞きたい事があるんだけど?」
「なに?玖里子さん。」
その様子に邪魔していい物かと思ったようだが、気になる事の方がまさったらしく聞いてくる。
「あなた達二人って本当にどうゆう関係なの?一緒に住んでるみたいだけど。」
「何って、恋人同士ですけど?さっきもアルトが言ってませんでしたっけ?」
「本当に恋人どうしなの?」
「本当ですよ。」
二人の関係についてだったらしい。
まあ死徒の姫君と表面上はごく普通の少年が恋人同士だと聞いても、普通は信じられないだろうが。
「どうやって知り合ったのよ?」
「どうやってって、子供の頃にドイツでですけど?それからずっと一緒に過ごしてきただけですよ?」
(いや、だからドイツでどうやって知り合ったか聞きたいんだけどな〜。)
頭の中でどう聞けばいいか一瞬考えた後、再度聞こうと話だそうとした時電話が鳴った。
「あ、ちょっと待ってくださいね。はいもしもし式森です。」
『ああ、式森君か?私だ橙子だ。』
「ああ、橙子さん。どうしたんですか?」
『一つ仕事を頼みたい。死者および死徒の殲滅なのだが。』
そう言って仕事の内容を話しだす。
『今日の夜12時前後にある場所に死者が大量に現れるらしい。予言視持ちの少女から依頼されたんだがね。
家の式に行かせるつもりなんだが数が数らしいのでね応援を頼もうと思ってな。ああ、ちゃんと依頼料は払うよ。
君はともかく死徒の姫君を怒らせたくは無いからね。という訳でだ、引き受けてくれないかね?』
「解りましたいいですよ引き受けます。場所はいつもの方法で送ってください。」
『すまないね、助かるよ。』
そう言って電話は切れた。
「アルト、仕事みたいだよ。今夜12時に場所はいつもの方法で送ってきてくれるって。」
「解ったわ。」
「「「仕事?」」」
「あ〜アルバイトみたいな物だよ、ちょっとしたね。詳しくは聞かないでくれないかな。」
何の事だと聞いてくる三人にあいまいに答え苦笑する。
「じゃあ三人とも悪いんだけど、まだお昼もとってないし今日の所はお引取り願えるかな?」
「そうね、そうするわ。お邪魔したわね。」
和樹の言葉に席を立ち玄関に向かう三人。
「ああそうそう、家の方には適当に言ってごまかしておくわね。他の人間が押しかけてもなんだし。」
「そうですね。三人ともそうしてくれると助かります。」
そう最後に残して出て行く三人。
少しして昼食の用意をしようとしていたアルトが、
「あ、ごめんなさい和樹。買い忘れた物があったから買ってくるわ。お昼もうちょっと待っててね。」
そう言って出て行く。
一方その頃、
「は〜驚いた。まさかあの死徒の姫君が居るなんてね。」
「ええ、睨まれている間生きたここちがしませんでしたよ。」
「しかも和樹さんの恋人なんですよね?もの凄く綺麗な人でしたね。死徒というより妖精か天使に見えましたから。」
三人並んで感想を言い合い帰路についていたが後ろから声がかかる。
「ちょっといいかしら?あなた達。」
「「「!?」」」
その声に体をビクッと震えさ後ろを振り向くと、案の定腕を組んだアルトが立っていた。
「えっと・・・な、何かしら?」
玖里子がじゃっかん震えた声で聞くが、
「何?じゃないわよ。和樹は許したけど私は許した訳じゃ無いのよ?」
三人を見据えながらそう答える。
「あなた達の家の連中に伝えなさい。『これ以上和樹に手を出そうとするんなら私と私の部下達が黙ってない』ってね。」
「わ、解ったわ。」
玖里子が返事を返すと他の二人も慌てて肯く。
「あなた達に関しては勝手にしなさい、家とは関係無く和樹に近づくなら別にいいわ。そこまで干渉するとさすがに和樹が怒るしね。」
それだけ言うと振り向き帰ろうとするが立ち止まり、顔だけ振り向かせ、
「そうそう、和樹の本当の力を教えて欲しいなら今日の夜・・・そうね11時位に部屋に来なさい。和樹の許可は取ってあげるから。」
そう言い残し今度こそ帰っていく。
「どうする?二人ともああ言ってるけど?」
「私は行きます。和樹さんの事ならもっと知りたいですから。」
「むろん私も行きます。私の刀をかるがる避けていた事からかなりの使い手だとは解りますが、正直どれだけの力があるのかは興味がある。」
「じゃあまた今日の夜に会いましょう。」
それを最後に三人もそれぞれバラバラに帰って行くのだった。
━後書き━
はい第三話お送りいたしました〜。
次回和樹君の現在の力が明らかに。
和樹とアルトのラブラブ、受け入れて貰えるか心配でしたが。
結構受け入れてもらえているようで安心しましたw
ちなみに今回出てきた妹は登場予定です。(ミス・ブルーの方は多分過去回想の話にしか出てきませんが。)
過去話はドイツの城に三人娘と一緒に帰った時にでもやるつもりです。
━補足設定━
魔術回数と魔術回路について。
魔術回数は知ってのとおり一生に使える魔術の使用回数です。
魔術回路は回路に魔力を通すことによって魔術を使う物で、
魔術回数を使用しないで魔術が使えます。
魔術回路を持っている物は、魔力の強さに比べて魔術回数が少ないです。
これは生まれた時に体に、魔術回路の元を作成するのに普通は魔術回数がほぼすべて勝手に使われてしますからです。
一万以上の魔術回数を持ちなおかつ回路も持つ和樹の妹は、かなりの規格外だと解って貰えると思います。
例にすれば、
遠坂凛・・・回数80回程度
ミス・ブルー・・・回数3600回
などです、ミス・ブルーもかなり多いですけどね。
和樹君の魔術回数が8回なのはその回路の多さと片目ずつの魔眼のせいだったりします。(魔眼はオリジナルです。)
死徒には回数はありません。
なった瞬間すべて回路作成に回され自動的に0になりますが灰にはなりません。
以上です。
ではレス返し〜。
D,様
しばらくは乙女のままですよw
白騎士からは普通に剣術や戦術を教わってます。
変な方向に行こうとするとアルトやら黒騎士やらプラ犬にメイドさん達にしばかれて止められますから。
フィナお仕置き中は変わりに黒騎士が教えてたりプライミッツと遊んでたりw
皇 翠輝様
萌えていただければ幸いですw
まあしばらくは平気でしょうw
今回アルトが釘をさしてますね。部下はもちろん白騎士や黒騎士他にも一杯wプライミッツも参加決定でしょうからだれも勝てませんねw
suimin様
お〜新しいですか良かったw
まあ確かにあそこまで強いカップルもそう居ないですもんね〜^^;
和樹君の魔眼飛び道具にしか役に立たないし・・・。はっネタバレを^^;
プラ犬可愛いですよ〜。和樹君大好き状態ですからw王冠の幻獣にも好かれてるなんて設定もあったりw
茜鷹様
ありがとうございます。直しておきました。
なまけもの様
そうですね〜あれはちょっと^^;
今回は和樹君にあやまり倒してなんとか、まだ多少怒ってますけどね^^;
和樹君の意見を尊重したって事で。
題名直しておきました〜。
突発感想人ぴええる様
効かないかもしれないっすね・・・宮間の女達には^^;
良介様
ふふふ・・・勝った!(マテ
プラ犬は和樹にべったりですよw
身体能力で勝つのは無理っすね^^;強化魔術に魔力放出使ってもまだ足りない。
剣技で五分五分にもっていけても持久力の差で絶対負けます。
砂吐きそうなですか・・・次回か次々回にあると思いますw
ケルベロス様
むむちびアルト・・・見てみたい探そう。
声の変換・・・OKです!(ナニ
仲良くなれると思いますよ〜。人間に惚れた物どうしw
初めてが二人とも人間だしね〜。(何の初めてかは秘密・・・めちゃご都合主義設定ですが)
ん〜根に持ってても多分大丈夫w志貴の事をアルクの恋人だとか言えばすぐに姉と呼んでくれるでしょうw
アーパーやしw
後門の白騎士突破ですね・・・ギャグ中なら簡単に吹き飛ばせそうだし。
キシャーと戦うなんてムリムリですよ。