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「幻想砕きの剣 2-3(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2005-07-05 23:18)
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幻想砕きの剣 第二章 三節
 指導・暴走
 若さが悪いのではない、若さのせいにする貴様がいかんのだ


「うそ……」


 大河とベリオの戦いを見ていたリリィは、目の前で大河が演じてのけた戦闘内容に驚愕していた。
 如何に大河がオバカさんでも、その戦闘能力自体は侮ってはいなかった。
 しかし、それも計算に入れて、リリィは『大河は善戦するが、積み上げてきた経験の差と相性でベリオの勝ち』と予想していた。

 ベリオも大河の手の内は未だ殆ど知らなかったが、大河としてもベリオの手の内は全く知らないはずだ。
 それに加えて、魔法の類が存在しない世界から来たという話だったので、ベリオの術に対する対処法は全く持ってないはず。
 大河は接近しなければ攻撃できないのに対して、ベリオは接近を阻む壁と遠距離から攻撃する術も持っている。
 言うなればザンギエフとダルシム(しかもスト2初期)。
 相性が悪い。
 接近されないように最初から防壁を展開し、冷静に事を運べばベリオが負ける要素は殆どなかった。

 ところが、何を思ったのかベリオは自分から突っ込んで行き、ようやく本来の戦い方に戻ったかと思えば、すでに戦いの主導権は大河に握られていた。
 それだけなら、特に驚愕には値しない。
 ロクな訓練もせずに勝利するのは十分驚異的な出来事だが、世の中にはそういう事もままある。
 特に今回は、ベリオは開始前から冷静さを欠いていた。
 大河に負けたのは、単純にベリオのミスが要因である。

 リリィが驚いたのは、ホーリーウォールを足蹴にするわ、攻撃的エネルギーの塊であるホーリースプラッシュを叩き斬るわと、従来の対処法とは全く異なる……ぶっちゃけた話、あまりにも非常識すぎる対処法についてだ。

 ホーリーウォールのような防壁に迂闊に触れれば、最悪の場合それだけで致命傷を負いかねない。
 今回は単純な斥力だったからよかったものの、もし力を吸い取るような性質でもあれば、あっという間に触れた部分が使い物にならなくなる。
 もっとも『聖なる壁』という名とは裏腹に、ホーリーウォールとて似たようなもので、複雑に絡み合った斥力の壁に突っ込んだら最後、四方八方から流れ込む力の流れに押しつぶされる。
 そんなえげつない代物に接触したにも拘らず、大河の足は全くの無傷。

 ホーリースプラッシュを切裂いたのは、これはもう無謀としか言いようがない。
 もっと遠距離から別の力をぶつけて掻き消すか、散らすならばともかく、そのまま真っ二つにしてのけた。
 前者の方法は、力そのものを拡散させてしまうので反作用は意外と少ないが、剣で物理的に真っ二つにしたらどうなるか?
 収束されていた力は消えず、術者の制御式を離れて暴走……大爆発を起こす。
 実際、ホーリースプラッシュは斬られた直後に弾け飛んだ。
 そんなわけで、力の塊に至近距離から、しかも物理的に干渉するなど自殺行為以外の何者でもない。

 これだけの無茶をやっただけでも凄まじいのに。
 なんだって目の前ではしゃぐバカは無傷なんだろうか。


(なんなのよコイツは……)


 大河の周囲だけ、別の物理法則が支配しているような気がしてならないリリィだった。


「いよっしゃあー!
 まずは一勝!
 ここから一気に救世主クラスの頂点に立ってやるぜ!」


 ベリオに勝利し、雄叫びを上げる大河。
 最後の爆発の煽りをくったらしく、あちこち黒ずんでいる。
 トレイターだけは新品同様の輝きを放っていた。
 勝ったのがよほど嬉しかったのか、特典こと救世主クラスの伝統もすっかり忘れているようだ。

 大河の発言が気に入らなかったのか、リリィが大河にちょっかいをかけ始めた。


「ふん、一回勝っただけでもう主席気分なの?
 アンタなんかじゃ私に触れる事も出来ないわよ。
 だいたいさっきのも偶然なんじゃないの?」

「ああん?
 折角いい気分だったのに、水をさすヤツだなぁ!?
 だったら一回試してみるか!?」


 リリィが言った事は、半分は事実である。
 リリィの『魔法使い』という職業(?)は、文字通り魔法戦に特化している。
 魔法の発動に時間がかかるが、それに見合うだけの破壊力がある。
 しかし、呪文の詠唱中は無防備極まりない。
 リリィの召喚器、ライテウスを使えばかなりの高速詠唱が可能となるが、それでも一対一で戦うならばお世辞にも『素早い』とは言い難い。
 コンマ何秒が生死を分けるのだから。

 なので大河とリリィが一対一で戦う場合は、最初の一撃が明暗を分ける。
 最初の一撃をかわし、懐に潜り込んで畳み掛ければ大河の勝ち。
 しかし最初の一撃でリリィの攻撃パターンに飲み込まれてしまえば、今の大河では抜け出す術はなくなる。

 つまり、無傷で勝つか傷一つつけられずに敗北するかの2択になってしまう。


「いいわよ! やってやろうじゃない!」


「ハイそこまで〜」


 売り言葉に買い言葉、リリィと大河の激突が武力行使に及びそうになると、横からダリアが割り込んできた。
 相変わらず螺子が抜けたような笑顔で仲裁に入るダリアに毒気を抜かれ、リリィと大河はなんだかバカバカしくなって矛を収めた。


「元気がいいのは結構だけど、今は授業中なのよね〜。
 大河君も一回戦って結構疲れてるみたいだし、白黒つけるのは次回に回しましょ〜。
 あ、個人的に戦って決めるのはいいけど、私に責任がこないようにしてね〜」


 昼行灯を超え無責任。
 それでも嫌われないのは、ダリアの人徳なのだろうか。

 優等生の性質か、へっぽこといえど教師の言葉に逆らわずにリリィはフン、と鼻息を少々荒くしてそっぽを向いた。
 そのまま闘技場を出て行った。
 その場にいる自分以外の四人が全員戦闘したので、自分の出番はないと踏んだらしい。

 ちょうど授業時間終了の鐘の音も鳴り響く。


「はーい、じゃあ今日はここまでね〜。
 そうそう大河君、履修届けはもう出したの?」

「昼食前に出した。
 それじゃあ、俺は未亜を保健室に連れて行かなきゃならないから」


 大河は、壁に寄り掛かった状態から、5メートルほど進んでうつ伏せに倒れている未亜の元に歩み寄った。
 どうやら、大河がベリオに無茶な事を言い出す前に止めようとして力尽きたらしい。
 当の大河が指導の事をすっかり忘れているので、あまり意味はなかったようだが……。

 大河は気の抜けた表情で倒れている未亜に近寄って、人差し指でツンツン突付く。
 感電したりしない事を確認して、未亜をお姫様抱っこで抱き上げた。


「わっ、わっ、あ、あのちょっとお兄ちゃん?」

「黙ってろ、舌噛むぞ…。
 えっと、リコ……はもう何処かに消えてるから、委員長!
 保健室まで誘導してくれい」

「あ、はい。
 それじゃ行きましょう」


 未だに敗戦のショックを引き摺っているのか、それとも大河の指導を想像しているのか、ベリオの顔色は優れない。
 それでもしっかりした足取りで、未亜と大河を先導する。

 大河に抱かれ、赤くなって胸元に顔を押し付けている未亜を見て、ちょっとだけ羨ましいと思ったのだが、それは本人も気付かなかった。


 闘技場を出て暫くしても、未亜は歩けるようにはならなかった。
 電流自体はとっくに抜けているのだが、体に力が入らないらしい。
 リコの電撃は意外と強力だった。

 相変わらず両手で抱えられて、顔を俯かせている未亜。
 授業と授業の間の移動時間だった事が幸いし、3人が歩いている道には殆ど人影がなかった。
 もし大勢の生徒がいたら、それだけで未亜は羞恥攻めにあっていたかもしれない。


「ここが保健室です。
 保険医のお爺さんは、仮病を使って入り浸ろうとすると襲ってきますから注意してください」


 しかも凶器を持って。


「……まあ保健室の管理人だからその行動はわからないでもないが…。
 それって自分で怪我人を量産しかねないんじゃないか?」

「仕事が増えてやり甲斐があるって言ってました…。
 ………それに、あの人が本当に暴れだしたら回転鋸とか持ち出しますから、怪我人がどうののレベルじゃありませんよ」


 ベリオが顔を引き攣らせて答える。
 今までにも死に掛けた生徒や先生が結構いるらしい。
 その結果、仮病はおろか本当の怪我人すら近寄らなくなった時期があったのだが……本当に怪我をしている相手限定ならば名医といっても過言ではないので、最近は利用者も増えだしている。
 しかし、何だってそんなのを雇っているのだろうか。

 ちなみにその保険医、オーヌキ・ゼンジーという。
 どこかの学校の用務員さんの同一存在(一言で言えばパラレルワールドの同一人物)らしいが、当人達は全く知らない。


 そんな相手に未亜を預けて大丈夫なのだろうか、とかなり深く悩んだ大河。
 しかし他に預ける場所もないので、素直に保健室のドアを開いて入っていく。


 お姫様抱っこをしたまま入ってきた大河を見て、ゼンジーはちょっと驚いた顔をしたものの、すぐに微笑ましいというか、過ぎ去り失われた青春時代を見るかのような表情でいそいそと椅子に腰掛ける。


「おやおや、どうしたのかね?」

「ちょっと能力試験で電撃喰らっちまいまして…。
 電流とかは意外と強かったみたいですけど、ダリア先生は大丈夫って言ってました。
 だけども、どうにもちょっと不安なんで、念のために連れてきた次第です」


 ちなみに不安なのは、電撃を受けたからではなくダリアの軽いノリのせいだ。

「ほほう。
 まあ不安になる気持ちもわからんでもないが…。
 実際、ダリア先生はアレで中々優秀でのぅ。
 特に魔法でつけられた傷やダメージに関しては、ワシよりも詳しい分野もあるほどじゃ。
 彼女が大丈夫と言ったなら、後遺症の類は心配あるまい。
 念のために休んでいくかね?」


 ダリアの意外な一面に驚きはしたものの、問題ないと聞いて一安心した大河。
 ゼンジーの言葉に甘えて、未亜を保健室のベッドに横たえた。

 ちょっと残念そうな顔をした未亜だが、布団に包まってしまった。
 どうやらお姫様抱っこで道を練り歩かれた羞恥が蘇ってきたらしい。


「おい未亜、俺はもう行くぞ?
 もう自分で動けるくらいになってるよな?」

「……………」


 大河の呼びかけにも亀戦法を貫いて、手首から先だけを出してヒラヒラ振る。
 大河は溜息をついた。
 2人きりの時ならもっと恥ずかしい事を山ほどやっているのになぁ、などと考えてニヤけた表情をしている。


 そんな2人を苦笑して眺めていたゼンジーは、邪魔者になって馬に蹴られるのは御免とばかりに姿を消していた。


 天岩戸を決め込む未亜にシッシッと手を振られ、微妙に悲しい気分になりながら保健室を出た大河。
 ゼンジーは保健室を放り出して庭木の手入れだか鯉にエサをやりにだか、何処かへ行ってしまったようだ。
 未亜も既に動けるようになっていて、ベッドで横たわっているのは念の為と羞恥心のせいである。
 放っておけば、勝手に起きてくるだろう。


「さって、俺はどうするかな…。
 あれ? 委員長?」


 保健室の扉を開けてすぐの所に、ベリオが俯いて立っていた。
 なにやら緊張した雰囲気を纏っていて、大河は思わず見なかった事にしてこのまま走り去ろうかと思う。
 しかし実行する前に、ベリオがポツリと口を開いた。


「……指導を…」

「はへ?」

「………だから、指導をしてください!
 試合の前にダリア先生から聞いたんでしょう!?」

「………ん…。
 …………あーあーあー!
 何か忘れてると思ったら、そうだった!」


 大河にしては珍しい事に、『勝ったら体を好きなようにしていい権』(大河的訳)をすっかり忘れていた。
 ベリオに勝ったのがそれほど嬉しかったのか、それとも未亜が心配だったのか。
 いずれにせよ、大河は勝者の特権を危うく棒に振るところであった。


「くっくっく……なんでも命じていいんだったなぁ?」

「……そ、そうです」


 覚悟を決めようとして失敗したかのような顔をするベリオ。
 そんなに嫌ならそのまま忘れさせておけばよかっただろうに、彼女も難儀な性格である。
 悪法も法である、と言った某哲学者のようだ。
 何でもいいが、筆者は人参の毒で人が死ぬというのが信じきれない。

 悲惨な未来を想像するベリオだが、その一方で大河は少々困っていた。


(どうする…?
 さっきは何でもしていいなんて言われて舞い上がってたが、いざとなると…。

 据え膳食わぬは男の恥とはいえ、嫌がる膳を無理やり頂いてしまうのもまた男の恥…。
 このままやっちまったら、脅迫した挙句レイプする18禁ゲームそのものじゃないか。
 そんなモンはフィクションの中だけで十分だ。

 とはいえ、何かしなけりゃ委員長は引っ込みそうにないし…。
 とりあえず………からかってみるか)


 何の解決にもつながらない選択をする大河。
 いざとなったらヘタレたかのようだが、陵辱モノが得意でない筆者としては大いに助かる。
 適当な用事を頼んで誤魔化すとかいった発想が出てこないのは、単にバカだからか男のサガか。
 ある意味その二つは同じである。


「それにしても、わざわざ思い出させてくれるなんてなぁ。
 ひょっとして、何か期待してるとか?
 お堅い禁欲生活に欲求が不満しまくって、丁度いいからわざと負けて」

「そんな事はありません!
 私は方を順守する立場の人間です!
 個人的な感情で、規則を曲げるわけにはいきません!」

「でも指導をするかは勝った側の自由だろ?
 そのまま忘れさせていれば、拒否した事にはならないし、今日一日逃げ切れば指導は関係なくなるんだよな?」

「いいえ。
 一日指導をするというのは、試験の当日の事ではないのです。
 ですから今日だけ逃げ切っても、大河君が思い出したら拒否する事はできません。
 私は嫌な事は早く済ませてしまいたいんです」


 予想以上の頑固っぷりに、大河は内心溜息を漏らす。
 ベリオは、大河が自分にいやらしい事をすると決めてかかっているようだ。
 確かに大河はそういう発言をしたし、最初はそういうつもりだった。
 しかし、キッパリと『イヤ』と言われては、大河はそれ以上無理強いできない。


(はあ、どうしたもんか…。
 何も命令せずに、なかった事にして忘れるか?
 いやいや、それじゃ何か負けたような気がするし、第一嘗められそうだ。

 かと言って、本当に何かしちまうと……未亜にどんな目で見られるか…。
 ヘタすると無理心中とかされかねん。
 浮気と違って、同意がないからなぁ……今まで以上に苛烈な、しかもシリアスな弾劾が…。
 うう、本当にぶっ殺されても文句は言えん…。

 ……ん?
 未亜?
 未亜と言えば……俺とは深い中で、その俺の部屋は……そうだ!)


 大河の頭に、閃きが走った。

 相変わらず悲壮な顔をしているベリオに、笑顔を向ける。


「ヒッ!」


 ……邪悪な笑顔になっていたらしい。
 何とか邪気を押さえ込み、大河はベリオと交渉に入った。
 ……本来、立場が逆な気がする。


「じゃあ、委員長は俺とそういう事はしたくないんだな?」


「大河君だけじゃなくて、他の男の人でも同じ事です。
 しかし、大河君がしたいと言うのなら私に拒否権はありません」


 リリィあたりだったら、力尽くで拒否というか、要求そのものを撤回させそうだ。
 伝統といえど、物理的な力の行使の前ではなんら意味を持たないのだ。
 しかし、今当事者となっているのはリリィではなくベリオである。


「じゃあ委員長。
 折衷案をだすから、それでどうだろう」

「折衷案……ですか?」

「ああ。
 俺は委員長とエッチしたいけど、それも強要していると思うと、正直……まぁ、ある意味元気になるけど大部分が萎える。
 そこでだ、委員長がエッチな気分になったりしたら、すぐ俺の所に来るというのはどうだ?
 俺が強要した訳じゃないし、エッチな気分と言っても、本当にそういう事を最後までしたくなった時だけでいい。

 どうだ?」

「は、はぁ…。
 私はそんな気分にはなりませんから、それで結構ですが…。
 それでは指導になりませんよ?」


 予想外の展開に戸惑いながら、ベリオは本当かどうか疑っている。
 俺はそんなに信用ないのか、とちょっとへこみながらも大河は交渉を続けた。
 彼の要求はここからが本番だ。


「指導って言っても、別にエッチな事をしなけりゃならない規則はないだろ?

 それに、要求はもう一つあるんだ。
 屋根裏の俺の部屋の事で」

「ああ、あの部屋ですか。
 確かに手狭だとは思いますけど、折角掃除したんだし…。
 それに気に入ったと言われたのはウソだったんですか?」

「いいや。
 あの部屋は気に入ってるよ。
 狭いのも、なんつーかこう、屋根裏って感じがするしな。

 でも、あの部屋には一つ欠点があるんだよ」


 欠点?
 そう言われてベリオは考え込んだ。
 何せ、元々ついでのようにつけられた部屋だったので、基本的に不便だらけである。
 目の前の半野生児みたいな男は歯牙にもかけてないかもしれないが、それでも欠点と言われると結構多く思い当たる。

 まず狭い。
 次に魔力……この世界では電気の役割も果たす……が通ってないから、夜はランプで過さなければならない。
 さらに、今の時期はいいけれど、夏や冬になれば気温も結構厳しい。
 景色はいいが、それの分出入り口には遠い。

 多すぎて、ベリオはどれの事を言われているのかわからない。


「ええっと…どれの事でしょう?」

「場所が場所だから、仕方がないんだけどな…。
 委員長、結界って張れる?
 さっきの試合で使ってたようなのじゃなくて、お札とか魔法陣とかで作られてて、常時発動してるようなヤツ」

「ああ、財宝を守るためとか、侵入者対策に使われるような結界ですか。
 できますけど………ユーフォニアの力無しでは、私の術はそれほど強固な結界は張れませんよ?」

「いやいや、強度はいいんだよ。
 問題は、音及び振動なんだ」

「音と、振動……?  あっ!」


 そう言われて、ベリオはようやく思い当たった。
 大河の部屋は、その位置の関係上、ちょっと騒ぐと下の階に派手に鳴り響く。
 ならば静かにしていろ、と言われても、大河は元々騒々しい性質だし、例えば寝返りを打ってベッドから転げ落ちる事も考えられる。
 何よりプライベートルーム内まで気を使っていたくない。

 そうなると、迷惑するのは下の学生である。
 大河はそれを防ぐために、ベリオに音と振動を遮断するような結界を張れないか、と聞いているわけだ。


「そういう事なら…。
 ………ええ、十分できますね。
 小一時間もあれば、常時作動している結界を張る事が出来ます。
 今からやってしまいますか?」


「ん。 出来れば今晩までに頼む」

「はいはい、引き受けました」


 大河の折衷案は魅力的な話だった。
 貞操の危機は去り、大河自身も他人に迷惑をかける事を予防しようとしている。
 これなら、指導としては丁度いいし、規則にも特に反していない。
 ……文字通りの指導になっているか、と言われると反論に困るが、そこは見て見ぬフリ。

 乙女の危機が去ったと確信し、ベリオは足取りも軽く屋根裏部屋に向かう。


「ああ、外からの音はカットしないでくれよ。
 非常召集が掛かった時とか、客人がノックをしたり声をかけたりするのも掻き消されちゃ困るから」


 無論、本心は下の階の会話を盗み聞きするためだ。


「もう……注文が多いですね。
 でも、わかりました。
 そうすると………あれがああなって、この公式がこうで…」


 虚空を見つめ、なにやら演算しているベリオ。
 恐らく魔法陣の構成を考えているのだろう。
 そちらに集中するあまり、時々壁にぶつかりそうになったりしているのだが、それは大河が防いでいた。


「ああそうそう、エッチの方も忘れないようにね。
 気が向いた時に来てくれれば、夜でも朝でも大歓迎するからさ」

「もう、冗談ばかり言ってないで…。
 で、そうすると起動のエネルギーは…最初の一度だけユーフォニアを使って、後は循環させればオッケーですね」


 ベリオは考えが纏まったようだ。
 ニッコリ笑い、大河の本音交じりの冗談も華麗に流す。
 2人はそのまま屋根裏部屋に歩いて行った。


「ええと、この紋章はココに描いて。
 最後に循環させるためのマナの通り道を造って……はい、これで完成です」


 大河の注文のせいか、結界を張るのは一時間半ほどかかった。
 その間ベリオはテキパキと動き、魔法の知識を全く持たない大河は脇でボーっと眺めていた。


「それじゃあ、後はユーフォニアを使って結界を起動させれば終了になります。
 これで、多少騒いでも外に音が漏れたりはしませんよ。
 そうですねぇ………そこの窓から、出入り口の辺りの人に声をかける程度の大きさ以下なら、ほぼ完全に防ぎます」

「サンキュー。
 これで多少テンパって暴れても問題ないわけだ」

「暴れちゃダメですよ。
 それでなくても結構ボロボロなんですからね」


 大河の物言いに苦笑しながら、ベリオは大河を見やった。
 てっきり問答無用で犯されると思っていたのだが、意外といい人かもしれない。
 ベリオはそう思い始めている。
 無論、大河が基本的にコメディ調で深刻な悪事ができなそうにない体質なのは理解していたが……こと女性関係において、大河の信用は限りなく薄かった。
 現に信用出来るほどの実績はない……逆なら山ほどあるが。

 その視線を感じ取ったのか、多少居心地悪げに大河は頭を掻く。


「なーんか、舐められているというか……生温い視線を感じるんだが」

「あら、そうでしょうか?
 私は普通に見ていただけですけど」

「むむむ……なんだか知らんが、意外といい人とか、そんな言葉を目で語られているような…」


 鋭い。
 ベリオはホホホとわざとらしく笑い、そっぽを向いた。

 しかし、それが大河のカンに触ったらしい。
 ニヤリと笑う大河に、ベリオは再び危機を感じ取った。


「なぁ委員長、まだ指導権は消えていないんだよな?」

「え、ええと、結界を張ったので、もう指導は終わったのでは?」

「いやいや、指導の一つが終わっただけだな。
 何たって、一日指導をするんだから、今日の23時59分59秒までは指導権がある」

「そ、それは確かにそうですが…」


 何をさせる気なのか、戦々恐々しているベリオ。
 何とか話を逸らそうと、ベリオは闇雲に喋り続ける。


「そ、それよりもちょっと見直しましたよ大河君!
 最初はてっきり、女の子にだらしがなくて、放っておいたらケダモノのように飛び掛るものだとばかり思っていましたが、紳士だったんですね!
 誤解していて本当にごめんなさい!
 最初に闘技場でトレイターを召喚していた後にハーレム宣言なんかするから、てっきりただのお調子者の女好きかと…」


 話を逸らそうとして、どんどん墓穴に嵌まっている。
 しかし、話を逸らす事には成功した。

 ベリオが喋っている途中で、大河の動きがぴたりと止まり、フルフル震えだす。
 何事かと思い、自分が失言を連発していた事にようやく気付いたベリオ。
 このまま逃げ出そうと思った瞬間、大河の目から滝のような涙が溢れ出す!


「ああ、俺は女の子が好きだ!
 委員長みたいな堅物巨乳メガネの、どっかで聞いたような女の子も!
 そういう女の子がベターと引っ付いてくれるとそれはそれは嬉しい!
 リリィはちょっと性格がキツイが、あれはあれで女王様タイプだと思えば味がある!
 ツンデレやってくれれば、俺はそれだけで世界を敵に回しても後悔しないだろう!
 リコだって、無表情なところも、ちっちゃくて可愛いところも大好きだ!

 危うくアブない趣味に目覚める所だったしな!
 未亜に関しては、兄という立場上何も言わんが、言ったら危険なくらいアレなコメントがあると察していただきたい!
 いやむしろ妹だからこそ言うべきかもしれんが、一身上の都合により何も言えん」


 握りこぶしで、涙をちょちょぎらせて絶叫する大河。
 もし結界を張ったばかりで、音・振動カット能力が強力になっていなかったら、寮全体に響き渡っていたかもしれない。
 もしそうなっていたら、大河は男子生徒から漢の中の漢として崇拝を集めた事だろう。
 フローリア学園の生徒は、男女問わずそんなモンである。


「救世主クラスのみんなだけじゃない!
 乳先生ことダリアも、キッツイどころか油断ならないミュリエル学園長も!
 それどころか、俺がオンナと認めた相手ならば、例え5歳児が相手だって欲情できる自信がある!」

「持たないでくださいそんな自信!」

お黙り!
 今までオンナと認めるような5歳児には会ってないからいいんだよ!

 そしてエッチも大好きだ!
 ラブラブな和姦が最高だが、嫌がる女の子に無理やりってのもそれはそれで燃える!
 特に、メロメロなった女の子が俺専用になっていく過程なんかは最高だ!
 バカップルを演じるのも、ツンデレも、コスプレとかも大好きだ!

 俺以外のヤツがやるとムカツクが、俺がやる分には腹は立たない!
 ただ未亜が怖いが!
 特に合意なしでやったら、これ以上ないほど、シリアスに怖いが!
 それに罪悪感があるから無理やりは基本的にやらないが!

 これほどにその気になった男が、急停止をかけられるのがどれほど辛いかわかるのか!?」


「そ、それは……で、でも私はそんなに魅力的ではありませんし」


「寝言ぬかすな!
 最初に委員長も好きだって言っただろうが!
 委員長の容姿は、はっきりキッパリ美人に分類されんの!

 とにかく俺は紳士なんかじゃねえ!
 むしろケダモノに近いんだ!
 もしこれが既に関係を持っているM.T嬢であれば、何の遠慮も躊躇いもなしに、それこそ体の済から済までじっくり堪能させてもらうってーの!
 だっつーのに、それこそ身を引き千切るような思いで妥協案を出して!
 この煮えたぎるリビドーを押さえつけたというのに!
 委員長、アンタはいい人の一言で片付けるか!?
 それどころか余裕を気取って俺をからかうのか!?」


 それこそ魂の絶叫に圧倒され、見直しかけて損をしたという思いも何処かにすっ飛んでいく。
 肩で息をする大河は、ベリオをギラギラ光る目で睨みつける。

 思わず後退するベリオ。
 壮絶なまでの気迫を宿した声と目で、大河はベリオに『オシオキ』を告げる。


「ベリオ。
 次の指導だ」

「ひゃ、ひゃいっ!
 何で御座いまショウ!?」


 恐怖のあまり、ベリオの口調はおかしくなっていた。
 下を噛まないだけ上出来かもしれない。


「お前が、俺に何をされると想像していたのか。
 全部、口頭で、詳しく、詳しーく、逐一報告してみろっ!」

「えっ? えっ、うえええええぇぇぇ!?」


 これは恥ずかしい。
 しかも、これは先ほどの『エッチを強要しない』にはギリギリ違反していない。
 確かにエロを強要してはいるのだが、何と言うか違反スレスレである。
 しかし、そんな事を今の大河に言ってみようものならば、本当にブチ切れて暴走されかねない。


「うぅ……うぐ…………ああぅ…わ、わかりました……」


 ついにベリオは観念した。


「さ、最初は……襲われると、思いました…」

「それじゃ報告になってないだろう。
 もっと想像力を羽ばたかせて!
 詳しく、詳細に、かつ淫靡に述べるんだ」

「あ、あうぅぅ…」


 顔を真っ赤にして話し始めたベリオは、大河の横槍のせいでもっと赤くなった。
 それでも健気というか律儀というか、ここまでくると頑固というか、とにかくベリオは頭が沸騰しそうになりながらも話し続ける。


「そ、その……いきなり押し倒されて…」

「押し倒されたのは何処で?」

「そ、そんなの考えてません!」

「じゃあ今考えろ。
 保健室? 俺の部屋? それとも委員長の部屋? ひょっとして道のど真ん中?」


 セクハラそのものの尋問を続ける大河。
 無理矢理はあまり好きではないと言ったのに、この場合はいいのか?
 あるいはそれ程に頭にきたのか。


「あ、うぐぅぅぅ………た、大河君の部屋です」

「ほほう。
 で、押し倒されてどうしたんだ?」

「まず、その……服を破かれて、胸をつかまれて…」


 ベリオは真っ赤になりながら、大河のに逆らえずに卑猥な妄想を話し出す。
 最初は漠然とした想像しかしてなかったのだが、それでは大河が満足しない。
 仕方なく、とりとめもなく頭に浮かんでは消えていった予想図を代わりに話す事にした。


「服がやぶれたんなら、下着は?」

「………まだ残っています…。
 それから、両手で胸を……その、乱暴に…揉まれ……て…」

「乳首は触られないのか?」

「手は……まだ胸を掴んでいますから、乳首……は……大河君に…吸い付か、れ…て…いま、す…」

「乳首、に……歯を…立てられ、て………」

「首筋に………舌が…這って……」


 話を続けるベリオの様子が、段々おかしくなってきた。
 普段のキリッとした雰囲気は徐々に消え去り、変わりに寝起きのようなボーッとした雰囲気が漂う。
 目は半分閉じられていて、瞼の下に見える目は潤み始めている。


「肝心の所は?」

「肝心な……。
 ……そう…胸を、掴んでいた………片手…。
 スカートに、潜り、込ん……で…」

「まず何処を触る?」

「私の、太腿を……ゆっくり…なぞって…。
 ときどき……大事なトコロ………指、が、当たって…」

「クリを探り当てた」

「ああっ、ソコは……ダメです…。
 そんな……乳首と…一緒に捻るなんて…」

「もう下着はベショベショに濡れてるな。
 まるでお漏らしみたいだぞ」

「言わないでぇ…。
 あっ、とっちゃダメなの…」

「でも、このままじゃ直に触れないだろ。
 ほら、隙間から指を捻じ込んで触ってあげると」

「はぅん!
 ああ……も、もう…腰が……浮いちゃう…!」

「ほらほら、下着は全部脱がせちゃったぞ。
 ノーパンノーブラで、破かれた服を着て喘ぐなんて。
 委員長は淫乱だなぁ」


「わ、私…なんてイヤらしい……」


 もはや完全に理性が飛んだように、虚ろな目でビクビク体を痙攣させるベリオ。
 誘導した大河も、まさかこれほど効果があるとは思っていなかった。
 大河が口を挟むのをやめても、ベリオの妄想はさらにエスカレートしていった。


「だめ……そんなところ…舐めちゃ汚いの…」

「あ、あああ……クリに、舌が絡んで……感じすぎ…る……っ」

「オシリなんて……揉んじゃ………いやぁ…」

「太腿舐めないで……ああっ、そんなところに指なんて…」


 いつの間にか、ベリオは豊かな胸を片手で揉み始めていた。
 もう一方の手は、スカートの上から股の間付近を弄り始めている。

 既に大河に見られている事はすっかり忘れて、沸いてきた肉欲に任せて指を動かす。
 服の上から、肢体は卑猥に歪められ、送られてくる刺激に身をくねらせ続けた。


「あ…あ……あああっ…!」


 ついに、ベリオは一つ目の頂点にまで達した。
 一際大きく体を震わせて全身を硬直させたかと思うと、今度は脱力して座り込む。

 大河がベリオの様子を観察して、ニヤリと邪悪な笑みを見せた。
 ベリオの発情は、まだ治まっていなかったからだ。
 相変わらず大河の目は逝っちゃったままだ。


「た、大河くぅん…」


 太股と太股を擦り合わせながら、言外に懇願するベリオ。
 その目は既に、大きく盛り上がった大河の股間に釘付けになっている。

 ベリオの無言のおねだりを察した大河が、ゆっくりズボンを下ろすと、ベリオは一層目を潤ませた。


「ああ……これが、男のひとの…。
 あんなに……おっきく………」


 ベリオは、大河の巨根を目にしただけで再び昂ぶってきた。


「委員長、エッチな気持ちになってきた?」


「はぁ…はぁ…は、い……」


「じゃあ、指導で約束した通り、エッチな事する?」

「はい……気持ちイイコト、させてください…」


 これで大河は言質と大義名分を確保した。
 後は流れのままに突っ走るだけである。


「委員長、さっきの話じゃ口で奉仕したりしなかったよな?」

「……はい………だから、今から……」


 フラフラと夢遊病者そのものの足取りで大河に縋りつき、足の間に頬擦りする。
 大河の先端から出た先走りで顔が汚れるが、むしろ嬉しそうに舌先で舐めとった。


「はむ……んぅ…ちゅぷっ……」


 大した躊躇いもなく大河を口に含み、唾液まみれの舌先で嘗め回し始めた。
 技巧はそれほどでもなかったが、普段とのギャップが大河の興奮を促した。


「じゅ…ちゅぷ……んむっ…」


 ベリオが顔を前後に揺らす度に、屋根裏部屋に水音が響く。
 大河の巨根を加えるには口を大きく開けなければならないが、大した疲れも見せなかった。

 やがて、ねちっこく響く水音がもう一つ増えた。
 ベリオの両手が、いつの間にか自分の股間に入って蠢いていた。


「ん……んぐっ………ぁん…」

「淫乱だなぁ、委員長は。
 舐めながら自分で擦って……そんなに気持ちいいの?」

「あん……んくっ、あぁ……きもち、いいんです…」

「自分で擦るだけで満足?」

「満足……できません…。
 大河くぅん、お願い……」


 離していた巨根を再び咥えこんで、ベリオは見せ付けるように尻を振って見せた。
 大河は楽しそうに薄笑いを浮かべて、ベリオの体を強引に抱き上げてベッドの上に倒れこむ。
 大河の上にベリオが覆いかぶさった。


「きゃっ……あう!? ん、くぅん……あ、ああ!」


 シックスナインの体制に移行し、大河はベリオの股間に顔を埋める。
 大河の目の前には、スカートをビショビショにするほど濡れた女性器が特有の臭いを放っている。
 垂れ落ちてくるベリオの愛液を舌先でそっとぬぐってやると、それだけでベリオの足が強張るのがわかった。
 そのまま舌を動かし続け、着実にベリオを追い詰めていく。


「あっ、あっ、ああぁ……く、来るっ、何か大きいの来ちゃうっ!」


 巧みな舌技に翻弄されて、ベリオは体を蝦反りに反らして硬直した。
 しかしあと一突付きで頂点を迎えるという所で、大河の攻めは急に弱くなった。
 今にも泣き出しそうな目で大河を見つめ、乱れに乱れた服の隙間から晒される肌を擦りつける。


「委員長ばっかり気持ちよくなってないで、俺のも気持ちよくしてくれよ。
 一人だけ気持ちよくなってちゃ面白みがないだろ」

「…はぁ…はぁ……はい…」


 益々荒くなった息を、目の前に屹立する大河の逸物に吐きかける。
 ベリオは舌を伸ばして、舌先だけで大河の先端を捏ねくり回した。
 片手で根元をしごき、もう一方の手は再び自分の胸を揉み続ける。
 ギリギリまで昂ぶらされた体のせいか、ベリオの奉仕は急進的で攻撃的だった。


「ううぅ…委員長、そこもうちょっと強く……おほっ!」


 尿道を舌先で抉られ、大河は腰をビクンと痙攣させる。
 その間も、ベリオの肉付きのいい太腿を撫でさすって刺激を与えるのを忘れない。
 大河の体が跳ねるたびに、押し付けられたベリオの体が擦れてお互いの体に刺激が走る。

 とても初めてとは思えないベリオの淫蕩さに大河は驚いた。

 ベリオが大河の逸物を頭から飲み込み、一層激しく頭を上下させると、とうとう大河も射精の衝動を覚え始めた。
 頃合と見て、大河もベリオを本格的に攻め始める。
 ようやく再開された甘い拷問を堪能しながら、ベリオは必死で舌を蠢かせ続ける。
 大河はヒクヒク痙攣するベリオの腰を抱え込んで、その女性器に直に口付けた。


「んっ…んむっ……んぐっ…ん〜〜っ!」


 突然与えられた強い愛撫に驚いて、舌を滅茶苦茶に動かすベリオ。
 それに合わせて、大河は股間の引き金を引いた。


「んっ、んっ、んん〜っ、ぷはっ、イクっ! イッちゃううーーーっ!」


 大量に発射された大河の精液を半分近く飲み干して、甘く激しい衝撃に貫かれたベリオは全身を硬直させて絶叫する。
 震えるベリオの体に、続いて発射された精子が降りかかった。


「はぁ……はぁ………はぁ……ンふ…」


 全身を脱力させて崩れ落ちたベリオの顔は、未だ萎えない大河の逸物の上に乗っかった。
 自身の唾液に濡れ、先端から白い液を垂らしているそれを、ベリオは愛しげに頬擦りする。

 それを見た大河は休憩する暇も与えずに、体を入れ替えて今度は自分が上に乗る。
 行為は続行される事を察して、ベリオは嬉しげな笑みを浮かべた。

 しかし、今度はベリオの想像していたような行為にはならなかった。


「んぐっ!? むぅっ、んっ!?〜〜〜〜〜っ!?」


 先程の交わりは、ベリオにも反撃する機会はあった。
 全身を苛む情欲に身を任せて、体を擦りつけ舌で嘗め回せば、お互いが気持ちよくなれた。
 しかし、今度の大河の行為はそんな次元ではなかった。

 下になったベリオの口に逸物を突っ込んで、自分の指先と口は全てベリオの性器に集中する。
 味わった事のない快感を散々送り込まれ続けて、ベリオはあっという間にイかされてしまう。


「んっ、んっ、んんっ、んむぅ〜〜〜ーーーー!!!??!?!??!!?!」


 舌を動かして口の中にある大河を舐めるような余裕はなく、ただひたすら大河に翻弄され続ける。
 押さえ込まれた体は始終ビクンビクンと痙攣し続けて、大河の舌や指が一つ動く毎に絶頂に放り込まれている事を示す。
 既にスカートは愚か、シーツまでお漏らしでもしたかのようにグショグショだ。

 ベリオにはもはや、何かを考える理性などカケラたりとも残っていない。
 大河の手で震えるだけの玩具と化していた。


 一体どれだけ続いたのか。
 ベリオが殆ど反応を示さなくなって、大河の攻めはようやく終わりを告げた。

 シーツの上に横たわるベリオの全身は、まるで行水でもしたかのように汗に濡れ、表情は惚けたまま涎を垂らしている。
 顔には大河が発射した精液がかけられ、もう乾き始めている。

 大河は何度か目の前で手を振ったり、体の各所を軽く叩いて反応を確かめた。


「おーい委員長…?
 ダメだこりゃ……精神に異常とかはないけど、体力がカケラも残ってないわ。
 ………まあ放っておけば起きてくるけど…………とにかく後始末だな」


 ベリオの安全を(一応)確認した大河は、顔を流れる精液や汗を拭き取り、汗まみれの服を脱がせて体を拭いた。
 着替えがないので、裸のままのベリオの上にシーツを被せる。
 べリオを剥いた際に大河の股間が再び反応したが、これ以上の酷使はイカンと抑え込んだ。

 いつの間にか、ベリオは安らかな寝息を立てて眠っている。
 小一時間もすれば目を覚ますだろう。

 ベリオの服は汗でグショグショになっているが、着替えを取りに行こうにも、ベリオの部屋の何処にしまわれているのかわからない。
 仕方なく、ハンガーに吊るして乾かしておくに留めた。
 起きたら服を貸してやればいいだろう。

 起きた時には喉が渇いているだろうから、近くの自販機(らしき物体)からジュースを買ってくる。

 できる事を一通りやって、大河は椅子に腰掛けた。
 ベリオの寝顔を堪能したいところだが、それをやると理性を抑え込むのが一苦労だからじっと我慢。

 大河は頭を抱え込んだ。
 勢いと怒りとその他諸々に任せてついやっちまったが、委員長が起きたらどう言うべきか。
 これも若さが悪いんだ。
 最後までやらなかったのは、未亜が怖いというのもあるが、ベリオの様子がおかしかったからである。
 発情というは、あまりにも顕著すぎた。

 それに、初めてとは思えない大胆さや意外にも開発されていた性感帯。
 大河は不思議に思い、納得のいく説明をつけるべくアレコレ想像し始めた。

 幸い夕食までまだ時間がある。
 それまでにはベリオも起きてくるだろう。

 大河は不完全燃焼の逸物を持て余しながら、ゆっくりとした時間を過していた。


 そろそろ夕食の時間が迫ってきた頃、ようやくベリオの体力が回復してきた。
 シーツの上からでもはっきり解るほど盛り上がった双球を揺らして、ベリオはゆっくり目を開けた。


(ここは……?)


 ボーっとした目と頭で周囲を見回すと、壁に向かって椅子に座り、なにやら呟いている大河を見つけた。
 しばらくじっとしていたが、ゆっくり体を起こそうとして、妙に体が重い事に気付く。
 腰の辺りに力が入らず、他の部分も動かすのが億劫だ。
 それは情事の後の余韻だったが、ベリオはそこまで思い出していない。

 ベリオは動く事がままならないので、じっと大河を観察していた。
 妙に真剣な表情で、大河は虚空を見つめている。

 暫く見ていても、ベリオが起きた事には気付かない。
 ベリオは大河から視線を外し、また視線を巡らせた。


(窓……火を灯されたランプ……屋根裏部屋?
 私、何でここで寝てるのかしら……)


 もう一眠りしたくなる衝動に駆られながら、ベリオは何があったのか思い出そうとする。
 その目が見慣れた服を発見した。
 ベリオがいつも着ている服が、ハンガーにかけられて干されている。


(私の服…?
 ちょっと待って、それじゃあ今私って…………!!?!!??!?


    ガバッ

「なっ、なっななななな!?」


 慌ててベリオは跳ね起きて、かけられていたシーツを捲る。
 その下には、予想通り下着一つ着けていない自分の体があった。
 パニックに陥りながら、ベリオはシーツを体に巻きつける。


「おっ、ようやく起きたのか委員長」

「たたたたた大河君!?
 こ、これは一体どういう事なのですか!?」


 口調を荒げ、ベリオは大河に詰め寄ろうとした。
 しかし思うように体が動かず、ベッドの上を這う程度しかできない。


「どういうって……いや、指導の後に委員長が気絶して」

「指導!?」


 そう言われて、ようやくベリオは何があったか思い出してきた。
 自分ではよくわからないが、大河の逆鱗に触れてしまったらしい事。
 その迫力だか怨念だかに押されて、セクハラ行為を受け入れてしまった。
 それから大河に命令されて、それから……。


「じゃ、じゃあ裸なのは!?」

「別に最後まではしてないぞ。
 服がびしょ濡れだったから、脱がせて汗を拭いただけだ。
 そのままにしておいたら風邪引きそうだったから」


 混乱しているベリオの問に、大河は冷静を装って答えていく。
 大河も内心では、ベリオがいつ激発するか恐々している。


「ひ、酷い…。
 こんな事はしないって、自分で言ったじゃないですか!」

「いやそう言われても……俺は無理強いなんかしてないぞ。
 そりゃ最初に何をされると思ったのか言えって言ったけど…。
 その後、エッチな事をしたいのかって聞いたら肯定したからやったんだって!」

「そ、そう言われるとそんな事を言ったような…」


 うっすらと記憶に残る発言を指摘されて、ベリオは狼狽した。
 しかし、例え言質を取られていたとしても、感情はそれとは別問題である。
 噛み付きそうな顔で睨みつけるベリオにビビって、大河はとにかく話を逸らす事にした。


「と、とにかく委員長、服を着てくれよ!
 委員長が元々着ていた服もそろそろ乾いてるし、なんなら俺の服を幾つか貸すから!」

「結構です!
 早く私の服を渡してください!」


 大河は素早くハンガーから服を取り、ベリオに渡して屋根裏部屋を出た。


 それから約5分。
 胃が痛くなりそうな重圧を感じて待っていた大河は、扉の開く音を聞いて顔を上げた。
 無表情なベリオが屋根裏部屋から出てきて、大河を一瞥する。


「……あなたみたいなエッチな事しか考えない人が救世主なんて、私は絶対に認めませんからね」


 反論する暇もなく、ベリオは去ってしまった。
 後には自分の若さとバカさを恨む、青少年が一人……。



ちわっす、時守です。

エ、エロシーンは想像以上にムズい……。
こんなモン素面で書いてられん!
慣れない事はするもんじゃないッス。
そして年齢制限の基準がわからないです。
最後までいってませんが、一応18禁にしときました。

ある意味デュエルセイバーの目玉、指導の巻です。
ベリオが虎口から脱したかと思われましたが、結局逃げられずに食われちゃってます。
大河がベリオに結界を張らせたのは、当然迷惑云々ではなくて秘め事を隠すためです。
さすがの大河も、衆人観衆にイケナイ声を聞かせるツワモノではありません。

未亜に対する誓いはどうしたと言われそうですが、そこは所詮大河君ですし。
軽く理性が飛びます。
ついでに酔っ払って時守も半分理性が飛んでます。

ジャスティのページ見てきましたけど、ハーレムルートは大河VS救世主クラス全員とかありそうですね。
むぅ、発売前にやってやろうかと思ってたんですが……流石にそこまで話は進められそうにありません。

ゼンジー先生は、これからも何度か出てくるかもしれません。
その時は……リアル13日の金曜日が実現されるやも……。


それではレス返しです。


1.>ななし様
 そっか、アフロはActionのHPで読んだのか……久しぶりに読みに行って、心行くまで笑ってきました♪

 むしろ大河は召喚される方ですね。
 バイトでそういう仕事も何度かやってますから。
 ドラゴンボール……一度召喚してやろうかと思いましたが、さすがにパワーバランスが問答無用で崩壊するのでやめました(笑)
 少なくともアヴァターにはやってきません。
 それと大河の元バイト先の報酬が、あの竜球で叶えられているなんて事も考えましたけど…。
 戦闘力も竜球も、アレはいくらなんでも反則でしょう(笑)


2.>セイ様
 ありがとうございます〜〜〜!
 マジで助かりました!
 そーか、2chに行けばよかったんだ…あの辺よく知らなかったから調べてなかったです。
 ご助力ありがとうございました!<m(__)m>


3.>マディマディー様
 語りに入ると、どうしても一人が喋り続ける演説調になってしまって…。
 深刻な課題なので、今後なるべく気をつけます。
 似たような事を延々繰り返していたのは、後付しまくったからです。
 デコレートしまくったら、悪趣味な飾り付けが出来てしまったようなもので…。
 微妙に整合性がとれていません(涙)


4.>エキス虎様
 はじめまして、エキス虎さま。
 今後ともご贔屓に…。

 大河はウルフウッド君には直接は会っていません。
 単に作者があの台詞が好きで、あの問い掛けの答えに合いそうだから引っ張り出してみただけです。

 !マーク、やっぱり多すぎましたか…。
 スピード感を表現できないかと思ったのですが、逆効果だったみたいですね。
 文を短く区切って斜めにするとか、2,3文飛ばしで!を使って要所要所を強調したほうがいいでしょうか…。
 淡々と、ですね…。
 覚えとこ。 φ(..)メモメモ


5.>ATK51様
 礼拝堂の辺は本気で悩みました。
 何とか産み落としましたが、未熟児のような文章で、体裁を整えるだけで精一杯でした。
 ベリオを激昂させておきたいと考えていたので、大河の台詞にベリオの地雷をクリーンヒットするようなのを盛り込んだんですが…。

 視点が高かろうと低かろうと、結局見えるのは自分の視界の中だけです。
 右を見れば左が見えず、前を見れば後ろが、上を見れば足元が見えない。
 視界が広ければ細かい注意が利かず、狭ければ色々なものが見えなくなる。
 散眼や白眼を使っても、見えるのは『自分の価値観で作られた世界』だけ。
 それが人間の限界かもしれません。

 普段真面目な人物ほど、キレると暴走しやすいそうで。
 特にブラックパピヨンなんぞ、その集大成みたいなものですしね。

 某オペレータ…胸のサイズまでいっs(黙)

6.>干将・莫耶様
 この世界の神様については、ちょっと設定を変えるかも知れません。
 もっと厄介で、タチの悪い、やりきれないような……。
 ジャスティでどんな謎が明らかになるかわからない以上、この際ある程度は独自路線を突っ走ろうかと思っています。

 し、白の書のことッスか?
 それも候補に入れてますけど…やっぱり読まれやすいかなぁ…。
 初っ端からダウニーを白の主にしてやろうかと思ってたんですが…。
 結構有力候補だったんだけど……もう一捻りしてみます。
 ブラックパピヨンは次の話です。

7.>唸る右ストレート様
 時守も大河も未熟者ですから。
 感情に任せて喋って、口が過ぎたというのが実情に一番近いです。
 そういう経験ありませんか?
 例えば親や先生の言う事が無性に気に入らずに意味もなく反発したり、友達の言う事がどうしても気に入らないから取り合えず反論したとか。
 どうすればいいのか解らないけど、これじゃダメだって思う事は誰でもあると思うのですが。
 ちょっと言いすぎくらいで止めておこうとしたら、ブレーキが利かずにあの有様です。

8.>皇 翠輝様様
 命のストック…ありですね。
 彼ならきっとダース単位で確保してるはずです(笑)

9.>初心小心様
 いえいえ、ユーフォニアであってますよ。
 ゲームの中で書いてあるのをちゃんと確認しましたから。
 ところで……リコの召喚器って出てきましたっけ?
 名前はおろか形すら記憶に無い…(汗)

10.>沙耶様
 リコを出して萌えたいのは山々ですが、どうにもあの手の無口キャラは書きにくいです。
 …ところで、彼女の態度もツンデレに分類されるでしょうか?

11.>なまけもの様
 ダウニーはストーリーが加速するまでは完全にギャグギャラですね。
 精々憂さ晴らしの対象になってもらいます。

 正直な話、礼拝堂の口論は予定外の方向に向かったのですが、楽しんでいただけたなら幸いです。
 やっぱり賛否両論のようですが、正直、賛は無いかもと覚悟していたのですが…。

 ブラックパピヨンは…登場早々えらい目に合うかもしれません。
 ある意味大河の洗礼になっているかも…。

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