フェンリルに手を引かれ歩く事数時間、横島達二人は森の入り口に着いていた。
「ここだよ。僕が目を覚ましたのはこの森。」
そう目の前の森を指差し横島に言うフェンリル。
「は〜なんつうかめっちゃくちゃ広そうな森だな。東京都にこんな森があったんか〜。」
目の前の森は本当に森だった。右を見ても左を見ても途切れる事無く続く木、木、木、林ではなくまぎれもない森だった。
「確か目が覚めたのは森の中だって言ってたよな?そこまでの行き方解るか?」
「うん、多分こっちだと思う。」
横島の問いに答え、横島の前に立ち森の中に歩いて行くフェンリル。
しばらく歩いていると何か違和感を感じる横島、
(ん?なんだ?なんか誰かに見られてるような・・・)
立ち止まり周囲を見渡すが何かが居るような気配は無い。
(何も居ないな・・・霊気なんかも感じないし一体なんなんだ?)
「ど〜したの?お兄ちゃん。」
急に立ち止まり周りをキョロキョロと見る横島に、何かあったのかと心配そうに聞く。
「ん?あ〜いやなんでもないよ。気のせいだったみたいだ。」
「そう?」
何でもないと答える横島を不思議そうに見つめるフェンリル。
「ああ、いきなり止まって悪かったな。」
「ううん。」
微笑みかけ謝る横島に顔を赤くしながらフルフルと首を左右に振りまた歩き出す。
しばらく歩いていると急に開けた場所に出る。
「ここ。ここの真ん中あそこの所で目が覚めたの。」
どうやら着いたらしい、中央を指差しそう横島に言う。
「ここでか・・・。」
その場所はフェンリルの指差した場所を中心に、円状に地面が露出していた。
その露出した地面には木はおろか草さえ生えていない。
(まるであそこを中心に抉り取られたみたいだな。とりあえず中心に行ってみるか。)
そう考え真ん中に歩いていく。
「あ、待って〜。」
周りをキョロキョロと見回していたフェンリルも慌てて横島の後ろから付いて行く。
「な!?」(なんだこの魔力は!?)
そう中心に近づくにつれだんだんと魔力を感じだし、中心にはもの凄い強さの魔力が残っていた。
「ねえお兄ちゃん、なんなのこの感じ?なんか凄く寒いような苦しいような感じがするの。」
そう腕にすがりつき横島の顔を見上げ震えながら言うフェンリル。
(あ、いけねこの魔力に当てられたんか。)「ああ、何か凄い魔力が残ってるみたなんだ。フェンリルは離れてたほうがいい。」
そういうとフェンリルを抱き上げ入って来た場所に連れて行く。
「ちょっと調べてくるからここに居てくれな?」
地面に下ろし立たせた後頭を撫でながらそう頼む。(この時撫でながらヒーリングを掛けるのも忘れない。)
「う・・・うん。」
ヒーリングの効果で魔力の効果が消えたのだろう顔色が良くなるが、今度は頭を撫でられたのと暖かな霊気に当てられたのだろう、はにゃ〜んとなっている。
「んじゃちょっと待っててくれな。」
再度微笑みそう声を掛けると中心部に戻って行く、フェンリルは今の笑顔が止めになったらしく、全身真っ赤になって地面にへたり込む。
(うん、やっぱりここが一番魔力が強いな、ここがこんなふうになったのはこの魔力の所為なんだろうな。)
人間界の植物は魔界のそれと違って瘴気や魔力妖気などに弱い、雑草一つ生えていないのはこの魔力の所為で間違いないだろう。
(今生えてないのはそうだとしてもだ、発生した時に生えてたのはどうなってたんだ?当てられて腐ったのなら周りに残骸があるはずだし。)
だが周りを見渡してみてもそんな物は何処にも無い。
(ん〜解らん。消滅したとか?んな訳ないよな〜。・・・え〜い考えても全然解らん!もう知らん!)
さじをぶん投げたらしい、いいのかそれで?
(とりあえずこの魔力は消しておいたほうがいいな、どんな影響がでるか解らんし。)
「うし!そんじゃあやるか。」
「天地に数多に居られる神々達に願う
我が言葉、我が願いを聞き届け
我に今この場を清めるための
浄化の力を貸し与えたまえ!
発!」
そう呪を唱え手を地面に手を置き発動させる。
一瞬地面が発光したかと思うとその場に漂っていた魔力が吹き散らされ浄化されていった。
「うし、終わりっと。」
手に付いた砂を払いフェンリルの方に戻っていく、
「さてと終わったよフェンリル、体の方はもう大丈夫か?寒気とかはもう平気か?」
目の前まで戻ってくると、ぽか〜んとこっちを見ていたフェンリルにそう話しかける、
「ふえ?あ、うんもう全然平気だよ〜。それよりお兄ちゃん、今何したの?」
「ん?ああ術でこの辺に貯まってた魔力を払っただけだぞ?」
今の突然の光は何なのかと尋ねるフェンリルに対して、
簡単そうにそう答える横島。(まだふやけていたらしく横島の呪は聞こえていなかったらしい。)
「いろいろな術が使えるんだ。すごいね〜。」
「ん〜初歩の術ばっかりだからそうでもないぞ?ちょっと修行すれば誰でも出来るようになるって。」
感心するフェンリルにそんな事はないと答える横島、
「そうなの?」
「ああ、そうだと思うぞ。」
そんな事はまずありません。。(ちなみに初歩とはいえ普通は半年の修行、しかも体術優先の片手間にやったような修行では使えはしない。
使えたとしても一つの術に絞って勉強し、やっと使えるのが一般的な術者の力量である。)
「さてと、んな事より飯にすっか?そろそろ暗くなってきたし火起こさないとな。」
「うん!じつはちょっとお腹減っちゃってたんだ。」
えへへっと照れたように笑う。
(うっ・・・可愛い。)
「どうしたの?」
急に固まり微妙に赤くなった横島に不思議そうに聞くフェンリル。
「いやなんでもないぞ、なんでもない。」(俺はロリコンじゃね〜〜〜〜〜!!)
表面上は冷静になりつつ答えるが、心の中では地面にがんがん頭をぶつけそんな事を叫んでいる横島だった。
━夕食後━
「ごちそうさま〜。」
そう元気良く言うフェンリル。横島の方はどうしたのだろう?
「ああ・・・、お粗末様。」(つ・・・疲れた。)
夕食中に何があったのだろう?かなり精神的に参ったような顔をしている。
「ふぁ〜〜〜〜。お腹一杯になったら眠くなって来ちゃった。」
目を片手でこすりつつそんな事を言う。
「あ〜もういい時間だもんな〜。ほれ毛布これに包まって寝るといいぞ。」
そう言いながら"収・納"の文珠に入れておいた荷物から毛布を取り出し渡す。
「は〜い。」(あ、そうだ。)
毛布を受け取り横になり寝ようとするが、すぐにまた立ち上がる。
「ん?どうしたってぇぇぇ〜〜〜!?」
立ち上がった気配を感じ取りフェンリルの方に振り向くと(後片付けをしていて別方向を向いていた)、肩から毛布を掛けたフェンリルが胸に飛び込んできた。
「お兄ちゃん、一緒に寝よ〜。」
そう甘えた声で言いながら腕を背中に回し抱きついてくる。
「え。あ、いや!それはちょっと〜。」
汗をだらだらと流ししどろもどろになりながらもそう言う。
(うお〜軟らかい感触が胸にぃぃぃ〜!なんか良い匂いもするし、これは!これはまずいぃぃぃ〜!)
理性が真面目に切れそうになっているらしい。
「嫌・・・なの・・・?」
うるうると涙目になりながら上目使いで聞いてくる、
「う・・・それは・・・。」
「やっぱり・・・嫌・・・なんだ・・・。」
横島が言葉に詰まると、さらに涙を溜めつつ本当に心の底から悲しむような声を出す。
「う〜解った解った!一緒に寝るから泣くな!泣くなって〜!」
「本当!やった〜〜〜!」
横島がその表情と声に慌ててそう言うと一転、こんどは本当に嬉しそうな声を挙げる。
(は〜しゃあない、眠ったら離せばいいか・・・それまで持つかな?俺の理性。)
━30分後━
(は〜やっと寝たかんじゃ離すか・・・ちょっと惜しいかも・・・。)
オイコラ横島よ。
━さらに30分後━
(は〜は〜、ぜ〜ぜ〜、や・・・やっと離れてくれた。)
もはや息も絶え絶えになっている、
(やばかった・・・マジでやばかった。理性があとちょっとで飛びそうに。)
夕食の時も思ったが何があったのだろうか?
「ふ〜さてと、んでさっさと出てきたらどうだ?まだ見てるんだろう?」
そう森の方向を向いて問いかける横島、
「ありゃ?まさか気づかれるとはね〜。」
そう言って木の陰から現れたのは16〜17歳位の女の子、
「ああ、この森に入った時には何となく感じる程度だったけど、飯の時とか今さっきとかに視線の感じが強くなったからな、」
「あちゃ〜。気を取られすぎたのか〜。まあ面白かったしな〜。」
どうやら初めの違和感はこの少女だったらしい、今までずっと覗いていたようだ。
外見は160cm程度、フェンリルよりも更に銀に近い蒼銀の髪、顔はかなりの美少女で赤い瞳に白い肌、服装は女子高のだろうか?ブレザーを着ている。
(かなり可愛い。ってんな事考えてる場合じゃねえ!?この娘から感じる魔力、
ピートと感じが似てるってことはヴァンパイアハーフ?いやでも微妙に感じが違うな。)
その魔力にどこか覚えがあるらしく必死で思い出そうとする、
(あ、思い出した!ピートの親父に似てるんだな。つ〜事は、この娘まさか!
ハーフじゃないものほんのヴァンパイアか!)
そうピートの親父ブラドー伯爵に似ている魔力なのだ、
という事はこの娘はまじりっけなしの純粋なヴァンパイアという事になる。
(しかもかなり強い、魔力だけならピートやブラドー以上だぞ。)
修行やいままでの経験で培われた力が、相手の力が侮れない所か自分よりも強いと警告を発していた。
「ん〜一ついい?気になってる事があるんだけど。」
「へ?いいけど。」
ただそんな心配や体の警告には関係なく、その少女はまる友人に話しかけるように話しかけてきた。
「さっきから見てて思ったんだけどさ、あなたってもしかしてロリコン?」
「は?」
少女の口から出た問いはそんな問いだった。
「いやねだってね、さっきからあの子に抱きつかれて真っ赤になってるわ慌ててるわ、
ご飯中とか寝かしつけてからとかも見てたんだけどさ〜。まああの子の行動も凄かったけどね。」
いったい何が有ったのだろう?
「うん、やっぱりそうとしか思えないし。あなたロリコンでしょ!?」
「ち、ち、ち。」
「ち?」
「違うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
そう心のそこから絶叫する横島だった。
━続く━
━後書き━
こんにちは〜REKIです。
第五話をお送りしました〜。
いやさ、まぶらほ+型月とか書いてたらこっちが遅れる遅れる。
すいませんでした〜。
え〜はい新キャラ登場しましたね〜解る人には解るでしょうダークロアのあの娘です。
横島君の術は浄化の術ですね。
文珠みたいな悪霊なんかを浄化して成仏させるほどの力はありません!
そのばにある魔力か瘴気・妖気なんかを浄化して取り除くだけの術です。
悪魔はもちろん悪霊すら、直接術を掛けても殆んどダメージを与えられません(汗
あ、でも横島の霊力の強さなら悪霊くらいなら大丈夫かも。
まあそんな術でした〜。
文中の━時間━で飛ばした場所についてですが、
一緒に書くとかなり長くなってしまうので省かせてもらいました。
要望があれば外伝で出すかもしれないです。
では今回はこの辺でさようなら〜。