『黄昏の式典』闘技場――――ここはこれから持てる力を全て出し切り、意地と意地とが火花を散らす数々の死闘が繰り広げられるであろう神聖なる闘争の場だ。
よってここに立つことが出来る者は、世界にすら認められた強者のみ。
開会式及び選手紹介が始まる二時まで残すところあと五分をきり、だいたいの選手が集まりだした闘技場の一角に美神、横島、雪之丞、ピートの四人はいた……のだが、三人は美神から漏れ出している怒気と殺気に圧され、若干距離を取っている。周りを見れば、美神が面白いのか口元にわずかな笑みを浮かべて様子を窺っている者、決してこっちを見ない者と反応は様々だ。
「美神さん、何かあったんでしょうか？」
「だとしてもあの雰囲気は異常だぜ。横島、お前何か知ってるか？」
「知らん。ただ、あの怒り方は普通じゃない。今話しかけたりしたら八つ当たりでしばかれるのは間違いない」
この中で一番美神の性格を熟知している横島の真顔の断言に二人は額からおびただしい量の冷や汗を流し、さらに何歩か美神に気取られないように距離を取る。
胃の痛くなるような重圧が絶えず美神から滲み出て、さらには明らかにヤバイ気配のする者達数人の視線にさらされているという精神衛生上とってもよくない状況のなか、突然、まだ昼過ぎだというのに空が暗くなり、照明が闘技場のある一点を照らし出す。
「皆様長らくお待たせしました！これより当トーナメント大会！『黄昏の式典』の開会をここに宣言します！！」
黄昏の式典 第四話〜運命の使者たち〜
司会の言葉を合図に闘技場の至る所から大気が震えるほどの大歓声が響き渡る。
「まさかこんなに観客がいるなんてな。いったいこいつらどこから集まってんだ？」
雪之丞の言う通り、闘技場の観客席にはおよそ一万人は観戦できるようなっているにもかかわらず、近年の野球試合では見ることの出来ない穴がまったくない満席の状態だ。
「たぶんこの大会の出資者が各方面の有名所に声をかけたのよ」
幾分か冷静さを取り戻したのか、はたまた怒りを誤魔化しているのか、美神は観客席を見渡し、考えうるもっとも可能性の高い憶測を口にする。だが、内心では魚の骨が喉に引っ掛かったような感覚が膨らんでいた。
（けど……妙ね。賭けをやる道楽金持ちっていうより、むしろ私達側に近いような……）
会場にいる者達はほとんどの者がそこら辺に見かけるような服装で、とてもこんな所に招待されるとは思えない。一応、金持ち風の成り立ちで回りを屈強そうなガード達が取り囲んでいる、という者達もいるのだが、美神が今まで見てきた態度がでかいだけの金持ちとは違い威風堂々としていて底がまったく見えない者達ばかりだ。
「そういえばルリちゃんも出資者がいるっていってましたけど、いったいだれなんスか？」
深く思考に没頭していた美神だったが、横島の声で意識を戻す。とりあえず、今考えることではないと自分なりに整理したからだ。
「それは……」
横島の疑問に美神が答えようとしたその時、再び闘技場全体に司会の声が響き渡る。
「それではまずこの大会の出資者の方々を簡単に紹介したいと思います！まず始めに覇道財閥、アーカム財団、クロノス、無限城、C−COM財団、GS協会、ネルガル、魔術協会、英国国境騎士団、ヴァチカン法王庁、ミスリル、神凪家、麻倉家、道家、他にも数々の心ある協力を持って開催いたしております！続きまして、大会参加者の方々を紹介いたします！」
司会の側に置かれた照明が闇を切り裂き、美神たちのちょうど右側に立っていたまだ少年、少女ほどの4人組を照らし出す。
「それではまずはこのチームから！魔術でも霊力でも超能力でも精霊魔術でもない異端な力を使う今大会もっとも平均年齢が低いアンダーグラウンドチーム！チームの中でも要の浅葱留美奈選手とチェルシー・ローレック選手は一度決めたら猪のように突っ走る典型的な猪突猛進タイプ！勢いをつけすぎて自滅しないか心配です。「いきなり余計なこと言ってんじゃねーーーー！！」「ちょっと！こいつと一緒にしないでよ！！」（無視）その2人を抑えるのは敵に対して情け容赦無いテイル・アシュフォード選手に今大会最年少である元気一杯のシエル・メサイア選手！果たしてこの4人は台風の目になるのか！？注目のチームです！」
「そして注目といえば我々大会運営委員会や実行委員会がまっっったく知らないうちになぜか参加していたこのチーム！！鷲羽ちゃんと愉快な仲間たちチーム！
鷲羽選手、柾木天地選手、魎子選手、阿重霞選手！能力等が一切不明のこのチーム！果たしてこの化け物うずまくトーナメントでどこまで勝つこと……いえ、生き残ることが出来るのか！？」
「遺跡を護る強靭な妖精！スプリガンチーム！！その中でも注目はスプリガンNo.1の実力を持つといわれている御神苗 優選手！！その類まれなるセンスは人の限界すら超える力を発揮します！
だが本当に人の限界を超えているのは彼！ジャン・ジャックモンド選手！！それもそのはず！彼は古の人々が作り出した身体能力ならば吸血鬼や死徒すらも超える古代兵器ライカンスロープの子孫なのです！一説によれば、ライカンスロープは真祖との激闘の末に滅びたといわれています！
そして元ネオナチス所属のボー・ブランツェ選手！！一年前の世界三大事件の一つガイア事件のおりに今のナチスの現状を知り、弱者を守ると言う志を持ってスプリガンに志願したボー選手！まだ一年目だというのにその実力はかなりのものとのこと！期待の選手です！
最後はこの人！スプリガン最強の刺客！朧選手！！
その戦闘能力には底が見えず、たえず己を鍛える朧選手！一度はスプリガンを脱退した身なれど、現アーカム財団会長の誘いで電撃参戦！その言葉を受けたのが強者と戦えるからといった単純にして壮絶な理由！！果たして彼を打ち倒せる人間はいるのでしょうか！？」
「シャーマンキング！この名の意味を知っているのならこいつらには気をつけろ！！ふんばり温泉チーム！！チーム名とは裏腹に構成メンバーは強豪揃い！
まずはわずか一年足らずでで最強クラスのシャーマンにまで上り詰めた見かけによらず天才なリーゼントの男！ロリコン！木刀の竜選手！！
かつて中国を裏から支え動かしたシャーマンの家系、道家の嫡子にして竜選手と同じく最強クラスのシャーマン！道 蓮選手！！
蓮選手のライバルにして平安から続く由緒正しき陰陽師の家系、麻倉家の嫡子にしてまたまた最強クラスのシャーマン！麻倉葉選手！！
そして！！千年もの長い月日を幾度もの転生を繰り返すことで生きてきた最強の存在！！その力は魔導元師キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグに世界が偶然産み落としたと言わしめるほどの究極の存在！！その名は！未来王！麻倉ハオ選手！！ちなみに葉選手とは双子の兄弟でハオ選手が兄です」
「日本最凶の都市！裏新宿からは裏稼業界最強の男たちが参戦だ！
奪還屋を営み、物、人、心といった全てのものを取り返す！だが、注目すべきはその身体能力と天性の戦闘センス！このチームの筆頭的存在！邪眼の男！美堂 蛮選手！！
その美堂選手とコンビを組んでいるのは一見優しそうな感じのする青年！だがその正体はかつて無限城下層階を支配した雷帝の異名の持ち主！！天野銀次選手！！その潜在能力はどれほどのものなのか！？必見です！
日本最強の混血の一族！鬼里人七頭目が筆頭！毒蜂選手！！出場理由こそ明かされていませんが、英霊にすら匹敵する実力を持つといわれている毒蜂選手の実力はもはや疑う余地無し！！
そして最後に、趣味が殺人という裏稼業最凶にして最強の人物！その名は！赤屍蔵人選手！！あまりの強さのため自分自身にも限界がわからないという赤屍選手！果たしてその実力の全てを見ることが出来るんでしょうか！？」
「お次はなんともアンバランスなこのチーム！月夜チーム！！
日本の財界に大きな影響を持つ混血の一族！遠野家現当主の遠野秋葉選手！！
今は滅びし七夜の末裔！その芸術的暗殺術を見ることは出来るのか！？遠野志貴選手！！
ヴァチカンが誇る二大機関の一つ！埋葬機関、異端審問官第七位！『弓』のシエル選手！！
『朱い月』の正当な継承者たる真祖の姫！アルクェイド・ブリュンスタッド選手！！
混血！退魔！代行者！真祖！狩られ狩りあう存在であるはずの彼らはいったいどんな戦いを繰り広げるのか！？」
「かの世界三大事件の一つ！アシュタロス大戦で魔神アシュタロスを打ち倒したＧＳチーム！！
世界最高のＧＳと呼ばれ、魔法の域にある能力を持っているといわれている美神令子選手！！
悪魔との契約によってなせる禁忌の術！魔装術を使いこなし数多の強敵を屠ってきた伊達雪之丞選手！！
ブラドー島に住まう吸血鬼！ブラドー伯爵の息子！バンパイア・ハーフ！ピエトロ＝ド＝ブラドー選手！！古より続く血脈の力はどれほどのものか！？
そして！アシュタロス大戦最大の功労者にして魔神殺しの異名を持つ横島忠夫選手！！その能力は使いこなせばいかなる魔術、魔法すら凌ぎ、いかなる存在の妥当が可能といわれ、人の扱うことの出来る最強クラスの力！！その能力を持って勝ち抜くことは出来るのか！？」
「精霊魔術の使い手にして最強クラスの術者たち！聖痕チーム！！世界最強の炎術師の一族といわれている神凪一族の中でもなお最強の術者！神炎使い！神凪厳馬選手！！
次期神凪一族当主！炎の精霊王より授かりし神剣！炎雷覇を駆使する神凪綾乃選手！！
そのかわいらしい容姿とは裏腹に類まれな素質を持つ神凪煉選手！！なぜか竜選手のほうを見ながら震えております！
魔術協会や各政府からマジック・ガンナーの異名を持つミス・ブルーこと蒼崎青子氏に並ぶ局地災害指定に認定されており「日本人にまともなやつはいないのか！？」と言わしめた彼の名は！コントラクター！暴風！八神和麻選手！！」
「炎といえばこちらも忘れてはいけない！四百年の時を経て蘇った最強の忍者集団！火影チーム！！
火影忍軍七代目当主にして八匹の火竜の力を操る花菱烈火選手！！
烈火選手の兄であり、破滅の天使と不屈の武士を従える紅麗選手！！
その剣技は他の追随を許すことなく！氷の剣士！水鏡凍季也選手！！
不気味な三又の矛を携え不敵に笑う死神！ジョーカー選手！！
火影！果たしてこの大会の鬼札になることができるんでしょうか！？」
「覇道財閥の支配する都市！アーカムシティーからはデモンベインチームが参戦だ！！ミスカトニック大学の隠秘学科を過去に類を見ないほどの好成績で卒業し、その戦闘能力も魔術師としては異常とまでいわれている世界最強の魔術師！マスター・オブ・ネクロノミコン！大十字九郎選手！！
その大十字九郎選手の魔導書！アラブの狂える詩人アブドゥル・アルハザードによって記された世界最強の魔導書！ネクロノミコン！アル・アジフ選手！！
覇道に使える最強の執事！その拳は覇道に害するものを完膚なきまでに叩き潰す！戦う執事ウィンフィールド選手！！
馬鹿と天才は紙一重を実証している世界最高クラスの化学者の一人！ドクターウエストが作り出したアンドロイド！エルザ選手！！」
「掃除屋とクロノス！一見何の接点のないように思える二つが手を組んだ！黒猫チーム！！
クロノスからは最強の戦闘集団！クロノ・ナンバーズのNo.1！セフィリア＝アークス選手が出場だ！！その音無き暗殺剣は全てを断つ！
掃除屋からの参戦はかつてクロノスに所属し、最強の抹殺者として世界の要人を震え上がらせた黒き猫！噂では世界会議襲撃事件の首謀者クリード＝ディスケンスを“本当”の意味で捕まえたといわれているトレイン＝ハートネット選手！！
その心強き相棒！支配する目で戦場を見通す！スヴィン＝ボルフィード選手！！
ある依頼をきっかけに共に行動することになったトランス能力を持つ少女！イヴ選手！！」
「手を組んだといえばこのチーム！殲滅者チームだ！！あの英国国境騎士団とイスカリオテ機関が信じがたいことに手を組んだ！！英国女王やローマ法王すら関わっているといわれているこの一件！果たしてどうなるのか！？
英国国境騎士団からは最強の吸血鬼！HELLSINGの鬼札！ノーライフキング！アーカード選手が出場だ！！滅ぼされたとはいえ不死身の死徒と呼ばれたネロ・カオスすら上回るといわれる不死性を持つアーカード選手！彼を倒すことの出来る者はいるのでしょうか！？
そして英国国境騎士団執事！元ゴミ処理係！死神ウォルター選手も参戦します！！
今大会出場選手の中でも心配なのはセラス・ヴィクトリア選手！まだ吸血鬼になったばかりらしくこの大会を生き残れるか心配なんですが、アーカード選手の話だとそれなりにやるとのことなので期待しましょう！
そして！イスカリオテ機関の刺客！吸血鬼ならば誰もが恐れるその名は！聖堂騎士！アレクサンド・アンデルセン選手！！ローマ法王が自ら説得に当たり奇跡的にも吸血鬼との共闘をすることになったアンデルセン選手！その手でいくつの異端を狩るのか！？」
「以上12チームが優勝を目指し戦います！！」
あとがき
ご愛読ありがとうございました。
ちょっと短いですが、出場選手紹介でした。ちなみに出ている作品にはそれぞれ意味があるので、できれば非難等はなしでお願いします。
所々、選手紹介でこのSSのクロス設定、複線などを散りばめましたがご安心を。一応、それなりに考えていますので。原作でこいつ死んだんじゃないか？などの疑問にもそれ以外にも答えられる範囲でお答えします。なお、司会だけはオリジナルです。やっぱりこれだけクロスが多いと最低限の繋ぎ役は必要になるので。とはいってもあくまで脇役ですけどね。
さあ、次はいよいよ試合開始！
……と思ったんですが、たったこれだけで試合に入るのもなんだか味気ないので、第五話では皆さんご存知のあの方にゲストとして登場してもらいます。ついでに対戦表も載せます。
試合などは全てランダムで決めますので、作者の私でもどうなるか予想がつきません……できれば書きやすいところ同士が当たって欲しい……
それと皆さんに質問なんですが、恐らく本編には出てこないであろう設定は後書きに載せたほうがいいでしょうか？そこをずっと悩んでいます。
この第四話が少し短かったので、水曜日までには投稿できると思います。
それでは次回 黄昏の式典 第五話〜意外なゲスト？意外な知り合い？〜をよろしくお願いします。
前の話のレスを見た方はできればアレもよろしくお願いします。