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「黄昏の式典 第三話〜美神の災難・狂気の狂信者〜(GS美神+ヘルシング+???)」

黒夢 (2005-05-28 19:57)
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美神side


美神は横島、ピート、雪之丞の三人と別れたあと、一人闘技場へとつながる通路を歩いていた。

だが、その表情はいつになく硬く、緊張しているようにも見える。

実は美神は事前にこの大会のことを自分以上に裏の情報に精通している厄珍に頼んで調べてもらい、その結果を前日に聞いていたのだが、その内容は想像以上のものだった。

(結局……参加者は調べられなかったけど……この出資者はいくらなんでも異常すぎるわ。わかってるだけでも覇道財閥、アーカム財団、C−COM財団、クロノス、ネルガル、英国国教騎士団、ヴァチカン法王庁、神凪一族、麻倉家、道家、遠野家、そして、無限城……C−COM財団とネルガル以外、はっきりいってどれもこれも化け物の巣窟みたいなところじゃない)

日本、西欧、北米、中国……それぞれの地域を代表する裏の世界の重鎮たちが名を連ねるこの異常な出資者たち。

これほどの者達が揃って、ただ大会を開くだけなどありえない。何か、大きな……想像もつかない大きな出来事が裏で動いている……。

そこまで考え、身震いした。

それは、アシュタロスと相対した時にすら持ち得なかった感情。

恐怖である。

それもある意味当然といえるだろう。出資者の中にあの四つの名があったのだから。


覇道財閥  アーカム財団  クロノス  無限城


他にもやばいのは色々とあるが、この四つは別格である。


世界を動かす覇者 覇道

古代の遺跡を護る妖精を従える アーカム

世界の安定を保つ時の守護者 クロノス

生と死が入り混じる虚像の都市 無限城


世界最高のGSといわれているだけに美神には自然と色々な話が耳に入ってくる。その中にはもちろん、裏の世界の話も……

その中の一つにこんなものがあった。

裏の世界において暗黙の、そして絶対のルールの一つ。

『覇道、アーカム、クロノス、無限城……こいつらにだけは手を出すな』

もちろんこのように言われ始めたのにはわけがある。

…………圧倒的なのだ。どうしようもなく、ただただ圧倒的なのだ。

この四つが保有する戦力は……

覇道は全世界の海軍力と同等の戦力を保有し、さらには現代最強の魔術師を向かい入れ、

アーカムは数々の古代の遺跡をその手に握り、裏の特殊部隊最強の妖精を従え、

クロノスは世界のおよそ三分の一を裏で操り、世界の平穏と安定を護るため時の番人を僕とし、

無限城は世界中の裏と繋がり、バビロンの住人たちが下界を見下ろしながら圧倒的な恐怖と力を行使する。

この四つは睨み合うようにお互いを牽制しあっているため今は派手な動きこそ見せていないが、その気になれば世界の全てを自由に動かすことが可能なのだ。

しかし、だからといってあの美神がこの程度のことでここまで恐怖するはずがない。

美神が恐怖するのはただ一点だけ。

世界すら自由に動かせる。

それはつまり……


(私の全財産を楽に操れるってことじゃない!!やばい……やばすぎるわ!!もしも連中が出してくる参加者なんか倒しちゃったら腹いせに私の全財産押収なんてことも……)

その様子を想像したのか美神の顔から面白いように血の気が抜け、顔面蒼白になり、まるでこの世の終わりの瞬間を垣間見たような顔をしている。

……やっぱり、どんな時であろうと美神は美神だった。


黄昏の式典 第三話〜美神の災難・狂気の狂信者〜


(……ん?あれ……)

しばらくげんなりと歩いていた美神だったが、不意に眉を寄せ、その場に立ち止まると顎に手を当て考え込む仕草をする。

(ちょっと待って。この出資者……どっか、もっと他の場所で聞いたような……!?そうよ!確かあそこで!……けど、それが事実だとしてもいったい何のために……!?)

美神はこの出資者には奇妙な共通点があることに気がつき、唖然とした面持ちになる。しかし、思考はそこで中断した。なぜなら、突然、極限にまで発達した霊感が騒ぎ出したのだ。

カツン、カツン、カツン

それにともない、前方の通路から足音が聞こえてきた。ゆっくりと、しかし確実にその足音は美神へと近づいてくる。

それはなんでもないただの足音だった。


狂気と狂喜が泥のように入り混じった殺気が、全身を射抜くまでは――――


ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!

逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!

殺される!殺される!殺される!殺される!殺される!殺される!殺される!殺される!

霊感が、生物としての本能が、細胞の一つ一つが、最大級の警報を鳴らし続ける。それは普段相手にしている悪霊、妖怪、魔族といったものが放つ単純な殺気とは段違いに濃厚で、これから殺すことに何の疑いもない……ただただどこまでも純粋な狂気という殺気をぶつけてくる人間という同じ生き物。

そして……それは姿を現した。

それは頬に切り傷のようなものが数本ある以外、一見どこにでもいそうな神父の格好をした中年の男性だった。

もっとも、その両手に銃剣と呼ばれる異端を狩る刃を持ち、目に恐ろしいまでの狂気を含んでいなければの話だが……

「我らは神の代理人、神罰の地上代行者。我らが使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること――――Amen」

手に持つ銃剣を十字に合わせ、男性はまるで歌うように聖なる祝詞を告げる。

「貴様が美神令子か。法王猊下を愚弄した罪、十分に噛み締めて死ぬがいい」

法王……猊下?

とても人が出しているとは思えない重圧のなか、美神はその言葉を胸のうちでつぶやき、ある一つの可能性に行き着いた。

「まさか……ヴァチカンの……埋葬機関?」

ドカッ!!

美神が埋葬機関の名を出した途端、いつの間に投げられたのか、銃剣が美神の足元に深く突き刺さる。見れば、男は憤怒のような嘲笑のような微妙な表情を浮かべている。

「埋葬機関……だと?あんな、化け物を迎え入れる奴らと第13課を一緒にするな」

第13課―――

通称イスカリオテ機関

別名……狂信者の巣窟

埋葬機関とイスカリオテ機関。

ヴァチカンの誇る異端を狩る二つの最強戦力。

しかし、この二つは似ているようで決定的な違いがある。

それは……埋葬機関は異端を狩ることを第一に考え、イスカリオテ機関は信仰を第一に考えるという思想の違いだ。

たとえば、埋葬機関は異端を狩るためならば同じ異端者の力を借りることすらも容認する。例を挙げるならば現異端審問官第五位であり、死徒二十七祖二十位のメレム・ソロモンがそうだ。

対してイスカリオテ機関は法王の命令が無い限りは滅びることになろうとも異端の力を借りることは絶対にありえない。

他にもこの二つには違うところは数多くあるが、とにかく狂った狂信者と理解してくれればいいだろう。

その中でも美神の目の前にいる男は別格だ。

アレクサンド・アンデルセン神父

聖堂騎士アンデルセン
殺し屋アンデルセン
銃剣アンデルセン
首斬判事アンデルセン
天使の塵アンデルセン―――

数々の異名を持つイスカリオテ機関の……いや、ヴァチカンの切り札。

その戦闘能力は人の範疇を大きく超え、その身だけで位階級の吸血鬼すら始末するといわれる正真正銘の化け物。

ちなみにアンデルセンは先ほど埋葬機関に所属しているメレム・ソロモンを化け物と呼んだが、もし本人がここにいれば

「僕が化け物なのは認めるけど、アンデルセン神父とナルバレックにだけはいわれたくないね」

と、かなり真剣に反論していたことだろう。

話は戻るが、美神は体の表面に霊力をまとうことによってわずかながら殺気や狂気を受け流し、ようやく普段の調子で話せるようになった。

「それは悪かったわね……で?私に何のよう?少なくとも教会に殺されるようなことはしてないと思うんだけど?」

「ふざけるなよ売女。貴様が法王猊下に吐いた暴言。忘れたとは言わさんぞ」

(暴言?…………はっ!!)

その言葉にようやく美神は自分がローマ法王に対して「くそ坊主」呼ばわりしたのを思い出した。そしてそれと共に理不尽さが湧き上がる。

「ちょ、ちょっと待ってよ!たったそんだけのことで……!!」

言葉を言い切る前に殺気が、狂気が膨れ上がった。

実を言うと、美神は埋葬機関のことはある程度噂で聞いたことはあるが、イスカリオテ機関については名前を知っているぐらいの知識しかない。

もし少しでもイスカリオテ機関のことを知っていれば今のような発言は決してしなかっただろう。

相手の逆鱗に触れてしまう言葉を……

「それだけ?貴様は今、それだけと言ったのか?神の代理人で在らせられる法王猊下を侮辱したことをそれだけと言ったのか?」

顔を伏せ、一歩、また一歩とアンデルセンは美神へと近づき、そのたびに狂気に押され美神は一歩後ろに下がる。美神は優れた霊能者だ。だからこそ、わかってしまうのだ。アンデルセンから吹き出る狂気と殺気がどれほどのものなのかを……

「……シエルがここにいたな。ちょうどいい。本当にちょうどいい。貴様の穢れた魂を一片も残さぬように八つ裂きにしたあと、その肉片一つ一つに第七聖典を打ち込んでやる!!!」

狂気の咆哮をその場に残し、美神の視界からアンデルセンの姿が消えた。

「!?……っがは!?」

あまりにも突然の事態に反応し切れなかった美神にはなにが起こったのか理解できなかった。唯一わかったのは腹部に痛みが走り、体が5メートルほど後方に飛んだことだけ。

美神は激痛に耐えながら、ようやくなにがあったのか理解した。あの手に持つ銃剣で斬りつけられたのだと。もし強化セラミックのかたびらがなかったら、今の一撃で即死だっただろう。

それでも全身に激痛が走りまともに体を動かすことも出来ない。

「ふん!運のいいやつだ。だが、これで終わりだ」

アンデルセンは美神へとゆっくりと近づき、ゴミを見るような目で美神を見下ろすと神罰の剣たる銃剣を天に向かって振り上げる。

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

そして無慈悲にも神罰の剣が振り下ろされ、美神が死を覚悟したそのとき!


ドドドドドドドドドドドッ!!!!


「待ってくれぇぇぇ!!煉ちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!!俺と一緒にベストプレイスを探そうぜーーー!!」

「だから僕は男ですって何度言えばわかるんですか!?」

「男か女かなんて些細な問題だーーーーーーー!!!!」

「わーーーーん!!兄様〜〜〜!姉様〜〜〜!父様〜〜〜!
だれでもいいから助けてくださーーーーい!!!」


ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


「おお!ここにもメラかわいい子が!!!」

「にゃ〜〜〜!なんだ汝は!?妾に触れるでない!!」

「この変態ロリコンリーゼントが!!俺のアルに汚い手で触んじゃねぇぇぇぇぇ!!!」

バキッ!!!

「グハァァァァァァ!!!」


「…………」

「…………」

場に重い、言葉ではとても表現できないような重い沈黙が満ちる。

銃剣は美神まであと数センチのところで止まっていた。

無表情でアンデルセンは銃剣を引くと、今の振り下ろした勢いで少しずれた眼鏡の位置を直す。そして、仕切りなおしとばかりに改めて銃剣を振りかぶり、

「死ねぇぇぇぇ!!」

先ほどと比べると幾分か覇気が減った気がするが、再び銃剣を振り下ろす!が、


ドゴォォォォォォン!!!


「お待ちなさい!!今日という今日は引導を渡して差し上げますわ!!」

「へっ!!できるもんならやってみな!!ま、胸の大きさと性格が逆転してるようなお前には無理だろうけどね〜〜〜」

「な、なんですっ……」

ドゴォォォォォォン!!!

「ふふふふ……誰かしら?私の耳の届くところで胸の大きさを言う馬鹿な人は……」

「あ?なんだ、お前?って、うおっ!?いきなりなに「隙あり!!」くっ!?てめっ、阿重霞!!」

「そこの方、どうやら目的は一緒のようですし、共同戦線を引きませんか?」

「……いいでしょう。この人に女の魅力は胸じゃないということをたっぷりと教えてあげます!」

「お、お前らちょっと待っ……」

「問答……」「無用!!」


ドゴォォォォォォォォン!!!!


「…………」

「…………」

もはや語ることはない。だが、一つだけ。再び場に先ほどより重い沈黙がおとずれたことだけは告げておこう。

「……ふん」

そして何を思ったのか、アンデルセンは銃剣をしまい、選手専用の建物に向かい歩いていく。

「興がそがれた。だが、次は必ず殺す」

振り返ることもせずに淡々と告げるとアンデルセンは通路の奥へと消えて行った。残された美神は神通棍を杖代わりにして立ち上がると、アンデルセンが立ち去った通路を睨みつける。

「この私に……!絶対にこの借りは兆倍にして返してやる!!」

横島から何かあったときのためにと事前に渡されていた『治』の文珠を使いながら、美神は高らかに復讐を誓った。


「これが、魔神を倒したGSの一人か……無様なものだ」


そこに突然、何の気配もなかったはずの背後から声が聞こえてきた。美神は痛む体に鞭を打ち振り返ると、手に持った神通棍を声の主に向けて構える。

振り向いた美神の目に映ったのは、全身を黒装束で包み、奇妙な仮面を付けた男だった。

「あんた、誰?いつからそこに……」

注意力が散漫になっていたこともあるが、こうも簡単に背後を取られたことを内心で舌打ちし、美神は目の前にたたずむ男性に問いかける。

「……世界は今、一つの意志の元で動いている。この大会はその歯車に過ぎない……覚えておけ」

数瞬の沈黙の後に男性が告げた言葉は、美神の望む言葉ではなかったが、やけに美神の霊感に引っ掛かった。

「……どういうこと?あんた、いったい……」

「……………」

その言葉の意味を問いただすための美神の言葉に返ってきたものは沈黙だった。男はそれ以上何も語らず、美神に背を向けて誰もいない通路へと歩き出す。

「ちょっ、ちょっと!質問に答えなさいよ!」

「……お前はこの世界の運命を左右するカードの一枚……デスティニー・カードのクローバーのQ。生き残れ。終焉の日まで」

声を張り上げた美神の必死の気持ちに対する返礼なのか、男は立ち止まり、最後にそれだけ告げると今度こそ通路の奥へと姿を消した。

「……いったいなんだってーのよ!!」

わけのわからない展開が続いたため、美神の中に限界近く溜まっていたストレスは遂に怒声という形で通路に響き渡った。


あとがき

ご愛読ありがとうございました。

第二話のレスで言っていた通り、あとがきでは皆様が疑問に思うであろう箇所を解説していきたいと思います。

まず、一つ目ですが、覇道財閥、アーカム財団、クロノス、無限城の四つはこの世界でかなり重要なものです。なにが重要なのかは明かせませんが、このSSの三つある根本のうちの一つを担うとだけ言っておきます。

二つ目ですが、アンデルセンは他の異端、たとえばアルなどには試合で当たらない限り手を出しません。その理由もそのうち明らかにされますが、ヒントとして短編『神の使い』での最後のほうの台詞と本文にもあった『終焉の日』という言葉を上げておきます。美神を殺そうとしたのは……許容範囲の限界?ついでにアンデルセンのみならずイスカリオテ機関の人間は皆、埋葬機関を嫌っています。

それとアンデルセンとシエルには意外な接点を用意していますが、それが語られるかどうかは作者の私にもわかりません。もしかしたら設定と言う形で明らかにされるかもしれません。

最後に三つ目。黒装束の仮面の男ですが……わかりましたでしょうか?はっきりいって自身がないです。わかる人はわかる。わからない人はわからないというキャラなんで……一応、出資者のところでヒントは出しているんですが……

これ以外の疑問がある方には、出来る範囲でお答えしますので、感想よろしくお願いします。

次はようやく参加者が一堂に会しての選手紹介です。総勢四十八名……大変だった。長くはないんですが、纏めるのに苦労しましたね。速く投稿すると後で詰まると思いますので、一週間ほどたってから投稿します。

では次回、黄昏の式典 第四話〜運命の使者たち〜をよろしくお願いします。

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