古代ギリシャ神話にアテナという女神がいた。
アテナは神々の王、ゼウスの娘で全身に鎧をまとった姿で誕生した。
そう、アテナは戦いの女神だった。
しかし、アテナはみずから戦うことは好まず、その戦争はつねに守るための戦いだった。
凶暴で残忍なアレスとの戦い、巨人ギガースとの戦争、ポセイドンとの大地をかけた争い。
神々の壮絶な死闘は人間にとって気の遠くなるほどのながい年月つづいた。
しかし、その戦場においてつねにアテナのまわりを守る少年たちがいた。
「それがあなたたち、アテナの聖闘士?」
「ああ」
――――――――――――――――
「誰か居る…三人だな」
学校が終わり神代をふくめた三人で買い物に行き、彩雲寮(男子寮の和樹の部屋と女子寮の千早たちの部屋にはゲートでつながっている)にかえったとき、和樹が呟いた。
「住居不法侵入ですね」
「お姉ちゃん、私が警察に電話するね」
「ええ」
「んじゃ、入るかな」
和樹がドアを開くと炎が迫ってきた。和樹は無造作に片手を振りその風圧だけで炎を消した。
「…ここ、俺の部屋だよな」
「は、はい」
「間違いないはずです…」
和樹のお気に入りだった椅子の残骸、千早が和樹からもらって大切に育てていた植物の燃えカス、ボロボロになった神代が大好きだった獅子の描かれたカーペット、三人があがめていた粉々に砕けたアテナ神像。三人は大切にしていたものが破壊されたショックで固まっていた。
なんとかショックから立ち直った和樹と神代は自分たちの部屋で暴れているものの中に知り合いを見つけた。
「凜ちゃん!」
「玖里子さん!」
二人の声で三人は暴れるのをやめた。
「和樹さん…その横にいる女どもは誰ですか?」
赤い髪の少女が低い声で和樹に問いかける。
「君はだれだ?あ、玖里子さん、お久しぶり」
「ええ、久しぶり。ごめんね、この娘をおさえようと思ったんだけど部屋壊したらまずいと思って出力抑えて戦ってたら結局こうなっちゃった」
金髪のスタイルのいい女性が和樹に謝る。
「和樹さん!無視しないでください!」
「だから、君は誰?」
「私は宮間夕菜と言います。不束者ですが、よろしくお願いします」
「まるで、嫁入りするみたいな挨拶だな」
「嫁入りなんて…私たちは夫婦じゃないですか!」
夕菜の爆弾発言に和樹の思考が一時停止した。
「どうしてここに凜ちゃんがいるの?」
「そ、それは…」
小柄な少女に神代は問いかける。
和樹が再起動した。
「な、何の話だ!!俺は知らないぞ!」
「まさか許嫁とかじゃ!」
「そんな話はアテ…もとい母上から聞いたことない!」
和樹と千早が夕菜の言葉に混乱していると、その混乱の元になった少女が怒鳴ってきた。
「なんなんですか!その女は!出ていきなさい!!」
「出て行くのはあなたよ!勝手に人の家に上がりこんで人の部屋を…アテナ神像まで壊して、あまつさえ妻!?ふざけるのもたいがいにしなさい!!」
夕菜と千早の怒鳴り合いを横目に和樹と神代は玖里子と凜に訊くことにした。
「なるほど…俺の中に優秀な魔術師の血が流れていると?」
(親父め!孤児だったくせになんでそんなやっかいな家柄なんだよ!)
「一応、弁解させてもらいけど私はこ、恋……友達として大変な事になるかもしれないから、警告するためにきたのよ」
和樹の確認に頷きながらも玖里子は弁解する。
「私は…よく知らない者と結婚などしたくなかったので相談しようと神代さんのところにいきドアが開いていて無用心だなと思い、中で待たせてもらっていたら、突然鏡の中から現れた夕菜さんに襲われて応戦していたら、その…すみません!」
「つまり、私たちの部屋もこんな感じになってるってこと?」
「いいよ。二人とも、直してくれさえすれば」
「そういってくれると助かるわ。それはおいといて、和樹」
「はい?」
「なんで、山瀬姉妹の部屋とつながってんの?」
玖里子は大人の余裕を持った訊き方をしたが和樹に惚れている本人は気が気じゃない。
「そうだ。式森!神代さんに破廉恥なことをしたと言うならただではおかん!」
凜は刀に手をかけて言う。別に和樹にとって凜の斬撃など欠伸が出るほど遅いものだが、いらない事を言って話をこじらせないため黙っていた。
「やめなさいよ凜、和樹に怪我させたら一大事よ」
「とめないでください」
「和樹の本当の苗字は城戸よ」
ぴたりと凛の動きが止まった。
「き、城戸とはまさか、あの城戸ですか?」
「ええ、あの城戸よ」
和樹は財界にいるときは城戸を名乗っているがそれ以外は父方の苗字である式森を名乗っている。(聖闘士のときは星座が苗字みたいなものなので使わない)
凜がかたまったまま動かなくなった。
「えっと、神城だっけ?そんなにかたくならないでくれ、俺としては玖里子さんみたく友達として話してくれた方がいいし」
「話がそれたけど、和樹どうして一緒に住んでるの?」
「彼女たちとは小さいころからの知り合いで今でも世話になってるから」
従者だとばらせば、また面倒そうなので神代は黙っていた。
「ふ〜ん。そういえば和樹、日本語上手になったわね」
「いいかげん慣れましたよ」
「式森…城戸さんは日本人じゃないの…ですか?」
「いいよ、和樹で。俺、日系ギリシャ人だからな」
「で、では私も凜でかまいません!」
「和樹さん!私以外の女と話すなんて!浮気ですか!!うわきですね!?浮気者は死になさい!!!キシャーーー!!!!!!!!」
こちらに気がついた夕菜がSS級軍事魔法を放った。
「「「「これ以上壊すなぁ!!」」」」
和樹以外の全員が叫び、夕菜の魔法を全力で相殺した。
チャイムを聞き、和樹が歪んだドアを(無理矢理力ずくで)開けると警官が数人いた。
「不法侵入者がいたと通報かありましたが」
「はい、あそこにいる。赤い髪のやつです!」
「ひどいです!!和樹さん!私は妻だから許されるんです!」(許されません。犯罪です)
「あのような事を言っていますけど…」
「不法侵入と器物破損です。完璧な犯罪者です!奴の言う事なんて無視して捕まえちゃってください!!」
和樹はアテナ神像を壊された時点で夕菜を許す気などない。
「さあ、君くるんだ!」
「なんですか、あなたたちは!わかりました!あなたたちは私と和樹さんの愛を引き裂くためにきた刺客ですね!?死になさい!!キシャーーー!!!!」
このあと、機動隊までやってきてようやく夕菜はつかまった。
―――――――――――――――――――――
「あら、美味しいわね」
「ありがとうございます。そう言っていただけるとつくったかいがあります」
夕菜のことなど完全に忘れ、玖里子と凜が直した部屋(燃えた植物は弁償)で夕飯をご馳走になっていた玖里子に褒められ、千早は嬉しそうに微笑んだ。
「神代さん、私に料理を教えてください!」
「う、うん…いいけど」
(……家庭科の調理実習で軟体生物つくったんじゃなかったっけ、凜チャンって…大丈夫かな?)
凜の頼みに頷きはしたがはっきり言って自信がない神代。
―――――――――――――――――――
夕菜は宮間の力ですぐに釈放されたが、宮間には彼女の破壊によって何億もの被害額を払わせられた。
―――――――――――――――――――
「教皇に連絡してくれ、あんたの血のせいで楽しめそうだった学園生活が憂鬱になりそうだって」
<兄さん、何があったの?>
「言ったら、おまえまで巻き込みそうだから黙っとく」
<わかった、訊かないよ。今度はいつ頃、戻ってくるの?>
「長期休みになったらな」
<まってるね♪>
受話器をおいた和樹はため息をついた。
「そろそろ、兄離れしてくれないかな?クロードも…」
あとがき
前教皇を殺したアーレスです。次回から少しの間はオリジナルはひかえて、本編をやります。
キャラクター設定
紫春…ドラゴンの神闘士・紫龍と春麗の次男。天秤座(ライブラ)の黄金聖闘士。第七の宮、天秤宮を守護する。得意技は慮山龍撃掌・慮山龍飛翔・慮山逆鱗掌・慮山昇龍覇・慮山坑龍覇・慮山百龍撃。父の紫龍以上の生真面目な男。
クロード…ペガサスの神闘士・星矢と蛇使い座の白銀聖闘士・シャイナの息子。射手座(サジタリアス)の黄金聖闘士。第九の宮、人馬宮を守護する。得意技はアトミックサンダーボルト・インフィニティーブレイク・流星拳・サンダークロウ。和樹の弟。ブラコン。
アバン、ザイン…アンドロメダの神闘士・瞬とカメレオンの白銀聖闘士・ジュネの双子の次男と三男。双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士。第三の宮、双児宮を守護する。得意技はアナザーディメンション・ギャラクシアンエクスプローション・グランドブレイカー・ギャラクシーボム・ネビランストリーム。怠け者の兄がアバン、兄の言う事に逆らえない弟のザイン。両親と純、和樹だけが見分ける事ができる。
アーバレス…シャイナの弟子。牡牛座(タウラス)の黄金聖闘士。第二の宮、金牛宮を守護する。得意技はブルプレッシャー・ブルショルダー・マッシブブルプレッシャー・グレートホーン・サンダーホーン。歳は和樹たちとかわらないのにガタイのデカサと老け顔のせいで外見より10は上に見られる。
フレイ…キグナスの神闘士・氷河とナターシャ(漫画にしか出てこないキャラ、けっして氷河の母のことではない)の次男。魚座(ピスケス)の黄金聖闘士。第十二の宮、双魚宮を守護する。凍気で作り出したバラを操る。得意技はピラニアンローズ・ブラッティローズ・ロイヤルデモンローズ・ダイヤモンドダスト。自称、愛の戦士。神代に一目惚れし、アタックをかけるがすべて失敗している。
レス返し
>D,さん
キシャーとは初対面でした!
>kuesuさん
暗黒聖闘士なのにハーデスやアテナより強そうですね
>teteさん
デビルキシャーにならなきゃ夕菜じゃないですよ
>シンさん
パンドラ好きでしたし、彼女ぐらいしか一輝とつりあいそうな人思いつかなかったんです