黒い種 キラ君奮闘?物語
第25話 漢
バラディーヤ行政府。
現在は砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドの本拠地となっている場所。
キラ、フレイ、ルナマリア、カガリの4人はバルトフェルドの招待を受け、
この場所へとやってきていた(アフメドはカガリに帰らされた)。
「さぁ、遠慮せずに飲んでくれたまえ」
「いただきます」
テーブルに置かれたカップに手を伸ばし。それを口元へと運ぶキラ。
その独特な香りを楽しみながら一口、また一口とその飲み物、コーヒーを味わっていた。
「・・・これ、オリジナルブレンドですね?」
「おお、わかるかね!」
キラの一言にバルトフェルドが食いつく。
「ええ、とても美味しいですよ」
テーブルにカップを置き、笑顔でそう告げるキラ。
その言葉にとても満足そうに頷くバルトフェルド。
どうやら彼のコーヒーは仲間内ではあまり理解されていないらしい。
「でも、本当にありがとうございます。ルナを手当てしてもらって」
「気にする必要はない、当然のことだ」
先の銃撃で傷を負ってしまったルナマリア。
が、幸いにも怪我は軽く、今手当てを受けている。
何故かフレイとカガリまで連れて行かれてしまったが。
「・・・少年、一つ聞いてもいいかな?」
「なんです・・・か」
見上げたキラの顔が変わる。
バルトフェルドから笑みが消えていたからだ。
「君は・・・人を殺したのは初めてかな?」
「!!!」
ヒトヲコロシタ・・・
その言葉がキラの心に突き刺さる。
「・・・少年、君は自分のしたことが間違っていると思うかね?」
「・・・・・・」
「どうなんだい?」
「・・・・・・わかりません」
俯いたまま答えるキラ。
「あのとき、ルナが血を出してるのを見て、それで、急に頭が真っ白になって」
「・・・・・・」
「そしたら今度、アイツらが目の前にいて、それで」
「・・・・・・」
「何でルナに怪我をさせた奴らが生きてるんだって思ったら・・・・・・」
「・・・・・・殺していた、と?」
無言で頷くキラ。
体が小刻みに震えている。
「・・・あのとき、君は笑っていたな」
「!!!」
「・・・まるで人殺しを楽しんでいるかのように」
「・・・・・・」
「だがな少年、そう思っているのは君だけだぞ?」
「・・・・・・え?」
立ち上がるバルトフェルド。
そして自分の机の棚を開け、何かを取り出した。
それを持ってキラの元に歩み寄る。
「これで自分の顔を見てみたまえ」
そう言ってバルトフェルドがキラに手鏡を向ける。
そこに映っているのはキラの顔・・・
「あ・・・」
自分の顔を見て驚くキラ。
「人殺しが楽しいと思っているならば涙など出ないよ、少年」
自身でも気がついていなかった。
そう、キラは泣いていた。
ブルーコスモスを殺し、笑みを浮かべていたときからずっと・・・
「あ・・ああ・・・」
鏡を受け取るキラ。
また涙が溢れてくる。
「僕は・・・僕は・・・」
「・・・・・・」
「殺したく、なんか・・・なかっ、た」
「・・・・・・」
「う、う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
泣き崩れるキラ。
それを優しい瞳で見つめながら、バルトフェルドはそっとキラの肩に手を置いたのだった。
「・・・すみません、みっともない所をお見せして」
「気にする必要は無い」
ようやく落ち着いたキラ。
しかし、まだ表情は冴えない。
「少年、彼女たちが恐いかね?」
「え?・・・・・・ええ、怖いです」
再び声のトーンが落ち、しかし今度はまっすぐにバルトフェルドを見て答えるキラ。
「僕の手は血で汚れてしまった。まして、彼女たちの目の前で・・・それを・・・」
「・・・・・・」
「きっと・・・みんな僕のこと・・・」
「・・・ふっ、では少年、彼女達は僕が貰って良いか?」
「え?」
バルトフェルドの言葉が理解できないキラ。
キョトンとしてバルトフェルドを見る。
「だから、彼女たちを貰っても良いかと言ったんだ」
「あの、それって・・・」
「言葉どおりの意味だぞ、少年」
「・・・・・・」
自信満々なバルトフェルドに呆れるキラ。
が、すぐに表情が引き締まり、と言うかそれを通り越し、
「・・・・・・ふざけてるんですか?」
かなりの怒りを込めて問いかけるキラ。
勿論表情もかなりイイ感じになっている。
「ふざけてなどいないさ。
今の彼女達はきっと心に傷を受けているはずだからな。
そこに付け込めば簡単に堕とせるだろう」
「なんだと・・・!!!」
キラの顔が怒りで歪む。
しかしバルトフェルドは続ける。
「おいおい、どうして君が怒るんだ?君にはもう彼女達は必要ないんだろ?」
「何を!」
「彼女達は君のことを怪物か何かだと思うんじゃないか」
「!!!」
「そんな彼女たちと一緒になんていれないだろう?」
「・・・・・・」
「だから僕が貰って・・・」
プッツン・・・・
「ふざけるな!!!」
バルトフェルドの言葉を怒りの叫びで遮る。
そのままバルトフェルドを睨みつけるキラ。
「さっきから聞いてれば好き勝手なことぬかしやがって!!!
いいか、よく聞け!!!アイツらは俺にとって一番大事な物だ!!
それをテメェなんかにくれてやるわけねぇだろ!!!」
「ほぉ?」
「万が一アイツらが俺のことを恐いなんて思ってんならそれでも構わん。
二度とそんな考えが浮かばねぇ程徹底的に可愛がってやるだけだ!!!
俺以外のやつのことを考えれなくなるくらい徹底的にな!!!」
「・・・・・・」
「わかったらくだらねぇ事ほざいてんじゃねぇ!!!
今度俺の女に手を出すなんてぬかしやがったらマジで殺すぞ!!!
コラァ!!!」
感情のままにまくし立てるキラ。
今自分が何を言っているのかきっと理解できていないだろう。
「・・・君も言うねぇ」
「悪いか!!!」
「悪くは無いさ。ただ、これを見ても同じセリフが言えるかね」
そう言ってバルトフェルドが視線を逸らす。
すると壁の一部が開き、
「「「・・・・・・」」」
バツの悪そうな顔をした3人が出てきた。
「・・・・・・へ?」
いまだかつて誰にも見せたことのないであろうマヌケ面をしているキラ。
完全に思考が止まってしまったらしい。
「少年、実はそこの壁はマジックミラーになっていてな。
向こうの部屋からこの部屋の中が全部見えるようになっているんだ」
「・・・・・・」
「勿論会話も全て筒抜けだ、はっはっはっ・・・・・・」
「・・・・・・」
室内にバルトフェルドの笑い声だけが響き渡るのだった。
あとがき+レス返し
前半は良い話かと思ったら・・・な25話です。
バルトフェルドに踊らされるキラ。
何度も書き直そうと思いつつ、結局このまま投稿してしまいました。
一言、申し訳ありません。
何だか自分でもこの話をどうしたいのかわからなくなってきました。
しばらく旅にでも出ようかな。
また基地3人のこと書いてないし・・・
でも、別に出てこなくてもいいかな、なんて思い始めた今日この頃。
今回はレス返しは無しです。
理由を察していただければ幸いです。
イワッペ様・アイギス様・D,様・スロバ様・にゃんこそば!!様・セイム様・覇王様
レスありがとうございました。