中々見事に晴れ渡った空。
昼と言う時間枠から夜と言う時間枠へとお天道様がバトンタッチしかかっており、蒼から紫へとがんばって色変えを行っていた。
それでも、ああ今日も平和だったねぇ・・・等と漏らしてしまうほど澄んでおり、
つい一年程前にサイジェントやワイスタァンで大騒ぎがあった事なんか与太話にしか思えないほどだ。
そんな良い天気であった地平に、二人連れの旅人の姿があった。
二人は友達同士で、ちょっと前に“些細な事”で亀裂が生じていたが、現在はある銀髪少年の大活躍によって完全修復されている。
おまけにその少年は二人の共通の師の息子ときている。
親子二代に渡って恩義があり、尚且つ、二代に渡って自分らの街の救世主だ。
もう足を向けて眠れないと言っていい。
特に片方の青年・・・・・・槍を持って襲撃者と対峙しているウレクサに至っては、迷惑を掛け捲って刃を向けていたにも拘らず、幼馴染であり未来の義兄たるテュラムとの誤解を解いてもらい、大切な姉の呪いまで解いてもらっているので全くもって頭が上がらない少年だ。
夕食(3日続きのカレー)を作っている最中に襲撃された為、おたまで戦って三人を気絶させている青年・・・・・・サクロにしても、大切な友人であるウレクサとルマリを救ってもらった上、そのウレクサに対して暴言を吐いた“元”琥珀の鍛聖ルベーテに本気で怒っていた件の少年には好意以上のものもあったり無かったり・・・・・・・・・と色んな意味でタイヘンだった。
ハッキリ言ってかなりの数の襲撃者であるが、二人は全く気にせず呑気に掛け合い漫才に近い緩和を続けていた。
そいつらが“いらん事”いうまでは───
「さっきから、ごちゃごちゃと理屈っぽい会話しやがって。いいだろう。教えてやる・・・・・・・・・どうせお前らが今から帰っても間に合わねぇんだからな。いいか槍使い・・・・・・いや、ウレクサ! お前は所詮、保険なんだよ、今頃はワイスタァンで、本命の方の鍛聖のガキが俺達の仲間にとっつかま・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
男は最後まで言えなかった。
明らかに空気が変わったからだ。
サクロの方は、料理の邪魔だと纏め上げていた髪を下ろし、おたまを鍋に入れて剣を抜き、
ウレクサの方は今までの顔つきから冷徹な仮面の様になっていた。
「え、えと・・・・・・?」
怯える襲撃者。
だが、全ては遅きに遅しであった。
「お祈りは済ませたかい?
物陰でガタガタ震える準備はOK?
失禁を誤魔化す為のオムツ穿いたかい?
戒名と遺言状は用意したかな?
安心したまえ、確実にヌッ殺してあげるから」
「まぁモチツケサクロ。
ところでお前ら“串刺し公”という人物を知っているか?
そいつが敵に対してどういう事をやったかを・・・・・・
ああ、辞書をひく必要は無いぞ。
どうせそいつが居るのは地獄だ。
すぐに会える」
二人は、殺る気満々だった。
「ま、まて!! お前ら仮にも鍛聖だったんだろ?!
簡単に殺生していいのか?!
バチがあたるぞ!!!」
言葉がムチャクチャであるからよっぽど必死である事が見て取れる。
かと言って、この二人が耳を貸す訳が無い。
「気にするな。
ここは大平原だ。
埋めてしまえばバレやしない」
「うん。大抵の事なら笑って許してあげられるけどね。
事がクリュウ君の話だからね・・・・・・・・・手加減する気が起きないんだ。
悪いね」
「あ、あの・・・・・・・・・・・・」
「「お前らに送る言葉は一つだけ。
この言葉を受け入れて成物しろ。
Da――――――i!!」」
「「「「「「「「あんぎゃああああああっ!!!」」」」」」」」
────────────────────────────────────────
──妖姫新妻(未定)奮戦記──
SUMMON NIGHT−CRAFT SWORD STORY−
AFTER
V(みぃ♪)
─────────────────────────────────
ん・・・・・・・・・・・・
あ、朝ですか・・・・・・・・・・・・?
いけないいけない。クリュウさまの朝ごはんを作らないと・・・・・・・・・
寝不足の為かどうかよく解かりませんけど、何だか重い頭をふって身体を起こそうとしますが、私―――シュガレットの身体は動きません。
むむ? これはどういう事でしょう?
サナレさまかコウレンさまが私を呪殺しようとシルターン渡来の呪いの藁人形とかを使用しているのでしょうか?
確か・・・牛の濃く(注:丑の刻です)参りとか言うのでしたね。
でも、呪われているにしてはあたたかくて気持ちが・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
頭が段々とハッキリしてきて、状況が何となく解かってきました。
そりゃ動けないのも道理です。
私はガッチリとクリュウさまに抱き締められているのですから・・・・・・・・・・・・
って、何ですか――――――???!!!
おまけに私は素っ裸?!
ああん♪ クリュウさまも裸だから裸のお付き合い☆
なんて、言ってる場合じゃありません。
兎も角、私はクリュウさまを起こさないように何とかクリュウさまの腕の中から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
って、なんで出なきゃいけないのでしょうか?
ふと自分の胸元を・・・・・・というか、胸を見てみるとバッチリ虫に刺されたような跡があります。
もーどう考えてみても、これはクリュウさまとヤりまくっ・・・・・・じゃない、睦み合ったとしか思えません。
そして、もぞもぞとお尻を動かしてみると、物凄い違和感がありました。
これは・・・・・・・・・
ウワサに聞く、何か挟まっているような・・・・・・ってヤツっスか?!
そんな事をきゃー♪きゃー♪と考えていると、どんどろどんどろ思い出してきました。
夕べ・・・・・・・・・・・・
私とクリュウさまが何を・・・・・・・・・
ううん、どういう風にまぐわ・・・・・・・・・もといっ、一つになったか・・・・・・・・・・・・
ぷしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ
いきなり頭がタタラ(注:鍛冶師が使う炉の事)の様に熱を持ちました。
あ、ああ、私って・・・・・・・・・ううん、クリュウさまも、
なんてケダモノだったのでしょう!?(ぽっ・・・)
自慢じゃありませんが、私は全くの初心者若葉マーカーで、“乗せた”のも“乗った”のもクリュウさまが初めてです。
でも、ヤリ方・・・・・・もとい、女性の嗜みとしての知識は持っていました。
その知識と照らし合わせても、夕べのは・・・・・・・・・・・・・・・濃厚過ぎです。
たった一晩です。
解かります? 私の身体は、たった一晩で“初めての場所”が無くなってしまったんですよ?
どーりで、胸もがびがびしてますし、顔も何かぱりぱりします。
後も・・・その・・・ひりひりしてますし・・・・・・・・・
前に至っては・・・・・・・・・・・・・・・
その、クリュウさま? そろそろ起きてくださいませんか?
その〜〜〜・・・・・・・・・ええと・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そろそろ起きて“抜いて”ほしいんですけど〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・
ああ、勿論、クリュウさまがこのままがいいとおっしゃられるのでしたらかまいませんわよ?
私はクリュウさまのモノですし〜♪
でも、幾ら明け方までしまくってたとはいっても、そろそろ“抜かない”と“ふやけて”しまいます。
それに、夕べのベット運動がスゴイものでしたから、ご飯もちゃんと食べないといけません。
私は良いとしても、クリュウさまが大変なのです。
お疲れでしょうし・・・・・・・・・(ぽっ)
生皮を剥がされる様な気持ちで私を抱き締めるクリュウさまの手をどかせます。
「う・・・ん・・・・・・シュガレット・・・・・・・・・」
はっとしてクリュウさまのお顔を拝見します。
・・・・・・・・・・・・・・・どうやら寝言のようでした。
ああ、ビックリした。
でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・♪
夢の中まで私といっしょデスカ〜〜〜〜〜〜〜〜?
いやん♪ クリュウさま。
今夜もご奉仕はおまかせくださいませ♪
夕べの如く、ゴクゴクしてさしあげますわ♪
涙にくれつつ、恐れ多くも畏くも、偉大なる愛するクリュウさまの手をどかし、今度は身体を・・・・・・・・・・・・・・・・・・
うっ 中々ぬけない・・・・・・・・・・・・・・・
私は水の精霊の一種ですから処女膜なんてありません。
ですから、初めて身体を重ねた時にも苦痛もありませんでした。
圧迫感と異物感は凄かったですけど・・・・・・・・・
兎も角、初めてヤった事ですが、思ってた以上に上手くデキたという訳です。
抜き差しならぬ・・・・・・なんて言葉もありますが、抜かれるは刺されるは、蹂躙されるは、攻めさせられるは、転がされるは、四つん這いにされるは、片足上げさせられるは座らされるは・・・・・・・・・でタイヘンでした♪
それは兎も角として、こんなにキツキツで“みっちり”ぴったりジャストフィ〜〜ットされると、どーも・・・・・・・・・
「あン☆」
いきなり声が跳ねちゃいました。
私の中でビクンビクンと動くんですもの。これが噂の“もーにんぐ・すたんど”ってやつですね?
ダメですのクリュウさま☆
今の私はちょっとした刺激でも・・・・・・やぁン♪
私のカラダは一晩でクリュウさまにカスタマイズされちゃったのでした。
やっぱ流石は鍛聖さまってコトっスね。
でも、それでしたらあの“得物”はなんでしょう?
槍・・・・・・・・・う〜〜ん・・・・・・ちょっと違いますわね。
どちらかと言いますと・・・・・・ドリル?
そう・・・まるで最凶のドリル<プラズマホーン>の様に、凄まじい攻撃力で抉るだけ抉ってくださいましたし・・・・・・
大体、クリュウさまだっていけないんです。
何なんですか“アレ”は?!
こんなに愛らしくて美少年でそれでいてまったりとして・・・(超・中略)・・・・・で、優しくて麗しい方でらっしゃるのに、“ソコ”だけ超兵器超凶器なんて蝶・反則・・・・・・じゃない、超反則ですわ。
いえ、その・・・・・・・・・イヤって訳じゃないのですけど・・・・・・・・・癖になりそうで・・・その・・・・・・
あ〜〜んっ!! そうじゃなくて!!
起きてくださいクリュウさまぁ!! お仕事に遅れちゃいま・・・・・・
「しゅがれっとぉ〜・・・・・・」
スリスリ・・・・・・
あ、やン☆
「ん・・・・・・スゥ・・・・・・」
あ゛あ゛あ゛・・・・・・っ!! クリュウさまの熱い息が耳元にぃ〜〜〜〜〜っ!!!
「はむ・・・・・・」
もごもご・・・・・・
み、耳たぶダメで・・・・・・・・・・・・くふぅ・・・・・・・・・
あ・・・・・・・・・ですからぁ・・・・・・
ち、違っ、それ・・・・・・・・・っ!! 寝ぼけないで・・・・・・って、ゆ、指ぃ〜〜〜っ!!
噛んじゃイヤで・・・・・・ああっ
あふぅっ
ん・・・・・・・・・っ
ま、まぁ、いいか・・・・・・・・・・・・・・・あぅう〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日はお休みだって言ったじゃないか」
「そうでした・・・・・・申し訳ありませんクリュウさま」
「ううん。いいよ。シュガレットも疲れてるみたいだし」
そう言って自分のパートナーを労わる銀髪の少年。
史上最年少の鍛聖、クリュウその人だ。
相手は彼にとって半身と言って良い護衛獣、サプレスの水の妖姫シュガレットだ。
何だか疲労気味の彼女は心なしか力なくふよふよと浮いて、大切な御主人様の朝食――いや、時間的には昼食だが・・・――の後片付けに入っていた。
ウッカリと行為に酔いしれ、気が付くとお昼になっていた。
考えてみれば、クリュウと絡み合ったのは夜の帳が街を包み込んだ直後。
気を失った時に朝日が眼に入ったのは覚えている。
そして何時もの出勤時間手前に目が覚め、クリュウの甘い戒めから逃亡するのを断念して昼まで腕の中にいた。
夕べの途轍もない疲労からだろうか、ちゃっかりとクリュウは昼まで起きてくれなかったのである。
まぁ、寝ぼけていろいろされてた気もしないでもないが、外見はなんか弱っちいクセに中身は鍛冶師の頂点位置。
この街最強の七人の内の一人である。
当然ながら体力もシャレにならないのであるから、元気に寝ぼけてくださったのであろう。
反対に異界の住人であるシュガレットの方が体力尽きてタイヘンだったりする。
その少女の胸元に、蒼く輝くものがあった。
深い海の蒼の色を醸し出しているその装飾品、
水しぶきか波を模した銀細工に包まれている蒼い石。
丹精込めて磨き上げられた深海の鉱石をはめ込んだ、シンプル且つ美しい装飾のブローチだ。
クリュウの作品で、シュガレットに対する感謝の想いの結晶だ。
ボクと一年間苦楽を共にしてくれてありがとう―――
これからも、ずっと一緒にがんばろうね―――
その想いがギュッと詰まった国宝級の宝石。
大切な宝物であるからおいそれと出して置きたくないのであるが、それでも胸に着けて見せびらかしたい気もする。
へへんっ♪ どーでぃテメェら。
このブローチ、クリュウさまが私の為“だけ”に作ってくれたモンだぜぇ〜?
見るな触んな、穢れるわアホ!!
私だけの宝モンじゃ。
わははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
て感じか?
何となくガラが悪いよーな気もするが、気分的にはこんなモンだ。
夕べの睦事、そしてそのブローチの件が交じり合い、シュガレットをキケンなレベルにまで浮かれさせていたりなんかするが、幸いにもクリュウの世話を焼く事と、クリョウに迷惑を掛けないように行動する事はデフォなので皿を割ったり、味付けを間違えたりはしていない。
もう一つシュガレットにとって救いがあった。
それは・・・・・・
「ねぇ、シュガレット」
「はい。何ですか?」
「ナツミさんが来るんだって」
「ナツミ・・・・・・さま?」
誰? という顔のシュガレット。
いや、誰やねんっ!! その名前!? 女け?!
という嫉妬バリバリの心を顔に塵ほども表していないのは感嘆に値する。
「忘れたの? ホラ、サイジェントの・・・・・・」
「え・・・・・・?! ああ、『勇者様』の・・・・・・」
ぽんっとシュガレットが手を打つ。
カグロ火山の調査の一件を思い出したからだ。
あの時、初めてルベーテと対峙したのだ。
尤も、冷静に考えてみるとあの時ですらクリュウが負ける公算は低かったりする。
はっきり言って、地下で遭ったキリンの方がずっと強かったよーな・・・・・・・・・まぁ、今更であるが・・・・・・
兎も角、ナツミという少女は、その時に出会った、サイジェントにいる“異世界の勇者”である。
かなり強力な召喚師の力と戦士の力を併せ持ち、強い意志を持って戦う彼女の姿に、流石は勇者と言われるだけはあると感心したものだ。
そのナツミが一年という時を経て会いに来ると言うのだ。
『・・・・・・はっ?! まさか、ナツミさま。
愛らしくも麗しく、そして逞しいイカス美少年クリュウさまを我が物にせんと画策し、侵略行動に打って出たのでは?!
確かに、将来超有望株、鍛聖頭筆頭候補No.1のクリュウさまを我が物にすれば必然的にサイジェントとワイスタァンをモノにするも同じ!!
・・・・・・恐ろしい・・・・・・恐ろしいですわナツミさま・・・・・・・・・
無血侵略と言う訳ですね?!
犠牲は御自分のお身体だけで済みますし・・・・・・・・・・・・・・・
ハッ?! 違いますのね?!
実はその侵略行為はクリュウさまを陵辱する為の口実なのですね?!
成る程・・・・・・二つの街を占拠すると見せかけて、本来の行動『クリュウさま陵辱支配調教計画』を実行なさるのですね?!
く・・・・・・っ!! なんて鬼畜な・・・・・・・・・
鬼!! 正に鬼畜生に劣る行為・・・・・・・・・・・・』
「・・・レット」
『こ、これは早急に手を打たなければ・・・・・・・・・』
「ねぇってば・・・・・・」
『ああ、でも、私はクリュウさまの所有物。
焦る必要は・・・・・・・・・ああっ!! でもクリュウさま以外の命令を受けるなんて屈辱ですっ!!』
「シュガレットッ!!!」
「きゃあっ!!」
ハっと我に返る少女。
スープも湯気を立てたまま。
ムニエルもまだ熱い。
時間的には短かったのであるが、意識的には行くトコ行ってた気がする。
「どうしたの? やっぱり疲れてる?」
「い、いえ、その・・・・・・」
流石にアホ妄想に入っていたとは言えない。
実際、シュガレットらはあの事件以降もサイジェントの噂を良く聞いており、彼女にはちゃんと想い人がいる事を知っている。
知っているのにスカっと忘れてイヤンな妄想かましてしまうのはシュガレットらしいと言えなくも無いが、それでも1%程度の可能性でも危惧するのも女心と言うものだ。
当然、クリュウには計り知れない。
ぴと・・・・・・
「あ・・・・・」
「うん。熱は・・・・・・あれ? 上がってきた?」
少女の額に手を当ててみると、どんどん熱くなってくる。
熱は熱でも“おネツ”なのであるが、恋愛経験がスカスカのクリュウが知る由もないし、朴念仁且つ野暮の骨頂とまで言われている所以といえる。
そのわりに女心にヒットさせるのであるから危険度はシャレにならない。
「ク、クリュウさま・・・・・・・・・」
「ん?」
きゅ・・・・・・
と抱きつくシュガレット。
以前であれば真っ赤になって慌てまくる少年であろう。
だが、今の彼は一夜にして変化を遂げている。
「どうしたの? 夕べの・・・・・・まだつらい?」
おっそろしく極普通に接するクリュウ。
そう、シュガレットにとっての救いは、クリュウの接し方が極普通のままだという事である。
尤も、あらゆる面で極普通なのはちょっと哀しいが、お互いが真っ赤になったりすると何か気まずくなるので丁度良いと言える。
確かに、今までかなりシュガレットは大胆にクリュウにアタックを掛けていた。
だが、いざ関係を持ってみると、多幸感と歓喜で最愛のクリュウを見ると二の句が出ないほど照れまくってしまうのである。
確かに、いくら女を知ったからとは言っても一晩でイキナリこんなに変わられたら戸惑いはある。
それより何より、どうして唐突に夕べ関係を持ったのか理由が解からない。
だが、心の奥から“気ニシナクテイイヨ”と自分を無理矢理納得させるものがあり、シュガレットはその声に逆らえなかった。
実はクリュウもそうなのだ。
今のようにシュガレットの顔を優しく撫で、抱き締め、唇を重ねる事が“普通”だと何故か理解している。
一緒に寝台を共にし、獣の如くお互いの身体を貪るのは“当然”だと“知っている”。
朝目覚めた時、腕の中で真っ赤になっていたシュガレットを絶頂に導くのは“必然”である事も・・・・・・
何か変だなぁ・・・・・・等という気がしないでもないが、シュガレットの事が大切である事には全く変わりはない。
かの大聖霊パリスタパリスと戦う時、氷の大聖霊キュハイラの申し出・・・・・・シュガレットを武器に作り変えるというものを躊躇無く即答で拒否した。
当然ながらそっちは苦難の道だ。
対パリスタパリス様の武器ではなく、父の剣四本を纏めあげて生み出した黒鉄の武器で戦う事となったのだ。
だが、迷いは全く無かった。
確かに、送還の武器を持ってすればパリスタパリスは倒せるかもしれない。
だが、その後、自分の横には彼女は居ないのだ。
苦楽を共にし、今まで一緒にがんばってきた水の妖姫シュガレットの愛らしい笑顔が無いのだ。
そんな未来に自分の笑顔は無い。
クリュウはキッパリと拒否した。
尤も、その事は父の臨む形であり、シンテツは自分の魂で生み出した武器を持ち、護衛獣の犠牲というもの由としない息子を期待していたのである。
結果は父の期待通り。
クリュウはシュガレットと力を合わせてパリスタパリスを倒し、昔の穏やかな心を取り戻させて、街を襲っていた事件を手を取り合って解決させた。
正に父の思い描いていた通りのハッピーエンドだ。
だからクリュウも生死を分かち合っていたシュガレットの事が大切であり、受け入れてくれた事を感謝して止まない日々を送っている。
そして夕べ―――
確かに変ではあるし、イキナリの自分の行動に戸惑いがある。
だが、間違いを犯したという気も更々起きなかった。
大切な女の子と一緒に居られるのだから、それを間違いだなんて思う訳が無いのである。
そして―――
ちゅ
「ん・・・・・・ク、クリュウさま・・・・・・・・・?!」
「いや? イヤだったら止めるけど・・・・・・」
そう言われ、真っ赤になって俯くシュガレット。
「ず、ずるいです・・・・・・そんな風に言われたら・・・・・・・・・シュガレットは拒否できません」
「あ、拒否したかった?」
「ち、違います!! 全く持って間違いです!! 私はクリュウさまのものですから、クリュウさまの・・・そのお好きに・・・・・・」
「うん。でも辛かったら言ってね? 約束だよ?」
「ハイ・・・・・・・・・」
カタン・・・・・・とスプーンが皿からテーブルに落ちる音がした。
だけどそんな音はもう二人は全く気にならない。
何か、すはすはと乱れた呼吸と湿った音の後、その姿は寝室へと消えていった。
『ああ、アマリエさま・・・・・・・・・・・・
私達の結晶をお見せできるのは必要以上に早い気がします・・・・・・・・・・・・』
等と考えているシュガレットと共に・・・・・・・・・・・・
「ああ、そうだ。
今晩ラジィが泊まりに来るんだって。親方がそう言ってたよ」
「うそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!
もっと早く言ってくださいよ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
流石に今晩も・・・・・・はムリの様だった・・・・・・・・・
その日――
正確に言うと、新米鍛聖と妖姫が初めて同じ寝台を共にした正にその夜。
夜の街を金の髪の少年が走っていた。
その少年は十人の女性がいれば十人が美形と言い、十人の男達がいれば十人がナマイキだとやっかむ少年だ。
金の匠合の長であるリボディと髪の色以外の相似点が見当たらず、母親の遺伝子の強さのお陰だろう、町一番の美形であり、且つ“魔人槍”を除けば街一番の槍使い。
帝王の威厳を持ち、天才の名をほしいままにし、次期鍛聖の誉れ高い少年。
金の匠合の長の一人息子、ヴァリラである。
最近、どうもワイスタァンの名を騙って武器の密輸を行っている輩があり、その調査に出ていたのだ。
大体の見当は付いており、その相手は船を使用してどの船を使っているのも解かっている。
非常に解かりやすい相手だった。
まるで自分が誰の派閥であるかを誇示しているかのように・・・・・・・・・
まぁ、その船の名義があの元琥珀の鍛聖ルベーテとなっている時点で解かり易いと言える。
父親は金の匠合だけで解決せよといっていたが、確実性と合理性を欠いていたのでヴァリラはこれを却下。
確実性と合理性ある策をとった。
が、
『いかんな・・・・・・船の外に出ていたのは雑魚ばかり・・・・・・となると船に戻ったという事か』
そこだけは呑気に浮かんでいる船に眼を向け、初めて愚痴を言葉に出した。
「船に行けば良かったか・・・・・・・・・選択をミスったな・・・・・・」
船の上、
怪しい黒覆面はその人物と対峙していた。
黒覆面の腕から静かなモーター音がし、その腕に装着しているのがドリルである事が直に理解できる。
機界ロレイラルの技術を取り入れられて造られた回転するスパイク。
それがドリルである。
耳を澄まさねばそれと解からないほどのモーター音から、その覆面の者が握っているドリルが相当な業物であると知れた。
が、
今回は相手が悪かったのかもしれない。
確かにモーター音は静かであるが、時折異音が混ざり、ザリッザリッと止まり掛けている。
覆面の不審者にしても意外な出来事であった。
これほど手古摺るとは塵程も考えていなかったのだ。
尚且つ相手の“ドリル”は無傷といってよい。
その相手―――
その右手に握られているモーターは不審者とまるで別モノ。
凄まじい回転率で快音を響かせ、空気の壁すら貫通するかのようなパワーを感じさせていた。
「ほれほれ観念したらどないや?
あんた程度やったら、この街にぎょうさんおんで?
そのヘッポコドリル投げ捨てて手ぇあげてこっち来たらどないや?」
その少女のような声にはカッとした。
自分持つドリルには誇りがある。
尊敬し尽くしている師匠の作。それを改造した物なのだ。
ヘッポコ扱いは許せない!!
カッとして我を失ったその不審者は、ドリルの回転率を上げて構える。
だが哀しいかな相手もドリルならエキスパートなのだ。
ダンッ!!
相手が突進攻撃をしてくることは先刻承知である。
ひょいとサイドにかわし、その半壊しているドリルに自分のドリル・・・・・・超高速回転させている<火炎ドリル>でスピン攻撃を掛けた。
ギュイイ・・・・・・ギギギギギ・・・・・・バギンっ!!
あっさりと木っ端微塵。
だが、流石に回転率の差か、不審者は衝撃で吹っ飛んでしまい、海に真っ逆さま。
ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・
「うっそぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
どっぼぉおおおんっ!!
慌てて駆け寄る人影。
街灯に浮かび上がったその顔はまだ十代半ば。
眼鏡を掛けたおさげの美少女である。
「あっちゃあ・・・・・・やってもた・・・・・・」
「お姉様・・・・・・やり過ぎですわ」
溜息混じりにつぶやいていたその少女の背後にその声が掛かった。
声の声質はほぼ同じであるが、口調がまるで違う。
お姉さまと言われた方はヘンな訛りがあるし、言った方は馬鹿丁寧だ。
だが、姿を見ると二人の関係が解かる。
装備している武器と襟などの色以外の相違が殆ど見られず、身長から何まで見分けが殆どつかない。
そう、二人は姉妹なのだ。
「悪い思うけど・・・・・・まっさか、うちがバリアウエポンかけとるって気付かヘンほどヘボやったとは思わなんだやろ?」
「正確には私がお姉さまにかけたのですが・・・・・・そうですわね。
クリュウさまはあの試合中、私達が何かをする前にお気付きになられてましたのに・・・・・・」
ポ・・・っと若き鍛聖を思い出して頬を染める。
「せやな・・・・・・ほんでも、クリュウはんと“あんなの”と比べるんは失礼とちゃうか?
うちらやったら二人がかりでもクリュウはん相手に一分ももたんで?」
「・・・・・・それ以前にクリュウさまに対して手を上げるなんて恐れ多いですわ」
「せやな・・・」
ポポ・・・っと赤く頬を染める双子。
仕事が終わっていないと言うのにエライ余裕である。
この二人、鍛聖選抜の試合のおり、散々クリュウを挑発していたのに結局は敗北し、彼の、
「ボクは君たちを守る為に生まれてきたんだ(注:彼女らの記憶ではこう言っていた“らしい”)」
というナイス無くどき文句にコロリと逝ってしまい、現在も虜状態なのである。
その時のクリュウにそんな事言う甲斐性があるかどうかは甚だ疑問であるが、彼女らにとっては激しく口説かれたという素晴らしい過去。
いつ愛しのクリュウ様から、
『これ、今宵の夜伽を命ずる。近こう寄れ』
と言われないとも限らない(マジか?)。
だから毎日腕とカラダに磨きをかけているのだ。
因みに彼女らの使用していたドリルもクリュウが秘伝を与えたもので、地下で手に入れたとの事であった。
『オレはお前の為にコレを取って来たんだ。オレの想いを受け取ってくれ(歯がキラン☆)』
『僕は、君にこれをあげたいんだ。でも、等価交換だよ・・・・・・君が・・・・欲しい・・・・・・(歯がキラリーン☆)』
上が姉の記憶、下が妹の記憶である。
えらいビミョーに違う気がしないでもなく、クリュウがそんな事言うかなぁ? 等と疑問の声も無いではないが、二人にとっては真実だ。
「さてと・・・・・・ほな帰ろか? ボスキャラもおらんみたいやし」
「ですね・・・・・・私達に恐れをなしたのでしょうか?」
「あんなザコ用心棒置いとく位やからなぁ・・・・・・案外そーかもしれへんで?」
「ですわね。
では、金の匠合の皆様にこの船を渡して帰りましょう。
睡眠不足は美容の敵ですわ」
「せやな」
等とほざき、とっととバトンタッチしに行く二人。
この時間のお陰で不審者は流されて発見されずに済んだ訳であるが・・・・・・
哀れ不審者――ルベーテの愛弟子と言う技量に全く気付かれず、魚にツンツンされながらザコとして流されてゆくのであった―――
〜POSTSCRIPT〜
ご存じない方もいらっしゃるでしょうけど、この作品は小説版を再構成しています。
小説版ではプラティとシュガレットで、誰エンドかは不明です。
サクロが旅立っているからサクロっぽいですけど、ヴァリラもあやしいし、シュガレットとの同性エンドくさくもあり・・・・・・でしたw
ともかく、強敵のピ○ルは一気にザコ堕ちですw
私がパリスタタパリス倒したのは84レベルでしたが・・・・・・超楽勝でしたw
皆さんはどうでしたか?
恐らくこのままのペースではラジィ→サナレの順でしょうねw
では、ちょっち仕事忙しいですけど、また書いてみます。し〜ゆ〜♪
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