黒い種 キラ君奮闘?物語
第18話 生まれて初めての敗北
〜 シン side 〜
「ヤバイ! 行き止まりだ!」
警官の押しかける部屋から何とか脱出したシンとマユ。
街中を逃げ回ること10分。
袋小路へと入り込んでしまい、ついに追い詰められてしまった。
「追い詰めたぞ、シン・アスカ!」
唯一の逃げ道を塞ぐ警官隊。
当初は10人に満たない数だったが、いつの間にか30人ほどに増えていた。
「お兄ちゃん・・・」
シンに抱かれているマユが、不安そうな表情でシンを見る。
シンも何とか笑みを浮かべて安心させようとするが、状況が状況だけにそうもいかない。
まさしく絶体絶命であった。
「何だってんだよ! 俺が一体何したって言うんだ!!!」
悲痛な表情で己の感情をぶつけるシン。
しかし、
「・・・何もしてないと・・・言うのかね・・・君は?」
警官達が小刻みに震えだした。
といっても、別に恐怖で震えているわけではない。
湧き上がる怒りを堪えているのだ。
病院送りになったチンピラ3名。
逃げる途中にシンが張り倒した警官13名。
(内訳として重傷者12名、軽傷者1名)
これで何をしたんだと言われればそりゃ怒るだろう。
「・・・ともかく、大人しくしてもらおうか」
青筋を立て、スタンガン付きの警棒を構えた警官達がゆっくりと近づく。
1対1が30回ならばまだしも、30人が同時に襲い掛かってくるのだ。
さすがのシンも、マユを守りながらでは勝つ見込みはない。
「クソ・・・」
マユと警官たちを交互に見るシン。
やがて覚悟が決まったのか、マユにトランクを渡し一歩前に出る。
そしてファイティングポーズをとった。
「やれるだけやってやる! かかって来い!!」
そんなシンの変化に警官たちも歩みを止める。
やられた13人の光景が浮かんでくるのだろう。
だが戦意は消えていない。
何かあれば一気に突撃するつもりらしい。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
睨み合う両者。
そしてその沈黙を破ったのは、
「お兄ちゃん、あれ何?」
空を指差す、マユの言葉だった。
「ストライク・・・キラさん!」
それを見て歓喜の声を上げるシン。
そう、そこにあるのは白いモビルスーツ。
彼が忠誠を誓った人物、キラ・ヤマトの愛機ストライクであった。
が、
「そこにいたのか、シン」
ゾクッ!!!!!!!!
「「「!!!!!!」」」
「?」
ハッチが開いたその瞬間、マユを除く全ての人間に悪寒が走った。
いや、悪寒と言うレベルではない。
完全に体が硬直してしまっている。
「よ・・・・・・っと」
空中で留まったままのストライクからキラが飛び降りる。
20mの高さもなんのその、華麗に着地する。
そして、空気が凍った。
「・・・・・・」
そこにいるのは間違いなくキラである。
ときに(彼を慕う女性にだけ)優しく、ときに(機嫌を損ねた時など)厳しい(と言うか黒い)という(ある意味)立派な16歳の少年。
「・・・・・・」
だが、ここに立っているキラは普段と違う点が一つあった。
彼の周囲。
そう、彼の周囲を黒いオーラが取り巻いているのだ。
え、黒いオーラなら結構あるじゃないか!
と思っている皆さん、それは違います。
普段のものはあくまでも他人がそう感じたと言う抽象的な例えのようなものです。
ですが今の状態は黒いオーラそのもの。
つまり、黒いオーラが具現化しているのです。
以前破壊神化したときを2倍カイオ○ケン(龍玉参照)だとすると、今は10倍くらいかな?
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「?」
誰も何もいえない。
て言うか動くことさえ出来ない。
状況がわからず(黒オーラが見えていない)マユを除き、全員が完全に掌握されているのだ。
「シン・・・」
「(ビクッ!!!)・・・・・・は、はい」
キラの意識が自分に向いていると言う事実だけで気絶しそうになる。
現に今、シンは意識が飛ばないようにするので一杯一杯だ。
「君のゲイツも持ってきてるから、その子・・・マユちゃんだね。
マユちゃんを連れて先に脱出しててくれ」
「え・・・あの・・・でも・・・」
「あ、これ使って」
そう言って、シンに向かってチップのようなものを投げるキラ。
先程使用したバリア発生装置よりも若干大きい。
「・・・あの・・・これは?」
「重力制御装置だよ。
赤いボタンを押せば、10秒だけだけど機械の半径3m以内を無重力状態に出来るよ」
「・・・は、はぁ」
キラの発明に突っ込みを入れることが出来ないシン。
すでに一杯一杯なため、ただキラの言葉に頷くだけである。
「さぁ、早く行ってくれ。僕はちょっとしないといけないことがあるからさ」
「は、はい」
そう返事をするものの、体が言うことを聞かない。
と、キラの目が若干細くなった。
「・・・・・・聞こえてないの? 早く行ってくれない?」
同時に膨れ上がる黒いオーラ。
10倍が20倍になった!
「は、ハイ! わかりました!!!」
恐怖が限界を超え、硬直した体が反射的に動いた。
マユを抱え、装置のスイッチを押して一気に飛び上がるシン。
「キラさん! ありがと〜」
「またあとでね、マユちゃん」
最後まで事情のわからなかったマユ。
ただ、兄の話していたキラが自分たちを助けてくれたと言うことはわかったらしい。
笑顔でキラに礼を言い、キラも笑顔で答えた。
そして、ストライク同様に上空待機していたゲイツは、
機体の限界を超えたスピードで飛び去っていった。
「さてと・・・」
ゲイツを見送ったあと、ゆっくりと警官たちのほうに視線を向けるキラ。
すでに警官たちの半数が立ったまま気絶している。
「別にアナタ達に恨みはないんですけど・・・」
一歩踏み出す。
周囲に聞こえていた鳥の鳴き声が止む。
「あまりにも頭に来てしまったんですよね、僕・・・」
さらに一歩。
周囲のビル壁に亀裂が入る。
「他の人にぶつけるなんて事したくないんですけどね・・・」
着実に距離が詰まる。
そして先頭の警官まであと1m。
「覚悟・・・してくださいね?」
極上の笑顔と共に髪が浮き上がり、スーパーサ○ヤ人(4)が降臨した。
〜 1分後 〜
「ふぅ〜・・・・・スッキリした」
晴れやかな笑みを浮かべているキラ。
すでに普通?の人間に戻っている。
「さてと、シンを追いかけないと・・・」
そう言ってストライクに飛び乗るキラ。
勿論装置は使ってません。
シートに座り、オート操縦を解除。
シンの後を追って、プラントから脱出した。
その去り際、
「次はないぞ、クソ野郎・・・」
その言葉と共に、最後の黒を吐き出していった。
プラント最高評議会議会場。
ただ1人の男を除き、全員が失神していた。
目の前で展開された黒い会話に耐えられなかったらしい。
「キラ・ヤマト・・・ヒビキ博士の息子にして最高のコーディネーターか」
気絶していない男はキラの個人データを見ていた。
「彼といると、まるで昔の自分と話をしているようだ。
ふふふ・・・懐かしい。が、まだ甘いな」
普段のキラよりも濃いオーラを放っているこの男、
「君とはいずれまた会うだろう。
そのときにはもう少し成長していることを願っているよ。
今の君では私と対等に話せないからな。
私を失望させないでくれよ? キラ君」
ギルバート・デュランダルは嬉しげに笑っていた。
まるで、新しいオモチャを見つけた子供のように・・・
あとがき
ついに登場影の主役!
その名はデュランダル!!
と言う訳でプラント編完結です。
今回のこの人の登場は、私が最も書きたかった点の1つでした。
実は最初、主役をシン(黒)、そしてデュランダル(黒)の弟子というものを考えていました。
ですが、運命であまりにもキラ君が主役ッぷりを発揮しているので、つい我慢できずにキラ主役にしてしまいました(笑)
今回のキラとデュランダルの会話内容は、今後の話にかなり影響するものなので伏せさせていただきました。
決して手を抜いたわけではありません(汗)
もう少し話が進んだらちゃんと公開いたします。
ちなみに結果はキラの惨敗です
次回は久しぶりにハーレム系話です。
ここ数話完全に忘れ去られていた5人の少女はどうする?
そしてシン、マユの関係は?
もしかしたら、背景変わるかも・・・なんちゃって。
レス返し
久々のレス返しです。
今までたくさんのご意見をいただいておきながら申し訳ありませんでした。
D,様
・限界って何でしょうか? ハッハッハッ・・・
・タブーを超えるかはこれからと言うことで
覇王様
・こんなことが起こっていました。ダメでしょうか?
tete様
・食生活の改善はありえないので・・・
イワッペ様
・今回のことでますます強まったでしょうね。
て言うか、忠誠なのかな?
スロバ様
・おっしゃる通りでございます。
ですから次回、ちょっと頑張って(無理して)みようかと・・