黒い種 キラ君奮闘?物語
第17話 最高のコーディネーター
~ キラ side ~
ステージ4:議会場前通路
ドドドドドドドドドドッ!!!
響き渡る機関銃の銃撃音。
議会場への扉を背にし、ザフト兵たちが最終防衛線を張っている。
「う~ん・・・マズイな」
通路の脇から顔だけのぞかせ、様子を覗うキラ。
「さすがにあれだけの機関銃に真正面から向かうわけには行かないな。
かと言ってエアダクトから行くと、見つかった瞬間に蜂の巣だからな。
ウィルスで制御を奪ってられるのもあと少しだし・・・」
携帯端末に表示されているタイマーを見ながら作戦を練る。
残された時間はあと2分少々だ。
「手持ち武器は・・・携帯型ビームソードが2本か。
他に何か持って来てなかったかな・・・・・・・」
ポケットに手を突っ込み、何かないかと探すキラ。
と、何か見つけたのかキラの動きが止まった。
ポケットから取り出された右手をゆっくりと開く。
そこに握られていたのは何かのチップのような小型の機械だった。
「ふっ、ふっふっふっふっ・・・ふっふっふっふっふっ」
それを見て、キラが声を殺しながら不気味に笑い出した。
「・・・そうだ、これを持って来ていたんだ」
先程までの悩みが一気に消え、その顔には勝利を確信しているような余裕が浮かぶ。
その機械を起動させ、再びポケットにしまうキラ。
「よし、行くか」
そう言ったかと思えば、突然脇から飛び出して機関銃の正面に体を晒したのだった。
「撃てッ!」
ドドドドドドドドドドッ!!!!!!
指示にあわせ、数十の機関銃から弾が一斉に放たれた。
標的はたった一人の少年。
壁、床、天井に流れ弾が当たりながらも、残りの大部分が命中する。
しかし、
「ふっ」
未だ銃撃は続いている。
秒間何百発という弾がキラに襲い掛かっている。
にもかかわらず、キラは笑みを浮かべて立っていた。
血が噴出すのはおろか、銃弾の反動さえ全く受けていない。
「な、何だアイツ・・・」
「ば、化け物か・・・」
銃撃音が徐々に小さくなる。
銃撃を止める指示は出ていない。
単純に全員が恐怖で硬直してしまったのだ。
だが無理もない。
どこの世界に何百発もの銃弾を撃ち込まれて平気な人間がいるというのだ。
「・・・・・・で、まだやります?」
完全に銃撃音が消えた頃、キラがゾッとするほどの氷の笑顔で言った。
その言葉と表情は、彼らの戦意を奪うのには十分過ぎた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「化け物だァァァァァ!!!」
「逃げろぉぉぉぉぉ!!!」
蜘蛛の子を散らすかのようにその場から逃げ出すザフト兵達。
たった数秒で全員が消えてしまった。
「・・・ったく、根性の無い奴らだ」
・・・この場合根性とかは関係ない気がしますが?
「まぁいいか。さてと・・・」
ポケットに手を突っ込み、先程の機械を停止させる。
「でもなかなかの性能だな、このバリア発生装置は」
満足げな様子のキラ。
・・・キラ君、いくらコーディネーターでも人類の限界を容易く凌駕するのは止めましょうね。
「さて、それじゃあ対面するとしましょうかね」
携帯端末でウィルスを停止、消滅させる。
そして端末をしまい、ロックが解除された扉をくぐった。
そこにいたのは・・・
「初めまして、プラント最高評議会の皆さん。『女神の使徒』リーダーのキラ・ヤマトです」
~ シン side ~
「マユ~、荷物整理は終わったか~?」
「うん、もう終わったよ」
「そうか~。それじゃあちょっと休憩しような~」
彼を知る誰もが聞いたことの無いような猫撫で声を発する男、シン・アスカ。
その視線に映るっているのは愛しの妹、マユ・アスカのみ。
先程の事件がきっかけとなり、喧嘩していたことなどすっかり過去の事となった2人。
仲のいい兄と妹に戻っている。
「ごめんな~マユ~。いきなりこんな事になっちゃって~」
緩み過ぎて原形を留めていない笑顔で話しかけるシン。
すでに事情説明は終わっていて、マユもそれに承諾した。
今ちょうど荷造りを終えたところなのだ。
「ううん。マユ、お兄ちゃんと一緒にいるほうがいいから」
「!!!!!!」
頬を赤く染め、だがそれ以上の笑顔で微笑むマユ。
そんなマユの姿にシンが堪えれるはずもなく・・・
「マユゥゥゥゥゥ!!!」
がばっ!
理性をふっ飛ばし、マユに抱きついた。
「キャ! お、お兄ちゃん!?」
シンの突然の行動に驚くマユ。
だが、そんな事はお構い無しにさらに強くマユを抱きしめるシン。
「マユ・・・」
「お、兄、ちゃん・・・」
互いの顔を見つめる2人。
そして、シンの顔がゆっくりとマユに・・・
ピーッピーッピーッ・・・
近づこうとした瞬間、シンの携帯端末がメールの着信を告げた。
「お兄ちゃん・・・端末、鳴ってるよ?」
「・・・・・・・・・・」
無表情でゆっくりとマユから離れるシン。
勿論怒りオーラ全開で。
そして携帯端末を覗き込む。
「・・・あ、何だ、キラさんだったのか」
発信者の名前を確認した途端にシンに表情が戻り、オーラが消えた。
・・・キラじゃなかったらどうなってるんだ?
・・・考えるまでもなく地獄行きか。
「ええっと・・・ふむふむ・・・」
「お兄ちゃん、誰からなの?」
まだちょっと顔の赤いマユ・
「ああ、さっき話したキラさんからだよ」
「それで、どうかしたの?」
「うん。用事が終わったから合流場所に来てくれって」
「あ、そうなんだ」
「それじゃ、行くか」
「うん!」
荷物が入ったトランクを持つシン。
そんなシンの空いた腕にしがみつくマユ。
2人仲良くドアを開けた。
そして、
「シン・アスカだな。一緒に来てもらおうか」
大量の警察官と対面した。
~ キラ side ~
「・・・・・・」
キラは議会場をあとにし、ストライク、ゲイツが隠してあるところに戻っていた。
すでにストライクを起動させ、遠隔操作によってゲイツも起動させていた。
「・・・・・・」
そのままペダルを踏み込み、空へと舞い上がるストライク。
少し遅れてゲイツも飛翔する。
「・・・・・・」
キラは一言も喋らない。
議会場を出てからずっと。
だが、彼が今、どのような状態にあるのかはわかる。
その、光の消えた瞳を見れば・・・
あとがき
サブタイトルが合ってない(涙)
いよいよプラント編も佳境に入ってきました。
キラの独壇場で終わるかと思っていたこの話。
一体議会で何があったのか?
そしてシン・マユの運命は?
次回、プラント編完結!
ちょっとシリアスになるかも・・・
3連チャンで申し訳ありませんが、今回までレス返しは無しとさ
せて頂きます。
イワッペ様・覇王様・D.様・へろ様
レスありがとうございました。