黒い種 キラ君奮闘?物語
第15話 やっぱりマユが好き♪
宇宙を疾走する2機のモビルスーツ。
亜光速ブースターを取り付けたストライク、及びゲイツである。
「シン、そろそろプラントに到着する。ブースターを解除するんだ」
『了解です、キラさん』
ブースターを解除する2機。
あとこのままの勢いで進んでいけば10分くらいでコロニー郡が見えてくるはずだ。
「シン、制限時間は1時間だからね、迅速に行動してくれよ」
『わかりました。でもキラさん、キラさんは一体何をするんですか?』
今回の作戦における謎。
それはキラの行動であった。
誰もキラが何をするか知らされていないのだ。
アルテミスでの話し合いのときも、
「秘密だよ♪」
と言って一切喋ろうとしなかった。
ラクスたち4人のおねだりにさえ屈しなかったのだ。
「別に大したことじゃないって言ってるだろ? ちょっとした野暮用だから」
『はぁ・・・』
「そんな事よりもシン、ちゃんとマユちゃんを連れて来るんだぞ?」
『え、あ、それは・・・』
マユの話をされてどもってしまうシン。
普段の彼からは考えられない反応だがしかたがない。
なんと言っても、シンはマユと喧嘩中なのだから。
「しっかりしろよ、シン。
出発するときはあんなに騒いでいたじゃないか」
『・・・・・・』
「心配するなよ、絶対仲直りできるから。
言っただろ? マユちゃんもシンの事が好きだって」
『好き!!!・・・いや、でも』
完全にネガティブ思考になっているシン。
よほどマユに言われた『大っ嫌い!!!』が効いているようだ。
「まったく・・・あ、コロニーが見えてきたな。シン、行くよ」
『は、はい』
「・・・大丈夫かな?」
不安要素を抱えつつ、2人はプラントへと降り立った。
「へぇ〜、ここがプラントか。ヘリオポリスよりも立派だな〜」
「キラさん、こっちですよ」
「ああ、わかった」
モビルスーツを隠し、私服に着替えた2人。
マユのいるシンの自宅へと向かっていた。
シンがあまりにもビビっているため、マユの説得に付き合うことになったキラ。
「すみません、キラさん」
「気にすることは無いよ。僕の用事はそんなに時間かからないし」
「・・・ホントすみません」
すっかり萎縮してしまっているシン。
こんなことで大丈夫なのか? と思うキラであった。
と、そのとき、
「ん!?」
突然シンが周囲を見回し始めた。
明らかに挙動不審で、警察がいたら職務質問かけられそうである。
「どうしたんだ、シン」
「・・・・・・マユ」
「え?」
「・・・マユ」
何やらオーラを発し始めたシン。
ブラックオーラとは異なった禍々しさを持っている。
かなり集中しているようだ。
「し、シン?」
「マユ・・・マユ・・・マユゥゥゥゥゥ!!!」
「お、おい!」
キラの制止など聞こえていないシン。
地面をえぐるほどの強さ(実際にえぐれている)で踏み込んで、疾風の如く走り去っていった。
〜 シン side 〜
「マユゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
凄まじい速さで爆走するシン。
時速100キロは出ているだろうか。
「マユッ、マユッ、マユゥゥゥゥゥ!!!」
曲がり角を重力を無視したようなコーナリングで駆け抜ける。
立ちはだかる木々やら電燈やらを弾き飛ばし、ただひたすら走っていく。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・いた!! マユゥゥゥゥゥ!!!」
前方500mの地点の公園内に数人の人影を見つけたシン。
このさい視力のよさなんてどうでもいい。
その集団目指し、一気にスパートをかけた。
「や、止めてください」
「そんな事言わないでさぁ〜、いいだろ?」
「ちょっと付き合ってくれるだけでいいんだからさ〜」
「ちゃんと楽しませていげるからさぁ〜」
いかにも軽そうな3人の男が少女に詰め寄っている。
少女のほうはすっかり怯えてしまっていて、今にも泣き出してしまいそうだ。
「どうせ暇なんだろ〜?」
「わ、わたし・・・」
「いいじゃねぇかよ」
「で、でも・・・」
「ウダウダ言ってんじゃねえよ」
「キャッ!」
オドオドしている少女に痺れを切らしたのか、男の1人が少女の腕を掴んだ。
少女の顔が恐怖に染まる。
「い、イヤです! 放して下さい!」
「うるせぇんだよ!」
「ヒッ・・・」
「たっぷり可愛がってやるからな」
「ア、アア・・・」
「へッへッへッ・・・」
そのまま少女を無理矢理連れて行こうとした瞬間、
ドゴッ!!!!
「グゲェ!!!」
少女の腕を掴んでいた男の後頭部に直径30cmはある石が命中。
そのまま宙を舞い、10mほど吹っ飛んだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いきなりの事態に言葉を失くす3人。
ただ黙って、伸びてしまっている男を見つめていた。
と、
「オマエら・・・」
ゾクッ!!!×2
「な!?」
「ヒィ!?」
突然聞こえてきた声に体を震わせる2人の男。
ギギギッっと効果音が聞こえてきそうな動作で声のほうへ振り向いた。
そこに立っていたのは・・・
「お兄ちゃん!?」
目をまん丸にして驚く少女。
そう、そこに立っていたのはこの少女、マユ・アスカの兄であるシンだった。
「・・・・・・」
無言で立ち尽くすシン。
ただまっすぐに目の前の男たちを睨みつけていた。
「な、何だよ、オマエは」
「じゃ、邪魔しよう・・・っての、かよ」
シンの放つプレッシャーに呑まれ、完全にビビっている男たち。
が、シンはプレッシャーをますます強めていく。
「お兄ちゃん!!」
その隙を突いて男たちのそばを離れ、シンの元へと走り寄るマユ。
先程までの顔が一変し、表情に嬉しさが満ち溢れている。
「マユ、大丈夫だったか?」
「うん、お兄ちゃん」
そんなマユに優しい笑顔を浮かべて微笑むシン。
今まで誰にも見せたことの無い会心の笑顔である。
依然としてプレッシャーを放ってはいるが、マユは対象外なのだろう。
「マユ、先に家に帰っていてくれないか?
お兄ちゃんもすぐに帰るから」
「・・・うん、早く帰ってきてね」
「ああ、約束な」
にこやかな笑みを浮かべてマユを見送るシン。
が、マユが角を曲がった瞬間、その顔から笑みが消えた。
「テメェら、何したかわかってんだろうな?」
「あ、ああ、あ」
「ひ、ひ」
シンの表情に怒りが満ちていく。
もはや喋ることさえ出来ない2人。
最初の男のように気絶していたらどれだけ楽だっただろうか。
「・・・・・・」
おもむろに辺りを見回し、一本の電燈に視線を合わせるシン。
そのまま電燈に近づいて右手で掴み、そして、
ボコッ!!!
一気に引き抜いた。
「テメェらのやった罪の重さ・・・」
その先端を男たちのほうに向け、
「たっぷり教えてやるぜ・・・覚悟しな」
ゆっくりと歩み寄っていった。
もちろん、種は弾けていた・・・
あまりに凄惨な光景のため全てを描写することは出来ません。
ご了承ください。
お詫びと言っては何ですが、その光景の一部をお楽しみください。
「テメェ! この腐れ野郎がぁぁぁぁ!!!」
ボクゥゥゥ!!!
「グギャァァァァ!!!」
「マユの味わった恐怖を思い知れェェェ!!!」
ドゴォォォォン!!!
「ぐげぇぇぇぇ!!!」
「死にやがれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ドカァァァァァァァァン!!!!!!
「「ギャァァァァァァァ!!!!」」
「うらぁぁぁぁぁ!!!!」
この30分後。
市民の通報を受けて警察が現場へ駆けつけた。
そこにはすでにシンの姿は無く、
意識不明の重体となっている3人の男と、有り得ないくらいにひん曲がった電燈だけが残されていた。
あとがき
再会おめでとう、シン。
と言う訳で、少々強引ではありましたが無事合流していただきました。
恐るべし、シスコン魂!
説得などマユとの本格的な絡み、そしてキラの目的などは次回です。
久々になりますが、キラ君には黒くなっていただきましょう。
私自身、何だかよくわからなくなってきてます。
今回もレス返しは無しとさせていただきます。
覇王様・イワッペ様
レスありがとうございました。