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「鬼畜将ランス〜第二十話 『盲目』の王と『非情』の王〜(鬼畜王ランス)」

B-クレス (2005-04-07 16:01/2005-04-07 17:08)
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 ムーララルー、正確にはプランナーと呼ばれる存在の策によって終われる立場となったランス達は

 特に大きな衝突も無く、リーザスとヘルマンの国境地帯、バラオ山脈にたどり着いていた

 何故大きな衝突が無かったのか?その理由は実に簡単だった

 ムーララルーがランスを『悪』と称したとしても、リーザスにとってはランスは『英雄』なのだ

 まして、ムーララルーは法王であってもリーザスへと直接貢献した事など無い

 だが、ランスは先年のリーザス戦においてヘルマンに制圧されかけていた国を救っているのだ

 それに、女王リアがAL教にさほど熱心ではないという事実も加わり

 リーザス国内におけるAL教の影響力は、ランスという存在の影響力よりもずっと小さいのだ

 さらに、ランスが孤児院などにリアから賜った宝(洞窟探索等の礼として)を渡していることも周知の事実である為

 ランスが魔王になろうとしている事など、到底信じられなかったのだ

 事実、ランスがヘルマン方面へ単身で行こうとしていることを聞いた者達の中で

 リーザス国内で冒険者として名を馳せている者は、ランスについて行こうとしたほどだった

 だが、それはランスが巻き込むわけにはいかないという事と、軍事的な意味合いもあると言うことから

 冒険者達は金銭的な支援などをするにとどまったのである

 
 「やれやれ・・・まさかここまで荷物が増えると思わなかったよ・・・」

 「大半が世色癌じゃろうが、旅には必需、むしろ最初に持つ量が1を5個とは少なすぎじゃわい」

 「でも1が40、2が15、3が五個だと逆に多いんじゃないかしら?」

 「何を言っておる、冒険ではいつ何が起こるかわからん、少ない事はあっても多い事はないわい」

 一気に膨れ上がった道具袋を見ながら、ランス達はのんびりと会話を続けていた

 その会話は、背中に背負われているカオスによる冒険の心得の解説のような物だったし、そうなるのは必然であった

 何せ、ランス、ジル共に冒険者としての心得がほとんど無いのだ

 ランスは、カスタム事件においては単独行動を行ったが、基本が軍による団体行動であるし

 ジルに至っては魔王時代は傷など気にしなくて良かったし、人間になってから冒険した記憶は無い

 その為、ブリティシュ、ホ・ラガ、日光、カフェ・アートフルと共に冒険したカオスが、リーダーになっていたのだ

 「まったく・・・ジルは仕方ないとして、ランス、お主ももう少し慎重にならんか」

 「ははは・・・・これからは気をつけるよ」

 世色癌をめぐる説法は、やはりカオスの独壇場で終わったらしく、ランスは苦笑していた

 そうやってのんびりとバラオ山脈を越えているとき、ちょうど山頂近くまで来た所で、ジルが足を止めた

 「・・・ん?どうかしたのか?」

 ランスが、ジルが足を止めたのに気付き、話しかける、ジルはそれに反応して、ランスの方を向いた

 「マスター、山頂部分に敵意を持つ存在が三名ほどいます、戦闘体勢をとる事をお勧めします」

 ジルの言葉に、ランスは即座に剣士としての顔つきを見せ、ジルに話しかける

 「・・・わかった、だが、先に話し合うぞ、無用な戦闘は避けたい

  後・・・マスターと言うのとその話し方はやめてくれ、特別扱いされてるみたいで何か変な感覚がする」

 「マスターはマスターです、特別扱いは当然の事ですので、かえる気はありません」

 ジルのそっけない返答に、ランスの顔は急激に情けない物になるが、即座に気を取り直す

 「まぁいい・・・・いくぞ」

 気を取り直したランスは、そう言うとジルを庇う様な形でゆっくりと山頂へと歩いていく

 
 そして、山頂に辿り着いた時、ジルの言うとおり、一人の男と二人の女性が待ち構えていた

 男は腕組をしながらこちらを睨みつけており、女性の片割れ、赤い髪の方は剣を抜いてこちらを見ており

 もう片方の女性、JAPANの着物をきた黒髪の女性は、男と同じように睨みつけてきていた

 「ふむ・・・流石は魔王にならんとするもの、我らの待ち伏せは察知したか」

 「色々と誤解がありそうだが・・・・先にお互いの名前を名乗らないか?

  俺の名はランス、ランス・プロヴァンスだ」

 ランスたちを睨みつけている男がそう言い、ランスがそれに返答する

 「貴様のような奴に名乗る名前など!!「落ち着きなさい、カクさん、礼には礼を持ってかえすものだ」・・・はい」

 赤い髪をした女性がランスに食いかかるが、男がそれを止める

 「私の名はガンジー、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジーだ」
 
 「私の名はジル、名乗らなくても知ってるでしょうけど一応ね」

 「私の名はカオル・クィンシー・神楽と申します、お見知りおきを」

 「・・・ウィチタ・スケート」

 男、ガンジーが名乗った後、ジルが名乗り、黒髪の女性、カオルが名乗り、赤髪の女性、ウィチタが不満そうに名乗った

 「まぁきくまでも無いとは思うんだけど・・・・何でわざわざ俺達を待ち伏せしてたんだ?」

 ランスが、完全に戦闘体勢に移りつつもガンジーに話しかける

 「待ち伏せする理由はただ一つ、ランス・プロヴァンス、そなたの蛮行を止める為だ

  人として生まれ、一国の将となりながら、魔王になろうとするとは言語道断!!

  せめて、これ以上道を踏み外す前に、止めてやろう・・・行くぞスケさん、カクさん!!」

 ガンジーはそう言うと、その手から火の熱線・・・ファイヤーレーザーを放ち

 それに呼応するように、二人の女性がランス達に突進してきた

 「くっ・・・!!問答無用かよ・・・、ジル、できる限り無力化を狙え、こんなくだらない事で殺し合いはしたくない!!」

 「・・・・・・了解、マスターの命、承りました」

 ジルはそう言うと氷の光線、スノーレーザーを放ち、ファイヤーレーザーを中和する

 そして、ランスが先に突進してきたカオルの攻撃を腰にかけていた剣で防いだ瞬間・・・

 「もらった!!」

 ウィチタが一瞬でランスの背後に回りランスをその手にもつ剣で切り伏せようとしたが・・・

     ガキィッ!!

 「やれやれ・・・油断しすぎだぜ、ランス」

 「お前を信じてたんだよ・・・カオス」

 一瞬で人の肉体に戻ったカオスが、手に持っている短剣でウィチタの攻撃を防いでいた

 「なっ!!召喚魔法か!!」

 「余裕だな・・・・余所見をするとは・・・!!」

 その光景を見て驚いたガンジーの一瞬の隙を、ジルは逃さず雷撃で攻撃する

 だが、ガンジーもかなりの腕らしく、その雷撃を魔法結界で防ぎきった

 「ランス、俺があの赤い髪の奴を受け持つ、お前は黒髪の奴を止めろ」

 カオスはそう言いながら、ウィチタに攻撃を仕掛け、ランスがいる場所からどんどん引き離していった

 「やれやれ・・・どうして俺の周りにはああも態度が豹変する奴ばっかり集まるかな・・・」

 人間に変身する事で言葉遣いや性格すら変わった感じがあるカオスに苦笑しながら

 ランスはしっかりとその手に持った剣、冒険者から貰ったスーパーソードを構えなおす

 それを見たカオルも、ランスから距離をとり、自分の刀を構えなおした・・・


 ジルVSガンジー

 「流石はかつての魔王・・・そう易々とは倒せぬか・・・」

 「・・・・(マスターの命令が無ければ一気に潰せるのに・・・・・)」

 真剣な顔をしてジルを睨むガンジーに対し、ジルは表面は真面目だがそんな事を考えていた

 最近のジルにとって、争いや殺戮はさほど意味を成さないものになっているのだ

 今のジルが一番優先する事は、マスターであるランスの命令である

 もし、ランスが殺し合いをしたくないと言わなければ、問答無用で殺戮魔法を撃っていただろう

 ガンジーはジルがもと魔王という事で警戒しているのか、それとも余力を残そうとしているのか

 そう大きな魔法は放たず、ジルからすれば片手間で撃てる魔法ばかりを繰り返していたのだ

 そんな状態のガンジー相手だったら、始まって1分とたたずに殺せる自信が、ジルにはあった

 「だが・・・これは流石に耐え切れまい・・・くらえ、ゼットン!!

 ガンジーがそう言うと共に、一兆度もの熱を持った熱球がジルへと向かう

 だがジルは、なんら慌てることなく、魔法を詠唱した

 「我は招く、永久の安らぎを、永久の静寂を、我は呼ぶ、永久に変わりなき世界を・・・

      コキュートス!!

 ジルが詠唱を終えた瞬間、周辺の空気が一瞬で凍りつき、大地すらも凍りついていく

 そして、熱球は、その空間に飲まれるように無くなっていき・・・・

 ジルの10Mほど手前でもはや拳ほどの熱球へと変わり、ジルへと届く前に完全に消えうせた

 「ま・・・まさか、凍土結界(コキュートス)を使おうとは・・・・!!」

 「一つ言っておいてあげる・・・・視野を広げなさい

  他者の言に踊らされず、形の悪に囚われず、自らの正義すらも疑って見せなさい

  そして、恐怖を飲み込みなさい、そうすれば・・・・私にも勝てるかもしれないわよ?」

 自分の持つ最大級の魔法、ゼットンを完全に中和しきったジルの力に、ガンジーは恐怖していた

 そんなガンジーを見ながら、ジルは凍土結界『コキュートス』を解除しながら、微笑しながら、ガンジーに話しかけていた


 ウィチタVSカオス

 
  キキキキキキキキン!!

 この二人の戦いは、ウィチタの一方的な攻撃展開になっていたが・・・

 カオスは、不敵な笑みを一切崩すことなく、ウィチタの攻撃を受け流し続けていた

 キキキキャリ・・・・キャリィン!!

 ウィチタの乱撃が止まり、鍔迫り合いになる前にウィチタはカオスとの距離をとった

 そんなウィチタを見ながら、カオスは笑いながら言った

 「ははははは・・・立派立派、まさかここまで出来るとは思わなかったぜ」

 ウィチタは、カオスの軽口になんら反応せず、ただカオスの攻撃を警戒していた

 「やれやれ・・・無愛想だな、まぁいい、今までの攻撃で君の実力は十分分かった

  今度は・・・・俺が君に『戦い』というものを伝授しよう!!」

 カオスはそう言うと、即座にウィチタへと突撃を仕掛け、ウィチタ同様乱撃を始める

 ガガガガガガガガガキン!!

 だが、その乱撃がウィチタの物と比べてどれほど重い物かは、剣がぶつかり合う音が物語っていた

 「まず第一に、君の乱撃は速度も狙いも十分だったが・・・重さが足りない!!

  そもそも乱撃は狙いを定めて行うものじゃあない、速度と重さを重点に置く物だ

  下手に狙いを定めるから一撃が軽くなる、乱撃の狙いは・・・・!!」

 ガッ、ガガガガッ、キィィン!!

 「敵の防御を砕き、守りを完全になくす事にある!!」

 ウィチタがカオスの斬撃に耐え切れなくなり、防御が完全に崩された瞬間、カオスは不敵な笑みでそう言った

 「ツッ!!」

 防御を崩したと言うのに、なんら追撃をかけてこないカオスの余裕に苛立ちながら

 ウィチタは即座にバックステップでカオスとの距離をとるが・・・・

 「敵が引くときこそ、最大の好機だと言う事を忘れるな!!」

 ガァシャン!!  ズザァー

 カオスもウィチタの動きに完全についてきており、さらに追撃を行っていた為

 まともに体勢の整っていないウィチタでは受けきれず、完全に吹き飛ばされてしまったのだ

 「まだ勉強は始まったばかりだが・・・休憩するか?」

 カオスは、立ち上がり体勢を整えようとしているウィチタを見ながら、不敵な笑みでそう言った

 「いいえ・・・もうしばらく・・・付き合ってもらうわよ」

 ウィチタも、カオスに負けじと不敵な笑みを浮かべ、再び戦闘体勢に入った・・・


 ランスVSカオル

 「はっ!!」

 ギィィン!!

 「くっ!!」

 キャリィィ!!

 この二人の戦いは、まさしく一進一退の攻防戦であった

 居合いを得意とするカオルの一撃は早く、そして重い

 さらに、その一撃を防いだ後のランスの攻撃を完璧に受け流し、ある程度距離を稼いでは刀を鞘に納める

 刀が鞘に納まれば、再び居合いを放つ事が出来る、ランスもそれはわかっているため迂闊には攻め込めず

 ランスとカオルの戦いは、もはや千日手とかしつつあり、それを悟った両方とも、相手の行動を待っていた

 「・・・・・何故、君は戦うんだ」

 ランスが、睨みあいをしている相手であるカオルに話しかける

 「貴方が魔王になろうとしているから・・・では不服ですか?」

 カオルは、なんら表情を変えずランスの問いに答える

 「・・・・・そう・・・か・・」

 ランスは、カオルの目を見て、説得は不可と悟り、さらに神経を鋭くし始めた

 カオルもランスの変化を悟り、次の攻撃に備えはじめた

 両者の戦いは、静かだが、実に苛烈な物へと変化していった・・・・


 

 ジルVSガンジー

 「ファイヤーレーザー!!」

 「スノーレーザー」

 「火爆破!!」

 「氷雪吹雪」

 ガンジーの必死の魔法を、ジルは顔色一つ変えず完全に中和していた

 相性が完全に悪い事もあるのだろうが、それ以上に経験の差と言うものを見せ付けているようだった

 なにせ、ガンジーが使う魔法を中和しているのは、ガンジーが詠唱し終えた瞬間なのだ

 つまり、ジルは完全にガンジーの次の魔法を読みきっていると言う事である

 ガンジーは、恐怖に震えそうになる自分の身体を叱咤しながら、自分の持ちうる最大の魔法を放つ

 「これで・・・どうだぁああああああああああああああああ!!」

 ガンジーの叫びと共に放たれたのは、破邪覇王光と言う名の光魔法であり

 対軍魔法である黒色、白色破壊光線を凌駕する火力を持つ大魔法である

 「・・・闇よ、我を覆え」

 だが、その魔法ですら・・・・ジルが無造作に放った防御魔法を貫く事は出来なかった・・・

 「くっ・・・!!」

 「・・・・これで終わり?」

 自分の持つ最大の魔法ですら傷一つつけられなかったと言う事実から、ガンジーは恐怖に捕らわれてしまった

 「・・・まだだ!!」

 だが、ガンジーは必死に奮い立ち、再び破邪覇王光の詠唱を開始したが・・・

 「視野が狭い、何時気付くのかと思ったけど・・・気付かないとはね・・・

  押しつぶせ、グラビティプレス」

 ジルが、ガンジーを哀れむような目で見ながらそう言い、魔法を発動させた

 その魔法が発動した瞬間、ガンジーは急に大地にその身を横たえる事となった

 「ば・・・かな、重力結界を・・1工程で発動・・・だと・・!!」

 ガンジーは、自分を押しつぶそうとしている力、重力の力から、ジルの魔法が何かを悟った

 だが、信じられなかった、重力結界とは、結界魔法でも一番高度な物であり

 発動までには、どれだけ熟練した魔術師でも、かなりの長時間にわたる詠唱が必要なのだ
 
 それに、魔法陣も必要となる為、いきなり発動したと言うことが信じられなかったのだ

 「視野を広げろと言ったでしょう・・・?

  魔術師は常に360°を見渡し続けなければならないのよ?

  視野を狭めるから、頭上に展開されていた魔法陣にも気付かないのよ・・・」

 ジルはそういいながら、ガンジーから目を離し、未だに戦い続けているカオル達に向かっていった

 「貴方達の主は私が捕らえた!!

  殺されたくなければ大人しく降伏しなさい!!」

 ジルの声に、カオルとウィチタは戦闘をやめ、ガンジーの方を向いた

 そして、ガンジーが捕らえられているという事実を確認すると、その場に両手を上げて座り込んだ


 「ジル、よくやった」

 カオル達が座ったのを見届けたランスが、ジルに話しかける

 「マスターも酔狂ですね・・・消してしまえば後腐れ等なくなるのに」

 ジルが、冷たい目でガンジーを見ながらランスに話しかける

 「殺しなんぞそう好んでするもんじゃない、まして・・相手は一国の王なんだからな」

 ランスはそういいながら、ガンジーの近くまで歩み寄った

 「くっ・・・分かっていた・・・という事か・・?」

 「えぇ、ゼス王ガンジー殿・・・・・誤解はしないでください

  リーザスも、俺個人としても、ゼス国と争う気もないし、貴方と争う気も無い」

 ランスはそういいながら、未だに睨みつけてきているガンジーの傍で腰を下ろした

 「・・・何故だ、何故これほどの力を持ちながら、魔王になどなろうとする・・・!!」

 「まったく・・・先に問答無用で攻撃してきたのはどっちですか?

  仮にも一国の王なら、もっと冷静に行動してください」

 ガンジーの、負け惜しみのような言葉に、ランスは呆れた顔をしながら言葉を返し始めていた

 「いいですか、そもそも俺が魔王になろうとしている証拠はどこにあるんですか?」

 「法王であるムーララルー殿が神託を受けたと言ったではないか」

 「はぁ・・・、ちょっと考えてみてください、神託って・・・でまかせだって出来るんですよ?

  神託を受けられるのは法王であるムーララルーのみ、もしかしたら本当に神託を受けているかもしれませんが

  逆に言えば、ムーララルーが偽りの神託を語っている可能性だってあるんですよ?」

 ランスの言葉に、ガンジーは考える素振りを見せる

 ランスは、そんなガンジーの様子を見ながら、ゆっくりと立ち上がった

 「他人の口から語られる真実ほど、不確かな物などないんですよ

  真実というものは、自分自身で、確かめていく物なんです

  まぁ、俺達は先を急ぎますので、今回はこれで失礼しますよ」

 ランスがそう言って、ジルのほうに向かおうとした時・・・・・

 カオルが、立ち上がって、ジルのほうに突撃を仕掛けている姿が見えた

 「ジル!!下がれ!!」

 ランスは、ジル向かって叫びながらも、ジルに向かって全力で駆けた

 そしてジルは、ランスのほうに向かい、飛翔魔法を使って全速力で飛んでいき、その結果・・・・


 カキィィン!!

 ランスは、カオルが右手に持った短刀を、防ぐ事に成功した、しかし・・・

 「(右手だけ・・・?なっ!!爆薬!!)」

 ランスの目には、カオルが左手に魔法による時間差爆破型の小型爆薬を持っている姿が見え

 さらに、その爆弾が、既に7カウントまで進んでいる事も見えていた

 「くっ・・・ウォオオオオオオ!!

    バシッ、ドンッッ!!

 ランスは、それを確認した瞬間、雄叫びを上げながら、剣を即座に捨て、右手で爆薬を、左手でカオルを押し

   ドッッゴーーーン!!

 「・・・グッ・・・」

        ドサッッッ・・・・・


 その身体を盾とし、爆発の衝撃からカオルを護り・・・・倒れた

 「ま・・・・・マスター!!

 「馬鹿ランス!!なにやってやがるんだ!!」

 その光景を見たジルと、ウィチタを警戒し続けていたカオスがランスへと駆け寄り

 先にたどり着いたジルが、ランスの顔を少し撫でた後、ゆっくりと、立ち上がった

 「・・・・小娘」

 そして、恐ろしいほどの殺気を放ちながら、凄まじい冷気を持った声で、カオルに向かって話しかけた

 「覚悟は出来ているのだろうな・・・?

  ただでは殺さぬ、いや、殺しなどせぬ、ありとあらゆる拷問にかけ、ありとあらゆる絶望を味あわせ

  魂すらも束縛し、永久に安息なき世界をそなたに与えてやろう

  なに、遠慮などするな・・・そなたはそれを与えられても仕方ない事をしたのだからな」

 ジルはそういい終わると、冷たい笑みを浮かべ、ゆっくりと、一歩ずつ、カオルへと歩み寄っていく

 カオルは、今まで体験した事の無い凄まじい殺気のせいで、動く事もできず

 ウィチタもカオル同様であり、ガンジーも、結界が無くなっている筈なのに指一つ動かせていなかった
 
 カオルは、ガタガタ震える身体を抑える事も出来ず、ジルが、ゆっくりと近寄ってくるのを見ていることしか出来なかった

 「逃げぬか、殊勝な心がけだな

  だが、もう遅い、自らの愚行を、永久に後悔するがいい・・・」

  「ヒッ!!」

 ジルがそういい、カオルに触れる寸前で・・・


 「や・・・めろ・・・・ジル・・・」

 「落ち着けジル!!ランスは気を失ってただけだ、まだ生きてる!!」

 弱った声のランスと、必死に訴えるカオスの声に反応し、その手を止めた

 「・・・・ツッ!!マスター!!

 ジルは、振り返り、ランスの目が開いていることを確認すると、殺気を霧散させ、ランスへと走り寄っていった

 「まったく・・・無茶しやがって・・・ほれ、世色癌だ、飲めるな?」

 ジルが走りよってきている事を確認したカオスが、道具袋から世色癌3をだし、ランスの口元に持っていく

 「悪い・・・迷惑・・・かける」

 ランスは、カオスに向かってそう言うと、世色癌を口に含み、一気に飲み込んだ

 そして、ランスが世色癌を飲み込んでまもなく、ジルがランスに抱きついた

 「マスター・・・もう・・・あんな事はしないでください・・・

 死んだかと・・・思ったんですから・・・・・・!!」

 ジルは、先ほどまでと同一人物とは思えぬほど、弱弱しい声で、そう呟いていた

 ランスは、世色癌3の効力で、多少なりと動かせるようになった身体で、ジルを、ぎこちなく抱きしめた

 ジルはランスに抱きしめられたまま、ランスの胸で泣きつづけていた・・・

 「やれやれ、ハウレーンの嬢ちゃんにアールコートの嬢ちゃん、メナドの嬢ちゃんの次はジルか

  男冥利に尽きるなぁ?ランス?」

 そんな二人の光景を見ていたカオスが、ランスに向かってそう言った

 ランスは、カオスの言葉に苦笑で返すしかなかった

 
 そんな光景を見ていたガンジーは、傍に寄ってきていたカオルとウィチタに話しかけていた

 「・・・間違っていたのは、私の方かも知れんな」

 ガンジーの言葉に、普段なら即座に否定の意を示すカオルとウィチタも、頷くだけだった

 「視野を広げろ・・・・・か

  私は、魔王と魔人は、『魔』は『悪』であるという概念に囚われすぎていたのだな

  私自身の目で、本当の『正義』を見定めねば、民を救う事などできんか・・・」

 そう言ったガンジーの顔は、まるで憑き物が落ちたかのように清清しい顔をしていた

 「カクさん、スケさん、私は、彼らの旅に着いて行こうと思う

  着いていく事を許可してくれなければ、彼らの行く末を影から見届けたいと思う

  彼らの旅の中で『悪』と『正義』とはどういうものなのか、少しはつかめる気がするのだ

  これは私の我が侭に過ぎない、二人はついてくるかどうかは自分で決めてくれ」

 ガンジーの言葉に、カオルとウィチタは苦笑を浮かべながら答えた

 「何度も仰るとおり、私達はガンジー様の従者なのです」

 「ガンジー様と共に行動する事に、異存等ありません」

 ウィチタとカオルの言葉に、ガンジーは深く頷くと、ランス達の方へとゆっくり歩み寄っていった

 ジルとカオスが、ガンジー達が近寄ってくる様子を見て警戒したが、次のガンジーの言葉で呆気に取られた

 「ランス殿、我らも旅の一行に加えていただけぬか?」

 ジルとカオスが、現実に復帰するまでの間に、ランスとガンジーの話し合いは終わっていた

 
 ランスとガンジーのトップ会談の結果、旅についてくる事は許可されたが

 その後、ジルとカオスが条件について話し合いをはじめ、ガンジーは基本的にそれを全て受け入れた

 その条件とは、以下の通りの物である

 まず第一に、ランスの負傷が治るまで街で休養をとるので、その間の宿代などの全面提供

 これは、ガンジー側の責任ともいえるので、快諾した

 次に、パーティのリーダーはあくまでランスであるということ

 この事に関してカオル達が少々不満の意を示したが、ガンジーの一言で収まった

 そして最後に、ヘルマン軍等と衝突したさいに殺しを行うことを認めるかどうかであった

 この条件が一番難航したのは、いうまでもない

 ガンジーはかなり渋っていたが、自分達との戦いを顧みて、

 ランス達は、けっして好んで殺人などは行わないということ、

 できれば話し合いで済ませたいと、ランスが考えている事を思い出したので

 最終手段として、という形で、この条件を飲む事にした


 

 世色癌の効力で、マシにはなっているが、ランスの負傷は決して軽い物ではなく、自力で歩くのも困難であった

 正確には、歩けるには歩けるが、普段ほどの速度を出すのが困難なのである

 それに、無茶をして病状を悪化させるわけにも行かず、ランス達の行軍はゆっくりとした物になった


 バラオ山脈を降りるさい、ランスを運ぶ役はガンジーが、料理はカオルとウィチタが担当していた


 いきなり負傷はしたが、人数を増やしたランス一行

 進軍は遅く、ランスの負傷も決して軽い物ではなかったが、その空気は明るい物だった

 人間界屈指の魔法使いであるガンジーと、忍びであるカオルとウィチタの参戦

 しかし、歴史の主役たるランスは、傷ついてしまった

 主役の傷がいえる間もなく、歴史は新たに動き始める

 そして、動き出した歴史の中で・・・ランスは一つの『真実』とぶつかる事になるのであった・・・・・


 


 あとがき

電波がビリリときたので今回は早く執筆できました(爆
ガンジー達の性格には色々な意見があるかもしれませんが
私のガンジーはこういう性格ということでお許しくださいw
次回以降、周知の事実状態のランスの過去を暴き始めます
しかし今度こそ(多分)更新が遅くなるので、本気でゆっくりとまっててください

ちなみにタイトルの盲目の王はガンジー、非情の王はジルのことです(何

PS:キャラ詳細はもうレス返しのさいだけすることにしましたww
   希望キャラをレスにどうぞ


 4/07 17:09分 愉快すぎる改行の異常を修正 
         時間無いからって碌な確認せずに投稿したせいでした
         次からは気をつけようと思います、見難くしてしまい申し訳ありませんでした

 そしてレス返し

   shinさん

 リアが大人しいのは、ランスと合わせる為だと思ってくださいw
 三人旅のはずがいきなり六人旅になってしまった今回ですw
 そして御明察、アミランさんと接触した瞬間、歴史は大きく動きだします
 次回以降を、ゆっくりとおまちください 

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